Title
[総説]遺伝子組換え技術を用いたバイオ産業の可能性
Author(s)
長嶺, 勝; 新川, 武; 橋本, 尚子; 新垣, 榮; 浦崎, 直也
Citation
南方資源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical
resources technologists, 21(1): 9-15
Issue Date
2005-10-01
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/14209
遺伝子組換え技術を用いたバイオ産業の可能性
長嶺勝
1、新川武
1、橋本尚子
2、新垣
柴 2、浦崎直也
3*琉球大学遺伝子実験セ ンター '.㈱ 先端 医学生物科学研究所2, 沖縄県農業試験場3
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Masaru NAGAMINEl,TakeshiARAKAWAl,Naoko HASIMOTO 2 SakaeARAKAXI2,Naoya URASAKI3
JCenterofMolecularBiosciencesUniuersilyoftheRyuhyus,
ZAduancedMedicalBiologicalScienceInstituteCo.,Ltd. 30hinawaPrefecturalExperimentStation
Keywords:植 物 ワクチ ン (plant-based vaccines),食べ る ワ クチ ン (ediblevaccines),コ レラ毒 素B鎖
(choleratoxinB chain), トタ ンス ジェニ ック サ トウキ ビ (transgenicsugarcane),組み 換 え植物 (recombinantplant),DNAワクチ ン (DNA vaccines),プ ラス ミ ドDNA (plasmid DNA)
はじめに
遺伝子組換 え技術 によ り他種生物 由来 の蛋 白質 を 大量生産す ることが可能 とな った。第二世代遺伝子 転換作物 の開発は、生理 ・免疫活性作用 を持つ蛋 白 質の機 能その ものに着 目 してお り、 生活習慣病予防 効果、感染症予防効果が期待できる、一般消費者が 求めるよ うな機能 を持つ作物 の開発が第一の 目的で あ る。 私 た ちは以 前、 コ レラ毒 素B鎖 (CTB)遺 伝子 を発現 させた トランス ジェニ ック植物 による食 べ るワクチ ンの可能性 を示 したが、現在 は、腸管免 疫組織 へ の運搬体 と してのCTBの果 たす役割 に注 目している。 つ ま り、 トランス ジェニ ック植物で発 現 す るCTBと病原 体 由来 蛋 白質 の融合 体 はCTB の性質 を利用 して腸管粘膜 リンパ組織 に効 率良 く到 達 し、動物個体 に病原体蛋 白質 に対す る高 い免疫応 答 を誘導す る ことが期待 され る。 ●沖縄県 西原町千原1番地 もうひ とつの第二世代遺伝子転換作物 として開発 しているのは、サ トウキ ビである。 トランス ジェニ ッ クサ トウキ ビが持つ優位性 として、栄養体 つ ま り茎 を植 え付 けて栽培す るので、花粉 の飛散 による自然 生態 系に影響 を与える とい うバイオハザー ドの危険 性 を回避す る ことができる点で安全対策上優れてい る。私 たちは この点 に着 目 し、サ トウキ ビへの有用 遺伝子 を導入す る技術 を開発 し、 トランス ジェニ ッ ク植物 として遺伝子組み換えサ トウキ ビを作出 した。 さ らに私 た ちは、遺伝子 組換 え技術 を用 いたバイ オ産業 として、遺伝子治療やDNAワクチ ンな ど、 医薬 品 と して使用 され る高純度 なプ ラス ミ ドDNA を大量 に作成す る製造法 を開発 し、 生産す るシステ ム を構築 して いる。 この方法 による医薬品 としての プ ラス ミ ドDNAを生産 で きる施設 を先端医学生物 科学研究所 にお いて、環境及び装置、運用手法 を含 めて整備 を行 って いる。 このよ うな新産業 と しての バイオ産業 は、高付加価値 の製品 を生産でき、輸送にコス トがかかるハ ンデ ィキ ャップがないので、沖 縄県の離島 としての不利な条件 をク リアで き、容易 に他のアジア諸国 にも奪われ ることがない産業 とし て期待できる。
