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メッシュ農業気象データシステムの予報値を利用したトビイロウンカの発生世代予測

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緒     言  害虫の世代予測は,防除適期を知るために必須な手 法として,発生予察事業の中で各都道府県の病害虫防 除所などが行っており,害虫が発生する時期の予測情 報として発表されている(例えば,宮崎県,1999,佐 賀県,2014,熊本県,2000)。この世代予測は,通常 アメダスの気温平年値を使って有効積算温度を計算す ることで予測される。気象庁では,西暦年の1の位が 1の年から続く30年間の平均値をもって平年値とし, 10年ごとに更新している(気象庁,2011)。現在は, 1981∼2010年の観測値による平年値が使用されている。 近年は温暖化の影響や異常気象などにより,気温推移 が平年値から大きくずれる年があったり,アメダス観 測地点から離れた圃場での予測計算は誤差が大きく なったりする。例えば1898∼2018年の7月平均気温を 見ると,“日本の7月の平均気温は様々な変動を繰り 返しながら上昇しており,長期的には100年あたり 1.12 ℃ で 上 昇 ”( 気 象 庁,2019a) し て い る。 ま た “2018年7月の日本の平均気温の基準値(1981年∼ 2010年の30年平均値)からの偏差は+1.61℃で,1898 年 の 統 計 開 始 以 降, 4 番 目 に 高 い 値 ”( 気 象 庁, 2019a)となった。この例のように気候変動下では平 年値の利用だけでは十分でない場合がある。  近年,気象庁が4週間先までの平均気温データを提 供したり,農研機構がこれらの予測データやアメダス データを1km メッシュ加工した平均気温,最高気温, 最低気温データ等をメッシュ農業気象データ(Agro-Meteorological Grid Square Data,以下,AMGSD, 大野,2019;大野ら, 2016)として提供したりと,気 温予測値の提供状況が変わってきている。AMGSD は13種類の農業気象データを,空間補間して約1km メッシュ単位で整備し,1980年からの過去値,最長26 日先までの予報値,その先の平年値を,シームレスに Kyushu Pl. Prot. Res. 65:75−83(2019)

†  tanaka.kei@affrc.go.jp

*  現在 農業・食品産業技術総合研究機構

*  Present address: Headquarters National Agriculture and Food Research Organization, Tsukuba, Ibaraki 305-8517, Japan

メッシュ農業気象データシステムの予報値を利用した

トビイロウンカの発生世代予測

田中  慶1,†)・大塚  彰1)・松村 正哉2,*)

(1)農研機構農業技術革新工学研究センター・2)農研機構九州沖縄農業研究センター) Generation forecast of Nilaparvata lugens using forecast data of agro-meteorological grid square data system. Kei Tanaka1), Akira Otuka1)and Masaya Matsumura2)1)Institute of Agricultural Machinery, NARO, Tsukuba, Ibaraki 305-0856, Japan, 2)Kyushu Okinawa Agricultural Research Center, NARO, Koshi, Kumamoto 861-1192, Japan)  害虫の発生世代予測は,防除適期を知る必須な手法であり,有効積算温度を用いて行われる。 現在その予測には,アメダス平年値が利用されているが,近年の温暖化により気温推移が平年値 から外れ予測誤差が大きくなっている。農研機構は1km メッシュで26日先までの予報値を含む 気温データを提供している。これを用いれば,世代予測精度の向上が期待される。本研究では, トビイロウンカを対象としてメッシュ農業気象データ気温予報値を用いた世代予測を行い,2014 ∼2017年に試験圃場で調査した密度推移データで評価した。また宮崎,佐賀,熊本の発生予察調 査地点において,世代予測で予報値と平年値を用いた場合で比較を行った。その結果,払い落と し調査による評価では発生世代を正しく予測した。また予測評価では,平年値と気温差がある年 や,アメダス地点から離れた地点や山間部の標高差のある地点で予測を行う場合にメッシュ予報 値の利用が有効であると考えられた。

Keywords: effective accumulative temperature, meteorological forecast data, optimum timing for control

