群馬県前橋市における地域認識と地域への愛着②
−大学生定量データの分析−
奥田 雄一郎・呉 宣児・大森 昭生
キーワード 前橋市 地域愛着 大学生と地域住民との比較 定量的分析 地域における大学生と教育 要旨 本研究の研究協力者は,前橋市の大学生166 名(男性 72 名,女性 91 名,その他 3 名)で あった.1)地区での活動の程度,2)地区の生活環境,3)地域愛着に関する項目1(鈴木・ 藤井,2008),4)地域愛着に関する項目 2(引地ら,2009),5)フェイスシート項目など を尋ねた.本論文は上記の質問項目のうち,数量的なデータの結果をまとめたものである. 第一に,性差を独立変数としたt検定においては,全ての因子において有意な差は見られ なかった.第二に,地域での活動の程度を独立変数とした一元配置の分散分析においては, 全ての因子において「地域と関わる役職も持ってないし,行事等に参加することもない」 大学生らに比べ「直接地域の活動を手伝ったりすることはないが,行事などに参加者とし て参加することはある」,「地域で責任を持つ担当はしてないが,呼びかけがあれば,地域 の活動に参加することがある」大学生らの方が有意に各因子の得点が高かった.第三に, 大学生と,奥田ら(2016b)で検討した地域住民を独立変数としたt検定においては「地域 持続願望」を除く「風土接触度」,「地域選好」「地域愛着」,「物理的環境評価」,「社会的環 境評価」,「地域への愛着」の因子において大学生に比べて地域住民の方が有意に各因子の 得点が高かった. 1.問題と目的 地域愛着については,園田(2002)が,場所への定義を,1)個人と場所との間の(肯定 的で)感情的な絆もしくはつながり,2)1)に時間や認知,行動,文化の側面が加わった 定義,3)1)に心地良さ,安心感が加わった定義,4)各研究の目的により,変数の一部と して操作的に定義されたもの,5)愛着理論の対象に家を想定し物理的な存在を考慮した定 義の5つに整理し,これまで多くの地域愛着に対する研究がなされてきた(引地ら,2009; 川村・谷口,2013). 奥田ら(2016b)においては,前橋市の地域住民に対してアンケート形式の質問紙調査を 行い,性差と地域活動の程度という2つの側面から地域愛着を検討した結果,性差を独立変数としたt 検定においては「地域選好」,「地域愛着」,「社会的環境評価」,「地域への愛着」 の因子において男性の方が女性に比べて有意に各因子の得点が高く,地域での活動の程度 を独立変数とした一元配置の分散分析においては全ての因子において「地域と関わる役職 も持ってないし,行事等に参加することもない」協力者らに比べ,「地域の組織の役職を持 っており,地域の活動もかなりしている」協力者の方が有意に各因子の得点が高かった. 本研究は同様の視点から,現代の大学生の地域愛着を検討するものである. 大学生の地元志向(2003)が指摘されるようになって久しい.少子高齢化が進む我が国 において若者の地元志向は人口定着などの面から当初は好意的に受け入れられていた.地 方において確実に人口が減少していく中で,進学や就職先として地元を選ぶ若者たちが増 加すれば地元にとってそれだけで良いことと受け入れられがちである.しかしながら,次 第に轡田(2009)の若者の地域志向はそれだけで単純にポジティブな結果を地域にもたら すものではないといった指摘や,平尾・重松(2006)による地方圏において若者の地元志 向が本当に好ましいものなのかを真剣に議論する必要があるといった指摘のように,近年 若者の地元志向や地域愛着について詳細な検討の必要性が課題とされてきた. そうした課題に対し,例えば杉山(2012)は,進路選択の視点から大学生の地元志向を 検討し,大学生らが地元への愛着を地元志向へと結びつけてはいるが,地元のために貢献 したいとする意識は十分に確立していないことを明らかにした.杉山(2012)によれば, このような形での地元志向は,人口定着という点ではともかく,地域活性化に十分に寄与 するとは言い難いく,大学生ら自身にとっても地元への愛着のみで就職を決定した場合, キャリアを発展させる上での限界点に早期に達してしまう可能性が高い.また,奥田ら (2016a)は,地域愛着研究の多くが主に対象者が「住まう場所」(髙橋,1982,1984)と してきたのに対し,「場への愛着」の範囲を対象者が「学ぶ場」へと拡張した上で「地域の 中の大学での学び」を大学生の時間的展望の視点から検討し,自らが学ぶ大学という地域 の風土や,産業形態や,そこに住まう人々といった様々な要素に対する愛着が,大学生た ちの過去・現在・未来といった時間的展望の生成に関与していることを明らかにした. 奥田ら(2016b)においては地域住民の地域愛着を検討したが,そうした地域愛着に対す る特徴は大学生らにも見られるのだろうか.以上のことから本研究においては,大学生ら の地域愛着の特徴を検討し,地域住民との比較によって,その独自性を明らかにすること を目的とする. 2.方法 2-1.研究対象者 本研究の研究協力者は前橋市の大学生166 名(男性 72 名,女性 91 名,不明 3 名)であっ た.同大学の学生は約8 割が地元出身者であり,約 7 割が地元で就職していく学生たちで ある.
