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産育意識の変遷と「親になること」に関する一考察

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産育意識の変遷と「親になること」に関する一考察

平岡 さつき 奥田 雄一郎 後藤 さゆり

呉 宣児 大森 昭生 前田 由美子

1.課題と目的 子どもという存在への歴史的着目は、P.アリエスの『〈子供〉の誕生』(1960、邦訳みす ず書房、1980)の発刊に端を発している。従来の実証史学とは異なる社会史的・心性史的 手法は、「子ども」を歴史的・社会的なものとして歴史学の俎上にのせ、その発見が「子ど もの誕生」と称されるものであったことは周知のとおりである。「子ども」の発見は近代家 族の成立にともなって「教育」概念と同様にもたらされた、とする立場をとるものである。 こうした研究動向の中から産育に関する意識を歴史的に辿ろうとする研究がなされてき たが、管見によれば、とりわけ子どもの誕生=妊娠・出産に対する心性のありように「子 どもは授かるもの」、「子どもはできるもの」、「子どもはつくるもの」というシェーマを設 定し、産育・教育に関する心性のありようを社会過程に位置づけようとする方法として進 められた。 「授かる」は、「七歳までは神の内」といった民俗学研究や産育習俗研究からもたらされ た、見えない霊力と関わる子ども観・産育観である。すなわち、「妊娠の成立は神仏や大い なる力に頼る・願う・あやかること、あるいは自分ではどうすることもできないこと」と 捉えられた。一方、「つくる」は、「性の自己管理に基づき計画的に妊娠する」ことを意味 する(沢山、1986)。 両者の社会過程を筆者の理解で整理すれば、次のようになる。日本においては古神道に もとづく「子宝思想」が広く見られた反面、間引き・子殺しの横行という二面性をもって きた。間引き・子殺しの横行した前近代を脱し、近代国家をつくるために治者は儒者らに よる産育の肯定的な意義づけを、「子どもは授かるもの」という思惟を敷衍することによっ ておこなう必要があった。1910~20 年代になると新中間層(1920 年前後で全国民の7~ 8%とされる)による産育・教育行動が現れる。自由教育を推進する私学を支えたこの階 層は、1922~28 年にかけて導入された産児制限と性科学を早くも手に入れ、マルサス主義 的な産育・教育哲学をもつようになる。そこでは、子どもは「つくるもの」であり、尐な く産んだ子どもをよりよく育てるという子育て哲学のもと、「我が子」の才を引き出す教育 が絶対的な命題とされた。しかし、同時期、多くの大衆は「できるもの」(自然の摂理)と しての産育意識をもち、多産の人口動態のなかで公教育を支えた。高度経済成長が進む1960 年代以降、「教育爆発」時代を経るなかで、かつては新中間層にのみ見られた産育・教育行 動の全国的同質化が進んだのである。このような産育・教育意識の変遷を社会史的に裏づ

