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環境配慮工場における二酸化炭素削減技術導入の影響評価

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環境配慮工場における二酸化炭素削減技術導入の影響評価

Impact assessment of introducing carbon dioxide reduction technologies in an

environmentally friendly factory

井原 輝一(

Terukazu IHARA)

立命館大学大学院 テクノロジー・マネジメント研究科 gr0431fk@ed.ritsumei.ac.jp

湊 宣明(

Nobuaki MINATO)

立命館大学大学院 テクノロジー・マネジメント研究科 minanobu@fc.ritsumei.ac.jp Abstract:

In response to growing environmental awareness, many manufacturing companies with factories are not only adopting renewable energy sources, but also actively reducing their direct carbon footprint. Compared to the widespread use of renewable energy to meet electricity demand, fossil fuel consumption is still the mainstay for responding to heat demand and remains a source of carbon dioxide (CO2) emissions. One solution that has garnered attention for its potential as an efficient method for reducing CO2 emissions is the use of heat from woody biomass and a system to directly capture these emissions (carbon capture storage (CCS)). The purpose of this study is to envision CO2 reduction technologies that could be used in the future by environmentally friendly factories, and to quantitatively evaluate the effects and costs of introducing these technologies through simulations using system dynamics. Simulation results for the evaluation of CCS, photovoltaic power, and biomass heat utilization technology show that the advancement of CCS technology can reduce the cost of photovoltaic power from 15,000 yen/ton-CO2 to 14,000 yen/ton-CO2 in 30 years while reducing CO2 emissions. This model is scalable and flexible enough to consider several interrelated conditions, and can guide the long-term choice of efficient CO2 reduction measures by allowing a comparison and evaluation of CO2 reduction effects.

キーワード:システム評価、温室効果ガス、環境配慮工場、持続可能性、バイオマス、二酸化炭素回収技術 要旨 環境意識の高まりを受けて、工場を有する製造業の多くは再生可能エネルギーの導入に留まらず、直 接的な二酸化炭素の排出削減にも積極的である。電力需要に対する再生可能エネルギーの普及に比べ、 熱需要に対しては未だ化石燃料が主流であり、二酸化炭素排出源のままである。解決策の一つとして木 質バイオマスによる熱利用、そこから排出される二酸化炭素を直接回収するシステム(Carbon Capture Storage, 以下 CCS)があり、効率的な二酸化炭素削減手法としての潜在的価値が注目されている。本研 究の目的は、環境配慮工場が将来利用可能な二酸化炭素削減技術を想定し、システム・ダイナミクスを 用いたシミュレーションにより、技術の導入効果と費用を定量評価することである。太陽光発電、バイ オマスの熱利用技術、CCS を評価対象とするシミュレーション結果によって、太陽光発電の二酸化炭素 削減量に対するコストを 15,000 円/トン-CO2 とする時、そこに CCS を加えたシナリオにおいて、より 多くの二酸化炭素を削減しながら、CCS 技術進歩に伴い 30 年後には 14,000 円/トン-CO2 まで下がる可 能性を示した。本モデルは、相互に関連し合う多数の条件を設定できる拡張性と柔軟性を持ち、二酸化 炭素削減効果を定量的に比較評価し、長期的な視点で効率的な二酸化炭素削減施策の意思決定に貢献す ることができる。

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1.序論

1.1. 問題背景

2015 年の第 21 回気候変動枠組条約締約国会議(以下、パリ協定)以降、国際的な気候変動抑制に対する取り組み が世界中で活発化し、パリ協定の参加国は長期目標として温室効果ガス(Green House Gas、以下 GHG)排出量の 削減目標が課せられることになった。日本の削減目標は、2030 年の GHG 排出量を 2013 年のそれと比較して 26% 削減[1]するという挑戦的な数値であり、経済成長と GHG 削減目標達成を両立させる取り組みが必要となる。日 本企業にも Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)(以下、ESG)を重視する経営理念が浸 透し、再生可能エネルギー導入率や二酸化炭素(Carbon Dioxide、以下 CO2)排出量を経営評価指標に掲げる事例 が多くみられる[2]。特に製造業にとっては、自社工場を含むサプライチェーン全体の CO2 排出量に対する規制が 強化されていくとともに、電力需要に対しては再生可能エネルギー導入による CO2 排出量の削減が求められる [3]。一方、熱需要に対しては自社工場でボイラーを用いた化石燃料を利用する例が多く、エネルギー消費効率の 高いボイラーの導入が推奨される[4]。経済産業省エネルギー白書では、このような既存技術導入による CO2 排出 量削減効果には限界があることが指摘されており[5]、エネルギーの安定的な調達と CO2 排出量削減をどのように 両立させるかが将来の経営課題となっている。 1.2.研究目的 本稿では、環境に配慮した運営を行う工場を環境配慮工場と定義する。本研究は、環境配慮工場が将来にわた り利用可能な CO2 排出量削減技術を複数想定し、システム・ダイナミクス(System Dynamics, SD)を用いたシミ ュレーションにより、CO2 排出量削減技術の導入効果と費用を定量評価することを目的とする。評価対象は、工 場の稼働に必要となる電力と熱需要に対して、再生可能エネルギーである太陽光発電技術、木質バイオマスの熱 利用技術、さらに、大気中へ拡散する CO2 排出量の抑制効果が期待できる技術として、蒸気ボイラーからオンサ イトで排出される CO2 を直接回収するシステム[6]について評価する。このような複合的な CO2 排出量削減技術 の導入において、排出量削減効果だけでなく、企業が背負う設備投資費用と運転維持費用を示すことで CO2 排出 量削減効率を明らかにする。単一技術では成し遂げられない複合的な効果と複合化が及ぼす負の部分として、得 られるはずの効率性を損なうことがないか、相互に関連させたモデルで評価していくところに本研究の独自性が ある。加えて、今後 CO2 排出量規制が強まる場合、CO2 排出量に応じて炭素税が課せられる可能性があり、炭素 税による金銭的負担を考慮した企業経営全体への影響評価を試みる。また、複合的技術導入の組み合わせシナリ オは多数考えられ、本研究においては相互に関連し合う多数の条件を設定できる拡張性と柔軟性を持ち、定量的 な比較評価ができる基本モデルとなる。 1.3.評価対象技術 評価対象とする CO2 削減技術は、太陽光発電、木質バイオマスの熱利用、蒸気ボイラー排出ガスの CO2 回収 システムである。このうち、太陽光発電は、工場内の未利用地を有効活用でき、最も導入しやすい再生可能エネ ルギーといえる。化石燃料ボイラー熱供給は、近年広く普及している小型貫流ボイラーを想定する。特徴として、 水分保有量が少ないため蒸発スピードが早く、エネルギー効率 90%を超える高効率な燃焼装置である。コンパク トで省スペース化にも優れ、工場の熱量負荷を高めたい時には容易に台数を増やすこともできる[7]。木質バイオ マスは、発電利用という目的で用いられることが多かったが、太陽光発電や風力発電の普及と低価格化に伴い、 今後は電力では代替しにくい熱利用に着目した再生可能エネルギーとして普及していく可能性が示唆されている [8]。適用するバイオマスボイラーは大規模に最も利用される木質チップボイラーとし、化石燃料を用いた小型貫 流ボイラーから木質バイオマスボイラーへ切り替えを想定することで CO2 排出量削減を目指す。 CO2 回収システムは、アミン溶液を用いる化学吸収法と分離膜モジュールを用いた膜分離法がある[9]。前者は 二酸化炭素を溶液に溶け込ませ吸収したのち、熱による二酸化炭素脱離工程を経て回収する。後者は、水処理逆 浸透膜のような分離膜技術を用いて、膜を挟んで両面圧力差によって CO2 を選択的に透過分離する技術である。 将来的にメンテナンスやランニングコストの点で、より簡便で、低コスト、省スペースが見込める分離膜技術を 適用したシステムを想定する。現在、CO2 回収システムにおいては、膨大な CO2 が高濃度で排出される大型化学 プラントもしくは鉄鋼プラントにおいて実証が進められている。しかし、一般的な生産工場から排出される CO2 に対しては未だ十分な実証に至っていない。 1.4.本稿の構成 以下、第 2 章で先行研究と対比して新規性と独自性を示し、第 3 章で研究方法と評価モデルの全体構成につい て説明する。第 4 章でモデル構築について述べ、第 5 章で複数シナリオに基づくシミュレーションを実施し、次 世代技術の導入効果について考察を行う。最後に第 6 章で本研究の成果を纏めつつ、今後の課題について述べる。

