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児童と小学校教師の「造形遊び」についての認識のズレ

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(1)Title. 児童と小学校教師の「造形遊び」についての認識のズレ. Author(s). 森實, 祐里; 李, 知恩. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 71(2): 233-239. Issue Date. 2021-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11709. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第71巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 71, No.2. 令 和 3 年 2 月 February, 2021. 児童と小学校教師の「造形遊び」についての認識のズレ 森實 祐里・李 知恩* 札幌市立大倉山小学校 *. 北海道教育大学札幌校デザイン研究室. The Differences on Perception of Artistic Play between  Elementary School Students and Teachers MORIMI Yuri and LEE Jieun* Sapporo Okurayama Elementary School *. Department of Art Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 「造形遊び」は昭和52年の学習指導要領に導入され,40年が経過しているが,阿部宏行(2017) によると「造形遊び」の実施率は他の題材に比べて10〜45%を下回るほど低い。教育現場にお いて教師は「造形遊び」の指導や評価にあたり「児童の主体的な活動を大切にする」について の理解に苦しみ,積極的に取り組めない状況であると考えられた。その一方,児童は「造形遊 び」を通して材料や場所,行為などの学びの中,困る様子もなく資質や能力を発揮し,意欲的 に活動する。本研究では児童の実態に即した「造形遊び」の実施のために, 「造形遊び」につ いて児童と教師の認識のズレがあるかに着目し,教師と児童を対象にした「造形遊び」におけ る認識調査を実施し,その母体間のズレを調べた。対象は小学校3年生52名(男児22名,女児 30名)と小学校教師122名(男性52名,女性70名)とし,「造形遊び」に関する34の質問を用意 し,5段階評定を行った。その結果,両者間に認識のズレが見られ,教師より児童の方が造形 遊びで身に付く力を明確に理解し, 「造形遊び」を通して友達との交流を強く認識し,コミュ ニケーションを活発に行い,自分の存在価値を見出していることが明らかになった。. Ⅰ はじめに 昭和52年の学習指導要領に造形遊びは「造形的. 実施学年も中学年までに拡大され,平成11年度に は高学年まで造形遊びが導入され,全学年で造形 遊びの学習を行うことになった。. あそび」として導入されてから40年が経過した。. 著者も20年前に初めて造形遊びを指導するよう. 最初は低学年に位置付けられた造形遊びは平成元. になったが,当時は過半数の同僚がその名称や存. 年発表の教育課程から「造形遊び」と改称され,. 在すらも知らない状況だったと言える。その理由. 233.

(3) 森實 祐里・李 知恩. と考えられるのは,従来絵や工作の指導をしてき. に行い,回答不備の者を除き,最終的な有効回答. た教師にとって造形遊びの理論や内容についての. 数は52名(男児22名,女児30名)であった。. 文部省の説明が分かりにくく,共通理解が得られ. 小学校教師は2020年3月に,札幌市内の小学校. なかったことと考えられる。それから20年間が過. 教師130名を対象に調査を行い,回答不備の者を. ぎた現在,造形遊びに対する理解が広まっている. 除き,最終的な有効回答数は122名(男性52名,. のだろうか。教師は造形遊びを積極的に行ってい. 女性70名)であった。. るのだろうか。 