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自らの成長を実感させる道徳授業の実践 : OPP シートを活用した複数時間の関連を図った指導を通して 利用統計を見る

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自らの成長を実感させる道徳授業の実践

- OPP シートを活用した複数時間の関連を図った指導を通して-

Teaching Practices of Moral Lessons for Making Students to Realize Their Development of the Sense of Morality

- Through Teaching Practices Emphasizingthe Importance on Relationships between Several Lessons by Using OPP Sheet -

中 国 昭 彦*1

     堀   哲 夫*2

NAKAKUNI Akihiko     HORI Tetsuo  

要約:2008 年に改訂された新学習指導要領では,道徳の指導に当たって,書く活動や 自らの成長を実感させるような活動の工夫,複数の時間の関連を図った指導の工夫等 を強く求めている。これまで道徳の時間において,複数時間にわたり自らの成長を実 感させるためにOPP(One Page Portfolio)シートを活用した研究は,ほとんど提案され ていない。そこで,本研究では,児童に自らの成長を実感させるための手立てとして OPP シートを活用した複数時間の関連を図った授業づくりに取り組んできた。その結 果,道徳の授業においてOPP シートを活用することにより,児童自らの成長を実感させ、 複数時間の関連を図った指導を効果的に位置づけられることを児童の記述内容から確 かめることができた。 キーワード:道徳,OPP シート,成長,実感,複数時間の関連

Ⅰ はじめに

 2008 年に改訂された新学習指導要領において,道徳の指導に当たっては,「自分の考えを基に,書 いたり話し合ったりするなどの表現する機会を充実し,自分とは異なる考えに接する中で,自分の 考えを深め,自らの成長を実感できるよう工夫すること」に配慮するよう述べられている。つまり, 新学習指導要領では,道徳の授業において自分の考えを書く活動や自らの成長を実感させるような 活動の工夫を強く求めているのである。  また,これまで道徳の時間は,一般的に一つの主題を1単位時間で取り扱うが,新学習指導要領 では,内容によっては複数の時間の関連を図った指導の工夫をすることも計画的に位置づけ取り組 むように求められている。  こうした書く活動や自らの成長を実感させる活動をみとっていくのに効果的と考えられるのが OPPA(One Page Portfolio Assessment)である。OPPA で用いる OPP シートへの記述は,児童の考え を一枚の紙面に表現させる活動であり,学習前・後の基本的な問いに対する記述の比較は,自らの 成長を実感させる機会となる。さらにOPP シートの学習履歴は,複数時間の授業の関連を児童に理 解しやすいよう視覚的に示すことができ,その記述は児童の考えを深めたり,整理したりする機会 ともなる。  しかし,道徳の時間において,OPP シートを活用した複数時間の関連を図った実践研究や児童自 らの成長を実感させるための研究は,これまでほとんど提案されていない。

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 そこで,本研究では道徳授業の連続する複数時間において,OPP シートを活用することで児童が 自らの成長を実感できたかどうかを検討する。また,OPP シートを活用することで「約束」をテー マとした3つの資料を活用した長期間にわたる指導の位置付けが効果的にできたかどうかを検討す る。

Ⅱ 研究の目的

 本研究の目的は,以下の2点にある。  第一は,道徳の時間においてOPP シートを活用することで,児童が自らの成長を実感することが できたかどうか検討する。  第二は,OPP シートを活用することにより,道徳授業において長期間にわたる複数時間の関連を 図った指導の位置付けが効果的にできたかどうか検討する。

Ⅲ 研究の方法

1 調査対象 山梨県A小学校5年生 4名 2 調査期間 平成 21 年1月 19 日~2月3日 3 調査方法  A小学校5年生の道徳の授業において,「約束」という共通なテーマを持つ,それぞれ指導する内 容項目の違う3つの資料を活用した授業内容およびOPP シート(後述図1,2参照)を作成する。授 業過程では,OPP シートに記述された内容に教師が適切なコメントを書いて返すことなどを通して 道徳性を養うための評価を行った。授業終了後,OPP シートに書かれた児童の学習前・後やそれを 比較した文章を評価し,児童が自らの成長を実感することができたかどうか検討した。  また,OPP シートを活用したことで複数時間の関連を図った指導が効果的にできたかどうかの検 討は,学習テーマや学習履歴およびそれらのふり返り等の記述内容を確認することで行った。  本単元の指導時間は,道徳の時間として3時間(1単位時間 45 分),学習前のOPP シート記入時 間として学級活動の時間(朝の会)を 10 分間活用している。道徳の3時間における指導すべき内容 項目は,それぞれ「1-4 誠実・明朗」「2-3 信頼・友情」「3-1 生命の尊重」である。