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- 3 - 2. 評価対象技術と先行研究 2.1.CO2 排出量および再生可能エネルギーに関する先行研究 Carolina Kelly[10]らは、米国の再生可能エネルギー市場の太陽光発電と風力発電に対して SD を用いた普及シミ ュレーションを示している。太陽光発電投資、風力発電投資と化石燃料補助金の廃止により、環境へのインパク トである GHG 排出量削減に効果があることを明らかにし、再生可能エネルギー投資が促進されるための資金援 助の重要性を指摘している。民間企業へのインセンティブを持たせることで再生可能エネルギーが促進する一方、 それらの政策シナリオだけでは、2050 年の GHG 排出量削減の目標到達に十分でないことを指摘し、他の複合的 な追加施策を必要とすることを言及している。また、Haifang Lyu[11]らは、中国での太陽光発電システム導入に対 して、SD モデルを用いて火力発電の一部を置き換えることで CO2 削減効果を示している。事業主による太陽光 発電システム導入の普及促進には、政府の Feed in tariff(FIT)価格を高くすることが一つの政策であるが、それだ けでは財政を圧迫する。そのため、Renewable portfolio standard(RPS)の導入によるグリーン電力到達目標を定め、 到達しない事業者に実質ペナルティをもたらすことになる Tradable green certificates(TGC)の導入が、政府コスト を抑えながら普及促進に有効であると指摘している。日本でも、FIT 価格の増大が国民負担となる再エネ賦課金増 加や固定価格買取制度の期間満了のような負の要素もあり、CO2 削減に対して太陽光発電と FIT 制度のみの施策 には限界があると考える。Alireza Aslani[12]らは、フィンランドの電力と熱需要に対して再生可能エネルギーの多 様化がもたらす効果として、化石由来エネルギーの輸入依存度を下げるだけにとどまらず、経済性への有効性を 示している。作成された因果ループと SD モデルは、多様な再生可能エネルギーが相互に影響を与える効果と役 割を明らかにしている。フィンランドでのこの SD モデルをベースとして、再生可能エネルギーに関するパラメ ータを他国の様々な状況に応じて変えることができれば、再生可能エネルギーの開発総コストの比較やリスク分 析ができるようになる。さらに、今後の課題とされている市場や税制、規制などのインセンティブを組み合わせ たコスト削減戦略策定への寄与も期待できる。 2.2.二酸化炭素回収と貯蔵・利用に関する先行研究

Laura Proano[13]らは、セメント工場に対して CO2 回収炭酸化技術を導入することで経済的影響を SD モデルに よって定量分析を行っている。炭酸化技術による CO2 回収コストを算出し、炭素税の経済政策の下、特定の炭酸 塩需要シナリオが整うことで、セメント産業の CO2 排出を軽減する有効な手段となる可能性を示している。炭酸 塩化技術を施すには、原材料の調達から回収した CO2 を炭酸化するプロセス、出来た炭酸塩を販売できるサプラ イチェーン、市場の需要が必要と挙げられ、セメント業界特有の利点を活かした手法である。このモデルにおい ては、セメント需要、炭酸塩需要、CO2 回収量、出来上がった製品の販売価格と炭素税含むコストとの経済収支 をサブモデルとし、相互作用的要素を組み込みながら CO2 回収による削減効果と経済合理性に着目した SD 評価 モデルとなっている。Vanessa Núñez-López[14]らは、二酸化炭素増進石油回収(CO2-EOR)技術が、石油生産目標 を損なうことなく、温室効果ガス排出を削減できる可能性をシミュレーションソフト CMG-GEM を用いて定量的 な解を見出している。CO2-EOR で利用される炭素量の収支、石油生産運用パフォーマンスと環境パフォーマンス の最適解を探るべく、動的に相互作用する CO2 回収技術と圧入技術、得られる石油量に対して分析モデルを作成 している。炭素回収、利用、貯蔵を通じて、CO2 排出量と貯蔵率の算出結果により、長期間にわたる操業開始か ら閉鎖までのライフサイクル分析を行うことで、正味でのカーボンネガティブとなるコンセプトを紹介している。 これら先行研究では、CO2 削減技術単一での削減効果を示しているが、複数の CO2 削減技術要素を組み合わせた 生産工場に適用できる CO2 回収技術の評価モデルには至っていない。 Mai Buiet[15]らによると、二酸化炭素回収と貯蔵は、脱炭素化と気候変動抑制のための目標を達成し、業界の重 要な役割を果たす可能性がある。最先端な CO2 回収、輸送、利用、および貯蔵システムに関する技術をレビュー し、そこで回収される CO2 は化石燃料由来だけでなく、バイオ燃料や大気中からも回収することができる。CCS とバイオエネルギーの組み合わせ(BECCS)が、大気からの直接 CO2 回収と CCS の組み合わせ同様にカーボン ネガティブとなる可能性を示している。ただし、BECCS に関する定量的な CO2 削減量とコスト分析までは十分 に行われていない。Matteo Muratori[16]らは、地球変動評価モデル Global Change Assessment Model (GCAM)を使用 して、電力業界における CO2 削減に対するバイオ燃料生産の技術コストと CCS 導入の技術コストに対する感度 分析を行っている。化石燃料と CCS の組み合わせだけでなく、バイオエネルギーと CCS の組み合わせが正味負 の CO2 排出量となり、エネルギーセクターへ技術展開される有益性を示している。

Jeffrey A. Bennett[17]らは、ライフサイクル分析のフレームワークを用いて電力プラントによる BECCS 適用に対 するパフォーマンスを調査している。BECCS は発電所において、エネルギー生産と CO2 貯留の二つの役割を兼

