北海道東部, 標津町における「サケ学習」プログラムの開発(III) : 学生は「サケ学習」の体験をどう受けとめたか
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(2) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ) ─ 学生は 齋. 藤. 里. サケ体験学習 奈. 高. 嶋. の体験をどう受けとめたか ─ 幸. 男. 小宮山. 英. 重. 北海道教育大学釧路校大学院 北海道教育大学釧路校 野生鮭研究所. ( ) ─. ─. ・忠類川支流横牛川での足慣らしと生物調査. はじめに. 第. 日目. 月. 日(土). 年以来,筆者らは,北海道教育大学釧路校教育. ・忠類川支流討伐沢流域の環境観察と生物調査. 内容・方法研究室の学生を主な対象として,教師教育. (忠類川探検隊 標津中学校の生徒たちと合. の一環として地域理解を目的とした. サケ体験学習. 同). を,標津サーモン科学館等の協力のもと行ってきた。. 第 日目. 月. 日(日). 近年,その実習のねらいと内容を,環境問題・環境教. ・忠類川河口. 育の視点から,根室ひいては道東の自然と人間の営み. ・忠類川中流域(七条)環境観察と生物調査. 地域 を考える方向に重点を置いた. の関係を通して. 年. 実習を行っている。. 月に行った. 秋季サケ体. 験学習 では,学生たちが体験し考察した内容を. ・討伐沢上流 第 日目. 絵. した。本稿では, 絵本 認識. の体験による. 水中での生物観察 日(月). ・標津川下流域(捕獲場). 本 としてまとめたが,その絵本の検討を通して体験 および認識の内容を再吟味し, 改訂版絵本. 月. シロザケの産卵行動. ・標津サ モン科学館での補足講義とまとめ. を作成. の検討を通して,学生たち. を検討し,体験によって何を獲. 第. 日目. 月. 日(金). 晴れ. 横牛川は,忠類川の支流の一つであり,武佐岳に連 号線と交差し,忠類. 得したか,どのように認識したかを考察する。その上. なる山並みから湧き出て国道. で,環境教育として何かを体験させるとき,どのよう. 川中流域の河畔林の中を蛇行して,忠類川本流に注い. な働きかけが必要になるか,若干の考察をする。. でいる。ここに,自然河川上流域の環境があり,サケ 科 種(オショロコマ,サクラマス,カラフトマス,. . サケ体験学習. シロザケ)が産卵行動を行っている場所でもある。. の概要. 今回は,国道から横牛川に下り,忠類川との出合ま. 年秋季の実習は,根室管内標津町で ら 月. まで. 名(男. 泊. 名,女. 月. 日か. での. 日で行われた。参加者は,. 年生. 選ばれたのは今回最初で,河川規模は学生たちが川の. 名)と教官. 名で,標津サーモン. を歩く。この場所が学生の実習場所として. 歩き方を学ぶのに適している。学生たち(. 人)は,. 科学館主任学芸員小宮山英重(当時)の指導のもとに. を履き,リュッ 化繊のジャージを着, 長靴 ( 人運動靴). 行われた。ただし,介護実習の日程と重なっている学. クを背負い,手にはたも網をもって出発する。初めて. 生 名が第. の川歩きという人がほとんどで,はじめは恐る恐る川. 日目を参加していない。. に入っていった。川底の石の表面には藻類が付着して 実習の日程 第. 日目. いて滑りやすいが,川の流れ自体は速くないので,足 月 日(金). 慣らしをするには最適な場所であった。川歩きに早く.
(3) 齋. 慣れた学生. 藤. 里. 奈・高. 嶋. 幸. 男・小宮山. 英. 重. 名は,小宮山と一緒に先頭を歩き,他の. り口にもなっている。出入り口になっているとこ. 人は各々自分のペースで川を下る。そのため,全員同. ろに,たも網を立て,石を出入り口のある方から. じものを見るのは不可能で,実際,川辺にいたオジロ. そっと上げ,逃げ出してきた生き物をたも網で取. ワシを見たのは先頭を歩く学生. 名だけであったが,. る。. 各自それぞれの発見や気づきがあった。 )横牛川(国道. 以上の方法で,今回,ハゼ科シマウキゴリを確認し. 忠類川出合). 河畔林がうっそうと茂り,その間を川幅. た。 前後の. さらに下流に. 移動し,水深. くらいの比較. 小さな川が蛇行して流れる。国道と交わる部分は,コ. 的流れの緩やかな場所では,魚はカラフトマス,鳥は. ンクリート製のトンネル内を流れることになるが,忠. ヤマセミを確認した。この場所で,学生数名は,ジャー. 類川との出合までは人手の入らない自然状態の小川の. ジを着たまま淵や瀬で泳ぎ,川遊びを満喫する。中に. 景観を見ることができる。河畔林の中には,カツラの. は,水中で産卵場所に集まっていたカラフトマスを見. 大木が数本,ヤマブドウ,ヤナギ科,カバノキ科の木々. 。帰りは, たものもいる(以下,調査結果は表 に示す). などがみられた。倒木も多数あった。川岸の倒木が魚. 林道を通り牧草地を横切って国道まで出る。. の隠れ場所となっており,豊かな環境があることを感 表 .調査結果. じさせる。川岸から数メートルのところで,ほとんど 日目調査結果. 消化されていないコクワの実が入るヒグマの糞を発見. 第. し,学生たちは大喜びであった。また,川辺でサクラ. 分けるのはむずかしい。途中,人間の気配に驚き,逃. 魚類 サクラマス(ワシが食べたと思われる死体) カラフトマス(ヒグマが食べたと思われる 死体 ,産卵後と思われるメス) 鳥類 オジロワシ 年?),カバ 植物 カツラの大木(樹齢 ノキ科,ヤナギ科の植物,ヤマブドウ(実 はほとんどなっていない) キノコ類 ヒラタケ その他 ヒグマの糞(消化されていないコクワなど) 忠類川 魚類 カラフトマス,シマウキゴリ 鳥類 ヤマセミ. げ回るカラフトマスを捕まえようと,学生たちは必死. 第. マスを食べるオジロワシを見た学生もいたが,オジロ ワシは警戒心が強いのですぐに飛び去ってしまい,こ の光景を見ることができたのは 名だけであった。 川では,サクラマスの産卵床を多数見ることができ たが,学生がどのくらい産卵床を確認しているかは定 かではない。産卵床の見分け方について小宮山から説 明があったが, 回の説明で正確に産卵床かどうか見. になっていた。. 横牛川. ,ヤマメ多数, 魚類 サクラマス(完熟) オス) カラフトマス(体長 匹)目視 シロザケ(体長約 オショロコマ,シマウキゴリ,フクドジョ ウ,ウグイ類 鳥類 カワセミ キノコ類 ヒラタケ,オシロイシメジ,ホウキタケの 仲間. 討伐沢. 横牛川の流れは速くなく,歩く場所を選べば長靴の 中や着ているものを濡らさずに歩くことができるが, 約半数の学生は長靴はもとよりジャージまで濡らして 川に浸りながら下った。 )忠類川中流域(横牛川との出合付近) 忠類川との出合は本流の流れが急で深く渡れないた め,川岸を少し上流へ移動し,本流の瀬を渡ることに する。瀬の水深は を感じながら. 日目調査結果. ほどあり,流れも速く,水圧. 前後の川幅の部分を渡る。渡った先. は,大きくカーブしている川の内側にあたり,川底に は大小の石があり,流れはほとんどない。ここで,石 の下で生活する生き物の探し方の説明を受け,石の下 の生き物探しをする。その時の説明は以下の通り。 ・ある程度の大きさの石の周りに,細かい砂や石が 押し出された形跡を探す。 ・形跡があれば,その石の下には生き物がいる可能 性がある。細かい砂や石は,石の下の居住空間を 確保したりきれいにするために押し出されたもの である。 ・細かい砂や石が押し出されているところは,出入. 第. 日目調査結果. ,カラフトマス(魚 河口魚類 シロザケ(魚影のみ) 影のみ) エゾトミヨ,シマウキゴリ,ウキゴリ, イトヨ 鳥類 カワアイサ 忠類川下流域本川と支川(忠類橋) 魚類 シロザケ,カラフトマス 忠類川中流域本川と支川(七条) 魚類 サクラマス,カラフトマス,オショロ コマ,フクドジョウ,シマウキゴリ 鳥類 トビ,オジロワシ,カワアイサ 甲殻類 ニホンザリガニ キノコ類 ヒラタケ,ヌメリスギタケ 討伐沢上流域 魚類 サクラマス,オショロコマ 忠類川.