Ⅳ OPP シートについて

1 OPP シートのねらい

 本授業で用いたOPP シートは,その構成要素を「学習前・後における単元の本質的な問い」「学習 履歴(学習の記録)」「自己評価」「他者評価(先生から)」とし,それぞれの構成要素に対し,児童 が思考しながら,OPP シートに学習の成果を表現していくことで道徳的な心情,判断力,実践意欲 や態度などの道徳性を養うことをねらいとする。  また,これらの構成要素に書かれた学習記録を自己評価することにより自己の学習活動の変容を みとること,およびその意味づけや価値づけを行うことによるメタ認知の能力を育成することもね らいとしている。

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2 OPP シートの内容

 実際に用いたOPP シートは,B4版の一枚の用紙を用い,二つ折にし,表裏両面を用いている。 図1・図2は,児童が実際に記入したOPP シートの様子を示したものである。

図1 授業で使用したOPP シートと記入例(表面,5年 女子)

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3 OPP シートの構成要素

 今回使用したOPP シートの構成要素は,以下に示した4点からなる。  (1)【学習前・後における単元の本質的な問い】(図2の右側「学習前と学習後」の欄)  これは,単元全体を通して教師が児童にもっとも伝えたいことである。学習前・後の変容を みるため、また気付かせるために設定してある。  「あなたが「約束を守ろう」とするときに,大切にしたいことはなんですか。思いつくだけ書 いてみましょう。」  (2)【学習履歴(学習の記録)】(図2の左側の学習中①と②の欄)  ここでは,学習内容が児童にどのように理解されたのか表現させる。  「今日の授業で大切だと思うことを書いてみましょう。」  「テーマ」の記入・「全体テーマ」の記入  (3)【他者評価】(図2左側学習中①と②の「先生から」の欄)  相互に学び合うことが学習に対する認識を深めることになるので,先生から意見をもらう。  (4)【自己評価】(図1右側下段,図②の下段の欄)  学習により自分の何がどう変わったのか,それについて自分はどう思うのかなどを書かせる。  「学習前・学習後に書いた文章を比べてみてあなたが気づいたこと・感じたことなどなんでも よいですから書いてみましょう。」  「学習中①と学習中②の学習をふり返って,わかったことや気がついたことなどを書いてみま しょう。」

4 OPP シートの構成要素と新学習指導要領について

 ここでは,OPP シート構成要素と新学習指導要領との関連について詳しく述べる。新学習指導要 領との関連については「小学校学習指導要領解説 道徳編」の解説を抜粋し示し,OPP シートに関 わるキーワードを抽出したものとそれに関連したOPP シートの構成要素を示すこととする。  (1)「第5章 第4節 4言葉を生かし考えを深める工夫 (3) 児童が自ら成長を実感できるよう にする工夫」より  児童が道徳的な成長を自ら実感する場合,一単位時間の指導の中での成長について実感するとき と,以前の自分自身と比較しての長期にわたる自己の成長を実感するときがある。  実際の指導に当たっては,効果的な方法を生かして成長が実感できるように工夫することが望ま れる。例えば,学習を通して,はじめの段階と自分がどう変わったかが分かるような書く活動の工夫, 児童が想定したもう一人の自己に問い掛けて考えを深める自己内対話の工夫などが考えられる。 以前の自分自身と比較しての長期にわたる自己の成長を実感 はじめの段階と自分がどう変わったかが分かるような書く活動の工夫 OPP シートへの学習前・後の比較の記入 学習履歴のふり返りの記入

