幼稚園教師のエンパワーメントを引き出し高める組織開発について : 幼児教育無償化への対応を視野に
11
0
0
全文
(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第71巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 71, No.2. 令 和 3 年 2 月 February, 2021. 幼稚園教師のエンパワーメントを引き出し高める組織開発について ― 幼児教育無償化への対応を視野に ―. 橋本 忠和・藤谷 毅*・小林恵理子*・伊藤公美子*・滝谷 舞* 北海道教育大学函館校学校教育学研究室 *. 北海道教育大学附属函館幼稚園. A Study of Organization Development for Displaying and Enhancing the Empowerment of Kindergarten Teachers ― With a View to Supporting Free Childhood Education ―. HASHIMOTO Tadakazu, FUJIYA Takeshi, KOBAYASHI Eriko, ITOU Kumiko and TAKIYA Mai Department of School Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education *. Hakodate kindergarten Hokkaido University of Education. 概 要 本研究は,令和元年度から始まった幼児教育無償化に関して幼稚園教員組織が連携して対応 しスムーズな実施の具現化を図ることを視野に,教師のエンパワーメント(自信・関与可能性・ 潜在能力)を引き出し,高めるには,どのような教員組織構築の取り組みの開発をし,実施す れば良いのか,令和元年度の北海道教育大学附属函館幼稚園の取り組みの一端を安梅勅江のコ ミュニティ・エンパワーメントを推進する7原則で分析し,考察することを試みた。すると, 幼児への発達支援ための個別支援シート(すくすくシート)や「幼児期の終わりまでに育って ほしい姿」を日々の保育の中で具現化するための改善した週案及び,その情報をメンバーが共 有し個に応じた保育を具現化する保育ミーティング等の取り組みによる幼稚園教師のエンパ ワーメントを引き出し高める組織開発が,無償化に関わる保護者・関係機関と多重連携できる 組織の構築に通じることを見出すことができた。. 1 幼児教育無償化と組織開発 幼児教育や保育を無償化する改正子ども・子育. て支援法が,2019年5月10日に可決・成立し, 2019年10月からの実施が決定した。この改正は, 同年10月に実施される消費税率の引上げによる財. 317.
(3) 橋本 忠和・藤谷 毅・小林恵理子・伊藤公美子・滝谷 舞. 源を活用し,幼児教育の無償化をはじめとする負. 地域での認定こども園が増加している等の幼児教. 担軽減措置を講じることで,国難といえる少子化. 育環境の変容への対応(研究会等による情報発. に歯止めをかけること,また,幼児教育は生涯に. 信・地域の保育者の研修や教育相談の役割を担う. わたる人格形成の基礎を培うものであり,子供た. 教育センターの機能)や,新入園児確保という点. ちに質の高い幼児教育の機会を保障することをね. からも幼児教育無償化の組織的対応を探求し確立. らいとしている。さらに,就学前の障害児の発達. させることは急務といえる。. 支援についても,併せて無償化を進めていくとさ れている。. 本研究においては,幼児教育無償化へのスムー ズな準備・実施を図るための幼児教育無償化のス. ただ,この無償化は,奈良女子大学の中山 徹. クール・マネジメントとして,保育者の力「エン. が指摘するように,3分の2に及ぶ幼稚園での預. パワーメント(自信・関与可能性等)」を引き出し,. かり保育が普及した新制度外幼稚園にとって,幼. そこから生まれたマネジメントの提案を具現化. 稚園+預かり保育のほうが保育所を利用するより. し,活用し精選することで,そのコミュティのエ. も安価な場合が多いというメリット等はなくな. ンパワーメント高めることが出来るのではないか. り,その結果,幼稚園の認定こども園化,新制度. と考えた。. 1). 外幼稚園の新制度への移行が進むと思われる 。 すなわち,従来型の新制度外幼稚園にとって,. そこで,保育者の力「エンパワーメント」を引 き出し高めるために,どのような園の組織を開発,. 高度な幼児教育を受けさせたいと考えている保護. 運用すればよいのかについて附属函館幼稚園の. 者のニーズを満たし,地域の行政機関等と連携し,. 2019年度の取り組みを安梅勅江のコミュニティ・. あずかり保育等を充実させるなど,保護者・地域. エンパワーメントを推進する7原則の視点で分析. 