小学校社会科におけるメタ・ヒストリー学習
-「県民の日」の授業-
Meta-History Studies in Elementary Social Studies Education: “Kenmin-no-hi (Prefectural Citizens' Day)” as a Regional Anniversary
佐 藤 貴 史*
服 部 一 秀**
SATO Takashi HATTORI Kazuhide
要約:本稿は,小学校社会科の歴史教育において,社会の中の歴史に関するメタ・ヒ ストリー学習を既存の有り様の分析に留めず,望ましい在り方の判断まですすめるこ とができるか,どうすればすすめることができるかについて,授業開発を通して検討 するものである。山梨県内の公立小学校において,明治前期に関するヒストリー学習 の指導の後,明治初期における山梨県の誕生に因んで設けられた県民の日に関するメ タ・ヒストリー学習の指導を計画・実践し,それを省みて吟味・改善することにより, 小学校社会科の歴史教育におけるメタ・ヒストリー学習の可能性を明らかにしている。 キーワード:メタ・ヒストリー,記念日,県民の日,小学校,歴史教育
Ⅰ はじめに
社会の中の歴史について取り上げ,その在り方を探求するメタ・ヒストリー学習は,小学校でも 可能か。どうすれば,可能にすることができるのか。本稿の目的は,これらの問いについて,第6 学年における県民の日に関する授業の計画・実践と吟味・改善を通して検討し,小学校社会科にお けるメタ・ヒストリー学習の可能性を追求することである。 社会の中の歴史に関するメタ・ヒストリー学習では,歴史マンガ,歴史ドラマ,歴史映画,歴史 小説,歴史祭り,歴史ツーリズム,歴史展示,紙幣の肖像,記念日,記念行事,記念演説など,現 在の社会において過去について扱っている事物やその問題を取り上げる。過去についての扱いの内 容理解を踏まえ,そのような既存の歴史がつくられ,つかわれている理由・背景について分析した り,さらに既存の歴史への対応について吟味判断したりする。こうしたメタ・ヒストリー学習の主 な意義として,次の3点が挙げられる1) 。 第1は,社会に溢れる歴史との熟考的なかかわり方を学べることである。語り(ナラティブ)と しての広義の歴史2) は教室の中だけでなく,社会の中に遍在する。様々な歴史が溢れる社会の中で, それらに呑み込まれることなく歴史実践を遂行し,自らの歴史認識を築いていくために学習者は, 熟考的なかかわり方を身に付ける必要がある。 第2は,歴史教育において現在について直接的に取り扱えることである。過去について取り組む ヒストリー学習と違い,過去を扱った既存の歴史について取り組むメタ・ヒストリー学習は,歴史 が存在している現在について直接的に取り扱う。現在の社会において過去の事柄について扱ってい る事物やその問題について取り上げ,歴史教育を現在の社会と結びついたものにする。歴史教育で * 上野原市立上野原西小学校教諭(教育実践創成専攻大学院生) ** 生活社会教育講座あっても学習者は,現在の事象や問題について学ぶことができる。学習者にとって,歴史教育の意 味や意義を意識することが可能となる。 第3は,歴史教育において社会認識やそれを一環とする社会形成の学習を行えることである。学 習者は現在の社会の中の歴史について,既存の有り様を見つめなおしたり,さらに望ましい在り方 を問いなおしたりすることで,社会の認識や新たな形成に取り組むことができる。国家・社会の形 成者育成のための社会科教育が歴史教育において実質化されるわけである。 これらの重要な意義をもつメタ・ヒストリー学習は,多くの学習者にとって学校での歴史教育の 機会が最後となる高等学校では,確実に展開されるべきである。とはいえ,高等学校から開始すれ ばよいというわけではなかろう。義務教育段階から段階的に展開されていく必要があろう。そうで あるとすれば,小学校社会科の歴史教育における可能性が検討されなければならない。 その検討はすでに2つの論考3) によって始められている。尤も,服部・小笠原(2018)は,第6 学年の歴史教育における歴史マンガの分析学習の可能性を検討するものであり,判断学習まではね らっていない。服部・浅尾・神戸(2018)は,紙幣の肖像画の分析学習とともに,さらに判断学習 まで射程に入れているものの,第6学年の歴史教育における特設の終結単元での可能性を検討する ものである。