児童生徒の論理的思考能力における新教育課程(算数数学科)の効果について
11
0
0
全文
(2) . 佐々木幸一・西田勉;論理的思考能力における新教育課程の効果. 児童生徒の論理的思考能力における 新教育課程 (算数数学科) の効果について 佐々 木. 1. 幸. 一 ・ 西. 田. 勉. 研究の目的. 本稿の著者2名を含む4名のグルー プは先に論文D において、 小学校高学年児童及び中学校生 徒 の論理的思考能力の水準と、 論理の領域との関連におけるその特徴とを考察したが、 その際に触 れ たように調査の時点が教育課程改定の時期とほぼ一致したことによっ て、 該時点での調査は 形式的 論理の指導が極め て僅かであるという条件のもとで論理的思考能力の自然的発達を見ることのでき る最後の機会であると同時に、 新課程による論理についての指導を経た後にその効果が如何なる 形 で現われるか、 また学習した内容についての理解が学習していない論理的思考場面に如何に転移す. るかを知る可能性を残すものであった。 本研究ではできる限り前調査に近い条件を設定 して調査を 行ない、 その結果を前調査の結果と ,比較することにより新教育課程の論理に関する内容の効果とそ. の特徴及び限界を把握し、 各種の形式の論理的思考能力のうち現行の教育内容から期待できるも の とそうでないものとを分別 して教育内容及 び指導方法改善のための資料を得ようと考 えた。 以下本 稿で前論文・前調査と称するのは、 文献1 )及びその際行なっ た調査を意味する。 前調査の時期は昭和4 年6月 小学校は教 6 であり、 育課程が改定実施されて2月 あまりで、 4年生 は資料の整理を通して始めて集合の考えによる分類の表現を経験し、 5年生と6年生はそれぞれ図. 形の集合と数領域との内容を通 して概念間の上位下位の関係を学習した段階であっ て 筋道を立て 、 て考えていく 能力・態度の積極的な学習は僅かに緒についたばかりであっ たし、 中学校は教育課程 改定の前年で移行措置の期間であり、 1・2年生は集合について部分集合、 交わり、 結び等の簡単. な事項を、 3年生は命題について仮定と結論の意味を学習した段階 であった。 そ の 後 今 回の 調 査 に 至る 3年近く の期間、 中学校の移行措置をも含めて新教育課程 に従った指導 が行なわれたわけであるが、.論理の領域についてその内容を見ると、 まず小学校では学習指導要領 の中で 「数量的な観点から、 適切な見通 しをもち、 筋道を立てて考える」 として目標が示され、 論. 理の形式的な扱いはないにしても、 概念形成や概念間の関係把握の過程の経験とその典型的な手法 の理解に力を注いで、 「筋道を立てて考える」 ための具体的方法の指導に着手している。 これを旧 学習指導要領の 「児童の表現や筋道の通った考え方を、 たえず生かすようにし、 児童が自信をもっ て、 ま た、 つ ね に 創意を は た ら か しな が ら学 習 す る こと ができ る よう に 指 導 をく ふ う す る こと が 、. 必要である」 (指導計画作成およ び学習指導の方針)・ としながらも、 その方法において貧 しかっ た のに比べれば論理的思考指 導の内容が充実したといえるであろう。 中学校の論理の内容は、 旧教育 課程 の場合、 一般的目標としては旧学習指導要領に 「確かな根拠から筋道を立てて考えていく能力 や態度を養う」 という形で示されているが、 多少とも形式化された論理としては対象を図形に限っ てする論証の分野に見られるのみ であっ て、 その他の内容については生徒が無意識のうちに感覚的 な論理を運用するのに任されている場合が多かっ たと思われる。 これに対し新教育課程 では その 、 43.