社会と連携して子育て支援をどう体系的に進める. し,考察することを試みた。まず,次章では教師. のかをきちんと考えなければ,その存続が問われ. =保育者のエンパワーメントについて先行研究・. る状況になっていると考えられる。. 関連文献を参照に整理する。. 2 教師の力=エンパワーメントとは 教育とエンパワーメントとの接点は1970年にブ ラジルの教育者Freireが教育を抑圧の道具である 「銀行型教育」(学習者のエンパワーを脆弱化す る教育)と解法の道具である「課題提起型教育」 (学習者をエンパワーする教育)に分けて捉えた ことにその発想があり,これを元にWallerstein 図1 園の幼児教育無償化の対象イメージ2). &Bernsteinが「エンパワーメント教育」を提唱 したことに端を発するとされる3)。. 全国に先駆け,あずかり保育の実施とその充実 (早朝と延長保育)の在り方を,大学・地域・保. この教師のエンパワーメントの必要性を渕上克 善は以下の様に説明している。. 護者と連携して実施している北海道教育大学附属. 「学校組織においても校長や教頭が一方的に教. 函館幼稚園(以後「附属函館幼稚園」と表記)に. 師に指示・指導を行うのではなく,教師側も自. とっても図1が示すように幼稚園の利用料及びあ. 律心をもって積極的に働きかけることが重要で. ずかり保育料が無償化の対象となっており,その. ある。(略)管理職だけでなく,教師も様々な. スムーズな準備・実施の具現化を図ること,及び,. 意見やアイディアを出し話し合いながら目標遂. 318.
(4) 幼稚園教師のエンパワーメントを引き出し高める組織開発. 行のためのプロセスをすすめていく必要があ. ⑤他者への援助に関心をもつ。. る。つまり教師自身もエンパワーメントをもっ. ⑥他者から学ぶことを厭わない。. 4). て参加・関与・協同することが必要である。」. ⑦他者と開かれた人間関係を持つ。. そして,教師がエンパワーメントを発揮する学. 以上のようなエンパワーメントを持つ教師の特. 校の組織文化の構造を浜田博文は図2のように示. 徴を地域社会等からの学力向上の要求や予期せぬ. している。すなわち,学校では管理職も教師も児. 教育課題事態に対して的確な判断・処理を学校の. 童生徒も「組織文化」という目に見えないモノで. 組織文化の中で,他の教員・管理職・保護者等と. つながっており,その組織力は,浜田が「一人ひ. 連携しながら力量を教師が取得し発揮できる教育. とりの教師が子ども達とともに柔軟な発想と創意. 現場の在り方を見定める必要がある。. 6). をもって生み出す教育活動が命」 というように,. 従って,幼稚園の教育活動においても,それま. 複雑な要因や組織が絡み合ってうまれる「想定外. での勤務経験等で得た知識やスキルを組み合わせ. の局面」で,より適切な意志決定を積み重ねなが. るだけでは解決できない場面に出会い,それを職. ら子ども達と一緒に1つの授業を作り上げてく創. 場に関わる人とのコミュニケーションによって,. 造性を発揮する教師のエンパワーメントが不可欠. 偶発的に生まれる創造的で達成感のある教育活動. と思われる。. の創造体験を教師がすることで,そのエンパワー. 従って,エンパワーされた教師同士が学校課題. メントが強化されると考えられる。ただ,そこで. のために紡ぎだす多様なコミュニケーションは学. は組織の管理者である管理職は,教員のエンパ. 校の組織文化を創造し,学校の組織化を高め,学. ワーメントを高める創造的な教育活動を直接コン. 校を変えていく原動力になる。その組織力を強化. トロールできないと思われる。けれども,それが. するエンパワーメントを持つ教師に共通する7点. 起きやすい状況,すなわち,コミュニティを意図. の特徴を渕上は示している7)。. 的に形成することは可能と思われる。. ①影響力の源泉はまず第1に自分自身にあると信 じ,自分自身の考えや感情を価値者として受け 入れる。 ②正しいと思っていることを行動する勇気をもっ. 3 教師の力を引き出す組織(コミュニティ・ エンパワーメント)とは 3-1 コミュニティ・エンパワーメントについ. ている。 ③他者へ自分の考えや感情を進んで表明する。. て 教師のエンパワーメントを高めるためには,ど. ④リスクを賭けることを厭わない。. のような組織構造や運用にしてゆけばよいのか, その手段として清水準一と山崎喜比古が示す「個 人的・心理的・エンパワーメント」・「組織的・エ ンパワーメント」・「コミュニティ・エンパワーメ ント」の3つの分類が参考になる。彼らは,3種 の分類の関係性について個人・心理とコミュニ ティのエンパワーメントの関係についてコミュニ ティへの参画が個人的・心理的エンパワーメント を高め,一方エンパワーが高まった個人もコミュ ニティへ参加するようになるといったように,2 つの分類のエンパワーメントに相互作用があるこ 5). 図2 教授・学習活動と組織文化. とを示唆している8)。. 319.
