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【平成29年度修士論文概要】愛着スタイルが本来感(自分らしくある感覚)にどのように関係しているのか-第二の分離‐個体化過程を通じて-

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Academic year: 2021

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作新学院大学臨床心理センター研究紀要 11 57 修士論文概要 愛着スタイルが本来感(自分らしくある感覚)にどのように関係しているか -第二の分離—個体化過程を通して- 梅基 理恵 1.はじめに 青年期の最も重要な発達課題のひとつであ る自立とは、白井(2006)によると自分なりの 見通しをもって、人生を切り開いていくこと であるという。すなわち、自立するためには、 青年期以前のように親や大人の意見に従うだ けではなく、自分一人で考え、悩んだ末に人 生についての道筋を見つけ出す必要があると 考えられる。このため、青年期に入ると心理 的離乳等が生じ、これまでの親への心理的依 存から脱却し、個としての自分を追求するよ うになる。 Bowlby(1973/1977)によると、子どもと親に 密接なつながりがあり、親が子どもに支持と 励ましを与えていた家庭では、子どもは自立 心と、必要時に援助を求められる能力を同時 に兼ね備えた適応力のある人に育つという。 また、Bowlby(1973/1977)は、乳幼児期に子ど もが養育者との間で安定した愛着を形成する ことが、後の適切な対人関係を形成するため に重要であると述べている。乳幼児期に養育 者が乳幼児の発信行動に対して応答的である 場合、その乳幼児は安定した愛着関係を形成 する。一方、養育者が乳幼児の発信行動に対 して拒絶的であったり、一貫した応答を示さ なかったりする場合、その乳幼児は不安定な 愛着関係を形成する。子どもは養育者との愛 着を基礎として、愛着の対象を拡大していく ことで、対人関係能力を発達させ、社会化を 促進させる(繁多, 2009)。しかし、何らかの原 因で幼少期の愛着形成がうまくいかなかった 場合、その子どもは適応的ではない人生を送 ることになるのだろうか。 本研究では青年期の本来感を取り上げ、愛 着スタイル(内的作業モデル)との関係をみ ていく。乳幼児期に形成された愛着スタイル が後の人生に決定論的に影響を及ぼすとすれ ば、愛着スタイルの中で安定型以外の青年は 本来感を得にくいということになる。本来感 を得るために幼少期の愛着スタイルに対して、 青年期での第二の分離-個体化がどうかかわ っているのかを検討していく。高橋(1989)は、 第二の分離-個体化の基本的尺度として作成 されたSITA を基にJASITA(日本版SITA)を作 成し、さらにそこに含まれている因子が年齢 発達に伴ってどのように変化するかを調べた。 今回、青年期での適応に対する尺度として 「本来感」を従属変数として取り上げている。 「本来感」では外的な体験としての成功、失 敗体験に左右されない内的な適応状況「自分 らしくある感覚」を重視している。このよう に、成功だけでなく、上手くいかなさの体験 を重視した「本来感」を従属変数とすること で、乳幼児期の体験を踏まえた第二の分離- 個体化の体験の意義を検討することを本研究 の目的としている。 つまり、高橋(1989)が示した大学生での 第二の分離-個体化での下位尺度得点の高低 が同じ状況となっているのか、もし同じであ るとすれば、その因子構造が「本来感」とど のように関わっているのか(個々の因子と「本 来感」との関係でなく、第二の分離-個体化 を構成している各因子として「本来感」の実 現としてどのような相互作用となっているの か)、愛着での体験から「本来感」へ直接効果 と間接効果として第二の分離-個体化による 間接効果の対比から、そもそも愛着の在り方 が「本来感」に決定的なのか、もしくは「本 来感」の獲得に対する間接効果を期待するこ とができるのか。以上3 点を目的としている。

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作新学院大学臨床心理センター研究紀要 11 58 2.方法 関東地方の私立大学において授業時間内に 集団による速度制限法によって質問紙調査を 行った。対象者は182 名であり、記入漏れ等 の見られたものを除いた175 名を分析対象と した。 調査時期は、2016 年 12 月から 2017 年5 月である。使用した質問紙は「第二の分 離-個体化尺度(JASITA)」「一般他者版ECR」 「本来感尺度」の3 つである。 3.結果と考察 本研究で検討したことは以下のとおりであ る。 ・ECR の「見捨てられ不安」「親密性の回避」 を二次元とした4分類とJASITA の下位尺度 得点の平均から5つの下位尺度得点からそれ ぞれ上位群と下位群とし被験者間要因分散分 析から相互作用は「対象希求性」の上位群・ 下位群とECR4分類の間で認められ「とらわ れ型」の対象者で「対象希求性」が高いと「本 来感」が低くなっていた。大学生の被験者に おいて「対象希求性」の課題が残っていると 対人関係に不適応が生じている状況がうかが えた。 ・第二の分離―個体化過程について高橋 (1989)が大学生での結果とほぼ同じ標本集 団となる被験者であることを確認し、適応状 況の指標として「本来感」を用いて、重回帰 分析(ステップワイズ法)から第二の分離- 個体化の各因子がその「本来感」の実現に関 わっていることを示した。 ・愛着体験での「見捨てられ不安」「親密性の 回避」体験に止まった者に対して第二の分離 ―個体化で修復の可能性があるのか検討す るために、共分散構造分析によるパスモデル を構築し、愛着体験からの直接効果と間接効 果を検討した。その結果、親密性回避に対し ては修復している可能性を示した。 4.今後の課題 今回の研究上「見捨てられ不安」に対しては 第二の分離-個体化での修復の可能性を示す ことができなかったため、今後さらなる検証 が必要である。 5.引用文献 白井利秋 2006 青年の価値観は変わってき ているのか 教育心理学年報 34 13 Bowlby,J. (1973) Attachment and loss, Vol.2: Separation:Anxiety and anger.

Bowlby,J. (1977) The making and breaking of affectional bonds. British Journal of

psychology,130,201-210 NewYork: Basic Books (黒田実二他訳 1977 母子関係の理 論Ⅱ:分離不安 岩崎学術出版) 繁多進 2009 愛着理論と子育て支援 新躍 社 高橋蔵人 (1989) 青年期における分離個体 化に関する研究―質問紙調査による考察― 心理臨床学研究 7 4-14

参照

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