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子どもの歌にみられる特徴について

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Academic year: 2021

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(1)Title. 子どもの歌にみられる特徴について. Author(s). 伊藤, 勝志. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 32(2): 131-139. Issue Date. 1982-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4876. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 子 どもの歌 にみられる特徴について. 伊. 工. 藤. 勝. 志. 子どもの歌唱生活. 幼児期の子どもは実によく歌をうたう, このことには勿論, 彼等がうたうことを容認したり あ , るいは誘発したりするような, 家庭をはじめとする子どもを取り巻く 環境的要因が大きく関与 して いることは周知のところであろう. 子どもが歌をうたう 場面については, レコー ドを聞いたりテレ. ビを見たりするような,どちらかといえば歌唱活動 と直接結びつきやすいような場合ばかりでなく , 跳んだりはねたりの全身を使った運動遊 びの最中でも, 絵を描いたり粘土や積 木等を玩んだりする ような静的遊びの中においても, さらには食事を しながら, 身仕度を整えながら等々 日常生活の , あらゆる場面が数えられることは, すでに指摘したところ である . ところ で, こう した日常生活の様々 な場面においてうたわれる歌は, 子ども達の自発的な興味に. もとづいていることは勿論であろう. 清水 ( 196 4 ) は, 5 8名の幼稚園児に 「好きな歌」 をうたわせ, 幼児の歌唱行動にあらわれるいくつかの特徴を検討しているが, 子どもが選んだ歌の70%がテレビ 番組の 主題歌であった (但 し男児の場合のみ) と述べ ている 彼女は又 園児の父兄660名 を対象 . , とした質問紙調査において, 家庭にあって子どもが好んでうたう 歌を調べ 「テレビの歌」と「幼稚 , 園の歌」 に大別分類している (潜水. 1 975 ) . 表-1は, この資料をもとに集計したものであるが, これによると, 年少児から年長児に 至るま で何れの年齢においても, 選ばれた曲目はその兆以上が 「テレビの歌」 であり, うたわれる頻度に関しては実に5 0%~60%にも達している, 清水の報告においては分類が極めて 大まか であり, 「幼稚園の歌」は純粋 に幼稚園だけで子どもに 与えられたものか どうか, かなり暖昧な点があり, これは歌謡曲等をも 「テレビの歌」 に含めてい. ることにおいても, 分類 の基準にかなり無理 があることは否めない とはいえ 幼児の歌唱におい . , て, 曲目や歌唱頻度などに認められるこ のような 「テレビの歌」 の優位性は, より詳細な分類に 基 いた他の調査においても, かなり強い傾向としてあらわ れている. これらの結果から 幼児の日常 , 表-1 幼児がよくうたう歌(種類とその頻度) 年 T. V. の. 歌. 長. 児. 児. 中. 年. 曲数. 曲数. 頻度. 曲数. 55. 553. 50. 493. 25. 35.5(%)60.8 幼 稚 園 の 歌. 年. 頻度. 100 65.5. 357 39.2. 34.0 97 66,0. 55.9 389 44,1. 少. 34,2 48 65,8. 児. 頻度 164 50.1 163 49.9. 131.