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ねており、その複合的な効果をCO2貯蔵量に対するエネルギー量の比率として表している。感度分析の結果から、 木材チップ密度、発熱量、CCS に必要なエネルギーと CO2 回収率が全体システムの効率に影響を与えることを示 唆し、タワーウェット冷却を備えた集中型発電所が最良のソリューションとなることを言及している。CO2 貯留 容量や貯留場所の懸念、大量のバイオマス調達に関する物流課題に対して、膨大なエネルギーが必要となり、実 現的な解決策を見出していくことが重要であると示している。BECCS の適用に関しては、集中型プラントと分散 型プラントの比較検討の余地はあると考える。 2.3.先行研究の限界点と本研究の独自性 先行研究においては、SD モデルを用いて再生可能エネルギーがもたらす CO2 削減量と政策のインセンティブ から得られる影響を加味した長期間におよぶ経済性評価から有益性を示しているが、単一の再生可能エネルギー 普及のみでは CO2 削減量に限界がある。また、複合的な施策がもたらす CO2 削減効果と経済的な優位性が、こ れら SD モデルにおいては、その相乗効果が見えていない。さらに、CCS に関しては、いずれも実証段階を対象 とする技術でありながら、エネルギー業界、セメント業界など大型プラントに限定されており、広範囲な業界、 生産工場へ適用できるモデルには至っていない。BECCS に関しては、正味 CO2 排出量がマイナスになる可能性 を示唆しているが、定量的な CO2 削減量とコスト分析までは十分に行われておらず、用途においても限定的なモ デルにとどまっている。 上述した限界点を踏まえ、本研究は広範囲な業界における生産工場に対して、環境配慮工場経営となる先進的 で効果的なシステムの導入を提案するものである。電力と熱需要に対して、太陽光発電とバイオマス燃料装置の 導入に留まらず、CO2 排出源から CO2 を回収する革新性あるシステムを加える。CO2 削減効果と必要なコスト を明らかにし、既存の枠組みを超えたシステムが及ぼす効果と潜在的価値を提言する。また、単一の CO2 削減技 術を定量的に評価するだけでなく、複数ある要素を相互に関連させた SD モデルを構築することで、複合的な技 術導入による正負の影響を明らかにする点に独自性がある。得られる SD モデルと分析結果は、経営者が取り組 む環境問題と ESG 投資に対して、有用な判断指針となることに貢献する。 3. ダイナミック仮説 本研究は、単一技術では成し遂げられない複合的な技術導入によって得られる CO2 排出量削減効果と費用との 関係を明らかにする。技術の複合化が及ぼす負の部分など、得られるはずの効率性を損なうことがないか、相互 に関連させたモデルで評価していくことが必要となる。そこで、分析対象をシステムと捉え、システムに内在す るフィードバック構造を明らかにすべく、因果ループ図を用いた分析を行った[18]。ソフトウェアとして Vensim Professional 8.1.0 を用いた。 生産工場に対するエネルギー需要と CO2 削減技術導入に関する因果ループの分析結果を図 1 に示す。生産工場 で必要とされるエネルギーに対して電力需要と熱需要に分けることができる。電力需要では、外部より化石由来 の電力を調達することで生じる間接的 CO2 排出があり、この CO2 排出量を抑制するため、太陽光発電を導入す る施策に対してバランスループ(B1)で表す。この時、太陽光発電であってもライフサイクルにおける CO2 を考 慮する必要があるため、間接的 CO2 排出量の増加へつながる。熱需要では、化石燃料の燃焼によって排出される CO2 を直接的 CO2 排出量があり、この CO2 排出量を抑制するため、バイオマス熱利用システムを導入する対応 に対してバランスループ(B2)で表す。さらに、カーボンニュートラルとしてカウントされるバイオマス燃焼で あっても直接的 CO2 排出は存在しており、これを次世代技術として期待される CO2 回収システムの導入によっ て、大気中への拡散を抑制するバランスループ(B3)を作成した。工場全体の CO2 排出量は、直接的 CO2 排出 量と間接的 CO2 排出量の総和となる。複合化された CO2 削減技術の導入は、システム全体に相互に作用してい ることを可視化することができた。CO2 回収技術においては、到達する技術レベルによって、電力エネルギーの 必要量も変わり、太陽光パネル増設量の違いに繋がる。CO2 回収技術の構築や運用に掛かる CO2 排出が発生して しまうため、回収される CO2 排出量に対して、太陽光パネル同様にライフサイクル CO2 の観点を盛り込んだモ デルとする。コスト構造からも適切な技術水準に満たさなければ、効率的な手法には至らない。

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- 5 - 図1 生産工場エネルギー需給と CO2 排出に関する評価モデルの全体構成 4. 評価モデルの全体構成とモデル構築 評価モデルの全体構成を図 2 に示す。電力システム、熱生成システム、CO2 回収システムに分割された SD モ デルを構築する。電力システムでは、化石由来の電力購入とそれによってカウントする間接的 CO2 排出をモデル 化する。太陽光発電をモデル化し、生み出される電力によって、購入する電力量を削減するフィードバック構造 を持つモデルとした。熱生成システムでは、熱生成のために購入する化石燃料と熱生成ボイラーをモデル化する。 バイオマスボイラーによる熱生成をモデル化し、熱生成のために購入する化石燃料を削減するフィードバック構 造をもつモデルとした。さらに、バイオマスボイラーから排出される CO2 は直接回収することができる CO2 回 収システムをモデル化し、回収された CO2 は化石エネルギーCO2 排出量を削減する。CO2 回収システムで必要 となる電力は、太陽光発電の電力需要にフィードバックさせるモデルとした。 図 2 評価モデルの全体構成 4.1.生産工場消費エネルギーと CO2 排出量モデル 生産工場エネルギー消費と CO2 排出量のストック・フロー図を図 3 に示す。このモデルは、生産工場エネルギ ー需要サブモデル、太陽光発電による電力生成サブモデル、木質バイオマスボイラーによる熱生成サブモデル、 工場から排出される CO2 を回収するサブモデルから構成される。 生産工場キャパシティ 熱需要 電力需要 + + + 生産受注 化石燃料購入 化石燃料由来 電力購入 + + 従来ボイラー による化石燃 料燃焼 工場より CO2 直接排出 間接的 CO2排出 CO2回収 CO2化学変換 外部CO2サプライチェ ーン委託 太陽光発電 + + 工場トータル CO2 排出量 -+ + + -+ バイオマスボイラー 燃焼 + + -+ -生産性 + + 熱エネルギー C O2排出量強 化ループ R2 CO2回収に よる排出量 抑制ループ B3 CO2再利用に よる排出量抑 制ループ B4 植物成長用 CO2 液化炭酸貯蔵 + + + + 電力CO2排 出量強化ル ープ R1 + + 化石燃 焼抑制ル ープ B2 化石燃料 電力抑制 ループ B1 -半永久固定(地中貯 留/セメント化) サプライチェーン全体大 気への CO2排出量 -ESG貢献 -市場需要 <工場トータル CO2排 出量> -ステークホルダー 満足度 + 企業認知度 + + + ESG強化 ループ R3 生産工場 太陽光発電による 電力生成 化石燃料ボイ ラーによる熱 生成 化石由来 電力購入 化石由来 燃料購入 バイオマスボイラー による熱生成 化石エネルギー使用 によるCO2排出量 CO2回収システム 電力需要 電力需要 化石由来 使用減少 直接的 CO2排出 直接CO2回収 CO2排出量 減少 化石由来 使用減少 間接的 CO2排出 熱需要 電力システム 熱生成システム CO2回収システム

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4.1.1.生産工場消費エネルギーと CO2 排出量サブモデル

ストック変数として、製品生産量(Production Capacity)を配置しており、マーケット需要(Market Demand)と 製品生産量ストックのギャップ、調整期間(Demand Adjustment Time)を考慮した製品生産量の増減インフロー (Production Capacity Increase)を式(1)のように計算する。この製品生産量に必要な電力エネルギー(Required Electricity for Production)と熱エネルギー(Required Thermal Energy for Production)を設定する。

𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 = Demand Gap for Production ÷ Demand Ajustment Time (1)

4.1.2.太陽光発電による電力生成サブモデル

図 4 は太陽光発電による電力生成のストック・フロー図であり、 ストック変数は再生可能エネルギー需要 (Demand for Solar Panel Installation)とソーラーパネル導入(Solar Panel Capacity)を配置した。未充足の再生可能 エネルギーに対して、経営上の導入ターゲットと負荷率(Average Load factor)を乗じて算出し、ソーラーパネル 需要のインフローは式(2)のように計算する。蓄積された需要と設置台数とのギャップが、ソーラーパネル導入ス トックのインフローに反映される。需要ストックのアウトフローでは、導入されたソーラーパネルが需要を充足 することで、フィードバックされる。導入ストックのアウトフローでは、寿命を終えると処分され、再度需要と のギャップを生み、需要ストックインフローへフィードバックが掛かる構造とした。