(3) . 佐々木幸÷・西田勉; 論理的思考能力における新教育課程の効果. 目標に明確に 「事象の考察に際して、 適切な見通しをもち、 論理的に思考する能力を伸ばす」 (学 習指導要領) と述べるとともに、 集合・論理の領 域を設け、 一般の対象についてのある程度形式化 された論理の手 法とその表現手段を与えるのであって、 新旧 両課程における論理についての内容水 準 の 差 は 中 学 校 に おい て か な り著 しく、 そ れは 深 さ と 一般 性の 両 面 にわ た る も の と い える。. 前調査と今回の調査に対する児童生徒の条件にこのような差がある以上、 当然結果にも差が現わ れることが期待される が、 一面からすれば調査問題のう ち新教育課程によって直接扱かわれること に な っ た項 目 は僅 か であ る た め、 残 り の部 分 に つ い て は学 習 の転 移 の 問題 が関 わ る わ け であ る。 論. 理の教育内容が事象の考察に役立つ÷般的な方法を与えているならばその転移 は大きいだろうし、 既存の内容と並列する数学の一項目として機能しているならばこれに反するであろう。 以上の諸点か ら著者等は両調査の 結果の比較に多大の関心をもったのである。. 2 , 研究の方法 上述の趣旨によって本研究においては前調査と同一の調査問題を同一の学年の児童生徒に対して. ,たい。 試 み るこ と に した。 従 っ て 以 下で 調 査 問題 と 称す るもの の 内容については前 論 文を 参 照 せ られ 研 究 の ね らい に 対 す る調 査 問題 の妥 当 性に つ いては 前 論文 に も触 れ た よう に 疑 問 の 残 ると こ ろ で あ. るが、 比較という目的のた めに今回の調査では問題の修正を行なわなかっ た。 対象は北海道教育大 3 L (括弧 1 15年 鯨} 学附属旭川小学校4年” 、 3年侶 、 同附属中学校i 年 (133)、2年 鰹} 、6年賦} 9年3月である。 調査を2回に分けて実施 し、 時間 内は 人数)、 計504名であり、 実施時期は昭和4 している。 とも 4 5 分以内で終了 たが 各回各学年 の制限を設けなかっ 、 本研究の主たるねらいである前回 と今回の調査結果の比 較のためには、 学年度内に おける両調査 時期の相違が問題となる。 例えば今回3月 に調査を行なっ た小学校の4年生は、 前回6月に調査を 行なっ た4年生に比べ学習期間において9か月 長く、 同 じく前回の5年生に 比べて3か月不足する。 このため調査時間のずれによる影響をできる限り小さくする目的で、 新旧調査結果間の比較を4年 生と5年生との間で行なうのがより適切であると判断 し、 他の学年について も同様の取り扱いをす ることにした。 この結果今回の対象学年が学習期間において3か月 の不利を被ることになるわけで このことも念頭に置 かなければならないであろう。 以後両調査における学年を示すのに、 新小4、 旧 中1 等 の 略称 を 用 い る こ とに する。. 以上のように 定めた対応学年間の比較の外に、 本研究では両回の調査結果における学年進行に伴 う全体的な発達傾向についても比較をし、 また前回設定した論理の各領域のう ち今回の調査で変化. を示したもの若干についても考察を加えた。. 3 , 調査の結果 と考察 3・1. 全 般 的 傾向 につ い て. 各小間ごとの正答率及び関連する数個の小間に対する共通の正答率を百分率で表わ したのが第1 表 である。 ここで正答は完全正答を意味し、 また比較のため括弧内に前調査の結果を再録した。 な お前論文における同様の表中、 中3小間⑰⑬に数値の誤記があったので、 ここで併せて第1表のよ うに訂正する。 第1園は小間全部を前回と同 じ順序に配列 し、 6個学年の代表として小4、 小6、 中2を取り上げその正答状況を示したものである。 ⑪⑫⑬⑯の各間が特異な上昇を示 していること を除けば概ね 右 下がりの傾向を示 していて、 前回の調査の結果と一致 しているも また図を省略 した. 他 の 3 つ の学 年 につ い て は、 一 般 に 小5 が小 4 に、 中 1 が 小6 に、 中3 が中 2 にそ れ ぞれ 接近 して い て、 総体 的に は 6 個 学 年が 3 個の グル ー プ に 分か れ る こ とが 認め られ る が、 無 論 グル ー プ 内の 細 44.
