自閉症の他者の表情理解と自己感情表出に関する行動分析学的研究
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(2) Il.実験2 自閉症児の劇場面における自己感情表出 【目的】. 社会的文脈場面において、社会的文脈に応 じた表情の理解・表出課題が可能か否か。ま た、その指導法について検討した。 【方法】. ,対象児:実験1に参加した女児1名説(Table1 のA1)が本実験に続けて参加した。 実験条件:Table 2に示す。. ターゲット行動:各場面においてターゲット 行動をTable 3に示す。 手続き: (1)事前テスト;HapPy、 Sad、 Angryの各3感. 情場面、計9場面すべてについて、表情理解 課題、言語表出課題、表情表出課題(各2試 行ずつ計18試行)を測定した。 (2)ベースライン:各条件から1場面ずつ選択 し、ベースラインを測定した。正誤に関わら ず、フィードバックは行わなかった。 (3)表情理解及び言語表出トレーニング:表情 理解課題、言語表出課題にいてトレーニング. を行った。設定は、ベースラインと同じ3場 面を用いた。. 1)表情理解課題;各場面の設定が対象者に説 明され、確認質問を行う際に、「∼(各場面 においてターゲットとされる言語)と言うと きはどんな顔をしますか?このカードの中か ら選んでください」と教示され、対象児の前. に実験1で用いられた4つの感情のイラスト 画カードが提示された。対象児が場面に応じ たイラスト画カードを選択した場合は、言語 賞賛により強化が与えられた。また、間違っ たカードを選択した場合は正答が教示され、 修正試行が行われ、正答できることを確認し た後に次の課題を行った。 2)言語表出課題;劇場面において教示された 言語を適切なタイミングで表出した場合は、 言語賞賛により強化が与えられた。誤反応・ 無反応に対しては視覚的プロンプト(台詞カ ード)によるフィードバックを行い、修正試. (7)事後テスト;事前テストと同様に9場面に. おいて表情理解、言語表出、表情表出課題を 測定した。 【結果・考察】. 表情理解課題では、事前テストでHappy条 件の1場面を除く8場面において正反応を示 しており、トレーニングを行った結果、設定 した全場面で表情理解が可能となった。これ は、表情による感情の弁別が可能である対象 児は、Hadwinら(1996)の表情弁別が可能であ れば、トレーニングにより状況を基にした表 情理解が可能であるという見解を支持するも のである。言語表出課題では、事前テストに. おいて誤反応を示した3場面でトレーニング を行った結果、正反応が事後テストでも維持 されたことから、トレーニングの有効性が考 えられる。表情表出課題では、事前テストに おいてほとんど正反応が見られなかった。ト レーニング後、Happy・Sad条件においてプロ ーブ2で適切な表情表出が可能になり、事後 テストでも他の場面にも般化が見られた。こ れは、Ekmanら(1979)の喜びの表情が最も表 出しやすいという見解を支持している。しか しAngry条件においては、プローブでも正反 応は見られず、事後テストでも成績は低かっ た。この要因として、対象児が日常場面で Angryの表情表出をしないという母親の報告 や、実験1でAngryの表情表出の成績が最も 低い結果を示したこと関係していると考える。 Tab呈e 2実験条件と劇場面の内容 条件. 場面. Happy条件. (1)伸間に入れてもらう場面. (2)あいさつ場面 (3)お礼を言う場面 Sad条件. (4)楽しみにしていたイベント. が中止される場面 (5)金魚が死んだ場面 (6)ピアノが壊れた場面 Angry条件. (7)落書きされる場面. (8)物が取られる場面 (9)順番を抜かされる場面. 行を行った。. (4)言語表出集中トレーニング(Angry条件). ;Angry課題において適切なタイミングで言 語表出がみられなかったため、言語表出する 場面だけを抽出し、トレーニングを行った。 達成基準は3試行連続正反応とした。 (5)表情表出課題における集中トレーニングi ;表情表出に困難性がみられるここから表情 表出課題の集中トレーニングを行った。 (6)表情表出課題における集中トレーニングii. ;表情表出課題における集中トレーニングi で正反応が見られなかったため、向後(2000) を参考に表情表出トレーニングを行った。. Tab[e 3 ターゲット行動. ・場面に応じた感情のイラスト画カードが選択できる (表情理解). ・求められた言語表出が適切なタイミングでできている (言語表出). ・場面に応じた表情表出ができている(表情表出). 主任指導教官 冨永良喜 指導教官 井上雅彦.
(3) 平成12年度 自閉症の 他者の表情理解と自己感情表出に関する 行動分析学的研究. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 障害児教育専攻. M99305A 岡嶋 尚子.
(4) 目次 第1章 序論 第1節 自閉症児におけるコミュニケーション障害. ……2. 第2節 自閉症児における他者感情理解・自己感情表出における研究 …4. 第3節 自閉症児における「心の理論」の研究 第4節 本研究の目的. ……8. ……10. 第2章 本論 第1節 実験1 他者の表情理解と自己表情表出. ・・・…. @14. 1.目的 H.方法 1.対象児 2.材料 3.実験条件 4。セッティング (Dデスクセッティング (2)パソコンセッティング. 5.手続き. (1)デスクセッティングにおける表情理解課題 (2)デスクセッティングにおける表情表出課題 (3)パソコンセッティングにおける表情理解 (4)パソコンセッティングにおける表情表出課題 皿.結果. ……. Q0. 1.表情理解課題 2.表情表出課題 IV.考察. 1.表情理解課題. 2.表情表出課題. ・・・…. @22.
(5) 第2節 実験2. ・…. @一39. 1.目的 H.方法 1.対象児 2.マテリアル 3.実験条件及びセッティング 4.ターゲット行動. 5.手続き 1)各条件における基本的手続き 2):事前テスト. 3)ベースライン. 4)表情理解・表情表出トレーニング. ①表情理解課題 ②言語表出課題 5)言語表出集中トレーニング(Angry条件). 6)表情表出トレーニングi 7)表情表出トレーニングi 8)事後テスト. m.結果. … 一・57. IV.考察. ・・・…. @58. 第3章 討論 第1節 総合考察 第2節 今後の課題. 要約 文献 謝辞. ・…. @一64. ・…. @一68. ・・・…. ・・・…. @70 @76.
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(7) 第1節 自閉症児のコミュニケーション障害について. 自閉症には、個人内、個人間で見られる発達的な多様性にもかかわら. ず、ウィングの3つ組と呼ばれる障害から特徴づけられる。自閉症にお いて、この障害を定義する行動上の3つの欠如が必ず観察される(wing and Gould,1979;Wing,1988)。この3つとは、1)他者との相互的やりとり. の欠如に代表される対人関係の重度の障害、2)言語及び非言語の両面に わたるコミュニケーションの障害、3)ごっこ遊びなどの創造的活動の欠 如と情動的、反復的な行動パターンである。. 自閉症における対人関係の障害はその中心症状と考えられ、発達レベ ルに関わらず何らかの形で依然として持続し、彼らの社会適応を進めて いく上での大きな阻害要因の1つになっている(Ando and Yoshimura,1979 二Rutter,1983;SchoPler and Mesibov,1983)。. 対人的障害は、言語的、認知的能力の障害の程度によって異なる。障 害の重い場合には言葉を発せず、他者からの働きかけに全く反応しない “孤立”型の症状を示すことが多い。障害が法度の場合には、他者から. の働きかけを無感覚的に取り入れ、指示や質問に追従的に応答する“受 動”型の症状を示す。言語的、認知的な発達が健常な範囲にある場合に は、“活発だが奇異”な対人行動が認められることが多い。. また、自閉症は、人称代名詞の逆転、エコラリア、抑揚の見られない 特異な韻律、造語などによる、言語の運用にみられる特異的なコミュニ ケーション障害もある。 Ru賃er and Schopler(1987)は、自閉症の主要な社会性障害として、1)情. 緒的手がかりの不適切な理解、2)他者の感情に対する反応の欠如、3)社 会的文脈に応じた行動の調整ができないこと、4)社会的情緒的な相互作 用の欠如等をあげている。情緒的な手がかりとして、他者の韻律や視線、. .2..