(3) . 伊 藤 勝 志. 生活において観察される歌唱行動にはテレビ等, 放送の影響が極めて濃厚にあらわれていると言い 得るものと思われる. 幼稚園をはじめとする意図的な教育場面において, 子ども達に繰り返し与えられる 優 れた″ 歌. が,家庭を中心とする日常的な生活の中においてはあまりかえりみ られないことについての嘆きは, 一学校唱歌校門を出ず″ と言うことばで繰り返し表現されてきた . ) 今日こそ 幼稚園年少児においてさえ一 日平均2時間以上もテレビを視聴 している (伊藤1975. 様々 な生活場面 で彼等のうたう歌が,「CMソン グやテレビマンガ主題歌 で大半を占めているのはむ しろ当然」 と言われ得るのかも知れない.. すでに指摘したように, 子どもが歌をうたうか否かは刺激としての歌唱があるか どうかに大きく 左右されるものであり, この刺激の中では, テレビによ って与えられるものが最も 多く, 子どもに. とっては極めて自然なものですらある. 繁下も指摘するように, テレビとの密接なつながりをもっ て生活する中で 「くり返しきく 量の多さ」 と 「映像との一体 性」 が 「子どもの音感覚を支配する」 のであろう. とは言え, 繁下の指摘するところ であるが, テレビ番 組でうたわれる主題歌は普通1週一回の放 送であり, この意味からすれば幼稚 園や小学校などで扱われる歌唱教材に比較すると, 子ども達が. ・て受け取る量, つまり繰り返しきく 回数は非常に少ない筈 である, 番組のもつストーリー 刺激とし の面白さや映像の面白さなどに助けられたとしても刺激の量だけをもってテレビ放送の歌が子ども 1975 ) が指摘 達によくうたわれる理由と するにはなお無理があるように思われる. 勿論, 後藤田 (. するような, 「どんな歌をも同じように平板にうたわせてしまう」 と批判 される 教育的与え方″も 考慮されなければならないであろう. しかし, 他方においては, 子どもによくうたわれるテレビの. 歌が, 音程やリ ズムの構造, 音域, 拍子など, 音楽の構成そのものにおいても, 幼稚園の歌唱教材 には認められないような, 子どもを引きつける色々 な要素を含んでいるとも言われている. 幼児教 育の場で子ども達に与えられる様々 な歌が, 子どもの発達を充分考慮したうえ での作曲・作詞によ るものではあろうが, これが必ず しも子どもの興味や関心と合致せず, そのため子 どもの音楽的発 達を誰もが満足 できる様には充分促し得ないとするならば,・与え方をも含めて多くの点を反省 しな. ければなるまい. そのためには子どもがうたう歌の様々 な特性を分析し, これを幼児の身体的機能 や精神的特 徴との関連で検討することが必要であろう. ここでは, 幼稚園や保育所等において教材としてとり上 げられる歌曲と, テレビを主とする放送 番組においてうたわれる様々 な歌を分析整理し, いくつかの観点から比較検討しながら, 両者にみ られる違いを見いだそうとするものである.. 1 1. 子 ど も の 歌 に あ ら わ れる 特 徴. 1 目的及び方法 幼児にうたわれる童謡, わらべうた, テレビ放送等の中でうたわれる歌などを抽出し, そこに用 いられている音程の種類や頻度, 音域, 拍 子, 調, 小 節数などについて分類し, それぞれに 認めら れる共通点や相違 点を確認することが本小論の目的である. 以下に, 分 析に用 いられた歌の種類, 集録された曲数と出版社, 及び分析された歌の曲数等 を示す.. イ. 童謡:音程 分 析のみ 158曲 132.