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つないで提供するシステムである。必要とする気象要 素,地域,期間は任意に設定して取得できる。  さらに気象庁は,2019年のスーパーコンピュータの 更新に合わせて数値予報モデルを改良し,6月から2 週間先までの平均気温に加えて最高気温,最低気温も 提供する予定である。今後,平年値と比べてこうした 気象予測値を用いることで,世代予測の精度が高まり, 農業の現場でより正確な防除適期が利用できるように なると期待される。しかし現在都道府県の害虫の世代 予測では,気象予測値を使った予測は普及していない。 水稲の生産現場では,中国から毎年梅雨時期に飛来す るイネの重要害虫であるトビイロウンカ Nilaparvata lugens(Stål)の防除としてラジコンヘリコプターを 利用した航空防除を行っているため,防除時期を1ヶ 月前に決定する必要がある。その防除計画を立てる際 に世代予測の情報を利用しているが,その後の気温推 移が平年値からずれると,防除適期がずれ,防除効果 が減少してしまう。そのため,できるだけ正確な世代 予測情報を出すことで,地域全体の防除効果を向上さ せることが期待されている。  そこで本研究では,トビイロウンカを対象として, 世代予測に AMGSD の気温予報値を用いた場合と従 来のアメダス平年値を用いた場合とで比較を行って予 測精度の評価を行い,現場で使える気象予報値を用い た世代予測手法の開発を行った。さらに有効積算温度 の計算パラメータを変えることで様々な害虫種に対応 できる世代予測アプリケーションを開発した。 方     法  1.有効積算温度の計算方法  世代予測の計算は,各県でトビイロウンカの防除指 針が発表される7月15日を実行日として行った。その ため AMGSD から取得した気温データは7月14日ま では過去値,当日から26日先までは予報値,それ以降 の8月8日から先が平年値となっている(第1図)。  世代予測では,トビイロウンカの飛来日を予察灯で の誘殺数推移とウンカ飛来予測データ(JPP-NET, 1996)を基に決定し,その飛来日を起点として気温推 移から虫の有効積算温度を計算した。複数の飛来日が あった場合は,それぞれの飛来日を起点とした。気象 データは,払い落とし調査地点に最も近い位置の日最 高気温と日最低気温を,AMGSD(大野,2014)とア メダス(気象庁,2002)から取得した。AMGSD の データはアメダスの値を空間補間して作成されている。 有効温度は三角法(坂神・是永,1981)により,日最 高気温,日最低気温と,トビイロウンカの発育下限温 度(K1),発育上限温度(K2),発育停止温度(K3) から求めた。世代予測は,飛来世代の成虫ステージか ら開始され,有効温度の積算値が,卵,幼虫,成虫の 各ステージで決められた有効積算温度定数(K)を超 えると,次のステージへ移行し,卵ステージに戻ると 新たな世代になるという計算手法で行われている。各 定数は,各県が発表しているトビイロウンカの害虫予 察情報や防除適期を作成するために利用している第1 表の値を利用した。防除適期は幼虫ステージの中央よ り前半の若齢幼虫期とした。

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AMGSD

AMGSD

第1図 AMGSD 予報値による世代予測と,アメダス平年値による世代予測を比較する場合の3種類の気象デー タ構成.比較対象は,全期間が過去値である AMGSD データである.AMGSD 予報値とアメダス平年値のデータ 構成の大きな違いは,当日から26日先までは予報値であるということである.

