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園庭での自由遊びにおける基本的な動きの特徴 ―身体活動量の違いによる検討―

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(1)

1) 東京未来大学/Tokyo Future University

2) 山梨大学教育学部/Faculty of Education, University of Yamanashi

3) 山梨大学大学院医工農学総合教育部/Integrated Graduate School of Medicine, Engineering, and Agricultural Sciences, University of Yamanashi

Ⅰ.緒 言

 子どもの体力・運動能力の低下が問題とされ久しく, 1964年から毎年実施されている体力・運動能力調査(ス ポーツ庁,2019)によると,児童の体力・運動能力は 1985年をピークに低下傾向を示し,現在においても低 い水準に停滞していることが明らかとなっている.ま た,森ほか(2010)の1966年から2008年までに6回実

園庭での自由遊びにおける基本的な動きの特徴

―身体活動量の違いによる検討―

Characteristics of fundamental movement in free play on the playground

―Examination based on diferences in amounts of physical activity―

篠 原 俊 明

1)

長 野 康 平

2)3)

中 村 和 彦

2)

Toshiaki Shinohara

Kohei Nagano

Kazuhiko Nakamura

Abstract

 The purpose of this study was to grasp the actual state of amounts of physical activity and fundamental movement in free play on the playground, as well as characteristics of fundamental movement based on differences in amounts of physical activity, with 53 4-year-olds (24 boys, 29 girls) as the target.

 The following points became clear:

1) In free play on the playground, there was a gender-based difference in the amount of physical activity, as boys took 2533.2±538.2 steps with an MVPA of 17.9±5.1 minutes, and girls took 1866.0±811.8 steps with an MVPA of 14.2±6.0 minutes.

2) Depending on the amount of physical activity, there was a significant difference in girls manipulative movements as to the number of types of fundamental movement exhibited.

3) It became clear that the content of play differed depending on the amount of physical activity, and that fundamental movement experienced differed accordingly.

4) It was confirmed that regardless of the state of physical activity, there was movement that was either not exhibited or had a low rate of exhibition.

 From the above, while free play on the playground is important for the physical activity of young children, and there was no difference in the number of fundamental movements exhibited depending on the amount of physical activity, because the fundamental movement and content of play that were experienced differed, continued support based on the characteristics of young children s physical activity is considered to be necessary.

Key words: children,free play,amount of physical activity,fundamental movement

       幼児,自由遊び,身体活動量,基本的な動き

(2)

