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ユリ科の雌雄異株野菜における種苗の大量増殖方法に関する研究

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(1)

ユリ科の雌雄異株野菜における種苗の大量増殖方法

に関する研究

著者

田澤 一二

695

発行年

2005

URL

http://hdl.handle.net/10097/16019

(2)

名(本籍)

学 位 の 種 類

学 位 記 番 号

学位授与年月 日

学位授与 の要件

学 位 論 文 題 目

論 文 審 査 委 員

た ざわ かつ じ 田 澤 一 二 博 士(農 学) 農 第695号 平 成17年4月14日 学 位 規 則 第4条 第2項 該 当

ユ リ科の雌瀬

擶 菜における瀦

の糧

醗 方法1こ

す る研究 (主 査)教 授 金 浜 耕 基 (副 査)教 授 三 枝 正 彦 教 授 西 尾 剛 一1一

(3)

は じめに ユ リ科 の雌 雄 異株 野 菜 で あ る シオ デ ㊨励 謡伽'Miq.)と アス パ ラガ ス .(!卸a躍g昭 轟 舳:L .)は 、食味 ・風 味が類似 してお り、シオデ は 「山のア スパ ラ ガス」、 「山菜 の王様 」等 と称 され て いる。 園芸作物 の 中で雌 雄異 株野菜 は多 くはな く、 シオデ とアスパ ラガスのほか に、ホウ レン ソウ とゼ ンマイな どが一例 として あげ られ る。 これ らの雌雄 異株 野菜 にお いて収量 向上 を 目的 と した品種改 良の方 法 と して、ホ ウ レン ソウでは雑種 強勢 の利 用が一 般的 に行 われてお り、ア スパ ラガ スで も雑 種強勢の利 用が 行 われ っつ ある。 さ らに、アスパ ラガスでは多収 のための戦略 と して、3倍 体品種 の育 成 、雌 雄洞 体性雄性 お よび蔚 培養 を利用 した全雄 品種 の育成 な ども行 われて い る。 山菜 のゼ ンマイ とシオデ は種 苗生 産 が され な いで収穫 され て い るこ とか ら山菜 資源 の枯 渇 に晒 され てい る。す なわ ち、ゼ ンマ イ は採取 ・食用 の対象が雌株 に限 られ てい る ため、里 山で は採取が 困難 な山菜 ξな りつ つ ある。 シオデ は前述 の よ うにアスパ ラガ ス と同 じユ リ科野菜であるが、アスパラガスのように発達 した多肉質 の根茎を有 しないた め(第1図)、1年 に複数回お よび継 続して毎年同 じ株か ら若茎を地際か ら収穫す るこ とが不可能である。すなわち、シオデは根茎の分化 と発達が不十分であるため、若茎の 裏折収穫 と言 う方法で翌年の収穫に必要な同化産物を生産 ・蓄積 ずる栄養体を残存 させ た収穫方法が必要であることか ら、山菜 としての収穫量は少ない。 そこで本研究では、雌株の乱獲採取によって資源枯渇に晒 されているゼンマイと同様 に、乱獲採取と低 い再生力のため資源枯渇に晒 されているシオデを供試 して、組織培養 に よる大 量増殖方法 を開発 しよ うとした。 また、シオデ と同 じユ リ科野 菜のアスパ ラガ スでは、収 量増加 の戦 略 の一つ と して、多収 である ものの発芽率が低 いため種苗の生産 効率 が低 い3倍 体 品種 を供試 して、種子 の発芽率 を向上 させ る方 法を開発 しよ うと した。 一2一

(4)

