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議会制民主主義 : 〈medium〉としての議員

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(1)

議会制民主主義 : 〈medium〉としての議員

著者

糠塚 康江

雑誌名

憲法問題

30

ページ

75-87

発行年

2019-05

URL

http://hdl.handle.net/10097/00131261

(2)

議会制民主主義

(1)

-〈medium〉

としての議員

糠塚

康江(東北大学)

I .

日本国憲法の制度設計

日本国憲法制定までに、議会制 は、民主制と対立した時代 、民主主義と 結びつき(議会制民主主義)、議会が統治機構の中心を占めた(議会中心主義) 時代 、第1次大戦後の機能障害に苦しみ、全体主義の挑戦を受けた凋落の 時代 を経験した。 このうち、議会絶頂期である議会中心主義の確立は、統治機構の設計者 の意図によらずして、運用の中で出現した。イギリスでいえば選挙民を 「政治的主権者 」(A.V. ダイシー)と呼んだ時代であり、フランスでは共和制 が定着した1880年代以降である。 政治秩序を形成する下部構造 (le politique) に対応して、政治権力のあり方、政治制度のあり方 (la politique)

に変化が及んだ(2)と、さしあたり理解しておきたい。これに対して、日本 国憲法の制定者 は、端的に議会優位の統治機構 (la politique) を創襄設計 した。 1. 日本国憲法(憲法典)による「制度設計」:議会優位の制度(3) 天皇主権原理から国民主権原理への転換により、日本国憲法は天皇を 「国政に関する権能を有しない」(憲4条1項)存在に無力化し、大日本帝国 憲法第1章の天皇の大権作用を解体して、それを国会・内閣・裁判所に再 配分した(軍に関する大権は、9条の存在によって空白化された)。 国会は、「全国民を代表する選挙された議員」(憲43条1項)で組織される 両議院で構成される。議員の歳費が憲法上保障され(憲49条)、議員の身 分が強化された。国会は「国権の最高機関」(憲41条)だが、国民主権の下 での最高機関は、実際は 「有権者 団」(憲15条) ないし公民団(憲96条)で ある。19世紀に確立した議会中心主義において、議会は法的主権者であっ たが、日本国憲法の議会中心主義は、そのような意味ではない。 「唯一の立法機関」(憲41条)として、国会の立法権は強化されたが、憲 75

:,

(3)

第2部 日本国憲法の「制度設計」と「プラクシス」:統治機構論を中心に 法は人権条項と9条の存在によって実質的な限界を設け、違憲立法審査権 を裁判所に付与する(憲81条)ことでこの限界づけを担保した。法律は、 消極的には行政から人々の自由を保障し、積極的には主権者たる国民の民 主的決定を媒介する。さらに法律は、国民の自己統治の仕組みである国家 の内部領域をも秩序づける。法律の役割は広範に及び、立法権の管轄が拡 大され、法律概念を内容的に限定することは難しい。国会は、唯一の立法 機関として、内閣をはじめとする他の機関の干渉を受けることなく、自律 的な立法活動を保障される。 国会による内閣ないし行政に対するコントロールには、法的コントロー ルとして、法律による行政の原則がある。次に、政治的コントロールとし て、内閣に政治指導を集中させたうえで、国会が内閣の政治責任を追及す る。内閣は国会に対して連帯して責任を負い(憲663項)、衆議院で不信 任決議案が可決されれば、10日以内に衆議院を解散しなければ、内閣は 総辞職しなければならない(憲69条)。また、日常的に内閣の政治責任を 追及する仕組みが整えられている。議院の国政調査権(憲62条)、国務大' 臣の議院出席と答弁義務(憲63条)、首相の国会に対する報告義務(憲72条) などにより、内閣は国会に対し説明責任を負う。さらに憲法は、財政権の 内容的限界を定めつつ(憲9条、89条)、国会による財政コントロールの手 続きを定める。加えて、国会は立法権を超える権能を付与されている。こ れを議会の「執政作用」と呼ぶかは措くとして、例えば条約の締結に国会 の承認を必要とする(憲61条)ことで、内閣に単独で外交作用を行使させ ないようにしている。憲法の改正の発議は国会が行うと定め(憲961項)、 内閣にその権限はない。以上から、議会優位に 「改造」した議院内閣制が 帰納合れら。もっとも、解散権規定は憲法上欠鋏している。のちに解散権 論争を通じて、議院内閣制の本質が争われた所以である。 憲法は、少数派権とも呼ぶべき定めも置いている。各議院の総議員の4 分の1以上による臨時会召集要求権(憲53条) は、国会の自律的召集の可 能性をもつと評価されている。また、出席議員の3分の2の特別多数によ る議決を要する秘密会の要件(憲571項)、出席議員の5分の1以上によ る各議員の表決の会議録記載要求(憲57条3項)、資格争訟による議席喪失 (憲55条).懲罰としての議員除名(憲582項) について出席議員の3分の 2の特別多数による議決、衆議院による法律案の再議決についての出席議 員3分の2の特別多数による可決(憲592項)がそれであぞ。.月主贋塵誌 の国会中心主義は、国条枷方(さらふふゑ薮派)人ら対抗方を組み込んでい 76 議会制民主主義―-〈medium〉としての議員 ることが確認できる。 2. 国会法(附属法)による「制度設計」(4) 国会法(昭和22年法律79号)は、GHQの指導下で制定された。おりしも 本国のアメリカでは、強い行政権に対抗して議会権力を強化した立法府再 組織法(1946年) が制定されたところであった。GHQの担当者の念頭に あったのは、このアメリカ ・ モデルの 「国会法」であった。かくして、読 会制は廃止され、議院法時代の本会議中心主義から委員会中心主義へ大き く方針転換された。その結果、権力集中型の議院内閣制の枠の中で、権力 分散型の常任委員会を運用しなければならなくなり、当初より国会運営に 難しさがあった。 国会が言論の府であることに鑑み、「各議院は、国政に関し議員に自由 討議の機会を与えるため、少なくとも2週間に1回その会議を開くことを 要する」 (781項)として、本会議に自由討議制が導入された。さらに議 員の待遇改善(議員の給与、公務に必要な旅費その他の手当の支給、秘書、議員会 館 )、活動の補佐機構(専門調査員、 議院法制局、国会図書館(調査及び立法考査局 を含む))の整備・設置が定められた。 3. 国会制度の特徴 以上を踏まえ、委任・責任の連鎖関係〔有権者一議会一首相ー大臣一省 庁〕、政治権力の創出と抑制を包括的に捉える見方(5)が示される一方、 権 力分立制と組み合わされた国会中心主義および権力分立主義と組み合わさ れた議院内閣制」のシステム(6) と説明される。「国会は内閣を通じて以外 に行政権に関わる事項に介入することができず、内閣は国会与党を通じて 以外に立法権に関わる事項に介入もできない」し、「国会中心主義の議会 運営は、制度的に内閣による介入を排除した上で、多数党と少数党が協力 して合意を調達しながら進める慣行を引き継いだ」、コンセンサス ・ モデ ルの国会像である。しかし、議院内閣制は「少数党の反対を押し切っても 内閣提出法案を成立させる」。ここに変容が生まれる。

II .

プラクシス

(7) 1. 55年体制 GHQの指導の下で、国会議員の活動は自由闊達であったと伝えられて いる。議員個人の活動を可能にする自由討議制活用の経験や、参議院緑風 77 C

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(8)

参照

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