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ける研究はこれまでに一定の蓄積がある。 ところで、3 つのシェーマの設定は、久冨・佐藤(1985)が妊婦を対象とした産育意識 調査で、「出産観は『授かる』から『できる』へ、そして『つくる』へと歴史的に移行して いる」と結論づけたことに始まる。その後、中山(1992)は、この調査が用いた3つの意 識の並列化と三者択一の質問方法の採用を批判し、妊娠体験の語りという方法で「授かる」、 「つくる」という語彙の用いられ方、意識の内実を明らかにしている。そこでは、意識し ている「主体を明確に特定しないまま集団表象として論じた場合と、主体を特定して個人 の認識に基づき具体的に把握した上で、それら個々の認識を総合的に論じた場合」との違 いを想定し、個人のプロセスを追跡する事例研究によって、「授かる」はコンテクストに依 存した多義的な意味を内包するもので、「つくる」とは位相が異なるのであって、対立する ことなく複合的に存在する、と結論づけた。歴史学研究のシェーマは、1990 年代以降、「語 り」という方法によって主に心理学研究において展開されてきた。 今日、子どもは、結婚・妊娠・出産の連鎖のなかで自然・当然の「授かる」存在から、 親が産む人数や時期を決めて「つくる」ものへと変化した、とされるのが一般的である。「子 どもの価値」は社会状況と密接に関わって変化する(柏木、2001)のであるから、今日は 子どもを産むか否か、時期、人数が決定されるという意味において、「つくる」時代となっ ているとされている。こうした認識は、もはや疑う余地のない通説となっているといえよ う。本稿は、この通説の心性の次元での再検討を課題とする。 これまで子どもを持つ親への意識調査において、産育意識に関わるデータが残されてい る(柏木・永久、1999 他)。しかしながら、青年期を経験している大学生らが、どのような 産育意識をもっているのか、将来親になることに対してどのような意識を持っているのか、 そして両者の関係はどのようになっているのかということについての検討は、これまでな されてこなかった。そこで、ここでは大学生にとっての親になることを明らかにする端緒 として、大学生らがどのような産育意識をもっているのかを検討する。 2.考察対象 考察のためのデータは、奥田が中心となって作成した方法による調査(2009 年 9~10 月 実施、有効回答 610 名)の結果から導かれる。調査の分析手法と質問項目については、奥 田・後藤他(2010)を参照されたい。本調査に先だって実施されたプレ質問紙調査(7月 実施、協力者 356 人)では、前述の3つのシェーマをイメージづけせずに質問した。本調 査では、相反すると思われた2つのシェーマ「子どもは授かるもの」と「つくるもの」に ついて、独自の質問項目を考案して調査をおこなった。すなわち、「子どもは授かるもの」 とする因子には、この概念を構成すると思われるイメージを多面的に盛り込み、次の質問 項目を設定した。 質問1.基本的に避妊はすべきではないと思う。 4.避妊をしようが妊娠をコントロールできない時はあると思う。

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5.子どもはコウノトリが連れてくるものであると思う。 6.できちゃった婚は基本的に許されないと思う。 9.妊娠したら中絶はすべきでないと思う。 他方、「子どもはつくるもの」とする因子には次のものを用いた。 質問2.妊娠の時期は、親になる人が決めることができると思う。 3.産める状況でなければ避妊すべきだと思う。 7.子どもの数は、親になる人が決めることができると思う。 8.妊娠しても育てられないなら、子どもは中絶すべきだと思う。 10.自分の子どもの性別は親になる人が決めることができると思う。 3.調査結果 ここではプレ調査から1回答、本調査からは既述の質問項目に関する主要なものを抜粋 して記載する。 図1.妊娠・出産についての3つのシェーマへの回答 (表中の数字は協力者 356 名中の人数) 図1と図2は、3つのシェーマをイメージづけせずに質問した結果であるが、図 1 から 「子どもは授かりもの」、「つくるもの」、「自然の摂理」の順に多いことが分かる。図2は、 「授かりもの」とするのが男性より女性に多く、全体の 60 パーセント余りに及んでいるこ とを示している。 194 49 94 子どもは授かりもの 子どもは自然の摂理によって生まれてくるもの 子どもはつくるもの

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図2.男女別にみる妊娠・出産についての3つのシェーマへの回答 (表中の数字は協力者 356 名中の人数) 次からは本調査から得られたものであるが、「あなたは妊娠・出産についてどのようにお 考えですか」という問いに対する結果は図3のとおりである。図3は、上述の質問1から 10 までの結果を順に記したものである。「授かるもの」関連項目から見ていくと、質問1の 「避妊をすべきではないと思う」に、「あてはまらない」は 65%近くで、「やや」を含める と90 パーセントに及ぶ。「コントロールできない時」を80%近くが肯定するものの(問4)、 コウノトリが連れてくるとは 80%が考えていない(問5)。「できちゃった婚」に対しては 70%弱が容認している(問6)。妊娠したら 60%は中絶すべきでないと考えている(問9)。 一方、「つくるもの」関連ではどうか。妊娠の時期を 70%の人が、「親になる人が決められ る」と考え(問2)、「産める状況でなければ避妊すべき」であると「ややあてはまる」を含 めると85%が考えている(問3)。ここで「あてはまらない」とする 15%には、「自然の摂 理」、「授かり」派もあるだろうが、性交をすべきではないという意識も存在しそうである。 問8の「育てられないなら中絶すべき」は、割れている。質問7の回答で、子どもの人数 を80%決めることができるとしつつも、子どもの性別の決定を 70%あまりができないと考 えており(質問10)、性別の人工化までは「つくる」の射程外とする結果となっている。 129 65 27 22 55 38 0% 20% 40% 60% 80% 100% 女性 男性 子どもは授かりもの 子どもは自然の摂理によって生まれるもの 子どもはつくるもの