2-2.手続き 2015 年 12 月の教育心理学の授業時間内において,受講者に質問紙を配布して回答を求め た. 2-3.地区での活動の程度 「あなたは,「地区」の組織に所属し,「地区」の活動等(職業としてではなく,住民と して)に携わっていますか」と教示し,1. 地域と関わる役職も持ってないし,行事等に参 加することもない,2. 直接地域の活動を手伝ったりすることはないが,行事などに参加者 として参加することはある,3. 地域で責任を持つ担当はしてないが,呼びかけがあれば, 地域の活動に参加することがある,4. 地域の組織の役職を持っており,地域の活動もかな りしている,5.その他(自由記述)の中から選択してもらった. 2-4.地区の生活環境 「あなたが現在住んでいる生活圏には,以下に書いてある項目はどれくらいあると思い ますか.あてはまる番号に◯をつけてください」と教示し,1.公園,2.コンビニ,3.ス ーパーマーケット,4.川や池,5.寺社仏閣,6.田んぼや畑,7.古くから残る街並み,8. 森や林,9.観光地,10.ファミリーレストラン,11.ゲームセンターやパチンコ店,12. 公民館,13.商店街,14.鉄道の駅,15.大型ショッピングセンター,16.病院・医院, の中から選択してもらった. 2-5.地域愛着に関する項目 1(鈴木・藤井,2008) 19 項目:5 段階評定であり,鳥や虫の鳴き声を聞くことが多い,屋外の空気に触れるこ とが多い,地域の人々とあいさつをする機会が多い,地域の人々と話をする機会が多い, 道ばたに作花や土などに接する機会が多い,自然のにおいをかぐことが多いといった【風 土接触度】,この地域は住みやすいと思う,この地域にお気に入りの場所がある,この地域 を歩くのは気持ちよい,この地域の雰囲気や土地柄が気に入っている,この地域が好きだ, この地域ではリラックスできるといった【地域選好】,この地域は大切だと思う,この地域 に愛着を感じる,この地域に自分の居場所がある気がする,この地域は自分のまちだとい う感じがする,この地域にずっと住み続けたいといった【地域愛着】,この地域にいつまで も変わってほしくないものがある,この地域になくなってしまうと悲しいものがあるとい った【地域持続願望】の4 つの下位因子から構成されている. 2-6.地域愛着に関する項目 2(引地ら,2009) 14 項目:5 段階評定であり, この地域の町並みや自然はきれいだと思う,この地域の町 並みから歴史が感じられる,大きな山や建造物など,地域の人がみんな知っている,地域 のシンボルがある,この地域の医療施設は充実していると思う,この地域の名産品は,ほ
かの地域の人に勧められるといった【物理的環境評価】,日頃,地域の人々と交流を持つこ とが多い,毎年,この地域で行われる祭やイベントを楽しみにしている,この地域の人々 は親切だと思う,この地域の治安は良いといった【社会的環境評価】,この地域に,今後も 住み続けたいと思う,自分は,自分が住んでいる地域社会の一員だと強く思う,自分にと って,この土地はなくてはならない場所である,地域の人々は自分にとって大切な存在で ある,この土地は自分にとって住みよい場所であるといった【地域への愛着】の 3 つの下 位因子から構成されている. 2-7.フェイスシート フェイスシート項目として,①性別,②前橋市全体と現在の地区での居住歴,③国籍, ④生活の主な交通手段を,回答してもらった. 3.結果 3-1.地区での活動 Fig.1 地区での活動 大学生の地区での活動の程度としては「地域と関わる役職も持ってないし,行事等に参 加することもない」者が88 名(53.00%),「直接地域の活動を手伝ったりすることはない が,行事などに参加者として参加することはある」者が42 名(25.30%),「地域で責任を 持つ担当はしてないが,呼びかけがあれば,地域の活動に参加することがある」者が29 名 (17.50%)であり,「地域の組織の役職を持っており,地域の活動もかなりしている」者 が3 名(1.80%)であった.