施した全国規模の幼児の運動能力調査の推移に関する 報告をみると,幼児においても児童と同様の傾向を確 認することができ,低年齢化の様相にあることがわか る.さらに,中村ほか(2011)は,1985年と2007年の 幼児を対象に日常生活や運動遊びにおいて観察される 7種類の基本的な動きの動作様式について比較し, 2007年の幼児は動作様式の発達が未熟な段階に留まる こと,2007年の年長児の動作様式が1985年の年少児と 同程度であることを明らかにし,幼児の基本的な動き の発達が停滞していることを報告している.  子どもの体力・運動能力に関して,日本学術会議 (2017)は,身体活動量の確保と基本的な動きの習得 の重要性を指摘しており,日本体育協会(2015)は「幼 児期からのアクティブチャイルドプログラム」におい て,基本的な動きは将来的にスポーツに結び付く動き であり,幼児期での習得が望まれるとしている.一方, 子どもの身体不活動の問題は先進諸国においても問題 となっており,国際的な幼児期の身体活動量のガイド ラインとして「1日に少なくとも60分以上の中強度の 身体活動」が推奨されている(National Association for Sport and Physical Education,2009;Canadian Physical Activity Guidelines and Canadian Sedentary Behaviour Guidelines,2011).我が国においては,文 部科学省が2012年に策定した幼児期運動指針におい て,「幼稚園,保育所などに限らず,家庭や地域での 活動も含めた一日の生活全体の身体活動を合わせて, 幼児が様々な遊びを中心に,毎日,合計60分以上,楽 しく体を動かすことが望ましい」と示されている.こ のことから,幼児期における身体活動は基本的な動き と身体活動量の双方から捉える必要があると考えられ る.  また,幼稚園教育要領(文部科学省,2017)および 保育所保育指針(厚生労働省,2017)の「健康」領域 には「様々な遊びの中で,体を動かす楽しさを味わい, 自分の体を大切にしようとする気持ちが育ち,その際, 多様な動きを経験する中で,体の動きを調整するよう にすること」と明記されている.加えて,全国約 21,000か所の保育施設を対象にした調査によると, 97.1%の施設が平日7時台に開所し,64.1%が19時台に 閉所し,開所時間の平均は11.7時間になることが報告 されている(全国保育協議会,2018).さらに,ベネッ セ教育総合研究所(2016)の調査によると,4歳から6 歳11か月までの幼稚園に通う幼児の9割以上が園に5時 間以上在園し,保育園においては8割以上の幼児が8時 間以上在園していることが明らかとなっており,幼児 は一日の多くの時間を保育施設にて過ごしているとい え,そこでの遊びは,幼児の身体活動において重要な 役割を担っていると考えられる.  幼稚園や保育園での自由遊び場面における身体活動 に関する研究として,加速度計を用いて幼児の自由遊 びにおける身体活動量を捉えた研究(田中,2009;石 沢ほか,2014),屋外での自由遊び,室内遊び,運動 指導のそれぞれにおける身体活動量の差異を検討した 研究(田中ほか,2019)がある.しかしながら,これ らの報告は自由遊びにおける身体活動量の実態やどの ような遊びを行っていたかについて報告しているもの の,基本的な動きについては言及されていない.一方, 基本的な動きに言及した研究として,自由遊び場面を 直接観察し,出現した基本的な動きを捉えた研究があ る が( 石 河 ほ か,1981; 石 河 ほ か,1983; 油 野, 1988),これらは身体活動量については報告していな い.また,佐々木・石沢(2016)は,幼児6名を運動 能力で2群に分類し,各群における身体活動量と基本 的な動きのそれぞれの実態について報告し,長野ほか (2019)は,保育者による主観的評価のもと4名の幼児 を活発・不活発に分類し,保育園と公園での自由遊び における活発性の違いによる基本的な動きの特徴を報 告している.幼児の身体活動は身体活動量と基本的な 動きの双方から考える必要があるが,自由遊びにおけ る身体活動量と基本的な動きのそれぞれの実態や,活 発性と基本的な動きについて捉えた研究はあるもの の,自由遊びにおける身体活動量からみた基本的な動 きの特徴について明らかにした研究はみられない.幼 児の身体活動における園での自由遊びの重要性を考え れば,その知見を蓄積していくことは必要であり,保 育内容を検討するうえでも意義あるものと考えられ る.さらに,田中ほか(2019)は,園における屋外と 屋内での自由遊びでは,屋外の方が中・高強度活動の 割合が高いことを明らかにし,武田・赤木(2010), 細川(2015),真砂(2018)は園庭での自由遊びにお ける基本的な動きについて報告しており,園庭での自 由遊びにおける幼児の身体活動に関する知見の蓄積は 重要であると考えられる.  そこで本研究では,園庭での自由遊びにおける身体 活動量と基本的な動きの実態を捉えるとともに,園庭 での自由遊びにおける身体活動量の違いによる基本的 な動きの特徴について明らかにすることを目的とし た.

Ⅱ.方 法

1 .対象および期間  東京都内の同一区内にある公立保育園3園に在園す る4歳児53名(男児24名,女児29名)を対象とした.