一方,造形遊びを指導してきた立場からは児童. 2.3 調査方法. が造形遊びに接する際に絵や工作などの他の領域. 教師と児童の間に認識のズレがあるか調べるた. に比べて「苦手」 「下手だからやりたくない」な. めに,「造形遊び」についての特徴を捉える質問. どの言葉を発することなく,意欲的に取り組んで. 項目を小学校学習指導要領(図画工作編)のもと. いると感じている。つまり,児童は造形遊びにつ. に作成し,6年生による検証を行う予備調査(2019. いて作品の出来栄えではなく,自分自身の行為・. 年10月)を行なった。そこで造形遊びに関する34. 活動が大事であることを明確に理解して活動して. の質問を抽出し,各項目の回答は「5=強くそう. いるように見える。児童は造形遊びを通してクラ. 思う」 「4=そう思う」 「3=どちらでもない」 「2=. スメートとコミュニケーションを増やし,お互い. そう思わない」「1=強くそう思わない」の5段. のよさを認め合い,時にはその学びが児童自分の. 階で評定を行った。. 「存在価値」に気付くことにつながっているので はと感じた。 そこで,本研究では文科省の指導要領や小学校 6年生への意識調査をもとに造形遊びについての. 34項目の質問項目は,4つの項目で構成された 8つのカテゴリーに用意し,その他に①もっと活 動を続けたかった②どんどんやりたいことが増え ていったという2つの質問を用意した。. 質問を用意し,造形遊びの授業を終えた直後の児 童と札幌市内の小学校教師を対象に「造形遊び」 について認識調査を行った。その母体間の認識の. 表1.8つのカテゴリー(32項目の質問) 分 類. ズレを明らかにすることにより,造形遊びについ ての理解を深めるとともに,児童の実態に即した 「造形遊び」の運用を期待するものである。. Ⅱ 調 査 2.1 調査目的 本調査では,仮説1「造形遊び」について教師 と児童の間に認識のズレがある。仮説2「造形遊 び」について教師より児童が学びの広がりを理解 しているという2つの仮説を立て,児童と小学校 教師間の認識のズレを明らかにすることを目指す。 2.2 調査参加者 小学校3年生(以下,児童とする)は2019年11 月に,札幌市立大倉山小学校の在学生63名を対象. 234. 交流. 質問内容 新しい友達ができた。 どんどん仲間が増えていった。 友達とたくさん相談した。 活動後に友達と交流が増えた。. 自分の活動に満足できた。 自分の活動のよさを知った。 自己肯定 自分の見方や学びに自信がもてた。 友達に自分の活動を認められたと感じた。 友達の新しい面を知ることができた。 友達のやり方を認めることができた。 友達の見方や感じ方,学びのよさに気付 他者理解 いた。 たくさんの友達のよい面を知ることがで きた。 自分のやりたいことを追求できた。 満足できるような材料や道具などの使い 表現追求 方ができるようになった。 友達の真似をして自分の活動に活かした。 形や色などの新しい活かし方ができた。.

(4) 児童と小学校教師の「造形遊び」についての認識のズレ. 造形的 な見方. 造形的 な学び. 材料や道具などの新しい使い方を思い付 いた。 やりたいことなど,いろいろと思い付い た。 面白さの発見や美しさに気付いた。 形や色などの面白さや不思議さを感じた。. 童両者に「もっと活動を続けたかった」がもっと. 形や色などについて,新しく学んだこと があった。 自分の中で新しい発見があった。 活動場所によっていままで思えなかった 作品を思い付いた。 材料や道具のよさや活かし方を知った。. 行った結果,灰色の色を付けた以下の12項目に有. 活動. 1人でも満足できる活動だった。 何人でも満足できる活動だった。 自分が活動しやすい場所が取れた。 活動する場所を自分で選ぶことができた。. 取組. 材料や道具の準備に積極的だった。 自分の活動に夢中になれた。 友達の活動を見て楽しかった。 友達と協力して活動できた。. も高い得点であった項目であり,もっとも低い得 点であった項目は「新しい友達ができた」であっ た。それぞれの質問項目の平均値に統計的有意差 があるか調べるために被験者間1要因分散分析を 意差がなかった。 