奥田ら(2016b)においては,研究協力者の地域住民の地域で の活動が「地域と関わる役職も持ってないし,行事等に参加することもない」協力者が89 名(12.99%),「直接地域の活動を手伝ったりすることはないが,行事などに参加者として 参加することはある」協力者が105 名(15.33%),「地域で責任を持つ担当はしてないが, 呼びかけがあれば,地域の活動に参加することがある」協力者が153 名(22.34%)であり, 「地域の組織の役職を持っており,地域の活動もかなりしている」協力者が338 名(49.34%) であり,いかに学生らの多くが,地域から切り離されているかということが指摘される. 3 29 42 88 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 地域の組織の役職を持っており、地域の活動もかなりしている 地域で責任をもつ担当はしていないが、呼びかけがあれば、地域 の活動に参加することがある 直接地域の活動を手伝ったりすることはないが、行事などに参加 者として参加することはある 地域と関わる役職も持ってないし、行事等に参加することもない
3-2.地区の生活環境 Fig.2 地区の生活環境 大学生の地区の生活環境としては,大学生が十分にあると感じているものとして「田ん ぼや畑」,「コンビニ」,「スーパーマーケット」などは「十分にあると思う」と感じており, 逆に「観光地」,「商店街」,「大型ショッピングセンター」,「鉄道の駅」などについては自 らが暮らす地区の環境の中には「全くないと思う」と感じている協力者らが多かった. 奥田ら(2016b)においては地域住民が「十分にあると思う」ものの上位として公民館や 公園を挙げていたのに対して,大学生たちはコンビニやスーパーマーケットを上位に挙げ ており,また「全く無いと思う」に大型ショッピングセンターが挙げられるといったよう に,若者たちにとって地域は消費の場として認識されていることが示唆される. こうした結果からも,若者である大学生らと,そこで長年「生活」している地域住民と では,そもそも「地域」ということに対しての認識やニーズにズレがあることが類推され る. 105 96 80 44 44 63 37 19 16 17 20 23 51 7 5 17 55 53 60 90 86 66 78 93 95 92 88 81 53 70 52 35 6 17 26 31 36 37 51 54 55 57 58 61 62 89 109 114 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 観光地 商店街 大型ショッピングセンター 古くから残る街並み ゲームセンターやパチンコ店 鉄道の駅 ファミリーレストラン 寺社仏閣 病院医院 公民館 公園 川や池 森や林 スーパーマーケット コンビニ 田んぼや畑 まったくないと思う 少しあると思う 十分あると思う
3-3.地域愛着 地域愛着に関する項目1(鈴木・藤井,2008)19 項目,地域愛着に関する項目 2(引地 ら,2009)14 項目を合わせた全項目に対する協力者らの回答分布を「とてもそう思う」の 回答が多い順にソートしFig.3 に示した. Fig.3 地域愛着各項目の人数分布 25 39 37 20 27 40 14 19 14 15 13 19 25 16 7 10 6 6 9 6 6 14 10 9 8 8 8 4 5 5 1 7 5 49 46 49 45 40 31 38 26 34 39 22 27 37 25 18 17 13 15 29 14 17 28 21 15 17 23 23 12 5 14 12 27 12 49 46 36 60 48 40 53 33 58 52 48 46 45 49 40 40 57 32 41 46 37 34 43 39 43 34 41 35 38 30 23 32 14 32 23 31 26 32 37 40 65 37 36 55 46 29 43 66 63 52 73 47 59 66 48 