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非営利組織の形成理論 -- 非営利組織はなぜ存在するのか -- その2

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(2) 第49巻 第 1号 結局のところ契約失敗理論はどこまで適用可能なのか, どこまで理論の予定に答えること ができるのかを論じる手だてとしたい。 1.. 契約失敗理論とはなにかーその後の契約失敗理論の展開一. 2.. 契約失敗理論の基礎ー情報の非対称性の意義. 3.. 契約失敗理論の問題点ー結びに代えて一. 1.. 契約失敗理論とはなにか一 その後の契約失敗理論の展開 ー '. 市場経済における非営利組織の役割と存在理由について多くの説があるが, これらの理 論は発生源と役割に関して2つの理論に大別できる。 需要理論と供給理論である。 本論で 検討する契約失敗(contract failure)の理論はデマンドサイド理論に含まれるが, このデ マンドサイド理論は非営利組織形成の論拠として多くの論者が主張する有力な理論であ る。 そこではすでに検討した「政府の失敗」理論と並んで121 「市場の失敗」の特定の側面であ る「契約の失敗」の理論が基礎となっている。 この契約失敗の理論は, プリンシパル ー エ ー ジェント問題を中心とする「エ. ー. ジェン. シ ー 理論」をその基礎とする。「エ ー ジェンシ ー 理論」それ自体は, 不完全情報下でのモニ タリングや情報伝達, 誘因システムやリスク配分のあり方など, プリンシパルの立場から 望ましい契約(最適契約)の設計とは何かを分析する理論である。 この理論を基礎として, 非営利組織の契約失敗理論は市場経済においてなぜ非営利組織 が存在するのかを説明する1つの経済理論である。「契約の失敗」とは営利企業の間の自由 な競争では特定の財もしくはサ ー ビスを効率的に供給できない諸条件を記述する「市場の 失敗」という一般的な理論のうちのある特定の側面である1310 そのなかで契約失敗の条件は, 消費者が受けつつあるサ ー ビスの質と量を適切に判断す ることができないと感ずるところで生起するとされる。 この情報の非対称性を伴う状況で. (2) 堀田稿「非営利組織の形成理論ー 非営利組織はなぜ存在するのか ーその1」『尚経学叢』46-3, 2000. 3. (3) そもそも競争的市場の結果はときには4 つの理由で非効率となる。 取引コスト, 費用ないしは 便益の非専有性, 外部性, 情報非対称性である。 これらの問題は政府, 非営利部門, あるいはそ の両者によって改善することができる。 したがって市場の失敗それ自体が多様な産業における非 営利の供給の理論的根拠であると理解することができる。 D.R. Young and R. Steinberg, Economics for Nonprofit Managers, 1995, p. 206. この点については改めて論究しなければな らない。 -102 (102)-.

(3) 非営利組織の形成理論(堀田) は,供給者が消費者を意図的に誤らせるかもしれない。 過剰なサ ー ビスで収人が増えたり, 費用の削減で利益を得ることもある。 利潤最大化のために消費者を誤らせるという組織の 誘惑が「契約の失敗」と呼ばれる。 この状況においては, 消費者は蝙されるのではないか という危惧から, 必要とする財やサ ー ビスの購入を渋ることになる。 したがって, 利潤を 求めて行動する拘束を受けない営利企業だけで構成される市場では, 経済諸資源を最善利 用価値の下で配分することに失敗する(410 このような市場経済の世界では, 寄付提供者は情報の非対称性が一般化しており, その 寄付金は有効には使われていないと知るために, 財・ サ ー ビスの提供について信頼して貢 献することはできない。 そこでは寄付提供者はその購買の価値を最大化する選択をするこ とができないから, 非効率が発生する。 また, この情報の非対称性は微妙な非効率性をもたらす。 供給者が見栄えの良いサ ー ビ スを提供して, 評価の難しい肝心なサ ー ビスを手抜きする行動をとることがある。 このよ うな供給者が有形の品質と無形の品質の両方を提供するには費用がかさむために競争でき ない事態となる良心的な供給者を閉め出すことが起こる。 ワイズプロッド (B. A. Weisb­ rod)は, これらのサ ー ビス特性をそれぞれ「 タイ プl」と「 タイ プ2」と呼んで, 情報の 非対称性があるがゆえに, タイ プlの属性が過剰生産であるのに, 消費者が現実に望んで いる タイ プ2の属性が過少生産であるときに非効率性が発生すると指摘した15X610 これに対して, 営利企業よりも非営利のほうが消費者を誤らせることから何も利益を得 ないから, 契約の失敗に陥る傾向が少ないと信じられる。 さらに販売, 寄付金, あるいは 費用の削減による剰余金は所有者に分配されることはないので, そこに寄付提供者と 消費 者が非営利組織を信頼する理由がある。 つまり, 分配禁止の拘束があって, 非営利の供給者は消費者を欺いてその差額を利益と してポケットに人れるような刺激を排除されているから, 非営利組織は競争優位の地位に あり, 情報非対称性の状況ではより信頼性が高くなると契約失敗理論は論じる。 要するに, 市場経済の中の営利企業では情報の非対称性のゆえに契約の締結が困難な状. (4) Dennis R. Young, Contr act F ailure Theory, J. Steven Ott, The Nature of Nonprofit Sector, 2001, Ch a p. 16 p p. 193-4. (5) B. A. Weisbrod, The Nonprofit Economy, 1988, p p. 48-53. (6) しかし, 反対に分配禁止の拘束は物価に影響してくる。 とくに供給者が大きく利益期待で動機 づけられる場合, 利益分配の禁止は必要なサ ー ビスの発展に対してその勢いをくじく作用をする かもしれない。 1 つにはインセンティブが拘束されているために, 非営利はそのように早くは反 応しない。 新しい需要に対する鈍い反応は非効率性を生み出す。 消費者が価値を認めているサ ー ビスが遅れて現れれば, 囲ちに資源の最も価値ある利用がなされないことになる。 D.R. Young and R. Steinberg, o p. cit., p p. 33-36. -103(103)-.

(4) 第49巻 第1号 態を引き起こす「サ ー ビス群」があり, これは主として「公共財」ではなくて「準公共財」 に属するサ ー ビス群である。 この種のサ ー ビスは情報の非対称性の下で「品質」の測定が 困難であり. 営利市場において消費者(寄付者・購買者)がサ ー ビス購人の契約をするこ とが困難なサ ー ビスである。 したがって, 消費者は「分配禁止の拘束」を義務づけられた非営利組織においては消費 者の提供するイン プットが経営者や外部利害者に搾取されないという信頼性を保証される から, 非営利組織のほうを選好する。 このような展開から. 契約理論から派生した独自の 「契約失敗の理論」が生み出されたのである。 つまり. 契約失敗の理論は非営利組織は基本 的に営利部門における契約制度の失敗の状況から発生すると考える。 非営利組織の利用は まさにこの契約失敗の諸条件に対してあるlつの可能な矯正方法なのである呪 そこで, なぜ非営利組織が形成されるのかについて, この理論は「分配禁止の拘束」と いう法的規制を根拠にして非対称な情報しかもたないi肖費者の信頼性を担保する点に最終 の論拠をおく理論であるということができる。 しかしそれ以降契約失敗理論は最初の ハ ンスマンと同じ契約失敗の理論に基づきなが ら, いくつかの論議が交わされ発展してきた。 そこでまず, これらの主張はどのような視 点から展開されてきたのかそれぞれに概要を示しておかねばならない。 少なくとも非営利組織はなぜどのようにしてこの契約失敗を矯正することができるのか という問題に対して以下のような基本的に 3つの異なったア プロ ー チがある。 の分配禁止の拘束.. ベ ンナ ー. ハ ンスマン. =ギ ー の消費者による直接統治. ヤングの経営者の自己選択. ないしスクリ ー ニングである。 それぞれのアプロ ー チがどのようにして非営利組織が契約 失敗の諸問題を克服するのに役立つのか, そしてどのようにして営利企業に比較して効率 的に特定のサ ー ビスを供給することができるのかを説明できるとする。 第1の ア プ ロ ー チ はすでに検討した ハ ンスマンの初期でもっとも優れた説明である が181, それは非営利組織の信頼性理論の一つである。 すなわち, 消費者がサ ー ビスの質を見 分ける能力あるいは評価する能力において不利益を受けるような活動領域において非営利 は発生すると主張する。 本質的に. 経営者が財務的な利益を増大するためにサ ー ビスの質. (7) その他の可能な矯正方法として. 営利供給者の免許や規制. 朦業団体や審査団体の実践基準と 監督などがある。 あるいは. 病院ケアや保険会社に対して医療ケア購入を監視する消費者代理と して行動する医師のように専門家第三者による購入統制をすることもある。 どの解決法が契約失 敗のそれぞれの状況に最も適合しているのか, あるいは非営利組織はいつ参加すれば最善の矯正 策を提供するのかについて決定する明確な理論は存在しない。 Dennis R. Young, Contract Failure Theory, op. cit., Chap. 16 pp. 193-4. (8) 詳しくは堀田稿『ハンスマンの非営利組織役割論」および前掲論文。. -104(104)-.