(3)

対象児の身体的特徴は表1のようであった.調査は, 2017年12月から2018年1月にかけて,それぞれの園で1 回実施した.自由遊びは,幼児が所属する保育園の園 庭にて午前10時00分から10時30分まで実施した.この 30分間は,4歳児クラスのみが園庭を使用でき,園庭 に設置されている固定遊具および可動遊具は自由に使 えることを条件とした.園庭の遊具として,固定遊具 は鉄棒・砂場,可動遊具はボール・フラフープ・バケ ツ・缶ぽっくり・風呂用椅子・ベンチ・机・砂場用玩 具・縄跳び・タイヤ・お風呂マットなどであり,一園 のみ固定遊具として滑り台が設置されていた.また, 担任保育士および補助の保育士1名の計2名が30分間幼 児とともに遊んだが,保育士が幼児の遊びに関わるこ とはあっても,保育士から遊びを提案したり,指導し たりといったことはなく,幼児の意思によって遊びが 行われた. 2 .調査方法 1)身体活動 (1)身体活動の測定

 身体活動は3軸加速度計であるActive Style Pro; HJA-750C(オムロン社製)(以下,本器)を用いて epoch lengthを10秒として測定した.本器を幼児の腰 部に装着し,自由遊びにおける歩数および中・高強度 活動(moderateto-vigorous physical activity: MVPA) を記録した.記録したデータは専用ソフト 「オムロン USB通信トレイ (HHX-IT4)」および「活動量計デー タ収集ソフト Ver.2.0」を用いて抽出し,解析を行った. なお,装着に慣れるために事前に3日間にわたり在園 中,対象児に本器を腰部に装着させた.

 本器は,Active Style Pro;HJA-350IT(オムロン 社製)(以下,HJA-350IT)の後続機となっている. HJA-350ITは,歩数の計測に加え,10 秒間隔で算出 された 3 軸の合成加速度から Metabolic equivalents (METs)を推定し,活動強度別の時間を求めること ができる.独自の信号処理によって走・歩活動とそれ 以外の活動を判別し別々の式で METs を推定するこ とで,それぞれの活動の活動強度についても精度よく 推定できる.また,成人における演算アルゴリズムお よび計測値の妥当性については先行研究で詳述されて いる(Ohkawara et al.,2011;Oshima et al.,2010). 本器は,HJA-350ITと同様のアルゴリズムとなってい ることから身体活動の測定に用いることは妥当である と判断した. (2)MVPAの設定について  幼児の身体活動強度について,塩見ほか(2003)は 中程度の運動強度は3.5METs∼6 METs とし,角南 ほか(2004)は走行と歩行の閾値は 3.5 METs であっ たと報告しており,中強度のMETs 値については必 ずしも一致していない.また,使用する活動量計によっ て,活動強度の算出式が異なるため,研究者間で MVPAの定義が異なると指摘されている(田中・田中, 2010).HJA-350ITについては,児童の活動量を評価 した場合,METsが過大評価されることから,児童の 活動強度に対して修正アルゴリズムが示されている (Hikihara et al.,2014)が,幼児については未だ示さ れていない.しかし,石沢ほか(2014),佐々木・石 沢(2016)は, HJA-350 ITを用いて,幼児の遊び場 面を撮影し,遊び内容と活動強度の測定値を照合し, 4 METs を中強度のカットオフポイントとしている. 本器も同様のアルゴリズムによって活動強度を算出し ていることから,本研究においては4 METs以上を MVPAとした. 2)基本的な動き (1)基本的な動きの設定   基 本 的 な 動 き に つ い て は, 石 河 ほ か(1980), Gallahue and Ozmun(1998) を も と に 中 村(2011) が作成した36種類(平衡系9種類,移動系9種類,操作 系18種類)を参考に,保育士15名との協議のもと,平 衡系8種類,移動系8種類,操作系21種類の計37種を設 定した.なお協議に際して,本研究では園庭での自由 遊びを対象にすることから,「うく」と「およぐ」を 削除し,幼児の園庭での日常的な遊びを鑑みて「つく」, 「ころがす」,「まわす」を新たに設定した.また,真 砂(2018)も同様の理由で「うく」と「およぐ」を削 除し,「つく」を新たに設定している. (2)基本的な動きの測定  基本的な動きの測定については,園庭にデジタルビ デオカメラを3台設置し,幼児の30分間の自由遊び場 面を撮影した.撮影に際して,幼児一人ひとりに番号 が記されたビブスを着用させ,名前と番号を一致させ た.その後,石河ほか(1980),油野(1988),長野ほ か(2019)の調査方法を参考に,撮影した自由遊び場 表 1  対象児の身体的特徴