(4) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). 第. 日目. 月 日(土). 曇りのち小雨. ほとんど魚の姿を見ることができない。ほとんどの魚. 午前,午後共に,忠類川上流域の支流である討伐沢. が隠れてしまっているためだと思われる。時々上流か. を活動場所とする。この日は,忠類川探検隊の標津中. ら逃げてきたと思われる魚の姿を見かけるくらいで,. 学校の生徒たちと一緒に活動する(標津中学校生徒. 川歩き初心者の中学生は, 魚,ぜんぜんいないじゃ. 名,教員. ん。 と繰り返していた。水中の魚を見つけるには,. 名,教育大学生. 名,院生. 名,教員. 名) 。. 学生たちは,金山スキー場の麓にある宿舎 せせら. 眼が慣れないとむずかしい。 先頭を行く班では, オショ. ぎの宿 を徒歩で出発し,討伐沢と忠類川との出合に. ロコマ,フクドジョウ,シマウキゴリ,ヤマメ,ウグ. 向かう。この日行動を共にする忠類川探検隊の中学生. イ類を確認していた。また,産卵行動中のサクラマス. たちと出合で合流する。出合の川原に集合する予定で. を生徒たちが見つけ,学生たちと協力して網に入れる. あったが,学生の多くは林道から出合の川原に降りる. が取り逃がす。. 場所を見逃し,予定集合時間に遅れる。先頭を歩き,. 班に分けての班ごとの行動は,力量も川での興味. 名だけは迷わずに出合に到着. 関心も異なるため,徐々に班編成が崩れていくが,お. 地図上で目的地をしっかり. 互いが近くにいることを確認しながら集団を作り行動. 釣りを趣味にする学生 した。このことに関し,. 確認して行動する 分岐点や道から外れるときは荷物. する。最後尾は,川歩き初心者の学生. など目印になるものを置く,などの指摘が小宮山より. る学生 名,大学教員. なされた。その後,今日の簡単な予定(討伐沢を遡行. なる。. 名の. 名と釣りをす. 名が一つのグループに. し,十字峡で昼食。その後林道へ出て,林道を下り, せ. 木につくキノコを探しながら川を歩くが,目につく. せらぎの宿 に戻る)と装備(スパイクわらじの装着. ところにはキノコらしきものは,見つからない。川か. など)を確認する。. ら少しはずれ河畔林の中へ入るが,やはり木にキノコ. 行動班を以下の. 班に分け,先頭に小宮山,最後尾. に齋藤がつき,出発した。 ・学生. た食べられそうな白色をしたキノコ (オシロイシメジ). 名(男),川での活動になれている中学生. 名(男),大学教員. が出ている気配はない。かろうじて,地上から出てい. 名. ,大学教員 ・学生 名(女). をいくつか採取する。十字峡に入る手前には,足場の 少ない岩場があり,落ち込みの淵にたまった流木を橋. 名. ・川での活動初心者の中学生 名,中学校教員. にして川を渡らなければならないところがある。この 名. 日の川歩きで一番の難所で,運動能力の高い学生や川. )討伐沢溯上. 歩きに慣れている生徒たちは,難なく越えていくが,. 各自が,サケ科魚類の産卵床を探したり,たも網で. バランスが悪かったり,恐怖心が先にたつと,岩場で. 魚を探ったりしながら遡行する。学生たちは,前日に. 立ち往生してしまう。それでも,試行錯誤や周りのも. 横牛川で足慣らしと,川を観察するときの視点につい. のからのアドバイスを受け,全員難所を越えた。. て説明を受け,実際に自分の目で産卵床などを探して. )十字峡での昼食. いるので,思っていたよりは的確に産卵床を見分けて. 出合から. 時間半ほど歩き,. 時ごろ目的地である. いるようであった。しかも,濡れるという体験もして. 十字峡に到着する。十字峡は,両岸から岩が張り出し. いるので,長靴に水が入ることくらいは平気でどんど. ていて,川幅が非常に狭くなっているが,川に落差が. ん先に進んでいく。初心者の中学生たちや中学校の教. ないため流れは緩やかである。小さな滝もあるので先. 員は,なるべく水に濡れないようにと歩く場所を選ん. 頭を歩いていた学生たちは,滝に打たれたり,泳いだ. で進んでいるので,学生たちとの距離はひらいていく。. りして楽しむ。十字峡の付近では,焚き火ができるよ. 目的地である十字峡まで,膝丈以上の深さになるとこ. うな川原はないので,少し下流に移動する。降りはじ. ヶ所だけであるが,初心者にとっては,川底の. めた小雨の中,焚き火をするため木の枝やダケカンバ. ろは. 名は,川. 様子を読み取りながら歩くことは容易ではない。長靴. の樹皮を集める。川歩きがベテランの生徒. に水が入ったり,服が濡れたりすると歩きにくく気持. や河畔林のどのあたりに何があるかということを経験. 以下になると体力の消耗が激しく. 上知っているようである。また,よく体が動き感心す. なる。衣服は体温で乾きやすいもの,濡れたままでも. る。川沿いの目につくところには,ダケカンバはなく. 体温を奪われない素材(化繊・純毛)を選び,着替え. 急な斜面を登って樹皮を集めてくる。焚き火がついた. を持つことによりこの問題は多少解決できる。川歩き. ところで昼食とする。学生たちは,前日 枚に下ろし. は,自分の力量に合った歩き方をすることが一番であ. たサケを切り身にし,枝に刺し,焚き火で焼いて食べ. る。. る。釣りや川遊びを楽しむ生徒たちもいるが,川歩き. も悪い。水温が. たも網を持って遡行するが, 最後尾を歩いていると,. 初心者の多くは,焚き火の周りを動かない。午前中の.