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 2.評価方法  世代予測手法は AMGSD 過去値とトビイロウンカ 発生密度データの2種類のデータとの比較によって評 価を行った。  最初の評価は,すべての期間を AMGSD 過去値で 計算した防除適期を基準とし,AMGSD 予報値とア メダス平年値で予測したそれぞれの防除適期の,基準 からの誤差を評価した。  2つ目の評価は,払い落としによる幼虫発生密度 データと世代予測結果の幼虫ステージとの比較による 評価である。払い落とし調査は九州沖縄農業研究セン ター内の試験圃場で,トビイロウンカの飛来数が少な かった2015年を除く2014∼2017年の第2表に示した調 査日に行われた。品種“にこまる”のイネ株元(20 株)で発生したトビイロウンカを粘着板(18×24cm) に払い落として,拡大鏡を使って観察し幼虫の数を記 録したものである。この数字を密度(株当たりの個体 数)に変換し,発生密度の推移を求めた。  一方,世代予測から算出された幼虫ステージ期間か ら幼虫密度を推定した。各世代の幼虫密度は世代予測 で得られた幼虫ステージ期間の中間日をピークとした 正規分布とし,1世代当たりの個体数の増殖率を10倍 (渡邊,1994)とし,標準偏差は√2 倍とした。第1波 と第2波の幼虫密度の増加期間が払い落としによる発 生密度データの増加期間と一致するかを比較した。  3.害虫世代予測アプリケーションの開発  様々な条件でトビイロウンカの世代予測を行うため, また様々な昆虫種の世代予測を行うためにアプリケー ションソフトウエアを,Java 農業モデル開発用フレー ム ワ ー ク(Java Agricultural Model Framework: JAMF,田中,2006, 2013, 2019)を用いて開発した。  JAMF は,メッシュ農業気象データやアメダスか ら気象データを取得する機能,有効積算温度の計算の ように日時単位のループ処理を終了条件まで繰り返し 実行する機能,結果をグラフ画像,HTML の表, CSV,JSON,XML,Excel ブック等の各形式で出力 する機能を提供する。  さらに,AMGSD の過去の予報値を含む気象値を 再現するために,netCDF 形式データの読み込み機能 を JAMF に追加した。JAMF のこうした機能を利用 すれば,有効積算温度を利用するアプリケーション開 発は容易となる。 第1表 有効積算温度パラメータ 県 ステージ 発育下限温度(℃) 発育上限温度(℃) 発育停止温度(℃) 有効積算温度(度日) 宮崎県 成虫 11.7 28.5 33.0 100.0 卵 12.7 28.5 33.0 109.4 幼虫 11.5 28.5 33.0 189.4 佐賀県 飛来成虫 12.0 28.0 33.0 100.0 成虫 12.0 28.0 33.0 195.0 卵 12.0 28.0 33.0 100.0 幼虫 12.0 28.0 33.0 109.0 熊本県 成虫 12.0 28.5 33.0 125.0 卵 11.4 28.5 33.0 135.0 幼虫 6.5 28.5 33.0 250.0 第2表 払い落としによるトビイロウンカ発生 密度調査の調査日a) 2014 2016 2017 移植日 6/9 移植日 6/9 移植日 6/12 6/30 6/30 − 7/4 7/5 7/10 7/15 7/10 7/18 7/21 7/19 7/26 8/1 7/27 8/2 8/11 8/4 8/9 8/18 8/12 8/16 8/26 8/19 8/23 9/3 8/29 9/1 9/12 9/5 9/11 9/22 9/10 9/19 9/30 9/21 9/25 − 10/4 10/5 a) 品種:にこまる,1区0.5a(5×10m)2反復, 栽植密度は条間30cm 株間18cm で移植

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 世代予測アプリケーションの動作は,調査年,調査 地点,飛来日,気象データの種類の数だけ繰り返し計 算実行され,AMGSD 予報値を利用した場合と,ア メダス平年値を利用した場合での防除適期を両方出力 されるように設計した。また,このアプリケーション は,多くの研究者によって報告された様々な害虫のパ ラメータ(桐谷, 1997, 2012)を利用した世代予測を 実行できるように,害虫の種ごとに各ステージのパラ メータ(発育零点と有効積算温度定数)の値を CSV 形式で登録し,実行時に種名とパラメータのインデッ クス値を指定できるように設計した。 結果および考察  AMGSD 過去値を用いた防除適期を基準とした評 価では,AMGSD 予報値で予測した防除適期とアメ ダス平年値で予測した防除適期の基準からの誤差で評 価した。宮崎,佐賀,熊本の各県の調査圃場のある地 点において,飛来日のデータがある2014∼2017年の4 年間で,防除適期の比較を行った(第3∼5表)。 メッシュ予報値による防除適期の誤差が,アメダス平 年値による防除適期の誤差より小さいか,同じである 場合は背景が白色で,そうでない場合が灰色となって いる。全県の平均誤差はメッシュで6.7日,アメダス で8.9日だった。全体的に AMGSD 予報値を利用した 方が,アメダス平年値を利用するより基準の防除適期 に近い期間を予測できたことが示されている。また, 誤差が少ない年と多い年がある。例えば,メッシュの 絶対値誤差の地点平均で,佐賀県の2015年は2.6日で, 2016年は4.6日と大きい。熊本県も2015年は5.0日で, 2016年は3.0日と同様である。  気温データに遡って調べたところ,2015年は冷夏で, 実際の気温が予報値や平年値より低かったために成長 が遅れ,予測された防除適期が早めになった。2016年 は実際の気温が予報値や平年値より高くなり,発育停 止温度である33.0℃を超える日が多く,トビイロウン カの成長が抑制されたため,予測された防除適期が早 2014 2015 2016 2017