(5) 非営利組織の形成理論(堀田) を犠牲にするという可能性を減じる分配禁止の制約が存在するために, 消費者にとっては より信頼性が高いものと見なされると考える。 すなわち非営利組織においては利益の「分 配禁止の拘束」が組織の支配者が合意された品質や数量よりも劣った供給をするという誘 因を少なくするから, この分配禁止の拘束が正常な契約条件では失敗する諸状況において は消費者を防御する。 本質的に, 分配禁止の拘束によって組織を支配する経営者や理事・ 評議員が自己の個人利益のために金銭的余剰(利益)を配分することを禁じられ, その結 果非営利組織は顧客やバトロンを搾取する行動を妨げられるとする。 この拘束が政府の諸 機関によって効果的に監視されれば, 非営利組織はその諸資源を使命の達成にすべて配分 することでサ ー ビスに資金供与をしたりサ ー ビスを消費する人たちを翡すというインセン ティプはほとんどもたない。 このような背景においては, 消費者は非営利組織を「信用に たるもの」と見なして非営利組織のサ ー ビスを利用しこれに支払いをすることを厭わない 態度を示すであろうとする。 このアプロ ー チを基礎 に展開して初め て定式化した の が イ ー ズリ ー ・ オ ハ ラ(D. Easley and O'Hara). である。 かれらは情報の非対称性を 1 つの基礎とする「エ ー ジェン. シ ー 理論」を適用して,不完全情報(情報の非対称性)の下でのプリンシパル=社会とエ ー ジェント (経営者)との契約の「実行可能な諸条件」と「最適契約となる諸条件」を明ら かにしたうえで, そのなかで非営利組織が選好される諸条件を示して非営利組織が代替的 な経済制度であるだけでなく, 現実の非対称的情報の下では非営利組織はその便益が観察 あるいは測定が困難である財とサ ー ビスの生産を組織する社会的に最適な方法であり「最 適」な経済制度であることを主張する1910 この場合,「契約の失敗」が非営利存在の第1の理由であるとする ハ ンスマンの考え方を 分析の出発点とするが,. ハ ンスマンと異なり,. 非営利組織は経営者が固定された報酬を受. け取る組織であるとする。 したがってこの定義を与件として, 適正報酬に拘束された経営 者は情報を歪めるインセンティプをもたず, 経営者は報酬を超える収入をサ ー ビスの生産 費に費消せざるを得ないと仮定して経営者はつねに真実を告げるであろうと仮定してい る。 そこで, 最低基準以上のアウトプットも努力も観察することはできない情報の非対称 性の状況においても, 非営利組織は真実の情報を提供するがゆえに, 消費者は営利企業の. David. Easley and Mayreen. O'Hara, The economic role of the nonprofit firm, The Bell Journal of Economics, Vol. 14, No. 2, 1983. David. Easley and Mayreen. O'Hara, Optimal Nonprofit Firms, in S. Rose-Ackerman (ed.), The Economics of Nonprofit Institutions, Studies in Structure and Policy, Yale Studies on Nonprofit Organizations, 1986.. (9). -105 (105)-.

(6) 第49巻 第1号. 競争者に比較して信頼性があると信じることになり「非営利」契約のほうが「営利」契約 に優ることになる叫 このモデルでは, 非営利組織のアウトプットの測定が困難である非 対称情報が存在する場合, 経営者報酬への支出とその他のインプットの支出は監視され統 制される結果インセンティプ構造が変質するから, 組織が約束したものを確実に供給する 結果となり非営利組織が選好されるとするのである見 さらに, 続けて彼らは, 非対称的な情報を特徴とする多数の財・ サ ー ビスを生産する経 済諸制度の最適性質を検討する。 その際に社会が経営者とその報酬形態について交渉した ならば, 最適構造が生まれるとする。 経営者の利得を減らさないで社会のそれを増加させ るような契約が他にはないという場合に, 契約は「最善」でありパレ ー ト最適であるとい ぅ。 これに適合する経済制度が非営利組織であり, 非営利組織は生産過程において情報の 非対称性がある場合にのみ最適の経済制度となると主張した叱 しかし, このモデルについてはいくつかの批判がなされている。. 第1に, このモデルは. すべての非営利組織に適合するのではなく, 貧困者救済事業など寄付行為を主とする慈善 事業の状況に適合するだけであるOJ。 第2に, 非対称性が消費者が受け人れてよいと判断 するコストで解決されるなら, おそらく営利企業も消費者が選択する制度となるとしてお り, この考え方は情報の非対称性を減ずるコストを多様にして非営利組織と営利組織の共 存を説明している。 しかし, このモデルは同種の情報の非対称性に対してなぜ異なった制 度形態が存在するのかを説明できない(I�。 第3に, 最も重要な批判はモデルの基本的仮定 についてである。 すなわち「報酬の在り方について社会と経営者の間の交渉」がなされれ ば最適構造が生じ, 非営利組織が最適制度になるとするが, 議論は事実を合理的に説明し ようと試みている限りにおいて, どうすれば「社会」 ―― むしろ社会の実態は無定型な管 理化の程度の低い存在である—が非営利組織の経営者と交渉することができるのかを説 明することができない。 このモデルは「もしも~そのようになれば」の仮定を措定してい るにすぎず, 組織形態の既存の類型がこのような交渉から結果するのであれば, この類型 (10). Ottorino Chillemi and Benedetto Gui, Uninformed customers and nonprofit organization, Modelling 'contract failure'theory, Economics Letters 35 (1991), p. 5. S. Rose-Ackerman (ed.), The Economics of Nonprofit Institutions, op. cit., pp. 5-8. (11) Femida Handy, Coexistence of Nonprofit. For-Profit and Public Sector Institutions, Annals of Public and Cooperative Economics 68: 2 1997, p. 207. (I� David Easley and Maureen O'Hara, Optimal Nonprofit Firms in The Economics of Nonprofit Institutions.pp. 86-87. David Easley and Maureen O'Hara, op. cit., p. 90. (13) Femida Handy, op. cit., p. 207. Ottorino Chillemi and Benedetto Gui, op. cit., p. 5. (14) Femida Handy, op. cit., p. 207.. -106(106)-.

