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高齢者配慮の住宅改修における介護支援専門員の行動と意識

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椙山女学園大学

高齢者配慮の住宅改修における介護支援専門員の行

動と意識

著者

高阪 謙次

雑誌名

椙山女学園大学研究論集 自然科学篇

39

ページ

65-71

発行年

2008

URL

http://id.nii.ac.jp/1454/00001539/

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* 生活科学部 生活環境デザイン学科

高齢者配慮の住宅改修における

介護支援専門員の行動と意識

高 阪 謙 次*

Behavior and Consciousness of Care-managers

about the House Reform for the Elderly

Kenji KOHSAKA

1.研究目的  平成12年(2000年)に施行された介護保険制度は,わが国ではそれまで遅れのあった 在宅での高齢者福祉サービスを,時代の要請にふさわしいレベルに引き上げることを主な 目的としたものであった。この制度の中に,在宅生活の物理的・環境的な受け皿となる住 宅を,要支援・要介護の高齢者の生活に適したものにするための住宅改修の制度がある。  この住宅改修においては,介護支援専門員(ケアマネージャー,以下「ケアマネ」と略 す)が大きな役割を果たすことになっている。介護保険の利用者(要支援者・要介護者), 市町村(改修費支給者),住宅改修施工業者の三者の中にあって,図1のように,改修の 全体を進行させる役割をケアマネは担っている。具体的な仕事は制度上(あるいは表面的 には)図にあるように,利用者が提出する改修プランに関して,改修の「理由書」を作成 することのみである。しかし実際には,利用者に代わって改修費の「支給申請書」(以下 「申請書」と略す)を作成したり,図の点線で示したところのコーディネートを盛んに 行っている。このように,住宅改修の状況を最も詳しく総合的に把握しているのがケアマ ネであることから,書類作成にとどまらず,改修のプロセス全般に目を配り積極的に関 わってゆくことが,ケアマネには求められている。  ところが現実は,住宅改修に関する知識が不足していることなどから,そのような姿勢 を取れないでいるケアマネが多いということが,住宅改修制度を機能させてゆく上での ネックの一つになっていると言われている。そこで本研究では,ケアマネの住宅改修につ いての行動や意識を明らかにすることにより,そのネックの状況と,ネックがあるとすれ ば,その解消に役立てようとするものである。  なお本研究は,平成18年度に高阪の指導の下で行われた西川久美子君の卒業研究のデー タに基づき,同君の了解の下,高阪が考察等を改めて加えたものである。

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ܤॴ 80ᴢ ႒ॴ 20ᴢ 㧜ࢳ 3ᴢ 㧝ࢳ 7ᴢ 㧞ࢳ 5ᴢ 㧟ࢳ 14ᴢ 㧠ࢳ 12ᴢ 㧡ࢳ 21ᴢ 㧢ࢳ 34ᴢ㧣ࢳ 4ᴢ 19ᴢ 16ᴢ 6ᴢ 46ᴢ 13ᴢ ԗჵศ̷ ᇋ͢ᇩᇐศ̷ ᇋ͢ᇩᇐԦឰ͢ ෢ᩖศ̷ ȰɁͅ 図2 性別 図3 経験年数 図4 所属事業所の形態 の2近くを占めている。続いて随分少なくなるが,社会福祉士19人,薬剤師13人,栄養 士8人,歯科衛生士4人,保健士,訪問介護士3人,精神保健福祉士2人,PT,OT 1人 となっている。医師,歯科医師にも受験資格はあるが,回答者は0人であった。 3‒2.住宅改修の知識と経験  上に見たように,ケアマネの基礎資格のいずれもが住宅改修の専門性とは隔たったもの であり,それを「マネージ」するには何らかの補足的な学修をする必要がある。それは現 状では,ケアマネの資格取得時の課程における学習と,福祉住環境コーディネーターの資 格取得が主要なものである。前者の資格取得時の学習については,図5に見るように「全 く不十分」と感じているケアマネが半数以上いることは注目する必要がある。  後者の福祉住環境コーディネーターの資格は,63人(26.8%)が持っている。そのうち 77%が,1級の福祉住環境コーディネーターを持っている。また,40%ほどが事業所から 勧められて取得し,60%ほどが自らすすんで取得している。住宅リフォームからは若干ず れた資格であるが,福祉用具専門相談員の資格も32名が取得している。  しかし,何よりも注目すべきは,住宅リフォームに関する資格を「特に持っていない」 ケアマネが138人(58.7%)いることである。ケアマネの資格取得住宅の住宅リフォーム の知識がまったく不十分と感じている人が半数以上いることを考えても,この状態は何ら かの改善が必要なことを示している。  資格取得時以降を含めて,全体としての住宅改修の知識修得は図6のように,「かなり」 「まあまあ」修得が合わせて31%,「普通に」が44%と,改修の仕事を行う上で不自由の ないほどの知識修得をしていると感じているケアマネが多い。しかしこれは,実態的にそ うである,という訳ではなかろう。後述のように,施工業者などとの協力,または実際に は施工業者にほとんど任せて改修が行われており,そうした仕事を進めていく上での知識 修得のレベルと考えていいであろう。  図7,図8がこのことを示している。いままでの中で知識修得上役立ったことの第1位 は「現場や施工業者から」である。改修に関する知識内容では,介護保険の住宅改修制度 についてが「自信あり」が圧倒的に多いのに比べて,現場で行うことの多い工事内容の手 すり取り付け,段差解消で「自信あり」は半数弱,それ以上の工事内容になると「あやふ

