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登場人物の意味構造 : 「赤ずきん」を題材にして

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Academic year: 2021

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全文

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登場人物の意味構造

「赤ずきん」を題材にして-岡 野 雅 雄

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Dramatis Personae

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Rotkapchen"

Masao Okano

Abstract

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1.はじめに 我々の生活は物語に満ちている。伝統的な昔話・伝説という枠を超 えて、活字媒体によって表現された小説その他の文学作品、さらに現代 の大規模なメディアを通じて与えられる様々な物語は、映画、テレビド ラマは言うに及ばず、マンガやテレビゲームなどまでも含めてみれば膨

(2)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第10号 大なものであり、まさに我々は「物語消費

J

(大塚.1991)を行っている と言っていいであろう。新しいところではマルチメディア作品を制作す る際にも、「物語文脈」をインターフェースに用いることでユーザーが 作品世界を探求するということが行われている(飯吉他.1986)。話し ことばで伝えられるものに限っても、「民話を語る」という伝統的な形 式こそ衰微してはいても(ただし、ストーリーテリングの活動による活 性化は見逃せない)、都市伝説や噂話という新しい形式で、次々に新し い話を流行させている。このような消費される物語ばかりではなく、自 分が自分に語ってみせる物語、すなわち「ライフストーリー」、生活の 中での行動の台本である「スクリプト」等々も物語の一種であると考え ると、物語と無縁の生活をしている人はいないといえる。物語という形 式は、たんに文学のジャンルではなく、我々がものごとをとらえ、意味 付けを行うための重要なしくみのひとつであるとさえ考えられる。 専門的にはこの物語の研究は、いくつかの分野において行われており、 それぞれ対象と方法が異なっている。「物語

J

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民話(昔話)

J

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伝説

J

な どの細分化されたジャンルごとに専門的に特化した研究が行われており、 包括的な用語を用いることが難しい。「物語」ということばよりも、河 合(1997)のもちいている「おはなし

J

というようなことばのほうが、 我々の心底にある物語性をとらえるためには、適しているかもしれない。 本論文では、民話を題材としているが、最終的に目標とするのは広い意 味での「物語(おはなし)Jの仕組みであることを断っておきたい。

2

.

量場人物の理論 民話の著しい特徴は、それがお互いによく「似ている」ということで ある(池上.1982)0

r

似ているjのはなぜか、どのように似ているのか を追求することで物語論は発展してきたといっても過言ではない。この

(3)

登場人物の意味構造一「赤ずきん」を題材にしてー 類似性は大きく二つに分けて考えることができ、一つは話の筋の類似性 であり、もう一つは本論文の問題である登場人物の類似性である。 民話の登場人物についての理論的な研究は、構造主義的な形態論によ る分析と、深層心理学的な分析とに大別される。 形態論的な分析は、 Propp( 1969 )を端緒とし、さらにそれを継承発 展させたGreimas(1966)らの研究により、民話の登場人物の背後に、 ある限られた数の抽象的な行為者を想定できることを明らかにした。 Proppは民話の要素を不変項と可変項に分け、ロシアの「魔法昔話」 (つまり本格昔話)100話を材料にこの不変項の抽出を試みた。その分 析結果によれば、それらの民話は7人の登場人物の物語であるという。 例えてみれば、ロシアの民話は

7

人の役者が名前や扮装だけを変えて

1

つの舞台でいろいろな役を演じているようなものである。この人物とし て抽出されたものは、「敵、贈与者、援助者、王女とその父、委任者、 主人公、贋の主人公」の

7

人である。 Greimasはそれを修正して、「主 体、対象、援助者、敵対者、送り手、受け手」の

6

つの行為者(actant) のモデルを提出した。そしてさらに深層構造を抽出することで、これら の行為者の根底に、「欲望する

J

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知識をもっ

J

r

能力をもっ」の3つの 構造があるとした。 このように、表面的に多様な登場人物の背景に型としての限られた数 の一般的な行為者を考えることは、 Proppらのような構造主義者だけに みられるものではない。深層心理学は民話を無意識の現れとみるという 点で、民話の分析に大きな影響を与えた(河合, 1977, 1979)。その中 でも最も民話分析に実績のあるユング派では、登場人物を「元型

J

の表 れとみる。これは、登場人物の多様性の背後に単純性を求めるという点 で、上の構造主義的なアプローチと共通性があると言える。ただ、その 深層あるいは抽象的な行為者を立てるときの手続きには、大きな相違が

(4)

存在するし、結果立てられた行為者にも大きな違いがある。この解釈の 違いは、深層心理学名派の中にも存在する。河合(1

9

7

9

)

は、「赤ずきん」 の分析例を精神分析、新フロイト派、ユング派の各立場から例示し、そ の共通性と相違点を説明している。

3

.