自己肯定1:自分の活動に満足できた 自己肯定4:友達に自分の活動を認められたと感じた 他者理解2:友達のやり方を認めることができた 表現追求3:友達の真似をして自分の活動に活かした 見 方 1:材料や道具などの新しい使い方を思い付いた 見 方 3:面白さの発見や美しさに気付いた 学 び 1:形 や色などについて,新しく学んだことが あった 学 び 2:自分の中で新しい発見があった 学 び 4:材料や道具のよさや活かし方を知った. 2.4 調査結果. 取 組 1:材料や道具の準備に積極的だった. 34項目の質問項目それぞれの平均値と標準偏差 を求めて表2に示し,8つのカテゴリー別の平均 値と標準偏差を求めて表3に示した。 表2のように34項目の質問項目の内,教師と児. 取 組 2:自分の活動に夢中になれた そ の 他 2:どんどんやりたいことが増えていった. また,表2のように34項目の質問項目の内,薄い 灰色の色を付けた以下の4項目は有意傾向であっ. 表2.32の質問項目の児童と教師の平均値と標準偏差 質 問 分 類. 番号. 交1. 1. 交2. 3年生 項 目. 教 師. 被験者間 1要因分散分析. 平均. SD. 平均. SD. 新しい友達ができた。. 3.81. 1.18. 3.18. 0.80 (F(1.172)=14.40, p<.01). 9. どんどん仲間が増えていった。. 4.42. 1.10. 3.63. 0.80 (F(1.172)=27.87, p<.01). 交3. 17. 友達とたくさん相談した。. 4.33. 1.12. 3.75. 0.85 (F(1.172)=13.88, p<.01). 交4. 25. 活動後に友達と交流が増えた。. 3.94. 1.28. 3.46. 0.84 (F(1.172)=8.56, p<.01). 自1. 2. 自分の活動に満足できた。. 4.33. 1.10. 4.30. 0.59 (F(1.172)=0.03, ns). 自2. 10. 自分の活動のよさを知った。. 4.12. 1.15. 3.84. 0.74 (F(1.172)= 3.41, p<.10). 自3. 18. 自分の見方や学びに自信がもてた。. 4.02. 1.23. 3.66. 0.75 (F(1.172)=5.34, p<.05). 自4. 26. 友達に自分の活動を認められたと感じた。. 3.94. 1.41. 3.76. 0.70 (F(1.172)=1.25, ns). 他1. 3. 友達の新しい面を知ることができた。. 4.10. 1.13. 3.66. 0.73 (F(1.172)=9.21, p<.01). 他2. 11. 友達のやり方を認めることができた。. 4.38. 1.16. 4.19. 0.64 (F(1.172)= 1.99, ns). 他3. 19. 友達の見方や感じ方, 学びのよさに気付いた。 4.29. 1.17. 3.97. 0.73 (F(1.172)=4.74, p<.05). 他4. 27. たくさんの友達のよい面を知ることができた。 4.15. 1.29. 3.72. 0.77 (F(1.172)=7.34, p<.01). 表1. 4. 自分のやりたいことを追求できた。. 0.87. 4.20. 0.68 (F(1.172)=4.36, p<.10). 4.46. 235.

(5) 森實 祐里・李 知恩. 表2. 12. 満足できるような材料や道具などの使い方が できるようになった。. 4.23. 1.27. 3.69. 0.70 (F(1.172)=12.87, p<.01). 表3. 20. 友達の真似をして自分の活動に活かした。. 4.21. 1.12. 4.17. 0.66 (F(1.172)=0.08, ns). 表4. 28. 形や色などの新しい活かし方ができた。. 4.04. 1.30. 3.75. 0.69 (F(1.172)=3.46, p<.10). 見1. 5. 材料や道具などの新しい使い方を思い付いた。 4.06. 1.22. 3.98. 0.64 (F(1.172)=0.27, ns). 見2. 13. やりたいことなど,いろいろと思い付いた。. 4.48. 0.97. 4.16. 0.67 (F(1.172)=6.07, p<.05). 見3. 21. 面白さの発見や美しさに気付いた。. 4.12. 1.19. 3.91. 0.79 (F(1.172)=1.77, ns). 見4. 29. 形や色などの面白さや不思議さを感じた。. 