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来日外国人の情報経路と国家ブランド・イメージに関する一考察

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Academic year: 2021

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来日外国人の情報経路と国家ブランド・イメージに

関する一考察

著者

李 孝連

雑誌名

埼玉学園大学紀要. 経済経営学部篇

20

ページ

141-151

発行年

2020-12-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1354/00001313/

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や国家イメージを変えられるとともに、国際 関係や経済活動にも影響を及ぼす。 そのた め、世界各国の政府は自国のブランド力を高 めるため、様々な政策を展開しているのが現 状であり、日本も例外ではない。ブランド化 されていない国は、他国からの経済かつ政治 的な関心を寄せにくい(Van、2001)。  国家ブランディング(National Branding) は人々が国家の成就に注目し、その品質を信 じるようにすることである。これが、ソフト・ パ ワ ー の 本 質 的 で、 現 代 的 な 姿 で あ る (Anholt、2005)。  人は特定の国の国家ブランド・イメージに 関する情報に接すると、その情報を記憶し、 Ⅰ はじめに1)  既存の国際政治において、一国のパワーの 源泉となるのは軍事力や経済力であると観念 されてきた。ところが、近年このようなパワー 認識に変化があり、ハード・パワーだけでな く、様々な国の魅力に起因するソフト・パワー も重要なパワーの源泉ではないかという考え が 支 持 を 得 る よ う に な っ て き た( 北 野、 2014)。ソフト・パワーの重要性を認識した 各国において、パブリック・ディプロマシー2) 及び国家ブランド・イメージ構築に対する関 心は、その重要性とともに高まっている。  国家ブランド・イメージは、国の企業製品

関する一考察

A Study on Information Routes and National Brand Image of

Foreigners Visiting Japan

 

李   孝 連

LEE, Hyo Yun

 本稿は、人的交流における国家ブランド・イメージ評価の変化について、そのメカニ ズムを明らかにすることを目的とし、事例として日本を取り上げた研究の一考察である。  外国人が来日して新たに取得した情報や知識によって生じる、日本の国家ブランド・ イメージ評価の変化の程度は、国・地域によって異なる。その原因の一つとして、来日 外国人がそれぞれの母国にいた時の日本に対する情報経路に着目し、外国人の母国での 情報経路を分析した。そのうえ、情報経路と国家ブランド・イメージ評価の変化との相 関関係の分析を試みた。研究対象の来日外国人の国籍以外の条件を可能な限り揃えるよ う、分析の仕組みを設定し、日本の同地域に、同時期、同期間程度滞在している外国人 を対象に無作為で設問調査を行い、その結果を分析したものである。 キーワード : 人的交流、国際関係、国家ブランド・イメージ、情報経路

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ある外国人留学生に焦点を絞り、研究の対象 とした。その理由は、長期滞在者の場合は、 すでに日本の社会や文化、または日本的な思 考が日本慣れしていることと、短期滞在の観 光客の場合は、時系列を軸とする比較分析を 試みることが出来かねるためである。 Ⅱ 先行研究 1.人的交流と国家ブランド・イメージの位 置づけ  国家ブランド・イメージの概念を定義する ことは容易ではないが、その理由の一つは国 家とブランドという、それぞれを構成する ファクターが多すぎるからであろう。この概 念を、Joseph Nye(2004)が提唱したソフト・ パワーの概念などの先行研究を基に整理し、 理論化を試みたものが、図1である。  国家ブランドは、パブリック・ディプロマ シーの下部概念であり、パブリック・ティプ ロマシーを構成するファクターの一つである。 情報処理を行うことによって、その国家ブラ ンド・イメージに対する評価を持続、もしく は修正していく。しかし、新たに獲得した情 報や知識によって生じる、国家ブランド・イ メージの変化の程度は、外国人の国・地域に よって異なる。その原因を実証的に明らかに することが本稿の目的である。  国家ブランド・イメージは様々なファク ターの働きの融合により構築されるが、本稿 では、その中でも人的交流に焦点を合わせ、 来日外国人による日本の国家ブランド・イ メージ評価の変化の推移を中心に考察を進め ることとする。  日本を直接訪問・滞在する形での人的交流 には、大きく3つのカテゴリーが考えられ、 その一つは日本に長期滞在する永住者や就職 または研究者、それから数ヶ月から数年の中 長期滞在者である留学生、そして今や最も多 い短期滞在者の観光客に分けられる。  本稿ではこれらのなかで、中長期滞在者で 図1 ソフト・パワーにおける国家ブランドと人的交流の関係 出所:筆者作成3)