本研究の目的 これら理論的な研究は、鋭い洞察を含むものの、どうしても主観的な ものとならざるを得ないという欠点がある。

Clement

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Colby

(1

9

7

4

)

は、民話研究を概観した結論の部分で、この分野では検証の問題が大き な課題であることを述べているが、そういう点からすると、客観的に評 価できるような経験的な方法が求められているといってよい。本研究は 上記のいずれとも異なった実験言語学的な方法

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によ り、多様な登場人物の背後に存在する一般的な因子を探るのが目的であ る。具体的には、意味微分法

(Osgood

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9

5

7

)

を用いて、ごく普通の読 み手の印象をたくさん集め、そこに浮かび上がってくる共通因子を取り 出すという方法をとる。こうすることで、多人数一人一人の直観的な読 みの集積点が客観的に示されてくるという利点があり、ある個人(研究 者)の主観に基づく研究を補完することができるはずである1 0 意味微分法に基づいた民話の研究として、芳賀・岡野(1

9

8

6

)

は、「ヘ ンゼルとグレーテル」の主要な登場人物を取り上げ、大学生を対象にし て、それがどのような印象を与えているかを測定した。そして、その結 果に数量的な分析を加えることで、主要な登場者が民話の小世界の中で どのような関係をもつものとして話の聞き手たちに理解されているかが 示されること、そして、それが民話あるいは児童文学の作品研究に役立 つ分析手段となりうることを示唆した。また、数量的な分析が多くの登 場人物の相互関係を同時に比較するような場合には有効な手段であるこ

(5)

登場人物の意味構造ー「赤ずきんJを題材にしてー とも示された。残された問題として、分析結果が民話というジャンル全 体に対してどれほど一般性があるかという点があった。分析結果は用い た民話素材「ヘンゼjレとグレーテル」にどの程度規定され、民話全体 (あるいはもっと限定して、グリム童話全体)の一般的傾向については どの程度を反映しているのかが、明らかではなかった。話の内容によっ て違う変化する部分と不変な部分を明らかにする、というのが、 Propp に典型的に代表されるような民話研究の一つの目標であるとするならば、 これは重要な問題点であるといえる。 本研究は、異なった素材「赤ずきん

J

をもちいて、しかし、同じグリ ム童話の中で、そして他の条件はなるべく動かさずに分析することで、 より一般性な傾向を見ることとした。また、「赤ずきん」は、民話の中 でも最も代表的なものとしてよく親しまれている素材であり、分析家た ちの分析例も比較的充実していることも、選択の理由である。

4

.

物語要素の印象の分析方法 実験素材として用いた「赤ずきん

J

(KHM26)のテキストは、『グリ ム童話集.1 (金田鬼一訳, 1979年版,岩波文庫)所収のものとした。 被験者は、東京都の四年制大学で心理学の講義を受講した計96名の 学生(内男子24名,女子72名)である。外国人留学生や海外での生活が 長い者は、一定の基準により除外した。したがって、ここで測定したも のは、平均的な日本人大学生の反応ということになる。 物語を聞いて感じた意味を測定するためには、意味微分法を用いた。 具体的には、教室で「赤ずきん」を読み聞かせた後、民話中の12の登 場者(表lに示す)についての印象を、一つずつ、 12枚の評定票に7段 階で評定させた。登場者としては、人物の他に、「花

J

のような小道具 的なもの、「森」のような背景的なものを含めた(以下では登場人物と物

(6)

文 教 大 学 言 語 と 文 化 第10号 とを含めて「登場者」と呼ぶことにする)2。評定票は、オズグッドによ る意味微分法の評定票の作成方法に従ってつくった

25

尺度の

7

段階評 定票である(用いた尺度は、表

1

に示しである。一つの尺度は、「まず い」ー「おいしい」のように対立する意味からなり、「非常にまずい」 が

1

、「非常においしい」が?となる。以下同様である。)。 こうして得られた意味の評定を集計して、平均値をプロフイールにま とめ、さらにそれらの意味距離に基づき、クラスター分析と因子分析と を行った。

5

.