(5) 齋. 川歩きで,. 藤. 里. 奈・高. 嶋. 幸. 男・小宮山. 英. 重. シャツまでぐっしょり濡らし寒そうにし. ている生徒に, 濡れたもの(綿の. の目状に流れる。海の近くの小. シャツ)を脱い. さな支川まで保存され,河口付. で着替えたら と声をかけたが,着替えは持ってきて いるらしいが着替える気配はない。この生徒は,濡れ たまま 寒い寒い. と繰り返すだけであった。大勢の. 前での着替えは恥ずかしかったのだろうか。. 近まで河畔林が続いている。 忠類川の自然の景観が保存されている背景には,発 達した河岸段丘がある。増水しても川が溢れることな く,護岸や直線化の工事をする根拠がない。河岸段丘. )討伐沢を下る ─ 帰路 ─. によって河畔林が保存され,自然のままの生態系を保. 時間ほどの昼食休憩の後,焚き火の始末をし,帰 路につく。初心者の多くはかなり体力を消耗していた. 証されている。 国後島の自然. ため,上流へ向かう当初の予定を変更し,来た川筋道. スライド. ダケカンバが水際近くから生える湖畔. を戻る。. スライド. サルオガセが密集している針葉樹林. スライド. 樹林内のコケに覆われた倒木. 帰りも一応グループ行動だが,各々釣りをしたり, 魚を追ったりしながら自分のペースで川を下る。最後. 湖の水位がほとんど変化しないので,水際にダケカ. 尾はやはり釣りグループとなった。オオイタドリの茎. ンバが生えている。周囲の森林が豊かで保水力が十分. を竿にし,餌は水に浸る石裏に巣室をつくるヒゲナガ. あることを意味している。サルオガセは,霧の多い汚. サケ体. 染されていない大気がある環境で見ることができる。. 験学習 では,ヤナギの枝を竿にし,イクラを餌にオ. 伐採が行われないため,自然倒木が多い。国後島の環. ショロコマ釣りをしたが,今回の竿と餌の方が釣りを. 境保全は,日本よりはるかに厳しいシステムに基づい. カワトビケラなどの水生昆虫を使う。以前の. 楽しめたようである。午後. 時ごろ出発地点の討伐沢. て行われている。全島の. 割が自然保護区とされ,保. 出合に到着し,後続グループを待って解散し,車でせ. 護区は海岸より マイル先の海上から始まり,陸上の. せらぎの宿へ向かう。釣りグループは,徒歩でせせら. 全てに及ぶ。 蛇行化の工事. ぎの宿まで帰ってきた。 )夜のスライドショー(学習会). スライド. 夕食後,小宮山によるスライドを使った学習会を行. 網走管内の河川, 直線化された岸から, 流れに直角にコンクリート製のブロッ. う。. クが突き出ている。堤は,流れの約 サクラマスの産卵行動. 分の. 残留型のオス(ヤマメ)は,多いときは. 匹も群がっ. を置いて両岸から交互に敷設されてい. て,放精の隙をうかがう。メスは,放卵の瞬間口を大 きく開け,クローチという腰を落とすようなサケ科独 特の姿勢をとり,体を振るわせる。放卵時間は. る。 スライド. 秒ほ. 数年後の同じ川。コンクリートの堤に 土砂がたまり,潅木が生え草が水際ま. どで, 秒ほどのシロザケの産卵より短い。オスは, 匹くらい同時に放精することがある。 シロザケでは,. をさえぎる程度で,一定の間隔. で茂る。川は自然に蛇行している。 いったん直線化した川を蛇行させる試みが行われて. 口を開けたメスの姿が刺激となってオスの放精行動を. いる。これによって川は,平瀬,早瀬,淵の三相を新. 誘う。サクラマスの場合,残留型のオスはメスに比べ. たに形成し,河畔の植物も再生する。自然の生態系を. て極端に小さく,メスの後部に位置するためメスの頭. 復元させるには,莫大な費用と年月を必要とする。. 部を見ることはできない。そのため,メスの口開けが. 河川の直線化の背景. 放精の刺激になるのは難しい。どんな刺激が放精を促. スライド. 牧草地. すかは,まだ分かっていない。メスの体の振えなのか. 酪農地帯の河川は,草地を最大限確保するために, 川岸間際まで河畔林が伐採される。効率よく牧草を生. もしれない。 忠類川の特性. 産するため,数年毎に重機をいれ土を掘り返し,除草. スライド. 東京周辺の河口(航空写真). スライド. 札幌周辺の川. スライド. 標津川. 人工的な直線化河川. る排水路であり,巨大な浄化槽である海につながり,. スライド. 風蓮川. 蛇行する河川。河畔林はほと. 最小限の流水面積で効率よく汚水を排水するために,. スライド. 忠類川. 人工的な直線化河川 人工的な直線化河川. んど切り尽くされている。 本川と支川が蛇行しながら網. 剤,化学肥料を投入し種を蒔きなおす(草地更新)。 牛の排泄物は,産業廃棄物となり野積みされ,その汚 水が河川に直接流れ込む。酪農地帯では,河川は単な. 直線化されなければならない。.
(6) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). 豊かさの中身. メスは全て海に下る。オスは,体長. 規模別酪農家の収支を示す帯グラフ。. スライド. の大. きさのものが銀毛となり海に下りる。これは,オス. (表 は,スライドの帯グラフを筆者. 全体の 割程度である。それより成長の遅れた個体. が表にしたものである。 ). の一部に. 年魚の秋に完熟するオスがいる。さらに 年魚( 歳)の春,体長. 成長の遅い個体は, 表 .規模別酪農家の収支 飼育頭数 生産量(乳) 収. の大きさに到達して銀毛となり,海に下る。. 入 必要経費 収. 益. 春に海へ出た個体(. 年魚または. 年魚)は,全. 酪農家. 頭. 年. 万円. 万円. 万円. て一冬海で生活した後,春 初夏に川に遡上し,. 酪農家. 頭. 年. 万円. 万円. 万円. 月ごろ(. 月下旬. 月上旬)成熟して繁殖をし,. その後生き残ることなく寿命が尽きる。 スライド. 川を埋め尽くして遡上するシロザケ. ここ 年間で酪農家の戸数は半減し,草地面積は 倍になった。従って. 戸あたりの草地面積は. ・トキシラズについて アムール川で生まれたシロザケのうち,その年の. 倍にな. 秋にアムール川に遡上するはずの一部が,秋以外の. り,乳牛の飼育頭数もこれに比例して増えている。グ. 季節に日本沿岸を回遊し,捕獲されるためトキシラ. 年とやや古いが,小規模農家の方が収益が. ラフは. 年のある時点で酪農業は適正規模を超え. 多い。この. てしまったことを示している。ちなみに. 頭規模の酪. 農家のデータは三友牧場 )のもので,ここでは夫婦 人で. ズという。. 日の労働時間は. 時間程度である。現在,根室. 第. 日目. 月. 日(日). 曇り. 朝,せせらぎの宿にて 日の予定についての打ち合 わせを行う。午前,忠類川河口,下流域(忠類橋),. 頭を超えている。. 中流域(七条)で,シロザケの産卵床や河畔林などの. サケ遡上の風景は, ウトロ近くの遠音別川のもので,. 自然環境を観察する。午後は,討伐沢上流部に行き,. 管内の多くの酪農家の飼育頭数は. これではのぼり過ぎ,増やしすぎである。いつでも,. 平瀬,早瀬,淵の景観を観察し,たも網でのオショロ. どこでも,何でもより多く手に入れることがよいこと. コマ捕りを行う。また,次のことを注意・確認する。. だという 豊かさ. の中身がここにあり,生活全体の. 枠組みを変えない限り,川は蛇行しない。. 焚き火の後始末について 昨日はサケの燃え残りが あった。ヒグマを餌付けすることにつながり危険であ. 質疑応答. る。食事の残りは,川の流れの中に捨てるか持ち帰る。. スライドを使った説明が終わり,質疑応答を行う。. 行動時間に関して. 帰りが遅くなり,ヒグマの行動. 大きな自然の中の生態系の営みと,現在の人間生活の. 時間に入っていた。昼間でも薄曇や,雨が降って音が. 枠組みや経済活動をからめながらの話だったが,学生. 聞こえにくい日は,ヒグマによる事故がおこる危険が. たちから出てきた質問は,自然の営みと人間の経済活. 高い。特に,子どもの参加する野外行事の場合は,帰. 動に関するものではなく,より身近で具体的な対象に. り時間を守らないと保護者が心配をすることになる。. 関するものであった。だからといって,小宮山のお話 の内容が伝わっていないわけではないようである。 質問として,サクラマスの生態は? は何か?. トキシラズと. 等が出され,次のような説明があった。. 連絡手段について 野外での活動を行う場合,連絡 手段として無線は便利だが,故障したら煩わしいこと になることも予想される。日帰り計画の場合は無線は 使わないことを原則とし,余裕のある範囲で楽しむこ とを基本にする。. ・川での生息流域と魚種の関係について ジャンプ力がある順番は,能力の小さいものから. 沢歩きについて けがや事故につながるので,ジャ. シロザケ,カラフトマス,サクラマス,オショロコ. ンプはしないこと。岩場では,手だけで保持せず,で. マである。この順番は,川での生息流域と関係して. きるだけ両足で立てる場所を確保し,手の動く範囲を. おり,シロザケは下流域にオショロコマはより上流. 胸の近くにとどめるようにする。 )河口. 域に生息する。. 河口からは,国後島や知床連山が一望でき雄大な景. ・北海道産のサクラマスの生態について 年魚( る。. 歳)は,. 月に体長. 月には体長. にな. 色を見ることができる。忠類川の河口付近は,砂浜が. を超えたオスは,その年の秋. せり出しているが,河口から外れると絶壁が続く。護. に完熟する(精子を出せる)。以降,オスは最長. 岸されていないため,河口は海の波と川の流れによっ. 年魚まで成熟を繰り返し生き続ける個体がいる。. てその形を変えていく。ただし,河口が砂や砂利でふ. 年魚(. 歳)の春,体長. 以上に成長した. さがれないように,時々重機を入れて河口を広げてい.