(4) . 子どもの歌にみられる特徴について. 日本童謡名歌110曲集1, 2. 全 音楽譜出版社. ロ. 幼稚園, 保育所用歌唱教材:300曲 (わらべうたは除く) 幼児音楽指導資料集成 全音楽譜出版社 ハ, わらべうた:音程分析のみ 94曲 小学館 楽 しく遊べ るわらべうた. 編曲されたもの, 及び創作は除く.. ニ, 放送番組の歌:ラジオ ドラマの 主題歌80曲を含む300曲 (音程分析は64曲) TVマンガ大百科 全音楽譜出版社 以上の他, 西洋音楽における歌曲の代表的な例 として, 歌曲王と 呼ばれた Fran t zschubertの 作 品 を Peter 版, Schuber t‐ A1bum Band l ・1 工よ り 65 曲 を 選 び, 音 程 の み に つ い て 分 析 した 結 果. をも参考として表示した. 放送番組の歌は結果の表示において 「主題歌」 として一括した が この , 中には主題歌ばかりでなく, 例え ば 「およげたいやき君」 などのように, 幼児番組の中で紹介され たものも含まれている. なお, ここに言う 一音程″ は, メロディ ーを構成している音のうち互いに となり合っ ている二音間の関係を指し, 同音による進行を0として半音単位で 上昇をプラス 下 , , 降をマイナス で表示した. 又, 音域は一つの曲で用いられている 最低と最高の 二つの音の音程のこ とであり, この場合も主として半音単位で示してある 小節数は, うたい始めから一番の歌詞が終 . 了 するま でに 含まれる小節の総数であり, Coda がある場合にはこれも含んでいる なお これら資 . , 料 の 分 類 作 業 は マイ ク ロ コ ン ピ ュ ー タ ー, Scharp MZ -80C に 依 っ た data 処 理 プ ロ グ ラ ム は . , 雑誌 「マイ コン」19 80 , 9月号に掲 さいされた新美英雄氏の 「オールマイテイースキャナー」 を, 一部変更 したものを利用した. 2. 結果. ①音程について 表-2は それぞれの歌曲に用いられている音程の出現頻度を百分率であらわしたものであり こ , の中より 童謡, わらべうた, 番組の主題歌について示したのが図-1である 遊びの言葉と結びつ . いたと言 われるわらべうたにおいて, 下降音程の最大が6半音と比較的狭い外には ほぼ同様な分 , 布を示しているように思われる. ただ, 主題歌には他の歌にみられない1 4半音(1オクター ヴと- 度) と言う大変広い音程が上下共僅かながらみられるよう である .. 図-1によると, 上昇・下 降共に0及び2半音 (完全1度及び長2度) のところまでで 主題歌 , 4. 2%, 童謡が68 7 .2%, わらべうたが84 .1%と集中し, 何れの場合においても 同音, 1音での進行 が最も多いことを物語っている. 竹川は, 「旋律の構成単位となっている音程の種類は, 出現率1%以上のものに限定すれば1 0種 類であり, さらに上昇・下降の区別を無視すれば僅か5種である」 (但し同音は含まれない) との報 告を紹介している. 表-2によると, 出現頻度が1%を越える音程は同音進行を除くと わらべう , たが1 0種, 童謡が11種, 主題歌及 びドイツ歌曲におい ては12種類であり 先の報告と大きな違い ,. はないように思われる. 竹川は又, よく知ら れた唱歌80曲についての音程出現率を 上昇・下降共 , 70 0セント (7半音) ま で表示しているが, これによると5種類の音程 ( 5 00セント) までで全体の. 99%以上を占めている(この場合も同 音は含まれない) 表-2からこの点を示すため それぞれの . , 133.

(5) . 伊 藤 勝 志. 歌曲の累積頻度を示したものが図-2 である. 図- 2からも解るように,何れの曲においても5半音(4. 表-2 音程の出現 (%) 主題歌. 度) ま での 間 です でに 90% を 越 え て お り, わ ら べ 歌. に お い て は 99% 以 上 に も 達 し て い る. こ れ は 竹 川 の 総. 示した結果ともある程度一致しているものと思われ る. 以 上 の こ と は, 旋 律 の 音 程 構 造 を 全 体 的 に 眺 め た 場 合, 曲 の 種 類 が何 であ れ 旋 律 を 構 成 して い る 音. 程は, 統計的にも 「か 卿 は. き り し た 規則 性 を 示. 数. 十1 4. o .鑓. o .帖. 0,3 0.o 7 o.4. 8 7 6. 0, 2 2 0 4 .9 ・ 0 0 .4 5・n. 0 02 ,. 