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 (2)「第5章 第3節 3道徳の時間に生かす指導方法の工夫 (4) 書く活動の工夫」より  書く活動は,児童が自ら考えを深めたり,整理したりする機会として重要な役割をもつ。この活 動においては,必要な時間を確保することで,児童は自分なりの取り組み方でじっくりと考えるこ とができる。また,学習の中で個別化を図り,児童の感じ方や考え方をとらえ,個別指導を進める 重要な機会にもなる。さらに,一冊に綴じられたノートなどを活用することによって,児童の学習 を継続的に深めていくことができ,心の成長の記録として活用することもできる。  (3)「第4章 第3節 3年間指導計画作成上の創意工夫と留意点 (6) 複数時間の関連を図った 指導を取り入れる」より  道徳の時間は,一般的に一つの主題を1単位時間で取り扱うが,内容によっては複数の時間の関 連を図った指導の工夫などを計画的に位置付けて行うことも考えられる。例えば,一つの主題を2 単位時間にわたって指導し,道徳的価値の自覚を一層深める方法,重点的指導を行う内容を複数の 資料による指導と関連させて進める方法,中心的な資料を軸にして複数単位時間を計画して進める 方法など,様々な方法が考えられる。

5 OPP シートの構成上の工夫

 今回用いたOPP シートは、作成することにより児童が楽しみや感動、驚きをもつことができるよ う工夫をこらした。  OPP シート表面の記入がすべて終了した時点で「心のとびら」欄の太線に沿ってカッターで切り 込みを入れ,とびらを左右に開く。次頁図3の左側半分の上部で示したようにとびらを開くと,学 習前・後の記録を見ることができる。これにより,学習前・後の記述だけにスポットをあてたふり 返りをすることができ,「心のとびら」のすぐ下に書き込むことができる。 自ら考えを深めたり,整理したりする機会 個別指導を進める重要な機会 心の成長の記録 OPP シートの学習前・後および学習履歴の記入 これらのふり返りの記入 ポートフォリオとしての活用 道徳的価値の自覚を一層深める方法 同じテーマでの関連を図った複数時間の道徳授業の構築 OPPA の効果的活用

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図3 「心のとびら」を開く前(左側)と開いた後(右側)のOPP シート  また,図4のOPP シートとびらの裏側の様子からわかるように,OPP シートにカッターで切り 込みを入れても,OPP シートの裏面にある練習の記録に切り込みが入らないよう工夫をしている。 OPP シートに切り込みを入れることにより,学習履歴によるふり返りに支障がないよう配慮してい る。      図4 児童が実際に活用した「心のとびら」を開いたOPP シート裏面の様子

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Ⅴ OPP シートを活用した道徳授業について

1 OPP シートを活用した授業の具体的な学習内容

 表1にOPP シートを活用した主な学習活動の内容と OPP シートへの記入時期を示した。 表1 OPP シートと学習活動の実際 (総時間 3.25 時間:1単位時間は 45 分)

2 道徳授業について(総時数 3.25 時間)

 「約束」をテーマとした 3.25 時間の道徳授業について,主題名,資料名,内容項目,ねらい,主 題設定の理由を以下に示す。図5,図6は授業時の実際の板書である。図5,図6より,授業の流 れの詳細と具体的な児童の考えを示す。 時 主な学習活動の内容 OPP シートへの記入時期 1/ 4 朝の会の時間を活用して,学習前の記入をする。 学習前の記入 1 1 約束を守らなかったときの気持ちを発表し合う。 2 「手品師」を読んで話し合う。  ・登場人物について考える。  ・「ああ来るともさ」と答えた時の手品師の気持ち。  ・友人からの電話でチャンスがめぐってきたことを知った 手品師の気持ち。  ・手品師が迷っていることを考える。  ・たったひとりのお客様の前で演じているときの手品師の 気持ち。 3 OPP シートの記入。大切と思うことをまとめる。 4 教師の説話を聞く。 学習履歴の記入 学習中①へ記入 ・テーマ ・資料名 ・今日の授業で大切だと思う こと 1 1 前時の学習内容を想起する。  ・約束を守ろうとする時,大切なことを発表し合う。 2 「友の命」を読んで話し合う。  ・登場人物について考える。  ・王様とデモンとの約束について考える。  ・ろうから出されたピシアスは,どんなことを思ったのか。  ・「何というばか者だ。」と王様に言われているときのデモ ンは,どんなことを考えていたか。  ・息をきらして「待って」と叫びながら走ってきたピシア スはどんなことを思っていたか。 3 OPP シートの記入。大切と思うことをまとめる。 4 教師の説話を聞く。 学習履歴の記入 学習中②へ記入 ・テーマ ・資料名 ・今日の授業で大切だと思う こと 1 1 OPP シート学習後の記入。学習履歴(学習中①②)を見て, ふり返る。 2 心の扉を開き,学習前・後の比較をする。 3 全体テーマを記入する。 4 詩「約束」を読んで話し合う。  ・配布された詩をOPP シートに貼り,黙読する。  ・周りの人に助けてもらった経験を話し合う。  ・ひとりではない自分について考える。  ・約束の内容について考える。 5 詩を読んで感じたこと等を記入する。 学習後の記入 学習中①と②のふり返りの記 入 学習前・後の比較を記入 全体テーマについて記入 詩についての記入