(5) 橋本 忠和・藤谷 毅・小林恵理子・伊藤公美子・滝谷 舞. 得してきたり,そうした資源をより使いやすい形 10) の定義分析か にして提供したりしていくこと」. ら,巴山玉蓮・星旦一料らは,エンパワーメント を図3のような多重構造をしていることやそのエ ンパワーメントは人々が自ら最適な状況を主体的 に選び取りその成果に基づくさらなる力量を獲得 していくプロセスとして位置づけている11)。 このプロセスにおける3種のレベルのエンパ ワーメントの相乗効果について,久木田純は「あ る側面の強化によって他の側面が強化され,さら 9). 図3 エンパワーメントの3つのレベル. にその側面が元の側面やそれ以外の側面を強化す 12) とエンパ るような連鎖的な作用を意味する」. すなわち,コミュニティ=教育現場の参画が個 人=教師のエンパワーメントを高め,その参画が. ワーメントは,他者との相互作用を通して発生し, 強化されるとしている。. コミュニティ自体のエンパワーメントを高めると. 従って,幼稚園の教員組織をコミュニティ・レ. する。その清水らの示した関係図に教師と幼稚. ベルのエンパワーメント組織と位置付けること. 園・大学の組織を位置づけ,その関係性を整理し. で,コミュニティ・エンパワーメントを,共通の. たのが図3である。この図が示すように教師のエ. 目的に向かって,コミュニティやシステムなど,. ンパワーメントはコミュニティ・エンパワーメン. 『場』全体の力を引き出す,活性化することを意. トに位置づけられる幼稚園組織全体との相互作用. 味するとして,他者との相互作用=「共創力」と. によって高め,目指す幼児の資質・能力(図4). 言い換えている安梅勅江の以下の捉え方が本研究. を具現化できると考えられる。. の定義として活用できると思われる。 「個人や組織,地域などコミュニティの持って いる力を引き出し,発揮できる条件や環境を 13) 作っていくこと。」. この「共創力」という視点は,教育現場におい て教師が園児の能力・資質等(図4)を引き出し 伸ばす実践づくりのため,教師個人・組織のグ ループの力を引き出す協働の活動を展開してきた 日々の教育活動や研修活動とコミュニティ・エン パワーメントの関係性を整理する上で有効な視点 と考える。 図4 めざす幼児の資質・能力. 従って,この共創の視点で附属幼稚園のメン バーの構成を表現すると図5のようになり,その. 3-2 附属幼稚園の組織(コミュニティ・エン パワーメント)の構造 コミュニティ・エンパワーメントの定義に関し て清水準一の「コミュニティが個人なり,グルー プが必要に応じて行っている努力に対して,社会 的・政治的・経済的資源をより大きな社会から獲. 320. メンバー構成を整理すると以下の様になる。 ①コーディネーター:企画・調整のリーダー的な 役割をする人(園長・副園長) ②コア・メンバー:企画や調整に積極的にかかわ る人(研修主任等) ③参照メンバー:必要に応じて専門的な情報や技.