𝐒𝐒𝐏𝐏𝐒𝐒𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐒𝐒 𝐃𝐃𝐏𝐏𝐃𝐃𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏

=Maximum Electricity Generation per Solar PanelUnmet Demand for Renewable Energy

÷ Demand Adjustment Time for Renewable Energy (2) ソーラーパネル設置台数ストックより期待できる生成電力量(Expected Electricity Generation)は、台数ストック 数に1台パネル設備当たりの最大生成電量(Maximum Electricity Generation per Solar Panel)と天候や経年劣化など による不確実な変動(Uncertainty Factor)パラメータを乗じ、式(3)のように算出する。経年劣化に対しては、太陽 電池モジュールメーカー各社より公称最大出力に対して 70~80%出力を 20 年間保証されていることから、本モ デルにおいては Uncertainty Factor に 0.8 を適用した。

また、正味利用分となる電力量(Expected Renewable Energy Supply)を伝送損失(Average Transmission Loss)を 乗じて求め、再生可能エネルギーを得ることによって、電力会社より購入する電力量を抑えることができる。そ の結果、工場全体の電力に掛かる CO2 排出係数(CO2 emission factor for Electricity)を式(4)のように計算し、工場 全体の CO2 排出量の抑制に繋がる。

𝐄𝐄𝐄𝐄𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐄𝐄𝐒𝐒𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐆𝐆𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏

= Solar Panel Capacity × Uncertainty Factor

× Maximum Electricity Generation per Solar Panel (3) 𝐏𝐏𝐂𝐂𝐂𝐂 𝐏𝐏𝐃𝐃𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐓𝐓𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐒𝐒 𝐄𝐄𝐒𝐒𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏

= �1 − Expected Renewable Energy SupplyRequired Electricity for Production � × CO2 emission factor of fossil fuel for Electricity

+ �Expected Renewable Energy SupplyRequired Electricity for Production� × CO2 emission factor for Renewable Energy (4)

4.1.3.バイオマスボイラーによる熱生成サブモデル

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boiler Capacity)を配置する。以降については、再生可能エネルギー需要およびソーラーパネル導入のストック・ フロー同様に、バイオマスボイラー設置台数から正味利用する熱量(Expected Bio Thermal Energy Supply)が算出 される。この正味利用される熱エネルギーが従来型化石燃料由来のボイラー設備より生成する熱量を抑え、工場 全体の熱生成に掛かる CO2 排出係数(CO2 emission factor of fossil fuel for Total Thermal)を式(5)のように計算し、 工場全体の CO2 排出量の抑制に繋がる。

𝐏𝐏𝐂𝐂𝐂𝐂 𝐏𝐏𝐃𝐃𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐟𝐟 𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐒𝐒 𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏𝐒𝐒 𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐓𝐓𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐒𝐒 𝐓𝐓𝐓𝐓𝐏𝐏𝐏𝐏𝐃𝐃𝐏𝐏𝐒𝐒 = = �1 − Expected Bio Thermal Energy SupplyRequired Thermal Energy for Production�

× CO2 emission factor for Conventional thermal boiler + �Required Thermal Energy for Production�Expected Bio Thermal Energy Supply

× CO2 emission factor for Bio thermal boiler (5)

4.1.4.CO2 排出量と CO2 回収システムサブモデル

自社ボイラーより直接排出される CO2 回収需要(Unmet Demand for CO2 Capture)について、回収ターゲット (Target CO2 Capturing/Emission ratio)と負荷率(Average Load Factor for CO2 Capture)から式(6)のように計算する。 以降については、再生可能エネルギー需要とソーラーパネル導入のストック・フロー同様に、ストック変数は CO2 回収設備インストール需要(Demand of CO2 capture Installation)と CO2 回収設備キャパシティ(Capacity of CO2 Capture system)を配置する。CO2 回収設備キャパシティから1基あたりの設備に対する最大 CO2 回収量(Maximum CO2 Capture volume per system)とトラブルなどの不確実な要素(Uncertainty Factor for Capture)を乗じて、期待さ れる CO2 回収量(Expected Capture CO2 volume as potential)を求める。そこに、CO2 回収システムによって排出し てしまうライフサイクル CO2 を考慮し、効率となる CO2 回収ロス(Average Capturing Loss)を乗じて、正味 CO2 回収量(Expected Capture CO2 volume as actual)を算出する。求められた正味 CO2 回収量は、生産工場全体 CO2 排 出量に対して削減することになるため、フィードバック構造モデルとする。

𝐔𝐔𝐏𝐏𝐃𝐃𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐃𝐃𝐏𝐏𝐃𝐃𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐂𝐂𝐂𝐂 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏

= ("Target CO2 Capturing/Emission ratio" × Unit CO2 emission from boiler as actual gas

× Required Thermal Energy for Production − Expected Capture CO2 volume as actual) ÷ Average Load Factor for CO2 Capture (6)

4.2.CO2 排出量削減技術の導入とコストモデル

CO2 削減に関する設備導入と運転に伴うコストのストック・フロー図を図 5 に示す。このシステムは、太陽光 発電の導入と工場電力生成に掛かるコストサブモデル、バイオマスボイラーの導入と熱生成に掛かるコストサブ モデル、工場から直接排出される CO2 回収システムの導入と運転費のコストサブモデルから構成される。

4.2.1.太陽光発電導入と電力調達に掛かるコストサブモデル

ストック変数には、ソーラーパネルに設備投資された資産簿価(Book value E)を配置する。インフローには、投 資されたソーラーパネル数と単価を乗じた費用(Investment E)を設定し、アウトフローには、減価償却(Depreciation E)を設定する。電力調達に掛かるコスト(Cash outflow E)には、ソーラーパネルに掛かるメンテナンスコスト (Maintenance cost E)と外部電力調達に掛かる費用(Electricity purchase cost)を足して計算される。なお、外部電力調 達費用は式(7)のように、電力需要を太陽光発電生成で賄いきれない電力量差分に対して外部電力を購入する。こ の電力調達に掛かるコストと先の減価償却費より、工場電力調達に掛かる PL 上のコスト(P/L Cash out for introducing Solar panel)として式(8)条件式のように計算する。

(8)

𝐄𝐄𝐒𝐒𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐓𝐓𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏

= Unit Electricity bill

× (Required Electricity for Production − Expected Renewable Energy Supply) (7) 𝐏𝐏/𝐋𝐋 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐓𝐓 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐢𝐢 𝐒𝐒𝐏𝐏𝐒𝐒𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐒𝐒 = Cash outflow E + Depreciation E (8) 4.2.2.バイオマスボイラー導入と熱調達に掛かるコストサブモデル

バイオマスボイラー導入も太陽光発電導入サブモデルと同様に、ストック・フロー図を作成し、アウトフロー に減価償却(Depreciation T)を設定する。熱調達に掛かるコスト(Cash outflow T)は、ボイラーに掛かるメンテナン スコスト(Maintenance cost T)と燃料購入費用(Thermal purchase cost)を足して計算される。そのメンテナンスコス トは式(9)条件式で計算され、燃料購入費用は式(10)条件式のように計算する。この熱調達に掛かるコストと先の減 価償却費より、工場熱調達に掛かる PL の年間コストとして式(11)条件式のように計算する。

