クラウドを支えるデータストレージ技術 : 0.編集にあたって
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(2) 0. 編集にあたって つかの変遷を経て,不揮発性記憶装置として磁気. とした標準化の最新動向について紹介する.. ハードディスク(HDD)が登場することになるが,. 1956 年に製造された最初の HDD である IBM 305. 人間の記憶のサポート. RAMAC(Random Access Method of Accounting. クラウドのストレージサービスをさらに発展させ. and Control)システムは,直径 24 インチ(610mm). ていったときに,これまで同様にデータを蓄積する. のアルミ板 50 枚を使い,5MB(5×10 B)であった. だけではなく,個人的に体験したことに関する記憶. という.今や 1TB(1×10 B)を超えるコンパクト. を忘れないように蓄積し,思い出させてくれる「記. な HDD を安価に購入することができ,その記憶容. 憶のストレージ」のサービスが生まれた.Evernote. 量は RAMAC の 200,000 倍以上となっている.さ. は,クラウド上にパーソナルデータを集約し,いろ. らに,ネットワークを介して,より大容量のデータ. いろなプラットフォームのクライアントからそれ. ストレージに容易にアクセスすることもできるよう. を引き出すことができるサービスを提供している.. 6. 12. になり,そのアクセス性能も格段に改善されている. 「2. 万人のためのクラウドデータベース,Evernote このような記憶容量の増加や利用形態の変化,さ. その仕組みと展望」では,Evernote のユーザの視点. らにはアクセス性能の向上は,関連する情報処理の. からの機能と,サービス提供側から見た仕組み,さ. 技術だけでなく,我々の日々の生活にもさまざまに. らにそのビジネスモデルと未来への展望を述べる.. 影響を与えている.特に昨今,情報処理の基盤とし てクラウドが注目されているが,クラウドにおけ. キーバリュー型データストアの実例. るストレージの役割は非常に大きい.本特集では,. クラウドでサービスを提供するためには,その実. 種々の面から,クラウドを支えるデータストレージ. 現のための情報を蓄積する手段が重要である.ク. 技術を紹介する.. ラウドの情報蓄積手段として,これまでのように SQL 問合せを受け付ける関係データベースを前提. 本特集で取り上げる内容 ストレージサービスとその標準化. としたものだけでなく,NoSQL データベースとも 呼ばれるキーバリュー型のデータストアが注目され ている.単純なキーとそれに関連する値のペアの参. クラウドはネットワークを介して多様な情報処理. 照・更新に特化することで,システムの拡張性を高. 資源をサービスとして利用する概念であり,提供す. めるアプローチをとっている.「3.ROMA の概要と. るサービスの内容により異なった形態をとる.その. その利用事例について」では,楽天トラベルの「最近. 中で,クラウドが広く認知されるようになったのは,. 見た宿泊施設一覧」等で実際に利用されているキー. Amazon の S3(Simple Storage Service)に代表さ. バリュー型のデータストアである ROMA の特徴と. れるストレージサービスが最初と言ってもよいかも. 利用事例を紹介する.. しれない.利用者は,情報をローカルに蓄積する代 わりにクラウドストレージに蓄積することで,ネッ. 分散データストレージと MapReduce. トワークを介してさまざまな場所からその情報を利. クラウドにおけるサービスでは,データを大量に. 用・共有することができるようになった.. 蓄積すると同時に,蓄積された大規模なデータに. そこで,まず「1. クラウドストレージ標準化の最. 対して高速な処理を行うことも重要である.さら. 新動向」では,そのようなストレージサービスを取. に,規模拡大のためには,データストレージとその. り上げ,クラウドとしてストレージサービスを提供. データに対する処理を分散化することが求められ. する場合の資源の操作や管理に関する標準化である. る. 「4. データクラウド研究の潮流と最新動向」では,. CDMI(Cloud Data Management Interface)を中心. NoSQL 系の分散データストレージの構成方法とそ. 情報処理 Vol.52 No.6 May 2011. 663.
(3) クラウドを支えるデータストレージ技術 の機能,および大規模データを対象とした分散処理. クラウドのプライバシー保護. 系の代表的な技術である MapReduce とその高速化. クラウドストレージに蓄積された個人情報の利活. を中心に関連する研究動向を紹介する.. 用では,プライバシー保護は避けては通れない課題 である.「7. クラウドストレージにおけるプライバ. クラウドストレージの省電力化. シー保護とデータ利活用」では,入力プライバシー. 省電力化は,コスト削減のためだけでなく,CO2. と出力プライバシーという 2 つの観点から,クラウ. の排出量を削減して地球環境を守るためにも取り組. ドストレージに保管される個人情報の漏えいリスク. むべき重点項目であり,クラウドのデータセンタに. をコントロールし,安全に利活用するためのさまざ. おいてもきわめて重要な課題となっている.「5. ク. まな技術を紹介する.. ラウド時代を支えるグリーンデータセンタのストレ ージ技術動向」では,ディスクアレイから分散デー タストアまで,クラウドでデータを格納するシステ. データストレージのこれから. ムに焦点を絞り,グリーンなデータセンタを目指し. コンピュータシステムのデータストレージに情報. た省電力化技術を紹介する.. を蓄積し,それを活用する枠組みは,現代の社会生 活において,必須となっている.今後,クラウドに. クラウドとストレージネットワーク. 限らず,まったく新しい形態の処理モデル等が出て. クラウドのデータセンタにおけるストレージ装置. きたとしても,その枠組みが大きく変わることはな. は,ネットワークを介してサーバと接続される形態. いだろう.本特集で対象とした,ネットワークを介. になる.そのようなストレージネットワークとして,. したクラウドにおいて情報を蓄積し,活用するため. 機器の種類が豊富でコストパフォーマンスが良い汎. のアプローチと技術,さらにその課題を俯瞰するこ. 用のネットワーク技術をストレージ接続に活かすこ. とが,データストレージ技術のさらなる発展につな. とを前提に,イーサネットの TCP/IP をベースとす. がることを期待する.. る方法が注目されている. 「6.iSCSI と FCoE による. 最後に,多忙な中今回の執筆を引き受けていただ. ストレージ構築 ~ストレージネットワークの進化. いた著者の方々と,本特集を編集するにあたって貴. ~」では,TCP/IP によるサーバとストレージが接. 重なご助言とご尽力を頂戴した東京大学喜連川優教. 続する方式である iSCSI(Internet Small Computer. 授に,この場を借りて深く感謝申し上げる.. System Interface)と FCoE(Fibre Channel over Ethernet) に関する最新の技術動向を紹介する.. 664 情報処理 Vol.52 No.6 May 2011. (平成 23 年 3 月 24 日).
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