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 一方、アメリカのニューヨークに拠点を置 くブランド・コンサルティング会社が調査を 行う国別ブランド指標(Country Brand Index、 以下CBI)は、暮らし、価値観、ビジネス、 文化、観光、生産品の6つの項目の観点から 調査を行っている。この指標はアンホルト GfK国家ブランド指数に対して、政治や経済 だけではなく国の将来価値を占う先行指標と もなるイノベーションやテクノロジー、環境 分野への評価に力点をおいているところが特 徴的である5)  このCBIでも、日本は2019年の調査で1位 を示し、躍進していることが分かる。これら 2つの指標以外にも国家ブランドランキング を 計 る 指 標 は 幾 つ か あ り、Brand Finance nation brands(実施国:イギリス、日本は 2017年4位)、The Softpower 30 Ranking(実 施国:イギリス、日本は2017年6位)、そして、 Good Country Index(実施国:アメリカ、日 本は2017年21位)などが挙げられる。  これらの指標は、調査項目や調査方法など が相違し、実施国も異なるが、日本はどの指 標においても比較的に良い成績を収めている と言えよう。これらの国家ブランド指標で好 評価を収めることは、他国との取引や来訪者 の増加に加えて更なる国家ブランド・イメー ジ形成において競争力を高めることに繋がる ことにもなる。いずれにしても、上記の結果 を踏まえれば日本の国家ブランド・イメージ は世界において、どちらかというと好評であ ると判断できる。  ところが、近隣国、つまり中国や韓国から の近年の日本に対する国家ブランド・イメー ジの評価は上記のような評価とは逆に、低く 評価される傾向にある。その原因の一つとし て、近隣国の国々では日本の国家ブランド・ なお、パブリック・ディプロマシーはソフト・ パワーの下部概念である。  パブリック・ディプロマシーという用語が 使われ始めた時期については、学者によって 異なる主張があるが、韓国の外務省ホーム ページでは、冷戦の時代の1965年、米国の元 外交官で、タフツ大学(Tufts Univ.)フレッ チャー・スクール(The Fletcher School)の 学長のエドモント・ガリオン(Edmund A. Gullion)がエドワード・R・マロー・パブリッ ク・ディプロマシーセンターを設立したこと がきっかけであると記されている4)  パブリック・ディプロマシーのファクター は図1のように互いに連携されており、それ ぞれの活動は互いに影響を与えて他ファク ター間とも有機的にまたがって、相乗効果 (Synergy Effect)が得られる構造である。図 1の中の矢印は、パブリック・ディプロマシー のファクター間の関係性を表したものであり、 国家ブランド構築と人的交流の位置づけが確 認できる。 2.日本の国家ブランド・イメージの現状  アンホルト-GfK国家ブランド指数(Anholt-GfK Nation Brands Index、以下NBI)は、イ ギリスの学者Simon Anholtが考案し、2005年 から実施されている国家ブランド力を測る調 査である。この調査は、インターネットを通 じて、文化、国民性、観光、輸出、統治、移 住・投資の6つの観点についての質問への回 答を募り、各国の順位を決定するものである。 指標を測る基準である6つの項目は、Anholt (2000)が提唱した国家ブランドの構築要因 「Nation Brand Hexagon」モデル理論に基づ