𝐌𝐌𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐓𝐓

= Unit maintenance cost T for Convensional

× (Required Thermal Energy for Production − Expected Bio Thermal Energy Supply) + Unit maintenance cost T for Bio × Expected Bio Thermal Energy Supply (9)

𝐓𝐓𝐓𝐓𝐏𝐏𝐏𝐏𝐃𝐃𝐏𝐏𝐒𝐒 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐓𝐓𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏

= Unit Thermal bill for Convensional

× (Required Thermal Energy for Production − Expected Bio Thermal Energy Supply) + Unit Bio Thermal bill × Expected BioThermal Energy Supply (10)

𝐏𝐏/𝐋𝐋 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐓𝐓 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐢𝐢 𝐁𝐁𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐓𝐓𝐓𝐓𝐏𝐏𝐏𝐏𝐃𝐃𝐏𝐏𝐒𝐒 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐃𝐃 = Cash outflow T + Depreciation T (11)

4.2.3.CO2 回収システム導入と運転に掛かるコストサブモデル

CO2 回収システム導入に対しても太陽光発電導入サブモデルと同様に、ストック・フロー図を作成し、アウト フローに減価償却(Depreciation C)を設定する。この減価償却と CO2 回収に掛かるコスト(Cash outflow C)より、 工場 CO2 回収システムに掛かる PL の年間コストとして式(12)条件式のように計算する。

𝐏𝐏/𝐋𝐋 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐓𝐓 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐢𝐢 𝐏𝐏𝐂𝐂𝐂𝐂 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐃𝐃 = Cash outflow C + Depreciation C (12)

以上より、太陽光発電と電力調達、ボイラーによる熱生成、CO2 回収システムの各々に掛かるコスト式(8)、 式(11)、式(12)をすべて足した費用(Total P/L Cash out)が算出される。また、炭素取引価格の影響を考慮した後 の費用(P/L Cash out after Application of CO2 emission tax)を式(13)条件式のように計算する。

𝐏𝐏/𝐋𝐋 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐓𝐓 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐟𝐟𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐀𝐀𝐏𝐏𝐏𝐏𝐒𝐒𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐟𝐟 𝐏𝐏𝐂𝐂𝐂𝐂 𝐏𝐏𝐃𝐃𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏𝐏 𝐏𝐏𝐏𝐏𝐄𝐄

= "Total P/L Cash out" + Total CO2 Emission count

(9)

- 9 - 図 3 生産工場エネルギー消費と CO2 排出量の全体図 S ol ar P anel Capaci ty Instal l S ol ar P an el Di spose Sol ar P an el A verag e Li feti me of Sol ar P anel T otal Demand for Sol ar P anel

Demand Gap for

Sol ar P anel A verag e Instal lati on T ime

Demand for Sol

ar P anel Instal lati on S ol ar P anel Demand S ati sfi ed Ex pected El ectri ci ty Generati on Max imum El ectri ci tyy Generati on per Sol ar P an el Uncertai nty F actor Ex pected Renewabl e Energ y Suppl y A verag e T ransmi ssi on Loss S ol ar P anel Demand Increase T arg et of Renewabl e/P urchase Rati o P roducti on Capaci ty P roducti on Capaci ty Increase Market Demand

Demand Gap for

P roducti on Demand A justment T ime A verag e Load Factor

Unmet Demand for Renewabl

e Energ

y

Demand A

djustment

T

ime for Renewabl

e Energ y CO2 emi ssi on factor of fossi l fuel for T otal T hermal Requi red T hermal Energ y for P roducti on

Unmet Demad for Bio T

hermal boi ler Demand for Bi o T hermal boi ler i nstal lati on Bi o T hermal boi ler Demand Increase T hermal boi ler Demand sati sfi ed Bi o T hermal boi ler Capaci ty Instal l Bi o T hermal boi ler Di spose T hermal boi ler

Demand Gap for Bi

o T hermal boi ler A verag e Li fe ti me of T hermal boi ler A verag e Instal lati on ti me for Bi o T hermal T otal Demand for Bi o T heral boi ler Demand A djustent T ime for Bi o T hermal Energ y Ex pected Bi o T hermal Energ y Suppl y Ex pected T hermal Generati on Uncertai nty Factor for T hermal Max imam T hermal Generati on per Bi o T hermal boi ler A verag e Load factor for T hermal

Demand of CO2 capture Instal

lati

on

Increase of CO2 Capture Instal

lati on Demand Capaci ty of CO2 Capture system Instal l CO2 Capture system Di spose CO2 Capture system T otal Demand for CO2 Capture A verag e Instal lati on ti

me for Capture system

A verag e Li fe ti me of Capture system T otal CO2 Emi ssi on count S ati sfi ed for CO2 Capture Demand CO2 emi ssi on factor for T otal El ectri ci ty T arg et of Bi o/Conventi onal Rati o for T hermal A verag e T ransmi ssi on Loss for T hermal Max imum CO2 Capture vol ume per system Ex pected Capture CO2 vol ume as potenci al A verag e Capturi ng Loss Uncertai nty Factor for Capture

Unmet Demand for

CO2 Capture T arg et CO2 Capturi ng /Emi ssi on rati o Demand A djustment ti

me for CO2 Capturi

ng Requi red El ectri ci ty for P roducti on < Ex pected Capture CO2 vol ume as potenci al >

CO2 recovery system energ

y requi

red per ton

Ex pected Capture CO2 vol ume as actual A verag e Load F actor

for CO2 Capture

CO2 emi ssi on factor for Renewabl e Energ y CO2 emi ssi on factor of fossi l fuel for El ectri ci ty CO2 emi ssi on factor for Bi o thermal boi ler CO2 emi ssi on factor for Conventi onal thermal b o ile r Uni t CO2 emi ssi on from boi ler as actual g as < Requi red T hermal Energ y for P roducti on> Uni t of Energ y Uni t adjustment

Demand Gap for CO2

Capture < Uni t adjustment> < Uni t adjustment> T ime functi

on for CO2 recovery

system energ

y requi

(10)

図 4 太陽光発電による電力生成サブモデル

図 5 CO2 排出量削減技術導入と運転に伴うコスト構造の全体図

Solar Panel Capacity Install Solar

Panel Dispose SolarPanel Average Lifetime

of Solar Panel

Total Demand for Solar Panel Demand Gap for

Solar Panel Average

Installation Time

Demand for Solar Panel Installation Solar Panel Demand Satisfied Expected Electricity Generation Maximum Electricityy Generation per Solar

Panel Uncertainty Factor Expected Renewable Energy Supply Average Transmission Loss Solar Panel Demand Increase Target of Renewable/Purchase Ratio Average Load Factor Unmet Demand for

Renewable Energy

Demand Adjustment Time for Renewable

Energy

<Expected Capture CO2 volume as

potencial> Average Load Factor

for CO2 Capture

CO2 emission factor for Renewable Energy

CO2 emission factor of fossil fuel for Electricity Unit adjustment Cash E Cash outflow E <Expected Renewable Energy Supply>

<Install Solar Panel>

Unit Electricity bill

Unit investment E Book value E Investment E Depreciation rate Maintenance cost E Unit maintenance cost E <Required Electricity for Production> Electricity purchase cost