(4) . 佐々木幸一・西田勉: 論理的思考能力における新教育課程の効果. 第]表 小間別 正答率 (%) ①. 小 間. ②. 1 1 ”. 問 学. 人. 年. ・ 数. ⑯ ⑰. 4. 7 1. 5. 小 6. 鰻. 1 盈 ). 1. ( 9 4 ). 中 十総 2. 鯛. 中 十総. 似. ⑨. 8. 品 娠. 3 4 ( 2 6 ). ( 8 2 ). 稀 僻. 鵜. @. 佃. (毘 5 7. 9 7. ( 7 6 )( 3 2 ). ( 4 )( 7 2 6 ). 為. 2 1 ( ). 2 4 ( 2 7 ). 8 1. ( 9 4 )( 8 1 ). % 偶. 2 5 筋. 総. 6 5. ( 8 9 )( 7 0 ). ㈱. 0 7 ( 5 ) 7. ( 3 2 ). 総. ◎. 獅. 4 9 )( 4 2 ) ㈲(. 6 7. 9 3 ( )( 6 4 ). ゐ. ぁ (. 7 9 8. l o. 2 6 1 ( 8 ). ( 5 3 )( 5 2 ) ( 1 1 )( ID ( 6 4 ). 雅. 6 8 1 7. 墨 旨 1{ ( ) ,. 6 5. 7 4. 辱 ( }. 3 ( 8 )( 3 6 ). ㈲. 綿. ( 0 1 ) ( 8 5 ). ㈱. 9 2 3 6. 1 8. 9 1. 9 0. 霧 す 1 る ( ) ( す る (. ( 4 2 3 9 ) )( ( 2 8 )( 9 1 )( 9 2 ). 鰯. 綿 ◎. 1 〔 ね 1加 和. 9 4. ( 2 6 )( 9 4 ). 誉 ( }. 誓 ( ). ㈲ …. 1 3. 9 8. 9 2. u. 鵜. ㈲. 嬢. 品 6. 7 4. , 欄. 9 5 ( )( 5 5 )( 7 4 ). 3 矧. 達 ) 9 2. 2 7 ( 7 2 ). 8 8 4. ( 9 7 )( 8 )( 5 8 9 ) ‘ 7 ). 0 醍 ( ) 9 8. 9 2. 旨 { ) 8 6. ( 7 ) r 税 3 ). 0 1 2 0. 8 6. ( 9 7 )( 9 0 8 )( 6 )( 1 5 ). ( 沿 9 1 3. 9 ( 1 5 ) 9 2. 龍 ( ) 9 1. 3 0 (7) 9 7. o ( l )( 9 ) 6. 3 1. Q節) ( 9 2 )( 9 7 ) { } 7. 盗 も1 誉 ( ) loo. 8 3 3 ( )( ) 7. 6 3. (器. f T ( ) 縄. ◎ 解. 蕎. 騒 1温 ( ). 8 1. 7 7. 1 2. % 5 3 蝿 1 7. 1 7 9 7 4 ( 4 3 2 ) { } 9 4. 3. 壕 (. 稀 (砧) 9 6. 7 7. 3. 1 1. ⑯ ⑪ ⑯ ⑰. 5 1 ( 2 9 ). 字 昌 ( ) 2 6. 鰯. 8 ( }. 這 ). 鰯. ( 6 7 ). ふ も品. 58. ( 5 6 ) ( 6 0 ). H. 駈. 8 2. 9 1. 4 3. 0 5. 2 5. 髭 ( ) 9 5. 6 6. 3 2. ぶ る. 船. ㈲. ㈱. 6 9. 総. 後. 8 { ). 4 6. ( 7 3 )( 3 3 ). 8. 6. 2 4. ( 5 9 )( 3 2 ). 8 7. 鱒 ( ). 3. 8 1. ( 5 5 )( 1 5 ). 3 1 3. 7. l o. ⑯ ⑰. ( 2 1 ). 必 7 1. 1 8. 6 1. 伽. ( 6 4 ) ( 8 2 )( 4 3 ). ◎. 3 ( 7 ). 4 1. 0 9. 郷. 4 7. 稀 中. 6. 3 1. 5 1. ( 1 }. 6 8. ( 7 3 ). 5. ⑯ ⑪. 7 8. ( 7 2 ). ( 7 8 ). 9. 3. 1 4. 曽 { 小. 2. 4. 前. 4 2 小. ③ ④ ⑤1⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑪ ⑪1⑰ ⑮i⑭ ⑮1⑯ ⑰!⑪ ⑭ ⑭. 3 4. 8 9. ( 0 2 )( 9 9 ). 0 3 4 6. 9 0. ( 9 9 )( 0 )( 9 8 9 4 )( 1 ). 曇 ら ( ). 総. 9 9 ) ( 3 0 )(. 45.