いている。このNBIで日本の評価をみると、 2018年は過去最高の2位を示した。

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は、学生交流に該当する留学生の誘致と中・ 高校の修学旅行を選んだ比率が相対的に高 かったとも述べ、実際このような交流は、因 果関係を明確に説明することは難しいが、日 韓の両国民が相互に肯定的認識を持つことに 役に立つ可能性は否定できないだろうと述べ ている。  このように、人的交流による国家ブランド・ イメージの推移に関する先行研究では、人的 交流における国際関係や国家ブランド・イ メージへの見解はあくまで抽象的なものにす ぎず、結果を可視化する実証的分析は十分な されていないと言えよう。このような現状を 踏まえ、本稿では人的交流による国家ブラン ド・イメージ評価の変化の可視化を試みるこ ととしたい。 Ⅲ 分析の枠組み  来日外国人の日本に対する国家ブランド・ イメージの変化の程度が異なる理由を探るに あたっては、様々な仮説が考えられるが、本 稿では来日外国人の日本に対する情報経路に 焦点を合わせて分析を進めることとする。  調査を行うことにおいて、データのバイア スを最小限にするため、来日外国人の国籍以 外の条件(居住地域、滞在期間、滞在時期、 年齢層など)を可能な限り揃えて調査対象と した。なお、日本の国家ブランド・イメージ 評価の変化を従属変数に、外国人が母国にい た時の日本に関する情報経路を独立変数と設 定し、下記のように設問調査を行った。 1.変数の測定  研究対象は、上述の条件を踏まえ、東京都 所在の日本語学校に在籍している外国人を対 象に、2019年2月初旬から3月初旬にかけて イメージを評価する軸に歴史問題や領土問題 が加わることが考えられ、様々な認識調査で 上記と相違する結果がみられることは否定で きない。そのため、国家ブランド・イメージ の政策を立てる際は、その政策の最終目標に 対して方針の一貫性は維持しながらも、各国・ 地域の現状や特質などを明確に把握し、画一 的ではない政策を体系的に企て、実行する必 要があると考える。 3.人的交流と国家ブランド・イメージ研究 の現状  人的交流による国家ブランド・イメージの 推移に関する分析を試みた多くの先行研究で は、以下のように、人的交流が国際関係や国 家ブランド・イメージの向上に肯定的な影響 をもたらすだろうと論じている。  人的交流のなかでも若者の交流を強調した 李(2012)は、観光経験や観光による交流は、 両国のイメージアップや好感度を高め、両国 の関係改善に繋がる力を持っている、特に将 来の日韓関係に大きな役割を果たしていく青 少年、とりわけ大学生の観光による交流活動 は大変重要であるとし、学生による交流は効 果をあげつつあるが課題もあると述べている。 この先行研究の場合、学生の交流は重要であ り効果もあげつつあると述べられてはいるが、 その人的交流による具体的且つ実証的変化や どのような効果が得られたかについては、提 示されていない。  一方、ジョン(2013)は、韓日国民相互認 識調査で、日韓の民間交流の活性化の分野に おいて、日韓の両国民ともに、文化部門の民 間交流を一番多く選んでおり、言論メディア 間の交流と、民間企業間の人材交流を選んだ ケースが多かったと述べている。また、日本

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いて、観測値が10未満であるため、他の国・ 地域との比較分析に相応しくないと判断した 中央アジア、アフリカ、オセアニア、中東を 合わせた0.6%のデータは本稿の分析対象か ら除外した。また、東アジア地域においては、 韓国と中国は日本の近隣国であり、地政学的 な意味も持っているので国別の比較分析が必 要であると判断し、東アジアを韓国と中国、 そしてこの2つの国以外の東アジアと区分し、 合わせて8つの国・地域の統計的基本属性を もとめた。なお、定量分析の仕組み上、観測 値の数が十分ではないとその結果にノイズが 生じるため、北米、中南米、東・西ヨーロッ パ、ロシア諸国、この5つの地域を「その他 の国・地域」とグールピングし、研究を進め ることとした。 2.統計的基本属性(n=656)  本稿の調査対象の外国人全体の基本的属性 は、表1の通りである。  データの総観測値はn=656であり、その なかの東アジア、東南アジア、北米、中南米、 東・西ヨーロッパ、そしてロシア諸国の各国・ 地域に該当する651の観測値で分析を行った7)  表1をみると、東南アジア(1名)、北米(2 名)、中南米(1名)に性別を回答しなかっ た観測値があったため、本来の観測値と若干 の差が生じているが、これら4名の観測値に 対しては、性別を利用した分析では除外し、 それ以外の分析では利用することとした。  調査対象の外国人の年齢は、18歳から42歳 までの平均年齢24.9歳で、年齢の標準偏差は 4.4である。そして、東南アジア人の観測平 均年齢は22.9歳で比較的に低く、東・西ヨー ロッパ人の観測平均年齢は26.9歳で比較的に 高い傾向にある。男女の比率は、韓国と中国 調査を実施した。  設問調査は、当該校の全面的な協力を得て 1,000人余りの学生に無作為で設問票を配布 し、調査の趣旨を文書にて丁寧に説明して協 力してもらえる者のみ回収箱に投函する形で 回収を行った。その結果、42カ国の725件の クロスセクションデータが得られた。回収し たデータの属性(国籍)には偏りが生じたが、 これは母集団である来日する外国人自体の偏 りと同様の傾向を示しており、本測定データ は母集団を概ね代表しているといえよう。こ の詳細については4項で詳しく述べることと す る。 ま た、 観 測 値 の 分 析 は 統 計 ソ フ ト (STATA 15ver.)を用いて行った。  それから、日本語学習期間が短く日本語の 理解力が充分ではない外国人のために6つの 言語(英語、韓国語、中国語(簡体字、繁体 字)、モンゴル語、ベトナム語)の翻訳版も 付け加えた設問票を用いて行った。設問調査 はリーカットスケール式(5尺度)とラジオ ボタン式の選択式、及び記述式を採択した質 問で構成した。  18歳から42歳までの外国人を対象に725件 のアンケートを回収したが、無効の69件6) 除いた656件の有効な回答を分析に用いた。  調査対象の外国人の日本滞在期間は、6ヶ 月以下が26.8%、6ヶ月~1年以下は20%、1 年~1年6ヶ月は20.4%、1年6ヶ月~2年 以下は20.1%で、2年以上は2.4%である。  国籍は42 ヶ国で、その割合は東アジア 55.3%、東南アジア29.1%、中央アジア0.2%、 北米2.9%、中南米2.9%、東・西ヨーロッパ 7.5%、ロシア諸国2%、アフリカ0.3%、そ してオセアニアと中東がそれぞれ0.2%であ る。  ここで、回収した各国・地域のデータにお