(8) 感情を表出するジェスチャーや、顔の表情といった非言語的な表現があ げられる。またこれらの非言語的表現を使用することは、自閉症が困難 を示す高度なコミュニケーション技術でもある(内藤,1997)。. 以上のことから、自閉症児・者が、対人コミュニケーションを円滑に 行うために言語的なコミュニケーション技術の向上だけでなく、非言語 的なコミュニケーション技術も向上させなければならないだろう。. 一3一.
(9) 第2節 自閉症における他者表情理解について. 他者の感情を正しく判断するスキルは対人関係を成立する上で最も重 要なものである。ヒトは、一般的に相手の感情に関する情報を、主とし て表情から得ている(Meheabi㎝,1981)。また、 E㎞an(1992)は、文化に特. 有の感情もあるが、喜び、悲しみ、怒り、嫌悪、恐れ、驚きの感情を表 情から判断する仕方は文化を越えてほぼ同じであると主張している。し たがって、ヒトが他者の感情を理解するときに、表情を重要な手がかり として用いていると考えられる。. 健常児において、他者がどのような表情をしているかを理解する能力. は、かなり早期から発達していると考えられる。例えば、乳児は生後4 ヶ月から8ヶ月の間に眉しかめと微笑みの表情に対して異なる反応を示 すようになる(Russell,1989)。1歳前後から特に母親の表情から肯定的あ るいは否定的な信号を受け取ることが可能になる(Nelson,1987)。さらに、. 加齢に伴い表情理解能力が高くなっていくことが分かってきた(Camras and Allison,1985;Denham and Couchoud,1990;Boyatzis,C.J., Chazan,E, and. Ting,C,Z.,玉992)。その後の発達では、笹谷(1997)は4・5歳児では主に. 表情を手がかりに他者の感情を理解しているが、7歳前後から表情と状. 況手がかりから他者の感情を理解するようになり、12歳前後には両方 の手がかりを統合的に用いるようになると報告している。 自閉症児の表情理解に関しては、Weeks and Hobson(1987)は、平均年. 齢15歳7ヶ,月の自閉症児15名に性別、年齢、表情、帽子がそれぞれ異. なる組み合わせの顔写真を分類させたところ、CA及びVIQでマッチン グした知的障害児・健常児15名の多くは帽子よりも表情を優先して分 類し、表情による分類も全員が自発的に行った。一方、自閉症児の大部. 一4一.
(10) 分は表情よりも帽子を優先し、最終的に与えても、1/3の者が表情によ る分類ができず、この結果は自閉症児の他人の表情に対する感じ性の低 さを示す者と結論された。さらにHobson(1989ab)は、年齢と性別によ ってマッチングされた自閉症と知的障害児・健常児に対し、E㎞an and Friesen(1975)により標準化された写真を用い情動表出の声とのマッチン. グ課題を行った。その結果、対象群と比較して自閉症児群は、統制課題. (非情動課題)よりも情動課題で成績が劣っていた。また追試実験 (Hobson, Ouston and Lee,1989)では、被験児は提示された写真や音声のそ. れぞれに対して命名する課題が行われた。その結果、自閉症児は、対象 物に命名する課題と比較して人の感情について命名する課題の方が低い 成績であった。 また、Hobson, Ouston and Lee(1988)は自閉症者が幸福、不幸、怒り、. おそれの表情の写真を弁別する能力を持っているかどうかに焦点を当て. た課題を行った。CAとVIQでマッチングした自閉症富山と非自閉症者 群を対象とし、「情動」課題では、別々の人が表している同一の情動を 選択させた。統制課題では、同一見本あわせ課題が行われた。刺激とし て、顔全体写真と口まわりの写真、目のあたりの写真が用いられた。そ の結果、人物を同定する課題(統制課題)では、山群ともに顔の部分が 消されるにつれて同じように成績が落ち込んだのに対し、情動を弁別す る課題では、自閉症者は非自閉症者に比べて情動の手がかりが減少する につれてより成績は落ち込んでいった。その結果、自閉症者はあまり顔 の表情の「感じ」を手がかりに用いて判断することが困難であると思わ れたばかりでなく、非情動的な知覚方略を用いて、顔の情動表現を識別 していると示唆された。 Hobson and Lee(1989)は、年齢と英国版絵画語彙検査(British Picture Vocabulary Scale/BPVS;Dunn, Du㎜{md Whe伽n,1982)の総得点でマッチン. グした自閉症者と非自閉症者を対象とした。そして彼らのBPVSの中の 情動に関する項目と情動とはいえない項目についての得点を比較した。. 一5一.
(11) その結果、非自閉症者は、情動に関する項目と情動でない項目と同じよ. うな成績を示した。しかし、BPVSの総得点がほぼ同じ自閉症者は情動 とは無関係の項目に比べて情動に関する課題が特に低い成績であった。. 若松(1989)は,12歳から18歳までの年長自閉症児22名とCAをマッチ ングさせたダウン症児20名を対象に「喜び」「悲しみ」「怒り」「中性」. を表出した表情図(線画、イラスト画)及び表情写真を用い同一見本あ わせ課題課題、言語指示による命名、選択課題をを行った結果、対象群 より全体的に低い成績であったと報告されている。. 石川・小林(1990)は自閉症児とMAを一致させた健常児に対して、静 止画像と動的画像を用いた表情刺激(笑い顔、怒り顔、泣き顔)を言語 指示による選択課題を行った。その結果、静止している表情の認知は、. 比較的良好であることが示唆された。また、健常児と比較して刺激が動 くことによって生じる表情への認知への抑制効果が自閉症児においてよ り顕著であることを示した。. また、神尾・十一(1998)は、高機能自閉症青年とVIQを一致させたさ せた対象群に対して、「うれしい」「悲しい」「怒っている」「ふつう」. を表情表出した写真を用いた表情理解を、自発的に読みとった内容を答 える言語ラベリング課題とすでに用意された感情語(「うれしい」「悲 しい」「怒っている」「ふつう」)を表情表出したから選択する言語マッ. チング課題の2種類の課題を行った。その結果、自閉症群の言語ラベリ ング課題の成績は、言語マッチング課題と比較しても、また健常青年群 の言語ラベリング課題と比較しても有意に低い成績であった。一方言語 マッチング課題ではほぼ正確に感情を同定できた。. これらの先行研究から、自閉症は他者の表情理解に関してMAをマッ チングさせた健常児・者や知的障害者・児と比較して、表情と表情のマ ッチング課題において低い成績が認められ、また、顔の認知の仕方も特 徴的であることが示された。さらに表情を言語化する課題(ラベリング 課題)においては、表情マッチング課題より低い成績であったことから、. 一6一.
(12) 自閉症児・者は表情からの感情理解に困難性を示すといえる。. 一7一.
