ミツバチ科学 (2003)24(2):77-80
スズメバ チ遮 断柵
久志 富士男
今年 の分蜂期 までの1年間で,私 はニホ ン ミ ツパテ 66群 の うち 32群 を失 った. その半数 はオオ スズ メバ チ に襲 わ れ た もので あ る (図 1).友人,知人,親戚 とあち こち分散 して預 け て いるので,管理 が行 き届かず こんな結果 にな った.勢力が強 いと集団 で戦 い,追 い払 うこと がで きるが,群が弱 いと龍城 し,結局 は壊滅の 運命 になる (逃亡す ることもあ るが逃亡先 で滅 びる).中 には巣門が広す ぎて侵入 され,巣 内で 戦 った群 れ もある. そ こで, スズメバチ対策 を なん とか しなければ と本気で取 り組んでみた. まず セイ ヨウ ミツバチの蜂場 に行 って捕獲器 を 観察 したが,多 くのスズメバ チが捕殺 されてい る割 には効果 が充分 でない ことがわか り,新 し い方式 の必要性 を感 じた. それにスズメバチは 捕獲器で殺 されなければ野菜畑 で害虫駆除を し ているのではないだろ うか.農業 と生態系を護 るために も殺 さないほ うがいいはずであ る. 本稿 で は,第25回 ミツバ チ科学研究会 での 発表 に, その後 の考案 を加 えて, スズメバチ防 止用の遮断柵 につ いて述 べたい.スズメバチ遮断柵の開発
ここで紹介す るのは, 改良 を重 ね,3か月か けてたど り着 いた装置4種 であ る. 第 1作 (図2) は,試作品で は枠 の高 さ 180 mm,幅280mm,奥行 き130mmに した.前 後2本 を 1組 と した針金 を 6か所 に, 46mm 間隔で枠 の上 か ら下 まで張 ってある.床 には, ・= A"_.A - ヽ 1■■ ・ .. I. I tI ■■I 土_一二二⊥ 一tll 図1 ニホンミツバチの巣箱へのオオスズメバチの襲撃 左上 :巣門から侵入するオオスズメバチ,右上 :巣内に篭もって外を見張る二ホンミツバチ, 左下 :巣箱の底部に残されたオオスズメバチとニホンミツバチの死体,右下 :オオスズメバ チの飛来で混乱するニホンミソバチの巣箱.Ttq 図2 針金製の遮断棚 左上 :巣箱に装着 した遮断肌 右上 飛来防止の針金の間隔が広いと小型のスズメバチが入 り込む.左下 :針金の代わりに木綿糸にすると 状に立てて,上部を外側に曲げてある.スズメ 短 い針金 を前方 に曲げ,9mm間隔で柵 のよ う に立てた.長 い方 の針金 は麺がつかえてオオス ズメバチが飛んで入 れな いよ うに,短 い曲が っ た針金 は,歩 いて間を抜 けた り這 い上が って乗 り越 えた りで きないよ うにす るためであ る. なぜ46mmなのか. ミツパ テは これ らの線 を嫌が る.最初 は木綿糸 を張 ったがす ぐ噛み切 られた (図2左下). ナイロ ン糸 に替 えた ら今 度 はスズメバチに噛み切 られた. ミツバ チのた めには広 くしたいが広す ぎた らスズメバ チが入 る. どこまで広 げ られ るか. スズメバチには大 きさに個体差 があ り,開辺幅 は60mmない し 70mm, 体長 は40mm前後 である. 最初 は 50mm間隔,1本 の針金 か ら始 めたが,肩 を振 るよ うに して麺 を交互 に入 れて難 な く通過 し た.40mmに して も同 じであ った. それで前 後 に針金 を2本 に してみた.前後 の 2本 の間隔 が広 いと2回肩 を振 って入 る.結局 20mmに 落 ち着 いた.横 の間隔を50mmに した ら小型 ミツバチが噛み切る.右下 後列の針金は棚 バチは這い上がって中に入ることができない. のが槙飛 びで出入 りした (図2右上). 試行錯 誤 の末46mmに落 ち着 いた. 柵 の針金 の間隔 は9mmであるが, 10mm だ と小型 のが通 り抜 ける.最初 は待 ち針 を立 て て試 み て いた. これ で も結構 役 に立 って いた が, ときたま羽ばた きなが ら乗 り越え られた. それで柵 をオーバ ー- ングに した ところ登れな くな った (図2右下). 長 い針金 の後 ろの 1本 を途 中で切 っているのは床か ら登 りに くくす る ためである. 柵 の針金 の代 わ りにカ ッターの刃を並べてみ たが, ll mm間隔で も決 して通 り抜 けてみよ うと しなか った.辺が切 れ るか もしれない こと が判 るのであろ う. しか し,刃 を掴んで登 り, 刃 の上辺 に爪 を掛 けて簡単 に乗 り越 えた. ときた ま側辺 あ るい は上 辺 か ら入 られ たの で, そ こに針 を植 えた り,滑 り易 いよ うにアル ミ箔 を貼 った りしたがだ めであ った. いろいろ 試 しているうちに, グ リースを塗 った ら効果が
図3 プ ラスチ ック製 の遮断柵 あることがわか った. これで一応解決 したわけ であるが グ リースは雨で硬化 し効 き目がな くな る.そこで フ リルを取 り付 けてみたが, これは 意外 と効果 が あ った. 目隠 しを したわ けで あ る.見えない事柄 に関 しては思考で きない らし い. 毎 日がスズメバチとの知恵比べであ った.人 間様が昆虫 に負 けるわけにはいかないので必死 であ った.「これはどうだ」と出 した案が簡単 に 図4 木製階段状 の遮断柵 オオスズメバチは入ることはできないが. 執軌に襲撃 してくる. 79 突破 されたときは屈辱感 を味わわされた もので あ る.で もなん とか勝 ちを収 め ることがで き た. スズメバチに張 り付 かれていた群 も龍城 を 解 き,番兵 たちは柵 の側 までや って きて,入れ ないでいるスズメバチを威嚇 し始めるよ うにな った. 第2作 (図3) は,製作のよ り簡単な装置を と考え,思 いっいた ものである.針金を正確 に 9