(5) . 佐々木幸一・西田勉:論理的思考能力における新教育課程の効果. 部を見れば正答率間の隔たりの大きいものや、 時には逆転現象を呈している部分などが認められる。 例 え ば小 4、 小 5の グル ー プ で は ⑥に おい て や や大 き な 逆 転 があ る 外は 概 して小 5 が優り、 小 6、. 中1の グループでは、 ⑪⑫⑬⑭の逆転を除けば高正答 率の小間で両学年がほぼ一致 し、 低正答率の 小間で中1 が優るのが認め られる。 中2、 中 第1図 小間別正答率 3 の グループでは中3が特に低正答率の小間 に お い て 優 位 を 保 ち つ つ 全体 と し て同 じ傾向. %. 1聞. 一 一 小4. 、. を 示 し且 つ 逆 転は 認 め ら れな い。 3 グ ルー プ. 、. 相 互 間に 殆 ど逆 転が 認 め られな い こ とと、 後. ー ー - - - - - -小6. ・ / 、 、. 出の第2表に 見られる平均得点における グル ープ間の明らかな差とから、 前論文における. 転. 一応の結論にかかわらず、 今回の調査からは 小4~中3が2個学 年ずつの3つの異なっ た 水 準の グル ー プ によ っ て 構 成 さ れる と 考え る. 、 ,⑩ ⑦ ⑥ ② @ ◎ ⑩ @ o④① ◎ ⑭@ @@ ③@ ◎ ⑩ I. の が妥当 で あ ろう。 こ の こと に よ っ て以 下 で. は 主と して 各 グル ー プ を 代 表 す る と みな さ れ. 第2 図. る小 4、 小 6、 中2 に つ い て論 ず るこ と に す. る。 ただ高学年グルー プが上のように安定性 を もつの に 対 して 低 . 中 学 年 グル ー プ はこ れ. に反 し、 特 に 前論 文 で 述 べ たこ と に も符 合 す. %. 得. 点. 分. 布 ト4 --′. 、 ‘ 、 ′ ′、 、 、. ▼. ””- - - ‐ 6 ′ 1 ・ ▲ 一 一中Z. ′・. 3 0. る の であ る が、 小 6 が 問 題 に よ っ て 時 に は 高. 学年グルー プに、 時には低学年グループに接 近し最も不安定であることに注意する必要が. 2 0. あ る。. \. ノ. 前回と同様各小間の完全正答にそれぞれ1 点を配して、 各 (代表) 学年の児童生徒の得 点状況と平均 (m)、 標準偏差のを第2図及. び第2表に示 した。 第2図によれば明らかに 度数多角 形における山が学年進行とともに右. . . . . . . 中],. 中2. 中3. 13 5 .7 0 3 .7. 14 1 .8 2 6 .1. 第2表 平均得点の比較. \ 旧. m. 新 び O. 人 数. 中3 中2 中I 小6 小5 小4. 4 6. 11 1 .8 ロ.総 10 ,03 9 ,73. 7 .63 7 .13. 小4. 小5. 小6. 8 .58 2 .卯. 8 .器 2 .26. 10 .56 2 ,科. 71. 68. 61. ]i .船 2 ,閑 1お. 米米. 郡. 83. 米米. 米米. 米米. 米米. 2 .70 2 .鱒. 84. 米米. 米米. 90. 米米. 米米. 94. 米米. 米米. 米. 米米. 米米. 2 ,58 3 ,偏. 73. 米. 米米. 米米. 米米. 米米. 米米. 米米. 3 .鱒. 2 .47. 78 72. 米米. 米米. 米米. 米米. 米米. 米米. 米米. 米米. .