(13) 第3節 自閉症における自己の感情表出について. 自閉症児の親は、自分たちの子どもについて肯定的な言葉かけに対し て、笑ったり微笑んだりせず、また、はじめて微笑んだ時期も自閉症で ない知的障害児よりも遅いと述べている(Khn, Volkmar, and Sparrow,. 1992)。しかし、自閉症児の親は、子どもが決して笑わないと報告する ことが多いのに対して、幼い自閉症児と自閉症でない知的障害児を対象. とした研究では、2歳の時点でも、1歳時を思い出してもらった場合で も山群に差はなかった(Lord,1991)。年長の自閉症児の親の82%が自分た. ちの子どもの微笑みは常に限定された者であると述べたのに対して、同 じように回答した知的障害児の親は37%であった。また自閉症児群の親. の38%、知的障害児群の親の9%が、子どもの表情がしばしば奇妙であ ったり不適切であったと述べていた(Le Couter,R瞭er,Lord,Rios,Robertson, Holdgrafbr, and McLennan,1989)。. 観察研究によれば、就学前の自閉症児は様々な統制児群と比べると、. 複雑な表情であったり無表情なことが多く、また肯定的な表情をあまり せず、否定的な表情を表出することが多い(Snow, Hertzig,andShapiro,. 1987)。また、顔の表情が乏しいこと、姿勢がぎごちない、または硬直 していること、声が一本調子なことなどもよく指摘されている。. しかしながら、表情表出に関する先行研究は少なく、E㎞an㎝d Wallance(1975)は、写真を用いて驚き、恐怖、嫌悪、怒り、幸福、悲し. みの感情を表す顔写真を模倣することでの表情表出の練習をすること で、意識せずに自然に使えるようになると述べている。 若松(1989)は、自閉症児とダウン症児を対象に、表情図と表情写真を. 用いて表情の意図的な表出能力について検討した。この結果、自閉症児. 群はCA、 MAをマッチングしたダウン症児群よりも成績が低いことを. 一8..
(14) 示した。. しかしながら若松(1989)の研究では、言語教示で、喜びと悲しみの表. 情を表出する際、情緒状態語(笑った、泣いた)を用いており、感情を 表出したとはいえない。また、実験場面のみにおける表情模倣・表情表 出課題であり、日常場面に般化するような表出課題は行っていない。. ヒトは、社会的文脈や他者の反応に応じて表情を表出する。したがっ て、自閉症児が感情表出するには表情表出のスキルを獲得するだけでな く、そのスキルを生かすことのできる社会的経験を持てるようにしなけ ればならない。. 一9..
(15) 第4素 本研究の目的. 自閉症児におけるコミュニケーション障害の特徴として、感情・情緒 の理解・表出の困難性があげられる。自閉症児は、相手の表情を弁別・ 理解することが困難iなために相手の感情を読みとることができず、コミ ュニケーションに支障をきたしやすくなる(宮本,1999)とされている。. 表情理解課題において、多く研究がなされているが、従来の先行研究 の多くは表情と表情のマッチングを用いて、自閉症児・者は表情を理解 できている、あるいはできていないと結論している(神尾・十一」989)。. しかし、これは知覚マッチング課題ができるか、できないかという結果 であり、表情の表す意味が理解できたと言うことではない。したがって、. 感情を理解できるかどうかを調べるためには言語の媒介が必要となる。 神尾・十一(1989)の研究では、写真を用い表情の理解を問うのに、自発. 的に読みとった内容を答える言語ラベリング課題と感情語の書かれたカ ードから選択する言語マッチング課題を行った。その結果、言語マッチ ング課題と比較して、言語ラベリング課題は有意に低い成績を示した。. 一方、マッチング課題では感情をほぼ正確に同定できた。しかし、神尾 らの研究では、先に言語ラベリング課題を行い、その後に言語マッチン グ課題を行っている。そのために自閉症児が言語ラベリング課題で感情 語をラベリングするという実験の趣旨の理解ができていなかった可能性 が考えられる。. また、先行研究では、用いられた課題が異なるためにどのような刺激 で表情の理解に困難性を示すか、明確にされていない。. 表情表出課題においては先行研究が少なく、動作模倣と表情写真の模 倣という実験条件(十亀・久保,1980)のみであったり、表情評定が実験 者の即時判断によるものであり、データの信頼性に欠ける(若松」989)。. 一10一.
(16) 本研究の実験1では、言語刺激として情緒状態語(「笑う」「泣く」) ではなく、感情表出語(「うれしい」「悲しい」「怒っている」「ふつう」). を用い、様々な表情刺激(イラスト画、線画、静止画像、動画像)との マッチング(表情理解)について検討した。またこれらの言語刺激・表 情刺激を用いた表情表出課題を実施し、比較検討をした。さらに、知的 障害児にも同様の表情理解課題・表情表出課題を行い、自閉症児群との パフォーマンスの差異について比較検討した。 日常的な場面では、表情は何らかの状況の下で表出される場合が多く、 状況次第で表情の意味が変化することがある(笹屋,1997)。したがって、. 日常の社会的文脈場面において適切な表情理解ができていなければなら ない。. Hadwin,Baron−Cohen,Howlin and Hill(1996)は、10名の自閉症児に写真に. よる表情の認知(レベル1)、図式化された表情の認知(レベル2)、状況 を基にした感情(レベル3)、欲求を基にした感情(レベル4)、信念を基. にした感情(レベル5)、の5段階に分け、感情の理解の教育を行った。. その結果、訓練によりそれまで達成されなかった課題が達成できるよう になると示している。しかしながら、他の社会的文脈場面への般化は測 定はしない。. したがって、実験2では、日常の感情等を表出する社会的文脈場面を 設定し、社会的文脈や状況に応じた表情理解が可能であるか、適切なタ イミングで教示された言語表出が可能であるか、適切な表情表出が可能 であるか、またそれらの指導法を検討した。さらに、トレーニングに用 いない他の社会的文脈場面において般化するかを測定した。. 一11..
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(18) 第1:節. 実験1 他者の表情理解と表情表出. 1.目的 自閉症児において言語刺激として感情表出語(うれしい、悲しい、怒 っている、ふつう)を用い、様々な表情刺激(イラスト画、線画、静止 画像、動画像)とのマッチング(表情理解)について検討した。また、. これらの言語刺激・表情刺激を用いた表情表出課題を実施し、比較検討 した。さらに、同様の課題を知的障害児に対し実施し、比較検討した。. H.方法 1.対象児. 自閉症と診断された4名と知的障害と診断された4名の計8名を対象 とした。対象児のプロフィールをTablelに示す。両群の推定MAをマッ チングさせた。 Table 1対象児のプロフィール 診断名. ’ 性別. CA. 漁. Al. 自閉症. 女. 12:08. 6:03. A2. 自閉症. 男. 11:11. 7:11*. A3. 自閉症. 男. 11:11. 4:02. A4. 自閉症. 男. 11:09. 7:04. MI. 知的障害. 女. 12:07. 6:04. M2. 知的障害. 男. 14:05. 8:04**. M3. 知的障害. 男. 13:02. 5:09. M4. 知的障害. 男. 9:09. 4:08. *はWisc・皿のMA換算による、**は鈴木ビネーによる、その他は絵画語彙発達検査 による. 一14一.
(19) 2.材料 以下のTable 2に示す。. TaMe 2 実験材料 ・感情語カード. うれしい、悲しい、怒っている、ふつうと書かれた文字カード(3.5×15cm) ・表情刺激. ①表情カード:うれしい、悲しい、怒っている、ふつうを表した表情が描か れたイラスト画カード及び、線画カード(12×12cm)。それぞれ2パターンの. 絵で4表情の8枚ずつ。イラスト画カードは女児の絵、男児の絵が各1パタ ーンずつ用いた。. ②表情画像:うれしい、悲しい、怒っている、ふつう感情を表した成人男性. 1名と女性1名の表情をデジタルビデオカメラで撮影し、パソコンに画像を 落とした静止画像及び動画像(12XI5cm)。それぞれ静止画と同じ2名の 4表情で8画像ずつ。. 3.実験条件 (Dイラスト画→文字条件. 見本刺激としてイラスト画を、比較刺激として4種類の感情表出語 カードを提示した。 (2)文字→イラスト画条件. 見本刺激として感情表出語カードを、比較刺激として4種類のイラ スト画を提示した。 (3)線画→文字条件. 見本刺激として線画を、比較刺激として4種類の感情表出語カード を提示した。 (4)文字→線画条件. 見本刺激として感情表出語カードを、比較刺激として4種類の線画 を提示した。. 一15一.