(4)

面をモニター画面上で観察し,調査票に記入した.対 象児一人につき30分間の自由遊びにおいて出現した動 きを,出現が確認されるごとにカウントした.カウン トに際して,「はしる」や「こぐ」といった循環系の 動きは動作が開始してから終結するまでを1動作とし てカウントした.5m走り停止し再び2m走れば「はし る,はしる」として「はしる」を2回カウントした.「投 げる」や「ける」などの非循環系の動きは1動作ごと にカウントした.また,なわ跳びの走り跳びで2回跳 んだ場合は,「はしる,まわす,とぶ,とぶ」とし, 組み合せの動きについては循環系および非循環系のカ ウント方法に則り,1動作ずつカウントした.なお,1 回でも出現が確認された基本的な動きは出現と判断し た.映像の観察は筆者が実施したが,幼児の運動が複 雑で判断が困難な場合は,事前に対象園の園長または 担任保育士に調査方法の確認・練習をしたうえで筆者 とともに映像を観察しカウントした.加えて,観察の 際に幼児が実施している遊び内容についても調査を 行った. 3 .統計解析  園庭での自由遊びにおける歩数およびMVPAの性 差を捉えるために,対応なしのt検定を実施した.ま た,身体活動量の違いによる基本的な動きの特徴を捉 えるために,性別にMVPAの中央値(男児=19.1分, 女児=13.3分)を基準として,活発男児(n=13),不 活発男児(n=11),活発女児(n=15),不活発女児(n=14) に分類し,出現した基本的な動きの種類数について対 応なしのt検定を実施した.さらに,性別の群別の身 体活動量について対応なしのt検定を行った.分析に はHADを用い,統計上の有意水準はすべて5%未満 とした. 4 .倫理的配慮  調査に先立ち,調査協力園の園長,保育士および保 護者に研究の趣旨説明を行い,保護者からの同意を得 られた幼児のみを対象とした.また,本研究は東京未 来大学研究倫理・不正防止委員会の承認を得た(承認 番号:101).

Ⅲ.結 果

1 .身体活動の状況  表2は,30分間の自由遊びにおける身体活動状況の 性差を示している.男児においては歩数が2,533.2± 538.2歩,MVPAが17.9±5.1分,女児では歩数が1,866.0 ±811.8歩,MVPAが14.2±6.0分であった.t検定の結 果,歩数およびMVPAにおいて有意差が認められた. また,性別にみた群別の身体活動量について比較した 結果,男児の歩数では,活発男児は2,852.2±470.2歩, 不活発男児は2,214.2±403.0歩(p =0.02),MVPAでは, 活発男児は22.1±2.2分,不活発男児は13.8±3.5分(p =0.00)となり,何れも有意差が認められた.また女 児の歩数では,活発女児は2466.1±639.3歩,不活発女 児 は1,223.0±344.3歩(p =0.00),MVPAで は 活 発 女 児は18.8±4.0分,不活発女児は9.3±3.0分(p =0.00) となり,双方に有意差が認められた(表3). 表 2  園庭における自由遊びの身体活動状況の性差 表 3  性別にみた群別の身体活動量の比較

(5)