0,85. 互. 0, 44 1. 48 1 9 0・ 3.澱. 08 0. z ・艶. 0.3 7 4・“. 3 2. 4.3 7 ロ. 43. 6 58 . 1 8 8 0 ・. 3 46 . 18 48 ・. 4. 92 9.83. き. 謡. え; f. 盗電. 麦藁. ・ 2 3 4. 1 6 ,6 0 7. o9 4・3 7 2. 13. 2, 6 9 4 1 9. 9 8. 7 9 2. 92. 1. 3 0 19. 82 5. 04 1. 17. 9.54 1 6 .54 5.77 3, 66. 昇. 部 上下共に僅か1コ(音程総数 鋼4コ中)であり,. この 点 から言え ば 童謡とそ れ程 大き な違い がある と. は 思 わ れ な い. わ ら べ う た に お い て は, 特 に 下 降 音 程 が6 半 音 ま で と, そ の 他 の 歌 の 半 分 以 下 と な っ て. 下. 7 8. 順)である. これに 次いで2半音(2度) , 3半音(短. 降 X ,. 3 度), 5 半 音 (4 度), 7 半 音 (5 度) な どと な っ. て い る.こ の よ う な 傾 向 は 上 昇 と 下 降 と で 異 な る(例. え ば 上 昇 音 程に お い て, 主 題 歌 と わ ら べ う た は 4 度. 0.79. 2.68. 飽 ・ 1 2. いて も 同 音(出 現 率 は, わ ら べ う た が 43.44% と 約 半. 数近くで 最 も 多く, 主 題 歌 33.43%, 童 謡 24.41% の. 10202. 0. 02. は 23 種 類 と な っ て い る. 主 題 歌 に あ ら わ れ た 14 半. 先述の如く, 頻度の最も高い音程は何れの歌にお. 3667. 0 6 .2. 17 種, 逆 に 最 も 多 い の は 主 題 歌 の 25 種, そ し て 童 謡. い る と こ ろ が大 き な 違 い で あ ろ う.. 8286. 0・3 5 0. 02 o.博. さ て, 子 ども に う た わ れ る そ れ ぞれ の 歌に つ い て. に よ り 音 程 の 種 類 が最 も 少 な い の が わ らべ ぅ た の. 0.o2. ドィッ 歌 曲. 12 1 1 1 上 g. し て い る」 と の 指 摘 を 裏 づ け る も の で あ ろ う.. もう 少 し詳 細 に 検 討 しよ う. 表 - 2 及 び 図 - 1 な ど. 4 0 45. ・. 童 謡 ゎらべうた ▼. 11. ・2 -1 4. 4 1. 7 0・ 33. 0.47. 1,93. 綴 1. 4 2 1 3 0・. 4 o 2 .. o 1 9 ・. 0.02. 0.02. 0・ 18. 0.3 5 0. 02. 0. 0 6. 1 4 0.. 0.21. 1,41. 0.99. 1.58. 3.76. 1 ; 1 gず :. 1. 1 1 0・ 76. 4 o 8 ・ 0, o8 0.01. 0, 38. より短3度の頻度が高い) 場合もあるが, それぞれ の歌によってもかなりの違いが認められる. 例えば主題歌の場合, 上昇・下降共1半音では最も高. く, 同 じく2半音では低くなっている. 又, 7半音以上になると再 び割合が高くなってくることが 解る. このことはTV番組等の歌が, 他の童謡やわらべうたなどよりも半音進行が多く, 又5度以 上の音程も比較的多く用いられることを示すものであろう. 同 じようなことはわらべうたと童謡の. 間 では, 1及び2半音においてはほとんど同じ割合を示しているが, その他の音程 では短3度, 4 度, 5度などに僅かずつの 差があらわれており, しかも歌の違いによる音程のあらわれ方について のこのような差異は, 統計的にも明確な違いが確かめられた(3種の歌について, 音程の分布を 〆 001で有意差が認められ t tで確かめたところでは, それぞれの歌の間には何 れの場合にもP<, e s た) .. このように, 子どもの歌に用いられる音程は歌の種類によ ってそのあらわれる頻度がいろいろ異 なっ ていることは明らか である. しかし, このような音程構 造に認められるそれぞれの特徴が, 子. どもの好みや関心などとどのように結びついているのかは, 全く不明のままである. 音程に関して は, 子どもに好まれる音程, あるいは子どもの歌唱機能にとって, 適切な音程などが存在するのだ ろうか. 今後は, 子どもの心理的, 生理的特徴との関連の中で検討する必要があろう, 134.