AMGSD AMGSD AMGSD AMGSD

32.0068°N, 131.4607°E -1.0 -1.0 0.0 -2.0 -1.0 -1.0 0.0 0.0 31.9929°N, 131.3510°E -1.0 -3.0 -1.0 -2.0 0.0 -2.0 -1.0 -2.0 32.0051°N, 131.2562°E -2.0 -2.0 -1.0 -2.0 -1.0 -1.0 -2.0 -2.0 31.7068°N, 131.0811°E 0.0 -2.0 -2.0 -4.0 -1.0 -1.0 -1.0 -1.0 31.7619°N, 131.0215°E 0.0 -2.0 -2.0 -4.0 0.0 -1.0 -1.0 -1.0 31.8008°N, 131.1552°E -1.0 -3.0 0.0 -3.0 0.0 -1.0 1.0 0.0 31.8024°N, 131.0352°E 0.0 -2.0 -1.0 -3.0 -1.0 -1.0 0.0 0.0 31.7433°N, 131.1077°E 0.0 -2.0 -2.0 -4.0 -2.0 -2.0 -1.0 -1.0 32.0007°N, 130.9353°E 0.0 -2.0 -1.0 -4.0 -2.0 -2.0 -1.0 -2.0 31.9610°N, 131.0006°E 0.0 -1.0 -2.0 -3.0 -2.0 -1.0 -2.0 -2.0 31.9673°N, 131.0789°E 0.0 -1.0 -2.0 -3.0 -1.0 0.0 -2.0 -2.0 32.0418°N, 130.8814°E -1.0 -1.0 -2.0 -3.0 -1.0 -1.0 -1.0 -1.0 32.5468°N, 131.6557°E 0.0 0.0 0.0 -1.0 -1.0 -1.0 1.0 1.0 32.6015°N, 131.4843°E 0.0 -1.0 0.0 -2.0 0.0 -1.0 0.0 0.0 32.3819°N, 131.5060°E -1.0 -2.0 -1.0 -2.0 -1.0 -1.0 -1.0 -1.0 32.4346°N, 131.4253°E 0.0 2.0 -1.0 0.0 -1.0 1.0 -1.0 1.0 32.5043°N, 131.4688°E 0.0 -3.0 -1.0 -3.0 0.0 -1.0 0.0 -1.0 32.7672°N, 131.3025°E -1.0 -6.0 1.0 -5.0 1.0 -3.0 3.0 -1.0 32.7234°N, 131.3197°E 0.0 -1.0 -1.0 -3.0 0.0 0.0 2.0 1.0 32.6764°N, 131.3636°E 0.0 0.0 -2.0 -2.0 1.0 2.0 0.0 1.0 32.6825°N, 131.1895°E 0.0 2.0 0.0 -2.0 1.0 3.0 2.0 4.0 0.4 1.9 1.1 2.7 0.9 1.3 1.1 1.2 第3表 宮崎県の第2世代の防除適期の比較a)

a) 数値は,すべての期間を AMGSD 過去値で予測した防除適期と,AMGSD 予報値やアメダス平年値で予測した防除適期との日数差. 正の数は遅れ目に予想した場合で,負の数は早めに予想した場合.背景色が灰色の部分はメッシュ予報値の方がアメダス平年値より日 数差が大きい場合.

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めになった。また,誤差のほとんどが負の数で,防除 適期を早めに予測していることを示している。この原 因も,高温年でなくても発育停止温度を超える日があ り,その日の予報値や平年値が AMGSD 過去値より 低いことが多いためである。  さらに,予報値と平年値の誤差の差が1日以下であ ることがほとんどであることから,その原因を明らか にするために世代予測の手法について調べた。トビイ ロウンカの場合,発育零点は6.5∼12.0℃で,世代の有 効積算温度定数が約400度日である。生息中の気温が 約25℃とすると,1世代が約31日間となる。この条件 において世代で1日の差が生じるためには,毎日同符 2014 2015 2016 2017

