• 検索結果がありません。

太田琢也・西山享:代数群と軌道,数学の杜,3,数学書房,2015年,420ページ.

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "太田琢也・西山享:代数群と軌道,数学の杜,3,数学書房,2015年,420ページ."

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)212. 書. 書. 評. 評 太田琢也・西山享:代数群と軌道, 数学の杜,3,数学書房,2015 年,420 ページ. 阿 部 紀 行. 代数多様体がその構造と両立する群構造を持つとき,代数群と呼ぶ.この定義だけでも,代数群が 非常に基本的な概念であることが推察されよう.本書は,この代数群,中でも線型代数群 (ある n に 関して GLn の Zariski 閉な部分群として実現される代数群) に関する入門書である.洋書であれば,. Borel [Bor91],Humphreys [Hum75],Springer [Spr09] といった代数群に関する定評ある教科書は いくつかあるが,和書には存在しなかった.本書は,この分野における和書初の入門書である.とは いえ,本書はこれらの教科書の和訳であるということは全くなく,著者ら自身の観点から独自に構成 されている.特に随所に現れる魅力的な例たちは,本書の醍醐味の一つであろう.その例の数の多さ と魅力は,もはやこれらの例を議論したいがために一般論を展開しているのではないか,と感じられ るほどである.ちょっとした小さな例から,数セクションを割いて語られる例まで,これらの例は, ともすれば無味乾燥な感じを与えてしまう一般論に潤いを与えていると思う.これらは先の教科書に はない魅力である.一方,簡約群のルート系による分類といった,先の教科書にはあるが本書では扱 われていない話題もある.なお,本書が出版された直後に堀田良之によるやはり線型代数群の入門書. [堀田 16] が出版された.本書と比べると,こちらの内容は先の教科書に近いようである. 代数群とは言っているものの,本書に現れる代数群は全て複素数体上である.特に,標数が正の体 における理論については殆ど語られない.それはもちろん理論に対する制限でもあるのだが,一方で 複素数体上の代数群を複素リー群と見なして行われる議論は,全体の議論を簡明にしている.中でも 本書の様々な場所で使われている指数写像は,代数群とそのリー環を直接結びつけるものとして,大き な役割を果たしている.一般の体上での事柄について学びたい読者も,まずはこのような簡明な (複 素数体上でしか機能しない) 議論により理論を学ぶのがよいのではなかろうか.本書で複素数体上の 場合を学んだ後ならば,先の教科書などで一般の体上の場合を学ぶのも容易であろう. 入門書としての本書の性格についても触れておく.前付によれば,そもそも本シリーズは ‘セミナー のためのテキストあるいは自習書として使用できる教材を提供するために企画された’ そうであり,‘大 学の数学科の授業で学ぶような知識を仮定して,ていねいに理論の解説をすることに力点が置かれて いる’ とのことである.また前書きや後書きを見ても,著者ら自身も自己完結的に書くことに苦労さ れたようである.私見としては,この試みは大いに成功しているように思う.群,環,体や (代数的 なものではなく C ∞ の意味での) 多様体といった基本的な事柄を知っていれば読み始められると感じ た.おそらくはセミナーで読むよりも一人で読み進めることに適した本である. 章ごとの内容について述べよう.1 章では,代数幾何に関する言葉が準備される.代数幾何に不慣 れな読者はもちろん,習熟している読者も目を通しておくとよいかと思う.より進んだ内容について は 16 章に付録としてまとめられているので,適宜参照すればよいであろう.線型代数群の概念は 2 章 にて導入される.いくつかの例が述べられた後,代数群の表現に関する話題に移る.Schur の補題や 完全可約性といった表現論ではおなじみの内容が解説された後,簡約代数群が ‘任意の有限次元表現. 数学 71 巻 2 号. 2019 年 4 月. 100.