(7) 齋. 藤. 里. 奈・高. 嶋. る。この時は,河口域は広いが,河口そのものはわず 前後の幅であった。河口付近の水の流れをみる. か. ことで,潮が満ちてきているのか引いてきているのか がよく分かる。シロザケ等の遡上はまだ本格的に始. 幸. 男・小宮山. 重. )上流域(討伐沢上流部) せせらぎの宿で昼食をとった後,車で討伐沢上流へ 向かう林道を移動する。 サクラマスの溯上を止める滝は, 高さおよそ. で,. ほどの流れを斜めに横切る。滝の上流域は. 幅. まっていないようである。. 英. 河口右岸の小さな支流でシマウキゴリを採取する。. 数十 にわたって岩盤でできた川底が瀬をつくってい. )下流域(忠類橋付近). る。この滝の下は,滝壷になっていて川遊びに適した. 橋の上から孵化場へつながる支流を見る。何組かの. 場所である。また,この滝壷には,魚たちも多く,魚. シロザケのつがいを確認する。本流は流れが速く,川 底の石が大きすぎたり湧水がないため,シロザケの産. の水中観察がしやすい。 川に入って体が冷えるので,暖をとるための焚き火 名,教官. 名がなる。この. 卵環境はほとんどない。本流は,カラフトマスの産卵. をする。焚き火係に学生. 場所となっており,カラフトマスの遡上が多い年には. とき水温は. バーコード状に並ぶカラフトマスを観察することがで. は日差しもなく,本来ならば,衣服を着たままの潜水. 年おきにく. 観察は中止するべきであったが,学生たちがためらい. きる。カラフトマスの遡上の多い年は, る。. で,川で泳ぐには低すぎる。この日. ながらも挑戦したこと,また,学生たちは若く体力も. )中流域(七条) 七条から林道へ入り河岸段丘を. あるとの小宮山の判断もあり強行した。水に入ったの 段下りたところで. 小川を横切り,しばらくして川原に到着する。流木が 集められ,支川と本川の流れ方が以前と異なっている。. は学生 名と小宮山であったが,川での活動にいち早 名が,. く慣れた学生. 分でヤマメとオショロコマを. 匹ずつ捕まえた。 分という短い時間ではあったが,. 大雨が降ったりすると川の流れが大きく変わる。これ. 学生たちは水中で魚を観察するという貴重な体験をし. は,川を直線化していないためである。本来,川とは. た。. 生き物のように姿を変えながら流れるものであったは 第. ずである。 支川を上流に向かって歩く。倒れ掛かった木の根元 がえぐれ小さな淵を作っている場所で,学生がサクラ マスを見つける。みんなでかけより淵を囲むと,サク ラマスは木の陰に姿を隠す。その近くでヤマメが群れ. 日目. 月. 日(月). 曇り. 朝食後,せせらぎの宿の清掃を行う。その後,標津 川の捕獲場見学, 標津サーモン科学館での講義を行う。 )小宮山によるまとめの講義 確認できた魚の種類. ている。小宮山の目算では, 一部オショロコマも混じっ. 日間で採取および観察できた魚類は,シロザケ,. 匹ほどである。支川は浅く流れも. カラフトマス,サクラマス(ヤマメ) ,オショロコマ,. ているがおよそ. 穏やかで,水面上に出ている石にはコケが生えている。. フクドジョウ,シマウキゴリ,ウキゴリ,ウグイ,エ. 川底を全てひっくり返すような大洪水が起きていない. ゾトミヨ,イトヨの. 種であった。本来忠類川では,. ため,昔からの環境が残っているようである。このよ. 種の魚類を見られるはずであった。しかし,今. うな環境では,ニホンザリガニが生息する可能性が大. 回川を歩いた結果, 忠類川は自然度の高い川だが,思っ. きい。ある程度大きい石で,石の周辺に石底から細か. た以上に人の手が入っているということが分かった。. い砂利を押し出した跡があるものを探す。その石を静. そのため,. かにめくると,ほぼ確実にニホンザリガニが見つかる。. いだろうか。. たちまちザリガニ捕りの競争となる。とにかく,ニホ. 種しか今回は確認できなかったのではな. この年 月の. 薫別川探検隊. では,薫別川でエゾ. ンザリガニのたくさんいる場所であった。それだけ,. ハナカジカが 匹だけ捕獲された。昔,エゾハナカジ. 長い間川底の石が移動していないということでもあ. カは薫別川にたくさんいたが,今では見かけなくなっ. る。たも網でフクドジョウ,シマウキゴリも採取する。. た魚である。小宮山が. さらに上流に進み, 本川と支川を分ける川原に着く。. 年に調査した国後島の川に. は,エゾハナカジカがたくさんいた。このことから,. 年のサケ実習のキャンプ地でもある。. エゾハナカジカは,河川環境の変化に敏感であり,こ. 対岸にカワアイサの群が見え,遠くの木にはオジロワ. の魚がいるということは,昔の河川環境が保存されて. シがとまっている。川原で,腹部に小さな穴があくカ. いるというこがいえるのではないだろうか。. この場所は. ラフトマスのメスの死体を見つける。密漁者によるも. サケ科魚類についての見分け方. のか?. .シロザケ. 帰りは本川の川原を歩き,車まで戻る。. オス・メスの見分け方は,体の大き. さに対する脂ビレの大きさで判断するのが確.
(8) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). 実である。オスは脂ビレが大きく,メスは脂. 吸収することはないが,餌になるものが目の前に. ビレが小さい。. あると食いつくという習性はなくならないようで. .カラフトマス. 尾ビレ一面にご飯粒をつぶした. ある。. ような黒い点がたくさんついている。また,. .忠類川では,シロザケの産卵場所は湧き水の代. 婚姻色の出た個体は,腹部が白い。. わりに伏流水がしみ出しているところを選ぶ。. .サクラマス. オスの婚姻色は,桜色の縞模様で. ある。劣位のオスは,背中が黄土色になる。. 以上が. メスの婚姻色は, ピンクと緑色の縞模様だが,. 要である。. 年. 月に行われた. サケ体験学習. の概. 上からでは見えにくい。 .大きさなどの違い 体長. シロザケ 均. 。. (平均. ),体重平. 年魚での回帰が最も多いが,季. . 絵本づくり サケ体験学習. 絵と文の検討 の終了後,参加した学生たちは. 節的な変動があり,季節が早いほど高齢の個. 班に分かれ,体験したことをポスターと絵本(原本カ. 体が多い。. ラ 版)にまとめた。本稿では,. カラフトマス 体重平均. 体長. (平均. とめた絵本を取り上げ,その内容(絵と文)の検討を. 。シロザケのように回帰する. 通して,“体験(あるいは経験)をふまえてつくられ. 個体の年齢に幅はなく,回帰するのは大半が 年魚で,ごく稀に. た認識(体験的認識) ”について考えてみたい。. 年魚で帰ってくること 絵本の全体について. もある。 サクラマス 体長 。. (平均. ),体重. 年魚が回帰する。. 絵本の構成は以下の通りである。 場面. 表紙(と裏表紙). 場面. 下校. ウキゴリとシマウキゴリは,かつて同種とされてい. 場面. 忠類川探検マップ. た。ハゼ科の魚であり,腹ビレが吸盤状に変化してい. 場面. 服装と装備. 月に石で囲まれた巣の天井に卵を産みつけ,オ. 場面. 川での歩き方. 日間くらいする。孵化した仔魚. 場面. 魚の捕り方. その. は,降海する。生息環境の違いは,ウキゴリが緩やか. 場面. 魚の捕り方. その. な流れの中にいるのに対し,シマウキゴリは,流れの. 場面. 深みにはまる. 速いところにいる。生息環境の違いからか,ウキゴリ. 場面. 川遊び. の体型は太くずんぐりしているが,シマウキゴリは細. 場面. 焚き火. くスマートである。また,ウキゴリは尾ビレの付け根. 場面. 魚のさばき方. の模様が丸い斑点のように見え,シマウキゴリは尾ビ. 平均. ウキゴリとシマウキゴリ. る。. 名の学生たちがま. ),. スがこの卵の世話を. 場面. サケ・マスの種類と体のつくり. の字のよう. 場面. 産卵床の見つけ方. に見える。また,体側にある模様もシマウキゴリの方. 場面. シロザケの産卵行動. 場面. サケのオスとメスの見分け方. 場面. ザリガニ探し. 場面. ヒグマの糞. 本である。イトヨには全個体が降. 場面. ヒグマの足跡と食痕. 型に分かれる. 場面. 人間の生活と自然の営みについて考えた. 人. レの付け根の模様が は. あるいは 大. に似た形に見える。 エゾトミヨとイトヨ. トゲウオ科の魚類で,エゾトミヨは背ビレの棘が 本以上,イトヨは. 海する日本海型と,降海型と陸封型の 太平洋型とがある。 降海型は 生まれた子は. 月にかけて産卵し,. 月には降海する。そして翌春川に. ことのまとめ 場面. 探検したことの振り返り. 戻ってきて,卵を産んで死ぬ。陸封型は,数年生きる。 シロザケの習性 .遡上中のシロザケは,一般的に餌をとらないと いわれているが,実験の結果,餌となるものを口. 以上の絵本の構成は,学生たちが自分自身で体験し た活動をもとに作られている。 全体にかかわって,次の. 点を指摘しておきたい。. にするようである。しかし,遡上中のサケの消化. 第一は,主人公の設定の問題である。主人公たちを. 器官はすでにその機能を失い,口にした餌を消化. 年生にしたのは,小学校. 年生の国語の教科書教材に.