畳場者の印象の分析

5

.

1

.

各登場者の印象と相互関係

1

2

の登場者それぞれについて、被験者全体の平均を各尺度ごとに求 めたもの、つまり平均意味得点は、表

1

のようになった。さらにこの平 均意味得点に基づき、意味距離と相関係数を求めたものが表

2

である。 この内容の解釈については、以下の分析と一緒に述べたい。

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法による登場章の昭畠の評室値{杢担意味得点]

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1

まずい ーおいしい 6.03 2.84 4.38 2.11 3.61 4.53 5.09 6.49 4.14 2.38 4.19 4.81 かわりやすいーかわりlこ〈い 2.64 5.01 5.15 3.76 4.91 4.97 2.80 4.19 3.06 5.30 5.03 3.72 おもい ーかるい 5.93 4.09 3.27 3.30 2.82 2.88 5.79 3.80 4.19 2.18 3.96 5.15 すきな ーきらいな 2.72 3.01 3.26 5.23 3.17 2.83 2.60 2.24 3.91 4.19 3.00 2.89 よわい 一つよい 3.10 1.73 5.45 5.94 6.19 4.89 2.69 3.68 4.24 5.14 3.01 4.06 じみな ーはでな 5.11 2.36 3.82 4.67 3.17 3.72 5.65 4.38 4.05 2.65 2.39 6.22 ふるい ーあたらしい 5.52 2.04 3.94 3.93 3.56 3.04 5.56 5.04 4.28 2.71 2.13 5.85 たいせつでないーたいせつな 5.68 5.16 5.33 3.71 5.25 5.24 4.93 5.42 4.15 3.72 5.32 5.58 さわがしいーしずかな 2.98 6.05 4.33 2.42 4.53 5.64 4.54 4.54 4.80 4.74 5.98 2.81 ざんこくなーしんせつな 4.91 5.50 5.27 1.70 5.17 4.08 4.45 5.15 3.49 3.20 4.77 4.46 ふつうでなし‘ ふつうの 4.66 5.48 5.67 3.23 5.11 4.40 4.60 5.43 3.86 4.70 5.23 3.94 昔、たし‘ ーやわらかい 6.23 3.68 4.39 2.29 2.72 3.98 5.91 5.29 4.06 1.50 3.96 5.75 わるい ーよい 5.19 5.26 5.52 1.81 5.47 4.53 4.76 5.38 3.09 3.72 4.97 4.77 とおい ーちかい 4.68 3.47 4.42 3.66 4.00 2.95 4.57 4.76 3.32 4.23 2.68 4.22 かっばつなーかつぽつで 2.20 5.96 3.24 1.92 2.82 4.64 3.30 3.98 3.52 4.64 5.32 2.31 あかるいーくらい 1.71 4.32 3.20 4.75 3.61 4.03 1.97 2.50 4.17 4.88 3.95 1.77 まちがったーただしい 4.27 4.88 5.63 2.02 5.44 4.27 4.30 5.11 3.02 4.01 4.70 4.52 あつい 一つめたい 3.07 3.74 3.30 4.89 3.41 4.45 3.91 3.69 4.41 5.46 3.55 2.67 まっすぐなーま古まった 2.77 3.36 2.23 5.44 2.57 4.00 3.52 3.43 5.58 4.17 3.41 3.43 みにくいーうつくしい 5.55 3.78 4.92 1.79 4.09 5.65 6.46 5.43 4.27 3.19 4.85 5.75 はやい ーおそい 3.39 5.88 3.30 1.65 2.71 5.07 3.96 4.08 4.61 4.63 5.10 2.79 おんならしいーおとこらしい 2.94 2.94 2.58 5.67 6.18 4.21 2.09 3.17 3.93 4.73 3.01 2.43 かどばったーまるい 5.95 4.69 4.67 1.93 2.88 4.45 5.42 5.50 4.20 3.99 4.75 5.59 おおきいーちいさい 6.17 4.80 3.14 2.20 2.04 1.77 5.59 4.16 4.39 3.78 5.49 5.21

(7)