遺伝子組換え生物 とその利用
近年の遺伝子組換 え技術 の発達 によ り様 々な生物 か らクローニ ング した遺伝子 を大腸菌や酵母菌な ど の微生物や昆虫由来 の細胞 に組み込み、生物種 の壁 を超 えて他種生物 由来の蛋 白質 を大量生産す ること が可能 となった。それ によ り、本来の遺伝子 を有す る生物か らの蛋 白質精製 に頼 らざるを得ない状況か ら脱 し、低 コス トで不純物の少ない組換え蛋 白質 を 作 り出 し、その分子構造や機能解析 を通 じて工業や 医学分野で応用できる生産技術 を確立 した。例えば、 今 日の分子生物学の研究で用 い られている酵素類の ほとん どは、 このよ うな組換 え生物 を用 いて生産 さ れた ものであ り、組換 え技術が今 日までのバイオテ クノロジーの基礎 を築 き上げてきた ともいえるであ ろう。 しか し最近では、単細胞生物のみな らず高等 多細胞生物 も組換え蛋 白質のバイオ リアクター とし て有用であることが示され始めている。例えば、牛、 豚、 山羊等の家畜動物 に外来遺伝子 を導入す ること によ り トランスジェニ ック動物 を作 り出 し、その血 液や母乳、尿な どに組換え蛋 白質が分泌 され るよう 工夫 した 「molecularfarming」 の手法は、様 々な 組換え蛋 白質の発現、精製 を可能 に した。 このよ う な動物バイオ リアクターの出現は、植物 を用 いて も 同様な ことが可能であることを暗示 している。現 に、 タバ コやイネ、 ジャガイモな どの作物 に様 々な遺伝 子 を導入 し、機能性蛋 白質や機能性物質 の生産 を目 指すplantmolecularfarming(植物 工場) の研 究は、世界中の多 くの研究者 によって進め られてい る。第一世代および第二世代遺伝子転換作物
米国を中心 に して急速 に開発か ら商品化 まで進め られてきた組換え作物は 「第一世代遺伝子転換作物」 とよばれ,機能性蛋 白質その ものの有用性 に着 目し た 「第二世代」 とは、その目的が異なるといえるで あろう。第一世代の作物の場合、機能性蛋 白質 の有 用性よ りも、む しろ、導入遺伝子 によって作物の獲 得す る新 しい性質 に着 目している。例 えば、商品名 南方資源利用技術研究会誌 「フレーバ-セーバー」 で知 られ る 日持 ちのよい ト マ トは、実が熟す るのを遅 らせ るために、ポ リガ ラ クチ ュロナ-ゼ遺伝子のアンチセ ンス鎖が導入され ている。その他 にも、殺虫性蛋 白質遺伝子の導入 に よる害虫に強いジャガイモや、グ リホサー ト耐性遺 伝子導入 による除草剤 に強いダイズの開発な どがあ る。 このような第-世代 に属する作物の開発は 「増 産」 を目的 としてお り、農薬や害虫、 ウイルスに対 す る抵抗性を高める性質を導入遺伝子 によ り付加 し、 低農薬で高生産性 を期待す ることが可能 となる。 これ に対 し、第二世代 に属す る作物は、生理 ・免 疫活性作用 を持つ蛋 白質の機能そのものに着 目して お り、先進国にお いては生活習慣病予防効果, さら に発展途上国における感染症予防効果が期待できる。 さらに、 このような機能性蛋 白質を産生する作物は、 人間に対 してだけでな く家畜動物 に対 して も同様な 効果が期待でき、畜産や医学分野への貢献が期待さ れている。第二世代遺伝子転換作物は、第一世代の それ と比較 して、一般消費者が求めるよ うな機能 を 持つ作物の開発が第-の 目的である。コレラ毒素