(7) 非営利組織の形成理論(堀田) は理解することがで き るけれどもそれはあ く ま で抽象論で あ る(ISO 第2. のアプロ. ー. チは非営利組織の分配禁止の拘束よりも, 消費者と支援者がサ ー ビス供. 給に対する支配権をより多 く もつことを可能にする構造の側面に焦点を当 てる。 それは消 費者支配論というべ き アプ ロ ー チで代表的な論者に ベ ン ナ ー (A. Ben-Ner) が あ る呪 彼の理論も特に政府失敗 • 契約失敗など現存する諸理論を総合しそれを発展させたもの で あ る。 ただ従来の諸理論は非営利部門の役割に対する重要な洞察を提供しているが, 両 者とも非営利組織の形成の 完全な動因を示していないし, 「充足されない需要」と 「非営利 の供給」 の間の諸段階を等閑に付している。 しかし, 組織は需要が存在するだけでは存在 するに至るものではないから, これらの段階は決定的なので あ るとする。 そのうえ非営利 形態の供給の諸条件は営利組織と政府組織のそれとは異なるもので あ ると批判する。 そこ で, 公共財 ・ 外部性 ・ 情報非対称性などによる市場の失敗の状況において, どのように非 営利組織が出現するのかその決定的要因を明らかにするので あ る。 ま ず, 非営利組織とは営利企業か政府機関かのいずれの組織でも適切に供給されない財 もし く はサ ー ビスを自らにかつ他人に供給するために結合する個 々 人の連合で あ る。 非営 利組織は適切でない供給が経済的な実現不可能性からではな く て市場の失敗・ 政府の失敗 から生じている時には, これらの失敗をその根底から矯正するかもしれない。 ただし, 非 営利組織はその事業家や経営者の善意をもってこの矯正を行うのではな く て, デマン ド サ イ ド のステ ー ク ホ ル ダ ー 集団 (消費者 ・ 支援者 • 寄付者の個人や組織)の支配を通して行 うので あ る。 これによって取引 の情報非対称性は解消されるが, この支配はあ る種の非営 利組織を特色づける条件 (持ち分権非所有 · 分配禁止の拘束 ・ オ ー プン プ ッ ク ス政策)が. (15) S. Rose-Ackerman (ed.), The Economics of Nonprofit Institutions, Studies in Structure and Policy, op. cit., pp. 5-8. (16) Avner Ben-Ner, Nonprofit Organizations: Why Do They Exist in Market Eco— nom1es ? S. Rose-Ackerman (ed.), The Economics of Nonprofit Instisutions, Yale Studies on · NPO, 1986. Avner Ben-Ner, Birth, Change and Bureaucratization in Nonprofit Organizations: An Economic Analysis, In Robert Herman (ed.), Politics, Public Policy and the Voluntary Sector, Proceedings of the Fifteenth Annual Meeting of the Association of Voluntary Action Scholars, Kansas City, 1987. A. Ben-Ner and T. Van Hoomissen, Nonprofit Organizations in The Mixed Economy, -A Demand and Supply Analysis— in A. Ben-Ner and B. Gui, The Nonprofit Sector in the Mixed Economy, 1993. Avener Ben-Ner and Benedetto Gui, The Nonprofit Sector in the Mixed Economy, in The Nonprofit Sector in the Mixed Economy, 1993. Avner Ben-Ner and Benedetto Gui, The Theory of Nonprofit Organizations Revisited, in Helmut K. Anheier and Ben-Ner Avner (eds.), Advances in Theories of the Nonprofit Sector, 2000.. - 1 01 C 107 )-.

(8) 第49巻. 第1号. 満たされ組織がこのような支配の執行を容易にするように構築されている場合にのみ実現 する。 したが っ て彼らステ ー ク ホ ル ダ ー がその組織に対する支配を執行する能力をもつ場 合にだけ形成される。 ステ ー ク ホ ル ダ ー 支配は非営利組織の存在にと っ て必須条件であ る。 なぜなら, その支配が組織を後援し組織に対する需要を開示しその組織に対する寄付 を行うために要する信頼に役立つからである。 これらのことは非営利組織に対する需要に おいて鍵となる要素であり, 非営利組織が存在するためには充足されねばならない要素で ある。 そこで, 非営利組織は需要者が自ら支配参加して自らの供給を生み出さねばならな い場合にのみ実現するのである。 さらに, 現実に非営利組織が生まれる決定的要因を検討する。 非営利組織に対する需要 は信頼財と集合財にのみ存在するが, 特定の産業と特定の地域における非営利組織の存在 に作用を及ぼす需要と供給の主要な要因を分析する。 それらは市場の規模, ステ ー ク ホ ル ダ ー の特性, 製品の属性の諸要因である。 まず, 集合的サ ー ビスの場合, 市場が大きけれ ばそれだけ生産コストを低くし選好の多様性を多くする。 これらの状況は営利企業の供給 を可能にするから, したが っ て非営利組織の成長は低くなる。 しかし, 信頼財の場合, 市 場が大きくなれば一般により非対称的情報の問題をもたらすから, 非営利組織の分布はよ り広がる。 第2に, ステ ー ク ホ ル ダ ー 特性は, サ ー ビスを需要しこの非営利組織を創設す る人 々 を含む住民の社会経済特性の 4 つの変数 (所得とその分配, 教育水準, 需要の異質 性, 社会的な結合力) を区別している。 それぞれの変数にはそれぞれ違 っ た結果がある。 高い所得と教育水準は非営利組織への信頼財の需要を少なくするし, 反対に, 低い所得と 教育水準は信頼財や信頼サ ー ビスの需要を高くする。 この場合, 信頼サ ー ビスは高い情報 コストと関連しているから, 非対称的情報の問題が重要となる。 そこで, 非営利組織は消 費者にと っ て保証として登場する。 高い教育水準と高い所得においては, 消費者は必要な 情報を得る最適な位置にいる。 集合的サ ー ビスの場合, 所得と教育は反対の効果を持つ。 それらが高い水準にあることは, より異質的な選好が生ずることを意味する。 公的供給が より異質的であれば, 非営利組織への需要は増加する。 供給の視点からは, 所得と教育の 水準が高ければ, 非営利組織のパ フ ォ. ー. マンスを人たちが支配することが可能となり, し. たが っ てこのことはこの人たちがより非営利組織を創設することを意味する。 需要の異質性は集合的サ ー ビスに基本的に影響を与える。 異質性が多ければそれだけ非 営利組織へのサ ー ビスが求められる。 この異質性は所得の分配と社会的, 文化的, 宗教的 な差異に依存する。 社会的連帯は宗教, 文化, 教育と プ ラスに連結し, 地域分散とマイナ スに連結する。 この社会的連帯は需要と供給から機能する。 需要からは需要の同一化をよ. - 108 ( 108 )-.

(9) 非営利組織の形成理論(堀田) り容易にするし, 供給からは社会的連帯の強い コ ミ ュ. ニ ティでの非営利組織の創設が増加. する。 第3に, 製品の属性について, 非営利供給の需要は, 排他性 ・ 競争性・ 情報非対称 性の多様な程度によって特徴づけられる信頼財と集合財に限定される。 これらの程度が高 ければ, それだけある財が非営利組織によって供給される可能性が大 き い。 したがって消 費財よりもサ ー ビスが非営利の供給を決定づけるし, とくに保健 ・ 社会事業など非排他性 と強い競争性と情報の非対称性をもつ事業分野に多く非営利供給が生 ま れるのである。 以上はベ ン ナ ー の所論を簡潔に紹介したが, とくに次の諸点について留意しておかねば ならない。 彼は非営利組織はその寄付者と消費者が組織の支配と ガ バ ナ ンスにおいて営利組織より も中心的な役割を演じるという点に特質があると主張するが, この場合, 彼はハンス マ ン が分類する「相互的非営利組織」をもっぱら対象にして, 顧客 (あるいは寄付者)が距離 を置いた契約を介するのでなく直接に経営者を支配する (顧客が経営者自身になることが ある)事業を分析対象とすることで先のイ ー ズ リ ー = オ ハ ラの モ デルの欠陥を修正しよう としている。 とくに特定の構成員や支持者にの みサ ー ビスを供給する相互利益非営利組織 は契約失敗や政府助成からではなくて, 構成員が選好する正確な質と コ ストを確保するこ と, 望 ま しい仲間を得ることのために商業的非営利組織のステ ー ク ホ ル ダ ー よりも有利で あるという意味で消費者支配への欲求から生 ま れるとする呪 この観点では, 非営利組織 はあるサ ー ビスの生産と消費がその組織のなかに垂直的に統合された一種の消費者協同組 合である。 この結果生ずる消費者の緊密な統制支配によって消費者が組織の部内者に対し 監視をすることで情報の非対称性を克服するのである。 彼は ま た, 分配禁止の拘束自体に対してはそれ ほどの関心を示さないで品質管理と契約 失敗に関心をもっている。 情報非対称性の下では, 顧客の支配が最も最善であるが, この ような支配は購買者が経営者を監視する時間をもたねばならないから高くつく支配であ る。 したがって, 監視の高い取引 コ ストがかかる品質管理の問題が重要な場合にだけ相互 非営利組織が生 ま れるとする。 そこで, 非営利組織は非営利組織を支配することから引 き 出される純便益と創立・ 支配に要する取引 コ ストとを比較し前者が勝ることを期待する デ マ ン ド サ イ ド のステ ー ク ホ ル ダ ー の連携によって創設 · 形成 · 支配されると論じる。 他方で彼は営利企業が供給する際の問題は品質を偽り伝えるような経営者のインセン ティプに限らないで以下の点から非営利組織が選ばれるとする。 第 1 に, 品質が公共財で 閻. D. C. Hammack and D. R. Young (ed.), Nonprofit Organizations in a Market Econ­ omy, 1993, p. 7.. - 1 09 ( 1 0 9 )-.