第1章.『 シオデの組織培養苗増殖方法 と繭培養の方法。 本章ではまず初めに、実生繁殖では、播種から収穫まで長年月 を必要 とす る山菜のシ オデの種苗を組織培養によ り短期間に大量に増殖する方法を開発 しようとした。次いで 菊培養 によ り半数体を育成 して遺伝子分析の素材 とす ることを目的に、繭培養の方法を 開発 しようとした。 第1節 。 シオデ の組 織培養 苗増殖 方法. 目 的 シオデの実生繁殖 の場 合、播種 後地上 に出芽す るまでに2回 越冬す る必 要があ る。し か し、硬実種子 であ るため 自然 条件下 では地 上に出芽す るまでに よ り長 い年 月を経 てい ると推察 され る。出芽後、収穫 が可能 な植物体 に成長す るまで には、更 に5∼6年 が必 要 であ る。 以上 のよ うに、 シオデの実生繁殖 は、時間的、 労力的 に必 ず しも効率的 な繁 殖方法 で ある とは言 えない。 そ こで本節 で は、組織 培養 に よって シオデ の種苗 を大量 に増殖す る方法 を開発す るこ とと した。 材 料お よび 方法 シオデ の若 い節 間茎 を 自生 地お よび移植 圃場 か ら採取 し、組織 培養 の外植 体 と した。 採取 した節間茎 は、70%エ タノール お よびア ンチ ホル ミン(有 効 塩素濃度1%)で 滅菌 後、滅 菌処 理 に よ り損傷 した 両端 を切 断 して約2㎝ に調整 した。調 整 した節 間茎 を固 形MS(MurashigeandS:koog,1962)培 地 に置 床 してプ ロ トコーム様 体(恥(》㎞m・hke bo電 以 下PLBと 略称)を 誘導 し、:PLBか ら塊 状体(PLBク ラスター)を 増殖 した。 次いで、固形MS培 地上 のPLBク ラスター か らPLBを 切 り出 し、液体MS培 地 に移 植 して振盟培養 した(第1次 増殖 と称す る)。更に、第1次 増殖 で増殖 したPLBク ラス 一3一

(5)

ター か ら15週 後 にPLBを 切 り出 して、再度液体MS培 地に移植 して振 量培養 を行 っ た(第2次 増殖 と称す る)。 結果 お よび考察 は じめに、無菌的 に、高効率 で培養可能 な節 間節位 を特 定す る ことを 目的 と して、節 問節位 数 とホル モ ン濃度 と反 復数 の組み合 わせ処理 区を設 けて培養 した ところ、培養菰 約300個 全 ての処理 区でバ クテ リアが繁殖 した ので培養 を継 続す るこ とがで きなか っ た。 そ の原 因 と して、発 達 した維管束部 の導管 にバ クテ リア が侵 入 してい た もの と考 え られ た。 そ こで、維 管束部 の未発達 な節 間茎 を培養 した ところ、培養 に適す る節問節位 は、維 管束が未発 達で 、バ クテ リアが導管 に侵 入していない とみ られ る茎の上端 に近 い 若 い節 聞茎 で あ ることが 明 らか とな った(デ ー タ省 略)。 したがって、 その後 は若 い節 間茎 を固形MS培 地 に置 床 して培養す るこ とに した(第2図A)。 継 代培養 を経 て、約 90日 後 に、固形MS培 地 で誘導 したPLBク ラス ターか らPLBを 切 り出 して液体MS 培地 に移 植 し(第2図B)、 振 欝 音養 によ りP卑B(ク ラス ター)の 第1次 増殖 を行 っ た ところ、PLBク ラスタ→ 数 とPLBク ラス ター 生体重は スムー ズに増加 した(第3図)。 第1次 増 殖 にお け る振 塗培養 では、培養 開始 とともに培養 液 のpHの 低下(第4図)と 褐変化 がお こった。 そのた め、培養液 のpHの 低 下 と褐変化 に対す る方 策 と してシステ イ ン を添加 した処理 区 と培 養液 の更新 を行 う処理 区を設 けた ところ、培 養液 の更新処 理 区の方 が効果的 であった(デ ー タ省略)。 そ こで、第1次 増殖 では培養 開始後6週 まで 培養液 の交換 を2∼3日 の間隔で行い、それ 以降は1週 間の間隔 で更新す る ことと し た。 第1次 増殖 開始後15週 に形成 ・増殖 したP:LBク ラスターか らPLBを 切 り出 し、新 たな液 体MS培 地 に移植 して 、P:LB(ク ラス ター)の 第2次 増殖 を行 っ鳥 そ の結果 、 第2次 増殖 では、培養液 のpHの 低 下 と褐変化 が第1次 増殖 に比較 して 小 さか った。 ま 一4一

(6)