(20) (5)静止画→文字条件. 見本刺激として静止画像を、比較刺激として4種類の感情表出語を 提示した。 (6)文字→静止画条件. 見本刺激として感情表出語カードを、比較刺激として4種類の静止 画像を提示した。 (7)動画→文字条件. 見本刺激として動画像を、比較刺激として4種類の動画像を提示し た。. (8)文字→動画条件. 見本刺激として感情表出語カードを、比較刺激として4種類の動画 像を提示した。. 一16一.
(21) 4.セッティング H大学発達心理臨床センター内の訓練室で行った。 (1)デスクセッティング. 理解:これはどんな顔ですか? 表出:この顔をしてください. 飛. CARI)S [==コ [コ [=コ 〔=コ. CAM. Fig.1 デスクセッティング図. 指示者(T)と対象児(C)は机をはさみ対面に着席する。理解課題では、. 机の上に見本刺激のカード1枚と選択刺激カード4枚が提示される。表 出課題では、机の上には見本刺激のカードが1枚提示される。. 一17一.
(22) (2)パソコンセッティング. COMPUTER. DI PLAY(15イ. [===][==コ[==コ. 飛 CAM. 理解:これはどんな顔ですか? 表出:この顔をしてください. Fig.2 パソコンセッティング図. 指示者(T)は、対象児(C)の横に着席する。机の上にはディスプレイ. がおかれ、理解課題では見本刺激、もしくは選択刺激がディスプレイ上 に映し出され、文字カードがディスプレイの前に提示される。表出課題 では、見本刺激がディスプレイ上に映し出される。. 5.手続き (1)デスクセッティングにおける表情理解課題. 見本刺激として感情語カードが対象児の前に提示され「今から、いく つかの顔を見せます。このカードと同じものはどれか選んでください」 と教示された後、4つの表情をあらわした表情刺激(イラスト画、線画). が対象児の前に提示された.見本刺激として提示された感情表出語カー. ドと一致した刺激を選択することが求められた。なお、提示される4っ の表情刺激は、同じパターンのものとされた。. また、「今から見せる顔はどれか選んでください」と教示された後、. 見本刺激として1つの表情刺激が提示された。さらに、選択刺激とし 一18..
(23) て4つの感清心カードを対象児の前に提示し、一致するものを選択す ることが求められた。. (2)デスクセッティングにおける表情表出課題. 見本刺激として、感情語カードもしくは、表情カードが1枚提示され、 「これと同じ顔をしてください」と教示された。提示された見本刺激の 表情を表出・模倣することが求められた。 (3)パソコンセッティングにおける表情理解課題. 見本刺激として感情語カードが対象児の前に提示され「今から、いく つかの顔を見せます。このカードと同じものはどれか選んでください」. と教示された後、4っの表情をあらわした表情画像がディスプレイに移 し出された.見本刺激と一致する表情画像を選択することが求められた。. なお、提示される4っの表情画像は、同じ人物のものとされた。 また、「今から見せる顔はどれか選んでください」と教示された後、. 見本刺激として1つの表情画像がディスプレイに映し出され、選択刺 激として4つの感情表出語カードが対象児の前に提示された.見本刺激 と一致する感情カードを選択することが求められた。 (4)パソコンセッティングにおける表情表出課題. 見本刺激として表情画像がディスプレイ上に1画像映し出され、「こ れと同じ顔をしてください」と教示された。見本刺激である映し出され た表情画像の表情を模倣することが求められた。. 全課題とも8試行を1ブロックとした。また、正誤にかかわらずフィ ードバックは行わなかった。 5)評定方法. 表情理解課題では、提示された見本刺激と一致する選択刺激を選択 した場合、正答とした。. 表情表出課題では、指示者を除く4名で対象児が表出した表情は、 うれしい・悲しい・怒っている・ふつうのどの表情に見えるかを評定. 一19一.
(24) し、見本刺激と同じ感情を評定したものを正答(1点)とした。. HI。結果. 1.表情理解課題 Fig.3からFig.10に自閉症児群と知的障害児群の理解課、題における条. 件別の正答率を示した。縦軸に正反応率を、横軸に各条件を示した(例. えば「文字一イラスト画」の場合は見本刺激が文字刺激、選択刺激が イラスト画であることを示している)。結果、両群、各対象児において 一定の傾向は見られなかった。. Fig.11からFig.19は、各条件別の正答率を基に、組み合わせが同一 の刺激での正答率を示したものである。例えば、横軸の「イラスト画」. は「文字一イラスト画条件」「イラスト画一文字条件」の2条件におけ. る正答率を表している。結果、A2を除く両群の対象児において、イラ スト画が最も高く動画が最も低い成績を示した。各対象児をパターン 別に分析するとA1は、イラスト画、線画においてともに100%の正答率. を示し、静止画、動画の順で正答率の低下を示した。A3も正答率は全 体的に低いものの同様の傾向を示した。またA4とM4ではイラスト画、 線画、静止画、動画の順で低くなる傾向を示した。M2, M3においては. 線画と静止画の正答率の順序に違いがあるもののイラスト画が最も高 く、動画が最も低い傾向を示した。M1においては、イラスト画、線画 ともに100%の正答率を示し、静止画、動画はともに正答率が97%でや や低い傾向を示した。しかしながら、A2においてはイラスト画、線画、. 静止画はともに正答率が75%で、動画の正答率が81%で、動画がもっと も高い正答率を示した。. F{g.20からFig.28は各条件の正答率を基に、見本刺激が文字刺激で選. 択刺激に表情刺激を用いた場合(文字一表情)と見本刺激が表情刺激で 選択刺激に文字刺激を用いた場合(表情一文字)における正答率を各対. 象児別に示した。その結果、A3を除く全ての対象児で表情一文字より. 一20一.
(25) も文字一表情が高い正答率を示した。 Fig.29からFig.37は全ての条件における感情別の正答率を示した。 A1、. MI、 M3、 M4は感情別の正答率に大きな傾向は示されなかった。 A2に. おいて「怒っている」が他の感情と比較して正答率が高かった。A3に おいて「悲しい」が最も高い正答率を示し、「怒っている」が最も低い 正答率を示した。A4においては、「うれしい」「悲しい」「怒っている」. 「ふつう」の順で正答率が高くなる傾向を示した。さらにM2において 「悲しい」の正答率が最も低く、「怒っている」「ふつう」は100%の正 答率を示した。. 表情理解課題の各群における全条件の平均正答率は、自閉症児群が 72%で、知的障害児群が92%であった。Ma]㎜一WhitneyのU検定を用いて. 検定を行った結果、自閉症児群と知的障害児群の合計正答率には有意 差が認められた(p〈0.05)。. 表情理解能力と生活年齢、精神年齢の関係性において、MAが6歳3 ヶ月のA1(Fig.3)とMAが5歳9ヶ月のM3(Fig.6)は高成績であったが、. M3の方がAlよりもMAが低いにも関わらず、高い成績であった。 また、自閉症児群問においてMAが最も低い対象児の正答率は最も低 かったが、MAの最も高い対象児の正答率が最も高い成績ではなく、MA による正反応の傾向は認められず、CAによる正反応の傾向も認められ なかった。同様に、知的障害児群間においてもCA,MAによる正反応の 傾向は認められなかった。. 2.表情表出課題 Fig.33からFig.40に自閉症児群と知的障害児群の表情表出課題におけ る評価点を示した。縦軸に評価点、横軸に用いられた見本刺激を示した。. 結果、動画が最も高い成績を示した者は、A2とM4であった。また、 文字が最も高い成績を示した者は、A4とMlであった。しかしながら、 他の対象児において見本刺激別で高成績を示す一定の傾向は見られなか. 一21..