AMGSD AMGSD AMGSD AMGSD

33.3371°N, 130.4880°E 0.0 -1.0 -4.7 -5.7 -6.7 -7.7 0.0 0.0 33.2999°N, 130.4020°E 0.0 -0.5 -3.7 -4.7 -5.7 -5.7 0.0 1.7 33.2650°N, 130.3884°E -0.5 -1.0 -2.7 -3.7 -5.7 -6.0 0.0 1.0 33.2083°N, 130.2743°E 0.0 0.0 -2.0 -2.7 -4.3 -4.3 0.0 2.7 33.2749°N, 130.2041°E -0.5 -1.0 -2.7 -3.7 -4.7 -5.3 0.0 1.7 33.2712°N, 130.1376°E -0.5 -1.5 -2.0 -3.7 -3.7 -4.3 0.0 -1.0 33.2597°N, 129.8513°E -0.5 -1.5 -1.0 -3.0 -3.0 -3.3 0.0 0.0 33.1942°N, 130.0471°E 0.0 -0.5 -3.3 -4.3 -5.0 -5.7 0.0 -3.0 33.1231°N, 130.1145°E -0.5 -0.5 -1.7 -2.7 -3.3 -3.3 0.0 0.0 33.1091°N, 130.0055°E 0.0 0.0 -2.3 -2.7 -5.0 -4.3 0.0 0.0 33.1402°N, 130.1449°E 0.0 -0.5 -2.0 -3.0 -3.0 -3.0 0.0 0.3 33.2186°N, 130.3107°E -0.5 -0.5 -2.7 -3.3 -5.0 -5.0 0.0 1.7 0.3 0.7 2.6 3.6 4.6 4.8 0.0 1.1 第4表 佐賀県の第2世代の防除適期の比較a)

a) 数値は,すべての期間を AMGSD 過去値で予測した防除適期と,AMGSD 予報値やアメダス平年値で,複数の飛来日について予測 した防除適期の日数差の平均値.正の数は遅れ目に予想した場合で,負の数は早めに予想した場合.背景色が灰色の部分はメッシュ予 報値の方がアメダス平年値より日数差が大きい場合.

2014 2016 2017 AMGSD AMGSD AMGSD 32.8743°N, 130.7404°E -1.3 -1.7 -6.5 -7.5 -3.0 -4.0 32.8133°N, 130.7067°E -0.3 -1.0 -6.5 -7.5 -4.0 -5.0 32.6117°N, 130.4783°E -1.0 -1.0 -6.0 -6.0 -3.5 -3.5 32.9150°N, 130.5117°E -0.3 -0.7 -6.5 -7.5 -4.0 -4.5 33.1150°N, 130.6917°E -1.0 -0.3 -4.5 -3.5 -2.0 -1.0 32.9450°N, 130.7817°E -1.3 -1.0 -6.5 -7.5 -3.5 -4.0 32.9467°N, 131.0400°E -0.7 0.3 0.5 2.0 2.5 3.0 32.6450°N, 130.8100°E -1.3 -2.0 -4.5 -4.5 -3.0 -3.0 32.4733°N, 130.6067°E -1.0 -1.0 -5.0 -5.0 -2.5 -2.5 32.2050°N, 130.4067°E -1.0 -1.0 -4.0 -4.0 -2.0 -1.5 32.2167°N, 130.7550°E -1.7 -0.7 -6.0 -5.0 -4.0 -3.0 32.4683°N, 130.1800°E -1.7 -1.7 -3.5 -4.5 -2.0 -2.5 1.1 1.0 5.0 5.4 3.0 3.1 第5表 熊本県の第2世代の防除適期の比較a)

a) 数値は,すべての期間を AMGSD 過去値で予測した防除適期と,AMGSD 予報値やアメダス平年値で,複数の飛来日について予測 した防除適期の日数差の平均値.正の数は遅れ目に予想した場合で,負の数は早めに予想した場合.背景色が灰色の部分はメッシュ予 報値の方がアメダス平年値より日数差が大きい場合.2015年はトビイロウンカの飛来数が少なかったため省略.