(2) 書. 評. 213. が完全可約である’ ような代数群として導入される.この定義は便利ではあるのだが,例えば上述の 教科書にあるような定義とは異なる.また,本書で考えている複素数体上ではよくある定義と同値で あるものの,標数が正の場合には異なる概念となる.このあたりの関係については,後に 10 章で語 られることとなる.いずれにせよ,本章ではまず完全可約性により簡約代数群の定義が行われた後,. Peter–Weyl の定理,指標の理論,Frobenius の相互律といった,表現論でおなじみの内容が一気に解 説される.. 3 章では,一般線型群 GLn による具体例 (主に表現論) が語られる.GLn が (2 章の意味で) 簡約 群になることが示された後,最高ウェイトによる既約表現の分類理論,GLn × GLm を n × m の行 列全体のなす空間上の正則関数に作用させた際の表現の分解に関する GLn × GLm 双対性,また既 約表現を旗多様体上の直線束の切断として実現する Borel–Weil の定理などが扱われる.. 4 章からは,本書のタイトルの一部でもある軌道の理論が始まる.アフィン代数多様体 X に代数群 G が作用している場合,位相空間としての商 X/G は常に考えることができるが,これは一般には代 数多様体とはならない.本章では,その ‘よい近似’ としてアフィン商 X//G が Spec C[X]G として 導入される.その例の一つとして,G = GLn ,X = Mp,n × Mn,q (Mp,n は p × n 行列全体) が扱 われ,商 X//G が行列式多様体と呼ばれる多様体と同型であることが明らかになる.X//G の構造を 調べることは定義から C[X]G の構造を調べることと等価であり,従ってこれらの結果は古典的な不 変式論の定理と見なすことができる. 線型代数群 G とその閉部分群 H に関しては,位相空間としての商 G/H とアフィン商 G//H は一 致する.また一般の代数多様体 X への作用に関しては,x ∈ X に対して x を通る軌道は G/Gx (Gx は x の固定部分群) と同型になる.これが 5 章のトピックであり,この章の最後では G/H の例とし てグラスマン多様体が扱われる.特にグラスマン多様体が射影多様体になることが,射影空間への具. ucker 埋め込み) を構成することで示される. 体的な埋め込み (Pl¨ 6 章の主役はリー環である.リー群と同様,代数群に対してもそのリー環を考えることができ,代 数群とそのリー環の構造は非常に深く結びつく.その結びつきを体現するのが,本章で導入される指 数写像である.この写像は代数的ではなく,従って通常代数群の文脈では導入することができないが, ここでは複素数体で考えているというメリットを生かし,行列に関する指数写像の制限として一般の 線型代数群の指数写像を定義している.リー環自身の構造,特に簡約リー環の構造は 7 章で扱われる. ここで紹介される Jacobson–Morozov の定理は後に重要な役割を果たす.8 章の話題は Jordan 分解 である.ベクトル空間の自己準同型写像は,互いに可換な半単純元と冪零元の和に分けることができ, これを Jordan 分解という.8 章では,これが代数群のリー環の元に対しても可能であること,また代 数群に関してはその乗法的なバージョンが可能であることが示される.この Jordan 分解は,様々な 出来事を半単純元や冪零元の場合に帰着させることができるという点で,重要な分解である. 代数群の閉部分群があればそのリー環が考えられ,もとの代数群のリー環の部分リー環を与える. いわゆるリー理論であるが,9 章はこの部分群とリー環をキーワードとして理論が繰り広げられる.部 分群という観点からは交換子群が,また部分群ではないが冪単元全体のなす部分多様体である冪単多 様体が導入される.またリー環という観点からは,そのような部分群のリー環や,またトーラス (GL1 の直積と同型な代数群) の構造論がそのリー環を使うことで展開される.. 10 章では,簡約群の条件が調べられる.通常,簡約群は非自明な正規冪単閉部分群を持たないよう. 数学 71 巻 2 号 2019 年 4 月. 101.