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12% 52% 36% Ԛґ ߵȪ˪Ԛґ пȢ˪Ԛґ 図5  資格取得時の 住宅改修学習 36 16 98 7 0 20 40 60 80 100 120 ᆅεˁផ᏿ ៾ಐ՘ी ᒲґȺޙ᏿Ȫȹ းکɗஃࡾഈᐐȞɜ ȰɁͅ 73 図7 知識修得上で役立った事 図8 住宅改修に関する知識内容 図9 扱ったことのある工事内容 図6  全体的な住宅 改修知識修得 ȞȽɝεी ɑȕɑȕεी ௐᣮȾεी ȕɑɝεीȪȹȽȗ ɎȻɦȼεीȪȹȽȗ 4% 4% 21% 44% 27% 0 20 40 60 80 100 % ̿឴ί᪙Ɂͳޤ୎εҤ࣊ ̿឴ί᪙͏۶Ɂͳޤ୎εҤ࣊ ਖ਼ȬɝɁ͇Ȥ஁ ෉ࢃᜓ๡Ɂ஁ศ ࣂɗᣮᡅᬂɁయ୳Ɂ۰௿஁ศ ੘Ɂ՘ఉț஁ศ జᣲ٣఼ࡾศɁകႩ ᒲαȟȕɞ ȕɗɈɗ ᅺɜȽȗ 225 178 188 191 69 180 24 0 50 100 150 200 250 ਖ਼ȬɝɁ՘ɝ͇Ȥ ࣂ෉ࢃɁᜓ๡ ࣂయɁ۰௿ ੘Ɂ՘ఉț ΠبɁ՘ఉț ෉ࢃᜓ๡ൡɁᜫᏚ ʃʷ˂ʡɁᜫᏚ ȰɁͅ ᴥ̷ᴦ 231 高 阪 謙 次 や」「知らない」が多くなる。  それでは,手すり取り付け,段差解消以外の工事は扱う経験が無いのかというとそうで もなく,図9に示すように,扱ったことのある工事内容は多岐に亘っている。これは即 ち,次に述べる「理由書」「申請書」を作成することで「扱ったことがある」としている ことが分る。 3‒3.「理由書」「申請書」  「理由書」の作成件数は,図10からすると平均70件前後であろう。介護保険制度発足か ら6年でのアンケートなので,ケアマネ1人あたり年間10件強,月に1件程度というこ とになる。「理由書」は本来,ケアマネ自身が書くことになっている。回答では72%が 「おもにケアマネ自身」としている(図11)。「おもに……」としているので,時に施工業 者に依頼している人もここに含まれるであろうが,原則を守っているケアマネが多いこと を示していると言ってよかろう。「おもに施工業者」としているいわゆる「丸投げ」は 8%であった。「理由書」作成の苦手意識は,図12のように半数近くが持っている。これ には,こうした書類作成そのものに対する苦手意識も含まれていようが,専門的な内容に おいての「書きにくさ」もあるのであろうと思われる。  「申請書」の作成件数は,平均50件程度であろう。1人あたり年間8件程度である。「申