50 61 55 56 49 67 68 67 78 48 67 11 12 13 15 18 18 21 22 23 24 28 28 30 33 34 36 38 39 39 40 40 41 42 42 43 45 45 48 50 50 51 51 67 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% この地域の町並みから歴史が感じられる この地域の名産品は、ほかの地域の人に勧められる 日頃、地域の人々と交流を持つことが多い 自分は、自分が住んでいる地域社会の一員だと強く思う 地域の人々と話をする機会が多い 毎年、この地域で行われる祭やイベントを楽しみにしている この地域の医療施設は充実していると思う 地域の人々とあいさつをする機会が多い この地域に、今後も住み続けたいと思う この地域にずっと住み続けたい この地域の人々は親切だと思う 地域の人々は自分にとって大切な存在である 大きな山や建造物など、地域の人がみんな知っている地域のシンボルがある 自分にとって、この土地はなくてはならない場所である この地域を歩くのは気持ちよい この土地は自分にとって住みよい場所である この地域に自分の居場所がある気がする この地域は住みやすいと思う この地域にお気に入りの場所がある この地域の雰囲気や土地柄が気に入っている この地域が好きだ 道ばたに咲く花や土などに接する機会が多い この地域にいつまでも変わってほしくないものがある この地域の治安は良い この地域の町並みや自然はきれいだと思う この地域は自分のまちだという感じがする この地域になくなってしまうと悲しいものがある この地域は大切だと思う この地域ではリラックスできる この地域に愛着を感じる 屋外の空気に触れることが多い 自然のにおいをかぐことが多い 鳥や虫の鳴き声を聞くことが多い 全然そう思わない あまりそう思わない どちらとも言えない すこしそう思う とてもそう思う
その結果,「とてもそう思う」と研究協力者が回答した項目としては,「鳥や虫の鳴き声 を聞くことが多い」,「自然のにおいをかぐことが多い」,「屋外の空気に触れることが多い」, 「この地域に愛着を感じる」,「この地域ではリラックスすることができる」などの項目に 対する回答が多く見られた.奥田ら(2016b)においては「この地域が好きだ」,「この地域 は大切だと思う」,「この地域に愛着を感じる」,「この地域に,今後も住み続けたいと思う」 などの項目に対する回答が多く見られ,地域に対する積極的な愛着が見られるのに対し, 大学生らにおいては「この地域に愛着を感じる」,「この地域ではリラックスすることがで きる」などの項目に対するポジティブな反応が見られる一方で,「この地域の街並から歴史 が感じられる」,「この地域の名産品は,他の地域の人に勧められる」,「日頃,地域の人々 と交流を持つことが多い」などの項目への反応はネガティブであり,地域に対するアンビ バレントな態度が見られた. 鈴木(2008),引地(2009)のそれぞれの項目から「風土接触度」,「地域選好」「地域愛 着」,「地域持続願望」,「物理的環境評価」,「社会的環境評価」,「地域への愛着」因子の合 成得点を算出し,性差を独立変数としたt検定を行った(Fig.4). Fig.4 性差による地域愛着各因子の得点 その結果,全ての因子において,大学生の男性と女性の間には有意な差は見られなかっ た.奥田ら(2016b)においては,地域住民の性差を独立変数としたt検定においては,「地 域選好」(t(665)=1.93, p<.05),「地域愛着」(t(679)=2.58, p<.05),「社会的環境評価」 (t(670)=3.40, p<.01),「地域への愛着」(t(677)=3.80, p<.001)の因子において,男性の方 が女性に比べて有意に得点が高く,サンプルの偏りの可能性はあるものの,そうした地域 愛着に対する性差は大学卒業以降において形成される可能性が示唆された. 3.51 3.70 3.68 3.57 3.03 3.11 3.35 3.58 3.68 3.55 3.57 2.98 3.10 3.10 1 2 3 4 風土接触度 地域選好 地域愛着 地域持続願望 物理的環境評価 社会的環境評価 地域への愛着 男性(n=72) 女性(n=91)