歴史教育の通常の単元においてメタ・ヒストリー学習を分析学習に留めずに判断学習 まですすめることができるか,どうすればすすめることができるかは,課題として残されている。 そこで本稿では,第6学年の明治前期単元「明治の国づくりを進めた人々」の一環において,山 梨県の県民の日という公的な記念日の分析と判断に取り組むメタ・ヒストリー学習を計画・実践し, それを省みて吟味・改善することにより,小学校社会科の歴史教育におけるメタ・ヒストリー学習 の検討をもう一歩前進させたい。 山梨県の県民の日とは,同県ホームページの「県民の日とは?」4) によれば,明治初期の廃藩置県 により,明治政府によって甲府県から山梨県へ改称された 11 月 20 日を,山梨県の誕生の日として記 念するものである。山梨県で初めて国民体育大会が開催された 1986 年,11 月 20 日を県民の日とする 条例が制定された。この県民の日条例5) では,「県民が,郷土について理解と関心を深め,ふるさと を愛する心をはぐくみ,共に次代に誇り得るより豊かなふるさと山梨を築きあげることを期する日 として,県民の日を設ける」と目的が述べられ,「県は,県民の日についての啓発を行うとともに, 県民の日を中心として,県民参加の下に県民の日にふさわしい行事を行うものとする」,「県の設置 した公の施設の使用料で知事が指定するものについては,当該使用料に係る条例の規定にかかわら ず,県民の日に限り,これを免除する」などと定められている。現在,県民の日には公立の小学校, 中学校,高等学校が休校になり,県立博物館をはじめとする多くの公立施設が無料で開放されたり, 県主催のイベントが催されたりしている。 そのような県民の日について分析・判断する学習の指導を 2018 年9月,佐藤が山梨県内の公立小 学校において,第6学年の単元「明治の国づくりを進めた人々」の一環として行った。以下,この 授業の計画と実践の概要を紹介した上で,計画・実践の吟味をもとに計画を改善し,それらを通し て小学校第6学年の歴史教育におけるメタ・ヒストリー学習の可能性について問いたい。
Ⅱ 県民の日の授業の計画・実践
先ず,県民の日の授業の計画・実践の概要を紹介したい。最初に,この授業のねらい,全体計画 について概略し,その上で,各時間の学習指導計画とそれに基づく学習指導の実際について順次, 説明していこう。1 県民の日の授業のねらい 県民の日の授業は,明治前期単元「明治の国づくりを進めた人々」の一環において,明治前期に ついてのヒストリー学習に後続するメタ・ヒストリー学習として位置づけたものである。先行のヒ ストリー学習では,「日本はどんな国をめざし,どのように国づくりを進めていったのだろうか」と いう学習問題に基づき,開国,大政奉還や五箇条の御誓文などから,大日本帝国憲法の発布や国会 の開設までの諸事象を取り上げ,明治維新以降,近代化が進められていったことを学ぶ。そのよう なヒストリー学習を前提にし,その学習成果を活かして取り組むメタ・ヒストリー学習として構想 したのが,この県民の日の授業である。 この授業に先立ち,山梨県の県民の日についての児童の認知や理解の状況を把握するため,事前 アンケートを実施した。それは表1の通り,「山梨県の県民の日について知っていることを書きま しょう」という設問により,自由記述形式で回答を求めたものである。回答した児童 28 名中,約 64%の 18 名は,「知らない」「わからない」という回答であった6) 。その他には,県民の日の由来に ついて述べた回答が約 21%の6名(「甲府県から山梨県に名前が変わった日」という趣旨の回答が3 名,「県ができた日」という趣旨の回答が 2 名,「藩が県に変わり,県として完成した記念の日」とい う回答が1名),また,県民の日の運用について述べた回答が約 14%の4名(「休みの日」という趣 旨の回答が3名,「県民が自由にくらせる日」という回答が1名)であった。35%程度ではあるが, 県民の日の由来あるいは運用について述べた回答がなされたのは,先行のヒストリー学習で廃藩置 県について扱った際に県民の日の存在に若干触れたことも関係していると推測される。 [設問] 山梨県の県民の日について知っていることを書きましょう。 [回答の集計結果] 甲府県から山梨県に名前が変わった日・・・・・3名 県ができた日・・・・・・・・・・・・・・・・2名 藩が県に変わり,県として完成した記念の日・・1名 休みの日・・・・・・・・・・・・・・・・・・3名 県民が自由にくらせる日・・・・・・・・ ・・・1名 知らない/わからない・・・・・・・・・・・・18名 〇県民の日は現在の目的のために過去の出来事を記念する日として設けられた記念日の1つであることがわかること。 〇現状の県民の日を相対化し,地域にとってよりよいものにするために吟味検討する必要があることに気づくこと 表1 事前アンケート 表2 県民の日の授業の中心目標 大半の児童にとって,11 月 20 日が休校日であることは知っていても,県民の日そのものは未知 であること,また,抑も,これまでの授業で歴史マンガなどの社会の中の歴史を取り上げることが あったにしても,あくまでもヒストリー学習の動機づけのためであり,児童にとってメタ・ヒスト リーの学習が初めてとなることも踏まえ,この授業では表2の通り,2つの中心目標を設定した。 その1つは,県民の日は現在の目的のために過去の出来事を記念する日として設けられた記念日 の1つであることがわかることである。もう1つは,現状の県民の日を相対化し,地域にとってよ りよいものにするために吟味検討する必要があることに気づくことである。現在の目的に基づいて つくられたもの,よいよい社会のために吟味検討する必要があるものとしての基本的な見方考え方 を身につけることが目標である。 この授業では,記念日としての県民の日の有り様や在り方に関する基本的な見方考え方を児童が
身につけることができるよう,県民の日について児童自身が分析・判断する学習をねらうこととし た。その全体計画の概要について次節で示そう。 2 県民の日の授業の全体計画 県民の日の授業の全体は,表3の通り,3時間からなる。その3時間は,1・2時間目の前半 パートと3時間目の後半パートとに分けられる。 [前半パート(1・2時間目)] ◎なぜ山梨県には県民の日があるのだろうか。 〇山梨県の県民の日は,どういう日なのだろうか。(1時間目) 県民の日は,廃藩置県の時に明治政府によって甲府県が山梨県に改められ,今につづく山梨県が誕生したことを,県 民皆が祝う日とされている。 〇山梨県で県民の日がつくられたのはどうしてだろうか。(2時間目) 県民の日は,山梨県で初めて国体が開かれた1986 年,県民意識の高まりを背景として,山梨県のすばらしさを守り一 層発展させていくためには,県民皆が今につづく山梨県の誕生を祝うことにより,山梨県の誕生と今日までの発展 に感謝し,山梨県の県民としての自覚を高めることが必要という考えに基づいて制定され,現在まで引き継がれて いる。 [後半パート(3時間目)] ◎山梨県の県民の日は,今のままでよいだろうか。 県民の日にふさわしい内容や日にちは他にも考えられ,地域にとって県民の日をどのような日にすることが望まし いかを考えていく必要がある。 表3 全3時間の基本構成 前半パート(1・2時間目)では,「なぜ山梨県には県民の日があるのだろうか」を中心課題とす る。その1時間目では,「山梨県の県民の日は,どういう日なのだろうか」と問い,明治政府による 中央集権化のための廃藩置県において甲府県から山梨県に改められ,今につづく山梨県が誕生した ことを,県民皆が想い起こして祝う日とされていると知ることを目指す。2時間目では,「山梨県で 県民の日がつくられたのはどうしてだろうか」と問い,県民の日は,山梨県で初めて国体が開かれ た 1986 年,県民意識の高まりを背景として,山梨県のすばらしさを守り一層発展させていくために は,県民皆が今につづく山梨県の誕生を祝うことにより,山梨県の誕生と今日までの発展に感謝し, 山梨県の一員として山梨県のすばらしさを守るとともに一層の発展を目指していこうとする自覚を 高めることが必要という考えに基づいて制定され,現在まで引き継がれているととらえることを目 指す。 それらを踏まえ,後半パート(3時間目)では,「山梨県の県民の日は,今のままでよいだろうか」 を中心課題とする。現状の県民の日の有り様を問いなおすことにより,県民の日にふさわしい内容 や日にちは他にも考えられ,どのような日にすることが地域にとって望ましいかを考えていく必要 があると気づくことを目指す7) 。 このように児童自身が「なぜ山梨県には県民の日があるのだろうか」という中心課題に基づいて 分析し,県民の日の成り立ちをとらえ,それを踏まえて「山梨県の県民の日は,今のままでよいだ ろうか」という中心課題に基づいて判断し,既成の県民の日への対応について考えるという課題追 究過程として,3時間の流れを構成した。県民の日の分析とそれを踏まえた判断の学習により,県 民の日は現在の目的のために過去の出来事を記念する日として設けられた記念日の1つであること, 県民の日を地域にとってよりよいものにするために吟味検討していく必要があることを学びとれる ようにすることをねらった。