(6) . 佐々木幸一・西田勉: 論理 的思考能力における新教育課程の効果. 方へ移動することが認められ、 総体的に論理的判断能力は学年進行に伴っ て伸長すると考えてよい。 な お中 2は1 4点 付 近 で複 モー ド型へ の転 化傾 向 を 示 してい る が、 この 現 象 は中3 に お い て いよ い よ. 明らかとなり1 2点、 1 6点を山、 1 4点を谷とする複モー ド型となる。 中3におけるこの特徴は、 前調 査においても見られたものであるが、 この学年段階で自然に論理的判断能力が上位下位の2群に分 かれる とは考 え難 い。 しか し、 そ の 原因に つ い ては 不 明 である。. 3・2 昭和4 6年の調査結果との比較. 2 .で 述べ た理 由 により、 ここ で は 今回 の 調 査 に お ける 学 年を そ れ ぞれ 1 年 ず ら した もの を 対応 さ. せて比較する。 前掲の第2表では更に前調査における学年平均及び標準偏差をも再録して 今回の 、 調査による平均との間の差の検討を行なっ た。 表中米米及び米はその左欄の学年間にそれぞれ有意. 水準1彬及び5%の有意差が認め られることを 示す。 これによっ て見れば 上記の学年対応では僅 、 かに 新 中 2~ 旧中 3 に今 次調査 優 位の 有 意差 があ るの みで、 そ の 他 では 新小 5~ 旧小 6に お け る旧. 調査優位の例をも含めて、 今回の結果が優れているといえる場合はない。 一歩譲っ て新旧同学年の 間で比較をするならば、 小4及び中学校で今回の結果に向上が認められるが、 小5、 小6 では やは り有意の差が認められない。 これらの結果は、 新旧両調査の間に教育課程の改定があっ て論理的思 考の指導に強化があっ たことに基づく著者等の期待に反する事実を示すものであるとともに 一面 、 で新内容により獲得された論理能力の転移 に関する疑いが杷憂 でなかっ たことを明らかにしたもの と受け取らざるを得ない。 また、 以下で述べるように、 向上と見られる若干の結果もその内容につ. いて分析すれば必ずしも満足できるものではないことが判明する。 第3図、 第4図、 第5図は新旧 対応学年間の得点分布を比 較するものであり、 なおこれらと逆の傾向を示す新小5~旧小6の分布 をも第6図として付加した。 第3図 ・得点分布の比較. ′ ▼ ′ ′ ′ ′ ▼ ′ ′ ▼ ′. 新小4 - 旧小5. 第4 図. 得 点分 布の 比 較. 一一ーー折小4 ー ー - “ - - - ‐ 日小5 1. 新 小6 - 旧中1. 一”- ‐ ‐ ・旧中1 ′ ▼ ′ ▲ ′ ′ ▼ 1 ′ ′ ′ ・ ▼ ′ . ′ ′ 1 ′ ′ . ′ ・ ′. 次に両調査の結果に認められる対応学年の平均得点間の差が主として論理のどの領域から生ずる ものであるかを検討してみたい。 これに先立っ てその前提条件となる筈の、 両調査時点における児 童生徒の論理的思考に関連する既習事項を列挙すれば、 第3表のようになる。 こ れらの事項の中で 調査問題と比較的近い関係にあるものはまず集合に関するもの であろう。 即ち前調査の時点で小学 校の対象学年では第3表の項目が集合の用語・記 号を含めて始めて指導され 漸くそれらに馴染み 、 始めた段階にあり、 中学校でも集合に関する事項については移行措置と して形式的に取り扱われた 47.
(7) . 佐々木幸一・西田勉:論理的思考能力における新教育課程の効果. に過 ぎないのに対して、 今回の調査時点では小・中学校とも集合の考えを用いて資料を分類 したり、 数領域や図形を対象として概念の形成をはかったり、 概念相 互の関係を集合の包摂関係との関連に 第5図 得点分布の比較. 第3表 新小 4. 新中2 一 旧 中3. ・集合の考え (用語、 記号を含む) を用いて する資料の分類整理 ・ベン図の使用. 公約 数、 公倍数への適用 ・剰余によって整数を分類すること。. 新 小 ・数集合の 包摂関係 6. ・図形の集合の内包的及び外延的規定. 新 語・記号、 集合の表現方 中1 ・集合についての用. 法. ・演算の概念の一般化と集合の代数的構造、 剰余系の演算 新 ・命題の意味とその真偽、 仮定と結論、 条件. 中2. 文. ・逆命題の意味と構成*、 逆命題の真偽*、 論証の方法* (* は主として図形について行なう。). 48. 得 点分 布 の 比 較. 新小 5- 旧 小6. 論理に関連する既習事項. 新 ・ベン図による図形の特殊一般の関係の表現 小 ・集合の交わり、 結びの考えとその表現及 び 5. 第6 図. 旧小 5. ・集合の考えによる三角形・四角形の特殊一 般 の関係の取り扱い. 旧 ・数集合の包摂関係 小 6. 中. ・集合の交わり、 結び、 部分集合の意味と表 (移行措置による) 現. 1 日. ‘ 集合の交わり、 結び、 部分集合の意味と表. 旧. I. 中. 現. (移行措置による). 2. 旧. 中 3. ・図形の 研究方法としての論証とその中での 仮定と結論の意味.