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図3. 妊娠・出産についての意識(表中の数字は有効回答 610 名中の人数) 次の図4は、上記の 10 項目を「授かりもの」と「つくるもの」に区分して総合し、男女 別に示したものである。図4からは、全体として「つくるもの」が多く、「つくるもの」に おいて、性別による有意差があることが分かる。 図4. 妊娠・出産についての意識の男女差 436 64 131 37 171 394 54 48 60 388 127 163 180 99 231 94 91 33 125 151 29 215 175 248 143 70 287 83 227 37 16 159 120 224 63 52 176 442 197 34 0% 20% 40% 60% 80% 100% 自分の子どもの性別は親になる人が決めること ができると思う 妊娠したら中絶はするべきではないと思う 妊娠しても育てられないなら、子どもは中絶す べきだと思う 子どもの数は、親になる人が決めることができ ると思う できちゃった婚は基本的に許されないと思う 子どもはコウノトリが連れてくるものであると 思う 避妊をしようが妊娠をコントロールできない時 はあると思う 産める状況でなければ避妊すべきだと思う 妊娠の時期は、親になる人が決めることができ ると思う 基本的に避妊はするべきではないと思う あてはまらない ややあてはまらない ややあてはまる あてはまる 2.73 2.22 2.60 2.27 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 子どもはつくるもの(因子) 子どもは授かりもの(因子) 男 女 * * p<.05

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図5. 妊娠・出産についての学年差 図6. 「授かり高・低」と「親になること」の条件 図5は、同様の意識結果を学年別に示したものである。全体的に「つくる」意識が高い が、両者とも学年の上昇に伴い顕著になる傾向を示している。 追加分析として、2つのシェーマと「親になること」との関係をみるために、「子どもは 2.78 2.29 2.72 2.28 2.57 2.09 2.61 2.22 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 子どもはつくるもの(因子) 子どもは授かりもの(因子) 1年 2年 3年 4年 3.27 3.62 3.60 3.29 3.20 3.79 3.59 2.81 3.51 3.41 3.40 3.41 3.58 3.28 3.60 3.19 3.54 3.56 3.19 3.15 3.79 3.62 2.67 3.52 3.23 3.26 3.31 3.53 3.14 3.56 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 自分より他者を優先できること 子どもを育てる力があること 他者のことを考えられること 包容力があること 子ども好きであること 責任感があること 社会的な常識を持っていること 法律的に結婚していること 十分な居住環境 周囲の理解があること 子育てに関する知識があること 妊娠や出産に関する知識があること 精神的に成熟していること ある程度の年齢であること 十分な経済力 授かり高群 授かり低群 2<3・4 1・2<4 * * * * p<.05