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いたが、現在はCOVID-19の影響により今後 の訪日外国人の数が予測出来かねる状況であ る。  2018年の訪日外国人を出身国・地域別にみ ると、中国が27%でもっとも多く、それに続 くのが韓国で24%、それから台湾15%、香港 7%など、同期間に日本を訪問した外国人 31,191,856人のなかで、実に24,184,765人(77.5%) がアジアからの訪問客であった。年によって 若干の変動はあるが、国籍の構成の傾向につ いてはそれほど変わりはない。  一方、今回の調査対象である外国人留学生 の推移をみると、日本の外国人留学生数も毎 以外の東アジアの国・地域と東南アジアの場 合、男性より女性の割合が高い一方、それ以 外の国・地域では、男性の割合が過半数を超 えている。 3.日本の人的交流の現状  近年の日本の訪日外国人の現状は、2015年 に2千万人を突破して以来、引き続き右肩上 がりの傾向を見せている。本来であれば、 2020年までに4千万人受け入れという日本政 府の目標も、2020年の東京オリンピック・パ ラリンピックを追い風とし、順調にその目標 に到達できる可能性も十分あると予想されて 表1 統計的基本属性(n=656)

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欧州からが7.5%、そして、北米・中南米か らがそれぞれ2.9%であった。この偏りは、 実際来日する外国人全体の傾向においても存 在するものであり、そうした観点から「全体 を反映できる適切な一部のサンプル」として、 回収されたデータをそのまま用いて分析を行 うこととした。 Ⅳ 事例:日本に対する情報経路と日本 の国家ブランド・イメージの変化  3節で説明した分析の枠組みを基に、本節 では、人的交流による日本の国家ブランド・ イメージの変化の検証において、来日してい る外国人の日本に対する情報経路について分 析を試みる。本節の構成は、研究対象全体の 国・地域の情報経路の結果を分析し、それに 対する日本の国家ブランド・イメージ評価の 変化との関係を明らかにする。そして、その 結果を踏まえ、各国・地域別の結果の比較分 析を行う。  図2は、調査対象の外国人全体に、母国に いた時の日本に対する情報をどこから得たの 年増加の傾向にあり、2018年は298,980名の 外国人が留学を目的として日本に滞在してい る。この2018年の外国人留学生を出身国別に みると、留学生全体の38.4%(114,950名)が 中国からの留学生で、その次がベトナムで 24.4%(72,354名)、3位はネパールで8.1% (24,331名)を占めていた。これを、地域別 にみると、アジア地域からの外国人留学生が 全体の93%(279,250名)を占めている。こ のように、現状は、全体の訪日外国人のみな らず、外国人留学生の出身国・地域もアジア に偏っている。国家ブランド・イメージ政策 及び人的交流に関する政策を行う際、このよ うな国・地域の現状を考慮しつつ、国・地域 にマッチした政策を行う必要があることは言 うまでもないであろう。  調査対象のサンプルに関するバイアスを最 小限に抑えるため、本稿の設問調査では、無 作為方式で抽出を行ったことはすでに述べた が、そのため、観測値の出身国籍の数に差が 生じた。その詳細は、東アジアからの外国人 留学生が55.3%、東南アジアからが29.1%、 図2 日本に対する情報経路(全体)