登 場 人 物 の 意 味 構 造 一 「 赤 ず き んjを題材にしてー 表2 登場者の聞の意味距離および相関係数 赤

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かお 玄えお

道わき 森 望おλき書, 人狩 狼 石 ん し ろ 赤 ず き ん 0.893 0.903 0.731 0.342 0.064 -0.065 -0.247 -0.093 -0.146 -0.486 -0.782 花 3.157 0.846 0.713 0.277 0.153 0.085 -0.108 0.026 -0.298 -0.576 -0.739 ず き ん 3.052 3.536 0.662 0.418 -0.082 -0.082 -0.173 -0.250 -0.078 -0.316 -0.750 お か し 4.800 4.356 4.939 0.679 0.344 -0.239 0.304 0.186 0.192 -0.678 -0.478 お か あ さ ん 7.208 6.937 6.302 4.375 0.338 -0.552 0.430 0.219 0.645 -0.396 -0.062 お婆さんの家 8.473 7.450 8.523 6.000 6.027 0.099 0.447 0.891 0.069 -0.698 0.176 わ き 道 7.801 6.665 7.150 6.599 7.182 6.219 0.020 -0.206 -0.466 0.278 -0.023 森 9.267 8.060 8.404 5.830 5.260 5.185 5.335 0.331 0.463 -0.202 0.301 お 噴 き ん 9.719 8.568 9.821 7.270 7.123 2.786 7.255 6.300 0.019 -0.649 0.264 狩 人 10.06910.019 9.178 7.516 4.914 7.837 7.796 5.764 8.607 0.132 0.305 狼 12.899 12.584 11.532 12.208 10.906 11.979 7.548 9.877 12.528 9.037 0.346 石 こ ろ 11.53010.612 10.714 9.018 7.552 6.730 5.860 5.808 6.925 6.590 7.564

5

.

2

.

クラスター分析の結果 これらの登場者全体の聞の関係を明らかにするために、クラスター分 析を行った。具体的には、各尺度のユークリッド距離を用い、ウォード 法でリンクするという方法をとった。表

1

の平均意味得点の束(プロフィー ル)から分かるお互いの類似性が、ここでは一つの樹形図に表されてい る(図1)。たとえば、「赤ずきん」・「ずきん」・「花」、また「お婆さんj と「お婆さんの家」が互によく似ていることが示されている。「お母さ ん」と「お菓子j も近い関係にあるが、これはお母さんが作ってもたせ たお菓子であるということと符合する。まとめてみると、ある登場人物 とその付属物(あるいは

J

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n

の用語を用いれば「隣接」的なもの) とは意味的によく似ており、ひとつのまとまりを作るということである。 「森

J

と「脇道

J

、さらに「石ころ」が、同じクラスターを作っているの も、広い意味での「隣接」性を示すものとしてとらえられるかもしれな い。「お母さん・お菓子」のクラスターは「狩人」とひとつのクラスター を作っている。平均意味得点を見ると、「お母さん」と「狩人」とはよ

-7

(8)

10 く類似しており、「男女

J

の属性によって分かれたようになっているこ とがわかる o

r

狼」は、他の登場人物のすべてと大きく隔たっており、 登場者の意味空間でいわば孤立した島となっている。このウォード法に よる分析結果では、「狼

J

は、「狩人・お母さん」群や「森j の群、「お 婆さん」群と最終的には一つになり、いわば脇役群をつくる。そして 「赤ずきん」を中心とした群、いわば主役群と最終的なリンケージまで 意味対立を持つことになる。 こうしてみると、この民話では、タイトルともなっている、「赤ずき ん」という主役(とそれをとりまくもの)はくっきりと目立った意味特 性を持っていること、そして、その対立者としては「狼」が目立つた存 在であることが確認できる。また、全体の布置からあらためて言えるこ とは、小道具を含めた登場者は、それぞれぱらぱらな個性を発揮するの ではなく、かなり小数個の意味的まとまりに凝集するものであるという ことである。 結合距離 20 15~ ・・ ・…・・・・・・・・ι・山・

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2 引J 蝋』 世』 4 H♀ 2 同 J.;(l 、,可 、恥4 鍬 .;(l 園1 登場者の印象のクラスター分析(ウォード法)

(9)

-8-霊場人物の意味構造一「赤ずきん」を題材にして

5

.

3

.

