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SDGsは誰のため? : シエラレオネで考えた

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Academic year: 2021

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全文

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SDGsは誰のため? : シエラレオネで考えた

著者

井上 直美

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

IDEニュース

3

ページ

12-13

発行年

2019-03

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00050742

(2)

エッセイ

IDE N

ews

12 IDE ニュース No.3(2019.3) 持 続 可 能 な 開 発 目 標 (Sustainable Development Goals:SDGs) が 目 指 す、 国際社会が一体となって実 現に取り組む「誰 1 人取り 残さない」(No one will be left behind)社会の「誰 1 人」とはどのような人なのでしょう。私は少 し遅い夏休みを取って訪問したシエラレオネ で考えてみました。 シエラレオネはアフリカ西部の大西洋に面 する国で、世界の中で最も厳しい貧困状況 にある国の 1 つに数えられます。2018 年に 発表された 2016 年時点の出生時平均寿命は 183 カ国中 181 位の 53.1 歳(WHO)、人間開 発指数(HDI)は 189 カ国中 184 位、1 人当 たりの国民総所得(GNI)は 189 カ国中 180 位の 1240 米ドル(UNDP)でした。 1991 年から 2002 年まで続いた内戦は、7 万 5000 人以上の死者を出し、2014 年にはエ ボラ出血熱の感染によって多くの国民が犠牲 となり、社会・経済システムが大きな損害を 受けました。長年続いた内戦のために国のイ ンフラは整っておらず、水道の約 85%に異 物混入があると言われています。 ●災害脆弱性が高いシエラレオネ シエラレオネは災害に対する脆弱性が非常 に高い国です。同国は自然災害が多く、行政 や医療サービスは行き届いておらず、教育や 環境保護の水準は低く、災害時の対応や予 防・適応能力が十分ではないため、災害のダ メージを受けやすい状況にあります。 首都フリータウン郊外のリージェント地区 では、2017 年 8 月に大規模な地滑りが起き ました。山の傾斜に沿って建てられた木造の 民家が密集する斜面で起きた地滑りによっ て、1000 人以上の死者・行方不明者が発生 し、4000 人以上の住民が避難を余儀なくさ れ、多くの住民が被災民キャンプへ移り住み ました(写真 1)。 ●取り残された人々 筆者は被災民の生活の様子を知るために、 2015 年 9 月に発生した豪雨による洪水の被 災者が暮らす Mile 6、Koya Rural 地区の被 災民キャンプを訪ねました(写真 2)。キャ ンプには約 120 世帯、750 人が電気や水道の ない生活を送っています。井戸の浄水設備は、

井上 直美

SDGs は誰のため?

――シエラレオネで考えた――

エッセイ

写真 1  地滑りが発生した Mount. Sugar Loaf(2018 年、筆 者撮影)

(3)

エッセイ

IDE N

ews

13 IDE ニュース No.3(2019.3) 国際移住機関(IOM)が日本の支援を受け て配置しました。 一家 8 人で被災民キャンプに暮らす家族の お母さんの Aminata Turay さんは「被災か ら 3 年経っても元の場所に戻れない」、「仕事 はなく生活がとてもに苦しい」と現状を話し ました。彼女は一家 8 人が暮らす床にビニー ルシートがひかれたトタン屋根の家の中を案 内してくれました(写真 3)。 被害は、社会・経済・環境的な原因によっ て引き起こされたものです。豪雨による地滑 りのきっかけは、密集した都市部からあふれ 出た人々が安価な住処を求めて斜面や川岸に 家を建て始めたことでした。彼らは防災の知 識を持たないまま、斜面の木を伐りトタン屋 根の家を建てました。生活に必要な薪を確保 するためにまた伐採し、過度の森林伐採が土 壌の浸食を悪化させました。そして山は豪雨 に耐えられなくなり、地滑りが起きたのです。 なぜ彼らは斜面に住まなければならなかっ たのでしょうか。何も好んで斜面を選んだわ けではなく、彼らは社会的・経済的に脆弱な 立場にあるために、そこに住まざるを得ず、 環境変動の影響を受け、災害に遭ったのです。 ●誰のための SDGs か SDGs は、持続可能な開発には貧困の撲滅 が不可欠であり、この解決は世界にとって最 も困難な挑戦であるという考えに基づいてい ます。これは 2000 年に始 まったミレニアム開発目 標(MDGs)の後継とし て生まれました。MDGs の下に途上国の経済成長 によって貧困削減は一定 の成果をもたらしました。 一方でその恩恵を受けら れずに取り残された人々 が多く存在するとの反省に立ち、SDGs はこれ までのやり方に変革を求めています。 すべての人々の人権を実現し、ジェンダー の平等とすべての女性と少女のエンパワーメ ントを達成することを通じて、誰も取り残さ れない世界を作ろうとするのが、SDGs の 17 のゴールと 169 のターゲットです。 被災民キャンプで生活する人々を取り残さ ずに持続可能な開発を行うためには、社会、 経済、環境の 3 つからのアプローチが必要で す。そのために SDGs の 17 のゴールは、そ れぞれに相互関係があり、切り離すことがで きないものなのです。 私は、SDGs は誰のためなのかを思い起こ し、自分の今までのやり方をどのように変え れば Aminata さん家族を取り残さない社会 を作ることに繋がるのかを見つけようという 想いを胸に、シエラレオネを後にしました。 (いのうえ なおみ/アジア経済研究所 開 発研究センター) 写真 2  被災民キャンプ内の井戸周辺 の様子(2018 年、筆者撮影) 写真 3  Aminata さんが一家 8 人で暮らす広さ約 8 畳の部屋(2018 年、筆者撮影) 写真 4  財務・経済開発省に掲げられた SDGs パネル(2018 年、筆者撮影)

参照

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