(10) 第49巻. 第1号. ある場合, 営利企業はその財をほとんど生産しないかもしれない。 第2 に, 営利企業が価 格差別化をするだけの品質に対する個 々 人の需要を見積もることがで き ない場合, ある独 占者が強い需要をもつ消費者に対し差別価格よりも数量割り当 てをするかもしれない。 消 費者支配はこれらの不適切性を修正することがで き るとする呪 彼の分析は洞察力があるが, それは営利企業に対して一 方的な依存関係にある顧客が阻 止で き ないほとんどが競争のない独 占的市場構造を基礎にしているから, この論議は独 占 市場における消費者支配に適合するにすぎない。 情報の非対称性の下での消費者支配 に 関 する彼の議論が, 営利企業と 「相互的」 非営利組織が競合する競争的な構造に対しても適 合するのかどうかという疑問を解決しているとはいえない叫 以上の 2 つのアプロ ー チは結局, それぞれ情報非対称性の条件の下ではしたがって契約 失敗の状況の下では, 非営利組織の形態は高い信頼性をもって行動することを約すること で消費者に奉仕すると主張するのである叫 第 3 のアプロ ー チはサ プ ライサイ ド の理論からするとくに ヤ ン グ (D. R. Young) が展 開する説であるQU。 この理論は同じく契約失敗の状況の下で, 非営利組織に参加する経営 者たちがス ク リ ー ニ ン グないしは自己選択の過程を通して金銭的 • 利 己的動機によらない 行動をすることから消費者の信頼を高めると説明する。 彼によれば, この説は別の動機の性向をもった企業家が自己選択を通して, 企業家活動 に従事する産業なり部門を選択するス ク リ ー ニ ン グあるいは自己選択のプロセスに基づい た行動理論である。 この理論の主意は, 多様な動機とス タ イルをもった企業家達が, 富, 権力, 知的なあるいは道徳的な 目 的またはその他の 目 標を選好し, これらの 目 標を別の経 済部面で達成で き る機会に合わせるように産業部門と経済部門 ごとに自らを師い分けると いう点にある。 この見方はすでに先覚者 ( ワ イ ズプロッ ド やハ ンスマン)が伏線を敷いて おり, ヤ ン グ自身がこの視点をさらに展開した理論であるとしている。 すなわち, 非営利 部門において, ある種のモデルは非営利活動と関連する博愛あるいは非金銭的な動機を認 識していた。 彼らはともに非営利部門に魅力を感じる従業員と経営者の異なった諸動機を 考慮していた。. ハ ンスマンは. 2 種類の経営者を主張するー�もっばら金銭的利得にのみ関. 心をもつ者と高い品質の制度の経営に関心をもつ経営者である。 非営利組織の低い金銭的 (I©. と く に相互的非営利組織が重要 な 存在 に な っ て き た 今 日 で は, こ の種の議論は さ ら に検討吟味 す る 必要が あ り 別 に 尋ね る こ と に す る 。. (19) S. Rose-Ackerman (ed.), The Economics of Nonprofit Institutions, op. cit., pp. 5-8. (20) Dennis R. Young, Contract Failure Theory, op. cit., pp. 193--6.. (21) Dennis R. Young, If Not for Profit, for What ? A Behavioral Theory of the Nonprofit Sector Based on Entrepreneurship, 1983.. - 1 1 0 ( 1 1 0 )-.

(11) 非営利組織の形成理論(堀田) 報酬が品質志向の経営者を引 き寄せるシ グ ナ ルとして働き, そ の結果, 非営利組織はより 高い品質のアウトプットを産出するとしている。 ワ イ ズプロットも法科大学院卒業生の雇 用選択の分析で同じ認識をしている。 もっぱら金銭に関心のある卒業生と公共利益の法律 業務に関心をもつ者を区別して, 公共利益の機関に参加する卒業生は, 利益志向の法律事 業で働く者に比較して相 当低い報酬でもこれを受け入れることを確認している。 これらの業績は異なった そ れぞれの経済部門の動機づけの特徴を与える顕著な メ カ ニ ズ ム として, 労働市場におけるス ク リ ー ニ ン グ過程を強調している。 ス ク リ ー ニ ン グもしく は自己選択が, 諸部門間の構造的な変数 (所得可能性や執行職務の固有の性質)の差異を 基にして生じる。 諸部門の中に違った動機づけが浸透することで経営者の自由裁量の余 地 が生まれるが, この浸透が組織の究極の行動を決定する。 こうして, 先覚者の分析に従え ば, 非営利にとってはこのス ク リ ー ニ ン グ過程により, 経済の利益生産部門よりは金銭的 な栄達に合わせない組織活動が生まれることが期待される竺 ヤ ン グはこのス ク リ ー ニ ン グ過程の考え方をある特定の参加者. 新しい組織を構築す. るために必要な人と資源を動員し, あるいは重要な新しい計画や政策を実施する企業家 一に適用して, 多くの実証を通して非営利部門における異なった紐織行動を説明しよう とする。 こうして ヤ ン グはなぜ非営利部門に経済活動が起こり, なぜ特定の型の企業家が この非営利部門に参加するかの理由を明らかにし, さらにこの選択過程から引 き出される 非営利の行動の諸性向を識別しようとする。 要するに, ヤ ン グは契約失敗の状況の中で非営利組織は異なった メ カ ニ ズ ム で信用にた るものになると主張する。 その根拠は指導者の自己選択とス ク リ ー ニ ン グである。 この枠 組みのなかでは, 組織の指導者は, 利己心の所得と権力追求から個人の信条と公共の理念 の追求にいたるまで多様で異質な動機をもってそ の地位につくものである。 非営利組織の 分配禁止の拘束の存在を伴う営利企業と非営利組織の問の差異が要因となって, 潜在的指 導者のプー ルが動機の相違にしたがって諸部門に自らを飾にかけ非営利部門に人る公共奉 仕志向の管理者か, より所褐を求めて営利部門に群がる経営者を選 ぶ のである。 この動機 の締い分けの結果は, 非営利部門に魅了された人たち を通して非営利部門をより信頼性の あるものにし, 消費者と支援者に契約の失敗を克服するために彼らが求める信頼性を提供 するのである四o. 四 D. R. Young, op. cit., pp. 1 6-7.. (23) サ プ ラ イ サ イ ド か ら 契約失敗 を説明す る 議論は ほ と ん ど検討 さ れて い な い が, き わ め て重要で あ る か ら 別の機会 に 改 め て論及す る 。 - 1 1 1 ( 1 1 1 )-.

