「近代化」のなかの ジェンダー (二) (秩序として
の混沌 -- インド研究ノート 第11回)
著者
湊 一樹
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
211
ページ
50-51
発行年
2013-04
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00003733
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インドはそんなにひどいのか もちろん 、﹁先進国﹂と呼ばれ る国々においても、女性が社会的 に不利な立場に置かれていること にかわりはない。例えば、国内の 政治や経済に関するニュースを思 い浮かべてみればすぐにわかるよ うに、日本の政界・官界・財界な どで中心的な役割を担っているの はほとんど男性ばかりである。そ して、大臣などの重要ポストへ女 性が登用されたとしても、それが ﹁サプライズ人事﹂ とか ﹁目玉人事﹂ とみなされてしまうこと自体、女 性の社会進出が一向に進んでいな い日本の現状を何よりも如実に物 語っている。また、様々な分野で 女性が活躍していると考えられて いるアメリカでも、女性の社会進 出をめぐる問題は依然として重要 な議論の的なのである ︵例えば 、 参考文献①を参照︶ 。 しかし、日本やアメリカなどと 比べて、インドの女性たちが社会 のなかで受けている不利益は、そ の性質や深刻さがまったく別次元 のものであるといわざるをえな い。なぜなら、それは女性の生存 ︱さらには、そもそもこの世に生 を受けられるかどうか︱というあ まりにも根本的な問題を孕んでい るからである。●﹁性比﹂の国際比較
女性に対する深刻な社会的差別 が存在するかどうかを測るための 尺度として、男性と女性の人口比 である ﹁性比﹂ ︵ sex ratio ︶がよ く用いられる。なぜこのような指 標が使われるかというと、男性に 比べて女性が極端に少ないアンバ ランスな人口分布は、女性への根 強い差別や偏見が社会にあること を強く疑わせるからである︵本稿 では、男性一〇〇〇人当たりの女 性の人口を性比と呼ぶことにす る。したがって、性比の値が一〇 〇〇よりも大きければ、男性の人 口よりも女性の人口の方が多いこ とを意味する。ただし、男性人口 と女性人口のどちらが分母または 分子になるかなど、文献によって 性比の定義は異なる︶ 。 表 1は、 ⑴ 南 ア ジ ア 、 ⑵ 中 国 ・ 東 南 ア ジ ア 、 ⑶ 先 進 国 と い う 三 つ の グ ル ー プ ご と に い く つ か の 国 を 取 り 上 げ 、 そ れ ぞ れ に つ い て 性 比 と 一 人 当 た り の 国 民 総 所 得 を示したものである。 この表から、 以下の三つの点を読み取ることが できる。 第一に 、日本や欧米諸国では 、 性比の値は一様に一〇〇〇を超え ており、女性が全人口の半数以上 を占めている。この背後には、生 物学的な理由から女児よりも男児 の方が若干多く生まれるものの 、 女性は病気などに対してより強く 長生きする傾向にあるため、全体 的には女性の人口が男性の人口を 上回るというメカニズムが働いて いる︵参考文献②︶ 。 第二に、先進国以外でも性比の 値が一〇〇〇を超える国がある一 方で、一部の途上国では、全人口 に占める女性の割合が極端に小さ い。そのため、同じグループ内で あっても、国によって男女比に大 表1 性比の国際比較 男性1000人当たりの 女性人口 1人当たり 国民総所得 (2010年) 2001年 2011年 南アジア インド 931 938 1,340 パキスタン 953 969 1,050 バングラデシュ 949 976 640 ネパール 1,008 1,016 490 スリランカ 1,008 1,028 2,290 中国・東南アジア 中国 931 927 4,260 マレーシア 965 972 7,900 フィリピン 984 977 2,050 インドネシア 1,000 1,004 2,580 ベトナム 1,033 1,024 1,100 タイ 1,033 1,037 4,210 先進国 アメリカ 1,037 1,024 47,140 イギリス 1,049 1,033 38,540 ドイツ 1,049 1,041 43,330 フランス 1,071 1,053 42,390 日本 1,045 1,053 42,150 (出所)http://data.worldbank.org/のデータを基に著者作成。 (注)1人当たりの国民総所得は、米ドルを単位としている。インド研究ノート
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アジ研ワールド・トレンド No.211 (2013. 4)きな違いがみられる。特に、イン ドと中国という二つの人口大国は ともに性比が九三〇∼九四〇前後 と異常に低く、その突出ぶりが際 立っている。 第三に、人口に占める女性の割 合と経済水準がともに高い先進国 を除くと、性比と一人当たりの国 民総所得の間にはっきりとした関 連性は認められない。 図 1は、 この 点をより明瞭な形で表している。