(6) 幼稚園教師のエンパワーメントを引き出し高める組織開発. れる。加えて,コミュニティ・エンパワーメント には,園児個人と幼稚園という組織のエンパワー メント,幼稚園教員がエンパワーメントすること, そして,園児家庭や地域社会全体が幼稚園の教育 活動を正しく理解し積極的に支援することの3つ のエンパワーメントを繋ぎ,連動させるスパイラ ル運動による継続的な向上を図る必要があると思 われる(図6)。そのためにコミュニティ・エン. 14). 図5 コミュニティ・メンバーの種類. パワーメントを推進する下記の7原則を安梅が示 17) している。. 術を提供する人(協力者大学教員等) ④周辺メンバー:めったに参加しないが関心のあ るときには参加する人(実習の学生等) 3-3 教師・組織の力を引き出す7つの原則 ギデンスは,エンパワーメントの発想こそ,企 業が管理型組織から支援型組織へと脱皮するため の条件として,下記の視点を提案している。 「自己の可能性を高める創造的な生き方を求め ることは,他者を出し抜くことでなく,相互支 援によって互いにエンパワーメントすることで ある。支援についての理論整備をすることで, 付加価値創造と自己実現がおこないやすい状況. 図6 園のコミュニティの効果18). をつくりだすことがこれからの企業組織には不 15) 可欠である。 」. ①関係性を楽しむ. この相互支援できる理論整理によって管理型組. ②価値に焦点をあてる. 織から支援型組織へと脱皮するという支援型組織. ③つねに発展に向かう. への方向性は,麻原きよみの下記の支援的風土の. ④柔軟な参加様式. 中でエンパワーのプロセスが進行するという視点. ⑤親近感と刺激感. に通じる。. ⑥評価の視点. 「人は他者との交流の中で認められたり,感情. ⑦リズムをつくる. を受け止められたり,逆に他者を支える経験を. 本研究では,附属幼稚園の教員組織やその運営. するという集団の力の中で個人の安心感を得,. が,教師のエンパワーメントのみならずコミュニ. 自己効力感,有能感,自尊感情,意欲等が高め. ティ・エンパワーメントをどのように推進してい. 16). るかを看取るためにこの7つの原則を活用する。. られエンパワーのプロセスが漸進していく。 」. 従って,幼稚園等の教員組織においても教員と 多様な外部組織と構成するその組織が管理型から 支援型と変化し,教師と幼稚園・大学(保護者等) で構成する組織のエンパワーメントをはかること. 4 検証対象園のコミュニティ・エンパワー メントの分析. が可能となるためには,組織が状況に応じて変化. この章では,まず検証対象園(附属函館幼稚園). できる体質を備えていなければならないと考えら. の概要を示す,その後コミュニティ・エンパワー. 321.
(7) 橋本 忠和・藤谷 毅・小林恵理子・伊藤公美子・滝谷 舞. メントを推進する7原則を視点に園のコミュニ ティ・エンパワーメントの様相と効果を抽出する。 4-1 対象園の概要 安梅が,メンバーと全体像を把握するため論理 的な流れに沿って目標と戦略を6つのステップで 設計した教育活動構造が図7である。ここでは, 附属幼稚園ではこの戦略設計に基づいた園の教育 活動の概要を示す。 ①附属園の概要(附属幼稚園の特徴) ・国立大学法人附属幼稚園としての役割受託・ 文部科学省幼稚園教育要領に沿う教育の実施。 ・きめ細やかで質の高い保育の保障・地域のモ デルとなる先進的な教育の実現。 ②目指す子供像(いきいきと活動する子) ・元気にあそぶ子. 図7 園の教育活動構造図. ・よく考える子 ・のびのび表現する子. ・就学前幼児向け教室等。. ・友達を思える子. ・大学の学長戦略経費を活用した研修・教育活. ・すすんでやろうとする子. 動の充実。. ③手立て ・健康で調和的な発達をはかる。 ・喜んで集団生活に参加する態度を養う。 ・協同,自主及び自律性を養う。. 4-2 教員・組織の力(エンパワーメント)向 上への附属幼稚園の取り組みの現状と分析 園での取り組みでの戦略(各教育活動の位置づ. ・社会や自然に興味や関心を持たせる。. け・研修活動等)を一覧にしたのが図8である。. ・情操,創造性を豊かにする。. この図の戦略によって図10のように園児やその保. ④研究主題 幼児の「見方・考え方」を培う遊びの過程の創. 護者のエンパワーメントや幼稚園教員のエンパ ワーメント,そして,協力者としての大学教員の. 造―「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の. エンパワーメントは向上すると思われる。そして,. 具現化をめざして―. その戦略から下記に示すようにコミュニティ・エ. ⑤特徴のある取り組み(教師のエンパワーメント. ンパワーメントの7つの原則を有していたことが. を高める要素も含む). 読み取れる。. ・保護者アンケートの実施。. ①関係性を楽しむ(図11). ・研 究の地域教育への貢献度アンケートの実. ・ 「共感に基づく自己実現」:協働型の「ごっこ遊. 施・10の姿を位置づけ,日々の取り組みが視. び」の機会を設け,他者と思い・願いを共感し. 覚化できる週案シート。(図8). た関係性を楽しめるようにする。. ・10の姿と遊びのプロセスを位置づけ,活動の 取り組みが視覚化できる指導案。(図9) ・幼児理解の保育ミーティングの実施。 ・預かり保育の実施。. 322. ・ 「互恵性」:大学研究室があずかり保育に参加し たり,幼稚園が卒論等の実践研究の場を提供し たりする。 ・ 「信頼感(縁パワメント)」:大学サークル,地.
