Author(s)
商, 志勇; 喜納, ひとみ(訳)
Citation
沖縄史料編集紀要 = BULLETIN OF THE
HISTORIOGRAPHICAL INSTITUTE(36): 75-80
Issue Date
2013-03-29
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/11461
中国第一歴史檔案館の今後5年の目標と最近2年間の
利用状況について
中国第一歴史檔案館複製処処長 商 志勇 翻訳:喜納ひとみ 中国第一歴史檔案館と沖縄県教育委員会の交流事業が始まって今年で 20 周年を迎える。 私たちは、この交流事業が中琉歴史関係檔案史料の出版と研究を推進する重要な役割を果 たしてきたこと、また多大な成果をあげてきたことを関係者として見守ってきた。本日の 報告では、中国第一歴史檔案館(以下、檔案館)における今後5年の目標と計画について 概観を述べ、最近2年間における国外及び台湾・香港・マカオ地区の学者の檔案館の利用 状況について簡単に紹介し、今後の相互コミュニケーションと理解の維持につなげたいと 考えている。 一 檔案館の2年間の発展と目標 (一)現在の館長と組織改編の状況 現任指導者(館長):胡旺林(2010 年4月就任)、副館長:呉紅(女)、趙雄。 昨年、従来の 14 部門について解体や合併、名称変更を行い(“ 変更表 ” を参照)、各部 門の機能を新たに区分し、改めて 14 の部門を設置した。 1.辦公室:7人 秘書科と交通科を設置 2.人事処:4人 人事科と党務科を設置 3.安保処:11 人 安保消防科、電気・機械・電算制御科、皇史宬管理科を設置 4.離退職者辦公室:2人 5.基建処:4人 (新館建設準備室:訳者注) 6.行財処:10 人 総務科、財務科、資産管理科、医務室を設置 7.保管処:23 人 保管一科、保管二科、修復科、古籍保護科を設置 8.利用処:10 人 利用案内科、展示広報科、図書資料科を設置 9.整理処:26 人 整理一科と整理二科を設置XIANG Zhiyong, transl. KINA Hitomi: Aims for the Next Five years and Document Use by Foreign Scholars over
10.編目処:8人 編目一科、編目二科を設置 11.満文処:18 人 整理科と翻訳科を設置 12.編研処:12 人 編研一科、編研二科、編研三科(雑誌『歴史檔案』の編集担当) を設置 13.複製処:18 人 マイクロフィルム科、デジタル変換科、複製科を設置 14.ネットワーク処:8 人 ネットワーク設備科、ソフトデータ科を設置 現在の職員数は 164 人であり、そのうち業務部門の人員は 122 人に達する。今回の機 構調整は、業務の方向性の明確化と重点内容の変更、各業務間の連携を整えることを目的 としている。これらの調整により基礎業務の遂行と安全管理業務が強化され、各部門の機 能区分の合理化が進み、より効率的に業務が行えるようになった。 (二)檔案の現状と目標及び課題 1.基礎業務の現状 檔案館では 1000 万件以上に及ぶ明清時期の中央機関及び皇族(皇家)の歴史檔案(清 代檔案が圧倒的多数を占める)を保管しており、檔案の保存及び公開利用という二大機能 を担っている。過去に整理出版した檔案集(中琉関係の檔案集を含む)はどれも檔案原本 を直接閲覧、調査し編集したものであるが、このような状況は檔案原本の保護という面か らは大変不利である(檔案館所蔵の清代歴史檔案の寿命は最短で 100 年ほど、最長では 600 年以上にもなる)。また、檔案を探し出す過程でミスが生じる恐れもある。そのため 国家檔案局は檔案原本の効果的な保護を目的として、すでに檔案原本の利用提供を禁止す ると規定している。 現在、所蔵する檔案の 30%については基礎的な整理作業が終わり、併せてマイクロフィ ルム撮影やデジタルスキャンが行われ、この分については利用が可能となっている。しか し、まだ 70%の檔案原本が利用提供の条件を備えていない。檔案館の基礎業務の進行は まだ半ばで、公開利用の機能を十分に果たしているとは言えず、清代歴史檔案の広範囲に わたる検索利用に対して国内外の多方面からの需要に応えられずにいるのが現状である。 2.今後5年の目標及び課題 檔案基礎業務の現状を鑑み、胡旺林館長の就任後直ちに組織の整理・改革が行われ、管 理の強化と檔案館発展のための「十二五」計画(12 回目の5か年計画)が作成された。 檔案の保護管理の確保と業務内容の刷新を加速し、基盤業務にさらに力を入れ、職員のや る気を高めるという重点任務を掲げ、「一つの包括的なデジタル環境を整え、二つの重点