3 各時間の計画・実践 3時間構成における各時間の計画とそれに基づく実践について,説明していこう。 (1)1時間目の計画・実践 1時間目は,児童が「なぜ山梨県には県民の日があるのだろうか」という前半パート(1・2時 間目)の学習課題を共有し,その追究の手始めとして「山梨県の県民の日は,どういう日なのだろ うか」という課題に取り組む時間である。この時間における学習指導の計画を主な問いの展開に よって示すと,表4の通りである。 表4 1時間目の主な問い [導入] ・山梨県の県民の日は何月何日か知っていますか。 ・他のどの都道府県にも都道府県民の日があるのでしょうか。 ◎なぜ山梨県には県民の日があるのだろうか。 〇山梨県の県民の日は,どういう日なのだろうか。 [展開] ・11 月 20 日は,山梨県で何があった日でしょうか。 ・他の都道府県では,どんな日が都道府県民の日に選ばれていますか。 ・山梨県の形は甲府県の時と変わらないのに,11 月 20 日を県民の日にするということは,私たちの山梨県がどうやっ て誕生したとみているのでしょうか。 ・毎年 11 月 20 日には,何が行われていますか。 ・もし,あなたが下級生に「県民の日は何の日ですか」と聞かれたら,どのように答えますか。 ・昔にあった出来事を記念する日は,県民の日以外にどんな日がありますか。 [終結] 〇山梨県の県民の日は,どういう日なのだろうか。(ノートに記述する) この時間の冒頭では,「山梨県の県民の日は何月何日か知っていますか」と問いかけ,県民の日の 存在を確認する。その上で,「他のどの都道府県にも都道府県民の日があるのでしょうか」と問いか け,都道府県民の日の一覧表により,半分以上にはないことに気づかせる。そうすることで,「なぜ 山梨県には県民の日があるのだろうか」という前半パート(1・2時間目)の学習課題を立てる。 この学習課題に取り組むために本時の課題として設定するのが,「山梨県の県民の日は,どういう日 なのだろうか」という問いである。 その本時の課題の追究では,県民の日は明治政府による中央集権化のための廃藩置県での甲府県 から山梨県への改称に由来すること,異なる由来をもつ都道府県民の日も存在することを確認させ た上で,「山梨県の形は甲府県の時と変わらないのに,11 月 20 日を県民の日にするということは,私 たちの山梨県がどうやって誕生したとみているのでしょうか」と問いかける。そうして,県民の日 の設定における山梨県の誕生についてのとらえ方に気づかせる。また,「毎年 11 月 20 日には,何が 行われていますか」と問い,県民の日の行事等の一覧表により,県民の日の運用について確認させ る。県民に対する県民の日のメッセージに気づかせる。それらを踏まえて,「もし,あなたが下級生 に「県民の日は何の日ですか」と聞かれたら,どのように答えますか」と問いかけ,記念日として の県民の日について自分の言葉でまとめさせる。最後には,「昔にあった出来事を記念する日は,県 民の日以外にどんな日がありますか」と問い,県民の日を記念日の1つとして確認させるとともに,
他の記念日にも目を向けさせる。 授業の最後には,「山梨県の県民の日は,どういう日なのだろうか」という本時の課題に対して, 各自でノートに回答させ,あえてクラス全体としてのまとめをせずに授業を終える。ノートの回答 記述によって本時における個々の児童の学習成果を把握する。 この1時間目の授業は,上記の計画の通りに進行した。冒頭の「山梨県の県民の日は何月何日か 知っていますか」という問いかけに答えた児童はいなかったものの,以降のどの問いかけにも児童 たちは活発に発言し,前向きに取り組んだ。