(9) 齋. さけが大きくなるまで. 藤. 里. 奈・高. ). があることによるが,絵. 嶋. 幸. 男・小宮山. 英. 重. ている。. 年生の身体機能の. 子供だけで,よく知らない川へ行くことは大変危険. 発達段階から考えると難しい。活動の内容から考える. なことである。大人でも,川歩きの経験がなく,まっ. と,主人公の設定は小学校高学年くらいにした方がよ. たく知らない川を歩くことは危険が伴う。野外での自. い。. 然体験を行う場合,できればその土地の自然を熟知し. 本の中に出てくる活動は,小学校. 第二に,この絵本は,全体を通して学生が実際に体 験したことの体験記の形式で書かれている。川探検の 入門書という性格を持たせるならば,最低限野外に出 たときの危険性や安全確保の記述を各場面で付け加え. ている人を指導者にお願いすることが,自然の営みを 知り深く理解するためにも必要である。 場面. ちゅうるい川たんけんマップ. ここでは,お話の中に出てくる場所と,体験したこ と,見つけたものなど全体像が描かれている。星印で. なければならないだろう。. 場所を表し,吹き出しによって何があったのか,わか 絵本の検討. り易いが,改善すべき点も多い。. では,絵本を場面ごとに検討する。 場面. 川を描く場合,上流は川幅を狭く,下流に向かうに. 表紙(と裏表紙). したがい川幅を広くする必要ある。また,忠類川が北. 表紙は,実習中に撮影されたデジタルビデオカメラ で撮影した動画を,パソコンに取り込みプリントアウ. 海道のどこに位置するか,さらに川の全体像がわかる ような図も欲しい。. トしたものを使っている。学生たちにとって,実習中. 吹き出し中の絵では,動物を描く場合は,少なくと. 印象的で,絵本の内容に関係する映像を抜き出し,並. も検索するときの決め手となるような重要な特徴を描. べている。. くように心がけるべきである。そのためにも,図鑑な. 場面. 下校. どで外部形態を再確認しておく必要がある。また,こ. ここでは,学校での学習をきっかけにサケへの興味. の様な活動を重ねることによって,より確かな知識と. を膨らまし,川のことをよく知る釣り好きのおじいさ. して身につくだろう。ここに描かれたザリガニは緊張. んに,川の案内をしてくれるように頼むまでが書かれ. 状態の姿であるのと,足が出ている位置が決定的に間. 場面. 表紙(左)と裏表紙(右).
(10) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). 場面. 場面. 下 校. 忠類川探検マップ.
(11) 齋. 藤. 里. 奈・高. 嶋. 幸. 男・小宮山. 英. 重. 違っているので描きかえる必要がある。サケも最低限. 綿製品は水分を吸収し重くなる上,化学繊維や純毛よ. ヒレを描き込む必要があるだろう。. りも乾きにくく体温を多く奪って体を冷やし,体力を. ザリガニやサケの体のつくりなども基本的な部分を 実際に観察することで確認をしてもらいたかったのだ が, ここにザリガニがいた. 奪うことなど欠点を押さえておく必要がある。 また,持ち物に触れていないが,個人の持ち物につ. ここでサケ(シロザケ). いても触れる必要がある。野外での活動は,予想ので. を見た という認識で終わってしまい,ザリガニの体. きないことが起こる可能性があり,最低限各自が行動. はいくつの部分からできているのか,足は何本あって. 食(昼食とは別に飴やチョコレートなど)を持つ必要. どこから出ているのか等,ザリガニの体の中にあるい. がある。持ち物は全て大きな漬物袋かビニール袋に入. くつもの情報を発見するまでには至っていないことが. れ,(ビニール袋の口は縛らない。縛ると袋が破れや. わかる。その結果,このような絵の表現になったと考. すくなる) それをリュックサックに入れる。 これによっ. えられる。. て中のものは濡れず,万が一のときに背負ったリュッ. 場面. 服装の説明. クサックがライフジャケットの役目を果たす。以上の. ここでは,川歩きに適した服装について書かれてい る。本文中では,水に濡れても活動しやすい格好(綿. ことは,実習中に説明しており,各自実行していたは ずなのだが,絵本の中に書かれていない。 場面. 製品ではなく化学繊維又は純毛),長靴,帽子やタオ. 川での歩き方. ここでは,川の歩き方,川の横切り方について描か. ルで頭を守ることについて触れている。 野外活動,川歩きや藪の中を歩くときは,怪我をし. れている。絵は,速い流れのところを横切る歩き方の. ないように素肌を出さない服装を基本とする。このこ. 基本を示したもので,流れに逆らわず下流に向かって. とは,体験学習で学んだことがよく描かれているが,. 度の角度で歩いているところを表している。この絵. 理解が不十分なところもある。 本文では 川の中に入っ. の改良点は,川の流れと川幅の関係つまり川の上流は. たりするから,濡れてもいい格好でいくこと大切。. 川幅を狭く下流は太くするという基本的な表現方法を. とあるが,これだけでは不十分で,濡れても暖かく,. とることである。本文では,川の中を長靴で歩く場合. 自分の体温で乾く化学繊維や純毛が適していること,. と短靴(運動靴)で歩く場合の,流れの横切り方につ. 場面. 服装と装備.
(12) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). 場面. いて述べている。長靴で川の中を歩くときは,足首が. 川での歩き方. 場面. 魚の捕り方. 長靴で保護されているので石と石の間に足を突っ込む. ここでは,何人かで協力して魚を捕る方法を紹介し. ようにして歩き,運動靴では足首が保護されていない. ている。この魚の捕り方は,ふつう,魚が沢山いると. ので石の上を歩くようにした方がよい。ただし,石の. ころの下流側にたも網を持った人たちを並べ,上流側. 上を歩くときは,できるだけ大きな動かない石を選び,. からジャバジャバ水音をたてさせながら魚を網のある. そして中途半端に濡れているところや濡れているとこ. 方へ追いやって捕まえる方法である。網を持つ方は. ろと乾いているところの境目は滑りやすいので,足を. 待っているだけで魚が網に飛び込んでくるのであまり. 乗せる石は注意深く選ばなければならない。流れの速. 技術はいらないが,網と網の間に隙間があったりする. い川を横切るときの歩き方は,流れに逆らわずに,下. と,そこから魚が逃げてしまう。この場面の絵と文は,. 度に歩く。本文中では. ……川を横切. おおむね押さえるべきところが描かれている。細かい. るときはな,ひざを曲げて腰を落として,ゆーっくり. ことだが,たも網を上げたところを描いた絵のヤマメ. ……。 つまり,進みやすい方向に,おじいちゃんみ. の脂ビレには骨を表す線が描かれている。脂ビレには. とある. 骨はなく,脂ビレの特徴を認識していないことの表れ. 流方向に斜め. たくひざを曲げてしっかりあるけばいいの?. が, ある程度水深のある場所での歩き方のポイントは, 水面の上に足を上げないで,すり足気味に足を水平方. だろう。 場面. 魚の捕り方. 向に動かし歩幅は広げずに歩くことである。ここでい. ここでは,一人で魚を捕る方法を紹介している。こ. う足とは,くるぶしより下の部分である。文章で歩き. の方法は,身の危険を感じた魚は隠れるという性質を. 方を説明するのは難しい。必要以上の記述がかえって. うまく利用した方法で,魚が隠れていそうなところの. わかりにくくすることがあるので,一番大事なポイン. 下流側にたも網をそっと立て,たも網の上流側から足. トだけを書く方がいいだろう。. でバシャバシャ川底を踏みつけ網の中へ追いやるとい. 川の歩き方の部分は,学生たちが実習中毎日繰り返. うものである。やり方自体は簡単だが,魚の隠れてい. し行ったことであり, 表現が未熟で不適格であっても,. そうなところを見つけることが少し難しいかもしれな. 体験を通してしっかり学んだことがうかがえる。. い。 この場面の絵と文に関しては, 体験したことがしっ.