mm
間隔で立て るのは不可能 に近 いので,逆 L字形 のプ ラスチ ックの板を設 けることに した のであ る.下端 に9mm
の ミツバ チの通 り道 を設 ける.ついでに2本 の長 い針金の代わ りに 逆三角形の板 を立てる. この案 は研究会後 に思 いっいたのでまだスズメバチを使 った実験 はで きずにいるが,大丈夫のはずである. 第3作 (図4) は,巣箱 に網 を被せ るの と同 じ原理である.着地場所が階段状で板 に幅があ るので ミツバ チには網 よ りも出入 りが楽 にな り, か らまりに くい.板 の厚 さ2-4mm
, 幅 15mmで,上下 には9mmの間隙である.上 図 5 感電 シ ョック型 の遮 断柵 ステンレス線の位置が高いと,下をくぐ り抜けるスズメバチもいる.80 図6 蜂洞用の遮断珊 (電池に接続 して用いる) に行 くはど8mmずつ手前 に引 いて,着地 の 足場を作 っている.巣門に取 り付 けた直後 はと まどっているが,半 日もす ると慣れてどこか ら で も迅速 に出入 りす るようになる. しか し, こ れの欠点 は針金式 に較べた ら捉 まる率が高 く, スズメバチが襲撃 を断念す るのに時間がかかる ことで あ る (図 4下). この試作 品 は格 子 11 本,全体の幅28cm,高 さ15cm,奥行 きは底辺 で15cm,上辺で4cmに してみた. 第4番 目の電気柵方式 (図 5) は, 太 さ1.6 mmか2 mmのステ ンレスの針金を使 う. 他 の金属だと錆びた とき感電性能が落 ちる.枠箱 の床,壁,天井 に20mm間隔で針金を平行 に 張 り,天井 と床の間に も46mm間隔で飛行侵 入防止の針金を渡す.その2個の金網 それぞれ に 9 V乾電池 の正負 を接続 す る. スズメバ チ は2本 の線 に乗 った瞬間 に感電 して飛 び上 が る.電池 は 1個で も効果 はあるが2個で18V にす ると即効性がある.3個だ と感電死す る. 床 の針金 は ミツバチが下 を通 りやすいように床 か ら9mm上 げる.10mmにす るとスズメバ チが通 る (図5下,入 るときには感電 したので 出 るときは別 の方法 を取 っている).床 に緑 を 接触 させた ら雨 に濡れたとき短絡す る し, ミソ バチがいっ もその上 を歩 くので汚れて,感電性 能が落ちる. スズメバチは学習能力が高 く,一 度感電 した ら2度 とそ こを乗 り越 え よ うと し ない.別 の場所か ら再侵入 を試みて2回感電 し た ら以後や って釆 な くなる. この方式 はスズメ バ チに恐怖感 を植 え付 け るのか完全 に撃退 す る. そのあとコガタスズメバチが現れ るが, や はり感電 し,同 じ結果 になる. 研究会では蜂洞用 (図 6) も発表 したが, そ のあとの検討で うま く設置で きないことがわか った.蜂洞の周 りの地面が必ず しも平坦でない ためである.巣門が1か所 だ と 1個設置 して張 り付 きを防 ぐことはで きる. スズメバチは弱い群か ら攻撃 してい くが,義 初 に狙われ るよ うな群 は人が助 けてや って も結 局 は冬 を越すまで生 き延 びないのではないだろ うか. ま してそんな群か らの採蜜 など問題外で ある.早 く滅びさせたほうが他の群の食料確保 に もいいのではないか と考 え られ る. その意味 ではこれ らの装置 はニホ ンミツパテには無用 と 言 えるか もしれない.ただ巣門が広す ぎるなど 巣箱の不備 を補 うことにはなるであろう. 発明を したか らには実施化 して役立てたいと 思 い量産の検討を してみた.業者 にお願 いす る に して も詳細を確立 しなければな らない.そ こ でいろいろなことがわか って きた. まず手作 り ではどこまでやれるか試 してみた.最初 にぶち 当た った問題 は市販の針金 には巻 いた もの しか な く直線の ものは入手できないことであ った. 曲が った針金で はmm単 位 の精度 を必要 とす る装置 は製作で きない.従来の捕獲器 に較べて 構造 は簡単であるが,手作 り製作 はどれ も時間 を浪費す るだけであ った.業者 を探すの も大変 であ った. イ ンターネ ッ トを使 ったが,需要が 一番多 いと考え られる電気柵方式 は大阪の線材 加工業者 にお願 いす ることにな った.図5上の 電柵式の もので, 単価 は2400円にな りそ うで ある.スズメバチが出始 める6月 までには供給 の態勢がで きるよ う頑張 りたいと思 っている. 今後公開す るホームページおよびFAX ( 0956-49-2272)で詳細 に関す る問い合わせや注文を 受 けるように したい. これ らの装置によってスズメバチの侵入の心 配がな くなれば,夏 は通気 のために巣門を広げ てや ることがで きるようになる.それな ら最初 か ら開放 自在の巣門にすればよ く,巣門の改良 も必要 になって くるか も知 れない. (〒857-0103佐世保市原分 町55)