ただ,「もし,あなたが下級生に「県民の日は何の日で すか」と聞かれたら,どのように答えますか」という終盤の実質的なまとめの問いに対して,児童 は個々人で考えた上で隣同士でも考え,意欲的に取り組んだけれども,「甲府県から山梨県に変わっ た日で,それを祝って,施設などが無料になります」というように,過去と現在を結びつけた回答 があった一方で,「甲府県から山梨県に名前が変わった日です」というように,過去についてのみ触 れた回答もあった。 「山梨県の県民の日は,どういう日なのだろうか」という本時の課題に対して最後に各自が答えた ノート記述にも,そうした傾向はみられた。27 名中 25 名(93%)というほぼ全ての児童が県民の日 を甲府県から山梨県への改称による山梨県の誕生という過去の出来事と結びつけて理解できていた。 しかしながら,さらに県民の日の設定・運用が表現している内容,つまり今につづく山梨県の誕生 を県民皆で祝おうというメッセージ性まで記述した児童は約半数の 13 名(48%)に留まった。県民 の日をその由来という歴史的視点から理解することはほぼ保障できたものの,現在的視点からメッ セージ性という表現内容について理解することを十分に保障することはできなかった。 (2)2時間目の計画・実践 2時間目は,1時間目における県民の日の内容理解を踏まえ,「山梨県で県民の日がつくられたの はどうしてだろうか」を問い,前半パート(1・2時間目)の学習課題を解決する時間である。こ の時間の学習指導の計画を主な問いの展開によって示すと,表5の通りである。 表5 2時間目の主な問い [導入] ・山梨県の県民の日は,どういう日なのだろうか。(前時の学習を振り返る) 〇山梨県で県民の日がつくられたのはどうしてだろうか。 [展開] ・いつ,県民の日ができたのでしょうか。 ・当時の知事さんたちは,どうして県民の日をつくろうと思ったのでしょうか。 ・山梨県は 1986 年よりも前からあったのに,どうしてこの時に県民の日をつくろうと思ったのでしょうか。山梨県 民はどうしてそれを受け入れたのでしょうか。 ・どうして 11 月 20 日にイベントなどをするのでしょうか。 ・県民の日のように,地域をよりよくしていこうとする目的が感じられるモノやコトが私たちの地域にありますか。 [終結] ◎なぜ山梨県には県民の日があるのだろうか。(ノートに記述する) 2時間目では最初に先ず,「山梨県の県民の日は,どういう日なのだろうか」と前時の課題を問い かけ,前時の振り返りを行う。その上で,「山梨県で県民の日がつくられたのはどうしてだろうか」
という本時の課題を投げかける。 その追究では,県民の日ができた時期を確かめ,「当時の知事さんたちは,どうして県民の日をつ くろうと思ったのでしょうか」,「山梨県は 1986 年よりも前からあったのに,どうしてこの時に県民 の日をつくろうと思ったのでしょうか」と問いかける。そうして,県民の日についての県知事の発 言,1986 年の山梨初の国体開催を示す新聞記事を資料として用い,山梨県の誕生と今日までの発展 に感謝し,山梨県の一員として山梨県のすばらしさを守るとともに一層の発展を目指していこうと いう自覚を高めるように促したいという県民の日の趣旨・意図,山梨県のすばらしさの維持とさら なる発展を目指す県知事らの立場,また,県民の日の設定を後押しした社会的背景をとらえさせる。 その上で,「どうして 11 月 20 日にイベントなどをするのでしょうか」と問い,県民の日の設定の趣 旨・意図や政治的社会的立場の認識に基づいて,県民の日の運用も説明づけさせる。さらに,「県民 の日のように,地域をよりよくしていこうとする目的が感じられるモノやコトが私たちの地域にあ りますか」と問い,県民の日という記念日を県民意識の醸成手段の一つとして位置づけられるよう にする。 以上に基づき,本時の最後に,「なぜ山梨県には県民の日があるのだろうか」という前半パート (1・2時間目)の中心課題について,各自でノートに回答させる。このノートの回答記述によって 前半パート(1・2時間目)における個々の児童の学習成果を跡づけることとする。 2時間目の実際の授業も,このような計画の通りに進行した。「当時の知事さんたちは,どうして 県民の日をつくろうと思ったのでしょうか」,「山梨県は 1986 年よりも前からあったのに,どうして この時に県民の日をつくろうと思ったのでしょうか」という問いのもと,資料の新聞記事から,県 知事らの立場に基づく趣旨・意図,当時の地域の様子のそれぞれについて読み取らせることはでき た。