(3) 214. 書. 評. な代数群として定義される.一方本書では 2 章でなされたように有限次元表現の完全可約性を使い簡 約群が定義されている.本章ではこの条件の (複素数体上での) 同値性が,Jacobson–Morozov の条 件を介することで示される.. 11 章の主役は Borel 部分群である.代数群 G の極大な連結可解閉部分群 B を Borel 部分群といい, 商空間 G/B を旗多様体と呼ぶ.この部分群と商空間は代数群の理論において最も重要であると言っ ても過言ではない.本章では,可解連結代数群が空でない完備代数多様体に作用している際に固定点 を持つという Borel の固定点定理から始まり,Borel 部分群やトーラス,旗多様体に関する重要な事 柄が解説される.. V を代数群 G の表現とする.12 章では,これを G が V (これは代数多様体でもある) に作用し ていると見なし,その構造を調べる.特にアフィン商への商写像 V → V //G における 0 のファイ バー (零ファイバー) が興味深い.章の後半では,G = GLn ,V = Mm,n × Mn,m の場合が詳細に. ) 本章では更に 解析される.(これは 4 章で扱われていた V = Mp,n × Mn,q の特殊な場合である. K = GLm × GLm の作用も考える.すると V は有限個の G × K 軌道に分かれる.ここでは p = q の場合に各軌道の構造が調べられ,特にその特異点解消が構成されている.なお,著者の一人である 西山による,この例やまた対称対に付随する類似の場合に対する研究 [Nis09] がある.. 13 章は G のリー環 g への作用が扱われる.この場合の零ファイバーは冪零元からなる多様体であ る冪零多様体と一致し,また Jordan 分解を使うと一般のファイバーも (より小さい代数群の) 冪零多 様体に帰着される.. Zm = Z/mZ を位数 m の巡回群とし,Zm が G に作用している状況を考えよう.生成元の作用 & を θ とする.すると G のリー環 g は θ の固有値に関する固有分解 g = j gj を持つ.このように 次数づけられたリー環を本書では Zm 階別リー環と呼んでいるが,これが 14 章で扱われる.G0 を. {g ∈ G | θ(g) = g} の連結成分とすると,G0 は各 gj に作用し,従ってその軌道の幾何を考えること ができる.m = 1 の場合は前節で扱った場合である.一般の m でもカルタン部分空間やワイル群,. Chevalley の制限定理や冪零軌道の有限性といった類似の内容が成立する. 15 章は m = 2 の場合である.この場合には,次の軌道の埋め込み定理が成り立つ (この定理は著 者の一人である太田 [Oht08] による).おおざっぱに言えば代数群 G とその表現 L および (G, L) に おける対合 (位数 2 の自己同型) が与えられたとき,それによる固定部分を (G0 , L0 ) とすると,誘導 される写像 L0 /G0 → L/G が単射になるというものである.特に G を代数群,L = g とし,G の対 合 θ に対して G × L  (g, X) → (θ(g), ±θ(X)) ∈ G × L を考えるとこの定理が適用でき,g におけ る θ の固有値 ±1 の固有空間 g±1 内の G0 軌道を解析することができる. この章では,まず G = GL,L = gl (このとき L/G は Jordan 標準形で分類される) で,G0 が Sp や O になる場合,次に G = GL, Sp, O の場合に冪零軌道が分類される.単射 L0 /G0 → L/G の像 を個々の場合に記述するわけである.G = GL, Sp, O の場合は,実半単純 Lie 群とその Cartan 対合 からくる場合でもある.Kostant–関口対応を通じて,本章の計算結果は実半単純 Lie 群 GR とその実. Lie 環 gR に対して gR 内の冪零軌道を記述していることにもなる. 文. 献. [Bor91] A. Borel, Linear Algebraic Groups. 2nd ed.,. 数学 71 巻 2 号. Grad. Texts in Math., 126, Springer, 1991. [Hum75] J. E. Humphreys, Linear Algebraic Groups, Grad. Texts in Math., 21, Springer, 1975.. 2019 年 4 月. 102.