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日本以外のテレビドラマ情報番組、映像作品」 が共同の3位を示した。  「インターネット・SNS」や「日本のアニメ」、 そして「日本のテレビドラマ・情報番組、映 画作品」を通して得た日本に関する情報は、 来日後の日本の国家ブランド・イメージ評価 に肯定的変化に有意な影響を与えると言えよ う。しかし、「母国の有識者が行っている議論」、 「日本人との直接の会話」、そして「母国のテ レビドラマ・情報番組、映画作品」と「母国・ 日本以外のテレビドラマ情報番組、映像作品」 の項目を選んだ外国人の方の来日後の日本の 国家ブランド・イメージ評価の肯定的変化率 がさらに高かった。  この結果を踏まえ、各国・地域別の分析を 行った結果、調査対象全体の結果と同様、母 国にいた時の日本に対する情報経路の上位の 項目と、実際来日した後の日本の国家ブラン ド・イメージの肯定的変化率の上位の項目が 一致しないことが確認できた。この結果を簡 略にまとめたのが表2である。 かという情報経路を調査した結果である。表 を見ると、情報経路として圧倒的に多いのが 「インターネット、SNS」であり、その次は「日 本のアニメ」、そして「日本のテレビドラマ・ 情報番組、映画作品」の順位である。  今日の国際社会のグローバル化やインター ネット環境や産業の発達により、「インター ネット、SNS」を媒介として、他国の情報に 接すことが多く、また、日本の場合は優れた アニメ産業が日本を世界に知らせる媒介とし ての役割を果たしているといえよう。  この結果を基に、これらの経路と来日後の 日本の国家ブランド・イメージ変化の推移を 合わせて分析した結果が、図3である。  図3を見ると、外国人が母国にいた時の日 本に対する情報経路において、来日後の日本 の国家ブランド・イメージ評価に肯定的変化 の割合が一番高い項目は、「母国の有識者が 行っている議論」であった。その次を占めた のが「日本人との直接の会話」で、「母国のテ レビドラマ・情報番組、映画作品」と「母国・ 図3 日本に対する情報経路と日本の国家ブランド・イメージ変化(全体)

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れらの情報経路を利用して行ってきた国家ブ ランド・イメージ増進の側面からのパブリッ ク・ディプロマシーが包括的に機能していな い結果であると解釈することも可能である。  一方、母国にいた時は情報源としてそれほ ど機能しなかった「母国の有識者が行ってい る議論」や「日本人との直接の会話」、「母国 のテレビドラマ・情報番組、映画作品」そし て、「母国・日本以外のニュースメディア」の 項目が、結果的には相対的に日本の国家ブラ ンド・イメージの肯定的な変化を高める要素 であることが明らかになった。  そして、来日後の日本の国家ブランド・イ メージの評価に肯定的な変化の影響を与えた 項目の順位として、殆どの国・地域から「日 本人との直接の会話」の項目が上位を示して いる。この結果は、人的交流の効果が窺える 一事例であると言えよう。  表2をみると、各国・地域の外国人が母国 にいた時の日本に対する情報経路の主な項目 は、「インターネット・SNS」や「日本のアニ メ」、「母国や日本のテレビドラマ・情報番組、 映画作品」などである。しかし、実際来日し て日本の国家ブランド・イメージが肯定的に 変化したと回答した人の日本に対する情報経 路を分析した結果、上位を示した項目は各国・ 地域によって異なった。そして、これらの項 目は母国にいた時の日本に対する情報経路の 上位を示した項目とも明らかに違うという共 通点も確認できた。  これは、「インターネット、SNS」や「日本 のアニメ」、「母国や日本のテレビドラマ・情 報番組、映画作品」などを通じて得た情報に より形成された日本へのイメージや期待に対 し、実際の来日で得られた情報が、相対的に 期待に満たなかったと分析できる。また、こ 表2 日本に対する情報経路と国家ブランド・イメージ変化への影響項目の順位