けれども,国体開催による盛り上がりを十分にイメージさせることができなかったこともあっ て,趣旨・意図を当時の地域の様子と結びつけつつ納得的にとらえさせることに苦しんだ。また, 「県民の日のように,地域をよりよくしていこうとする目的が感じられるモノやコトが私たちの地域 にありますか」という問いかけには,お祭りという回答が出されたものの,その他については教師 が紹介するに留まった。 「なぜ山梨県には県民の日があるのだろうか」という中心課題に対する児童のノート記述を見てみ ると,27 名中 26 名(96%)というほぼ全ての児童が1時間目では十分でなかった現在的視点からの メッセージ性をとらえることができていた。一方,制定の趣旨・意図について 22 名(81%)の児童 が記述したものの,制定の趣旨・意図と社会的背景を結びつけて記述した児童は4名(15%)に留 まり,18 名(66%)の児童は趣旨・意図のみについて記述した。また、4名(15%)の児童は,社 会的背景のみについて記述した。県民の日の理由・背景の認識を十分に保障することができなかっ た。 (3)3時間目の計画・実践 3時間目は,前半パート(1・2時間目)の課題解決に基づき,後半パートの中心課題「山梨県 の県民の日は,今のままでよいだろうか」に取り組み,現状の県民の日に問題があるか否か,問題 があるとすれば,どう改めるとよいかを判断する時間である。この時間の学習指導の計画を主な問 いの展開によって示すと,表6の通りである。 この時間では,前時までの振り返りの後,「もしも,今,県民の日がないとしたら,山梨県民に とって困ることがあるのでしょうか」と問いかけ,考えさせてみる。そうすることで,現状におけ る県民の日の有り様や存在意義について一旦疑問の眼を向けてみるように促し,「山梨県の県民の日 は,今のままでよいだろうか」という課題を設定する。
[導入] ・なぜ山梨県には県民の日があるのだろうか。(前時までの学習を振り返る) ・もしも,今,県民の日がないとしたら,山梨県民にとって困ることがあるのでしょうか。 ◎山梨県の県民の日は,今のままでよいだろうか。 [展開] ・県民の日に学校を休みにしたり,博物館などの公共施設を無料で開放したり,イベントを行ったりしていますが, それらは県民の日の目的に合っているでしょうか。 ・私たちが山梨県民として,山梨県をよりよくしていこうという思いになるためには,県民の日をどんな県民の日 にするとよいと思いますか。他の都道県民の日の様子を参考にして考えてみましょう。 ・11 月 20 日を県民の日にしていることは,よいことでしょうか。 [終結] ◎山梨県の県民の日は,今のままでよいだろうか。(ノートに記述する) ・私たちの地域のために,県民の日としてふさわしい日が 11 月 20 日の他にあるでしょうか。これからの歴史学習で も考えていきましょう。 そうして,「県民の日に学校を休みにしたり,博物館などの公共施設を無料で開放したり,イベン トを行ったりしていますが,それらは県民の日の目的に合っているでしょうか」と問い,県民の日 の趣旨・意図との関係において現在の運用の適切さについて吟味させる。つづいて,「私たちが山梨 県民として,山梨県をよりよくしていこうという思いになるためには,県民の日をどんな県民の日 にするとよいと思いますか」と問い,他の都道府県民の日の様子を参考にして,よりよい運用の在 り方についてグループごとに考えさせ,クラス全体で意見交換させる。さらにまた,「11 月 20 日を 県民の日にしていることは,よいことでしょうか」と問う。県民の日の運用だけでなく,日にちの 良し悪しについても吟味させ,意見交換させる。 授業の最後では,本時の課題について各自の考えをまとめさせた後,これからの歴史学習でも県 民の日の設定の在り方について考えていくように促す。 3時間目の実際の授業は,概ね,このような計画のように展開した。「県民の日に学校を休みにし たり,博物館などの公共施設を無料で開放したり,イベントを行ったりしていますが,それらは県 民の日の目的に合っているでしょうか」という問いに対しては肯定・否定の数多くの意見がだされ た。また,「私たちが山梨県民として,山梨県をよりよくしていこうという思いになるためには,県 民の日をどんな県民の日にするとよいと思いますか」という問いのもと,県民の日の運用をめぐっ ては,グループ討議を踏まえて,県民の祭りを開く,山梨の歴史や文化などに関する学習会をする, 山梨に関する本の特別展示をする等々,活発に意見交換することができた。