(8) 幼稚園教師のエンパワーメントを引き出し高める組織開発. 図8 週案シート. 図9 指導計画案. 域の警察・消防と連動した行事や時間外保育の. 種・行政機関等)と連携した障害児や支援を要. 実践。. する幼児への発達支援ための個別支援シートと. ②価値に焦点をあてる ・ 「メンバーがつねに価値をはっきり認識」:「幼 児期のおわりまでに育てたい姿」の見取り・支 援の共通理解の研修推進(図12)。 ・ 「共感に基づく価値」:保護者や関連機関(異校. 保護者向けの便り等による説明(図13)。 ③つねに発展に向かう 魅力的で具体的な目的や世界観や価値観の共有 を通してコミュニティの一体感を強め,メンバー やコミュニティの関わりを高めるため現状を打破. 323.
(9) 橋本 忠和・藤谷 毅・小林恵理子・伊藤公美子・滝谷 舞. 図10 園の実施した戦略の概要 図13 すくすく便り. 図11 関係性を生かした実践 図14 園の戦略設計19). ⑤親近感と刺激感 親近感と刺激感を連動することの双方的な効果 が期待し,附属園と大学・他園所と連携し,その 共有ビジョン形成と授業公開研究会,大学協同研 究による教員教職実践力強化システムの連携・構 築(図15)。 図12 子どもの姿を読み取り資料. ⑥評価の視点 コミュニティの「顕在力:どの程度を持ってい. し挑戦を引き出す,安梅が,メンバーと全体像を. るのか:潜在力:どの程度もてるように変われる. 把握するため論理的な流れに沿って目標と戦略を. のか」を明らかにするため,年度初めに研究主題. 6つのステップで設計したものを参照に作成した. や教師の指導の内容改善に関するアンケートの実. のが図14である。. 施,及び研究会の参加者向けアンケート,年度終. ④柔軟な参加様式. わりに学校内外評価を実施し評議員から助言を得. どのメンバーも中心的な役割を果たすことがで きる雰囲気を大切にする(図11)。. ている(図16)。 ⑦リズムをつくる ・ 「変化のリズム」:2018年度よりあずかり保育等. 324.
(10) 幼稚園教師のエンパワーメントを引き出し高める組織開発. 図17 保育ミィーテングの様子 図15 園の連携システム図. 図18 多重連携型組織的対応構想図. システムを応用した無償化に関わる保護者・関係 機関と多重連携できる組織(システム)を構築し ている可能性を有していると思われる(図18)。 20). 図16 2017年から2019年の手立てへの保護者評価. ただ,園の組織が管理型のそれから支援型のそ れへと変化し,教師と組織のエンパワーメントを. の体制整備に合わせて,勤務時間のシフトを下. 向上させることを可能とするためには,組織が状. 記の様に設定し実施している。. 況に応じて変化できる体質を備えていなければな らないと考えられる。 表1は,附属園の前章の取り組みを担当する教 員が指摘する各取り組みの成果と改善点である。. ・ 「秩序化のリズム」:情報を,管理職・クラス担. その改善点等を具現化するためには「週案やすく. 当教員・あずかり保育担当教員・養護教諭等が. すくシート」等の園児情報記録共有シート等によ. 共有し,個に応じた保育を具現化するために月. る自省的フィードバックのミーティングの場の充. 曜日の午後に個々の幼児の情報収集・共有・活. 実と,そこでの情報共有・管理〈自律的に秩序を. 用するコミュニティとしての保育ミーティング. 持つ構造を作り出す〉が必要になると思われる。. の充実を図る(図17)。. 今後も,大学教員と保育者連携して研修活動を 通して展開している教育実践と預かり保育の実. 5 今後の取り組みに向けて. 践,幼児教育無償化への確実な実行との関連性を 整理して,教員の教職機能強化につながる,コミュ. 前章に示した7原則の様相を概観すると園の組. ニティ・エンパワーメント型の教育組織開発の在. 織開発・運用が,幼児の情報収集共有・活用する. り方を継続的に探り,実現させていきたいと考え. 個々の幼児の見取りと支援を軸とした多重連携型. ている。. 325.