4.10. 1.24. 3.79. 0.76 (F(1.172)=3.97, p<.05). 学1. 6. 形や色などについて,新しく学んだことが あった。. 3.98. 1.17. 3.79. 0.75 (F(1.172)=1.69, ns). 学2. 14. 自分の中で新しい発見があった。. 4.08. 1.19. 3.90. 0.67 (F(1.172)= 1.50, ns). 学3. 22. 活動場所によっていままで思えなかった作品 を思い付いた。. 4.19. 1.16. 3.64. 0.89 (F(1.172)=11.54, p<.01). 学4. 30. 材料や道具のよさや活かし方を知った。. 3.98. 1.39. 3.89. 0.68 (F(1.172)=0.36, ns). 活1. 7. 1人でも満足できる活動だった。. 4.06. 1.34. 3.50. 1.03 (F(1.172)=8.73, p<.01). 活2. 15. 何人でも満足できる活動だった。. 4.38. 1.16. 3.84. 0.91 (F(1.172)=10.62, p<.01). 活3. 23. 自分が活動しやすい場所が取れた。. 4.15. 1.25. 3.38. 0.85 (F(1.172)=22.33, p<.01). 活4. 31. 活動する場所を自分で選ぶことができた。. 4.17. 1.35. 3.41. 1.04 (F(1.172)=16.10, p<.01). 取1. 8. 材料や道具の準備に積極的だった。. 3.98. 1.23. 3.88. 0.74 (F(1.172)=0.46, ns). 取2. 16. 自分の活動に夢中になれた。. 4.33. 1.12. 4.38. 0.67 (F(1.172)=0.13, ns). 取3. 24. 友達の活動を見て楽しかった。. 4.46. 1.05. 4.07. 0.69 (F(1.172)=8.59, p<.01). 取4. 32. 友達と協力して活動できた。. 4.48. 1.23. 4.07. 0.70 (F(1.172)=7.46, p<.01). その他1. 33. もっと活動を続けたかった。. 4.63. 1.00. 4.39. 0.68 (F(1.172)=3.58, p<.10). その他2. 34. どんどんやりたいことが増えていった。. 4.29. 1.28. 4.29. 0.79 (F(1.172)=0.00, ns). 表3. 8つのカテゴリー児童と教師の平均値と標準 偏差 カテゴリー. 3年生. 教 師. た。 自己肯定2:自分の活動のよさを知った. 被験者間 1要因分散分析. 表現追求1:自分のやりたいことを追求できた. F(1.172)=21.49,. そ の 他 1:もっと活動を続けたかった. 平均. SD. 平均. SD. 16.50. 3.96. 14.02. 2.41. 自己肯定 16.40. 4.18. 15.57. 2.18. F(1.172)=1.59, ns. 他者理解 16.92. 4.30. 16.18. 2.07. F(1.172)=1.52, ns. 表現追求 16.94. 3.71. 15.82. 1.84. F(1.172)=3.96, p<.05. 明らかにする本調査のために立てた2つの仮説 識のズレがある」および「仮説2:造形遊びにつ. 交流. p<.01. 見方. 16.75. 3.90. 15.84. 2.15. F(1.172)=3.04, p<.10. 学び. 16.23. 4.04. 15.21. 2.25. F(1.172)=3.36, p<.10. 活動. 16.77. 3.71. 14.13. 2.61. F(1.172)=25.50, p<.01. 取組. 16.94. 3.94. 16.39. 2.04. F(1.172)=1.02, ns. 236. 表現追求4:形や色などの新しい活かし方ができた. その他の18項目に統計的有意差が見られ,全て 教師より児童の平均得点が高かった。 以上のことから,児童と教師間の認識のズレを 「仮説1:造形遊びについて教師と児童の間に認 いて教師より児童が学びの広がりを理解してい る」は34の質問項目に対して教師より児童の平均 得点が高いか有意差がないことから成立したと言 える。 児童と教師の間にどのような認識のズレがある.