(8) . 佐々木幸一・西田勉:論理的思考能力における新教育課程の効果 おい て 考 察 した り す る 等、 集 合に つ いて の 経 験は 格段 に豊 かに な っ ている。 た だ集 合 の 外 延 的 及 び. 内包的規定のしかたを基礎的且つ一般的な形で学ぶことは不十分と見られるので、 そのことを主題 と する 問1 にこ れ らの 経験 が どのよ う に 結 果す る かは 注 目さ れる とこ ろ であ っ た 次 に 指 摘さ れ る 。 の は数 集 合 にお け る 新 しい 演 算 につい て の も の であ っ て、 こ の 内 容 は 中学 校2 年 で 正 面 か ら取り 上. げられることになり、 今回の調査対象としての新中2はこの領域では決定的に有利な立場に立つわ けで、 その効果は問9の結果に強く現われることが当然期待さ れた。 命題に関する事項も新 たに強 化 さ れる よ うに な っ たも の の 1 つ で あ る。 即 ち前調 査 時点での 仮 定 ・ 結論 の 意 味 に加 え て 今 回 の 、. 調査時点では命題とその逆の真偽について、 対象を図形に限 らずに豊かな具体例を通して学習して いる の で、 こ の 効 果 が間 6 と 間 7 に、 少 なく と も 間 6 に. 第4表 小間別正答率の差. は現われるものと考えられた。 以上のような前提条件と予想のもとに第I 表の結 果 が 得 られ た の で ある が、 第1 表の 資 料 に よ っ て 対応 学年の. 正答率を検討 し、 今回の結 果が有意に優れている部分を. 抽 出 した の が 第4 表 である。 表 中の米 米 及 び 米 は、 左欄. の 学 年間 で 上欄 の 間に それ ぞ れ有 意 水 準1 %及 び 5% に. 妬 有 識 が 桃 ことを示す。 また第7図、 第8図、 第. 9 図はそれぞれ対応学年の小 間別正答率の比較を図上で. 行なったもので 鵜 o. こ れ ら の結 果か ら認 め られ るこ と の第 一は、 著 者等 の. 予想に反して両調査の 酵 多少とも有意な向 加 見 帥. る領域が小間数に して略半数と少な いこと、 次いでそ の. 、問 ① 」 ′ ・問 1② ① ⑥ ⑥ ⑱ ⑪1⑩1⑱! 1⑪ ⑰巨 ⑰1⑩ 間. 未習 の 差か ら説 明 でき る部 分 も あ っ て、 そ の 中 で最 も 明. 第7図 小間別正答率の比較 新小4-旧小5. 一一一新小4 ”- - “ → -旧小5. 4. 9. 1 1. 司「 言 司 后. 上 ↓ー 郷 ↓ ←↓ ー ↓〆 十 蜘↓ ↓ 副ヒ 上 ↓ 十字 1 榊 ↓ 中↓ 蜘↓ 上 十 上 ↓ +ゴビ 洲 キー -醐上 ト 新 卸小 ト4. 帥ト 6. 非. 新小5. 新 小6 榔 L 中1‐ 旧 蜘. 持. 捧 井. 井井. ÷」 L三. ※”. .. 非非 1 ※共. 新中1 旧中2. 向上 が甚 だ しく 問9 に集 中 してい る こ と である。 こ れ ら ・. の向上を示した領域に 郷 ては・ 前提条件における既習. 1 I. 3 8 ◎ ・学年 学年 ◎ ◎⑪ O ◎⑱ ⑱ ◎⑭ ◎⑱ ⑱ の ◎⑭ ◎. 新中2 旧中3. 井希r メ※. 井誉. 非 井井. 第8図 小糟朋- i正答率の比較 新小6‐旧中1. 一一--祈小6 ”“-” - -旧中1. らか な のは 間9 で あ る。 間9 は 2数 の max 及び min をとることを新たな演算記号で表わして その 、 理解と適用とを見るものであるが、 附属中学校使用の教科書を含めて新教育課程によ る殆どすべて の教科書がこれと同一の内容 を含み、 従っ て 調査の対象である 新中2・新中 3 の 生 徒 にと っ てこ れ らの間は簡単な学力テストの意味 しかもたなかったわけで、 本間において新中2が全面的に旧中3. に優るのは極めて当 然であるといえる。 ただ本間については他の対応学年間でも同様の傾向が見ら 49.