P/L Cash out for introducing Solar

panel

Cash T

Cash outflow T

Unit Bio Thermal bill Thermal purchase cost

Unit maintenance cost T for Bio

<Required Thermal Energy for Production>

Maintenance cost T

<Expected Bio Thermal Energy Supply>

Book value T Investment T

P/L Cash out for introducing Bio Thermal

system <Depreciation rate> <Install Bio Thermal boiler> Unit investment T Depreciation E Depreciation T Cash C Cash outflow C Unit CO2 capture cost Unit investment C Book value C Investment C Depreciation rate C Maintenance cost C Unit maintenance cost C Capture CO2 cost P/L Cash out for

introducing CO2 Capture system

Policy payment for CO2 discharge unit

Depreciation C Total P/L Cash

out

<Solar Panel Capacity>

Unit Thermal bill for Conventional

<Expected Capture CO2 volume as potencial> <Install CO2 Capture system> <Total CO2 Emission count> P/L cashout after Application of CO2 emission tax

Unit maintenance cost T for Conventional

<Expected Capture CO2 volume as actual>

Cash inflow E Budget E Cash inflow C Budget C Cash inflow T Budget T <Unit adjustment> <Unit adjustment> <Unit adjustment>

(11)

- 11 - 5.結果と考察 5.1.シミュレーションのシナリオ概要 CO2 削減技術の導入による CO2 排出量削減効果とコストの動的変化を明らかにするため、次のようなシナリオ を設定する。ベースラインとして、従来型の化石燃料利用を続け、技術導入を特別行わない設定をシナリオ A と する。これに対して、電力需要を太陽光発電で補うことを想定するシナリオ B を設定し、太陽光発電だけでなく、 熱需要に対して化石燃料は使用しつつ小型貫流ボイラーより排出される CO2 を直接回収することを想定するシ ナリオ C を設定する。最後に、熱需要を木質バイオマスボイラーへ切り替えることで脱化石燃料比率をさらに高 め、ボイラーより排出される CO2 をシナリオ C 同様に直接回収することを想定するシナリオ D を設定した。モ デルパラメータとして、参考資料[19][20][21][22][23][24][25][26][27]に基づき主要パラメータを設定した。別表1に 主要パラメータのベースラインにおける設定値を示す。 5.2.シミュレーション実行結果と CO2 排出量削減効果 ベースライン設定に基づきシミュレーションを実行し、CO2 削減技術導入による CO2 排出量削減効果と PL に計上する費用に対して考察を行った。図 6 に示すグラフは、シナリオ別の工場全体 CO2 排出量のシミュレー ション結果を表している。シナリオ A では、工場の生産量に伴い電力需要と熱需要は増加し、従来型化石燃料 の利用を続けていくことで CO2 排出量も増大する。シナリオ B では、11 年目ごろまでに太陽光発電への切り替 えがすべて進み、それ以降も電力需要の大部分を太陽光エネルギーで賄うことによって、CO2 排出量をシナリオ A の半分程度まで下げることができる。シナリオ C では、10 年目ごろからボイラーより排出される CO2 を回収 するシステムが立ち上がることによって CO2 排出量の抑制効果が表れ、排出量を抑制し続けることができる。 これはシナリオ A や B とは違い、電力と熱の両エネルギーに対して CO2 排出量削減対策を施している結果であ る。図 7 で示すグラフは、ボイラーより排出された二酸化炭素を直接回収した CO2 回収量を表している。 シナリオ D では、6 年目から熱需要に対してバイオマスボイラーによるエネルギー供給へ切り替えが始まり、 シナリオ C と同様に 10 年目ごろより CO2 を回収することで CO2 排出量の抑制効果が表れている。その後、30 年目まで電力と熱の両面で再生可能エネルギーへの切り替えと排出源からの CO2 回収効果により、圧倒的な排 出量抑制効果を示している。ここでシナリオ D においては、バイオマスボイラー比率を可能な限り最大化して いくことで、CO2 排出係数を抑制しながら、実際にはバイオマス燃焼時に発生する高濃度 CO2 排出を回収する ことで、CO2 排出量を正味負の状態を築けることによる影響が寄与している。バイオマス燃料では、植物成長の 過程で光合成によって大気より二酸化炭素を吸収しているということから、バイオマス燃焼エネルギー利用は、 カーボンニュートラルと見なすことができる。このことから、バイオマスと CO2 回収システムの組み合わせが 最も CO2 排出量削減に効果的な手法と言える。 図 6 工場全体 CO2 排出量 図 7 ボイラーより排出される CO2 回収量 5.3.設備導入に伴うコストと CO2 回収効率 図 8 に示すグラフは、工場で必要なエネルギー調達費用を表している。図 8(a)において、シナリオ A ではエネ ルギー需要増加に伴い、外部電力購入や熱源となる化石燃料調達コストが増加する。これに対して、シナリオ B では電力を太陽光発電に切り替えることにより、外部電力購入コストは削減できるものの、全体として設備投資 に掛かる減価償却費の増大が PL における費用の押し上げとなる。シナリオ C では CO2 回収システム導入による 設備減価償却費と運用費用が追加される。シナリオ D では、バイオマスボイラーへの切り替えによる設備減価償 却費が主な増加分とされるが、燃料費が化石燃料から木質チップへと安価な燃料へ変更となるため、燃料調達コ

(12)

ストには有利に働く。図 8(b)においては、将来の炭素税導入を考慮した時のエネルギー調達費用を表している。 炭素税は CO2 排出量によって課税されるものとし、初期値 10,000 CO2 から 30 年後には 20,000 円/トン-CO2 まで直線的に上昇することを設定した。この結果、いずれのシナリオにおいても 30 年後にはベースラインと 比較してコストが逆転し、CO2 削減システムを導入することの優位性が示された。 図 8(a) 工場で必要となるエネルギー調達コスト(炭素税なし) 図 8(b) 工場で必要となるエネルギー調達コスト(炭素税あり) この要因について考察するため、単位あたり CO2 削減量に対して、それぞれの施策に掛かるコストを図 9 に表 した。太陽光発電については、導入に掛かるコストが今後一定であるとし、CO2 削減量に対するコストが 15,000 円/トン-CO2 程度と示される。CO2 回収システムにおいては、革新性が高く不確実性を含むため、本モデルでは 技術発展要素を加味している。ここで見積もる改善要素については、CO2 分離回収に掛かる材料費、CO2 回収に 要する電気エネルギー、設備当たりの CO2 回収量とする。シナリオ C では、CO2 回収効率が 15 年目で最も悪化 する 19,000 円/トン-CO2、となるが、技術発展に伴い 30 年後には 14,000 円/トン-CO2 まで下がる。シナリオ D で は、バイオマスボイラーとの併用システムでは、熱生成を化石燃料からバイオマス材料へ切り替えることで、大 きく CO2 削減に寄与することができ、材料費についても木材チップは化石燃料と比べても多少安価なものとな る。その結果、たとえ不確実性のある CO2 回収システムを導入したとしても、バイオマスと併用することで当初 の効率性の悪化を抑えながら相当量の CO2 排出を削減できる。 5.4.エネルギー安定調達と高効率低炭素電力 太陽光発電による電力調達は、CO2 排出量と経済性の両面において優れている。しかしながら、生産工場にお いて太陽光発電に 100%置き換えることは、天候や日射量の変動から安定的なエネルギー調達に対して課題を残 す。より現実的には、この需給バランスを調整するため、日本が取り組む化石燃料を使用しながらも高効率な発 電技術によって調達できる低炭素電力との組み合わせたシナリオを示す。従来の電力あたりのCO2 排出係数(CO2 emission factor of fossil fuel for Electricity)は、別表1に示す「0.098t-CO2/GJ」とし、高効率発電技術で得られる CO2 排出係数を「0.078t-CO2/GJ」[28]とする。シナリオ D の条件から太陽光発電の置き換え比率を 5 割までとし、残 りを高効率な低炭素電力に置き換えることで CO2 排出を抑制できるシナリオ E を追加した。図 10 に示すグラフ は、シナリオ A から E までの 20 年後と 30 年後の CO2 排出量を表している。より現実的かつ日本の技術力を反 映したシナリオ E においても、30 年後の CO2 排出量低減効果の大きさを示すことができている。 図 9 CO2 削減効果に対するコスト効率性 図 10 エネルギー安定調達を考慮したシナリオ E の CO2 排出量 -1000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000 10000 シナリオE シナリオD シナリオC シナリオB シナリオA CO2排出量(トン/年) 20年後CO2排出量 30年後CO2排出量