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号で AMGSD 予報値とアメダス平年値に0.4℃の差が 必要である。したがって気温平年値からの変位が一定 方向に大きくならないと第2世代での誤差の差は数日 といった大きな値とはならないと言える。  次に,払い落としデータと世代予測による幼虫ス テージによる幼虫密度との比較を行った(第2図)。 世代予測は,調査圃場の近くのネットトラップデータ から決定された飛来日(2014年は6月27日と7月13日, 2016年は6月23日と7月14日,2017年は6月22日と7 月11日)をそれぞれ開始日とし,防除指針が発表され る7月15日を実行日として行った。幼虫個体密度増加 のタイミングと払い落としデータによる幼虫発生密度 の増加が一致している時期を数字(第1波,第2波) とアルファベット(a:第1世代,b:第2世代, c:第3世代)の組で示した。飛来第1波の第1世代 幼虫の個体数が少ない期間では,払い落としで個体が 観測されず,データと乖離することがある。2017年で は第2波のみが一致しているため,第2波のみが主要 な飛来であったと思われる。  防除適期を導く世代予測は有効積算温度によっての み決定されるため,結果の差を生む原因は,AMGSD は予報値を利用できるのに対し,アメダスは毎年固定 の平年値しか利用できないためである。また,対象地 点の近くにアメダス観測点があるとは限らず,空間補 間された AMGSD の方が距離や標高差の点でより正 確になるためである(大野ら,2016)。以上のことか ら,有効積算温度の計算においてアメダス平年値より メッシュ予報値の利用が有効であると言える。  開発した世代予測の Web アプリケーション(第3 図)は,有効積算温度パラメータを画面上で選択可能 であり,リストでの選択したパラメータが世代予測の 計算で利用される。現在は,桐谷の資料からトビイロ ウンカ,セジロウンカ,ヒメトビウンカ,ツマグロヨ コバイ,ニカメイガ,コブノメイガの6種の害虫のパ ラメータをデータ化し,リストから選択できるように なっている。本研究で宮崎,佐賀,熊本の各県の独自 のトビイロウンカのパラメータを追加したように,新 しいパラメータの追加は CSV ファイルへの追加する ことで対応できる。また,種の追加は新しい CSV ファイルの作成で対応できる。 0.01 0.10 1.00 10.00 100.00 / AMGSD 2014 BPH -1 0.1 1.0 10.0 100.0 7/1 7/11 7/21 7/31 8/10 8/20 8/30 9/9 9/19 9/29 10/9 10/19 10/29 1 2

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第2図 九州沖縄農業研究センター内の試験圃場での幼虫の払い落とし幼虫密度(上段)と,世代予測によって 得た幼虫ステージ期間の幼虫密度(下段,単位は任意).2015年はトビイロウンカの飛来数が少なかったため データなし.払い落としデータと世代予測による幼虫密度増加期間が一致しているところを文字で示した.数字 は第1波,第2波を表し,アルファベットは第1世代(a),第2世代(b),第3世代(c)を表す. 0.01 0.10 1.00 10.00 100.00 / AMGSD 2017 BPH -1 0.1 1.0 10.0 100.0 7/1 7/11 7/21 7/31 8/10 8/20 8/30 9/9 9/19 9/29 10/9 10/19 10/29 1 2 0.01 0.10 1.00 10.00 100.00 / AMGSD 2016 BPH -1 0.1 1.0 10.0 100.0 7/1 7/11 7/21 7/31 8/10 8/20 8/30 9/9 9/19 9/29 10/9 10/19 10/29 1 2

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 第3図の「データ期間」−「開始日」には対象昆虫 の飛来日を設定する。「実行地点」の枠内で利用する 気象データベースとして AMGSD かアメダスを選択 できる。また,AMGSD 選択時に「予報値を利用」の チェックボックスを外すと,予報値を利用せず平年値 のみで予測を行う。  有効積算温度は,AMGSD 予報値やアメダス平年 値の日最高・最低気温と三角法の組み合わせで求める だけでなく,アメダス時別気温から求める手法も提供 している。時別値を利用する場合は,毎時有効積算温 度を計算した和を24で割った値を1日の有効積算温度 としている。また,今回 JAMF に加えられたメッシュ 予報値を含む気象データを netCDF 形式データから 復元する機能は,気象データを利用する様々な予測モ デルの検証に有用な機能である。  日本植物防疫協会のインターネットデータベース サービス JPP-NET(1996)でも,Web アプリケー ションで昆虫の有効積算温度を計算することができる が,今回開発したアプリケーションでは,あらかじめ 登録されたパラメータをリストから選択することでパ ラメータの設定が容易になり,気象データベースの選 択や,有効積算温度計算手法の選択ができるように なっている。研究者向けや農家向けの Web 画面を用 意することにより,ユーザに応じた機能の提供と,操 第3図 世代予測 Web アプリケーション