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 (1) 第1時の授業内容と板書 図5 第1時 授業時の板書の様子  (2) 第2時の授業内容と板書 図6 第2時 授業時の板書の様子 主 題 名 明るく生きる 資 料 名 手品師 内容項目 1- 4 誠実,明朗 ね ら い どのような状況にあっても,常に誠実に行動し,明るい生活をしようとする心情を育て る。 主題設定 の 理 由 誠実とは真心であり,まことの行いである。集団生活の中で,誠実に明るく行動するこ とは,楽しく快適に暮らすためにも大切なことである。本資料を通して,良心に従って 精一杯努力したり,人に対して陰日なたなく真心をもって接したりする態度を育みたい。 主 題 名 友達のために 資 料 名 友の命 内容項目 2- 3 信頼友情 ね ら い 互いに信頼し合い,その信頼を裏切らない行動をしようとする心情を育てる。 主題設定 の 理 由 この期の児童の友達との接し方は,その場を楽しく過ごすだけの間柄といったことが多 い。友人との交わりは精神を充実させ,生活を心豊かなものにしていく力となることを 理解させたい。心の底から互いに信頼し合い,時には自己を犠牲にしても友人のために 尽くそうとする態度は,今日,極めて大切なものといえる。

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 (3) 第3時の授業内容

Ⅵ 本授業実践からの成果と課題

1 OPP シートの活用による自己の成長の実感について

 OPP シートの学習前・後の記述内容をもとに,児童が自己評価を行い、学習前・後の文章を比較 した記述内容を分析し,研究の目的の一つであるOPP シートを用いた授業により,児童が自己の成 長を実感できたかどうか検討を行う。    (1) 学習前・後の本質的な問いと学習前・後を自己評価した記述内容の分析から  5年生4名すべてについて,学習前と学習後の記述内容を示した表2~表5と学習前・後の文章 を比較した図7~図 10 をそれぞれ示し,OPP シートを用いた授業により児童が自己の成長を実感で きたかどうか,その記述内容から分析する(以下,児童の記述内容は原文のまま)。 表2 児童1(男)の学習前・後の記述内容 図7 児童1の学習前・後を比較した記述内容  図7に示したように学習前と学習後に書いた文章を比較し,学習後に4つの文章から6つの文章 に量が増えたことや「学習前より両方の事や相手の事を考えている」と学習後の記述内容の深化に 気づいたり,迷う事という新たな気づきを発見したりと自分の成長を実感する記述が多く見られる。 主 題 名 かけがえのないもの 資 料 名 約束(読売新聞 「 ひろば 」 2007.11.10 から) 内容項目 3-1 生命の尊重 ね ら い 生きていることの喜びを感じながら,かけがえのない命を,大切に自分自身で守ってい こうとする心情を育てる。 主題設定 の 理 由 命のかけがえのなさを実感するためには,「人と人とのかかわり」における関係性の中 に身を置いて,命あることがどれほどすばらしいことかを感じ取ることが必要である。 命のかけがえのなさについて考えていきたい。 No. 学習前の記述内容 学習後の記述内容 1 男 ・時間を守る。 ・決められた事を守る。 ・約束を自分だけで勝手に変えない。 ・両方がやりやすいように約束を話し合う。  ( 持ち物,時間,場所等 ) ・誠実にする事。 ・信頼し合う事。 ・両方の事を考えて良く話し合う事。 ・友達を持つこと。 ・「新友」「親友」「信友」「心友」を作る事。 ・迷う事。