た、第1次 増殖 と比較 して、PLBク ラスター数 が著 しく増加 して(第5図)、PLBク ラス ター 内のP:LBに 不定芽が分 化 した(第6図)。 第2次 増殖 においてP:LBに 不定芽 が分化 したのは、PU3が 液 体MS培 地 に適 応 した こ と、培養 開始後15週 が不定芽分 化 の時期 に相 当す るこ とな どによる もの と推 察 され たが、今 後の研 究課 題 と して残 され た。分化 した不定芽 をホル モ ン ・フ リー の固形MS培 地 に移植 した結 果、高頻 度で根 を 分化 し(第1表)、 容 易 に順化 した(第7図)。 本節 の結果 、枯渇 が懸念 され るシオデ の山菜 資源 としての保 存 と、シオデ の栽培 にお け る育苗 期 間の短縮 が 可能 とな った。す なわ ち、実生繁殖 の場 合に比較 して、組織培 養 に よる種 苗生産 か ら収穫 までの期 間 を約8年 か ら約4年 と1/2に 短縮す るこ とが可能 と推察 された。た だ し、収穫 までの年 数が短縮 され た場合 で も、若 茎発生 のための養 分 を貯 蔵す る根茎 が未 発達 で あ るた め継 続 して毎年 同 じ株 か ら収穫 す る こ とが 不可能 で ある ことか ら、収穫年 の異 な る複数 の 圃場 での ローテー シ ョン栽培 が必 要で ある。 第2節.シ オデ の荊 培養 の方 法. 目 的 シオデは雌雄異株 野菜 で あるため、実 生苗 を植 えた 圃場 におい ては異型接 合体 の個体 か らな る集 団 を形 成す る。 シオデ と同 じ雌 雄異株野菜 で あるアスパ ラガス では、倍加 半数 体 を供試 して、特 定遺伝子 の染色 体 に おける座乗 の同定が行 われ てい る。 さらに、準 同 質系 の集団 が育成 されれ ば、Q㎜titat孟vet面t1㏄i(QTL)解 析 な どに供試 す るこ と が可能 であ る。 また、倍 加半数 体か ら有用 な遺伝子 型 を有す る個体 を選抜 す るこ とも可 能 とな る。そ こで本節 では、薪培養 に よ り、シオデの半数 体植物 を育成す るこ ととした。 材 料お よび方 法 シオデは散 形花序 でた く さんの小 花 を着 生す るこ と と、小花 も適度 な大 き さであ る 一5一

(7)

(第8図)こ とか ら、蕾 の採取 が容 易で ある。 そ こで第1節 の場 合 と同様 に、 自生地お よび移植 圃場か ら2.5∼3,0m血 の蕾 を採 取 し、組織 培養 の外植体 と した。 他の植 物 で の知 見に基 づ き、半数体 の植物 体再 生率 を高 める こ とを 目的 として、蕾 に5℃ で1、3、 7お よび10目 間の低 温処理 を行 った(第2表)。 低温 処理後、蕾 を定法に よって滅菌 し た後、繭 を取 り出 し、 固形MS培 地 に置床 した。 結果 お よび考 察 固形MS培 地に置床 した繭の内部 か らカル ス とP:LBが 分化 した(第9図A)。 これ らのP:LBを 切 り出 して固形MS培 地 に置床 してP:LBを 増殖 した(第9図B)。 次 いで、 固形MS培 地 にお けるP:LBク ラス ター か らPLBを 切 り出 して液体MS培 地 に移植 し、 振盤 培養 に よってP:LB(ク ラス ター)の 増殖 を行 った(第9図C)。 液体MS培 地で振 盈 培養 して増殖 したP:LBク ラス ターか らPLBを 切 り出 してホル モ ン ・フ リー の固形 MS:培 地 に移植 した ところ、P:LBに 不定芽 が分化 した(第9図D)。 固形MS培 地 にお いて増殖 したPLBク ラスターか らPLBを 切 り出 してホルモ ン ・フ リーの固形MS培 地 に移植 して も、P:LBに 不 定芽が分化 した(第9図D)。 繭培養 の場合 も、第1節 の場 合 と同様 に、PLB(ク ラス ター)の 増殖 は、 固形MS培 地 よ りも液体MS培 地 にお い て速 かった(デ ー タ省 略)。 ホルモ ン ・フ リー の固形MS培 地 に移植 したPLBか らの 不定芽形成 と植物 体再分化 に及 ぼす低温処 理 の影響 は、5℃ 、『3日 間 の処理 区で高かっ た(第2表)。 本 節 の結果 、他 の作物 で行われ てい る繭培養 の方法に準 じて培養す る と、シオデにお いて も半数体 の育成 が可能 であった。今 後 の課題 と して、再分化個体 の半数 体の確認 と、 倍加 半数体 の育成 お よび その中か らの有用 系統 の選抜 が残 っ ている。 また、ア スパ ラガ スで行 われ てい る倍 加 半数体植物 を用 いた特 定ま たは有用 遺伝子 分析 と同 じ方法 を用 いれ ば、 シオデ において も倍加 半数 体を育成 す る ことができ る可能性が示唆 され た。 一6一

(8)