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作性の向上を図ることで,社会実装を進めていく予定 である。  AMGSD 予報値を利用した研究としては,ダイズ の乾燥ストレス発生リスクの地域特性の評価(中野ら, 2017)や,気象庁と農研機構による共同研究(気象 庁・農研機構,2016)として,野良イモ防除のための 土壌凍結深予測,小麦赤かび病防除と小麦開花期予測, 水稲の高温登熟障害予測などがある。その他,気象庁 の4週間気温予測値を利用したさとうきびの害虫であ るカンシャコバネナガカメムシの防除適期予測(萱場 ら,2019)がある。アメダスの主要観測点の4週間気 温予測値は,気象庁の Web ページ(気象庁,2019b) から CSV データとして取得できる。気象データを Web アプリケーションの入力データとして利用する 場合,Web API を提供している AMGSD の方が扱い やすい。

謝     辞

 気象データの取得に「農研機構メッシュ農業気象 データ(The Agro-Meteorological Grid Square Data, NIAES)」を利用した。また過去のメッシュ農業気象 データを提供いただいた農研機構農業環境変動研究セ ンターの佐々木華織氏,トビイロウンカの世代予測の 計算について情報を頂いた宮崎県,佐賀県の皆様に感 謝する。 引 用 文 献 JPP-NET(1996) ウ ン カ 類 飛 来 状 況 デ ー タ 検 索 http://web1.jppn.ne.jp/(2019年7月1日アクセス 確認) 萱場亙起・永山敦士・田村弘人・真武信一(2019)気 象予測値を用いた病害虫防除適期予測の精度向上― カンシャコバネナガカメムシにおける精度検証―. 植物防疫 73:106-112. 桐谷圭治(1997)日本産昆虫,ダニ,線虫の発育零点 と有効積算温度.農環研資料 21:1-72. 桐谷圭治(2012)日本産昆虫,ダニの発育零点と有効 積算温度定数:第2版.農環研報 31:1-74. 気象庁(2002)アメダス https://www.jma.go.jp/jp/ amedas/(2019年4月22日アクセス確認) 気象庁(2011)平年値の更新について https://www. jma.go.jp/jma/press/1103/30a/110330_heinenchi. pdf(2019年4月22日アクセス確認) 気象庁・農研機構(2016)共同研究報告書(平成23∼ 27年度)「気候予測情報を活用した農業技術情報の 高度化に関する研究」 気 象 庁(2019a) 日 本 の 7 月 平 均 気 温 偏 差 の 変 化 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/jul_jpn. html(2019年4月22日アクセス確認) 気象庁(2019b)向こう2週間・1か月の予測資料 https://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/probability/ (2019年7月1日アクセス確認) 熊 本 県(2000) 熊 本 県 病 害 虫 防 除 所 http://www. jppn.ne.jp/kumamoto/(2019年7月1日アクセス 確認) 宮崎県(1999)宮崎県病害虫防除・肥料検査センター http://www.jppn.ne.jp/miyazaki/(2019年4月22日 アクセス確認) 中野聡史・大野宏之・島田信二(2017)発育予測モデ ルとメッシュ気象データを利用したダイズの乾燥ス トレス発生リスクの広域評価.生物と気象 17:55-63. 大野宏之(2014)メッシュ農業気象データシステム https://amu.rd.naro.go.jp/(2019年4月22日アクセ ス確認) 大野宏之・佐々木華織・大原源二・中園 江(2016) 実況値と数値予報,平年値を組み合わせたメッシュ 気温・降水量データの作成.生物と気象 16:71-79. 小南靖弘・佐々木華織・大野宏之(2019)メッシュ農 業気象データ利用マニュアル Ver.4.農研機構農業 環境変動研究センター(つくば) pp.1-67. 佐賀県(2014)佐賀県病害虫発生予察情報 http:// www.pref.saga.lg.jp/kiji00368009/(2019年 7 月 1 日アクセス確認) 坂神泰輔・是永龍二(1981)有効積算温度の簡易な新 算出法“三角法”について.応動昆 25:52-54. 田中 慶(2006)Java による作物生育・病害虫発生 予測モデル開発のためのフレームワーク.農情研 15:183-194. 田中 慶(2013)農業シミュレーションモデルにおけ る分散協調システムのフレームワークに関する研究. 中央農研セ研報 20:1-115. 田中 慶(2019)JAMF マニュアル http://cse.naro. affrc.go.jp/ketanaka/model/(2019年4月22日アク セス確認) 渡邊朋也(1994)長距離移動性イネウンカ類の発生動 態および水稲被害の解析.京都大学学位論文. (2019年4月30日受領,9月24日受理)

参照

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