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表3 児童2(男)の学習前・後の記述内容 図8 児童2の学習前・後を比較した記述内容  表3に示した学習後の記述において,「自分の意志を大切にする」とか「やりぬく」という言葉か ら自分を大切にするという決意を表明することができていたり,「信頼する」や「相手きずつけない」 という言葉からは,図8に示したように相手の事もしっかり書けたと自己評価したりすることがで きている。これらは,学習を通して自己の成長を実感できた記述であると考えられる。 表4 児童3(男)の学習前・後の記述内容 図9 児童3の学習前・後を比較した記述内容  約束を守る大切さとして,表4の記述のように「友達をつくってよかった」と友達との関わりに 気づいたり,新たな記述内容として「約束を守るといい気持ちになれる。」という発見があったりと 自己の変容に気づく内容が書かれている。学習による自己の成長への認識を図9の文末の「わかる ようになっている。」からも理解することができる。 表5 児童4(女)の学習前・後の記述内容 No. 学習前の記述内容 学習後の記述内容 2 男 ・「約束を守ろう」ということを思い出す。 ・約束でもやっていいこととやってはいけな いかどうかを考える。 ・約束した友達とかをきずつけないようにす る。 ・人の約束,自分の意志を大切にする。 ・友達の事を信頼すること。 ・自分がきずついても相手をきずつけないと いうこと。 ・自分が約束したらそのことをやりぬくこ と。 No. 学習前の記述内容 学習後の記述内容 3 男 ・うそをつかないようにする。 ・ないしょのことはばらさない。 ・できない約束はしない。 ・かりたものは,かえす。 ・友達をつくってよかったと思った。 ・うそをつかないようにする。 ・約束をしたら,必ず約束をまもる。 ・約束をまもるといい気持ちになれる。 No. 学習前の記述内容 学習後の記述内容 4 女 ・かりた物をいつまでに返すか。 ・時間を守る。 ・待ち合わせていた所。 ・友達の大事な心。 ・友達を守ろうとする気持ち。 ・友達の夢。

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図 10 児童4の学習前・後を比較した記述内容  表5の学習前・後の文章を比較して,約束を守るときに友達の心についても考えられるようになっ た新たな自分に気づくことができている。図 10 の「・・書けなかったけど,この勉強をして・・・分かっ てきた。」という記述からも,学習を通して自己の成長を実感していることが感じとれる内容である。  (2) 研究の目的1「自己の成長の実感」に関わる成果と課題  OPP シートを活用することにより,児童自身が学習での気づきや自己理解・自己評価を深めるこ とが確かめられる記述内容が多くみられ,学習前と学習後に記述した文章を比較することで,5年 生4名全員が自己の変容・成長を実感することができていた。  このことから,道徳の授業において児童自らの成長を実感させるために,OPP シートを活用する ことは有効な手立ての一つであるといえよう。  Ⅳ―4で述べたように,児童自らの成長を実感できるようにする工夫として「新学習指導要領解 説 道徳編」では,「学習を通して,はじめの段階と自分がどう変わったかが分かるような書く活動 の工夫」があげられている。これは,まさにOPP シートの構成要素である「学習前・後の単元の本 質的な問い」がねらうものであり,本実践において,「学習前・後の単元の本質的な問い」により児 童自らの成長を実感することができたといえるのではないだろうか。  OPPA では,OPP シートに教師がコメントを加えて返却する機会がある。学習の前・後における児 童の感じ方や考え方の変化を教師が認識した上で,適切なコメントを書いて返却することで,教師 と児童との心の触れ合いを深め,児童のよりよく生きる意欲を喚起することにもなるが,効果的な コメントの内容のあり方やそれにかかる時間の確保は,大きな課題である。