(13) 齋. 藤. 里. 奈・高. 嶋. 幸. 男・小宮山. 場面. 魚の捕り方. その. 場面. 魚の捕り方. その. 英. 重.
(14) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). かり書かれているが, この魚の捕り方をいろいろな. こともあれば,流れが速く深くなっているところもあ. 場所で繰り返しやっていくうちに,魚が隠れていそう. る。その川をよく知っている人(指導者)の注意をよ. という,この. く聞き,自分の力量にあった歩き方,歩くコースを自. 活動に内在する発展性(魚の生態の理解とそれを通し. 分自身で判断しながら活動を行わなければ事故のもと. て形成される自然・環境の見方)については,学生た. になる。体験学習では,これらのことも学んでもらい. ちは気づいていないようである。. たかったことだが,学生たちには伝わっていなかった. な所の共通点が見つかるかもしれない. サケ科の魚(オショロコマとヤマメ)の絵は,ここ. と見ることができる。. でも脂ビレに骨が描かれ,描き直しが必要である。ま. 川歩きでは,以下のことに気をつけたい。. た,日本産のサケ科魚類の特徴は,上顎骨が長く,目. ・上流部で雨が降っているときは,急激に増水する. の位置より後方まであり,明瞭に描くことにより特徴. 場合がある。雲行きが怪しいときは,川歩きをし. をとらえていることになる。. ない。. 場面. 深みにはまる. ・川歩きに慣れている人や,その川をよく知ってい. ここでは,きのこを取りに行った子どもが深みには. る人と一緒に行く。 子供だけでは絶対に行かない。. まり,助けに行った子供たちまでびしょ濡れになって. ・自分の股以上の水位があるところは,流れが急な. しまうことが描かれている。ここで重要なことは,川. 場合身動きが取れなくなり,押し流される危険性. ではおぼれる,流される等の危険があることを伝える. があるのでさける。流されると石や倒木などに頭. ことである。事故が起こった場合の対処の仕方などに. を打ち,溺死する危険性が高くなる。. も触れる必要があるが,学生たちはそのような意図で. 場面. 川遊び. ここでは,ずぶ濡れになって川遊びをしたことが描. この場面をつくってはいない。 実際,大学生が行った実習場所は,何度も子供たち. かれている。大学生が滝壷に飛び込んだり泳いだりし. を連れて行っている危険の少ない場所で,学生たちは. た場所は,指導者が周りの安全を確認している場所で. 危険な場所という意識は薄かったかもしれない。自然. ある。本文中には,ヤエじいの. の川の流れは決して単純ではなく,流れの緩やかなと. のう。 という記述しかないが,できれば, この場所. 場面. 深みにはまる. みんな楽しそうじゃ.
(15) 齋. 藤. 里. 奈・高. 嶋. 場面. の安全性を確認しているから遊んでもいいだよ. とい. う内容を書くことが望ましい。 場面. 焚き火. 幸. 男・小宮山. 英. 重. 川遊び. 対応できる。また,川原で焚き火をする場合は,地形 の構造上河川に沿って空気が流れていて,あおいで空 気を送るのと同じ効果がある。後片づけは,十分水で. ここでは,焚き火の仕方について紹介している。本. 火を消し,魚を焼くなどで食べ残しがでた場合は持ち. 文中では,木の枝を集めてきて,枝の太さや長さをそ. 帰るか,川に流し形跡を残さないようにする。川に流. ろえ,細い枝から順番に積み重ねていって火をつけ,. してもいいものは,川で採ったものをだけとし,人が. なかなか燃えないのでシラカバの皮をとってくるとい. 持ち込んだものは川を汚すので持ち帰るという心がけ. う順序で進められているが, 実際の手順と違っている。. の境界を示す必要がある。食べ残しを地中に埋めたり. 大まかなイメージをもとに書いたためにこのような記. しないのは,ヒグマに対して“人間の近くにはご馳走. 述になったのだろう。また,焚き火の後始末の記述も. がある”ということを教えないための配慮である。. 必要である。. これらのことは,実習の中で学んで欲しいことの一. 実際の手順は,次の通りである。. つでもあったが,焚き火の仕方だけが学生たちの印象. ・木の枝を拾い集め同じ太さの枝同士に分ける。. に強く残ったのだろう。体験学習では,技能を身につ. ・焚き付け用のダケカンバの樹皮を取ってくる。. けることが重要な学習事項でもあるが,特に環境教育. ・ダケカンバの樹皮をさらに薄くはがし,一箇所に. ならば,環境に対する態度を育てる働きかけも必要で. 集めまず火をつける。 ・炎がぱーっとあがったら,その上に細い枝を同じ 向きに重ねる。 ・煙が出てきたら,細い枝から順番に積み重ねて いって,だんだん火を大きくする。 ・ 回失敗しても,同じ手順でつくまで繰り返す。. あろう。この場面は,自然の営みの中に人間が入って いくときの基本的な姿勢を学ぶ場面でもある。 場面. 魚のさばき方. ここでは,私たちが命をいただいて食べていること と捕まえた魚を自分でおいしく食べるための野外での 手軽なさばき方について描かれている。. このやり方は,薪にする枝が濡れていても,煙で乾. スーパーなどで売られている魚は,多くの場合,調. しながら燃やしていくので,少々の雨くらいなら十分. 理しやすいように頭や内臓はきれいに処理され,切り.
(16) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). 場面. 場面. 焚き火. 魚のさばき方.
(17) 齋. 藤. 里. 奈・高. 嶋. 幸. 男・小宮山. 英. 重. 分けられ,生きていたときの姿を想像することは難し. くり遠火で焼かないと,外は黒こげ,中は生焼けとい. い。ともすると,命をいただいているという感覚はほ. う状態になる。よって,絵の中の, 内蔵をとる. とんどない。だが,野外での活動の中には,自分で捕. う. まえた魚を食べるという体験をする場合もある。命を. える必要がある。. いただいていることを再確認する経験ともなる。 魚のさばき方は,まず頭を指ではじき脳震盪を起こ させ,魚が動かないようにする。次に本文中では …… 頭の横のピラピラ開くところから, エラを探して, ぐっ と引っ張る。 とあるが,これを行う前に,のどのと. 木の枝で刺す. エラをとろ は,描きか. この場面は,魚を焼いて食べる場面を考えると,焚 き火については触れられていない。焚き火の場面のと ころで扱った方がよいだろう。 場面. サケ・マスの種類と体のつくり. ここでは,サケ・マス類の主な種類と体の特徴につ. ころを親指と人差し指の爪で切る必要がある。ここを. いて紹介している。本文の脂ビレの説明で, ……油. 切らないと,エラをはずすのは難しい。内臓の出し方. 分の多いところにあるからあぶらびれなんじゃ。 ……. ……おなかのところをギューっ. という記述がある。この説明も違っている。書くとし. と押して,内臓を出すんだよね。 とあるが,実際は,. たら, このヒレは,骨がなくて脂肉のようにぷにゃ. 片方の手で魚の腹を押しながら,もう片方の手の爪で. ぷにゃしているから,脂ビレと名づけられた。 とす. 引っ張らなければ内臓はきれいに取り除けない。 次に,. べきだろう。また,カラフトマス,サクラマスについ. 魚を焼くために木の枝を刺す作業をする。これも本文. ての記述も. 中では, ……ジグザグにさすんじゃ。 と書かれてい. くっついたような模様をしていて,サクラマスは,そ. るが,実際は,木の枝の先をナイフ等で尖らせて串を. の名のとおり桜色なんじゃ。 とあるが,より正確に. 作り,魚の口から尾の付け根まで魚の皮膚を破らない. 伝えるためには, カラフトマスは産卵期にはお腹が. ように背骨と皮の間に串を刺す。その後,塩を手で魚. 白くなり,尾びれにご飯粒くらいの大きさの黒い模様. に擦りつけて焼く。この時,串の先を魚の体の外へ突. がたくさんつき,サクラマスは,産卵期の体の色が桜. き出すと焚き火で焼いている途中で串から落ちてしま. 色なんだ とした方がよいだろう。. について本文中では. うので注意が必要である。焼くときは,なるべくゆっ. 場面. ……カラフトマスはご飯粒がいっぱい. 豆知識として. サケ・マスの種類と体のつくり. サケとマスってどうちがうの?. を.