(12) 第49巻. 2.. 第1 号. 契約失敗理論の基礎ー情報の非対称性の意義. ハンスマンは政府の失敗の側面とは反対の市場の失敗の方向から非営利組織を説明し た。. ハ ンスマンの分析は幼児デイケアの分野で. R Nelson, M. Krashinsky が示した初. 期の業績に準拠して , 消費者がサ ー ビスの質を見分ける能力あるいは評価する能力におい て不利益を受けるような活動領域において 非営利は発生すると主張する。 本質的に ハ ン ス マンは, 経営管理者が財務的な利益を増大するためにサ ー ビスの質を犠牲にするという可 能性を減 じ る分配禁止の拘束が存在するために, 非営利組織は消費者にと っ てはより信頼 性が高い も のと見なされると考えた。 そこで, 非営利組織は介護施設 · 幼児ケア. ・. 病院 ・. 教育・ 研究など消費者(子供や病人など)が判断能力を も たないためか, 関係するサ ー ビ スがあまりに複雑で一 般には評価で き ない状況において登場するとする。 このように,. ハ ンスマンはいくつかの特に初期の論文において少なくと. も 「情報の非対. 称性」を存在の基本的な根拠として 明確に位置づけていないし, ヤングが指摘するように, ハ ンス マンは 「信頼性」理論を展開したと言うべ き である⑳。 この信頼性理論の特質を鮮明にする別の方法が, この問題を生産者と消費者の間の情報 の非対称性を根拠にして見ることである。 まず, 「情報の非対称性」 とはなにかである。 これは プリンシパルーエ ー ジェン ト 理論の 基礎にあるlつの重要な概念である。. 一. 般に プリンシパルは環境, 実現状態, エ ー ジェン. ト の能力 • 特性の情報を事前に も っ ていない, また契約後に も エ ー ジェン ト の行動を監視 で き ない, あるいは監視はで き て も 行動を評価で き ないなど両者の間の不完全情報が存在 する。 これが非営利の存在理由に用いられる限りでは, 生産者は消費者に比較して配給さ れるサ ー ビスの量, 質, コ ス ト に関する知識をより正確に保持しているが, 他方で消費者 はそれだけの情報を も たない。 この結果生ずる状況が情報の非対称性であるということが で き る。 この 「情報の非対称性」 が契約失敗の根源にある条件なのである。 この状況を財 ・ サ ー ビスの購買時点で分けてみれば, 購買前の情報の非対称性は個 々 の. (24). こ の信頼性の理論は今 日 でもその有効性をも っ ている。 非営利の理論的根拠の中の公共財と信 頼性の関係についての議論について. ワ イス プ ロ ッ ト の提示した興味ある帰着点がそれである。 と く に財 ・ サ ー ビスに対すると同様に信頼性の高い諸制度に対して時代の変化とともに ま す ま す 強い公共需要(医療ケ ア ・ エ ネ ル ギ ー 生産 ・ 食品添加物 ・ 法的責任などの需要) が生ま れ, こ の 公共需要がさらに技術的に複雑とな っ てきていると観察している。 そ こ で, 彼は非営利の成長は この需要に応え るものであると推測する。 Dennis R. Young, If Not for Profit, for What ?, 1 983 , p p. 1 3 -14. 詳し く は堀田稿『ハ ンスマ ンの非営利組織役割論」 - 1 1 2 C 1 1 2 )-.

(13) 非営利組織の形成理論(堀田) 販売者が品質 ・ 出来高などの製品の特性を知ってお り , 他方で, 購買者が市場に提供され たその製品の平均的な品質しか知らない場合に存在する究 他方で, 購買後にも情報の非対称性が存在する場合には, さらに複雑な情況が存在する。 たとえば, 直接の消費者 (援助受給者)は製品に関する妥 当 なすべての情報を購買者 (慈 善提供の寄付者)に伝達することがで き ないという事態が発生する。 情報の非対称性はま た, 製品の望ましいあるいは望ましくない側面を消費者が 完 全に全部を評価で き ない場 合, あるいは, これらの側面が明らかになるまでに長い期間が経過する場合には解消しな いことになる。 双方の利益の追求と結 びついた購買後の情報非対称性の引 き 起こす諸問題 は, 購買前の情報非対称性の生み出す問題と同様であるが, その解決法は少なくまたよ り コスト高である竺 いずれにしても, この情報の非対称性が 3 つの部門の制度選択を基礎づ け る一つの経済 的要素である。 それでは, この情報の非対称性をもたらす要因はどこにあるのか。 その状 況を具体的に示せば次の諸点である。 第 l に, ある種の財やサ ー ビスは本来的に複雑であ り , あるいはサ ー ビスの品質は判断 が困難であるものがある。 財 ・ サ ー ビスが非常に複雑なために, この購買者は選択をする ためには供給者の専門知識に依存しなけ ればならない。 医療や高等教育の専門的で多面的 な性質がその場合である。 サ ー ビスの適切な質量の供給には供給者の専門知識と信用に依 存する。 また, そのサ ー ビスの価格も複雑であ り , ある程度は消費者 (あるいは消費者保 険会社)は提供サ ー ビスに対する適切な料金徴収をしているとの供給者の主張に従わざる を得ない。 第2 に, たんに消費者自身が受 け ているサ ー ビスを評価する能力がない場合である。 就 学前の幼児 ケ アや精神障害者とか高齢疾病者サ ー ビスはこの種の例である。 第3 に, ある種のサ ー ビスはそれを消費する個人自身によって購入されない場合 払者と受益者が別の存在である場合. 支. である。 この場合には, 購人者は直接にそのサ ー. ビスについて経験しないし, 消費者から正しい情報を獲得する位置にいないかもしれな い。 両親が購人する幼児デイケ ア, 老齢者の両親の子どもが購入する老人介護がこの条件 を示している。 サ ー ビスの購入者と提供者の間で合意された品質に対して実際の提供サ ー ビスが 一致しているかどうかしばしば確認することが難しい。 そのうえに, サ ー ビスの購 QS) Avner Ben-Ner, Nonprofit Organizations : Why Do They Exist in Market Eco­ nomies ? S. Rose-Ackerman (ed.), The Economics of Nonprofit Institutions, op. cit., p. 96. (26) Avner Ben-Ner, Nonprofit Organizations, op. cit., p. 97.. -113( 1 13 ) -.

(14) 第49巻 第1号. 入時点と評価で き る時点の間に タ イ ム ラグがある場合である。 さらに 一 致 していないと 判って も 「効果を見て」から別の施設に代えることは困難であ り 危険な場合がある。 要す るに, 情報の非対称性が専有性の諸要素 (誰かが ケ アの品質の隠された面について介護施 設の管理者から真実の情報を獲得する方法がないか も しれない)を市場の力 ( 完全競争が 普及するには情報の市場があま り に も 小さい)と結 びつけるのである列 別の例として, 寄付提供者が貧民救済 • 海外救援 · 癌研究などの集合財に対し寄付する 状況がある。 寄付提供者は自分の期待する種類のサ ー ビスに対して受入機関が寄付金を効 率的に利用して支援する も のと信じて, その機関の技術と専心に頼らざるを得な い。 約束 されたサ ー ビスの質が配給されたとして も , そのサ ー ビスが寄付金で賄われたのかどうか を確認することがで き な いし, 寄付金が期待されたように利用されたか, 私的に利用され たかを確認すること も で き ない。 すでに検討した限界作用モ ニ タ リン グの問題である究 そこで, 寄付提供者はその寄付金が正し く 消費されているという保証を要求する四。 これらの諸条件の 一つあるい はそれ以上の条件がある特定のサ ー ビスの特質を作 り 出す のであ り , この特定のサ ー ビスが正規の市場の効率的な機能を妨げる契約失敗の諸条件を 生み出す。 なぜなら, 消費者は搾取される可能性を危惧するからである。 非営利組織の利 用はまさにこの契約失敗の諸条件に対してある l つの可能な矯正方法なのである叫 以上要するに, 情報が欠如あるいはコス ト 高のところでは市場は失敗する。 そこでは生 産者に比較して消費者が不利な立場にあ り , したがって消費者が営利企業の供給者よ り は 非営利組織の供給者を選好するようになるという情報の非対称性の条件が存在するのであ る。 しかし他方では, 生産者と消費者の間のこのような情報の非対称性は多種の制度上の整 備によってその間隙は狭められてい るのであ り , 制度上の整備の一部として非営利組織が あるにすぎない。 したがって, 情報の非対称性の存在だけでは非営利組織の存在を説明で き ないことに留意しなければならない。 現に消費者と販売者あるいは生産者の間の情報の 非対称性が存在する財とサ ー ビスは非常に多数であって, 非営利組織がこの種の問題を解 決する経済的役割を果たすべく出現しているのではない。 情報の非対称性については, 情 報の伝播が確実で継続するようになって, また時間の経過にしたがって評判や信頼度が増 切 D. R. Young and R. Steinberg, Economics for Nonprofit Managers, 1995, pp. 184-5. ⑳ 堀田稿 『ハ ン ス マ ン の非営利組織役割論』 ⑳ ワ イ ズ プ ロ ッ ド (Weisbrod) は. 非営利組織の製品の質 / 量を 監視す る よ り も 利潤の分配禁 止の拘束 に準 じ て い る か ど う か を 監視す る ほ う が よ り 容易で あ る 場合に, 非営利組織の制度形態 は情報の非対称性問題を解決す る 優れ た 方法で あ る と し て い る 。 (30) Dennis R. Young, Contract Failure Theory, op. cit., pp. 193--6. - 1 1 4 ( 1 1 4 )-.