(13)

- 13 - 5.5.感度分析

CO2 回収技術の発展予測の不確実性を踏まえ、CO2 削減効果と経済性に対してシステム全体に与える影響をモ ンテカルロ法に基づく感度分析によって検証する。実行するパラメータは、CO2 回収システムに影響を及ぼす 「CO2 回収ロス(Average Capturing Loss)(以下、ACL)」、「CO2 回収に必要な電気エネルギー(CO2 recovery system energy required per ton)(以下、CRE)」を選定する。ACL は、CO2 を回収するために材料や設備、歩留まりも含め たシステムが排出してしまう CO2 排出量(ライフサイクル CO2 排出量)を考慮し、総合的な損失分を乗じるた めの効率を 0~1 として、「正味 CO2 回収量(Expected Capture CO2 volume as actual)」を導くパラメータとする。 値が 1 に近いほど効率が良いことを表し、当初設定パラメータが 0.6、設定する値の下限値を 0.4、上限値を 0.85 とする。次に、CO2 回収に掛かる電気エネルギーは、将来の技術発展によって大きく改善されていく。CRE のベ ース値を 1 としてタイム関数(Time function for CO2 recovery system energy required per ton)を乗じ、当初 6GJ/トン -CO2 から 30 年後には 0.6GJ/トン-CO2 まで必要な電気エネルギーが下がる。当初 RE の設定パラメータを1 とし、 感度分析によって設定する下限値を 0.2、上限値を 2 とする。図 11 に示すグラフは、シナリオ D における感度分 析を実行した結果、工場全体の CO2 排出量に与える影響を表したグラフであり、カーボンニュートラルの達成に 向けて十分に有意な施策であることが示された。 ACL は、ライフサイクルでの CO2 回収効率に影響を与えるパラメータであり、その効率が想定よりも悪化す ることになれば、CO2 回収に掛かる費用に対する影響が大きくなることが想定される。CRE は、エネルギー効率 に影響を与えるパラメータであることから、太陽光発電への投資費用が嵩むことが想定される。これら 2 つの費 用の増大によって、図 12 で示すグラフのように、シナリオ D の工場全体に掛かるエネルギー調達総費用に対す る影響は大きなものとなる。将来見込まれる炭素税を考慮した場合、30 年後にはシナリオ D が CO2 削減効果と コスト面においても優れていることに変わりない結果を示した。この技術の不確実性要素と炭素税のような外部 環境の変化を意識することによって、設備導入判断に対するリスクをどの程度負うことになるか予測することが 可能となる。 図 11 工場全体の CO2 排出量に対する影響 図 12 工場全体に掛かるエネルギー調達総費用に対する影響 (炭素税あり) 6.結論 本稿は、生産工場で必要とされる電力と熱エネルギー需要に対して、CO2 排出量削減のために取り得る次世代 複合システムの評価モデルである。システム・シンキングによって、複合化がもたらす課題仮説を抽出し、その 相互作用が影響する事象に対して、システム・ダイナミクスによって時系列で定量的に示した。本稿で用いた評 価対象は、太陽光発電、バイオマス燃料の熱利用技術、CO2 回収システムの組み合わせたシナリオである。次世 代技術 CO2 回収膜分離法を用いたシナリオでは、将来に渡って持続的に技術レベルが向上するシナリオを織り込 んでおり、そのイノベーションの進展によって、太陽光発電と並ぶ有力な CO2 削減システムとなる可能性を秘め ている。このような複合的技術導入の組み合わせシナリオは多数考えられ、相互に関連し合う多数の条件を設定 できる拡張性と柔軟性を持ち、CO2 削減効果を定量的に比較評価ができる基本モデルを示すことができた。

(14)

最後に、本研究の限界と今後の課題についてまとめる。本モデルで用いるデータについては、経済産業省や環 境省からの公開データに基づき計算しているが、製造工場で複合システムとして実証されたデータではない。製 造工場において、CO2 排出量とコストだけでなく、エネルギー安定供給に対しても十分に考慮する必要がある。木質バ イオマス材に関しては、安定的な材料調達の懸念に加え、材料グレードによる価格と CO2 排出係数の違い、場所 による輸送先からの配送コスト増加など考慮されていない。さらに、従来の化石燃料用装置と比べて複雑な装置 構成となっており、人の介在が必要とされる点も多く、人件費を運営コストとして考慮する必要がある。また、 CO2 回収システムに関しては、本モデルで採用するコンパクトでイニシャルコスト含めた経済性で優れていると される革新的な膜分離法を想定しているが、CO2 排出源による効果の違いが考慮できておらず、CO2 回収量当た りの設備導入費用や運転材料費用については複数のシナリオを想定しておく必要がある。排出される CO2 濃度や 不純物、それに影響されるマテリアル耐久性などの変動要因は考慮できておらず、これらは CCS 運転に掛かるコ ストとエネルギー、マテリアル由来の CO2 排出係数に影響を及ぼすと考える。 回収された CO2 に対しては、実際には何かしらの処置をとることになる。液化炭酸やドライアイスの形に変え て再利用することも可能であり、先行研究にある地中貯留システムとの連携、水素と反応させて化成品やエネル ギー原材料としたリサイクルシステムとすることも想定できる。そのような活動に掛かる CO2 排出量と費用まで を合わせたサプライチェーン全体で議論することが大切である。CO2 を排出しない手法として水素エネルギーや 電熱変換による熱生成システムにも今後注目することもできる。どのようなサプライチェーンを築き上げること が最も効果的で現実的なのか状況に応じて検証していくことは、今後の研究課題である。今回得られた評価モデ ルと分析結果については、環境配慮に意識の高い生産工場の経営者にとって、有効なモデルの一つとなることを 期待し、新たな社会システムモデルへと発展させることも容易と考える。 参考文献

[1] IEA:“CO2 Emissions from Fuel Combustion 2019”, 2019. [2] コニカミノルタ(株):環境方針・ビジョン・戦略, https://www.konicaminolta.jp/about/csr/environment/vision/index.html, 2020.9.12. [3] 経済産業省:“第 5 次エネルギー基本計画”, 2018. [4] 環境省:“温室効果ガス排出抑制等指針「産業部門(製造業)」”, 2013. [5] 経済産業省:“エネルギー白書”,2018. [6] 経済産業省:“苫小牧における CCS 大規模実証試験 30 万トン圧入時点報告書”, 2020. [7] 三浦工業㈱:熱媒ボイラ KXI, https://www.miuraz.co.jp/product/boiler/kxi.html, 2020.6.27. [8] 日本木質バイオマスエネルギー協会:“木質バイオマスエネルギーデータブック”, 2018. [9] 国立研究開発法人科学技術振興機構低炭素社会戦略センター:“CCS(二酸化炭素回収貯留)の概要と展望”, 2015.

[10] Carolina Kelly et al. : “Water and carbon footprint reduction potential of renewable energy in the United States: A policy analysis using system dynamics”, 2019.

[11] HaifangLyu et al. : “Research on Chinese Solar photovoltaic development based on green-trading mechanisms in power system by using a system dynamics model”, 2017.