3-4.地域での活動の程度と地域愛着 大学生の地域での活動を独立変数とし,地域愛着に関する「風土接触度」,「地域選好」「地 域愛着」,「地域持続願望」,「物理的環境評価」,「社会的環境評価」,「地域への愛着」7因 子の合成得点を従属変数とした一元配置の分散分析を行った(Fig.5). Fig.5 地域での活動による地域愛着各因子の得点 その結果,全ての因子において「地域と関わる役職も持ってないし,行事等に参加する こともない」協力者らに比べ,「地域の組織の役職を持っており,地域の活動もかなりして いる」協力者の方が有意に各因子の得点が高かった(Tab.1). Tab.1 地域での活動による地域愛着各因子の得点(多重比較:Tukey 法) 3.28 3.41 3.32 3.18 2.76 2.71 2.92 3.86 3.96 3.93 4.08 3.20 3.43 3.52 3.92 4.16 4.06 4.02 3.46 3.69 3.64 4.22 4.17 3.87 4.67 3.13 4.17 3.87 1 2 3 4 5 風土接触度 地域選好 地域愛着 地域持続願望 物理的環境評価 社会的環境評価 地域への愛着 地域と関わる役職も持ってないし、行事等に参加することもない(n=88) 直接地域の活動を手伝ったりすることはないが、行事などに参加者として参加することはある(n=42) 地域で責任をもつ担当はしていないが、呼びかけがあれば、地域の活動に参加することがある(n=29) 地域の組織の役職を持っており、地域の活動もかなりしている(n=3) 多重比較 風土接触度 3.28 (0.78) 3.86 (0.79) 3.92 (0.90) 4.22 (0.78) 8.01 *** 3・2>1 地域選好 3.41 (0.88) 3.96 (0.78) 4.16 (0.59) 4.17 (0.72) 8.55 *** 3・2>1 地域愛着 3.32 (0.93) 3.93 (0.81) 4.06 (0.65) 3.87 (1.63) 7.80 *** 3・2>1 地域持続願望 3.18 (1.06) 4.08 (1.03) 4.02 (0.91) 4.67 (0.58) 10.84 *** 3・2>1 物理的環境評価 2.76 (0.80) 3.20 (0.74) 3.46 (0.81) 3.13 (1.10) 6.88 *** 3・2>1 社会的環境評価 2.71 (0.85) 3.43 (0.80) 3.69 (0.72) 4.17 (0.76) 15.88 *** 3・2>1 地域への愛着 2.92 (0.98) 3.52 (0.89) 3.64 (0.90) 3.87 (1.10) 6.64 *** 3・2>1 *p <.05 **p <.01 ***p <.001 1.地域と関わる役職も持っ ていないし、行事などに参 加することもない 2.直接地域の活動を手伝っ たりすることはないが、行 事などに参加者として参加 することはある 3.地域で責任を持つ担当は していないが、呼びかけが あれば、地域の活動に参加 することがある 4.地域の組織の役職を持っ ており、地域の活動もして いる F値 (n=88) (n=42) (n=29) (n=3) (3,161)