2 .基本的な動きの実態  表4は,自由遊びにおける基本的な動きの出現状況 を示している.男児では28種類(平衡系動作6種類, 移動系動作7種類,操作系動作15種類),女児では27種 類(平衡系動作6種類,移動系動作7種類,操作系動作 14種類)となった.  具体的に,「たつ」「あるく」「はしる」は,すべて の幼児で確認された.一方,「くむ」「さかだち」「はう」 「ささえる」「おさえる」「あてる」「わたす」「つむ」「た おす」はいずれの幼児においても出現せず,「つく」 は男児のみ確認された.また,「くぐる」は男児4.2%, 女児3.4%,「おす」は男児8.3%,女児3.4%,「うつ」 は男児4.2%,女児6.9%といったように共通して出現 割合が低い動きが確認された.一方,「のる」は男児 4.2%, 女 子17.2%,「 と ぶ 」 は 男 児79.2%, 女 児 31.0%,「こぐ」は男児4.2%,女児17.2%といったよ うに,確認されたものの性によってその割合が異なる ことが確認された. 表 4  園庭での自由遊びにおける基本的動きの出現状況

(6)

3 .身体活動量からみた基本的な動きの特徴  幼児が経験した基本的な動きの種類をみると,活発 男児は21種類(平衡系動作3種類,移動系動作7種類, 操作系動作11種類)であり,不活発男児は24種類(平 衡系動作4種類,移動系動作6種類,操作系動作14種類) であった.また活発女児は25種類(平衡系動作6種類, 移動系動作6種類,操作系動作13種類)であり,不活 発女児は18種類(平衡系動作3種類,移動系動作7種類, 操作系動作8種類)となった(表4).  出現割合をみると,「すべる」は活発男児30.8%, 不活発男児27.3%,「ひく」は活発男児23.1%,不活発 男児18.2%と同様の割合を示す動きがある一方,「ほ る」は活発男児7.7%,不活発男児36.4%,「なげる」 は活発男児15.4%,不活発男児45.5%などは出現割合 が大きく異なった.さらに,「まわる」は活発男児 15.4%,不活発男児0.0%,「わたる」は活発男児0.0%, 不活発男児54.5%,など11種類の動きはどちらかのみ に確認された.  女児においては,「とぶ」は活発女児33.3%,不活 発女児28.6%などは割合が近い一方,「ほる」は活発 女児33.3%,不活発女児71.4%などは割合が大きく異 なった.また,「まわる」は活発女児33.3%,不活発 女 児0.0%,「 ふ る 」 は 活 発 女 児0.0%, 不 活 発 女 児 21.4%,など11種類の動きはどちらかのみ確認され, 男児と類似の傾向となった.  性別に身体活動量の中央値を基準に2群に分類し, 群ごとに出現した基本的な動きの種類数を比較した結 果,男児では有意差は認められず,女児では,操作系 動作および合計において有意差が認められた(表5). 表6は遊びの出現状況を示している.「ヒーローごっこ」 は男児にのみ確認された.男児では「鬼ごっこ系」は 活発男児100.0%,不活発男児36.4%,「ドーンジャン ケン」は活発男児0.0%,不活発男児36.4%,女児では 「砂遊び」は活発女児33.3%,不活発女児92.9%,「電 車ごっこ」は活発女児33.3%,不活発女児0.0%と男児 女児ともにどちらかにした出現が確認されない遊びや 確認されても割合が大きく異なる遊びが確認された. なお,「鬼ごっこ」「氷鬼」「バナナ鬼」等が確認され たがそれらは「鬼ごっこ系」としてまとめている. 表 5  園庭での自由遊びにおいて出現した基本的な動きの種類数 表 6  園庭での自由遊びにおける遊び内容の出現状況

(7)