(15) 非営利組織の形成理論 (堀田) すなど, 情報開示と学習効果で情報の非対称性は少なくなった反面に, 情報の非対称性は いくつかの技術的優位性をもって よ り増大するよ うになるのである。 どのよ うな製品であ れ (デイケ ア , 保健サ ー ビス, 教育, 中古車,. コ. ンピュ. ー. タ , 薬品, 銀行 ・ 法律サ ー ビス. な ど ) , 消費者は販売者に比較して相 当程度に少ない情報しか保持していないことは確か である。 さらにサ ー ビス提供の管理方法や複雑なサ ー ビス内容が増えてきて, 情報の非対 称性がさらに増す傾向も無視できない。 しかし, 現実にはほんの ごくわずかのものが非営 利であり, この種の財 ・ サ ー ビスに対して営利企業や政府企業が併存しているのである。 非対称的情報の問題に対する 1 つの解決策は反復される相互作用 と / あるいは評判 (信 望) である。 反復と評判の役割は, 信用できない要素が少なくなること, 評判を落とすと コス. ト が高くつくこと, 将来の支出が高くつくことから重要性が高くなる呪. そのうえに, ある種の財やサ ー ビスについては, 消費者は規制や認可を介して政府に保 護されることがある。 たとえば, 消費者が薬品を購人する場合, これを確認する十分な知 識を持たなくても販売される薬品は保証された製品であるか どうか心配しなくて購入する ことができる。 消費者は既存の規制に よ って保護されていることを知っており, この規制 に よ って製造業者は消費者の無知から利益を得るのを阻まれることになる。 こうして, 政 府は消費者保護のために干渉することができまた実際にこれを行っているのである。 これ に よ って非営利組織の必要性が除去される。 そこで, 非営利組織がある産業において主要な役割を演じる場合の状況は何かが問われ なければならない。 言い換えれば, 営利企業がある産業において典型的な販売者となるこ とを許されるには, 反復に よ る信頼や政府規制の監視では不十分である状況は何かを考察 することである。 1) サ ー ビスの質が客観的に よ く定義されないから, 主観的な判断が サ ー ビスの質を評価 するのに欠くことができない。 l つの可能性は品質が不安定で測定不能な特性をもって おり, 少なくとも部分的に品質が「見る人の眼」 の 中にあることである。 ど の よ うにし て「情愛のある ケ ア 」 を規定したり測定するのか, 大学において学生が重要な技能につ いて十分な訓練を受けたか どうかを どのよ うに判断できるのか。 あるいは品質が複数の 次元をもっており, 少なくとも部分的に販売者の主観的判断に依存する状況である。 この よ うな種類のサ ー ビスを一 回限り購人する場合, 規制, 認可, 監視が大きな違反 の防止には使われるかもしれないが, これらの方法では 「契約の失敗」は十分には矯正. (31) Femida Handy, op. cit., pp. 208-9. - 1 1 5 C 1 1 5 )-.

(16) 第49巻. 第1号. されない。 消費者は彼が信頼する販売者からサ ー ビスを購入することでこの契約失敗を 矯正しようし, これによって搾取される可能性を少な く しようとする。 しかし, 相互作 用の反復をしても, 監視の困難性があるために「編される」 という事態の発現を確認で きる消費者の能力が殺されてしま う。 2 ) 供給者を変えるコストが大きい (財務あるいは効用に関して)場合, 消費者がある供 給者を一度選択すれば, 消費者は相対的に縛られることになる。 そこで, 消費者は供給 者の長期的な契約を求める可能性が高い。 しかし, 契約はすべての偶発事項について記 載することはできない。 そして, 契約の期間が長ければ, 外生的な変化が発生する可能 性は多 く なり, これは契約を非効率にする。 結局, 消費者が非効率な消費をすることで 終わり, そしておそら く は法外な価格を支払うことで終わることになる。 そこで, 垂直的統合をすることで長期的パ ー ト ナ ー の「のれん」 に依存する必要性が 除去される。 これがある種の産業内の垂直的統合が行われる一つの理由である。 販売者 による「機会主義的」行動の可能性があり, これに対して, 非営利組織はこのような長 期的なサ ー ビスについて消費者やコ ミ ュ. ニ ティ ー が組織する垂直的統合の一 形態である. と見ることができる。 リ ス ク が内 面化されると非営利組織は信頼されるものとなる究 プライバシ ー と情報の問題がそれほど甫大でない場合には, 評判のよい営利企業もこ の問題を解決することができる。 しかし, 周 知のように, すでに同一の財やサ ー ビスを 販売している他の諸制度が存在している場合にはと く に, この評判を作り上 げるのは難 しい。 したがって, 非営利組織がすでにある市場に存在している場合, 営利企業はその 市場に道を付けることが困難である。 発生起点が蛍要であり, 非営利組織が優勢となる 可能性が高い。 そのうえに, 営利企業は消費者の支配の外で, 経済的変動に直面してその行動を変化 させる機会主義的行動をとる。 たとえば, ある営利企業が営業を停止するような可能性 が増大することから, コストを削減するために観察不可能なインプットの供給を減らす かもしれない。 そこで, 問題のサ ー ビスの重要性が高い場合, リ ス ク を回避する消費者⑬ そして / あ るいは観察不可能なインプットを強 く 選好する消費者は, 市場の諸条件の変化に従う営 利企業が機会主義的に行動すると知られていれば, 営利企業が非営利組織に比較して評. ぼ. Femida. Handy, op. cit., pp. 209-10.. ⑬ 問題のサ ー ビ ス が消費者 に 対 し て現実の そ し て / あ る い は潜在的 な 相 当程度の コ ス ト , あ る い は あ る 種の取 り 消 し 不能 な 情況 を も た ら す な ら ば, こ の よ う な リ ス ク 回避は増大す る 。 - 1 1 6 C 1 1 6 )-.

(17) 非営利組織の形成理論 (堀田) 判が よ くかつ効率的であると し ても, 非営利組織を選好する叫 3 ) ある種のサ ー ビスでは購入者と販売者(あるいは販売者の エ. ー. ジ ェ ト ) の間の関係が. そのサ ー ビスの品質に影響を与え. そ し て制度の仕組み が販売者の間でそ し て / あるい はその エ ー ジ ェ ン ト の間で 自 己選択が行われる要因となる。 多くの場合, 制度の形態そ れ 自 体が 情報を知らないi肖費者にサ ー ビスの品質を知らせる シ グ ナ ルとなる。 たとえば 幼児教育の保護者が非営利組織をあえて選んで働く教員のサ ー ビスを選好するならば, そ こでは非営利組織の役割は明らかに存在する。 以上から,. 情報の非対称性 に関する議論はサ ー ビスの性 質との関係をさらに詳細に分析. する ことが必要となる。 ど の よ う な財 ・ サ ー ビスが営利組織の供給を 引 き 出すのか,. どの. よ う な財・ サ ー ビスが非営利組織の重要な役割を提供するのかを検討する ことである。 これについて 情報の非対称性 の問題は老人 ホ 者は老人であるかその家族であるが,. ー. ム を参考に例示する ことがで き る。 消 費. この消 費者は この施設の フ ル タ イ ム ケ ア を契約す. る。 一般に施設から購人される ケ ア のサ ー ビスは複数の構成要素から成り立 っ ている。 こ れらの構成要素は消費者が購入する最終財に含まれる中間イン プ ッ ト であると見なす こと がで き る。 たとえ ば, すでに紹介 し た よ う に ワ イ ズ プ ロ ッ ドは. 消 費者の決定がそれに よ っ てなされる多種類の属 性 もつ財とサ ー ビスを指摘 し た。 そ こでは財 ・ サ ー ビスの タ イ プ 1 ( ア ク セ ス容易) と タ イ プ 2 ( ア ク セ ス コ ス ト 高) の属 性 を区別 し ている究 タ イ プ l は老人介護施設の規模や外観の よ う に. 観察が容易なものである。 タ イ プ2は介護施設の 付 き 添いと患者の間の関係に見られる「親切でや さ し い ケ ア 」 な どの介護の性 質の よ う に. 部外者が観察困難な属 性 である。 彼は契約失敗の理論が正 し いとすれば, 非営利は タ イ プ. 2 の属 性 の供給において営利企業 よ りも優れているが, タ イ プ l の供給については両者に 違いはないと主張する°°。. (34) 個別には効率的であるはずの営利企業は存続するため に コ ス ト 最小化をする存在であるばか り でな く . 機会主義的に行動する存在である。 こ の こ とは観察不可能なイ ンプ ッ ト の供給に際して • 発現するか も しれない。 こ の よ う な行動は営利企業が私的には効率的であるが社会的には効率的 でないという よ うな私的効率性と社会的効率性の不 一致を引 き起 こ す原因となる。 Femida Handy op. cit., pp. 210-11. (l5) D. R. Young, Contract Failure Theory, op. cit., pp. 194-5.. (36). し か し, 彼 は調査によ っ て こ の仮説を 実 証 する こ とは内 在的に難題であると指摘 し ている。 デ ー タ の収集が困難である。 タ イ プ2 の行動次元にお ける相違が非営利組織と営利の2 つ の制度 の間に存続するとして も , 消費者に も 分析家にと っ て も それを確認 する こ とは困難であるとい う。 ハ ンデ ィ (F. Handy) は こ の点を綿密に定式化 し ている。 観察 ・ 評価・測定が困難か コ ス ト 高 の中間イ ンプ ッ ト のサ ー ビ ス要素があ り . こ のや さし く 情けあるサ ー ビ スは消費者が受け取る便 益から引き出 されない場合. 「差別化する消費者」 がいとわずに効率性・価格 よ り も 品質を選択 する こ とか ら非営利組織が生ま れるとする。 Femida. Handy, op. cit., pp. 203-219.. - 1 1 7 ( 1 1 7 )-.