(11) 橋本 忠和・藤谷 毅・小林恵理子・伊藤公美子・滝谷 舞. 表1 各取り組みの成果と課題 週 案. 成 果. 幼児期の終 わりまでに 育ってほし い姿を日々 の保育の中 で意識する ことができ た。. 改 善. 教師一人一 人の経験値 の差もあ り,メモの 記入方法を 工夫。. 12)久木田純,1998, 「エンパワーメントのダイナミック. すくすく シート. 保育ミー ティング. あずかり 保育. 保護者が親 しみやすい ネーミング にしたこと で,その要 望が増え, 支援が進め やすくなっ た。. 全職員が全 自動の様子 を把握でき 保育に生か すことがで きた。. 正規保育と の連続性を 持てる一貫 した保育の 実現。. 職員間で支 他クラスの あずかり保 援の態度の 教師から見 育の質のさ 共有。学童 た園児の様 らなる向上。 期への引き 子を十分に 継ぎ資料と 話合う時間 しての活用。の確保。. スと社会変革」 , 『エンパワーメント―人間社会尊重社 会の新しいパラダイム―:現代のエスプリNo.376』,至 文堂,p.188 13)安梅勅江,2005,『コミュニティ・エンパワーメント の技法―当事者主体の新しいシステムづくり―』,医歯 薬出版株式会社,p.6 14)上書,p.26 15)アニソン・ギデンス,2008, 『グローバル時代の人的 資源論―モチベーション・エンパワーメント・仕事の 未来―』 ,東京大学出版,p.182 16)麻原きよみ,2000, 『高齢者のエンパワーメント―文 化的見地からのアプローチ―:老年看護学5』,日本老 年看護学会,p.23 17)前掲書,安梅,pp.23-27 18)上書,p.99の図8-6を参照に作成 19)上書,p.36の図4-3を参照に作成 20)北海道教育大学附属函館幼稚園保護者,2017年63名 2018年61名 2019年46名に実施. 参考文献 1)中山徹,2018,「幼児教育が地域に与える影響―無償 化までに地域で何を検討するのか」『住民と自治9月 号』,自治体問題研究所,pp.29-30 2)内閣府,2018,「幼児教育の無償化の具体的なイメー ジ(例)幼稚園・保育所・こども園等の無償化につい て」,内閣府ホームページ(2019年5月3日取得) 3)久木田純,1998,「エンパワーメントとは何か」 , 『現 代のエスプリ―エンパワーメント人間尊重社会の新し いパラダイム―』,至文堂,p.17 4)渕上克義,1995,『学校が変わる心理学―学校改善の ために―』,ナカニシヤ出版,p.61 5)浜田博文,2012,『学校を変える新しい力―教師のエ ンパワーメントとスクールリーダーシップ―』,小学 館,p.107図1を参照に作成 6)上書,p.238 7)前掲書,渕上,p.60 8)清水準一・山崎喜比古,1997,「アメリカ地域保健分 野のエンパワーメント理論と実践に込められた意味と 期待」 ,日本健康教育学会誌第4巻第1号,日本健康教 育学会,p.13 9)Rissel C. Empowerment. (1994) the holy grail of health promotion? Health Promotion International,9 ⑴,39-47 10)前掲書,清水・山崎,pp.12-13 11)巴山玉蓮・星旦一料,2003,「エンパワーメントに関 する理論と論点:総合都市研究第81号」,総合都市研究 会,p.9. 326. . (橋本 忠和 函館校教授) . . (藤谷 毅 附属函館幼稚園副園長). . (小林恵理子 附属函館幼稚園教諭) . . (伊藤公美子 附属函館幼稚園教諭) . . (滝谷 舞 附属函館幼稚園教諭) .
(12)
関連したドキュメント
*ホバークラフト 記念祭で,幼稚 園児や小学生を乗 せられるものを作 ろうということで 始めた。右写真の 上は人は乗れない
自ら将来の課題を探究し,その課題に対して 幅広い視野から柔軟かつ総合的に判断を下す 能力 (課題探究能力)
2Tは、、王人公のイメージをより鮮明にするため、視点をそこ C木の棒を杖にして、とぼと
・HSE 活動を推進するには、ステークホルダーへの説明責任を果たすため、造船所で働く全 ての者及び来訪者を HSE 活動の対象とし、HSE
ア Tokyo スイソ推進チームへの加入を条件 とし、都民を対象に実施する水素エネルギ ー普及啓発のための取組(① セミナー、シ
英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき
なお、保育所についてはもう一つの視点として、横軸を「園児一人あたりの芝生
この設備によって、常時監視を 1~3 号機の全てに対して実施する計画である。連続監