(9) . . . 佐々木幸一・西田勉 :論理的思考能力における新教育課程の効果. れ、 新小6~旧中1間では特に向上が著しいが、 これを新中2のように直接の 学習効果と認めるこ とは困難で、 小学校の新教育課程実施以来数の集合における代数的構造を次第に 重視するようにな っ た こ と の 現わ れと 見る の が 妥当 か と 考 え られ る が、 そ の確 認は 得 られて いな い。 第10図は 問 9の. 小間正答率の学 年に対する変化を示すもので、 これを前論文の第4図と比べると中学校2年に. 第9図 小間別正答率の比 較 新中2 - 旧中 3. お け る学 習 効果 が 明 らか に 認 め られる が、 ま た .議 「 前 回 で 認 め ら れた 原 因 不 明 の 逆 転の 兆 が 中1 に. ”. 、 \ ・ 、 、. 現 わ れ てい る よ う に も 思 わ れる。 な お 小間 ⑭ は. 他の小間に比べて両回とも際立っ て正答率が低 い が、 一 方 新 中 2、 新 中 3 は前 回 に 比べ ては 大. - - 析中2. ”州--旧中3. 5 0. 幅な上昇を示していて、 その原因は⑯の内容が 演算のみでなく方程式・ 不等式の解集合の概念 に 関 連 し、 こ の 点 に つ い て の 学 習 成 果が 有 効 に. 働 い た こ と に ある と 思 わ れる。. ⑩⑰ ③ ⑩ ⑨ ⑮ ⑮ ④ ① ⑥ ⑩ @ ⑩ ⑦ ⑨ ② ⑩ ⑨ ⑭ ⑭. 他の領域における向 上はすべて小規模で僅少. で あ る が、 間” に おける 新 中 2の 優 位 は や や 注 目さ れ. 問9 の 正答 率. 第10図. ぎ 禦 善一 滋養闘曇. /. を 示 さ な か っ た問 題の う ち、 間 2、 問 3、 問5、 問 6、. 1図 第1. 2 3は推論及び思考形式の領域に 問7、 問8、 問1 、 問1 位 置 づけ られ た も の であ る が、 間 2、 間 8、 間13は 概 して 高 い 正答 率 を も つ も の で、 学年に 応 じ て一 応の 飽. . o o. 生 誓 軍隊辱 書“ 蓬 ぞ 麦鱈蟹 家 屋 守 暮 琴 電饗髪髪 れも 現 行 教 育 課程 の 中 に は 含 まれ ず、 新 教 育課 程 によ. る論理的思考に関する内容の強化は、 此の種の能力に は全く転移 しなかっ たと考えられる。 問3は2つの命題の真偽からその離接の真偽を判断 す る も の で、 前 論 文 で は、 日 常こ の 形 式 の 論 述 が用 い. ら れ る 場合屡 々 排他 的 離 接 と し て受 け 取 られ 易 い の に 50. 0. 問3の正しい選択の比較 一紳-. 和に達 したものとみなすことができるとすれば、 残る 5 間のうち間3、 問5、 問6、 問7は命題に関する論. \⑭. -静. 5 ‘ ’. ◎ 貸 ;. 参 ′. ルM 1 ルM. 折. 小5 小6. 小6 中1. ね 中2. ・ ● r 中3 中2 中3.
(10) . 佐々木幸一・西田勉:論理的思考力における新教育課程の効果 対 し、 こ の 間の・よ・う に 明確 に 条 件 が 示 さ れる な ら ば一 方の み が真 であ る 場 合に つい て 離 接 を真 と 認 める こ と の方 が む しろ 困 難 であ ること が認 め られ た の で あ る が 今 回 の 調 査 の 結果 で も 再びこ の こ 、 と が確 か め ら れた。 な お第11図に 見 られる よ う に 前 回 に 比 して こ の 種の 正 しい選 択 が 低 下 し てい る が、 そ の 原因 に つ い ては推 定 し得 な か っ た。 第11図に お ける(1 ) (2 X3 )は 問3 の正しい選択肢の番号で. ある。. 以上で述べた諸点以外の論理の各領域については、 その特徴が前回のそれと略同様であるかまた. は 安 定 した傾向 が認 め られな いも の である の で、 こ こ には 取 り 上 げな い 。 4. 結. 語. 小 ・ 中 学 校 にお い て、 筋 道 を 立てて 考 え る、 ま たは 論 理的 に 思 考 する と いう こと は 新 しい 教 育 、. 課 程 の中 で ・特に 強 調 さ れ るよ う にな っ た ね らい の 1 つ である が、 そ の 目 標 と す る 行動 は 必 ず し も明. らかでない。 これらの学校段階では確かに集合の考えを通して概念を形成したり概念間の関係を取 り扱っ たり、 また命題論理の内容を理解して推論の形式を学習 したりするが それらは論理的な思 、 考力を必要な場面に役立て得るための基礎的且つ典 型的な手法を与えているに過ぎず その自在な 、 運用との間にはかなりの隔たりがある。 