B
鎖を利用 した 「
食べるワクチ
ン」開発
私たちは、そのひ とつが ワクチ ン開発であると考 えているO農作物 によって産生され るワクチ ンは、 「植物 ワクチン (plant-basedvaccines)」 とよばれ、 植物 の可食部位 にワクチ ンを発現 させ、それ を直接 食べ る ことによ って免疫効果 を期待す る ものは、 「食べるワクチ ン (ediblevaccines)」 とよばれ る。 私たちは以前、組み換 え植物 によるコレラ毒素B鎖 (CTB)遺伝子の発現系を開発 し、 トランスジェニ ッ ク植物 による食べるワクチ ンの可能性 を示 したが、 現在 は、抗 コ レラ毒素 ワクチ ンとしてのCTBとい うよ りもむ しろ、腸管免疫組織への運搬体 としての CTBの果 たす役割 に注 目 して研 究 を進 めている。 CTB蛋 白そ の ものは経 口摂取 して も毒性 はな く、 粘 膜細胞 表面 の レセ プ ター (GM1-ganglioside)に 高い親和性 を有す るため、粘膜免疫組織 と親和性の 低 い蛋 白質抗原 をCTBとの融合蛋 白として植物 に 発現 させれば、 ワクチ ン抗原 の免疫原性 を高 める ことが可能 となる。つ ま り、 トランス ジェニ ック植 物で発現す るCTBと病原体 由来蛋 白質 の融合体 は CTBの性質 を利用 して腸管粘膜 リンパ組織 に効 率- 1
0-良 く到達 し、動物個体 に病原体蛋 白質 に対す る高い 免疫応答 を誘導す る ことが期待 され る。
トランスジェニ ックサ トウキ ビの開発
もうひ とつの第二世代遺伝子転換作物 として開発 しているのは、医薬品な どの有用蛋 白質 を、組換 え 植物で生産す るというものである。治療用抗体や ア ルブミンな ど血液や動物の組織な どを利用 して製造 されている蛋 白質性の医薬品は、エイズウイルスやBS
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な どの感染 の危 険性が問題 にな って いる。 こ れ らを、植物で生産す る ことによ り、安全で低 コス トによる安定な原料供給が可能 となる ことが期待 さ れ る。沖縄県 にお いて優位性がある植物 としてサ ト ウキ ビに着 目し、 トランスジェニ ックサ トウキ ビを 作製 し、蛋 白生産 の可能性 を検討 している。サ トウ キ ビは栄養体つ ま り茎 を植え付 けて栽培す るので、 花粉 の飛散 による自然生態系に影響 を与えるという バイオハザー ドの危険性 を回避す ることができる点 で安全対策上優れていると考 え られ る。 さ らに、サ トウキ ビを利用す る上での利点 として、成長が早 く 一年 を通 して栽培ができ、生産性が高いことと、沖 縄県でサ トウキ ビに関 して育種、栽培、収穫技術 の システム化が確立 していることがあげ られる。現在、 蛋 白質 を生産す るという目的に適応 した品種 の選抜 について沖縄県農業試験場 を中心 に共同研究 を行 っ ている。サ トウキビに有用遺伝子 を導入する技術は、 その遺伝子 を組み込んだアグロバ クテ リア という微 生物 を利用する方法 を用 いている。つま りサ トウキ ビ植物体 の生長点 (図-1
,