(18) 第49巻. 3.. 第1号. 契約失敗理論の問題点 ー結 びに代え て 一. 以上から, この契約失敗理論は市場経済における非営利組織の存在を説明する一 つ の基 本的で有力な経済理論であることは間違いない。 し か し それでは, 第1にこの理論はすべ ての非営利組織の存在を説明することができるのか, 第2に非営利組織はその存在根拠で ある契約の失敗を解決することができるのかという問題が残される。 この問題に答えるた めには, その前にこの契約失敗理論の も つ 理論上の欠陥と問題点を摘出 し て お かなければ ならない。 契約失敗の理論はなぜ非営利がある経済の領域において存在するのかを理解するための 有力な フ レ ー ム ワ ー クを提供 し ているとはいえ, それが包括的理論ではな く あるい く つ か の未解決な難問を残 し ているcm。 最 も 明らかなことは, この理論は営利, 非営利, 政府の諸 形態の間を十分には区別 し ていないという事実である。 1 ) 契約失敗の矯正法と し ての政府と非営利組織とを区別 し ていない。 政府諸機関は技術 的には ま た財務的意味では非営利であり, 多分営利企業に比較 し てさらに大きな信頼性 を生み出すはずの も のである叫 政府の失敗理論が示す 「同じ非営利である政府がなぜ 介入 し ないのか」を独自では説明できない。 それがなぜ契約失敗を矯正するのは非営利 組織だけなのかを説明できない叫 2 ) 契約失敗の理論の別の欠陥は, 営利企業と非営利組織が共存 し ている幼児ケアや高齢 者介護施設のような「混合型産業」 がなぜ存在するのか, 契約失敗する営利企業がなぜ 非営利組織と共存 し ているのか, その諸要因は何かという難問に直接には取り組んでい. 聞. R. Steinberg, B. H. Gray, "The Role of Nonprofit Enterprise" in 1 99 3 : Hansmann Revisited, Nonprofit and Voluntary Sector Quarterly, Vol. 22 , no. 4, Winter 1 99 3 pp. 2 99 -3 0 1.. ⑱ 非営利組織 よ り も政府機関の ほ うが信頼を裏切る理由が少ないと考え られるから, 信頼性に根 拠をお く この契約失敗理論は非営利組織 よ り も逆に政府機関に依存することを期待させることに なる。 L. M. Salamon, Of Market Failure, Voluntary Failure and 3 rd-Party Government Toward a Theory of Government-Nonprofit Relations in the Modern Welfare State, Journal of Voluntary Action Reserch, V. 1 6, N 1 -2 , 1 987, p. 3 6.. (39) 多くの国の非営利組織は営利企業ではなくて政府 特に地方政府 の供給するサ ー ピスと 競合している。 したがって. 非営利組織と営利企業の間 よ り も. 私的非営利と公共部門の境界線 を引 く必要がある。 わ れわ れはなぜ非営利組織が地方政府と同じサ ー ビスを生産するのかを説明 すべきであ り , なぜ政府の生産がある場合には利用され, 他の場合には非営利の生産が利用され るのかを説明できなければならない。 Estelle James, The Nonprofit Sector in International Perspective, Studies in comparative culture and policy, 1 989, p. 4. - 1 1 8 ( 1 1 8 )-.

(19) 非営利組織の形成理論 (堀田). ない 点である。 非営利組織が情報の非対称性を特徴とするある種の産業にお いてより効 率的であるならば, なぜ非営利組織が営利企業をこの産業から排除しな い のであろう か。 ただ, この問題が解決されて い な い けれども, 契約失敗の理論はその理論のなかに l つの説明の根拠をもっては いる。 サ ー ビスの品質につ いての理解と情報の水準がそれぞ れに異なる消費者が い る場合, これらの消費者は利用できる多様な種類の制度を選択す ることができる。 情報をよく知って い てよ い取引をして いるかどうかを確認する能力に 自 信を持ってい る消費者は, とくに安 い か彼らの個人的な選好により適した多様なサ ー ビスの供給を受ける場合には, 営利供給者を選択するかもしれな い 。 このような能力に 欠ける消費者や十分な情報を確保する時間のないi肖費者は彼らがより大きな信頼をおけ る非営利組織を選好することになる叫 実はこの種の検討はかなり以 前 から試みられて い た。 たとえば ホ ワ イト (M . J. White) はハ ンスマンの信頼性理論を「情報の非対称性」によって整理して, 利益生産 ・. 非営利 ・ 政府の供給者がデイケ アや介護 ケ アのようなある種のサ ー ビス分野になぜ同時 に存在するのかを説明する。 消費者あるいは消費者代理. たとえば両親—ーが信頼性. が低 い営利供給者を終始監視する時間を消費しなければならな いことと, 非営利や政府 の市場反応力の小さい (しかしより信頼性がある)サ ー ビスを利用することの間のト レ ー ド オ フ をする。 営利生産から非営利そして公的供給者に移動するにつれて, 信頼性 が高まり, したがって監視 コ ストが低くなり, 他方で, 消費者選好に対する反応性— つまり望まし い 価格と品質を結合した供給—ーは逆の方 向に高まることになる。 そこ で, サ ー ビスの品質を個人的に監視する時間を使うある人の時間の限界価値がその人が どの部 門の供給者を選択するかを決定する。 この時間の価値は所得やその他の変数に よって変化することが予測されるから, それぞれの部門の組織は異なった種類の消費者 を吸引すると推定する見 しかしさらに, 生産者と消費者の間の情報の非対称性は実は反復の相互作用 ・ 評判や 情報公開や法規制など多種の制度上の整備によってその間隙は埋められて い るのであ り, 制度上の整備の 一部として非営利組織があるにすぎな いことに留意すべきである。 しかも, 契約失敗理論の基本的な根拠である 「情報の非対称性」 が変質したりその重要 性が少なくなる現況におい てどのような性質の情報の非対称性が根拠になるのかを改め (40) Dennis R. Young, Contract Failure Theory, op. cit., pp. 195屯 (41) Dennis R. Young, If Not for Profit, for What ?, op. cit., pp. 13-14. -119 (119 )-.