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授かるもの」、「子どもはつくるもの」それぞれについて、約 50%ずつになるように「授か り高群」、「授かり低群」、「つくる高群」、「つくる低群」の4 群に分類し、「授かるもの」中 央値2.20 を境に高群と低群に分類した。(授かり高群:n=356、授かり低群:n=242) 図6は、「授かり高・低」と「親になること」との関係を示すものである。多くの項目で 「授かり」低群の方が「親になる」ための条件をつける意識が高く、「親になること」を難 しいものと捉えている傾向を表している。なかでも「周囲の理解があること」、「子育てに 関する知識があること」に有意差が確認できる。 図7. 「授かり高・低」と「親になること」による変化 図7は、「授かり高・低」と「親になること」による変化との関係を示している。「運命・ 信仰・伝統の受容」以外はいずれも「授かり低群」が「授かり高群」より高い数値を示し、 特に、「生き甲斐・存在観」に有意な差が見いだせる。ただ、「運命・信仰・伝統の受容」 において有意差は確認できない。 次に、「授かり高・低」と「結婚」意識との関係を示すと図8のとおりとなった。「授か り高群」が「授かり低群」より上回っている 3 つの質問項目、すなわち「結婚しなくても 子どもは欲しい」、「生涯独身でいたい」、「満足できない時は離婚してもよい」に有意差が 確認できる。このことから、「授かる」意識は一見保守的なものと考えられがちであるが必 ずしもそうではなく、「授かり高群」が「結婚」という、いわゆる通過儀礼をあまり意識し ていない傾向があると推察できる。 図9は、「子どもはつくるもの」2.60 を境にして「つくる高群」「つくる低群」を分類し、 親となったときの変容項目との関係を表示したものである(授かり高群:n=356、授かり 低群:n=242)。これは、子どもは「つくる」・「つくるものではない」の意識の違いと「親 になること」による変化の関係を示すが、全体的に「つくるもの」が上回っている。「運命・ 信仰・伝統の受容」への対応は、図7と同様にここでも低く、「運命・信仰・伝統の受容」 と「つくる」、「授かる」意識は関係づけられた結果を示していないことが分かる。 2.85 3.11 3.23 2.30 3.23 3.01 2.81 3.02 3.15 2.31 3.20 2.94 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 自己の強さ 生き甲斐・存在感 視野の広がり 運命・信仰・伝統の受容 自己抑制 柔軟さ 授かり高群 授かり低群 * p<.05

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図8. 「授かり高・低」と「結婚」意識 図9.「つくるもの」と「親になること」による変化 2.59 1.52 2.09 3.21 2.05 3.54 3.53 2.87 1.71 2.32 3.20 2.13 3.48 3.45 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 結婚しても相手に満足できない時は離婚し てもよいと思う 生涯独身でいたいと思う 結婚しなくても子どもは欲しいと思う 結婚しても必ず子どもを持つ必要はないと 思う 結婚する気はないがパートナーとは暮らし ていきたいと思う いつかは結婚したいと思う 結婚は個人の自由であるから、結婚しても しなくてもよいと思う 授かり高群 授かり低群 2.82 3.05 3.16 2.30 3.20 2.95 2.85 3.10 3.23 2.31 3.24 3.01 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 自己の強さ 生き甲斐・存在感 視野の広がり 運命・信仰・伝統の受容 自己抑制 柔軟さ 子どもは作るもの 子どもは作るものではない * * * * p<.05 * p<.05

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追加分析はさらに上記の分類を用いて、以下の4群を設定した。 SHTH群:授かる高群×つくる高群(n=129) 子どもは授かるものであり、つくるものであると考える群 SHTL群:授かる高群×つくる低群(n=111) 子どもは授かるものであり、つくるものではないと考える群 SLTH群:授かる低群×つくる高群(n=171) 子どもはつくるものであり、授かるものではないと考える群 SLTL群:授かる低群×つくる低群(n=182) 子どもは授かるものでも、つくるものでもないと考える群 図 10.各群と「親になること」の条件 3.21 3.52 3.54 3.27 3.17 3.73 3.50 2.70 3.45 3.41 3.29 3.31 3.51 3.16 3.54 3.33 3.71 3.66 3.31 3.22 3.87 3.68 2.90 3.57 3.40 3.50 3.51 3.66 3.41 3.65 3.25 3.51 3.55 3.15 3.21 3.77 3.60 2.60 3.47 3.18 3.23 3.23 3.45 2.99 3.53 3.16 3.57 3.57 3.22 3.11 3.81 3.65 2.72 3.57 3.28 3.31 3.39 3.62 3.26 3.59 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 自分より他者を優先できること 子どもを育てる力があること 他者のことを考えられること 包容力があること 子ども好きであること 責任感があること 社会的な常識を持っていること 法律的に結婚していること 十分な居住環境 周囲の理解があること 子育てに関する知識があること 妊娠や出産に関する知識があること 精神的に成熟していること ある程度の年齢であること 十分な経済力 SHTH群 SHTL群 SLTH群 SLTL群