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」二) か ら誘導 したカル ス細胞 (図- 1,a.下) へ有用遺伝子 を トランス フェ クション法 によ り導入す る。つぎに、遺伝子導入 さ れたカルス細胞 を増殖 させ、有用遺伝子が発現 して いる細胞 を、抗 生物質耐性能 を活用 して選択 ( 図-1,b.) してい く。 これ らのカルス細胞株 を、増殖再 分化 させて植物体へ と再生させ る (図-1,C,d,). こ のようにして有用遺伝子が発現 している トランスジェ ニ ック植物 としての遺伝子組み換えサ トウキ ビを作 出す る (図-1,e,∫,)。 ここまでの操作は、物理的封 じ込め施設の中で植物 を取 り扱 う。具体的には安全 キ ャビネ ッ ト中で操作 し、 シャー レやプ ラスチ ック 容器の中でカルス細胞を増殖させ、分化誘導後はファ イ トトロンという人工気象室環境下で無菌的に栽培 す る。現在、 この段階 までの開発が、琉球大学遺伝 子実験セ ンター、沖縄県農業試験場バイテク室、先 端医学生物科学研究所 の産学官共同研究 (平成1
6
年 度、1
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年度)で進め られて いる。遺伝子組換え植物の安全性試験 と開発 にお
ける課題
このよ うに作 出された遺伝子組み換え植物は、す ぐには一般 の畑で栽培す ることはできない。遺伝子 組み換 え植物の、バイオハザー ドに関す る安全性試 験 を行 い、認可承認 を受 けた後 に栽培す ることが可 能 となる。安全性試験 はそれぞれ組み換 えた植物種 や組み換 えた遺伝子 によって個別 に実施 され るが, 共通 した試験項 目は以下のよ うなプロセスで行われ る。 まず、遺伝子組換 え生物等の使用等 の規制 によ る生物の多様性の確保 に関する法律 (平成十五年法 律代九十七号)および、遺伝子組換え生物等の使用 等 の規制 による生物の多様性 の確保 に関す る法律第 三条の規定 に基づ く基本的事項 (財務省、文部科学 省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省、 告示第一号) に基づいて、実験室 と閉鎖系温室下で 栽培 された組み換え植物 の特性や非組み換 え植物 と の性質 の比較な ど、表現形の特徴や、植物生理学的 性質な どを調査 し、それ らが 自然生態系に与える影 響 について評価す る。次 に遺伝子組替え生物等の第 -種使用等 による生物多様性影響評価実施要領 (財 務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済 産業省、環境省、告示第二号)及び第1
種使用規程 承認組替 え作物栽培実験指針 (農林水産省指針) に 基づき、隔離 圃場での栽培 において、他 の生物への 影響や雑草性、近縁種 との交雑性な ど環境安全性の 評価 を行 う。一般 の露地栽培 に近 い環境だが植物体 が圃場外 に搬 出され るよ うな ことがな く、大雨な ど で流出されないよ うな囲いな どの対策 を施 した、管 理できる条件下で植物体 を栽培 し、 このような環境 下でさらにバイオハザー ド上の安全性の試験 を行 う。 ここまでの安全性試験は国が管理す る試験場な ど、 法律的 に決め られた条件 を備 えた整備 された施設で 行われ る ことになる。 また、遺伝子組み換 え体 を家 畜の飼料 に利用す る場合は、飼料 としての栄養成分 の比較や導入蛋 白質 の安全性 を評価す る。 この段階 で、安全性が確認 された ものについては、一般圃場 での商業栽培や生産 された農作物の輸入が認可 され る。 さ らにその組み換 え体 による生産物が、食品を目的 とする場合は、厚生労働省において食品衛生法 に基づ く指針によ り食品 としての安全性の評価 を受 けなければな らない。すなわち、食品 としての栄養 成分の比較や導入蛋 白質のアレルギー誘発性、毒性 試験な どの項 目についての安全性 を細か く評価する
a.
生長点か ら誘導 したカルスC.
ハイグロマイシン耐性カルスからのシュート形式e.