Ⅳ.考 察

 4歳児の平日1日あたりの歩数に関する研究を概観す ると,男児は9,400歩から14,000歩,女児は8,500歩か ら12,000歩となっている(中野ほか,2010;中野ほか, 2016;秋武ほか,2016;佐々木ほか,2013).また, 在園時の歩数について,石沢ほか(2014)は,4歳児 の男児は4,632±741歩,女児は3,427±627歩,田中・ 田 中(2009) は,4,5歳 児 の 男 児 は5,696±1,612歩, 女児は4,898±1,428歩と報告している.加速度計によ る活動量の評価値については,本器と同様のアリゴリ ズムを有する加速度計HJA-350ITを用いて4歳児の在 園中のMVPAの時間を捉えた報告によると,男児で は43.0±13.0分,女児では33.8±8.2分となっている(石 沢ほか,2014).これらの研究成果を参照すると園庭 での自由遊びの身体活動量は,平日1日の歩数では男 児は約18%∼26%,女児は約15%∼21%,在園中の歩 数では男児は約44%∼54%,女児は約38%∼54%,在 園中のMVPAでは男児は約41%,女児は約42%に相 当し,園庭での自由遊びは身体活動量の確保に寄与す るといえ,在園時に園庭での自由遊びの時間を設ける ことは幼児の身体活動を考えるうえで重要と考えられ る.また,子どもの健康な身体を維持するために推奨 される活動量のガイドラインは1日60分間の活発な運 動とされており(日本体育協会,2010),このことか らも園庭での自由遊びの重要性が伺える.園庭での自 由遊びにおける身体活動には性差があり,男児の方が 活動的であった(表2).これまでの研究においても男 児の方が活動的であることが示されており(中野ほか, 2010;石沢ほか,2014),それは園庭での自由遊びに おいても同様であることが明らかとなった.  基本的な動きをみると,「たつ」「あるく」「はしる」 はすべての幼児に確認され,これらの動きは遊ぶうえ で不可欠な動きであることからすべての幼児が経験し たと考えられる.実際,「あるく」や「はしる」は, 現在行っている遊びで必要な可動遊具を取りに行く場 面,幼児の興味・関心が他の遊びに移行して遊び場が 変わる場面など,多数の場面で観察された.武田・赤 木(2010),及川(2014),真砂(2018)もこれらの動 きが多くの幼児に確認されたことを報告しており,本 研究も同様の結果となった.一方,「くむ」「はう」「あ てる」「つく」など出現しないあるいは出現割合が低 かった動きが確認された.「あてる」「つく」は「ボー ル遊び」での出現が予想されたものの,結果は異なり, ボールを扱う動きのバリエーションが少ない実態が明 らかとなった.このことより,ボールという物的環境 を整えるだけではなく,幼児が多様な動きを経験でき るよう保育者の支援が必要なのかもしれない.また, 「まわる」「ぶらさがる」「とぶ」「ほる」のように,性 で出現割合が異なる動きが確認されたことから,性に よって自由遊びで経験する基本的な動きに偏りがある といえる.遊び内容をみると「砂遊び」や「鉄棒ブラ ンコ」は出現割合が性で異なり,観察時に「砂遊び」 で「ほる」を,「鉄棒ブランコ」で「ぶらさがる」を 確認することができた.及川(2014)は,遊び内容の 特性が経験する動作に関与することを示唆しており, 油野(1998)や真砂(2018)は,遊びで使用する遊具 の有無によって出現する動きに差異が生じるとしてい る.これらのことより,遊び内容が出現する基本的な 動きに影響を及ぼすと考えられ,性によって実施した 遊び内容が異なることから,動きの出現割合に差異が 生じたと考えられる.  身体活動量別にみると,出現した基本的な動きの種 類は18∼25種類(表4)である一方,出現した基本的 な動きの種類数は7.7∼9.7種類となった(表5).また, 表6に示すように本研究においては,すべての幼児が 遊んだ遊びは確認されず,幼児たちは特定の遊びでは なく,個々で様々な遊びを展開していたと考えられる. 田中ほか(2019)は,運動指導時に比べて自由遊び時 の方が,幼児が自由な発想で遊びを展開している可能 性について言及している.上述したように遊びの内容 と出現する基本的な動きには関連性があると考えら れ,幼児たちが特定の遊びで遊んだ場合,その遊びの 特性に関わる基本的な動きが出現する一方,それ以外 の基本的な動きは出現しにくく,動きの出現が偏ると 思われる.しかし,すべての幼児で出現が確認された 動きは,記述したように「はしる」などの限られた動 きのみとなっており,多様に動きが確認されている(表 4).このようなことから,園庭での自由遊びにおいて は,全体の種類数から捉えると出現した基本的な動き は10種類以下であるものの,幼児は,ひとり一人の興 味・関心によって多彩に遊んでおり,その遊びの中で それぞれに基本的な動きを経験していたと考えられ る.  男児においては,身体活動量の違いによって出現し た種類数に有意差が認められなかった(表5).具体的 に動きの出現割合をみると「わたる」「ほる」「なげる」 「ころがす」などの動きは,どちらかの出現割合が低 いあるいはどちらかにのみに出現が確認された.また, 活発男児は「鬼ごっこ系」「フラフープ遊び」の割合 が高く,一方で不活発男児は「ボール遊び」「砂遊び」 が高い割合を示し,「ドーンジャンケン」などは不活 発男児のみが遊んでいた.そして,これらの遊び場面 において,出現割合に違いがみられた動きの多くが観