論理的な思考力を伸ばす指導の目的が数学における論証能 力を 高 め るこ と のみ に ある の でな い こ と は、 学 習 指導 要領 の 目標 にお い て 小 学 校 で 「数 量 的 な 観 、. 点から」 という限定はあるにせよ、 小・中両学校段階とも 「事象の考察に際 して」 と一般的な場面 を 想 定 している こ と に よ っ ても 明らか で あ る と い えよ う し ま た一 般 的な 意味 での 論 理 的思 考力 を 、. 伸ばすことが各教科に共通な仕事であるとしても、 算数数学科がその大きな部分を分担しなければ な らない と す る こ と はや は り 無 理の な い 考 えであ ろ う。. 本研究の調査問題はそのすべてが 「事象の考察に際 して」 自然に生ずるも のではない 間7や問 。 1 1のように一定の意図をもって不自然な条件を設定したものもある。 また問5は場面としては自然 であろうが、 限量命題の否定を作るもので、 これを若干複雑にすると大学の学生でも戸惑うことが あ る も の である。 一方 間6 の形 式 な どは 日 常 生活 で も起 こ り やす いもの で こ れに 対す る判 断 が 高 、. 校の段階で命題の合成等の内容を組織的に学んだ後でなければなされないというもの ではなく む 、 しろこれ らの 判 断 が で き、 そ の 経験 の 上 に立 っ て命 題 論 理を 形 式化 して い く と い う過 程 を と る の が. 自然であろう。 また問1のような問題は、 要素の属性に着目して分類するという操作を通 して 概念 形成の方法の基礎作りをするという意味で、 外国の教科書では小学校低学年からよく扱われるので. あるが、 我が国ではあまり見られないものであるためか正答が比較的低率で 論理指導上の手落ち 、 が感ぜられる。 既に述べたように調査問題自体不確かな根拠の上に立つ部分があっ て これらの問 、 題に正答できることが小・中学校の論理的思考力についての目標行動の一部をなすとは言い切れな い が、 得 られ た 資 料 から 認め られ た こ と を 次の よ う にまと め る こと がで き る 。. ( 1 ) 論理的思考能力は小4と小5、 小6と中1、 中2と中3の3つの階層をなし グループ間では 、 明らか に 進 歩 が 見 ら れる が、 グ ル ー プ内 に学年 に よ る差 は な い 。. 2 ( ) 新教育課程による、 論理的思考に関する内容と指導の強化の効果は 本調査の内容への転移に 、 関する限り殆んど認められない。 前調査に比べて総合得点に上昇のある場合も それは新課程で 、 直接扱われるようになっ た一般的演算 に関する事項が調査問題に含まれていたためであって 得 、 点 の上 昇 は見 掛 け 上 の も の に 過 ぎな い。. 教育課程改定に伴っ て著者等が期待した論理の感覚の伸長と論理的な判断力の一般化を示す調査 結果 は 得 られなか っ た。 つま り 学 習 した こと だけ し かで きるよ うに な らな か っ た と いう こと で も 、. しこの結論が正しいとするならば、 論理的思考の 指導目標と現実に獲得された力との間の大きな距 51.
(11) . 佐々木幸一・西田勉: 論理的思考力における新教育課程の効果. 灘を我々は認識しなければならない。 も しこの結果が調査問題の妥当性欠如によるものであるとし て、 結論を修正する 資料が示されるならば著者等にとっても大へん喜ばしいこと である。. 参. 考. 文. 献. 1) 佐々木幸一・西田勉・谷口孝・平井敏夫: 児童生徒における論理的思考能力の発達について 北海道教 , 育大学紀要 (第1部C), 22 Q2 ,N , 238一253 (1972) (本学教授・旭川分校, 本学附属旭川中学校教諭). 52.
(12)
関連したドキュメント
英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき
小学校学習指導要領総則第1の3において、「学校における体育・健康に関する指導は、児
各テーマ領域ではすべての変数につきできるだけ連続変量に表現してある。そのため
前掲 11‑1 表に候補者への言及行数の全言及行数に対する割合 ( 1 0 0 分 率)が掲載されている。
LUNA 上に図、表、数式などを含んだ問題と回答を LUNA の画面上に同一で表示する機能の必要性 などについての意見があった。そのため、 LUNA
3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7
具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.
具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.