遺伝子組み換え植物体 南方資源利用技術研究会誌 ことになる。 上に述べた一般的な開発のほかに、遺伝子組み換 え体固有の開発に向けて行 うべき ことがある。例え ば、治療用抗体蛋 白、アルブミン蛋白、コラーゲン 蛋 白な どの遺伝子が組み換え植物体で効率よく発現 b.ハイグロマイシンによる選抜 d.遺伝子導入細胞か らの再生 千.遺伝子組み換え体の馴化、栽培 図- 1.遺伝子組み換えサ トウキ ビの作出- 1
2-し、その有用遺伝子か ら発現 した有用蛋 白質が、医 薬品 として有効な生理活性 を持ち、産業 としての生 産性が達成できるのかな どの課題 は多 い。た とえば 以下の点が挙げ られ る。 1,有用外来蛋 白質が植物 体の細胞、組織の中で安定的に存在 しうるか、 2, 植物体 の どの組織、部位で効率よ く発現、蓄積 して いるのか、 3,植物体 の適切な栽培法はどうか、4, 収穫はいつ頃、 どのように行われ るか、 5,植物体 か らの蛋 白の粗抽 出法の確立、 6,蛋 白の精製法の 確立、 7,工業的生産技術、設備の開発、医薬品 と しての精製技術 の確立、 8、医薬品 としての安全性 評価、臨床試験、な どである。そのよ うな気が遠 く なるよ うな研究開発は、数年間で達成す るのは困難 で、少な くとも
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0
数年はかかると思われる。 しか も, 多 くの専門的な機関や企業が関与す る必要がある こ とは当然であろう。 しか しこの技術開発が達成 され た際に想定 される、産業 としての可能性は、サ トウ キビ生産 にず っと関わ ってきた沖縄県 にとって非常 に大きいものであることは明 らかである。遺伝子治療 ・DNA ワクチ ン治療のための
プラスミ ドDNA大量生産システムの開発
さ らに私 たちは、遺伝子組換 え技術 を用 いたバイ オ産業 として、遺伝子治療やDNA ワクチ ンな ど、 医薬品 として使用 され る高純度なプ ラス ミ ドDNA を大量に作成す る製造法 を開発 し、生産す るシステ ムを構築 している。プ ラス ミ ドとは、大腸菌や枯草 菌などの細胞質 中にあ り、 自律 して増殖できる二本 鎖環状DNA で、細胞核 としての染色体 DNA とは 区別 され る。そのプ ラス ミ ドDNA に試験管 の中で 操作す る、 いわゆる組み換 えDNA技術 を用 いて、 インス リン、成長因子、イ ンター フェロンな どの特 殊な物質 を作 る遺伝子DNA をつなぎあわせ、その プラス ミ ドDNA を、大腸菌や枯草菌 に導入 して、 その菌を培養す ると、その菌がイ ンス リンや成長因 子やイ ンター フェロンな どの 目的 とす る物質 を作 る ようにな る。 この組み換 えDNA技術 は、 医療 の分 野では、 このプ ラス ミ ドDNA に、 ヒ トや、動物 に 導入 したい遺伝子DNA をつなぎ、 ヒ トや動物 の体 の細胞 に導入す る とい う、 いわ ゆ る遺伝子治療や DNA ワクチ ン治療 に用 い られ る。 遺伝子治療 とは既存の治療方法では有効性が期待 できない疾患 に対 して、遺伝子 自身 もしくは遺伝子 を導入 した細胞 を投与す ることで症状の改善や治癒 を目指す治療法である。遺伝子治療では遺伝子 を細 胞 に導入す る手段 としてベクター と呼ばれ る遺伝子 の運び役 に治療 目的の遺伝子 を組み込んで使用する。 そのベクター として、 アデ ノウイルスや レ トロウイ ルスが用 い られてきたがそれ らよ りも、安全性 の優 れたベクター として最近プ ラス ミ ドDNA ベクター が注 目されている。 DNA ワクチ ン治療は、遺伝子治療 というよ り、 核酸医薬 と表現 され る。 つ ま りDNA を医薬 として 投与す るという意味で、よ り安全である方法 と考え られている。 生きた弱毒病原 ウ イルスな どの生 ワク チ ンよ りも安全に、そ して不活化 ワクチ ンよ りも強 力に免疫誘導で きるもの として考案 された新 しい免 疫法 として用 い られ る。その原理 として,病原体の 蛋 白質 の一部 をコー ドす る遺伝子DNA をプ ラス ミ ドDNA につないで、直接体 内に接種す ることによ り細胞内で病原体蛋 白質の一部 を発現 させ る。 