2 OPP シートの活用による複数時間の関連を図った授業の有効性について

 ここでは,テーマの記述と学習履歴のふり返りおよび学習後の記述の分析から,二つめの研究目 的である複数時間の関連を図った指導の位置づけが効果的になされたかどうか検討する。  (1) 学習のテーマと学習履歴のふり返りの記述内容の分析から  表6~表9に示したのは,道徳授業第1時,第2時の終了時に記入した授業のテーマ(タイトル) と第1時と第2時の授業内容を考え合わせた時の総合テーマである。図 11 ~図 14 に示したのは, 第1時の学習1と第2時の学習2をふり返った際の児童の記述内容である。  複数時間の関連を図った授業の有効性について,教師がねらいとしたそれぞれの授業テーマ(内 容項目)や,学習全体を通したテーマが適切に書かれているかどうかの検討と学習履歴のふり返り の記述内容からその位置づけが効果的になされたかどうかを分析していく。

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表6 児童1のテーマ記述内容 図 11 児童1の学習履歴のふり返りの記述内容  「す直になること,よく考える事,迷う事,誠実にすること」は,第1時間目の学習履歴に記述し た内容であり,「友達を持つこと,新友・親友・信友・心友を作る事,信頼し合う事」は,第2時間 目の学習履歴に記述した内容である。そして,「これを守れば自分も相手も幸せになれること」と付 記し,2時間の授業を関連付け,ふり返りをまとめている。この児童は,表6に示したように一連 の授業のテーマを「約束」とし(表紙に記入したテーマ),それぞれの学習のテーマも適切にとらえ 記述することができている。このことからも,それぞれの授業における内容項目を児童が認識しな がら,授業の関連を的確にとらえることができたことがわかる。 表7 児童2のテーマ記述内容 図 12 児童2の学習履歴のふり返りの記述内容  この児童は,図 12 に示したように約束を守ることの大切さと約束を守るために「信頼」を裏切ら ないように行動すること,「誠実」に行動することの2つを生活の中で実践していくことの大切さに ついて記述している。これらの記述内容や表8の全体テーマ「約束」からも学習1と学習2をしっ かり関連づけ,約束を通しての学習ととらえることができている。 表8 児童3のテーマ記述内容 図 13 児童3の学習履歴のふり返りの記述内容  この児童は,図 13 において「約束をまもるといい気持ちになれる(テーマ:誠意)」と学習1のことを, また「友達のことがわかった(テーマ:友情)」と学習2のことをまとめ,「①と②をとおしてわかっ た。」と学習の関連を示す記述をしている。全体テーマも「約束」とし,一連の学習においてひとつ のテーマを意識して学習できたことがわかる。 テーマの記述 第1時 誠 意 第2時 心の友 全 体 約 束 テーマの記述 第1時 誠 意 第2時 心 友 全 体 約 束 テーマの記述 第1時 誠 意 第2時 友 情 全 体 約 束

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表9 児童4のテーマ記述内容 図 14 児童4の学習履歴のふり返りの内容  この児童は,図 14 に示したように学習1に使用した資料「手品師」の印象が強く,学習1だけの ふり返りを記述している。しかしながら,表9の各学習時間におけるテーマや全体テーマは,しっ かり認識できており,長期にわたる授業実践であったが,第1時の手品師だけにこだわらず,各授 業のねらいやそれを関連づけた全体のねらいが児童に理解されていることがわかる。  (2) 学習後の記述内容の分析から  約束というテーマをもとに構築した複数時間の関連を図った授業の有効性について,ここでは学 習後の本質的な問いの記述に視点を当て,学習1,学習2の授業内容である内容項目が書き残され ているか検討することとする。表 10 に示したのが,学習後に書かれた本質的な問いの中に含まれて いたそれぞれの授業で指導した内容項目に関わる記述である。 表 10 学習1,学習2に関わる学習後の記述内容  表 10 からわかるように,4名の児童すべてが,学習後の本質的な問い「約束を守ろうとするときに, 大切にしたいこと」に対して,学習1と学習2において学習してきたことを記述していることがわ かる。このことは,「約束」というテーマをもとに,それぞれの授業を適切に関連付けて学習できた ことを示していると考えられる。  (3) 研究の目的2「複数時間の関連を図った授業の有効性」についての成果と課題  OPP シートを活用することにより,児童が「約束」という一連のテーマをもとに,それぞれの授 業における道徳の内容項目「誠実・明朗」「信頼・友情」を適切に認識していたことが確認できた。  また,学習履歴のふり返りからも,「これを守れば幸せになれる(児童1)」「ここでならった誠 実・信頼を生かす(児童2)」「①と②を通して(児童3)」とそれぞれの授業を関連づけた記述内容 が多かったことや学習後の記述内容からも,またOPP シートを活用することにより道徳授業におい て長期間にわたる複数時間の関連を図った指導の位置付けが効果的にできたといえるのではないだ ろうか。  本実践においては,複数の内容項目を一つのテーマのもとに授業構成をしたが,一つの主題をい くつかの資料で複数時間扱ったり,一つの主題を一つの資料で複数時間扱ったりするなどの授業構 成も今後の課題となる。これらの実践に関わっては,年間指導計画を作成する段階からの見通しが 必要となるので,教育課程編成の際に位置づけることが大切である。 テーマの記述 第1時 誠意・真心 第2時 親 友 全 体 約 束 児童 No. 学習1に関わる学習後の記述・手品師 学習2に関わる学習後の記述・友の命 児童1 誠実・話し合う・迷うこと 信頼・友達・親友 等 児童2 自分の意志・きずつけない 信頼・やりぬく 児童3 いい気持ちになれる 友達・必ず守る 児童4 大事な心・友達の夢 友達を守ろうとする気持ち