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72% 20% 8% ȝɕȾȕȽȲȧᒲᡵ ȕȽȲȧᒲᡵȻஃࡾഈᐐȟԡȁȢɜȗ ȝɕȾஃࡾഈᐐ 11% 35% 54% ᔍਖ਼৙ឧȟȕɞ ȼȴɜȞȻȗșȻᔍਖ਼ ࿑Ⱦᔍਖ਼ȺɂȽȗ 1% 31% 63% 5% 10͔ఝ຿ 10ᵻ50͔ఝ຿ሌ࣊ 50ᵻ100͔ఝ຿ሌ࣊ 100͔ሌ࣊͏˨ 54% 42% 3% 1% 10͔ఝ຿ 10ᵻ50͔ఝ຿ሌ࣊ 50ᵻ100͔ఝ຿ሌ࣊ 100͔ሌ࣊͏˨ 1% 5% 27% 18% 49% ȝɕȾȕȽȲȧᒲᡵ ȕȽȲȧᒲᡵȻஃࡾഈᐐȟԡȁȢɜȗ ȝɕȾஃࡾഈᐐ ȕȽȲȧᒲᡵȻҟႊᐐȟԡȁȢɜȗ ȰɁͅ 62% 27% 11% ᔍਖ਼৙ឧȟȕɞ ȼȴɜȞȻȗșȻᔍਖ਼ ࿑Ⱦᔍਖ਼ȺɂȽȗ 図13 「申請書」の作成件数 図14 「申請書」の作成者 図15 「申請書」作成の苦手意識 図10 「理由書」の作成件数 図11 「理由書」の作成者 図12 「理由書」作成の苦手意識 請書」は利用者側から自治体へ申請する性格のものであるので(図1),署名名義は利用 者であるが,その書面を誰が書かねばならないかは特に定められていない。従って,作成 者は図13のように,約半数がケアマネ自身,3分の1程度については施工業者が「手伝っ ている」ことになる。こうしたことから,「申請書」に対するケアマネの責任の度合の低 さや,すでに「理由書」があることの安心感からか,「申請書」作成の苦手意識は「理由 書」に比べて低い。しかし3分の1強のケアマネは,苦手意識を持っている。 3‒4.施工業者の選定,他業種との連携  図1に示したように,施工業者は基本的には利用者が選定することになっている。しか し,利用者にそのような業者がいない場合には,ケアマネに業者選定が依頼されることも ある。むしろその方が多い。その際の選定の仕方についての結果が図16である。「特定の ひとつの業者に任せている」という,特定の連携業者があるのは6%と少ない。「その都 度選定」が最も多く49%である。この一部には,利用者の意向が反映していると思われ る。「工事内容によって業者を変えているが,内容別ではほぼ同じ」という選定の仕方が, ケアマネとして最も手間をかけた方法であると思われるが,これは38%であった。