この 蛋 白は病原体 由来ではあるが、一部であるために、 病原性はな く、 しか し免疫 を誘導できる抗原決定基 としての機能 を持 っているので、病原蛋 白質 に対す る免疫ができるというメカニズムである。 私たちは この遺伝子治療やDNA ワクチ ン治療 に 用 い られ るプ ラス ミ ドDNA を、大腸菌 を大量 に培 養 し、それか ら高純度 に精製す る新 しい技術 を開発 した。現在、我が国では、遺伝子治療やDNA ワク チ ン治療 に医薬品 として使用できる高純度なプ ラス ミ ドDNA を大量 に生産精製できる工業的生産 シス テムは構築 されてお らず 、 研 究機 関がプ ラス ミ ド DNA を用 いて遺伝子治療な どを臨床治験す る際 も、 その供給 を海外 に依存せざるを得な くなっている。 私たちが開発 しているシステムは、国内では じめて、 遺伝子 治療 な どの医療用 に用 い られ るプ ラス ミ ド DNA を工業的 に生産 しよ うというものである。 このプ ラス ミ ドDNA の生産法は、従来 よ り実験 室 レベルでの、手作業で、遠心分離器 を多用す ると いう、大量に生産す るには不向きな方法で精製を行っ てきた。 この遠心分離器 を用いる方法 をそのまま用 いると、遠心分離す る前後 に遠心チューブか ら別の 容器 に移す作業が必要 にな りチューブのフタを開け るたび に外界の環境 にさ らされ、操作 中に外界か ら のコンタミネー シ ョンの危険 にさ らされる ことにな り、それ を防 ぐために作業 をすべて安全キ ャビネ ット内で行 うか又は作業者が完全防塵服 を着て、室内 を完全なク リー ンルーム環境 にす る必要があ り、操 作が手作業で効率が悪 く、大量処理が困難 となる。 しか も精製工程 には数ステ ップ も遠心分離法 を用 い なければな らないのである。 この間題 を解決す るた めに、 これ まで遠心分離法 を用 いていたすべてのス テ ップをTFF膜 を用 いた波過方法 に置 き換 える こ とによ り、 まった く新 しい、効率的な方法 を開発す ることに成功 した。 琉球大学遺伝子実験セ ンター と先端医学生物科学 研究所 とで このプ ロジェク トを平成12年度 コンソー シアム事業 として受託 し以下のような開発を行 った。 TFF膜 とは、 限外渡過膜 をサ ン ドイ ッチ状 に
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枚 を平行 に重ね、その間隙に源過 しよ うとす る溶液 を 流 し波液は、サ ン ドイ ッチ状の膜の外側 に流す とい う方法で、膜 と平行 に膿過 しよ うとす る溶液が流れ ることで流れが遮 られ ることな く、 目詰 ま りが起 こ りにくく、溶液 を巡回させ る ことによ り効率よ く濃 縮できる。 この限外膿過膜のポアサイズ を選ぶ こと によ り、 目的の物質 を分子の大きさによ り分離す る ことができ、その ことによ り、遠心分離法の沈降係 数の違 いによる分離方法 を、 この限外波過法 に置 き 換えることができるのである。 また、膜 と直角の方 向に溶液が しみ出すために、源液 を異なる経路で集 める ことがで きる。 た とえば、 この膜が2
0
c
mX2
5
c
m
の大 きさで2
枚一組 とす る と、1
0
0
0
平方セ ンチ メー トル/組 とな り、 これ を1
0
組並列 に重ね る と、1
平方 メー トルの面積 をもつカセ ッ トとなる。原理 的には このカセ ッ トをい くらで も並列 につな ぐこと ができるので、大量の溶液 を短時間に効率よ く源過 できる。 この方法 によ り、 いままで開放系、つ ま り 遠心チューブのフタを開けて別 の容器 に移す操作の かわ りに、閉鎖系、つま り溶液や濃縮液 を閉鎖 した パイプを用 いて次の行程 に移動 させ ることができる ようになった。 この ことは、開放系での操作の際に 必要 とされた外界か らのコンタミネー シ ョンを防 ぐ ための対策が不必要 とな り、 よ り高純度な精製が容 易に可能 となった。