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Ⅶ おわりに

 本研究を通して,道徳授業において児童自らの成長を実感させるために,OPP シートを活用する ことは,有効な指導方法であると言えるだろう。本研究では,複数時間におけるOPP シートの活用 であったが一般的な1単位時間1主題という活用においても学習前・後に記述した内容を比較させ ることで,学習による変容を意識できるのではないかと考えられる。  「学習前の自分の考え」「学習後の自分の考え」「学習前・後に書いた文章を比較しての考え」「授 業の中で一番大切と考えたこと」「学習を通して考えたこと」と道徳におけるOPPA の構成要素は, 自分の考えが記述内容の中心となっているので,それらは「心の中」を映し出したものである。こ れらのOPPA を綴っていくことで教師と児童による手作りの「心の成長記録」を作り上げることも できる。今後も様々な資料を関連付け,OPP シートを活用しながら,道徳授業の質を高める実践に 取り組んでいきたい。

附記

 本研究は下記の分担により行われた。研究の企画と実施を中国が,OPP シートの骨子は堀が作成 した。実際のOPP シートと学習指導案は中国が作成,授業は中国他A小学校教師が TT 体制で実施 した。中国が執筆した論文を堀が加筆修正した。

謝辞

 研究を進める上で,多くの方々のご協力をいただきました。とりわけ,A小学校清水兄三校長先 生をはじめとする諸先生方には,大変お世話になりました。その熱意に心より感謝申し上げます。 お忙しい中でのご協力に心より感謝申し上げます。  本授業において板書や範読,説話で協力してくださった先生方  佐野 好美 (第5学年担任,第1時手品師の範読と説話,第2時友の命の板書担当)  渡邊 克吉 (せせらぎ学級担任,第1時手品師の板書,第2時友の命の範読と説話担当)

(註)

・文部科学省『小学校学習指導要領』文部科学省,2008 ・文部科学省『小学校学習指導要領解説 道徳編』東洋館出版,2008 ・「小学校道徳 Windows 版 CD-R 指導案事例」東京書籍,2009 ・堀 哲夫「理科における教育評価」『理科の教育』Vol.56, No.12,2007 ・堀 哲夫編著『子どもの学びを育む一枚ポートフォリオ評価:理科』日本標準,2004 ・中国 昭彦,堀 哲夫:「OPP シートを利用した総合的な学習の時間における資質・能力の育成に 関する研究- 伝統文化の継承『私たちの祇園祭を伝えよう』を事例にして-」,『教育実践学研究』 No.15,pp.1-19,2010

図 10 児童4の学習前・後を比較した記述内容  表5の学習前・後の文章を比較して,約束を守るときに友達の心についても考えられるようになっ た新たな自分に気づくことができている。図 10 の「・ ・書けなかったけど,この勉強をして・ ・ ・分かっ てきた。 」という記述からも,学習を通して自己の成長を実感していることが感じとれる内容である。  (2) 研究の目的1「自己の成長の実感」に関わる成果と課題   OPP シートを活用することにより,児童自身が学習での気づきや自己理解・自己評価を深めるこ とが確かめ

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