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6% 7% 49% 38% ࡾ̜ю߁Ⱦɛȶȹഈᐐɥ۰țȹȗɞȟɎɏպȫ ю߁ȾᩜΡȽȢɅȻȷɁഈᐐȾ͖Ȯȹȗɞ ᣵଆȪȹȗɞഈᐐɂ࿑ȾȽȢȰɁ᥆࣊ᤣɉ ȰɁͅ 38 90 88 41 76 67 5 4 2 20 0 20 40 60 80 100 ᜻ҜȟᓦȗȞɜ ᯚᳮᐐɁͳޤ୎εɁጽ᮷ȟ۹ȗȞɜ ˣߚȽ̜̈́ɥȪȹȢɟɞȞɜ ஃࡾഈᐐɁ̷౤ȟᓦȗȞɜ ҟႊᐐȾˣߚȾߦख़ȪȹȢɟɞȞɜ ᇩᇐɗᯚᳮᐐɁȦȻȾɕྒ॑Ⱦ ᩜ॑ɥધȶȹȢɟɞȞɜ ̜ഈ੔Ɂᣋ੔ȳȞɜ ᅺɝնȗȳȞɜ ஃࡾഈᐐɁ஁ȟྒ॑Ⱦ ؆ഈ๊ӦȪȹȠȲȞɜ ȰɁͅ 4% 48% 48% ȞȽɝαᭅ ɑȕɑȕαᭅ αᭅ̟ȁȺɂȽȗ 33 49 85 58 59 56 81 26 0 50 100 150 200 ԗ࢙ ᅆ឴࢙ PTᴥ࿎ျჵศۢᴦ OTᴥͽഈჵศۢᴦ ʇ˂ʁʭʵʹ˂ɵ˂ ᇩᇐͳၥہɽ˂ʑɭʗ˂ʉ˂ ࣮ኳۢ ᜪץ̿឴׆ᴥʥ˂ʪʢʵʛ˂ᴦ ȰɁͅ 188 図16 施工業者の選定 図17 施工業者の選定理由 図18 施工業者への信頼感 図19 施工業者以外との連携 高 阪 謙 次  施工業者の選定理由は,図17のように「高齢者の住宅改修の経験」「丁寧な仕事」「利 用者への対応」「福祉や高齢者に関心」が多く,「評判」「人柄」は比較的少ない。これは, 住宅改修そのものに対する利用者の満足度が,ケアマネの評価にもつながるからであると 思われる。ケアマネの選定は利用者に任されており,評価の低いケアマネ(の所属する事 業所)には利用者が付かなくなるという,制度上の仕組みが有効に働いていると思われ る。  その結果,図18のように,選定した施工業者への信頼感は高くなっている。信頼感の ある施工業者と提携しないと,ケアマネ自身も困ることになるからであろう。耐震補強の 住宅リフォームの悪質業者による被害が多発しているのに対し,高齢者配慮の住宅リ フォームにはそれがほとんどないのは,当面の不安感がバリアフリー改修には少ないこと や,改修費用が小さいこと,目に付く部分がほとんどであること(耐震改修は隠れた場所 での工事がほとんど)に加えて,ケアマネというチェックが働いていることも多少は機能 していると思われる。  このように全般的に施工業者への信頼は高いが,自由記載欄によると,とくに利用者が

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指定した経験の少ない施工業者において,介護保険制度への無理解を嘆く声なども多く寄 せられている。  施工業者以外との連携の経験は,図19のように,物理療法士(PT)が最も多い。ほと んどのケアマネが,PT との連携の経験を持っていることは注目すべきことであろう。こ れは,高齢者が病院へ入院をし,退院後に住宅改修が必要になった場合などにおいて連携 したことを示している。このほか,3分の1から4分の1のケアマネは,作業療法士 (OT),訪問介護員(ホームヘルパー),福祉住環境コーディネーター,ソーシャルワー カー,建築士との連携の経験を持っている。この結果は,住宅改修をめぐるケアマネの仕 事が,多方面との連携が必要であることを,事実で示しており,興味深い。医師,看護師 との連携は少ない。医療関係では PT,OT との連携があるので,この職種については必要 性が少ないとも言えようが,利用者が PT,OT と関わっていない場合は,医師,看護師レ ベルとの連携が求められる。 4.ま と め ① 介護保険事業所の経営主体は民間(NPO 法人など)が多く,また所属するケアマネ の経験年数が短いことから,制度の経営基盤が安定的に確立されるまでにはしばらく時 間を要すると思われる。 ② 住宅改修に関するケアマネの知識や経験は十分でない。介護保険における住宅改修の 制度については詳しいが,現場的な知識は不足している。しかし,信頼のできる施工業 者を選定・連携することによって,その不足分を補おうとしているようである。 ③ 「理由書」「申請書」を施工業者などに「丸投げ」するようなケースは少ない。ただ し,このアンケートに回答したケアマネは,住宅改修に比較的積極的な人が多いと思わ れることから,ケアマネ全体としてはもう少し多いかと思われる。 ④ 施工業者への信頼感は概して高い。しかし,介護保険での住宅改修の経験の少ない施 工業者については,この制度の趣旨等の無理解を嘆く声も多い。施工業者への啓蒙の必 要を示している。 ⑤ とりあえず単純集計の結果を報告したが,クロス集計などによるより深い分析を今後 すすめる予定である。

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