それのみではな く、それ までの 限外滅過膜法では蛋 白質の分子の大 きさとボアサイ ズの関係のみが明 らか になっていたが、私たちは、 プラス ミ ドDNAという紐状の分子 を分離す るため の限外波過法 を新規 に開発す ることに成功 した. この開発 によ り、TFF膜 を用 いた波過方法 を用 南方資源利用技術研究会誌 いる事 によ り高純度なプ ラス ミ ドDNAを大量 に作 成す ることができ、 これ まで開放系で行われていた 操作 を、菌体 の培養か ら、濃縮、バ ッファー交換、 アルカ リによる溶菌、酸 による中和、デブ リスの除 去、宿主由来の蛋 白除去、プラスミ ドDNAの濃縮、 カ ラムによる精製 まで、閉鎖系で連続 して行 う方法 を確立 した。 この方法は連続 した閉鎖系で行 うため 装置 の小型化が計 る事 がで き、 またTFF膜 は膜面 積 の増加 をカ ッセ トの数 を増やす事 によ り簡単 に行 う事が出来 る優れた方法である。 この新規な分離精製法 を主な請求項 目とす る特許 を国内及び米国に申請 し、すでに特許 を取得 した。 (「ベ クター精製用装置及び方法」特許第3547715号DEVICE AND PROSESS FOR PURIFYING VECTORS米国特許番号US6773913B2) 現在 この方法 による医薬 品 と して のプ ラス ミ ド DNAを生産で きる施設 を先端医学生物科学研究所 にお いて、環境及び装置、運用手法 を含めて整備 を 行 っているところである。 この整備計画は 3年間で 完成 させ る予定で、平成16年度は、改正薬事法の基 準 を満た した
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リッ トル規模の培養 タンクを持つ 大量培養装置 を設置 している。それ には、 ク リー ン な空気製造装置、純水製造装置、 クリー ン蒸気供給 装置、遺伝子組み換え体滅菌処理装置、HEPAフィ ルター を用 いた空調換気 システム、組み換え微生物 を取 り扱 うための条件 を満 た したP2レベル の培養 室が含 まれている。今後、平成17年度 はTFF膜 を 用 いた祖精製装置 を完成 させ、平成1
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年度 に、高純 度DNA精製装置、製剤封入 システムを完全 ク リー ンルーム内に設置す る計画で、 これ らが完成すれば 改正薬事法 に定め られた基準 をク リアす ることがで き、医薬品 レベル のDNA製剤が生産できるよ うに なる。おわ Uに
私たちは、沖縄県では じめての、遺伝子組み換え 技術 を用 いたバイオ産業の成功例 を築 くことを目指 している。新産業 としてのバイオ産業は、高付加価 値の製品を生産でき、輸送にコス トがかかるハンディ キ ャップがないので、沖縄県 の離島 としての不利な 条件 をクリアでき、容易に他 のアジア諸国にも奪わ れ ることがない産業 として期待できるのではないだ ろうか。 - 14-参考文献
1) Arakawa,T., Y
u,
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.Synthesis of a cholera toxin B subunit -rotavirus NSP4 fusion protein in potato.
PlantCellReport,20:3431348,2001.
2)Arakawa,T.,Yu,J.,Chong,D.K.X.,Hough,J.,
Engen,P.C.,Langridge,W.H.氏.A plant-based cholera toxinBsubunit-insulin fusion protein
protect against development of autoimmune diabetes.Nat.BiotechTWl.16:934-938,1998. 3) 平成11年度 地域 コンソー シアム研究開発事業 「ベ ンチ ャー企業支援型地域 コンソー シアム開発 (中小 企業創造基盤型)」「簡便化高純度大型プ ラス ミ ド抽 出 ・精製法の開発」成果報告書、平成13年3月、新 エネルギー ・産業技術総合開発機構、委託先 財 団 法人南西地域産業活性化セ ンター