(6) . 子どもの歌にみられる特徴について . ′ ” “ ” ” ” h h h. (%) 4 0-. h , , , 3 0冊. 一------わらべうた. ′・. ー------ 童. 謡. 一一---- 主 題 歌. i ・ . . ・ ▼. 1 0. 8. 6. 4 一2. 図- 1. 0 十2. 6. 4. 8. 1 0. 1 2. 1 4 (半音). 音程の分布. (%). 1 0 0-. キ ; ‐ 警鐘影 孝 三 ー. 90‐. 5 0ン 40‐. ダ.“. ‐ ‐ リ 3 0 ノ 20-′. 1 0. 1 1. 1 2. 1 3. ー 4. 1 5. 1 6. 1 7. 1 8. ー 9. 1 1o. 1 ll. 1 12. . 13. - 1 4(半音). 図-2 音程の累積百分率 ②音域に ついて 図-3及び表-3は, 幼児歌唱教材とTV主題歌各300曲とにおける音域の頻度並びにその割合 を示す. これらの図や表からも解る通り, 教材の歌は12~1 4半音(8~9度)の間に70%以上が集 中し, それ以上の音域を有するものは1 0%にも満たない.これに対し主題歌に おいては1 5半音以上 の音域を有する曲が約60%もあり, 教材よりはるかに音域の広いことを示している . 一般に幼 児の声域はおよそc.からc2までの1 2半音 (8度:1オクターヴ) と言われており, 幼 児の歌唱教材として子どもの発達によく 見合っ た歌が取りあげられている証拠ではあろう しかし , . 図及び表より解る通り, 子どもが好ん で歌う主題歌はほとんどが1オクター ヴ以上の音域であり , 135.

(7) . 伊 藤 勝 志. 教 材 曲 30‐. ‐- ---. \. /. \. \/ \. 0‐ 1. r- /. V. ′へ / 5. 主 題 歌. 6. 7. 8. V. 9 lo ll 12 13 14 15 16. 図- -3. \. L- 、. \. (半音) 17 18 19 20 21 22. 子 どもの 歌の音域. この点からすれば, 子ども達は相当無理な発声をしていることに なろう. しかし, 一般に言われる 幼児の声域は, 必ずしも1オクター ヴに限定されるものでなく, 環境的な要因などによっ てはかな 3.7半音, り広くなる場合もあるように思われる.筆者の調査によると,幼児の平均声域は4歳児が1 5歳児で15,3半音と何れの年令においても1オクター ヴを越えている. しかもこの声域は, 日常生 活において歌唱経験の多い子どもの方が, あまり歌をうたわない子どもより明らかに広く, この傾 向は年令と共に一層顕著になっ ている.. 先述の繁下は又,h~e2の1 7半音の音域を有する未知の曲を用いて,幼児が歌を覚えてうたうよ うになるまでの過程を調べている. これによると, 教師等による指導が全くなくとも, 一般にはと うてい歌い得ないと考えられている3歳や4歳の子ども でも, 最高音e2を含むクライ マックス部分 をも, 9ケ月後にはほとんどが正確にうたうようになっ たという. 繁下はこの中で, これまでの歌 の指導が子どもの音域を考えるあまり 「クライマッ クスのない, とらえどこ .ろのないような曲」 を 与えてきたことを反省しなければならないと, 幼児に対する音楽の与え方に示唆を与えている. 幼児期の子どもは極めて情緒的な存在であり, 感性に直接訴えかけるものに対しては鋭敏に反応 \教育的″ な歌よ する. 音楽においても全く同 じであり, 音楽的な面白さよりも詞に重点を置いた 、. りも, 彼等の感受性を刺激するような歌を好むのは当然である. このような点に曲の音域も又, 一 つの役割を有しているのかも知 れない. 136.