(6) 児童と小学校教師の「造形遊び」についての認識のズレ. のかを明らかにするために,8つのカテゴリー別. でやった方が楽しい」「みんなで協力して仲良く. 平均値に統計的有意差があるか被験者間1要因分. なれるから好き」などという回答が得られたこと. 散分析を行った。その結果,灰色に色を付けた3. から,友達とのコミュニケーションを通して,よ. つのカテゴリー(自己肯定,他者理解,取組)に. り活動が楽しくなり,存在価値を見出していると. 有意差が見られなく,薄い灰色の色を付けた以下. も考えられる。. の2つのカテゴリー(造形的見方,学び)は有意. 次に,カテゴリー間にどのような相関が見られ. 傾向であった。. るかを調べるために相関係数を求め,表4には児. 次に児童は8つのカテゴリーについてどのよう. 童の8つのカテゴリー間に相関係数を,表5教師. に順位付けているのかを調べるために,被験者内. の8つのカテゴリー間に相関係数を表した。. 1要因分散分析を行った結果,児童のカテゴリー. 表4から児童は全てのカテゴリーの間に0.7以. の平均値に統計的有意差が見られなかった. 上の強い相関が見られ,さらに表現追求と造形的. 一方教師の分析を行った結果, (F(7.357)=1.51, ns)。. な見方,表現追求と取組,造形的な見方と取組の. 取組が最も高く,その次に3つのカテゴリー,他. 間に非常に強い相関があることが分かる。一方,. 者理解,次に自己肯定,表現追求,造形的見方が. 表5から教師は全てのカテゴリーの間に0.5以上. 続 き, そ の 後 学 び,交 流 と 活 動 が 最 も 低 か っ た. の相関が見られ,自己肯定と他者理解,表現追求,. (F(7.847)=56.14, P<.01)。つまり,教師は「造形. 造形的な見方,学びの4つのカテゴリー間,そし. 遊び」活動に児童が積極的に取り組み,楽しむと. て他者理解と表現追求,表現追求と造形的な見方. 考え,あまり造形遊びを通して児童が仲間が増や. や学び,最後に造形的な見方と造形的な学びには. し,居場所が確保していることに気付いていない. 強い相関が見られた。. ことが分かった。. 換言すると,教師は造形遊びを通して児童が自. その認識に対し,児童は「造形遊び」を通して. 分の活動に満足するなど「自己肯定」を最も重要. どんどん仲間が増え,友達とたくさん相談し,活. な要素と認識し,「自己肯定」が高まるほど他者. 動後に友達と交流が増えたと認識し,やや新しい. 理解,表現追求,造形的見方や学びに深く関わる. 友達ができたと回答し,1人でも何人でも場所の. など「自己肯定」が他の要因と広く関わっている. 制約もなく満足できる活動ができたと考えてい. と考えている。次に,造形的学びが造形的見方や. た。その他,材料や道具などの使い方に満足して. 表現追及に深く関わっていると考えている。. いる。. そのことに対し,児童は造形遊びにおいて「取. さらに,児童の自由記述から「造形遊びはみん. 組み」を最も重要な要素と認識し,積極的に取り. なでするから大好き」「一人でやるよりはみんな. 組むことで表現追及ができ,面白さや美しさなど. 表4.小学校3年生の8カテゴリーの質問項目についての相関係数 交流 交流 自己肯定 他者理解 表現追求 見方 学び 活動 取組. -. 自己肯定. 他者理解. 表現追求. 見方. 学び. 活動. 取組. 0.823**. 0.878**. 0.818**. 0.767**. 0.831**. 0.811**. 0.857**. -. 0.807**. 0.886**. 0.845**. 0.854**. 0.784**. 0.853**. -. 0.879**. 0.848**. 0.852**. 0.794**. 0.884**. -. 0.913**. 0.883**. 0.811**. 0.913**. -. 0.890**. 0.760**. 0.904**. -. 0.758**. 0.867**. -. 0.841** -. 237.