因子分析の結果 このような登場者の背後にある意味構造を探るために平均意味得点を もとに、さらに因子分析(主因子解法)を行った。その結果、カイザー基 準により

4

因子が抽出された。パリマックス回転を行った結果の因子負 荷 量 を 表

3

に示す。さらに因子と意味の関係を明らかにするために、尺 度として用いた各意味について表

4

のように因子得点を求めた。その上 で、それぞれの因子に関わる平均意味得点、因子得点を参考にしながら、 因子の命名を行った。 表3 登場者の印象の因子負荷量(パリマックス因子) 因子I 因子E 因子皿 因子W 赤ずきん 0.959 0.050 -0.076 0.078 花 0.936 目日189 -0.044 -0.134 石ころ -0.850 0.117 0.249 目。046 狩人 -0.179 -0.150 0.711 0.567 森 0.149 0.308 0.869 -0.143 お婆さんの家 0.002 0.926 0.239 -0.001 お婆さん -0.163 0.947 0.058 0.101 お母さん 0.363 0.188 0.631 0.582 お菓子 0.769 0.306 0.413 0.188 脇狼道 --0.0.049103 -0-0..814043 -0.010 0.003 -0.144 -0.957 ずきん 0.939 -0.139 0.037 目。097 表4 意味尺度の因子得点 因子I 因子H 因子皿 因子W まずい ーおいし¥,0' 1.33 -0.18 0.53 -0目36 かわのやすい ーかわりにくい -1.08 0.45 0.60 l目40 おもい ーかるい 0.92 0.09 -1.48 -0.22 すきな -きらいな -1.18 -1.00 -1.45 0.47 よわい 一つよい -0.74 -2.03 1.91 0.27 じみな はでな 1.07 ーし52 -0.33 -0.19 ふるい あたらしい 1.24 -1.59 0.42 -0.08 たいせつでない ーたいせつな 0.67 0.30 1.52 -0.12 さわがしい ーしずかな -0.63 1.43 1.34 -1.34 ざんこくな ーしんせつな 0.37 0.76 0.10 1.23 ふつうでない ーふつうの 0.00 0.68 。.89 0.63 かたい やわらかい 1.60 -0.05 -0.44 -0.25 わるい 一よし、 0.43 0.73 0.46 1.60 とおい ーちかい 0.14 -0.72 0.83 1.42 かっばつな ーかっばつでなし3 1.20 1.64 -0.79 0.20 あかるい ーくらい -1.83 -0.11 -0.55 -0.15 まちがった ただしい 0.09 目。50 0.32 1.83 あつい つめたい -0.97 -0.41 0.17 -0.81 まっすぐな まカさった -0.67 -0.78 -0.07 -2.43 みにくい 一うつくしい 1.28 .0.31 1.36 -0.83 はやい ーおそい -0.67 1.50 -0.03 -1.30 おんならしい ーおとこらしし、 -1.43 -1.39 0.30 0.38 かと:'Iiった まるし、 0.94 0.70 0.19 -0.43 おおきい ちいさい 0.69 1.02 2.21 -0.24 地、しこい liかな -0.38 -0.16 1.09 -0.65

(10)

-9-第

I

因子は、「かわいらしさ(対醜さ)Jの因子と名づけることができ る。因子得点の高いものから見ると、この因子は「明るい

J

i

やわらか い

J

i

女らしい

J

i

おいしい

J

i

美しい」などの意味の複合体である。審 美的な評価因子と位置づけられる。登場者としては、「赤ずきん」や 「ずきん

J

i

J

などが一方の極にあり、「石ころ」がその対極にあるこ とがわかる。この因子は全体の分散の約

4

割を占めており、この作品の イメージを規定する主要な要素であることがわかる。 第

E

因子は「活力(対衰弱

)

J

の因子である。「弱い

J

i

活発でない」 「古い

J

i

地味な」などの意味が強く関わっている。「活動性」に「力量 性」の因子が混じったものと考えられる。

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5

7

)

では、 多くの意味徴分法を用いた研究例において、「活動性

J

と「力量性」の 因子が混ざった因子が見出されることを述べ、それを

dynamism

因子と 名づけているが、ここでの因子はそれに近い。「お婆さん

J

(と「お婆さ んの家J)、およびその対極の「狼」がこの因子の負荷量が高い。この第

E

因子は、全体の分散の約

4

分の

l

を説明している。 第E因子は、「善意の力(対悪の弱さ)Jの因子と考えられる。「大き い

J

i

強い

J

i

大切な

J

i

重い

J

i

好きな」などの意味が関わっており、登 場者としては「森

J

i

狩人

J

i

お母さん」との関係が強い。「力量性

J

を 中心にして他のニュアンスが加わった因子と言える。第四因子は、全体 の分散の16%を説明し、ここまでの 3つの因子で全体の 8割の分散を カノtーしている4 0 因子