第2章.3倍 体 アスパ ラガスの発芽率向上方 法. 雌 雄異株野菜 であ るア スパ ラガスは、若 茎収穫の場合 、雌 株に比較 して、果実 を着生 しない雄株 の収 量が高い。 しか し、ア スパ ラガスの実生集 団の性比 は約1:1で あるこ と か ら、実生栽 培す ると雄 株 の高い収 量 は雌株 の低 い収量 に よって相殺 され る。そのた め、 アスパ ラガ スで組織 培養 に よる雄株 だ けの種苗 の大量 増殖 が考 え られ てい る。その ほか に、アスパ ラガスの収 量 を向上 させ るた めの戦略 と して、雑種 強勢 の利用 、果実 を着生 しない3倍 体品種 の育成(ヒ ロシマ ・グ リー ン)、お よび実生繁殖性 全雄 品種の育成(ポ ロネー ズり が行 われ て いる。 しか し、実生繁殖 性 全雄 品種 ポ ロネ ーズ の種子 は保証発芽 率が80%と 高 い ものの、種子 は50gで4万 円程度 と高価 であ る。3倍 体 品種 の ヒロシ マ ・グ リー ンは種子 の価 格 が2倍 体 品種(メ リー ・ワシン トン500W、 保 証発 芽率70%) とほぼ同等 で あるが、通常栽 培 におけ る発 芽率 は約40%と 低い。この よ うな理 由で、ア スパ ラガスの3倍 体 品種 お よび全雄 品種 は一般 には栽培 に利用 され てい ない。 そ こで本 章で は、種子 の価格 が比較 的安価な3倍 体 品種 の低 い発芽 率の原 因 を解 析 し、 発芽率 を高 めて3倍 体品種 を実際 の栽培 に利用 可能 とな る方法 を開発 しよ うと した。 第1節.リ ン ゴ酸 脱水素酵素 のアイ ソザイム分析. 目 的 植物 の発芽 、生育 、結 実には、酵素活性が密接 に関係 して いる。発芽 は、貯蔵 物質 を 分解 し、新 たな器 官形 成 を行 う過程 で あるため、 とくに呼吸系 の酵 素活性 に注 目す る必 要が あ る。 そ こで本 節では、呼吸系 に関与 してい る酵 素の うち、 リンゴ酸か ら トリカル ボン酸 回 路 の出発物 質 とな って いるオ キザ ロ酢酸 を生成す る酵 素で あるL一 リンゴ酸 脱水素酵 素 (以下MD:Hと 略称)に 注 目し、ア スパ ラガ スの2倍 体品種、3倍 体品種 、お よび 全雄 _7_

(9)

品種 を用 いてMDHの アイ ソザイ ムバ ン ドパター ン と、いずれ かのバ ン ドが欠 失 した個 体 の発現頻度 を発現様式 と表 して調べ た。MDHの 比較 として、基質非特 異的酵 素 とし て知 られ ているエステ ラーゼ(以 下ESTと 略称)と 酸 性ボ スフア ターゼ(以 下ACP と略称)に っ いてアイ ソザ イムバ ン ドパ ター ン と発 現様 式 につ いて も調 べた。 材料 お よび方 法 材料 には、2倍 体品種(メ リー ・ワシン トン500W)、2倍 体 品種 の メ リー ・ワシン ト ン500Wを コル ヒチ ンで倍 加 して育 成 され た4倍 体品種 のセ ト・グ リーンにメ リー一・ワ シン トン500Wを 交配 して育成 され た3倍 体 品種(ヒ ロシマ ・グ リー ン)、 お よび全雄 品種(ポ ロネー ズ)の2000年 度産種子 を供試 した。種子 は、滅 菌後 シ ャー レに濾紙 を 敷 いて播種 し、25℃ で発芽 させ た。発 芽初 期段 階 のアイ ソザイ ム分析 には、種子 か ら 1㎝ の幼 芽が発生 した 生育段 階 の種子 を供試 した。 生 育の進ん だ段 階のアイ ソザ イム分析 には、2倍 体 品種(メ リー ・ワシン トン500W) お よび3倍 体 品種(ヒ ロシマ ・グ リー ン)の 第12葉 が最 新展開葉 とな った生育段階 の 第10葉 ∼第12葉 を供試 した。 アイ ソザ イ ム 分 析 は等 電点 電 気 泳 動 法 で行 っ た。 等 電 点 電 気 泳 動 は 、σFane11 (1975)の 方 法 に準 じて作成 した溶液 を用 い、定法 に従 って行 った。 結果 お よび 考察 発 芽初期段階 にお けるMD且 の アイ ソザ イムバ ン ドパ ター ン と、いずれ かのバ ン ドが 欠失 した個体 の発 現頻 度 を発現様 式 と表 して第10図 と第11図 に示 した。2倍 体品種 にお いて、MDHの アイ ソザイ ムバ ン ドの欠 失個体 は極 く少 なか った。 しか し、3倍 体 品種 にお いて、MDHの2本 のアイ ソザイ ムバ ン ド(FとG)は 発現 していなか った。 また、MD且 の他 の2本 のア イ ソザイムバ ン ド(Eと 且)も 多 くの個体 で発現 しな い 傾 向がみ られ た。全雄 品種 において も、MDHの2本 のアイ ソザイ ム ・バ ン ド(FとG) 一g一