(8)

察された.石沢ほか(2014)は活発性によって自由遊 びの活動内容に差異があるとし,真砂(2018)は遊び における遊具の有無や人数が出現する動きに影響する としている.これらのことから,園庭での自由遊びに おける身体活動量の違いによって,出現する動きの種 類数は差異がないものの,遊び内容は異なり,それに よって出現する動きに違いが生じると考えられる.  不活発女児は操作系動作の種類数が少ないことが明 らかとなった(表5).乳児を対象に子育て支援施設内 での自由遊びにおける基本的な動きを捉えた及川 (2014)報告では,プラレールやブロックなど乳児が 手に取って扱うことができる遊具が豊富に用意され, 静的な遊びを中心に行うほど,それらを用いるために, 操作系動作の種類数が増加し,移動系動作が抑制され たことが示されている.本研究においては,不活発女 児は「砂遊び」や「ままごと」など静的な遊びを中心 に行っているが,この報告とは一致せず,園庭での自 由遊びで静的な遊びを中心に遊んだ場合,操作系の動 きが抑制される可能性が示唆された.本研究では,活 発女児には「鬼ごっこ系」や「砂遊び」など不活発女 児と同じ遊びに加え,「フラフープ遊び」「電車ごっこ」 「なわ跳び」「ドーンジャンケン」「鉄棒ブランコ」が 確認され,遊びが多岐にわたっており(表6),その遊 びに付随して「まわす」「こぐ」「つかむ」などの活発 女児のみに出現した操作系の動きが観察された.活発 女児は様々に遊びを変えながらその中で多くの種類の 動きを経験していたと考えられる.一方,不活発女児 は「砂遊び」「ままごと」の割合が高いものの,「フラ フープ遊び」や「なわ跳び」など,用具操作を伴った 動的な遊びは確認されておらず,それによって操作系 の動きの出現が少なかったと考えられる.また,移動 系動作については,「あるく」などの遊びに必須の動 きに加えて,活発性に関わらず遊びの移行場面や可動 遊具を取りに行く場面において「はねながら」移動す る姿が確認された.一方で,「とぶ」は,活発女児で は「フラフープ遊び」や「なわ跳び」などで対象物を とぶ,不活発児では「ままごと」で座っているベンチ や風呂用椅子からとぶ,姿が確認された.移動系動作 は,遊びで必須となる動きが多いことに加えて,目的 は異なってもそれぞれの遊びの中で経験できる動きで あるため,活発性による差異が生じなかったと考えら える.したがって,女児も男児と同様に身体活動量に よって嗜好する遊びが異なり,さらに不活発女児は, 遊びのバリエーションが乏しいことに加え,操作系の 動きの経験が少ないことから,様々な遊びに興味を示 し操作系の動きが経験できるよう配慮することが必要 となる.  身体活動量の違いによって出現する基本的な動きの 種類数は,女児の操作系動作を除き有意差は認められ なかった.しかし,幼児ひとり一人の興味・関心によっ て多彩に遊びが展開され,そこでそれぞれに基本的な 動きを経験していた.また,身体活動状況によって遊 び内容が異なり,出現する基本的な動きに差異が生じ ることから,保育場面においては幼児の身体活動状況 を配慮して支援していく必要がある.保育者による幼 児の身体活動水準の主観的評価は,加速度計による客 観的測定と相関がみられ,有効な手段であると報告さ れていることから(石沢ほか,2011;田中・田中, 2013),客観的測定である本研究の成果も保育現場に 還元できると考えており,今後は身体活動水準を考慮 した保育者による支援を行い,支援方法を検討してい くことが重要と思われる.  以上のことから,園庭での自由遊びにおいて幼児は 身体活動量を確保できること,身体活動量の違いに よって出現する基本的な動きの種類数は女児の操作系 動作以外で有意差が認められない一方,身体活動状況 によって嗜好する遊びが異なり,経験する基本的に動 きには違いがあることが明らかとなった.また,身体 活動量に関わらず出現しないまたは出現割合が低い動 きが確認された.これらのことから,幼児の身体活動 状況を考慮しつつ,真砂(2018)が指摘するように可 動遊具の設置などの園庭環境の工夫や,保育者による 声掛けなどの働きかけを行い,幼児が遊びの幅を広げ, より多様な種類の動きを経験できるよう支援していく ことが重要と考えらえる.

