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Yamanashi Nursing Journal Vol.1 No.1 (2002)
看護ケアに対する患者の期待度と満足度に関する研究
The Study of Patient’s Expectation and Satisfaction for Nursing Care
杉本 美貴
1),小林 真里
1),井上 慶子
1),金子 春美
1),五味美百合
1)清水 祐子
2),佐藤みつ子
3)SUGIMOTO Miki, KOBAYASI Mari, INOUE Keiko, KANEKO Harumi, GOMI Miyuri, SIMIZU Yuko, SATO Mitsuko
要 旨
婦人科疾患患者への看護介入の必要性を見出す為,患者への看護ケアに対する期待度と満足度を,調査,分 析した。専門的技術においては,清潔援助の満足度が高かったが,羞恥心を伴う援助においては低かった。信 頼関係においては,担当看護婦の存在が大きく,満足度は高かった。教育的関係においては,婦人科特有の看 護ケアに関しては満足度が高かったが,初回入院患者の薬の作用・副作用についての説明については低く,検 討する必要がある。 キーワード 期待度,満足度,患者,看護ケアKey Words Expectation, Satisfaction, Patient, Nursing Care
Ⅰ . はじめに
患者にとっての満足度は,入院時における看護ケアへ の期待度と入院中後の看護ケアへの満足度が影響すると 考える。また,当院の婦人科疾患患者は,手術療法を受 ける患者がほとんどであり,手術前後のケアをはじめ, プライバシーへの配慮やボディイメージの変化の受容, 退院後の性生活の指導など特徴的な問題を抱えている。 これらの問題にアプローチする上で専門的な知識や技術, 及びお互いの信頼関係のあり方,さらに患者はどう受け 止めているか,などを把握することは非常に必要であり, かつ重要である。Ⅱ . 研究目的
看護ケアに対する婦人科疾患患者の期待度と満足度を 明らかにし,看護介入に関する検討資料を得る。Ⅲ . 研究方法
1. 調査対象 婦人科病棟に入院中の患者。本研究の主旨を説明し承 認を得られた患者で,患者アンケートの文章が理解でき る,20 歳以上,自己記入できる 59 名を対象とした。 2. 調査期間 2001 年 2 月 15 日∼ 5 月 15 日までとした。 3. 調査内容 患者の年齢,入院回数,入院目的及び患者の期待度,満 足度においては「専門的技術」「信頼関係」「教育的関係」 の 3 つの側面から捉えた 40 項目からなる Lisser の開発し た尺度,及び婦人科特有の看護ケア項目を付け加えた47 項目の自作の調査表を作成した。全項目を期待度は「全 く期待できない」から「非常に期待している」,満足度に ついては「全く満足していない」から「非常に満足して いる」までの 5 段階評価とした。 4. 調査方法 無記名によるアンケート調査。期待度は入院時に実 施し,満足度は担当看護婦が退院指導を行なった後実原 著
受理日:2002年11月1日1) 山梨大学医学部附属病院:University of Yamanashi Hospital 2) 社会保険山梨病院:Yamanashi Hospital of Social Insurance 3) 山梨大学医学部看護学科:University of Yamanashi
杉本 美貴,他
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施した。 5. 分析方法 (1)期待度と満足度のそれぞれの平均点とその得点差を 算出し t 検定を行った。 (2)患者の期待度,満足度と患者の年齢・入院回数・入 院目的との関係について分析した。 統計処理は SPSS を用いた。
Ⅳ . 用語の定義
期待度:患者が看護婦の提供する看護ケアに対する ニーズとする。 満足度:患者が看護婦の提供した看護ケアに対する充 足度とする。Ⅴ . 結果
1.対象の特性 対象の年齢30歳代が22名(37%)と最も多く,次いで40 歳代が 15 名(25%)であった(表 1)。入院回数は初回入院 が 45 名(77%)で最も多かった(表 2)。入院目的は,手術 目的が44名(74%),点滴目的が6名(10%)であった(表3)。 2. 「専門的技術」に対する期待度・満足度 期待度に比べ満足度が高かったものは,表 4 に示すよ うに,「 手術後の対応」 期待度 4 . 5 2 点,満足度 4 . 6 9 点 (p<0.05),「清拭・入浴の援助」期待度3.98点,満足度4.49 点(p<0.01),「洗髪の援助」期待度3.92 点,満足度4.54 点 (p<0.01),「病衣交換の援助」期待度 3.89 点,満足度 4.66 点(p<0.001)であり,これらすべてに有意差が認められ た。一方期待度より満足度が低かったものは,「手術後の ガーゼ交換時の援助」期待度4.57 点,満足度4.49 点,「苦 痛がある時の援助」期待度 4.55 点,満足度 4.34 点だった がいずれも有意差はなかった。 