任務を柱とし、三つの基盤を固める」とする全体目標を決めた。すなわち、檔案事業発展 の基礎となるプラットフォーム(1)を築き、また、檔案の整理及びデジタル化事業と新館建設 を柱とし、業務基盤・施設基盤・利用基盤を固める。その目的は明清檔案事業の包括的な 発展の促進と、広く公開された現代的な檔案館を建設し、国家と社会に対して良質なサー ビスを提供することである。 最も重要な課題は、2011 年から 2015 年の5年間で知識と檔案館の全力を傾けて、 700 万件の檔案の整理と 500 万件のデジタル化を行い、所蔵する歴史檔案の基礎的な整 理作業を終えることであり、さらに斬新かつユニークな先進レベルを有し、サービス機能 の整った檔案館の建設、歴史檔案利用のデジタル及びネットワーク化、檔案原本の徹底的 な保護を実現することである。これらの実現により檔案館は大きな変化を迎え、さらに飛 躍するであろう。 檔案館の三大重点項目の一つを担う、複製処では檔案のデジタルスキャン、マイクロ撮 影、マイクロフィルムからデジタルへの変換の計画・実施と管理の業務を行っており、現 在 18 名の職員がいる。2011 年入札により2社のデジタル加工専門業者を選び、約 350 平方メートルのデジタル工区を開設した。その人員(外部発注業者の作業員)は 100 人以 上になる。現在は内閣の「兵科題本」と「礼科題本」のスキャンを行っている最中で、あ わせて 24 万件以上、約 400 万コマについて、すべてカラーでスキャンしている。2011 年末までには「内務府来文」と「内務府呈稿」のスキャンに着手する予定であり、それら はあわせて 83 万件、約 700 余万コマである(これも2社に外部発注し現在整理中。人員 は 120 人である)。さらに計画に基づき、この5年でその他の檔案についても順次デジタ ルスキャン、マイクロ撮影とデジタルデータへの変換を行う。5年間で 500 万件のデジ タルスキャンが終了し、3000TB(テラバイト)のデータができる。この膨大なデータに ついてはオンライン、ニアライン(2)、オフラインの方式で保存管理を行うところであり、テー プや光ディスク、フィルムなど多くの媒体にバックアップをとっている。また、データの 長期的な安全保証のため、別の地点(遠隔地)への保管についても検討している。 (1) ソフトウェアやハードウェアを動作させるのに必要なコンピュータや OS などの種類のこと。また、そ れらの組み合わせや設定などを含む総合的な PC 環境をいうこともある。(編集者追記) (2) 情報システムにおけるデータバックアップの形態等をあらわす用語で、オンラインとオフラインの中間 的な性質をさす。オンラインは、サーバのように各端末から常に接続が可能で高頻度・高速度なデー タの送受信・更新を目的とするのに対し、オフラインは光学ディスクやテープなど接続時にデータの 読み込みや更新が可能で、主として長期保存を目的とする。ニアラインは、HDD を使用することでオ フラインに比べ高速性と簡便性で勝り、主サーバの障害発生時に即応するためのバックアップ等とし ての使用を目的とする。(編集者追記)
二 この2年間の国外及び台湾・香港・マカオの研究者の檔案館利用概況 檔案館所蔵の清代歴史檔案は潜在力を秘めた宝庫である。ここ2年、海外の 20 以上の 国や地域の研究者が檔案館を訪れ清代檔案の調査を行っており、日本からは 30 近い大学 と研究機関が調査に訪れている。各国の利用者の研究内容は広範囲に亘っており、その視 点は鋭く独特で、テーマとしては「趙爾巽と日本の関係」「日本に留学した中国学生」「近 代中日関係史」「清代の対チベット政策」「清末の辺境貿易」「清代口語の変遷」「清代新疆 の交通と貿易」「清代環境史」「山西銅商人」「清代の食糧政策と食糧流通」「清代の幕僚と 戯曲」「清代の海外貿易と商人」「清代の紫檀家具」「中国におけるカトリック及び耶蘇会 の宗教建築」「清代の気象と人文」等がある。 1000 万件以上に及ぶ歴史檔案のうち、現在公開・利用されているのはわずか 30%にと どまっており、利用者の要求にまだ十分に応えられずにいることについて、我々も大変遺 憾に思っている。しかし今後5年間における檔案の整理とデジタル化及び職員のたゆまぬ 努力により、檔案の公開が次々に進められ、国内外の研究者へより多くの歴史檔案の閲覧 提供が可能になると確信している。 ※本稿は 2011 年 11 月 11 日(金)、平成 23 年度沖縄県歴代宝案編集委員会において、中国第一歴 史檔案館の商志勇複製処処長が行った報告「一史館五年発展目標及近両年利用状況」の翻訳である。
中国第一歴史檔案館組織変更表 変更前(旧) 変更後(新) 辦公室 辦公室 人事保衛処 人事処 党委辦公室 - - 安保処 離退職辦公室 離退職辦公室 基建辦公室 基建処 行政処 行財処 保管利用部 保管処 - 利用処 整理編目部 整理処 - 編目処 満文部 満文処 編研部 編研処 技術部 複製処 ネットワークセンター ネットワーク処 目録センター - 雑誌社 - 平成 23 年度沖縄県歴代宝案編集委員会(2011 年 11 月 11 日) 左:商志勇中国第一歴史檔案館複製処処長 右:朱洪梅整理処整理組科長
平成 23 年度沖縄県歴代宝案編集委員会(2011 年 11 月 11 日)
左:朱洪梅氏 中央:金城正篤歴代宝案編集委員会委員長 右:商志勇氏 教育長表敬(2011 年 11 月 10 日)