(10)

は、多 くの個体 で発現 しなレ傾 向がみ られ た。ESTお よびACPに 関 しては、供試 し た3品 種 間で アイ ソザ イ ムバ ン ドパ ター ン、発 現様 式 に一定 の傾 向は み られ なか った (デー タ省略)。 生育 の進 んだ段 階 にお け るMDHの アイ ソザイ ムバ ン ドパ ター ン と、いずれ かのバ ン ドが欠 失 した個体 の発 現頻 度 を発現様式 と表 して第12図 と第13図 に示 した。3倍 体 品種 にお いて、MDHア イ ソザイ ムバ ン ドのGとH:を 発現 しない個 体 がや や多か っ た ものの 、2倍 体 品種 と3倍 体 品種 間で アイ ソザイ ムバ ン ドパ ター ン、発現様式 に一定 の傾 向はみ られ なかった。 したが って、3倍 体品種 の種子 の発芽率 を向上 させ る方 法の 一っ と して、MD且 の基質 前処理 の効 果 を調べ る こ とが必要 で ある と考 え られ た。 第2節.リ ン ゴ酸 脱 水 素 酵 素 の基 質 前 処 理 に よ る種 子 の発 芽 率 向上 方 法 。 目 的 本節 で は、アイ ソザイ ム分析 の結果 に基づ き、アスパ ラガスの3倍 体 品種 の発 芽率 向 上 を 目的 と して リンゴ酸脱 水素酵 素 の基質前 処理 を行 った。 なお、前節 にお いてEST とACPは 、3品 種 間 でアイ ソザイ ムバ ン ドの発現 に一 定の傾 向がみ られ なか った ので、 本節 では基質特異性 が認 め られ たMDHに 注 目して実験 を行 った。 材料 お よび方 法 発芽 処理 時 にMDHの 基質 として0.3%リ ンゴ酸 ナ トリウム溶液 を3、5お よび7 日間吸収 させ る前 処理 を行 った。次 に、発芽処理 時 に リンゴ酸 ナ トリウムの0.3、0.8 お よび1.0%浴 夜を3日 間吸収 させ る前 処理 を行 った。前処理終 了後は純水 で発 芽 させ た。 一g一

(11)

結果 お よび考察 3倍 体 品種の発芽率 は、0.3%リ ン ゴ酸 ナ トリウム溶 液に よる3日 間の前処理が最 も 高い もの とみ られた(第14図)。3日 間 よ り長 い期 間の前処理 では、時間の経過 とと もに幼植物 が枯 死 した。 リンゴ酸 ナ トリウム3日 間前処理 の場 合、0.3%で 発芽率が最 も高 く、全雄 品種の発芽 率 とほぼ 同 じに 高まった(第15図)。0,3%よ り高濃度 の場合 も、時 間の経過 とともに幼植物 が枯 死 した。 発芽勢 は、3倍 体 品種 が全雄 品種 よ りも高 い傾 向 を示 した。 本 節の結果 、MD且 の基質 と して、0.3%の リン ゴ酸ナ トリウム溶 液 で3日 間前処理 す るこ とに よ り、アスパ ラガスの3倍 体 品種 の発芽率 を2倍 体 品種 の発 芽率の保 証水準 (70%)に 高 め るこ とがで きた。なお 、本 節 にお いて、'MDHの 基質 で前 処理 して も、 3倍 体 品種 は2倍 体 品種 に比較 して発芽率 が低 か った。この ことか ら、MDHの 活性 と ともに、他 の遺伝 的 ・生理的 要 因 も3倍 体品種 の発芽 率 に関係 して い ると考 え られ た。 まとめ 本研究の結果、シオデにおいては組織 培養苗の生産 とそれ を用いた実用栽培が可能で あることが示 された。また、他の作物で行われている繭培養の方法に準 じて異型接合体 であるシオデの半数体 を比較的容易に育成することができたので、今後倍加半数体を育 成す ることを通 して遺伝子分析に役立っと考えられた。アスパ ラガスにおいては3倍 体 品種の種子の発芽率を向上 させ ることが可能 となったので、3倍 体品種を用いた実用栽 培の可能性が示唆 された。 一10一