3. 「信頼関係」に対する期待度・満足度 すべての項目において,期待度よりも満足度の方が表 5 に示すように有意に高かった。特に期待度よりも満足 度の方が有意に高かった項目は,「担当看護婦がいて良 かった」期待度 4.57 点,満足度 4.64 点(p<0.001)であり, 他に満足度で高かったのは,「親しみやすさ」期待度4.18 点,満足度 4.70 点(p<0.001),「ナースコールの対応」期 待度 4.23 点,満足度 4.63 点(p<0.001),「自由に質問でき た」期待度 4.21 点,満足度 4.63 点(p<0.001),「看護婦に 図1「手術前処置の援助」 年齢別看護ケア期待度・満足度 0 1 2 3 4 5 20∼30 歳 30∼40 歳 40∼50 歳 50∼60 歳 60∼70 歳 期待度 満足度 図2 「看護婦に守られていた」 年齢別看護ケア期待度・満足度 0 1 2 3 4 5 20∼30 歳 30∼40 歳 40∼50 歳 50∼60 歳 60∼70 歳 期待度 満足度 n=59 20歳∼30歳未満 30歳∼40歳未満 40歳∼50歳未満 50歳∼60歳未満 60歳∼70歳未満 70歳以上 8 22 15 4 7 3 人数 年齢 表1 年令 初回 2回目 3回目 4回以上 45 5 4 5 人数 入院回数 表2 入院回数 初回 2回目 3回目 4回以上 45 5 4 5 人数 入院回数 表3 入院目的 表4 「専門技術」に対する期待度と満足度 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 有意確率 *** ** * * ** * *** *** *** *** *** * 19 20 手術後の対応 体温脈拍測定 筋肉注射 点滴交換や針を抜く 体位交換 排泄の援助 清拭・入浴の援助 洗髪の援助 洗面・歯磨きへの援助 食事の援助 安眠の援助 病衣交換の援助 シーツ交換 ベットサイドの整理 車椅子への移動 病室や廊下の環境整備 内診時の援助 手術前処置の援助 手術後ガーゼ交換時の援助 苦痛があるときの援助 期待度 M 4.52 4.13 4.37 4.29 4.29 4.5 3.98 3.92 3.96 3.81 3.7 3.89 3.69 3.03 3.77 3.67 4.37 4.29 4.57 4.55 SD 0.5 0.62 0.58 0.76 0.64 0.02 0.91 1.04 0.93 0.75 0.81 0.36 0.97 1.13 1.73 0.89 0.64 0.61 0.59 0.59 満足度 M 4.69 4.66 4.33 4.4 4.52 4.26 4.49 4.54 4.31 4.52 4.28 4.66 4.38 4.27 4.54 4.56 4.57 4.58 4.49 4.34 SD 0.47 0.48 0.71 0.67 0.63 0.67 0.55 0.6 0.6 0.68 0.79 0.53 0.71 0.52 0.78 0.54 0.62 0.55 0.66 0.75 *<0.05 **<0.01 ***<0.001看護ケアに対する患者の期待度と満足度に関する研究
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0 1 2 3 4 5 内診時の援助 意見の尊重 期待度 満足度 図3 初回入院患者の期待度・満足度 表5 「信頼関係」に対する期待度と満足度 有意確率 期待度 M SD 満足度 M SD *p<0.05 **<0.01 ***<0.001 21 訴えが医者に伝わっていた 22 気遣い・心配り 23 訴えたことへの対応 24 話したいと思っていたときの対応 25 親しみやすさ 26 ナースコールの対応 27 やってくれると約束したこと 28 気分が滅入っている時の対応 29 患者の意見を尊重 30 患者への援助優先度 31 明るい態度で対応 32 優しい態度で対応 33 看護婦と接した時間 34 自由に質問できた 35 看護婦に守られていた 36 入院時の自己紹介 37 自分の事を良く知ってもらえた 38 担当看護婦がいてよかった 4.38 3.86 4.15 3.98 4.18 4.23 4.28 4 4.02 3.73 4.25 4.27 3.74 4.21 3.93 3.92 3.96 4.57 0.57 0.7 0.59 0.69 0.69 0.57 0.6 0.74 0.73 0.68 0.61 0.61 0.65 0.65 0.67 0.68 0.59 0.61 4.46 4.57 4.48 4.6 4.7 4.63 4.56 4.46 4.52 4.4 4.63 4.63 4.43 4.63 4.67 4.7 4.49 4.64 0.61 0.57 0.57 0.53 0.46 0.52 0.57 0.58 0.58 0.64 0.52 0.49 0.63 0.59 0.51 0.5 0.61 0.56 ** ** ** ** *** * * *** ** *** *** *** *** *** *** *** *** 守られていた」期待度3.93 点,満足度 4.67点(p<0.001)で あった。 