(18) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). 場面. 扱っている。説明では, ……. マス. 産卵床の見つけ方. と呼ばれてい. これらのサケの仲間が作った産卵床は,周りの川底. る魚も,シロザケも,同じサケ科の魚なんじゃ。……. よりも砂礫が積み重なり,こんもりしている。また,. とあるが, 同じサケ科サケ属というグループの中の. 産室を作ったり,産んだ卵を埋め戻すため尾ビレを. 魚でマス科というのはないんじゃ が適切だろう。. 使って川底を掘り返しているので,産卵床の石の表面. 場面. 産卵床の見つけ方. ここでは,シロザケが産卵床をつくる場所及び卵が. には藻類や泥はついていない。本文中では, ……, 石が汚れていなくて……. とあるが, 石の表面に藻. 産み込まれている産卵床の部分とそうでない川底の見. 類や泥がついていない とした方がわかりやすいだろ. 分け方について説明している。. う。. シロザケの産卵に必要な条件は,比較的流れが緩や. 場面. シロザケの産卵行動. かなこと,川底から水が浸み出ていること,産室や産. 場面. サケのオスとメスの見分け方. 卵床を作るのに適した大きさの石があることがあげら. ここでは,シロザケの産卵行動の大きな流れを紹介. れる。これらの条件を満たすのは,川では淵頭の部分. している。標津川水系のシロザケの. である。. ている卵の数は,大体. カラフトマスの産卵場所は,シロザケの産卵場所よ. 日から 日をかけ. 回から. から. 匹のメスが持っ 粒で,この卵を. 回に分けて,川底に卵を 回の産卵ごとに卵. り流れの速い川の早瀬で,川の水が浸透する川底に砂. 産む部屋(産室)をつくり産む。. 礫がある場所である。. 塊の上に砂利をかけ卵を保護する。それを順次繰り返. サクラマスの産卵場所は,シロザケやカラフトマス. し畳み 枚くらいの広さの産卵床をつくる。自然河川. がたくさん産卵している場所よりも川の上流部で,川. で産卵する場合,つがいになるオスは毎回違う場合も. の水が浸透する川底に砂礫があり,淵から瀬に移行す. ある。オスは,. るところに産卵することが多い。. 間を渡り歩く。. オショロコマの産卵場所は, 比較的流れが緩やかで,. 回以上放精することができ,メスの. は, オスとメスがお互いの様子を見ている場面で,. 産室や産卵床を作るのに適した大きさの砂礫があると. メスの好むオスの要素は,体が大きく喧嘩に強いこと. ころである。. で,産卵行動の最中に自分の縄張りに入ってくる邪魔.
(19) 齋. 藤. 里. 奈・高. 嶋. 幸. 男・小宮山. 英. 重. 者を排除する能力の高さを示す。オスの好むメスの要. る。産室は,川底からすり鉢状に. 素は,体が大きいこと,すぐに産卵しそうなことで,. 掘られた底に,拳大の石をいくつか組み合わせて作ら. オスが子孫を残すにはつがいになったメスがどれだけ. れている。この拳大の石を組み合わせたところに卵は. の卵を産むかにかかっている。体の大きいメスは卵も. 産み込まれる。本文中では, ……。それが“子供を. 多く, 回の産卵の放卵数も体の小さいメスより多い。. 産むよ”というサインなんじゃ。 とあるが,“卵を. ただし,産卵の回数を重ねるにつれ放卵数は減る。産. 産むよ” とした方がいいだろう。. 卵行動において,体が大きいことはオスにとってもメ. の深さで. は,オスがメスの横に滑り込んで並び,メスの放 卵とオスの放精が行われているところである。 オスは,. スにとっても有利な場合が多そうである。 は,メスの体の模様の変化を表している。メス同. のようなメスのサインを受け,産卵の準備ができた. の絵のように背. と判断して,クローチの姿勢をとるメスの後方から滑. 士卵を産む場所を争っているときは. から腹にかけて赤紫色の模様(横じま)が出ているが,. り込むように入ってきて,メスと並ぶ。次に,オスは. 争いに決着がつき,いつでも卵が産めるようになると. “卵を産みなさい”という大きく口を開けるサインを. 頭から尾ビレにかけて黒色の模様(縦じま)がくっき. 出し,放精する。このオスのサインを受けて,メスは. り出る。. 口を大きく開け放卵する。メスの体から産み出された. 本文中では, ……メスはぐるぐる回っているうち に,黒色になってくるんじゃ。……. とあるが,体全. 体が黒くなるわけではないので, 体の黒い線がはっ きりしてくる. と書くべきだろう。また, ……そう. して,メスは産卵床を作り始めるんじゃ。 とあるが, そうしているうちに,メスは川底を掘りながら産卵 の準備を始める. とした方がいいだろう。. 卵は, オスの出した精子の霧の中を通って産室に入る。 オスが大きく口を開けるサインから放精・放卵が終わ るまで,約. 秒である。メスは,オスの口を大きく開. ける“卵を産みなさい”というサインがないと,放卵 しない。 本文中では, ……メスが大きく口を開けていると ころにオスが寄ってきて……。 とあるが,実際のオ. は,メスが川底に顎をつけるようにして,湧き水 が浸み出る場所を探し出し,産卵場所を決め,尾ビレ. スの行動を見ていると メスが大きく口を開けている 横にオスが滑り込んで とした方がよく伝わると思う。. を使い川底を掘り下げている場所である。卵を産み込. は,放卵後,メスが産室に産み込んだ卵の上に小. む場所(産室)はメスだけで作る。オスが手伝うこと. 砂利をかけているところである。メスは,放卵後尾ビ. はない。時々,産卵させないよう嫌がらせで,尾ビレ. レを使って卵が飛び散らないよう,また卵をいたわる. を使って産室を壊すオスがいる。. ようにそっと小砂利をかける。はじめはそっと小砂利. は,オスがメスに寄り添って体を震わし(震動求. をかけるが,ある程度埋められるとどんどん砂利をか. 愛),産室を作ることをさらに促している場所である。. け,小さな山を作る。産室を埋めるために使った砂利. メスはつがいと認めたオスから求愛されると,尾ビレ. を掘った場所は,次の産卵で使う産室になる。. で川底を掘り,求愛に答える。メスがつがいと認めて. 本文中には, ……。こうやって,メスは何時間も. いないオスから求愛された場合は,オスに噛みついた. かけて卵を産むんじゃ。 とあるが,これが. り,オスの顔に尾ビレを使って川底の小砂利をかけた. 卵を示すものか, 匹のメスが行う全ての産卵を示す. りすることもある。このことからシロザケは,しっか. ものか分からない。. り個体識別をしていることがわかる。オスの求愛行動 には,他にメスの上で. の字を描くように泳ぐ. の字. 求愛がある。 は,絵からは分からないが,メスが産卵しようと. 回の産. 匹のメスが行う全ての産卵につ. いて書くならば, ……。こんなことを. 回から. 回. 繰り返して,メスはお腹の卵を全て産むんじゃ。時間 として,. 日から. 日もかかるんじゃ。 とした方が. よい。また, ……。. 回の産卵で,メスは尾ビレが. している場所で,腰を落とすような姿勢(クローチま. すりきれるまで働くんじゃぞ。 とあるが,実際は. たはかがみ行動)をとり尻ビレを使い産室の出来具合. 回の産卵だけでは尾ビレはすりきれない。. を調べているところである。メスは産室がほぼ出来上. 産卵行動を行う中で,メスの体はぼろぼろになり,尾. から. 回. がると尻ビレをまっすぐ下に伸ばし産室内を探り,掘. ビレが擦り切れるので, 全ての産卵が終わるころに. り足りないようならば尻ビレを使い,細かい石を吸い. は,尾ビレはすりきれているほどなんじゃ。 とした. 上げるようにして掘る。産卵が近づくと頻繁にこの行. 方がいいだろう。. 動をとる。 は,産室ができ上がり,“卵を産むよ”という合 図の口をカパっと開ける行動をしているところであ. この つの場面では,絵の説明がどの部分の文章な のかわからないので,文章中に絵の番号を書き加える とよりわかりやすくなるであろう。.
(20) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). 場面. 場面. シロザケの産卵行動. サケのオスとメスの見分け方.