(12)

40 35 30 25 20 15 10 5 ( ⇔o ) 糊 葦 類 邸 ( 照 V 掻 e ー 挙 K い 心 o自 ﹂ 窪

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根 収 吸 異 差 の 系 根 の ス ガ ラ パ ス ア と デ オ

LB PL8ク ラス ター 生 体 重'一 一レ

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Φゆ ゆ β がPLBク ラ ス ター 数 0 012345678910111213141516 培養 開 始 後 の週 数 第3図.第1次 増 殖 にお けるPLBク ラスター の 数 と生 体 重 の 変動. 注=図 中 の垂 直線 は 、標 準 誤 差(n=6).

A

培養6ヶ 月後

』コ'一-'.}… 』』一 篁}  『… 一

8

第2図.固 形(A)お よ び 液 体(B)MS培 地 に お け るPL,EとPLBク ラ ス ター の 増 殖. 6 5 = ユ e 樫 1 2∼3日 間 の 間 隔 で

L攣

畷 間の臨 で

培養液更新

4

01234567891011121374 培 養 開 始 後 の 週 数 第4図.第1次 増 殖 にお ける培 養 液 の pHの 変 動. 注:図 中の 垂 直 線 は、標 準 誤 差(n=6). 一11一

(13)

(個)160 150 i40 鰻130 120 絶110 ∼6100 ー 楢 K い 90 80 70 60 50 鵜 30 20 10 0 P田 クラスタ噸_,手

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ポ4 !<一 一 不 定 芽 数

不定芽

.!距:爆.孝 健 ・驚 隔触巽翼 012345678910111213141516 培 養 開 始 後 の週 数 第6図.第2次 増 殖 において分 化 した 第5図.第2次 増 殖 にお けるPLBク ラスター 数PL、Bク ラスター(A)とPLBに および 不 定 芽 数 の 変 動.分 化 した不 定 芽 の 縦 断 面(B). 注=図 申 の垂 直 綜 は標 準 誤 差(n=6). 第1表 、固 形MS培 地 にお ける根 の 形 成 に及 ぼ す α一ナ フタレン酢 酸(NAA)の 影 響 NAA'Cjm 2遇 閥 培 養 後 の 塾 理 区A O.51.0 塾理 区8 200510 3 4 5 6 7 8 c c c t 22.2 33.3 66.7 2.1 100.0 3.7 iooo 100.0 41.6 75.0 91.7 3、8 91.7 4.7 100.0 6.0 100A B.0 (96) 18.7 75A 91.7 1.0 100.0 2.5 100.0 2.7 100.0 3.0 22.2 44.4 66.7 21 100.0 3.3 100.0 4.5 100.0 4.5 33.3 33.3 44.4 12 66.7 70) 1000 6.1 100.0 5.8 順 化 量 床時 閲の 鍾遡とともに枯 死 注1=彊 環 区Aは 、 … を灘 加 した顧 影細S堵 均で2i■口 、ホ ル釜ン・ 7り 一 の 口伽4S堵 地1こ釧 直した. 注2:彊 翼区8は 、MAを 鑑趣 した層5鰯S鎗 塘 で2遇 聞塘 養 後.引 き纏 き 岡噛二瀧 度 の … を毒 銅した圃 蜘S堵 亀 で堵養 した. 注3:5、6」 お よび8遇 の2厭 馴 二示した カッコ内 の敷 宇 は 」 幼 檀物 砦たり の糎 敷 をま す. _12_

(14)

第7図.第2次 増 殖 後 にホ ルモン ・フリー の 固 形MS培 地 で発根 した シオ デ の幼 植 物.

諾 確 鳥 艦

6

 ギ

第8図.シ オ デ の 散 形 花 序. 一13一

(15)

繧 、

第9図.シ オデ の繭 培 養 による半 数 体 の 育 成.

第2表.シ

オ デ の 調 培 養 にお ける幼 植 物 体 再 分 化

に及 ぼ す 低 温 処 理 の 影 響.