(26) つた。逆に、静止画が最も低い成績を示した者はA2、 A3、 A4、 M1で あ・つた。また、文字が最も低い成績を示した者はA1とM4であった。 M2. は線画、M3は動画が最も低い成績を示した。 Fig.41からFig.47に全ての見本刺激における感情別の評価点を示した。. その結果、「ふつう」が最も高い成績を示した者はA1、 A2、 M4であ った。「怒っている」が最も高い成績を示した者は、A3、 A4、 M3であ. った。M1においては「うれしい」と「ふつうjが同率で最も高い成績 を示し、M2においては「悲しい」が最も高い成績を示した。逆に「怒 っている」が最も低い成績を示した者は、Al、 A2とMlであった。「う れしい」が最も低い成績を示した者は、A3、 M2、 M3、 M4であった。 A4. においては「ふつう」が最も低い成績を示した。AlとA2においてA2 の方が全体的に成績は下回るものの一定の傾向が認められた。. 表情表出課題の各群における全条件の平均評価点は、自閉症児群が 69/160点で、知的障害児群が110/160点であった。理解課題と同様にU 検定を用いて検定した結果、有意差は認められなかった。しかし、自閉 症児群は知的障害児群よりも成績が低いことが示された。. さらに、理解課題と同様に、MA、 CAによる正反応の傾向も認めら れなかった。また、自閉症児群は、理解課題の成績順位と同じ成績順位 を示したが、知的障害児群には同じ傾向は認められなかった。. IV.考察. 1.表情理解課題 本研究では、自閉症児において表情理解課題として言語刺激と表情刺 激のマッチングを行い、同様の課題を知的障害児に対しても行った。そ の結果、両群とも実験条件別では一定の傾向は見られなかったが、同一 の組み合わせの刺激間では、A2を除いて動画が最も低い成績を示した。. また、同様に選択刺激別ではA3を除いて「文字一表情」よりも「表情 一文字」が低い成績を示した。さらに、感情別において全対象児の3名. 一22..
(27) は、感情ごとでの最も高いものと低いもの正答率の差が6%以内で、感 情による偏りが見られなかった。他の5名の各対象児においては、感情 ごとでの最も高いものと低いもの正答率の差が10%以上で、偏りが見ら れた。しかし、その偏りに一定の傾向は示されなかった。. 本研究で対象にした自閉症児群は、CA、 MAをマッチングした知的障. 害児群よりも全正答率が有意に低いことが示された。これは、対象群 にダウン症児を用いた、若松(1989)の結果とも一致する。このことか. ら、本研究においても表情から感情を推測することの困難性は、自閉 症児の特徴的な障害であることが示された。. 若松(1989>は、自閉症児群は言語教示した後に表情刺激(線画、イラ. スト画、写真)を選択する課題において、「悲しい」が比較的に良好な 成績であったと報告している。若松(1989)の用いた表情刺激は、情緒状. 態を表出しており、「悲しい」表情として「泣き顔」を用いている。し かし、本研究では「泣き顔」ではない「悲しい」という感情を表出した 表情であったため異なった結果が得られたものと思われる。これは、先 行研究では、自閉症児は「泣く」という状態を手がかりに「悲しい」と いう感情を結びつけたため、高成績を示したが、本研究では「泣く」と いった状態の手がかりがなかったため、「悲しい」の表情理解の成績が、. 他の感情の表情理解と比較して低い結果となった原因と考えられる。 神尾・十一(1998)の研究では、自閉症児において見本刺激に表情刺激、. 選択刺激に感情表出語カードのマッチング課題を行った。その結果、「う. れしい」「怒っている」「悲しい」「ふつう」の感情の順に成績が高い結. 果を示した。しかし本研究では、このような傾向を示す対象児は両群と もに認められなかった。また、「うれしい」が最も正答しやすく、「ふ つう」が最も正答しにくいとするMaurer and Newbrough(1987)や、神尾. ・十一(1998)の結果とも異なる。さらに、一般的に「うれしい」表情の. 識別が最も容易とされているが、本研究では自閉症児群、知的障害児群 のいずれもこのような結果は認められなかった。これは、先行研究で用. 一23..
(28) いられた刺激と本研究の刺激と異なることが原因の1っであると考えら れる。また、両面の対象児がそれぞれ異なった傾向を示していることか ら、日常の経験などによって、理解能力の差が現れると考える。 表情理解能力と知的能力との間に有意な正の相関が見られることは、 健常児(Field and WaldenJ 982)や知的障害児(Gray, Fraser and Leuded 983)で. すでに報告されている。しかし、本研究ではCA、 MAと正答率の相関 が見られなかった。これは、本研究は対象児の数が少ないことから、今 後、対象児を増やし検討していく必要がある。. 丸山ともイラスト画や線画といった抽象的な表情刺激の方が、静止画、 動画といった日常的な刺激よりも低い成績を示した。これは、若松(1989). の研究において、表情刺激に写真を用いた場合よりも、イラスト画を用 いた場合の方が正答率は良いと示した結果と異なっている。すなわち、. 本研究において感情の特徴を表出したイラスト画や線画の方が、実際の 人の表情よりも感情を理解が容易であり、動きのある表情よりも静止し ている表情の方が感情を理解しやすいことを示した。これは、イラスト 画や線画の方が感情を推測するための特徴が一定で把握しやすく、静止. 画、動画では2名の人物の4表情を表情刺激として用いており、個人に より感情を表出する特徴が異なるため、成績が下がると考えられる。. また、A2を除く対象児が刺激に静止画を用いた場合と比較して動画 を用いた場合の方が低い正答率を示した。これは、石川・小林(1990)の. 結果と一致している。この要因として、静止画では注視するタイミング や注視時間が各対象児で異なっていても反応に影響はないが、動画では 表情が変化していくため、数秒間注視しておく必要があるため、静止画 よりも動画が低い成績であったと考えられる。さらに、両群とも表情刺 激別の成績で動画の成績が低い傾向を示したが、知的障害児群は平均正 答率81%で、自閉症児群は平均正答率が59%であった。両群の正答率を. 比較してU検定を行ったところ、有意傾向が見られたことから、自閉 症特有の注視の障害が関係していると考えられる。. 一24..