(21) 齋. 藤. 里. 奈・高. 嶋. 場面. 場面. ザリガニ探し. 幸. 男・小宮山. 英. 重. ザリガニ探し. 海道は,世界的にみれば,ヒグマ分布域の南限の個体. ここでは,流れの緩やかな小川での生き物探しにつ. 群の つが生息する場所である。群れはつくらず,多. いて書かれているが,本文中では主に大きな石の下で. くの場合単独または親子で行動する。食性は,植物食. 生活しているザリガニしか出てこない。実際は,カエ. を主とした雑食性である。交尾期は飼育グマの観察か. ル,シマウキゴリなども大きな石の下で生活している。. ら. こうした生き物が生活している石の下の出入り口周辺. から 月上旬である。北海道のヒグマは一般的に. は,細かいきれいな砂がしかれている。これは,石の. から 月にかけて冬眠穴に移動するとされているが,. 下で生活している生き物が,自分のすみかをきれいに. 地域差,個体差,自然環境の変化により多少ずれる可. 掃除した形跡であり,このようなところには,石の下. 能性がある。冬眠穴の多くは傾斜地にあり,ヒグマ自. に生き物がいるという証拠である。こうした石を見つ. 身が掘った土穴のほか,自然の岩穴や木の穴も利用す. け,その石をそっと持ち上げ,水の濁りが消えるまで. る。土穴の場合は,入り口が崩れないように樹木の根. 待っていると生き物が姿をあらわす。. が張っているところの下に掘ることが多いようであ. 本文中では,腹に. ハ. の字に見えるものがあるザ. 月前後と考えられ,出産時期は冬眠中の. 月下旬 月. る。冬眠穴の周辺の環境は様々で,標高も海岸線近く. リガニがメスと書いているが,これは間違いで, ハ. の傾斜地から森林限界の上にまで及ぶ。冬眠が明ける. の字があるものがザリガニのオスである。ザリガニの. のは, 月下旬から. 絵は,一応ザリガニの格好はしているが, 足の数が違っ. 亜成獣は早く活動を開始する傾向があり,出産したメ. ている。ザリガニは, 対の足と. スの活動開始がもっとも遅い。. 対のはさみをもつ。. 基本的なことはしっかり描く必要がある。 場面. ヒグマの糞. 月中旬にかけてである。一般に,. クマにとって基本的かつ最も重要な感覚は,臭覚で ある。食べ物の発見も,つがいの相手を探すときも,. ここでは,ヒグマの糞を発見し,糞の内容物から何. その多くを臭覚にたよっている。視力は,それほどよ. を食べているか,またヒグマとエゾシカの通った足跡. くないと考えている人も多いが,十分な視力を持つと. の違いなどについて書かれている。. いう科学的な根拠がいくつもあるとされる。聴覚もか. ヒグマは,日本では北海道だけに生息している。北. なり鋭いらしい。走る能力も高く,力も強い。生後 ヶ.
(22) 北海道東部,標津町における サケ学習 プログラムの開発( ). 場面. 月のクマの子の力は,ふつうの人間の大人の力に匹敵. ヒグマの糞. 本文中でエゾシカの通った道についての. ……。一. 直線にきれいに草が倒れているじゃろ。 という記述. するらしい。 クマの糞から,近くにまだクマがいるか,何を食べ. があるが,ここも 一直線になったきれいな踏み跡が. ているか等がわかる。ある範囲に残された糞の数でク. あるじゃろ。 にした方が正確に伝わるだろう。エゾ. 以内に. シカは群れで行動し,移動するときは大抵一列に並ん. マの活動を知ることができ,たとえば半径 から. 個の糞があれば,近くに寝床があるはずであ. る。クマは. 日の生活サイクルの中で何回か眠ったり. で歩くので,きれいな踏み跡が残るのである。 場面. ヒグマの足跡と食痕. つの寝床を数時間使っ. ここでは,ヒグマの足跡を見つけ,ヒグマと人間の. て放棄するので, 日にいくつかの寝床を作ることに. 時間のすみ分けについての説明と,動物の違いによる. なる。また,クマの糞はめったに悪臭をはなたない。. 食物の食べ方の違いについて触れている。. 休んだりする。クマは, ふつう. 肉を食べたクマの糞は,黒っぽくどろっとしていると. 人間にとってヒグマは怖い存在であるが,ヒグマに. いう典型的な特徴がある。クマは動物の死骸など大き. とっても人間は怖い存在である。明るい昼間は,人間. な食べ物を手に入れると,その死骸の近くに何週間も. が活動していることをヒグマも知っているので,ヒグ. とどまることがある。そして,この食べ物を守るため. マの方がおとなしくしているようである。また,前述. に近づいてきた人間を攻撃する可能性がある。黒っぽ. のようにクマは感覚器官が人間よりも優れているの. くどろっとしたクマの糞を見つけたときは要注意であ. で,人間がヒグマの存在を確認するよりも早く人間の. ). る 。. 存在を感じ取り,出会わないようにしているのではな. 今回の実習で見つけ,絵本で取り上げたヒグマの糞. い。しかし,人間の出す生ごみの味を覚えてしまった. は,ほとんど消化されていないコクワの実の混ったも. ヒグマは,人間はおいしいものを持っている存在とし. のであった。ヒグマの糞があったということは,当然. て攻撃の対象になる場合もあり,気をつけなければな. ヒグマが生息できる豊かな自然があることと同時に,. らない。クマに人間の持っている食べ物の味を覚えさ. ヒグマと出会う可能性もある場所だということであ. せないためにも,野外で活動するときは,食料や食べ. る。. 残しの管理を特に注意する必要がある。本文中では,.
(23) 齋. 藤. 里. 奈・高. 場面. 時間帯のすみ分けの説明として. 嶋. 幸. 男・小宮山. 英. 重. ヒグマの足跡と食痕. ……。昼間じゃし,. 突っ込んで食べるので, 皮膚は硬くてカラスやカモ. 人がいるから警戒してるんじゃよ。 とあるが, 今は. メの嘴では食い破れないんじゃ。それに比べて目は. 明るい昼間じゃし,人がいる時間帯だからクマの方が. 突っついて食べやすい。わしの経験でいえば,目の周. 警戒しておとなしくしているはずじゃ。 とした方が. りの筋肉はおいしいぞ。 とした方がよいだろう。こ. 正しく理解しやすいだろう。. の後,本文中に. でも苦いんだぞ。 とあるが目の周. ヒグマの食べた痕跡について, ……,クマは頭と. りの筋肉は決して苦くはない。サンマの内蔵の苦味か. 内臓には,栄養がたくさんあることを知っている……。. らの連想なのかもしれないが,体験に基づいていない. いいところだけ食べているんじゃ。 とあるが. 記述の原因は不明である。. クマ. は頭と内臓がうまいことを知っているんじゃよ。そし. 場面. ことのまとめ. て,サケやマスはこの時期たくさん川に戻ってきてい るからいいところだけ食べているんじゃ。 と書き換. 人間の生活と自然の営みについて考えた. ここでは,密漁によるサケ被害や産業による自然破 折り. えた方がいいだろう。頭や内臓にはたくさん栄養があ. 壊を通して,人間の欲望と自然の営みとの間の. ることは確かだが,ヒグマは栄養があるからといって. 合い について考え,その. その場所を食べているのではなく,おいしいサケやマ. じ,自然の営みを大切にすることの大事さが書かれて. スがたくさん川に泳いでいるので,その部分だけを好. いる。. んで食べていると考えた方が自然なのではないだろう か。 次に鳥類の食痕について, 目は突っついて食べや. 折り合い. の難しさを感. 忠類川は,サケ・マス類の増殖事業もあって多くの サケ・マス類が遡上し自然産卵しているため,密漁が 行われることもある。密漁のほとんどがサケの卵(イ. すいし,栄養があるからじゃよ。 とあるが,これでは,. クラ・スジコ)をとることを目的にしており,捕まえ. 説明として不十分である。サケやマス類は産卵のため. られたサケのメスはお腹を裂かれ,卵だけが持ってい. に川に戻ってくると皮膚が硬くなり,カラスやカモメ. かれる。そのため,大々的に密漁が行われた跡には,. の嘴では皮膚を食い破ることができない。カラスやカ. 川岸にたくさんのお腹を裂かれたサケのメスの死体が. モメがこれらの魚を食べるときは,目や肛門に嘴を. 置き去りにされる。中には,無傷のオスの死体もある。.
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