(20) 第49巻. 第1 号. て論じる必要が あ る。 したがって, どのような財・ サ ー ビスが営利組織の供給を引 き 出 すのか, どのような財・ サ ー ビスの性質が非営利組織の重要な役割を提供するのかを検 討する必要が あ る。 ワ イ ズプ ロ ッ ド は設備その他のハ ー ド 面と配慮や親切などの ソ フ ト 面に財・ サ ー ビス構成を区別して非営利組織は ソ フ ト面を重視する消費者の選好する領 域で あ るとしたが,. ハ ンディ(F.. Handy) はこれをさらに詳細に分析して, なぜ同じ産. 業内に 3つ の異なった形態が存在するのかを説明した。 ここではサ ー ビスの多面な構成 要素の う ち ソ フ トの要素に対する情報の非対称性が強いサ ー ビスが非営利組織 として存 在するので あ る竺。 このように財・ サ ー ビスの性質を分析したハ ンディは契約失敗理論 をより発展させた優れた議論を提起していると評価することがで き る。 他方で, サ プ ライサイ ド から見れば, 営利企業と非営利組織の共存は競争市場におけ る製品差別化のゆえに可能であると考える。 たとえば, とくに商業的非営利組織の産業 では非営利は高額の高品質のサ ー ビスを供給し, 営利企業はその反対のサ ー ビスを供給 するとされる呪 この議論も看過で き ない重要な示唆を含んでいるので別に論議する必 要が あ る。 3) どうして最初から非営利組織は存在したのかを説明していない。 営利企業との比較に おける選択肢として説明することがで き るだけで あ り, サ プ ライサイ ド 理論の示す「誰 がなぜ非営利組織を創出するのか」 に答えることはで き な い。 契約失敗理論は寄付行為 者は営利企業に比較して非営利組織を選好すると主張するが, その寄付行為それ 自 体が なぜ行われるのかを説明で き な い。 あえていえば,. ハ ンスマンが校友の大学に対する寄. 付行為は市場の不完全性に あ るとするように, 広い意味の市場の失敗に帰することはで き ても, 決して特殊な契約の失敗によるのではない。 別のサ プ ライサ イ ド の角度から説 明しなければならな い で あ ろう。 経済における非営利組織の役割と存在理由につ い て多 く の説があ るが, これらの理論は発生源と役割に関して 2 つ の理論に 大別で き る。 需要 理論と供給理論で あ る。 しかし, 需要と供給の 2 つの要素は同時発生的に機能するから, とくにこれらを分離することは困難である。 そこで, 非営利組織の存在に影響する決定 要因を研究するに際しては, 需要と供給の要素を研究する必要が あ る。 しかし, いずれ の理論もその主要な困難の 一 つ は実証研究であり, 時にはと く に需要の要素と供給の要 素の間の相互関係が あ るために, それ ぞれを区別することが難しいことで あ る。 した がって, 同時にこの 2 つ の要素に焦点を 当 てて非営利組織の成長を検討する必要が あ (4� Femida Handy, op. cit., pp. 203-11. (43) S. Rose-Ackerman (ed.), The Economics of Nonprofit Institutions, op. cit., pp. 5-8. - 1 20 ( 1 20 )-.

(21) 非営利組織の形成理論 (堀田). る丸 4 ) 非営利組織をとりまく状況から見た問題点を指摘しておくことも重要である。 非営利 組織の国際化に伴ってアメ リ カ 制度における非営利組織の存在理由――—情報の非対称性 とモニ タ リン グ問題_は普遍性を失ったことである。 契約失敗理論では非営利組織の 存在は グロ ー バルな国際比較から説明できないと批判されている囮。 むしろ国土性・ 地 域性を重視してそのうえで普遍的な存在理由を明らかにする必要が高まってきたという ペきである姻。 同様に. 最優先す べき課題の 1つは, それぞれの理論を再解釈することで はなくて. これらを実証的に比較対照することである。 それぞれ異なった政治的文脈に 対して国際的な探索を行う必要がある叱 また非営利組織と認識されるサ ー ビ ス 部門の範囲が 拡大して, 契約失敗理論だけでは ボ ラン タ リ ー 組織など市民社会型非営利組織 (相互利益組織) などを説明できなくなったこ とである。 統一的概念や普遍的形成理論は成立困難となってきた1480 結局 契約失敗論は理論としては「営利と非営利とどちらを選択するか」に対する答え でしかない。 しかも契約失敗は市場の失敗の特殊な範疇であり, 多くの非営利組織のうち の一部に適用できる現象にす ぎない。 むしろより広く包括的な 「市場の失敗」 が非営利組 織の基礎であるとすることができる。 少なくとも, 契約失敗の理論では説明できない非営 利組織が現に存在しているか ぎり, 経済学の一般論としてはその普遍性 ・ 汎用性に欠ける といわざるを得ない。 最後に, 今後に残された問題として次の諸点が甫要であると指摘しておきたい。 1) 非 営利組織すべてに契約失敗理論を適用できるか。 す でにこの点について筆者は ハ ン ス マ ン の契約失敗論については ワ. ー. キ ン グ ペ ー パ ー で論じたが,. ハンス. マ ン以後の諸研究によっ. て適用条件と適用範囲が精緻化されているからこれらを改めて検討する必要が出てきた。 2) 非営利組織は契約失敗を解決することができるのか。. 一. つは契約の失敗は社会的な非. 効率を生むから効率性の高い非営利組織が選好されるという根拠に対して, 非営利組織そ れ 自 体がその固有な制度 (分配禁止の拘束)によって非効率とならないのか。 契約失敗の 解決はもっばら分配禁止の拘束有効性と拘束回避の難易性にかかっている。 この点につい. (44) Carmen MARCUELLO, Determinants of The Non-Profit Sector Size, An Empirical Analysis in Spain, Annals of Public and Cooperative Economics 69 : 2 1998, p. 175. (45) E. James, op. cit., p. 5. (46) Lester M. Salamon and Helmut K. Anheier, Defining the nonprofit sector, A cross­ national analysis, 1997, pp. 1 1-4, pp. 29-50. (47) Carmen MARCUELLO, p. 178. (� R. Steinberg, B. H. Gray, pp. 298-9. - 1 2 1 ( 1 2 1 )-.

(22) 第49 巻. 第1 号. てもすでに論述しているが阻, と くに 3部門間の競争激化に伴 っ て制度や組織の信頼性よ りもパ フ ォ. ー. マンス=結果の蓄積が生存の条件 と なり, このための利益性考慮が大きくな. り, しかもこれを受けて非営利組織にお ける資本報酬の拘束が緩和される方向にある状況 を担酌すれば, 利益分配禁止の拘束が どれほ ど非営利組織存在の予定される価値を実現す るのか。 3) 受益者の情報の遍在は少なくなるが, 他方で提供者の情報の遍在は大きくな る状況に おいて, 情報の非対称性を解決する制度や方法のなかで非営利組織は どのような 情報の非対称性を解決するこ と が最も有効か。 ここでは第2節の論述に止めたがさら に検 討を加えなければならない。 要するに, 高い情報非対称性一分配禁止の拘束一高い信頼性ー非営利組織の選好 · 存続 と いう循環図式を描く契約失敗理論は根底から再検討されるべきである。 しかしいずれにしても, ある種の限定 と 条件が必要であるが, 契約失敗理論の概念は非 営利組織の役割の評価 と 非営利組織を奨励あるいは抑制する公共政策の設計に と っ ていぜ ん と して中心をなす概念である と 結論できる叫 この契約失敗理論はいぜん と して非営利組織の存在を積極的に効率的で有効な経済制度 である と する根拠を展開する基本的な理論である。 これはまた経済の どの領域内で非営利 が活動するように奨励されるべきかを確認したい理論家や政策当 局に と っ て関心のあるも のだけではない。 この契約失敗の概念はさらに非営利組織の経営者や役員にある重要な原 則を強調している。 すなわち非営利組織のきわめて甫要な通貨は信頼性である と いう原則 である。 これが傷つけられれば, 非営利はその存立の 一つの重要な理由を失い, 非営利を 支援しそのサ ー ビスを利用する人たちの信頼を失うこ と になる と 示 唆しているのであ る GOO. (49) (50). 堀田稿 『ハ ン ス マ ン の非営利組織役割論J R. Steinberg, B. H. Gray, op. cit., p. 298.. (51) Dennis R. Young, Contract Failure Theory, op. cit., p. 196. - 1 2 2 C 1 22 )-.

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