(29) 本研究の結果から、自閉症は表情から感情表出語を弁別することは、. 知的障害児と比較して困難性を示すが、不可能ではないことが明らかに された。. 若松(1989)の研究では、情緒状態を表現したイラスト画、写真(泣い. ている顔)と情緒状態語(「泣いている」)のマッチングを行い、本研 究では、様々な表情刺激と感情表出語とのマッチングを行った。したが って、今後、表情刺激と情緒状態語、感情表出語のマッチングによる成 績の違いを検討していく必要がある。. 2.表情表出課題 自閉症児群、知的障害児群ともに、理解課題で用いた文宇刺激、表情 刺激を見本刺激として、表情表出することが求められた。本研究におい て自閉症児群は知的障害児群よりも全体的に成績が低いことを示した。 これは、対象児群にダウン症児を用いた若松(1989)と同様の結果である。. また、全体的に一定の傾向は示されず、群問においても一定の傾向は 示されなかった。これは、ダウン症児群、自閉症児群とも喜びの表情表 出が最も高い成績を示したという若松(1989)の研究結果と異なってい る。若松(1989)は自閉症児においては、言語教示による表情表出条件と. 写真と言語教示による表情表出条件で、喜びが最も高い成績を示してい たが、情緒状態語を用いて言語教示し(例えば、「笑った顔をしてくだ さい」)、「喜び」の表情表出が最も高いと報告している。しかし、写 真のみを提示し、「こんな顔をしてください」と教示し表情表出する条 件では、感情による一定の傾向は報告されていない。したがって、情緒 状態語(「笑った」「泣いた」)を用いて表情表出した場合、特に「喜び」. に関しては高成績を示すが、感情表出語を提示した場合においては困難 性を示すと考えられる。. さらに、若松(1989)は、見本刺激に写真刺激を用いるよりも言語教示. による表情表出の方が高い成績を示したと報告しているが、先の条件は 本研究における静止画を見本刺激に用いる条件と文字カードを見本刺激. 一25..
(30) に用いる条件に相当すると考えられ、この結果は、若松(1989)の結果と. 同じ傾向は認められなかった。この要因は、用いた表情刺激が異なるこ とと、若松(1989)の研究では、写真の表情模倣を行うよりも、言語教示. として用いた情緒状態語を手がかりに表出するほうが、具体的にどのよ うな表情をすればよいか理解しやすいためだと考える。. 一26一.
(31) 100%. :::. 驚. Fig.3 A1における理解課題の正答率(条件別) 100%一. :::. Fig.4 A2における理解課題の正答率(条件別) 100% 75%. 50%. 鶯. 25% 0%. !. F蓋g.5 A3{『おける理解課題の正答率(条件別). Fig.6 A4における理解課題の正答率(条件別).
(32) 100%. 75%. 50%. 25%. 0%. ■. 100% 一. 75% 50% 25%. 0%. ρ M1における理解課題の正答率(条件別). Fig.7. 100%. Fig.8 M2における理解課題の正答率(条件別) 100%. :1:. 75%. 50%. 慧. 25%. 0%. Fig.9 M3における理解課題の正答率(条件別). Fig.10. M4における理解課題の正答率(条件別).
(33) イラスト画. 線画. 静止画. Fig.11 A1における理解課題(表惰刺激別). Fig.12 A2における理解課題(表情刺激別). 一 100%. V5%. T0%. Q5%. @0% イラスト画. 線画. 静止画. 動画. Fig.13 A3における理解課題(表情刺激別). Fig.14 A4における理解課題(表情刺激別).
(34) イラスト画. 線画. 静止画. 動画. イラスト画. 線画. 静止画. 動画. Fig.15 M1における理解課題の正答率(表情刺激別). Fig.16 M2における理解課題の正答率(表情刺激別). Fig.17 M3における理解課題の正答率(表情刺激別). Fig.18 M4における理解課題の正答率(表情刺激別).
(35) Fig.19 A1における理解課題(選択刺激別) 「 意00%. .陣一……. @. 一一…一 一一…「 } i. @ @. Fig.20. 100%. @75%. 75%. 50%. 50%. Q5%. 25%. 0%. O%. L. A2における理解課題(選択刺激別). 文字一表情. 表情一文字. Fig.21 A3における理解課題(選択刺激別). 文字一表情. 表情一文字. Fig。22 A4における理解課題(選択刺激別).
(36) 文字一表情 Fig.23. 表情一文字. M1における理解課題の正答率(選択刺激別). 100%. 文字一表情 Fig.24. 表情一文字. M2における理解課題の正答率(選択刺激別). 100%. 文字一表情. 表情一文字. Fig.25 M3における理解課題の正答率(選択刺激別). 文字一表情. 表情一文字. Fig.26 M4における理解課題の正答率(選択刺激別).
(37) 100%. うれしい. 悲しい. うれしい. 怒っている. Fig.27 A1における理解課題の正答率(感情別). Fig.28. 100%. 悲しい. 怒っている. A2における理解課題の正答率(感情別). 100%. 75%. 50%. 25%. 0%. 」. うれしい. 悲しい. 怒っている. Fig.29 A3における理解課題の正答率(感情別). ふつう. うれしい. 悲しい. 怒っている. Fig.30 A4における理解課題の正答率(感情別).
(38) L. うれしい. Fig.31. 悲しい. 怒っている. M1における理解課題の正答率(感情別). うれしい. 悲しい. 怒っている. Fig.32 M2における理解課題の正答率(感情別). 100%. うれしい. 悲しい. 怒っている. F蓋g.33 M3における理解課題の正答率(感情別). うれしい. 悲しい. 怒っている. Fig.34 M4における理解課題の正答率(感情別).
(39) 32. 32. 1. 24 評. 価16. 価16. _. 点 8. 8. 0. 0 イラスト画. 線画. 文字. 静止画. イラスト画. 動画. Fig.35 A1における表情表出課題の評価点(見本刺激別). 線画. 文字. 静止画. 動画. Fig.36 A2における表情表出課題の評価点(見本刺激別). 「. 1. 32. 32. 24 評 価16. 価16. _. 点 8. 8. 1 0. 0. L. イラスト画. 線画. 文字. 静止画. イラスト画. 動画. Fig.37 A3における表情表出課題の評価点(見本刺激別). 線画. 文字. 静止画. 動画. 」 Fig.38 A4における表情表出課題の評価点(見本刺激別).
(40) Fig.39 M1の表情表出課題における評価点(見本刺激別). Fig.40 M2の表情表出課題における評価点(見本刺激別). 32 24 評. 価16 点. 8. 0 イラスト画. 線画. 文字. 静止画. Fig.41 M3の表情表出課題における評価点(見本刺激別). 動画. Fig.42 M4の表情表出課題における評価点(見本刺激別).
(41) 40 30 評. 価20 点. 10. 0 うれしい. 40. 40. 30. 30. 評. 評. 価20. 価20. 点. 点. 10. 10. 0. 0 悲しい. 怒っている. Fig.45 A3の表情表出課題における評価点(感情別). 怒っている. ふつう. Fig.44 A2の表情表出課題における評価点(感情別). Fig.43 A1の表情表出課題における評価点(感情別). うれしい. 悲しい. ふつう. うれしい. 悲しい. 怒っている. Fig.46 A4の表情表出課題における評価点(感情別). ふつう.
(42) Fig.47 M1の表情表出課題における評価点(感情別). Fig.48 M2の表情表出課題における評価点(感情別). 40. 価20. _. 10. 0. うれしい. 悲しい. 怒っている. ふつう. うれしい. 悲しい. 怒っている. L F蓋g.49 M3の表情表出課題における評価点(感情別). Fig.50 M4の表情表出課題における評価点(感情別). ふつう.
(43) 第2節 実験2. 自閉症児の社会的文脈場面における自己感情表出. 1.目的 自閉症児において日常場面の社会的文脈に応じた表情理解、言語表出、. 表情表出が可能か否か、またその指導法について検討する。. H,方法 1.対象児. 実験1に参加したA1が、実験1の表情理解課題においてトレーニン グを行った後、本実験に続けて参加した。. AIはH:大学において8年前から報告、助言、簡単な質問応答、金銭 管理、教科学習、余暇活動などの指導を受けていた。日常場面での表情 表出において笑顔はよく見られ、泣くこともあるが、人に対して怒りを. 表現することはなく、物にあたると母親から報告を受けている。H大学 での指導場面でも、笑顔は度々見られたが、状況に応じた表情表出では ないこともあった。. 2.マテリアル Happy場面では、「プレゼントされるお菓子」、 Sad場面では「金魚が 死んだ様子が描かれた絵カード」「壊れたキーボード」、Angry場面では 「他者にとられるお菓子」「対象児が事前に描いた絵」を用意した。ま. た、劇場面に参加する仲間役は指導に参加している複数の学生がローテ ーションで担当した。. 3 実験条件及びセッティング 条件と設定された社会的文脈場面の内容を以下のTable 3に示す。ま. .39一.