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図 10 の各群と「親になること」の条件との関係で分かることは、「法律的に結婚してい ること」以外は数値3よりも高い数値を示し、どの群においても「親になること」の条件 を高くみる傾向を示していることである。なかでも、SLTH(子どもはつくるものであ り、授かるものではないと考える)群はもっとも高い。しかし、全体的に高数値を示す「責 任感があること」、「社会的な常識をもっていること」、「精神的に成熟していること」など において、このSLTH群と同様に、SHTH(子どもは授かるものであり、つくるもの である)群がともに高い数値を示していることは、「授かる」と「つくる」が必ずしも背反 しない意識として存在するという意味で興味ぶかい。 図 11.各群と「親になること」による変化 図 11 の「親になること」による変化では、特に「自己抑制」、「視野の広がり」、「生き甲 斐・存在感」などにおいて、SLTH群(子どもはつくるものであり、授かるものではな いと考える)群が高いことを示唆している。SLTH群以外はほぼ均等の結果となった。 4.考察 本稿では、 今日の大学生にとって子どもの妊娠・出産観=産育意識がどのようなものか、 またそのような意識と「親になること」とはどのような関係があるのかを捉えるために、 探索的な検討をおこなってきた。 その結果、第一に、3つのシェーマを具体的にイメージづけせずに質問すると、予想に 反して、「つくるもの」より「授かりもの」とするものが多い結果となった。しかし本調査 で、既述のような 10 項目のイメージづけをすると、全体として「つくるもの」として括れ るものが多く、男子よりも女子の方が、子どもを「授かるもの」より「つくるもの」とし て意識していることが分かった。ただし、質問項目によっては、例えば、「子どもの性別の 決定」にまで及ぶと 70%あまりができないと考えており、性別の人工化までは射程外とい 2.81 3.06 3.18 2.30 3.20 2.96 2.89 3.16 3.29 2.30 3.27 3.07 2.83 3.04 3.15 2.30 3.19 2.92 2.80 3.01 3.16 2.33 3.21 2.95 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 自己の強さ 生き甲斐・存在感 視野の広がり 運命・信仰・伝統の受容 自己抑制 柔軟さ SHTH群 SHTL群 SLTH群 SLTL群