(8) . 子どもの歌にみられる特徴について. 表一3 子 どもの歌(音域) 教 材 主題歌 %. 表-4 %. 5. 1. 03. 6. 0. 0. F. 3.O 0,3. D. 7. 9. 8. 1. 9. 23. 10. 17. 11. 1. 12. 139. 13. 6. 14 15. 80. 16. 10. 1 7. 3. 18. 10. 主. % C. 7.6 5.7. 2 8. 0,3 46,3. 1 28. 2.0. 29. 26,7. 55. 1. o. 62. 3,3 3.3. 54 29 1. 19. 0.7. 2,7 0.3 9.3 9.7. 18.3 18,O. ES B E A AS. 9,7. 53(17,66). 60 (20.0). 92(3o,66). 60 (20,o). 25( 8,33) 59 (・9.66). 31(10,33). I9( 6.33) 16( 5,33). 38(12,66) 31(1o,33). 7( 2 3) ,3. 6( 2.oo). 1( o,33) X2=68,75P<o,oo・. 表-5 教. 03. 2( o.66). 子 ども の歌(拍子). 材. 曲. 主. 題. %. 60. 20. 7. 21. 5. 2,3 I.7. ′ 1 X2=250.46:P<o,oo1. G. 0,3. 題 曲 %. IO0 (33.33). 2 o .7. 18. 22. 子 どもの歌(調). 教 材 曲. 二拍 子. 170. 三拍子. 14. 四拍 子. 114. 六拍 子. 2. 56.66. 4,66 38,oo 0.66. 歌 %. 2o 7 273. 6,66 2.33 91,0O. 表-6 子どもの歌(小節数) 教 1- 5 6-10 11-15. 16- ‐20 21一25 26- ‐30 3.” ‐35 36- -40 41-45 46-50 51-55 56-60 6.-65 66-70. 8 97 91 89 8 3 3 1. 平. 13,3. 均. 材 曲 (%). 2.7 32,33 30.3 29.7 2,66 1,0 1.o 0,3. 主. 題 歌 (%). 3 24 56 65 60 46 21 10 6 4 1 1 1. 1,0 8.1 18,8 21.8 20.1 15,4 7.0 3.4 2,0 1.3 0.3 0,3 0.3. 26.7. ③調, 拍子, 小節数について 幼児用歌唱教材及びTV放送 等の主題歌各3 00曲の調, 拍子, 小節数は, 表-4 表-5 表- , , 6に示す通りである. 表-4 よ り, 調 に 関 し て は F, C D G Es B の6 種 に 集 中 し て いる が , , , , , それぞれの頻度分布においてはここでも教材と主題 歌の間に幾分ながら異なっ た様子があらわれて いる. 教材はヘ調が全体の兆を占め最も多く 次い でノ・調 ニ調 ト調の順 とな ている 主題歌 , っ , , . においてはノ・調が30%と最も 多く, ト調, ヘ調 変ロ調な どがこれに次いでおり このような分布 , , 137.