(44) た、セッティングをFig.51からFig59に示す。図に示されたTは指示者、c は対象児、Stは仲間役を表している。 Table 3 実験条件と社会的文脈場面の内容 条件. Happy条件. 内容. 場面 *(1)仲間に入れてもらう場面. 3人の友だち(Stl∼St3)が. しりとりをしている仲間に 入れてもらう 友だち(Stl)が教室にはいる. (2)あいさつ場面. のを見てあいさつをする (3)お礼を言う場面. 友だち(StDがお菓子をくれ たときにお礼を言う. Sad条件. 遊園地に行く予定だったが、. *(4)楽しみにしていた. イベントが中止される場面. 雨のために行けなくなったこ とを他者(Stl)に伝える. (5)金魚が死んだ場面. 育てていた金魚が死んだこ とを他者(StDに伝える. (6)大切な物が壊れた場面. 大好きなピアノが壊れたこ とを他者(StDに伝える. Angry条件. *(7)落書きされる場面. 対象児が描いた絵に他者 (StDが落書きをし、やめる ように言う. (8)物が取られる場面. 対象児のお菓子を他者(StD に取られ返すように言う. (9)順番を抜かされる場面. 順番に並んでいたが他者(St 1). に順番を抜かされ注意する. *は直接訓練する場面. 一40一.
(45) 工⊇CAM. 」,’》 口峰 ●騨 調麟 6塵 圃9 ’ , ■9. Fig.51 *G)仲間に入れてもらう場面(Happy条件). 貝CAM 、. 亀 職. 覧. 覧. 亀. 亀. 覧. 塾. 覧 覧. 、. 覧. ロ. 亀. ,.・7. し’. Fig.52 (2)あいさつ場面(Happy条件). 一41.
(46) 王⊇CAM. 8 ρ. ヨ. ψ. Fig.53 (3)お礼を言う場面(Happy場面). 貝CAM. Fig54 *(4)楽しみにしていたイベントが中止される場面(Sad条件). ・42..
(47) 三⊇CAM. C訊rd. Fig,55 〈5)金魚が死んだ場面(Sad条件). 』⊇CAM. Pi紐no. Fig56 (6)ピアノが壊れた場面(Sad条件). 一43一.
(48) 貝、CAM. Picture. Fig.57 *(7)落書きされた場面(Angry条件). 貝CAM. ◎傭 Fig.58 (8)物が取られる場面(Angry条件). 一44..
(49) 1⊇CAM ガ. //㊥ ノ. C窃ke Fig.59 (9)順番が抜かされる場面(Angry条件). (Tの教示後にCに並び、Cの前にSt1が割り込む). ,45一.
(50) 4 ターゲット行動 各社会的文脈場面においてのターゲット行動をTable 4に示す。. Table 4 ターゲット行動 二二に応℃た感情のイラスト画カードが選択できる(表情理解) 求められた言語表出が適切なタイミングでできる(言語表出) 場面に応じた表情表出ができる(表情表出). 5.手続き 1)各条件における基本的手続き *(1)仲間に入れてもらう場面(Happy条件). 対象児の正面に指示者が着席し、劇場面の内容を教示し、その後に確 認試行を行う。. 教示:「あそこ(指さし)に行って、□口先生たちがしりとりをしてい るよ。○○ちゃんも仲間に入れてもらおうね。あそこ(指さし)に行 って『入れて』って言ってね。」. 確認質問. 指示者:「あそこ(指さし)に行って、□□先生たちになんて言うのか な?」. 対象児:「入れて」(誤反応、もしくは無反応のときは正答を教示する) 指示者:「(そう)『入れて』って言うんだね。『入れて』って言うとき、. どんな比するのかな?このカードの中から選んでください。」と教示. した後、4枚のイラスト画カードを提示し、対象児が1枚選択するこ とが求められた。」. 対象児:カードを選択する。. 指示者:「『入れて』って言うときに(対象児が選択したカードを提示 しながら)この顔をしてね。では、あそこ(指さし)に行ってくださ. 一46..
(51) い。」. (2)あいさつ場面(Happy条件). 対象児の正面に指示者が着席し、劇場面の内容を教示し、その後に確 認試行を行う。. 教示:「今から□□先生が教室に入ってきます。□□先生が教室に入っ てきたら、『こんにちは』ってあいさつしてね。」. 確認質問 指示者:「□□先生が教室に入ってきたらなんて言うのかな?」. 対象児:「こんにちは」(誤反応、もしくは無反応のときは正答を教示 する). 指示者:「(そう)『こんにちは』って言うんだね。『こんにちは』って. 言うとき、どんな顔するのかな?このカードの中から選んでくださ. い。」と教示した後、4枚のイラスト画カードを提示し、対象児が1 枚選択することが求められた。」. 対象児:カードを選択する。. 指示者:「『こんにちは』って言うときに(対象児が選択したカードを 提示しながら)この顔をしてね。では、三三先生が入ってくるよ。」. (3)お礼を言う場面(Happy条件). 対象児の正面に指示者が着席し、劇場面の内容を教示し、その後に確 認試行を行う。. 教示:「今から□□先生が教室に入ってお菓子をくれるよ。□□先生が お菓子をくれたら、『ありがとう』ってお礼を言ってね。」. 確認質問 指示者:「□□先生がお菓子をくれたらなんて言うのかな?」. 対象児:「ありがとう」(誤反応、もしくは無反応のときは正答を教示. 一47一.
(52) する). 指示者:「(そう)rありがとう』って言うんだね。『ありがとう』って. 言うとき、どんな心するのかな?このカードの中から選んでくださ. い。」と教示した後、4枚のイラスト画カードを提示し、対象児が1 枚選択することが求められた。」. 対象児:カードを選択する。. 指示者:「『ありがとう』って言うときに(対象児が選択したカードを 提示しながら)この顔をしてね。では、目[コ先生が入ってくるよ。」. *(4)楽しみにしていたイベントが中止される場面(Sad条件). 対象児の正面に指示者が着席し、劇場面の内容を教示し、その後に確 認試行を行う。. 教示:「今日は遊園地に行くはずでした。でも、雨が降っていけません。 今から口〔〕先生が入ってきて『どうしたの?』って聞いてくれます。. 『どうしたの?』って聞かれたら、『遊園地に行けなくなったの』っ て教えてあげてください」. 確認質問. 指示者:「[コロ先生が『どうしたの?』って聞いたらなんて言うのか な?」. 対象児:「遊園地に行けなくなったの」(誤反応、もしくは無反応のと きは正答を教示する). 指示者:「(そう)『遊園地に行けなくなったの』って言うんだね。『遊. 園地に行けなくなったの』って言うとき、どんな記するのかな?この. カードの中から選んでください。」と教示した後、4枚のイラスト画 カードを提示し、対象児が1枚選択することが求められた。」 対象児:カードを選択する。. 指示者:「『遊園地に行けなくなったの』って言うときに(対象児が選. 一48..