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的な利益と目的の達成に資するべく、自国のプレ センスを高め、イメージを向上させ、自国につい ての理解を深めるよう、また、自国の重視する価 値の普及を進めるよう、海外の個人及び組織と関 係を構築し、対話を持ち、交流するなどの形で関 わったり、多様なメディアを通して情報を発信し たりする活動であると定義されている。(北野充、 2014)27頁 3)図1は、北野充(2014)37頁の理論を参考に、 筆者が作成したものである。 4) 韓 国 外 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ(http://www.mofa. go.kr/www/wpge/m_22713/contents.do)の内容を 基に筆者が訳したものである。 5)「日本、国別ブランドランキングで世界トップ に」日本経済新聞(電子版)、2014年11月27日を 引用。 6)すべての質問に明らかに同じ番号を選択したも のや、回答欄を空欄のままにしたものなど、設問 の意図が把握できなかったと考えられる回答に対 しては、分析データとして不適切と判断、無効と して排除した。 7)分析対象の各国・地域の構成国は東アジアの場 合、韓国、中国、香港、マカオ、台湾、モンゴル の6カ国の国・地域で、東南アジアはベトナム、 ネパール、シンガポール、インドネシア、フィリ ピン、ミァンマ-、タイ、マレーシアの8カ国、 そして北米の構成はアメリカとカナダの2カ国で、 中南米はキューバ、チリ、アルゼンチン、コロン ビア、ペルー、ブラジル、コスタリカ、メキシコ を合わせて8カ国、東・西ヨーロッパの構成は、 イギリス、イタリア、フランス、スペイン、スイ ス、ベルギー、ドイツ、ノルウェー、スウェーデ ン、ギリシャ、チェコの11カ国である。最後に、 ロシア諸国の構成はロシアとウクライナ、ベラ ルーシの3カ国である。 参考文献

・Anholt, Simon., (2005), Brand New Justice, Oxford UK: Elsevier Butterowrth-Heinemann, pp.2-13

Ⅴ おわりに  本稿は、新たに獲得した情報や知識によっ て生じる、国家ブランド・イメージ評価の変 化の程度が、外国人の国・地域によって異な る原因として、外国人の日本に対する情報経 路に着目し、情報経路と国家ブランド・イメー ジの変化の相関関係の分析を試みた。  分析の結果、情報経路のどの項目において も、来日後の日本の国家ブランド・イメージ の「肯定的変化」は50%を超えており、人的 交流の効果が実証され、確認できた。  一方、研究対象全体の母国にいた時の日本 に対する情報経路として、「インターネット、 SNS」、「日本のアニメ」、そして「日本のテレ ビドラマ・情報番組、映画作品」が上位を示 した。しかし、これらの項目を選んだ外国人 より、「母国の有識者が行っている議論」、「日 本人との直接の会話」そして、「母国のテレビ ドラマ・情報番組、映画作品」と「母国・日 本以外のテレビドラマ情報番組、映像作品」 の項目を選んだ外国人の方が来日後の日本の 国家ブランド・イメージ評価の肯定的変化率 が相対的に高かったことは興味深い。なお、 分析で明らかになった各国・地域の相違する 結果については、パブリック・ディプロマシー の観点から政策の立案の際、考慮する必要が あると考える。 1)本稿は、2019年7月に一橋大学大学院法学研究 科に提出した博士論文『国際関係における国家ブ ランド・イメージ形成のメカニズム―日本の人的 交流の事例を中心に―』の一部に加筆・修正した ものである。 2)パブリック・ディプロマシーとは、自国の対外

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・Joseph, Nye (2004), Soft Power: The Means to

Success in World Politics, PublicAffairs

・Van Ham, P., (2001), “The rise of the brand state: T h e p o s t m o d e r n p o l i t i c s o f i m a g e a n d reputation,” Foreign Affairs, 80, 5, pp.2-6 ・キース・ディニー編(2014)『国家ブランディン グ-その概念・論点・実践』、中央大学出版部 ・北野充(2014)「パブリック・ディプロマシーと は何か」 金子将史・北野充編『パブリック・ディ プロマシー戦略―イメージを競う国家間ゲーム にいかに勝利するか』PHP研究所、16-53頁 ・ (2013)「EAI・言論NPO 2013 」『EAI 』 131 , 19 (ジョン・ウォンチル(2013) 「EAI・言論NPO共同韓日国民相互認識調査の 主要結果」『EAI世論ブリーフィング』第131号、 19頁) ・李良姫(2012)「国際交流における観光の役割― 日韓の観光動向を中心に―」『東亜大学紀要第 15号』、64頁 ・韓国外務省ホームページ(http://www.mofa.go.kr/ www/wpge/m_22713/contents.do)、2020年 8 月 15日閲覧 ・日本学生支援機構ホームページ(https://www. jasso.go.jp/)、2018年5月28日閲覧 ・『日本経済新聞電子版』「日本、国別ブランドラン キングで世界トップに」、2014年11月27日付、 2020年7月23日閲覧

参照

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