Ⅴ.本研究の限界

 本器と同様のアルゴリズムから成る加速度計(HJA-350IT)を用いた石沢ほか(2014)の研究によると,「フ ラフープ遊び」などの大人には見られない様々な動き は,活動強度の測定値に注意する必要があるとしてお り,本研究においてもフラフープ遊びが確認されたこ とから,結果の解釈には留意する必要がある.また, 調査協力園3園のうち、1園のみに滑り台が設置されて おり,この環境が結果に影響をした可能性は否定でき ない.さらに,楠本ほか(2005)は,季節や気候変動 によって幼児の身体活動量が増減するとし,吉田 (2015)は幼児の遊びには時期による遊びの偏り(流 行りの遊び)があり,長期に亘る観察の検討の必要性 を指摘している.本研究においては,12月から1月に かけて測定を実施しており,季節が身体活動量に影響 を及ぼした可能性を否定できず,さらに調査が1回で あったことから,流行りの遊びによって幼児が出現す

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る基本的な動きに差異が生じることも予想できる.今 後は,季節を考慮しつつ,複数回に亘る断続的な観察 が必要になると思われる.

Ⅵ.まとめ

 本研究では,園庭での自由遊びにおける身体活動量 と基本的な動きの実態を捉え,さらに身体活動量の違 いによる基本的な動きの特徴について検討した.以下 のことが明らかとなった. 1) 園庭での自由遊びにおいて,男児は歩数が2,533.2 ±538.2歩,MVPAが17.9±5.1分, 女 児 は 歩 数 が 1,866.0±811.8歩,MVPAが14.2±6.0分であり,身 体活動量には性差があった. 2) 身体活動量の違いによって,出現する基本的な動 きの種類数は,女児の操作系動作において有意差 が認められた. 3) 身体活動量の違いによって,遊び内容が異なり, それによって経験する基本的な動きも異なること が明らかとなった. 4) 身体活動状況に関わらず出現しないまたは出現割 合が低い動きが確認された.  以上のことから,園庭での自由遊びは,幼児の身体 活動量の確保に寄与するといえる.身体活動量によっ て出現する基本的な動きの種類数に違いはないもの の,経験する基本的な動きや遊び内容が異なることか ら,幼児の身体活動状況を考慮しつつ,幼児が遊びを 広げ,多様な種類の動きを経験できる支援をしていく 必要性が示唆された.

文 献

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参照

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