低温(5℃)置

床菌

固形MS培 地で分化・

形成された数

処理 日数

0

胚 数

不定芽数

幼棺物体数

1 3 7 10 oo go 50 00 00 雪 -望 9 9 ﹂ 9 ﹂ 4 9 一 3 n U 9 ■ 9 聰 8墨 注:不 定穿敬および幼檀 物体数 は、それぞれ量床15お よび50週 後 の値である. 一14一

(16)

J ユ λ レ 、 ︿ ヤ 塾 ﹀ ヤ B

陰極

(個)・ 。

賢 理

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一 2倍 体 品種

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0 蓄 ■門 …'1"1Tr1 0 m 表乏 あ山 δゐ 各占 血歯 直↓&占 圭土 轟ム もも 陽 極 ア イソザ イム 陰 桓 第10図 、アスパ ラガスの 発 芽 初 期 段 階 にお ける 第11図.ア スパ ラガスの 発 芽 初 期 段 階 にお ける MDHの アイソザ イム バ ンドパ ターン.

西ー

ユ λ ︽ 4 ヤ 事 ﹀ ヤ

髄㍉ 曳

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轟灘鞍

陽極

第12図.ア スパ ラガスの生 育 の進 ん だ段 階 にお けるMDHの アイソザ イム バンドパ ターン. (個)・ ・ 趣 . 鋤 か か 簡 証 軌 . 鞭 か .

MDHの アイソザ イムバンド欠失個体 の 発現様 武. 急と 畠あ δ占 さ占iL山 産止6占 圭土 畠↓ 亀ら 鮒 と ムL ● 極 ア イソザ イ ム 陰 極 第13図.ア スパラガスの生育の進んだ段階 におけるMDHの アイソザ イム バン ド欠失個体の発現様式、 一15一

(17)

100 90   §7

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蔚6 欺50 る 纈3 20 1 0

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懸1週 間後

脇2週 間後

躍3週 間後

T

3日間処理5日

間処理7日

間処理

処 理 期 間

第14図.ア

スパ ラガ スの3倍 体 品種 の種 子発 芽 に及 ぼ す0。3%

リンゴ酸 ナ トリウム 前 処 理 期 間 の 影 響.

注:5日 間 と7日 間 前 処 理 区で は 、生 育 日数 の経 過 とともに

幼 植 物 が 枯 死 した.

io 0 7 003覧0.8覧1ρ5純 水 純 水 リンゴ酸 ナ トりウ ム3日 間前 処 理 区 3倍 体品種2倍 体 品種 全雄 品種

第15図.ア

スパ ラガスの3倍 体 品種 の 種 子 発 芽 に及 ぼす

リンゴ酸 ナ トリウム前 処 理濃 度 の影 響.

注:0.8%とLO%前

処 理 区 では 、生 育 日数 の 経 過 と

ともに幼 植 物 体 が枯 死 した.

一16一

(18)