4. 「教育的関係」に対する期待度・満足度 教育的関係全体の 満足度の平均は,専門的技術や信頼 関係よりも低かった。 期待度よりも満足度が有意に高かったのは,「家族役割 表6 「教育的関係」に対する期待度と満足度 有意確率 期待度 M SD 満足度 M SD *p<0.05 **<0.01 ***<0.001 *** ** ** ** 39 40 41 42 43 44 45 46 47 家族役割に対する援助 ボディイメージの精神的配慮 内服薬の与薬への援助 点滴や処置の説明 薬効や副作用の説明 質問された病状の説明 検査・手術前後の説明 退院時の指導 性生活への指導 3.68 3.75 4.53 4.45 4.47 4.66 4.66 4.28 3.94 0.9 0.95 0.62 0.57 0.55 0.48 0.48 0.66 0.78 4.4 4.44 4.7 4.38 4.03 4.44 4.56 4.66 4.15 0.65 0.67 0.46 0.73 0.92 0.64 0.58 0.48 0.89 の指導」期待度3.68点,満足度4.40点(p<0.001),「ボディ イメージの精神的配慮」期待度 3.75 点,満足度 4.44 点 (p<0.01),「退院時の指導」期待度4.28 点,満足度4.66 点 (p<0.01)であった。期待度より満足度が有意に低かった ものは,「薬効や副作用の説明」期待度4.47点,満足度4.03 点(p<0.01)であった。 5. 年齢別看護ケアの期待度・満足度 年齢別に看護ケアの期待度と満足度を比較すると,図 1,図 2 に示すように「術前処置の援助」において,50 ∼ 60 歳及び 60 ∼ 70 歳においては,満足度の方が期待度よ りも高かった。しかし,20∼30歳代の患者は期待度の方 が満足度より高かった(p<0.05)。また「看護婦に守られ ていた」においてはどの年代も満足度が期待度を上回っ ていた。 6. 院回数別の看護ケア期待度・満足度 入院回数別に看護ケア期待度と満足度を比較すると, 図3に示すように,初回入院患者においては,「内診時の 援助」,「意見の尊重」に有意な差が認められ,満足度が 高かった。
Ⅵ . 考察
看護ケアの中の専門的技術においては,清拭・入浴へ の援助などの清潔行動の満足度が高かったのは,日頃か らこの病棟においては,手術前後に,特に清潔ケアを重 視しているためと考えられる。また排泄援助や手術後の ガーゼ交換の援助の満足度が低かったのは,いずれも羞 恥心を伴うものであり,手術前の浣腸時,ガーゼ交換時 のプライバシーの配慮が足りなかった事が,羞恥心へつ ながったと考えられる。また婦人科疾患の場合,排泄障 害を伴うことが多く,個人の状態にあった援助方法の工 夫の必要性が示唆された。 次に信頼関係においては,担当看護婦がいることが患 者にとって非常に満足している事がわかった。これは手 術目的で入院してくる患者が多いため,担当看護婦の存 在は大きく,手術への不安抱えている患者の訴えをよく 聞いたり,自分のことを見守ってくれる,励ます担当看 護婦のかかわり方や存在の態度が満足につながったと考 えられる。 教育的関係において,薬効や副作用の説明が,期待度 より満足度が低かったのは,医師が薬の効果の説明を行 う事が多く,看護婦も薬効や服用の仕方や副作用の説明 を行っているが,初めての入院患者が約 8 割であり,患 者が求めている内容の説明がまだ不十分であったと考え られる。これまで以上に与薬への個々のニーズを把握し た関わりをもつ必要がある。反面,退院時の指導やボ ディイメージの精神的配慮への援助は満足度が高く,こ杉本 美貴,他
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のことは患者のボディイメージの変化により揺れる心理 状態を把握したこと,また退院後の生活指導においては, 担当看護婦が関わりを多くし,必要であれば患者だけで なく家族にも指導を行うなど,個々にあった援助をして いたため満足度が高かったと考えられる。 年齢別看護ケアの手術前処置の援助において,20歳代 よりも 50 歳代 60 歳代のほうが期待度より満足度が高 かったのは,剃毛などの手術前処置の場合,羞恥心への 気配りをしたり,手早く処置を行ったため,満足度が高 かったと思われる。20歳代のほうが期待度が高かったの は,もともと羞恥心が高い年代のためと考えられ,これ まで以上に期待に添うケアを行う必要がある事が示唆さ れた。看護婦に守られていたかにおいては,どの年代に おいても満足度が期待度より高かったのは,患者が常に 頼れる担当看護婦制が充実しているからと考えられる。 入院回数別の看護ケア期待度,満足度において,初回 入院患者が,内診時の援助や意見の尊重において,満足 度が高かったのは,初回入院患者の場合は,特に内診時 に細かい心使いをしていることや,入院,手術において 患者の意見を聞くことに重きを置いて看護をしている為 と考えられる。