(9) . 伊 藤 勝 志. の違いは統計的にも有意差が認められる. 調は曲のニュアンスに大きく影響を与える場合もあるが, 子どもの好みがこの点と直接結びつく かどうかはなお不明 である.調の決定は主として曲の音域や子どもの声域などと密接な関係があり, 調の違いが子どもに好まれる理由の一つとなるとは考え難い面もある. 何れにせよ, 興味深い問題 でもあるの で, 今後の検討を深めたい. 三拍子は元来日本の風土から生 じたものではなく, 日本人は殊にこの三拍子が苦手であると言わ れる. 表-5は教材及び主題歌にみられる拍子の頻度を示しているが, 両者に共通しているのは六 6曲, 主題歌においては7曲 拍子も含めた三拍子系の極めて少ないことで, 教材においては5%の1 に過 ぎない. 結局, 大部分の歌は 二拍子, 四拍子であるが, 幼児の教材 では 二拍子が56%であるの に対 し, 主題歌においては四拍子が91%と, ここでも両者は対象的な様子を示している. 二拍子は 歩行をは じめとする人間の 運動における基本的なリ ズム であり, いろいろな面 で未発達 な幼児に とっ て, 活動を促し身体 反応を高める意味でこの拍子が重要であると頻々指摘さ れる. 教材に二拍 子が多いのはこのせいであろう が, 一 歩一歩前へ進むような行進曲風の拍子よりも子どもにとって は四拍子のように強拍の繰り返しに余裕のある方が受け入れ易いのかも知 れない. 最後に歌の長さについて触れておこう. 未発達な幼児におい ては記憶力にも 限界があり, あまり 長い歌は子どもに とって負担となるとの考え方もあり, 一般に幼児の歌唱教材にはそれ程長いもの. はない. 表-6はこの点をよく示している. ここか ら解る通り教材の平均小節数は主題歌の半分の 13.3に過 ぎない. 拍子のところに示された通り, 主題歌は大部分が四拍子であり, 従って小節数で は教材の 二倍 であるとはいえ, 実質的には教材よりはるかに歌全体の長さ があると言い得よう, 確かに, 曲が長く言葉が多い歌は学習するまでに多くの時間 を費し, 子どもの負担は増大するか も知れない. しかし繁下の報告にもみられるように, 子どもは曲のクライ マックスをはじめ とする いくつかの 手がかりをつかまえつつ 学習していくもの であり, 曲の中にいくつかの変化があれば,. 少しぐらい長い歌でも何の苦もなく覚えて しまうものである. 「およ げタイヤキ君」 などのような, 20のt 48小節四拍子,1 empo で歌えば, 一番だけで96秒 全体をうたい終るのに5分近くも要する( を要する) 歌でも, 3~4歳の子どもが平気でうたえるようになることは すでに経験したところで ある. 教材は確かに 小節数が少なく, それだけ覚えやすいかも知 れないが, 子どもにとって重要な のは歌詞の正確さなどではなく, 何よりもまず, うたうことの楽しさを得ることである. 主題歌の ように小節数が 多いことは, 歌の中に色々 な変化を取り入れる可能性が多いということにもなるの ではなかろうか. そうした変化が少なくとも子どもを引きつける面 白さになっていくの であろう. 以上, 子どもの歌をいく つかの 点から分析し, 童謡・教材と放送番組の主題歌等との比較を試み たが, 両者の間には音程・音 域・調・拍子・小節数など, 全ての項目において明確な違いが認めら れた. しかし, そのような差異の故に子ども達がTV主題歌等を幼稚園や保育所で与えられる 歌よ りも好むようになるのかどうかについて言及さ れなかった. は じめに述べた通り, 子どもが歌をうたう動機は様々 であるが, なかでも人をは じめとする環境 的な要因がかなり 大きいことは否定できない. 歌そのものの中に潜む子 どもを引きつける 要因と, 環境的要因と, そして子どもの心理的, 生理的要因との関係が明確になっ てはじめて, 音楽を楽し める子どもの教育が可能になるものと 思われる.. 138.

(10) . 子どもの歌にみられる特徴について. 文. 献. 清水美代子 幼児期の歌唱について 保育学年報 pp67~68 1 9 6 4 清水美代子 幼児と音楽 市郭学園女子短期大学人文学科論集 8 9合併号 19 71 , , , pp129-152 後藤田純生 他 子どもの歌の現状と未来 音楽教育研究 No5 197 5年秋季号 } l 1 6一1 3 6 音 音楽之友 . p p , 繁下和雄 うたの習得過程 前掲書 pp92一95 伊藤勝志 子どもの歌唱活動について 人文論究第3 6号 1 97 6 , pp27一34 伊藤勝志 幼児の声域に関する研究 北海道教育大学紀要27( ) pp43一52 1 9 2 7 7 , 和田陽平 他編 心理学ハンドブックpp 2 7 2 7 7 8 1 ~ 9 1 7 年 誠信書房 ,. (本学助教授・函館分校). 139.

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