Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
重度慢性歯周炎患者に歯周基本治療を中心に対応した一
症例 : 歯科衛生ケアプロセスに基づく歯科衛生ケア
Author(s)
森本, 陽子; 上島, 文江; 藤波, 弘州; 古澤, 成博; 齋
藤, 淳
Journal
歯科学報, 111(2): 235-235
URL
http://hdl.handle.net/10130/2405
Right
目的:唾液中には,多くの抗菌性タンパク質が存在 している。高プロリンタンパク質(ペプチド)群は 唾液タンパク質のおよそ70%を占めているが,その 生理機能についてはほとんど明らかにされていな い。本研究では,高プロリン塩基性タンパク質 P-B あるいはそのペプチド断片を用いて,歯周病原細菌 に対する増殖抑制効果および内毒素のヒト培養細胞 からの炎症性サイトカイン誘導能に対する抑制効果 について検討した。
方法:Aggregatibacter actinomycetemcomitans 310a,
Porphyromonas gingivalis ATCC 33277および Fuso-bacterium nucleatum ATCC 25586の増殖に対する P -B および合成ペプチド(0.14mM∼1.1mM)の抑 制効果を液体培養によって検討した。またA. actino-mycetemcomitans Y4株 か ら 精 製 し た lipopolysac-charide(LPS),P-B 精製標品および4種類の合成 断片ペプチド,ヒト正常大動脈内皮細胞(HAEC) を実験に用い,P-B の内毒素活性に対する効果を調 べた。培養液に LPS(100ng/ml)単独あるいは LPS と P-B サ ン プ ル(P-B19μM,合 成 ペ プ チ ド0.11 mM)を同時に加え細胞を培養し,17時間後の培養 上清中の IL-6 量を ELISA キットで測定した。 成績:高プロリン塩基性タンパク質 P-B は,用い た3種の歯周病原細菌の増殖に対して抑制効果があ ることがわかった。また用いた4種のペプチド断片 も効果の強弱はあるものの,増殖抑制効果を示し た。A. actinomycetemcomitans LPS 刺激によって IL -6 産生量は増加し,この LPS によるサイトカイン 産生誘導は P-B によって有意に(p<0.05)抑制 された。4種類のペプチド断片のうち1種類は,同 様の抑制効果を示した。 考察:高プロリン塩基性タンパク質 P-B あるいは そのペプチド断片は,歯周病原細菌の増殖および病 原因子である LPS に対して抑制効果を示し歯周病 に対して防御的にはたらくことが示唆された。 会員外共同研究者:斎藤英一(新潟工科大学), 橋本健司,谷口正之(新潟大学・工学部),伊勢村 知子(日本歯科大学新潟短期大学) 目的:現在,歯科衛生士には個々の患者のニーズへ の対応が求められている。しかし,日常臨床におい て歯周病患者へ歯科衛生士が行うケアは画一的にな りがちである。今回,重度慢性歯周炎患者に対し, 歯科衛生ケアプロセスに基づいた歯周基本治療を 行ったので,その概要と評価について報告する。 症例:患者は45歳の男性。疲労時や咬合時の違和 感,ブラッシング時の出血を主訴に近医より紹介さ れ,東京歯科大学水道橋病院に来院した。全身状態 は良好 で あ っ た。全 顎 的 に プ ロ ー ビ ン グ デ プ ス (PD)4∼8mm の歯周ポケットが存在し,歯肉 の発赤,腫脹,出血ならびに歯石の沈着が著明であ り,プラークコントロールは不十分であった。#17 は動揺度2度で挺出がみられた。エックス線写真上 では,臼歯部を中心に歯根長1/2以上の骨吸収と歯 肉縁下歯石の沈着が認められた。以上の検査結果よ り,広汎性重度慢性歯周炎と診断され,歯科衛生ケ アプロセスに基づいた歯周基本治療を開始した。 まず,セルフケアおよび口腔関連 QOL を含むア セスメントに基づき,歯科衛生診断を行い,歯科衛 生ケアプランを立案した。歯科衛生介入では,プ ラークコントロールの重要性,カリエスリスクと フッ化物について説明し,スクラビング法,バス 法,デンタルフロスの使用方法を指導した。スケー リング・ルートプレーニングは,浸潤麻酔下にて 行った。担当医と相談し,主訴の解決のために予定 より早期に#17の抜歯を行った。歯周基本治療後の 再評価では,PCR スコアと PD4mm 以上の部位は 減少した。しかし,歯科衛生ケアプランで設定した 「期待される結果」には及ばず,評価は「部分達 成」とした。咬合時の違和感は担当医による抜歯に 伴う歯肉の炎症の改善により消失し,「全面達成」 とした。また,口腔関連 QOL スコアも改善した。 当初,歯周外科治療を計画していたが,患者の希望 や社会的機能を考慮し,ミノサイクリン塩酸塩を用 いた局所薬物配送システム(LDDS)による治療を 実施後,メインテナンスに移行する予定である。 考察:今回行った歯周基本治療の結果,歯周組織の 改善のみならず,口腔関連 QOL の改善が得られ た。歯科衛生ケアプロセスに基づき患者とかかわる ことによって,個々の患者のニーズに合ったケアを 行うことへの意識が高まった。