W

は、「正しさ(対誘惑

)

J

の因子と名づけた。「真っ直ぐな

Ji

正 しい

J

i

良い

J

i

近い」などの意味が強く関わり、登場者については、一 方では「お母さん

J

i

狩人」がもう一方では「脇道」が代表的な者とし て対峠している。大きくとらえれば、道徳的な評価因子と言える。

(11)

登場人物の意味構造一「赤ずきん」を題材にして-5.4.因子分析結果の考察 次に、先行研究によって唱えられた解釈と照らし合わせっつ、ここで 見出された因子について考察してみたい。 赤ずきんは思春期の女の子の人生課題に対応している話であるという 解釈があるが、第I因子「かわいらしさ(醜さ)Jの大きさは、思春期の 女の子の世界を描き出すということと無縁ではあるまい。「赤ずきん」 (及びそれをとりまく「ずきん、花

J

)

が、「石ころ」と対極にあること も意味深い。狼の腹に入れられた石を不妊のシンボルとみる解釈者や、 さらに赤ずきんの話の中に「死と再生

J

のテーマを見出す解釈者がいる。 この第I因子に、思春期的な明るさとその反対側の不妊的な暗さ、また 少し広げてみれば「生と死jの対立を見出すことは困難で、はない。 第

E

因子に関しては、お婆さんと棋の対立が注目に値する。ユング派 の心理学では「狼」を太母(

G

r

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M

o

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)

という元型の表われと考え る(河合.1979)が、その対極に「お婆さん」が位置づけられたことは、 太母の二面性を考え合わせると興味深い。この赤ずきんの話の山場は、 「お婆さんに化けた狼」だが、狼がお婆さんに化けるのは、意味的に内 的な必然性があると見られるわけで、ある。必ずしもユング的な「元型」 の表れとみる必要はないのかもしれないが、少なくとも、意味的に反対 側にあるものに「化ける」というのは最大限の変化であり、また対照の 妙から言っても物語の効果を盛り上げていることは確かであろう。 ここで、この話で重要な役割を担うとされる「女性」という点に着目 し、「女らしい

J

の因子得点をみると、第

I

因子と第

E

因子では非常に 大きく、他の因子では小さい。したがって、女性的であることの違った 面がこの

2

つには表れていると考えられ、肯定的な「女性」性が第

I

因 子に、否定的な「女性」性が第

I

因子に表われているという解釈もでき る。

(12)

11-10 第

E

因子については、因子負荷の高い登場人物は、話の上で主人公を 援助する役割の登場者が主になっており、

G

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らの構造分析でいう 「援助者」を、印象の面から表わしたものとも見られる。民話では味方 と敵ははっきりと分かれ、そして「正義は勝ち、悪は滅びる」というよ うな勧善懲悪的な発想が特徴的なものとされるが、その「味方=正しい 方=力

J

という複合体を示す因子ととらえることもできる。

B

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(1976)は、狩人を「父親の保護者的、救出者的な機能が外面化した

J

ものと見ているが、「保護者的

J1

救出者的

J

というのは、この第皿因子 の特徴とは合致していると言えよう。 第

W

因子は、第

I

因子と同じように評価的な因子であるが、

I

と合体 せずに独立して分出された訳は、「正しさ(対誘惑

)

J

がこの「赤ずきん

J

のメインテーマに特に関わっているからであろう。つまり、「誘惑」に 対して「言いつけ」すなわち「母の決めたおきて」を守ることができる か否かがこの話の要になっていることの証ではないだろうか。 ここで、個々の登場者について、

4

因子の組み合わせという点からあ らためて見直してみることにしたい。表

3

を個々の登場者ごとに見てゆ くと、登場者「赤ずきん」の印象は、第

I

因子「かわいらしさ」の大き な値と第Eから第Wまでの小さな値からなりたっていることがわかる。 そして敵である「狼」は、第I因子のマイナス値、第 E因子の際立つた マイナス値、第

r

n

.