[12] Alireza Aslani et al. : “Role of renewable energy policies in energy dependency in Finland: System dynamics approach”, 2014.

[13] Laura Proanoet et al. : “Techno-economic evaluation of indirect carbonation for CO2 emissions capture in cement industry: A system dynamics approach”, 2020.

[14] Vanessa Núñez-López et al. : “Environmental and Operational Performance of CO2-EOR as a CCUS Technology: A Cranfield Example with Dynamic LCA Considerations”, 2019.

[15] Mai Buiet et al. : “Carbon capture and storage (CCS): the way forward”, 2018.

[16] Matteo Muratori et al. : “Carbon capture and storage across fuels and sectors in energy system transformation pathways”, 2017.

[17] Jeffrey A. Bennett et al. : ”Life cycle analysis of power cycle configurations in biology with carbon capture and storage”, 2019.

[18] 湊宜明:「実践システム・シンキング-論理思考を超える問題解決のスキル」,講談社出版, 2016. [19] 経済産業省:”太陽光発電について”, 2018.

(15)

- 15 - [20] 産業構造審議会産業技術環境分科会:“二酸化炭素回収技術実用化研究事業(プロジェクト)技術評価結果報 告書(中間評価)”, 2018. [21] 経済産業省:“長期エネルギー需給見通し”, 2015. [22] 環境省:“算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧”, 2020. [23] 環境省:“平成24年度使用済再生可能エネルギー設備のリユース・リサイクル基礎調査委託業務報告書”, 2013. [24] 関西電力㈱:料金のご案内,https://kepco.jp/biz/oshirase/, 2020.6.27. [25] 日本 LP ガス協会:“流通段階における LP ガス価格推移”, 2020. [26] 五十川大也:“「工場の電力需要に関するアンケート調査」調査結果の概要”, 2013. [27] 資源エネルギー庁委託調査報告書:“平成29年度新エネルギー等の導入促進のための基礎調査”, 2018. [28 ] 資源エネルギー庁資源・燃料部石炭課:“次世代火力発電の技術開発事業について”, 2017.

(16)

別表1 主要パラメータ設定値(ベースライン)

内容 パラメータ 単位 設定値 設定根拠 Production Capacity - 10,000

-Market Demand - 100 スロープ100の直線で上昇 Demand Adjustment Time 年 1

-Required Electricity for Production GJ 36,000 [26] 工場従業者数別使用電力量参照 Required Thermal Energy for GJ 36,000 電力需要と熱需要を同程度と仮定 CO2 emission factor for Total

Electricity

t-CO2/GJ 0.098 [22]算定・報告・公表制度における算定方法・排 出係数一覧

CO2 emission factor of fossil fuel

for Total Thermal t-CO2/GJ 0.074 [7][22]三浦工業(株)熱媒ボイラKXI参照 Target of Renewable/Purchase Ratio - 0.2 電力需要全体の2割から、9年後10割へ増加

Average Load Factor - 0.6 [26]工場従業者数別負荷率参照 Demand Adjustment Time for Renewable

Energy

年 1

-Demand for Solar Panel Installation 台 0

-Average Installation Time 年 2 設備立ち上げに掛かる期間 Solar Panel Capacity 台 0

-Average Lifetime of Solar Panel 年 20 [19]稼働年数20年 Maximum Electricity Generation per

Solar Panel

GJ 556 [19]設備容量2,000kW規模,年間2,000MWh電力量参 照

Uncertainty Factor - 0.8 経年劣化と異常気象など Average Transmission Loss - 0.8 敷地内の単一区画内のみ利用を仮定 CO2 emission factor for Renewable

Energy

t-CO2/GJ 0.02 [23]再生可能エネルギー設備の特性把握 参照 Target of Bio/Conventional Ratio for

Thermal - 0 5年後ボイラーからのCO2排出量の1割、以降2 年ごとに1割増加させ、23年後10割まで増加 Average Load factor for Thermal - 0.7

-Demand Adjustent Time for Bio Thermal Energy

年 1 需要から意思決定に掛かる年数 Demand for Bio Thermal boiler

installation 台 0 -Average Installation time for Bio

Thermal

年 2 設備立ち上げに掛かる期間 Bio Thermal boiler Capacity 台 0

-Average Life time of Thermal boiler 年 20 耐久消費材として20年と仮定 Maximam Thermal Generation per Bio

Thermal boiler

GJ 4,500 [7]三浦工業(株)熱媒ボイラKXI、[22]参照 Uncertainty Factor for Thermal - 0.9 経年劣化など

Average Transmission Loss for - 0.8 敷地内の単一区画内のみ利用を仮定 CO2 emission factor for Bio thermal

boiler

t-CO2/GJ 0.02

-Target CO2 Capturing/Emission ratio - 0 5年後ボイラーからのCO2排出量の1割、以降2 年 ごとに1割増加させ、23年後10割まで増加 Average Load Factor for CO2 Capture - 0.6 電力・熱設備と同程度を想定

Demand Adjustment time for CO2 Capturing

年 2 需要から意思決定に掛かる年数 Demand of CO2 capture Installation 台 0

-Average Installation time for Capture system

年 2 設備立ち上げに掛かる期間 Capacity of CO2 Capture system 台 0

-Average Life time of Capture system 年 20 耐久消費材として20年と仮定 Maximum CO2 Capture volume per t-CO2/年 100 [6][9][20]参照、TIME関数(100,1) Uncertainty Factor for Capture - 0.8 経年劣化

Average Capturing Loss - 0.6 敷地内漏れ量を想定 CO2 recovery system energy required

per ton GJ/t-CO2 6 [20]CO2分離回収コスト参照、TIME関数(6,-0.18) Unit investment E 円/台 32,200,000 [19]設備容量2,000kW規模、年間2,000MWh建設費 16.1円/kWh参照、16.1円/kWh×2,000MkW/台より 算出 Depreciation rate 年 20 設備耐久性より交換頻度想定 Unit maintenance cost E 円/GJ 830 [19]太陽光発電コスト運転維持費3円/kWh参照

Unit Electricity bill 円/GJ 3,333 [24]工場向け高圧電力(関西電力HP)参照 Unit investment T 円/台 50,000,000

-Unit maintenance cost T for Bio 円/GJ 250 設備費の5%と仮定 Unit maintenance cost T for

Conventional 円/GJ 80 設備費の5%と仮定、[7]三浦工業(株)熱媒ボイラKXI Unit Bio Thermal bill 円/GJ 1,500

-Unit Thermal bill for Conventional 円/GJ 1,979 [25]流通段階におけるLPガス価格推移2020、[22] 液化石油ガス(LPG)50.8GJ/t参照 Unit investment C 円/台 4,800,000 [21]CO2分離回収コスト参照 Depreciation rate C 年 20 設備耐久性より交換頻度想定 Unit maintenance cost C 円/t-CO2 1,440 年間あたり当初設備費の3%と仮定

Unit CO2 capture cost 円/t-CO2 8,000 [6][9][20]参照、TIME関数(8,000 -170) 炭素取引価格 Policy payment for CO2 discharge

unit 円 10,000 当初10,000,30年後に向けてスロープ1000となる 直線の上昇とする 太陽光発電 生産工場 CO2回収設備導入 と運転に掛かるコ スト バイオマスボイ ラー導入と熱調達 に掛かるコスト 太陽光発電導入と 電力調達に掛かる コスト CO2回収システム バイオマスボイ ラー

図 3  生産工場エネルギー消費とCO2 排出量の全体図
図 5  CO2 排出量削減技術導入と運転に伴うコスト構造の全体図

参照

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