3-5.大学生と地域住民との比較 大学生と地域住民を独立変数とし,地域愛着に関する「風土接触度」,「地域選好」「地域 愛着」,「地域持続願望」,「物理的環境評価」,「社会的環境評価」,「地域への愛着」7因子 の合成得点を従属変数とした一元配置の分散分析を行った. Fig.6 大学生と地域住民の地域愛着各因子の得点 その結果,「地域持続願望」(t(847)=3.75, p<n.s.)を除く「風土的接触」(t(833)=3.30, p<.01), 「地域選好」(t(833)=4.18, p<.001),「地域愛着」(t(844)=5.34, p<.001),「物理的環境評価」 (t(829)=3.05, p<.05),「社会的環境評価」(t(835)=7.17, p<.001),「地域への愛着」 (t(843)=8s.13, p<.001)の因子において,大学生に比べて地域住民の方が有意に各因子の 得点が高かった. 4.考察 4-1.大学生の地域愛着 本研究の結果からは,その地域で暮らす地域住民とその地域で学ぶ大学生らとの間には 共通点が見られると同時に差異も見られた.地域での活動の程度によってその地域に対す る愛着が異なることは地域住民と同様であったが,地域愛着に対して地域住民とは異なり 大学生では男女間での性差は見られなかった.また,大学生と地域住民の地域愛着におい 3.55 3.69 3.62 3.58 3.00 3.11 3.22 3.79 3.96 4.03 3.69 3.21 3.65 3.87 1 2 3 4 5 風土接触度 地域選好 地域愛着 地域持続願望 物理的環境評価 社会的環境評価 地域への愛着 大学生 地域住民
てはその地域が変わってほしくないという地域持続願望は両者共に持っているものの,そ の地域の人々との関わりや地域の行事にはあまり積極的ではなく,地域住民らに比べ自分 の地域に愛着を持つことが出来ていない大学生らの姿も垣間見えた. 近年,大学と地域の関連がより重要視されてきている.「地域の中の大学」で学ぶ現代の 大学生たちは,そうした高等教育の時代的文脈の中に埋め込まれている(奥田ら,2016a). 杉山(2012)によれば,地元就職が一定の割合を示す地方社会において,地元に就職する 学生のキャリアにおける発展可能性を確保し,また,地域活性化という観点から地元志向 という傾向を肯定的にとらえていくためには,大学のキャリア教育において積極的に「地 域とのかかわり」を意識させる試みを行い,地域のなかで自分のキャリアをどう活かすか, といった地元就職の積極的な意義に目を向けさせていくことが必要である.例えば奥田(印 刷中)では,そうした地域の中でのキャリア教育として,大学外に出て地域の中で授業を 行い,地域の人々と大学生らが関わることによって,大学生らがそれまで魅力を感じてい なかった地元を再発見し,自分の地元や地域に対してシビックプライド(伊藤,2017)を 高める実践を行っている.今後の「地域の中の大学」においては,そうした地域の人々と の関わりの中で,大学生らが自らの自分事として地域の中で生きていく自分を想像できる ための工夫が重要となるであろう. 注 1:本研究は「共愛学園前橋国際大学 「地(知)の拠点整備事業」地域志向教育研究経費」の 助成を受けた. 引用文献 引地博之 青木俊明 大渕憲一 2009 地域に対する愛着の形成機構―物理的環境と社会 的環境の影響―,土木学会論文集,65,101-110. 平尾元彦 重松政徳 2006 大学生の地元志向と就職意識,大学教育,3,161−168. 伊藤香織 2017 都市環境はいかにシビックプライドを高めるか―今治市を事例とした実 証分析,都市計画論文集,52,1268-1275. 川村竜之介 谷口綾子 2013 まちなかの居場所が生活の質・地域への意識に与える影響 に関する研究,土木学会論文集D3(土木計画学),69,I_335-I_344. 太田聰一 2003 若者はなぜ「地元就職」を目指すのか,エコノミスト,46−49. 奥田雄一郎 阿部廣二 三井里恵 2016a 大学生の地域愛着と時間的展望,共愛学園前橋 国際大学論集,16,157-164. 奥田雄一郎 呉宣児 大森昭生 2016b 群馬県前橋市における地域認識と地域への愛着 ①―定量的データの分析,共愛学園前橋国際大学論集,16,145-156. 奥田雄一郎 印刷中 社会文化心理学:まちなか学生プロジェクト—まちなか若者文化生成 のための心理学的実践①,共愛学園前橋国際大学論集,18.
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