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う結果であった。 第二に、「結婚」と「授かり高群」・「授かり低群」との相関は、「授かり高群」が「授か り低群」に有意差をつくっている項目が確認でき、「授かり」意識は「結婚」を特異なもの として取り立てて意識していない傾向として考察できた。 第三に、このような妊娠・出産=産育意識と「親になること」の条件や「親になること」 による変化との関わりは、「授かり」低群(「つくる」高群)が、「親になること」の条件や 「親になること」による変化を高くみる傾向を表していることが分かった。「授かり」イメ ージに隣接すると思われた「運命・信仰・伝統の受容」項目においては、「つくる高群」・「つ くる低群」との相関関係はみられなかった。 第四に、4つの群に分類した分析では、どの群においても「親になること」の条件が高 くみられている傾向があることが分かった。とりわけ、SLTH(子どもはつくるもので あり、授かるものではないと考える)群は、「親になること」の条件を高く設定しているが、 同様にSHTH(子どもは授かるものであり、つくるものである)群も高い数値を示して いた。「親になること」による変化においては、SLTH(子どもはつくるものであり、授 かるものではないと考える)群が特に高い数値を示していた。4分類法によって、各群に 相反する違いが見いだせると想定していたが、覆された。子どもを妊娠・出産した者を対 象とした従来の先行研究が明らかにしているとおり、「授かる」と「つくる」とが対局の意 識ではないことが本調査の結果からも読み取れた。 現在の大学生の学びの履歴を概観するに、1989 年の学習指導要領の改訂では、道徳の「目 標」に「生命に対する畏敬の念」がつけ加えられ、議論となった。また、義務教育段階に おける道徳の領域や小・中・高等学校で1998(高校は 1999)年から導入された「総合的な 学習の時間」での取り組みによって、いのちや子ども、人間存在をよりリアルに捉えよう とする実践の蓄積がなされてきた時期と重なっている。こうした教育課程における産育意 識の形成のあり方を検証しつつ、「親になること」の現代的意義を検討していく必要がある のではないかという課題が示唆された。 今日、様々な視点から問題とされる、若者にとっての「親になること」といったテーマ 群に対して、本稿では妊娠・出産=産育意識・心性という視点からアプローチしてきたが、 次の点が課題として残された。まず、本研究で使用した質問項目の妥当性についてである。 先行研究で用いられている質問項目に独自に考案した項目を追加して調査をおこなったが、 こうした項目の妥当性を検討することが求められる。 従来の研究とは異なり、実際に結婚や妊娠・出産を経験したことのない大学生を対象に おこなった質問紙調査によって、今日の大学生らの産育意識の概略や、そうした意識と「親 になること」との関係について概略を得ることはできた。しかし、本稿に関わる内容はき わめて演繹的な手法によって導かれたものであり、妊娠・出産、いのちについて考える学 びの機会の有無や内容、社会的な文脈と関わらせてその意識の構造が明らかにされたわけ ではない。今後は、面接調査などによってそれらと関わらせたアプローチが必要である。

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文献 ・「産育と教育の社会史」編集委員会(代表・中内敏夫)『叢書-産育と教育の社会史1~ 5』新評論、1984~1985。 ・久冨善之・佐藤郡衛(1985)「乳幼児の家庭生活・しつけと産育」、『柏市教育計画樹立の ための基礎調査報告書』柏市教育計画研究委員会。 ・沢山美果子(1986)「近代日本の家族と子育ての思想」、順正短期大学研究紀要 15。 ・中内敏夫他『叢書〈産む・育てる・教える-匿名の教育史〉1教育』藤原書店、1990。 ・阿部謹也・原ひろ子他、『叢書〈産む・育てる・教える-匿名の教育史〉2家族』藤原書 店、1991。 ・中山まき子(1992)「妊娠体験者の子どもを持つことにおける意識-子どもを〈授かる〉・ 〈つくる〉意識を中心に-」、発達心理学研究3。 ・柏木惠子・若松素子(1994)「『親となる』ことによる人格発達:生涯発達的視点から親 を研究する試み」、発達心理学研究5。 ・柏木恵子・永久ひさ子(1999)「女性における子どもの価値-今、なぜ子を産むか-」、 発達心理学研究 47。 ・柏木恵子『子どもという価値』中公新書、2001。 ・本田和子『子どもが忌避される時代』新曜社、2007。 ・大石美佳・松永しのぶ(2009)「大学生の自立の類型と関連要因」、日本家政学会誌 60。 ・奥田雄一郎・後藤さゆり他(2010)「親になること」の今日的意義の再検討と青年期のた めの次世代教育プログラムの開発:経過報告、共愛学園前橋国際大学論集 10。 付記 本研究は平成 20 年度科学研究費挑戦的萌芽研究(課題番号 21653086):「『親になること』 の今日的意義の再検討と青年期のための次世代教育プログラムの開発」(研究代表者:後藤 さゆり)の助成を受けている。

図 10 の各群と「親になること」の条件との関係で分かることは、「法律的に結婚してい ること」以外は数値3よりも高い数値を示し、どの群においても「親になること」の条件 を高くみる傾向を示していることである。なかでも、SLTH(子どもはつくるものであ り、授かるものではないと考える)群はもっとも高い。しかし、全体的に高数値を示す「責 任感があること」、「社会的な常識をもっていること」、「精神的に成熟していること」など において、このSLTH群と同様に、SHTH(子どもは授かるものであり、つくるもの である)群

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Q7 

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