論 文 審 査 結 果 要 旨

シ オデ とア ス パ ラガ ス は,食 味 ・風 味 が類 似 して い るユ リ科 の雌 雄 異 株 野菜 で あ る。 シオ デ は半 陰 性 植 物 で あ るた め生 育 は旺 盛 で な い こ と と,貯 蔵 根 が 発 達 してい な い た め 若茎 収 穫 後 の 再 生 力 が 弱 い の で,継 続 して 毎 年 同 じ株 か ら収 穫 す る こ とがで き ない 山菜 で あ る。また,実 生繁 殖 も困難 で あ るた め, 山 菜 資源 の枯 渇 に 晒 され て い る 。 さ らに,品 種 改 良 も行 わ れ てい な い こ と と,各 種 形 質 の遺 伝 的特 徴 の解 析 も行 わ れ て い ない 。 一 方,古 くか ら栽 培 され て い る ア スパ ラ ガ ス に お い て は各 種 形 質 の 改 良 が 進 ん で い る も の の,雌 雄 の性 比 が1:1で あ るた め,実 生繁 殖 す る と種 子 を着 生 しな い雄 株 の 高 い 収 量 は 雌株 の 低 い 収 量 に よ っ て相 殺 され る。 ア スパ ラ ガ ス に お け る 収 量 向 上 の 方 法 と して 種 子 を着 生 し な い3倍 体 品種 が 育 成 され て い るが,同 質3倍 体 品種 は発 芽 率 が低 い た め実 用 栽 培 は行 われ て い な い。 これ らの こ とか ら,シ オ デ にお い て は種 苗 を大 量 に生 産 して 山菜 資源 を保 存 す る と とも に収 量 を向上 す る こ とが 重 要 で あ り,ア スパ ラガ ス にお い て は3倍 体 品種 の発 芽 率 を高 め る こ とが収 量 向 上 の 上 で 重 要 で あ る 。 そ こ で 本 研 究 に お い て は,シ オ デ の 若 い 節 間 茎 を植 物 成 長 調 整 物 質 を 添 加 した 固 形Murashige・ Skoog(MS)培 地 に 置 床 して プ ロ トコー ム様 体(PLB)を 誘 導 した。 固形MS培 地 で はPLBの 増殖 速 度 が 低 か っ た の で,固 形MS培 地 で誘 導 したPLBを 液 体MS培 地 に移 植 して振 盗 培養 を 行 った 。 液体 MS培 地 に お け るPLBの 増 殖 速 度 は 高 く,さ らにPLB内 に不 定 芽 が 高 い 効 率 で 分 化 した 。 不 定 芽 を植 物 成長 調 整 物 質 を添 加 しな い 固 形MS培 地 に移 植 した とこ ろ発 根 し,容 易 に順 化 す る こ とが で きた 。 これ らの 結 果 は,シ オデ の実 用 栽 培 の た めの 種 苗 を組 織 培 養 に よ る大 量 増 殖 に よ っ て供 給 す る こ とを 可能 に した重 要 な知 見 で あ り,ま た 山菜 資 源 保 存 の観 点 か らも貴 重 な知 見 で あ る。 さ らに,品 種 改 良 の ほ とん ど行 われ て い な い シオ デ にお い て,遺 伝 的 基礎 研 究 のた め の 素材 と して の 半 数体 を繭 培 養 に よっ て増 殖 した 。す な わ ち,若 い節 間茎 を用 い たPLBと 不 定 芽 の 増 殖 方 法 と同 様 な 手 法 を用 い て,5℃ ・3日 間 の 低 温 処 理 を行 っ た 繭 か らPLBを 増 殖 し,植 物 成 長 調 整 物 質 を添 加 し な い 固形MS培 地 にお い てPLBか ら半 数 性 不 定 芽 を大 量 に発 根 ・順 化 させ た 。 こ の結 果 は,シ オ デ の 倍 加 半数 体 の 育 成 を可 能 に し,シ オ デ の 多 収 ・耐病 性 な どの諸 形 質 に 関 す る遺 伝 的 研 究 を 可能 に す る 重 要 な知 見 で あ る 。 ア スパ ラ ガ ス に お い て は,TCA回 路 で リ ンゴ酸 か らオ キザ ロ酢 酸 を生 成 す る リ ンゴ酸 脱 水 素 酵 素 の ア イ ソザ イ ムバ ン ドパ ター ンの 発 芽 初 期 段 階 にお け る発 現 様 式 に注 目 して 調 べ た 結 果,2倍 体 品種 と 全 雄 品種 に 比較 して 発 芽 率 の低 い3倍 体 品種 にお い て 特 定 の リン ゴ酸 脱 水 素 酵 素 アイ ソザ イ ムバ ン ド が欠 失 して い る こ とを 明 らか に した。3倍 体 品種 の アイ ソザ イ ム バ ン ドパ ター ン に お け る特 定 の リ ン ゴ酸 脱 水 素 酵 素 アイ ソザ イ ム バ ン ドの 欠 失 に関 す る知 見 に基 づ き,3倍 体 品 種 の種 子 を リン ゴ酸 脱 水 素 酵 素 の基 質 で あ る リン ゴ酸 ナ ト リウム溶 液 で前 処理 した ところ,リ ン ゴ酸 ナ トリウム溶 液 の0.3%・ 3日 間 処 理 を行 っ た 区 にお い て3倍 体 品 種 の発 芽 率 が無 処 理 区 よ りも有 意 に高 く,市 販 の2倍 体 品種 の保 証 発 芽 率 の 水 準(70%)に 高 ま っ た 。 この結 果 は,ア ス パ ラ ガ ス の3倍 体 品種 の 種 子 を用 い て大 量 種 苗 繁 殖 と収 量 向上 を 目的 と して 実 用 栽 培 が 可 能 で あ る こ と を示 した重 要 な知 見 で あ る。 こ の よ うに,本 研 究 に お い て は園 芸 学 的 に優 れ た成 果 が 得 られ た た め,審 査 員 一 同 は 博 士(農 学) の学 位 を授 与 す る に値 す る も の と判 断 した 。 一17一

参照

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