第Wの小さな値の組み合わせでできている。「お婆 さん」は、第 E因子がプラス方向に大きく、他の因子は小さいという組 み合わせからなっている。他の登場者も同様である。試みに成分分析風 に単純化して表記すれば、赤ずきん=

1+

かわいらしさ±活力士善意の 力士正しさ」、狼=

1

ーかわいらしさ+活力士善意の力土正しさ」など というようになろう。ただ、因子分析の長所は、このような構造分析の ような素性の有無(+.一)ではなくて、連続量として成分を表わしてい

(13)

登場人物の意味構造一「赤ずきん」を題材にしてー ること(たとえばどの程度「かわいらしい」か)であり、しかもその成 分は、複数の意味要素から関連の深いものどうしを客観的に抽出した、 より高次なものになっていることである。そういう意味でこの方法は、 成分分析を補完するものであるとも言える。 次に、この「赤ずきん

J

という話の因子分析の結果を、前研究「ヘン ゼルとグレーテル

J

(以下、略称「ヘンゼル

J

)

での結果と比較してみた い。「ヘンゼル」では、

I

r

善意対悪意」、

I

I

r

欠乏感対充足感」、

E

「神聖対世俗」、

N

r

幸福対不安

J

4

因子が抽出された。

I

の「善意対 悪意」は、本研究での第 E因子に対応すると思われる。 Eの「欠乏感」 については、「赤ずきん」には対応がなく、これは「ヘンゼル」という 話が飢餓というテーマに密接に結びついたものであるためであろう。

E

における神秘的な要素も、「赤ずきん」では対応がない(少なくとも独 立した因子となるほどの大きさをもたない )0

N

の「幸福対不安」につ いては、「赤ずきん」の第

I

因子に類似した点が多い。大雑把にいって

2

つほどは「ヘンゼル」と「赤頭巾」とで共通する因子があるというこ とになる。

2

つの話を通じて類似した因子をまとめて考えると、敵と味 方に大きな対照をつくること、また、明るい魅力的なものと醜く地味な ものとの対照が大きい意味的要因を占めることがわかる。その一方で、 その話特有のテーマによって因子として表れる、話固有の意味的要因も あるということである。 6.結論 民話の表面的な意味の下のレベルまでに降りてみると、基底構造とし ての根本的な意味、すなわち、

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が一般的に

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meaning

の普遍要素としてあげる「活動性(A)J

r

評価性(E)J

r

力量性(P)Jは 民話でも同じように基本的に存在しているものと考えられる。だが、そ

(14)

-13-れは登場者たちを通じて血肉化され、色づけられて、その物語特有のも のとして具体化されて現れるものである。したがって、話の聞き手・読 み手が具体的に感じる印象は、話ごとの色彩を帯びた結果となる。 評価的な因子は、われわれが態度を決定するためのまず第一の因子と されるが、それは民話にとっても同様であると考えられる。素朴な読者 は、ある登場人物を始めて知ると「それは良いほう、悪いほう

?

J

とい うことを知りたがる。このように評価的意味は、読み手がどちらに組す るか(つまりは感情移入するか)を決めるまず第一の要素である。この 赤ずきんの分析結果からは、評価的な因子がもっとも重要であることが 示された。ここでは評価因子が審美的な評価因子と道徳的評価因子の

2

っとして表れているが、これは赤ずきんという作品の主要なテーマを反 映している。「活動性

J

r

力量性」の因子については、「活動性」を主に し「力量性jを加味したような因子(いわゆる‘

dynamism'

因子)が二番 目に重要な因子として表れている o 主要な登場人物C

main c

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)

とは何か、という点からも奥味深 い結果が得られた。各国子の因子負荷量の高い登場人物を拾い上げてい くと、この話の主要な人物とほぼ一致する

r

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赤ずきん

J

r

J

r

お婆さ ん

J

など)。一方、重要な役割を担わない登場者(非生物も含めて)は、 いずれの因子についても低い因子負荷量しか持たない傾向がある九と いうことは、主要な登場人物というのは、話の求めるテーマの方向で最 大限の寄与をすべく明白に意味付けられており、一方偶然的な登場者は ぼんやりした意味を付与されるにすぎないということである。「赤ずき ん」の話には、祖母・母・娘の

3

代の女性が登場するが、それぞれ湖

U

の因子で大きな因子負荷量を担っていることは興味深い。それぞれの意 味がはっきりと区別されており、しかもそれ単純な構造をとっていると いうことである。これは、従来民話の文芸学的なアプローチから「極端

(15)