(4) 書 [Nis09] K. Nishiyama, Resolution of null fiber and conormal bundles on the Lagrangian Grassmannian, Geom. Dedicata, 143 (2009), 19–35. [Oht08] T. Ohta, An inclusion between sets of orbits and surjectivity of the restriction map of rings of invariants, Hokkaido Math. J., 37 (2008), 437–. 215. 評. 454. [Spr09] T. A. Springer, Linear Algebraic Groups. 2nd ed., Mod. Birkh¨auser Class., Birkh¨auser, Boston, MA, 2009. [堀田 16] 堀田良之, 線型代数群の基礎, 朝倉数学大系, 12, 朝倉書店, 2016.. (2017 年 4 月 5 日提出) (あべ のりゆき・北海道大学大学院理学研究院). 柳田英二:反応拡散方程式, 東京大学出版会,2015 年,xii + 306 ページ. 二. 宮. 広. 和. ‘反応拡散方程式’ とは,化学反応,発熱反応,生態系,神経発火などで見られる,複数の成分の拡 散と反応によって引き起こされる現象を記述する方程式であり,非線形の単独あるいは連立の放物型 偏微分方程式となっている.部分的な性質に注目した和書 [ 1 ]–[ 4 ] はこれまでにもあったが,本書は 反応拡散方程式を全般的に解説する日本語ではじめての書籍である.これまでは原論文を一つひとつ 読んでいく必要があったため,本書の意義は非常に大きい. 反応拡散方程式のコンピューター・シミュレーションを行うと,方程式によってさまざまな解が得 られることはよく知られている.我々は,それらのさまざまな解をどのように数学的に理解すればい いのだろうか? 反応拡散方程式は,非線形放物型偏微分方程式の中では,最も簡単な方程式の一つで あろう.この一見簡単な方程式ですら,数学的に厳密な解析は容易ではない.その困難さは非線形性 から生じる豊富な数学的構造に由来する.非線形性は,方程式個別の状況に依存するが,その中から 定性的な性質を導くには,それらを横断的に見る視点や表現する言葉が重要となる.このような視点 や言葉を導入する試みを理解することは,より複雑な方程式の理解に不可欠なものであろうと思われ る.著者は,本書の中で反応拡散方程式の解の挙動を説明すると同時に,解の挙動を数学的に理解す るに必要な言葉 (概念) がどのような目的で導入されてきたか,概念の直感的な意味と共に分かりや すく説明している.その説明の中で解析が困難な理由が側面から照らし出されている. 各章を詳しく見ていこう. 第 1 章:反応拡散方程式とは. 反応拡散方程式の初期条件や境界条件など基本的な言葉の定義から,. 定常解や特殊解の進行波解および安定性解析に関する専門的な言葉の定義がまとめられ,方程式の種 別,解の挙動,数学的取り扱いの視点から俯瞰的な解説がなされている.この章を読むと,‘木’ では なく ‘森’ 全体を意識することができる. 第 2 章:単独反応拡散方程式の一般的性質 反応拡散方程式の中でも単独反応拡散系は,2 つの長 所をもっている.最大値原理が成り立つこととエネルギーの存在である.この章では,まず,前者の 性質から,比較原理,優解・劣解の方法,交点数の非増大性を説明し,その後,エネルギーや変分の 概念や k-モード定常解の構成法などさまざまな解析手法が紹介されている.特に,定常解に対する固 有値解析の節では,‘非凸領域においては,安定定常解は,定数定常解に限る’ ことが分かりやすく示 されており,一読に値する.. 数学 71 巻 2 号 2019 年 4 月. 103.

(5)

参照

関連したドキュメント

の dual としてトーラスに埋め込まれた Heawood グラフは.

実際, クラス C の多様体については, ここでは 詳細には述べないが, 代数 reduction をはじめ類似のいくつかの方法を 組み合わせてその構造を組織的に研究することができる

この数字は 2021 年末と比較すると約 40%の減少となっています。しかしひと月当たりの攻撃 件数を見てみると、 2022 年 1 月は 149 件であったのが 2022 年 3

(注)本報告書に掲載している数値は端数を四捨五入しているため、表中の数値の合計が表に示されている合計

“〇~□までの数字を表示する”というプログラムを組み、micro:bit

利用している暖房機器について今冬の使用開始月と使用終了月(見込) 、今冬の使用日 数(見込)

(注)本報告書に掲載している数値は端数を四捨五入しているため、表中の数値の合計が表に示されている合計

その太陽黒点の数が 2008 年〜 2009 年にかけて観察されな