(7) 森實 祐里・李 知恩. 表5.教員の8カテゴリーの質問項目についての相関係数 交流 交流 自己肯定 他者理解. -. 自己肯定. 他者理解. 表現追求. 見方. 学び. 活動. 取組. 0.679**. 0.586**. 0.622**. 0.597**. 0.586**. 0.589**. 0.600**. -. 0.798**. 0.794**. 0.764**. 0.707**. 0.650**. 0.668**. -. 0.727**. 0.689**. 0.619**. 0.526**. 0.675**. -. 0.790**. 0.765**. 0.656**. 0.642**. -. 0.811**. 0.605**. 0.624**. -. 0.659**. 0.524**. -. 0.533**. 表現追求 見方 学び 活動 取組. - **は相関係数1%水準. の造形的な見方に深く関わると認識している。. 8つのカテゴリーに分類できる34の質問項目を 用意して児童と小学校教師を対象に調査した結. Ⅲ 考 察. 果,両者共にもっとも高い得点であった項目は 「もっと活動を続けたかった」であり,両者間に. 阿部宏行(2017)によると教員355名を対象に. その学びを楽しむという共通認識が確認できた反. 実施した図画工作教科書題材年間指導実施状況調. 面,両者間の多くの認識の差異が確認できた。教. 査で,絵や立体,工作などと比べて造形遊びの実. 師は児童が「造形遊び」を通して創作活動に積極. 施率は10%〜45%を下回っている。しかし,著者. 的に取り込むことで楽しむと推測し,「自己肯定. が2020年に130名を対象に実施した調査では128名. (カテゴリー)」が他の要因と広く関わっている. が造形遊びを実施していると回答し,ほとんどの. と考えている。一方,児童は単に「造形遊び」を. 教師が造形遊びを実施している結果となった。. 楽しむだけでなく,その活動を通しての友達との. 一見,造形遊びの指導が順調に行われてように. 交流を強く認識し,共に活動する中で自分の存在. 見えるが,今回の調査でも教育現場において造形. 価値を見出していることが明らかになった。その. 遊びの指導にあたり「児童の主体的な活動を大切. 他,材料や道具などの使い方にも満足している。. にする」についての理解に苦しみ,教師が造形遊. 以上のように両者間の認識のズレが見られたこ. びを積極的に取り組まないことが明らかになった。. とや,34の全ての質問項目に対して児童の平均得. そこで,本研究では「造形遊び」の実施にあた. 点が教師より高い(22項目)または差がなかった. り,児童の実態に即した「造形遊び」の運用を模. ことから本調査の2つの仮説は支持された。. 索するために,児童が考えている「造形遊び」と 教師が理解している「造形遊び」に認識のズレは ないのかに着目した。 「造形遊び」の設定及び開. Ⅳ まとめ. 発の段階において,両者間の認識の差異を確かめ. 本研究では児童の実態に即した「造形遊び」を. る必要があることから本調査では,仮説1「造形. 模索するため,児童と教師の間に「造形遊び」に. 遊び」について教師と児童の間に認識のズレがあ. ついて認識のズレがあるか調べた結果,両者間に. る。仮説2「造形遊び」について教師より児童が. 認識の差異が見られ,教師よりも児童の方が「造. 学びの広がりを理解しているという2つの仮説を. 形遊び」で身に付く力を高く評価し,友達との交. 立て,児童と小学校教師間の認識のズレを明らか. 流を強く認識し,コミュニケーションを活発に行. にした。. い,自分の存在価値を見出していることが明らか. 238.

(8) 児童と小学校教師の「造形遊び」についての認識のズレ. になった。 最後に,造形遊びの活動について児童の主体性 や場所の特性を生かすなどの条件が多いことから 造形遊びを実施している教師が少ないだろうと予 想したが,指導に対しては困難を感じながらも, 多くの教師が造形遊びに高い意識をもって指導・ 評価していることが分かった。今後,児童に寄り 添い,児童主体の学びとしての「造形遊び」への 理解が深まっていくことに期待したい。. 参考文献 岡田京子(2015) 「造形遊びの現状とこれから」教育美術, 5月号,公益財団法人美術教育振興会,p31 板良敷敏(1993) 「造形遊びの魅力」日本文教出版株式会 社,p137 阿部宏行(2017) 「『造形遊び』が定着しない要因の考察⑴」 美術教育学(美術科教育学会誌),第38号 辻田嘉邦・板良敷敏・岩崎由紀夫(1982)「造形遊び指導 と展開のポイント」日本文教出版株式会社 武藤智子・金子一夫(2004)「『造形遊び』の発生につい ての歴史的研究⑴教育課程の改善,及び造形教育セン ター」茨城大学教育学部紀要(教育科学)第53号 宮坂元裕(2006)「造形教育という学び」日本文教出版 小学校学習指導要領 図画工作編(2019)文科省刊行 物.  (森實 祐里 札幌市立大倉山小学校教諭)  (李 知恩 札幌校教授) . 239.

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