-14-主主場人物の意味構造ー「赤ずきんjを題材にしてー 性

J

、「単純性

J

(Luthi, 1968, 1976)などと定性的に述べられていたこ とと合致する。 また、本研究では登場人物以外に人物以外の要素の印象も測定したが、 その結果分かつたことは、小道具的なものは、それが付随する主要な登 場人物の印象に大きく影響されるということである。 Osgood( 1980)は、 ‘congruity'の原理をさまざまな言語レベルについて唱えているが、物語 の要素である登場者についても、要素同士が

10

OJ

というようなつ ながりをもったときに、一種の適合・調和 (congruity)を生じるので はないかと考えられる。そうだとすると、民話という形式の基底には言 語や一般的な認知の法則と共通した原理が動いている、という一つの証 左とも言えよう o 最後に、物語を構成する

2

つの要素一一「筋」と「登場者」の関係に ついて少し考察してみたい。本研究では、登場者のみに焦点を当てたが、 登場者だけでも物語全体のテーマを反映する意味を見出すことはある程 度可能だと言えそうである。民話の筋と登場人物の関係について、小津 (1978)は、 Luthiの理論を紹介しつつ、民話の人物には内的な性格がな く、話によって'性格が与えられ、また話の構造が意味を与える、という ことを述べている。つまり、登場人物それ自体にある性格があるという よりも、登場人物は話の筋の中に自分のもつ意味を表している(逆にい うと表されている)ということである。 Greimas(1966)はすべての物 語に

3

つのレベルを想定し、その深層の「意味論」のレベルは静的で非 時間的で「物語化」以前のレベルであるとしている。本研究では筋つま り時間的な推移はとらえられず、あくまで読後の総合像を測定しただけ であるが8、それでもかなり物語全体の雰囲気をとらえることができた のは、意味微分法による登場者の測定が、物語の聞き手の心的な意味空 聞を再構成することにより、「物語化」以前の意味レベルに通じている ためと言えるかもしれない。

(16)

-15-文 献 飯吉透・菊江賢治, 1996,

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Meaning and

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(17)

-16-登場人物の意味構造一「赤ずきん」を題材にしてー

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,1987,白水社). 謝 辞 実験の実施と結果の解釈について、関西福祉大学教授芳賀純先生に貴重 なご助力を受けました。記して感謝いたします。 註 1 意味微分法による研究が蓄積されてゆけば、元型という質的に定義 されたものが、形容詞の束によって量的に示される道に通じることに なるかもしれないという期待もある。 2 Propp (1969 )は、「機能」としては人物と物は等価に表れうること

(18)

-17-を示している。

3

精神分析の立場からの分析例で、狩人は姿を変えた「お父さん」で あるという見方があるが、クラスター分析の結果によく合うといえる。 意味特性から言って、「お母さん」と「狩人

J

は男女のペアをなした 類似者といってもよいからである。 4 固有値1.02の第W因子をカットして、因子数を3つにして再分析す ると、回転の結果は第

E

因子と第

W

因子が一緒になったような形になっ た。そして、悪いが甘く美しい誘惑と日常的だが正しい大人の世界の 義務が対立する格好になった。これは、民話では「頼もしい味方」で あることと「正しさ」とは多く一緒に出てくる特性であることによく 一致する。しかし、単純構造という基準によりかなっているので、

4

因子とした。

5

これは一般に情緒的に高い負荷状態ではよく生じることであるとさ れる(Osgood,1957)

6 これらたいした役をもたない登場者は、共通性の値も低い。

7

民話の一つの特徴とされる「極端性」というのは、言語さらには認 知について言われるpolarityが先鋭に表れた形である。そう考えてみ れば、民話は、 polarityの聞の矛盾を解消する過程 すなわちcon -gruityのプロセスを、ストーリーの展開という形で表わしたものであ るとさえ考えられなくはない。これは構造主義的な理論とはそう遠い ものではない。たとえばGreimasの理論では、「物語はディスクール の中に行為者モデルを表出し、意味作用を擬人化する」と考える (Simonsen, 1981,訳書p147)。

8

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狼の化けたお婆さん」というように限定した表現を用いれば、時 間的に途中にある人物像もとらえられるかもしれない。

参照

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○田中会長 ありがとうございました。..

とてもおいしく仕上が りお客様には、お喜び いただきました。ただ し、さばききれずたく さん余らせてしまいま