(53) 面したカードを提示しながら)この顔をしてね。では、□□先生が入 ってくるよ。」. (5)金魚が死んだ場面(Sad条件). 対象児の正面に指示者が着席し、劇場面の内容を教示し、その後に確 認試行を行う。. 教示:「○○ちゃんが一生懸命育てた金魚が死んでしまいました(金魚 が死んでいる様子が描かれた絵カードを提示しながら教示する)。今 から[コロ先生が入ってきて『どうしたの?』って聞いてくれます。『ど. うしたの?』って聞かれたら、『金魚が死んじゃったの』って教えて あげてください」. 確認質問. 指示者:「二二先生が『どうしたの?』って聞いたらなんて教えてあげ るの?」. 対象児:「金魚が死んじゃったの」(誤反応、もしくは無反応のときは 正答を教示する). 指示者:「(そう)『金魚が死んじゃったの』って言うんだね。『金魚が. 死んじゃったの』って言うとき、どんな顔するのかな?このカードの. 中から選んでください。」と教示した後、4枚のイラスト画カードを 提示し、対象児が1枚選択することが求められた。」 対象児:カードを選択する。. 指示者:「『金魚が死んじゃったの』って言うときに(対象児が選択し たカードを提示しながら)この顔をしてね。では、□□先生が入って くるよ。」. (6)ピアノが壊れた場面(Sad条件). 対象児の正面に指示者が着席し、劇場面の内容を教示し、その後に確 認試行を行う。. 一49..
(54) 教示:「○○ちゃんが大好きなピアノが壊れて弾くことができません。 今から□□先生が入ってきて『どうしたの?』って聞いてくれます。. 『どうしたの?』って聞かれたら、『ピアノが壊れちゃったの』って 一教えてあげてください」. 確認質問 指示者:「[]□先生が『どうしたの?』って聞いたらなんて教えてあげ るの?」. 対象児:「ピアノが壊れちゃったの」(誤反応、もしくは無反応のとき は正答を教示する). 指示者:「(そう)『ピアノが壊れちゃったの』って言うんだね。『ピア. ノが壊れちゃったの』って言うとき、どんな記するのかな?このカー. ドの中から選んでください。」と教示した後、4枚のイラスト画カー ドを提示し、対象児が1枚選択することが求められた。」 対象児:カードを選択する。. 指示者:「『ピアノが壊れちゃったの』って言うときに(対象児が選択 したカードを提示しながら)この顔をしてね。では、□□先生が入っ てくるよ。」. *(7)落書きされる場面(Angry場面). 対象児の正面に指示者が着席し、劇場面の内容を教示し、その後に確 認試行を行う。. 教示:「せっかく○○ちゃんが描いてくれた絵に今から□□先生が入っ てきて落書きをします。□□先生に意地悪されたら、『やめて』って 言 ってね。」. 確認質問 指示者:「口□先生が意地悪したらなんて言うの?」. 一50..
(55) 対象児:「やめて」(誤反応、もしくは無反応のときは 正答を教示す る). 指示者:「(そう)『やめて』って言うんだね。『やめて』って言うとき、. どんな顔するのかな?このカードの中から選んでください。」と教示. した後、4枚のイラスト画カードを提示し、対象児が1枚選択するこ とが求められた。」. 対象児:カードを選択する。. 指示者:「『やめて』って言うときに(対象児が選択したカードを提示 しながら)この顔をしてね。では、山回先生が入ってくるよ。」. (8)物が取られる場面(Angry場面). 対象児の正面に指示者が着席し、劇場面の内容を教示し、その後に確 認試行を行う。. 教示:τここに○○ちゃんのお菓子があります。今から□口先生が入っ てきてこのお菓子を取ってしまいます。お菓子を取られたら、『返し て』って言ってね。」. 確認質問 指示者:「〔]□先生にこのお菓子を取られたらなんて言うの?」. 対象児:「返して」(誤反応、もしくは無反応のときは 正答を教示す る). 指示者:「(そう)『返して』って言うんだね。『返して」って言うとき、. どんな記するのかな?このカードの中から選んでください。」と教示. した後、4枚のイラスト画カードを提示し、対象児が1枚選択するこ とが求められた。」. 対象児:カードを選択する。. 指示者:「『返して』って言うときに(対象児が選択したカードを提示 しながら)この顔をしてね。では、ロロ先生が入ってくるよ。」. 一51一.
(56) (9)順番を抜かされる場面(Angry条件). 対象児の正面に指示者が着席し、劇場面の内容を教示し、その後に確 認試行を行う。. 教示1「あそこ(指さし〉にお菓子があります。△△先生の後ろに並ん でお菓子を取ってきてください。でも、○○ちゃんが並んでいたら〔]. □先生が順番抜かしをします。そうしたら『だめ、順番を守って』っ て言ってください」. 確認質問. 指示者:「○○ちゃんは三二先生が順番抜かししたらなんて言うの?」. 対象児:「だめ、順番を守って」(誤反応、もしくは無反応のときは 正答を教示する). 指示者:「(そう)『だめ、順番を守って』って言うんだね。『だめ、順. 番を守って』って言うとき、どんな顔するのかな?このカードの中か. ら選んでください。」と教示した後、4枚のイラスト画カードを提示 し、対象児が1枚選択することが求められた。」 対象児:カードを選択する。. 指示者:「『だめ、順番を守って』って言うときに(対象児が選択した カードを提示しながら)この顔をしてね。では、二二先生が入ってく るよ。」. 2)事前テスト:上記のようなHappy、 Sad、 Angryの9場面全てについて. 表情理解、言語表出、表情表出(各2ブロックずつ計18試行)を測定 した。正誤に関わらず、フィードバックは行わなかった。. 3)ベースライン:上記の各感情条件から1場面ずつ選択し(table 3の*. 印場面)、ベースライン(各2ブロックずつ計6試行)を測定した。正. 一52..
(57) 誤に関わらず、フィードバックは行わなかった。. 4)表情理解・言語表出トレーニング:表情理解課題、言語表出課題にお. いてのトレーニングを行った。ベースラインと同じ3場面を用いた。. ①表情理解課題;各場面の内容が対象児に教示され、確認質問を行う際 に、「『∼』(各場面においてターゲットとされる言語)と言うときには. どんな顔をしますか?このカードの中から選んでください。」と教示さ れ、対象児の前にイラスト画カードが提示される。対象児が場面に応じ たイラスト画カードを選択した場合は、言語賞賛が与えられた。また、. 間違ったカードを選択した場合には、正答が教示され、修正試行が行わ れた。修正試行で正答することが認められた後に次の課題を行った。. ②言語表出課題;確認質問を行う際に、ターゲットとする言語を理解を. しているか確認を行う。質問後5秒たっても無反応であった場合、ター ゲットとする言語と全く違う言語を表出した場合には、正答を教示しを、. 劇場面に入る。劇場面において(a)教示された言語を適切なタイミング で表出した場合は、言語賞賛が与えられた。(b)適切なタイミングであ るが、ターゲットとする言語と全く違う言語を表出した場合、「違うよ、. 『∼』って言うんだよ」と教示されるとともに、ターゲットとする言語 が書かれた文字カードが対象児の前に提示され修正試行が行われた。(c) ターゲットとする言語ではあるが、適切なタイミング(早いタイミング). で言語表出した場合、「違うよ、次は先生がこのカードの字が書いてあ る面を見せたときに、『∼』って言ってね。」と教示され、適切なタイ ミングでターゲットとする言語が書かれた文字カードが提示され、修正 試行が行われた。(d)無反応(「仲間に入れてもらう場面」では指示者. が指示を出し5秒経過しても無反応、「楽しみにしていたイベントが中. 止される場面」ではStが対象児に質問し終えてから5秒経過しても無 反応、「落書きされる場面」ではStが落書きを始めてから5秒経過して. 一53一.
図
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