しかしながら,これら に多くの時間を費やしたため,「11 月 20 日を県民の日にしていることは,よいことでしょうか」と いう問いについては十分な時間をとることができず,山梨の県民の日であって山梨県の日ではない のだから明治政府によって山梨県という名前を決められた日ではないほうがよい旨の意見などがだ されたにも拘わらず,話し合いを導くことができなかった。県民の日の運用の在り方について考え ることができた一方,設定の在り方を問いなおすことは不十分となってしまった。 表6 3時間目の主な問い
Ⅲ 県民の日の授業の吟味・改善
授業実施の1週間後,事後アンケートを行った。この事後アンケートの結果を踏まえて,県民の 日の授業を振り返り,計画の改善に取り組もう。 1 事後アンケートに基づく振り返り 事後アンケートは,表7の通り,2つの設問からなる。2つの設問は,2つの中心目標に基づき, それらの達成状況を見極めようとするものである。 [設問1] 山梨県の県民の日は記念日の1つです。記念日とはどういう日ですか。 [集計結果] 選択肢ア:これからの世の中のために,今の私たちが忘れてはいけない昔のできごとを思いうかべる日→ 10 名 選択肢イ:江戸時代や明治時代など,昔の人々にとって,大きなできごとがあった日→ 11 名 選択肢ウ:大きなできごとがあった日→ 6 名 選択肢エ:よくわからない→ 0 名 [設問2] 山梨県の県民の日は今のままでよいと思いますか。そう思った理由を書きましょう。 [集計結果] 選択肢ア:今のままでよい→ 16 名(その内,理由を書いた者 13 名) < 理由の記述例 > ・県民の日はみんなとお祝いをする日なので,学校が休みになったり,施設が無料になったりするの は,良いことだと思うから。 ・県立博物館なども無料だから,山梨県を学ぶことができるから。 選択肢イ:変えたほうがよい→ 11 名(その内,理由を書いた者 10 名) < 理由の記述例 > ・今は何のために県民の日があるかを知らない人が多いので,それを教えることが大切だと思うから。 ・県民の日は山梨県の誕生したことを祝うもののはずなのに,ただの休日になってしまっているから。 表7 事後アンケート(授業終了1週間後に実施) 設問1は,目標の1つ目に基づき,「山梨県の県民の日は記念日の1つです。記念日とはどういう 日ですか」と問う。ア「これからの世の中のために,今の私たちが忘れてはいけない昔のできごと を思いうかべる日」,イ「江戸時代や明治時代など,昔の人々にとって,大きなできごとがあった 日」,ウ「大きなできごとがあった日」,エ「よくわからない」という4つの選択肢から選ばせるも のである。この設問1への回答は,アが 10 名,イが 11 名,ウが6名であった。2時間目が終わった 段階では,ほぼ全ての児童が県民の日のメッセージ内容をつかんでいたし,約8割の児童は県民の 日の趣旨・意図をとらえられていたけれども,授業の1週間後において,県民の日という記念日を 現在の目的によってつくられたものととらえられている児童は 10 名に留まった。1つ目の目標を4 割弱の児童にしか達成させることができなかったという結果である。 設問2は,目標の2つ目に基づき,「山梨県の県民の日は今のままでよいと思いますか」と問う。 「今のままでよい」か「変えたほうがよい」かを選ばせ,そう考える理由を述べさせるものである。 この設問2への回答は,「今のままでよい」が 16 名,「変えたほうがよい」が 11 名であり,全ての児 童が問題の有無について回答を示した。また,その多くは理由も述べることができた。それらは3 時間目の授業で児童がグループや各自で考えた内容とも重なるものである。ただ,3時間目の授業 の結果として,どの回答も,県民の日の運用に関するものとなっており,県民の日の設定に関する ものは皆無である。児童は県民の日の過去理解や趣旨・意図を前提化し,その枠内で考えている。 県民の日を地域にとってよりよいものにしたいという姿勢を読み取ることができるとはいえ,現状を根底的に問いなおしているとまではいえない。2つ目の目標を十分に達成させることができたと はいえないという結果である。 このような事後アンケートの結果を踏まえて,3時間の計画・実践を振り返ってみると,次の3 点が大きな課題として見出される。第1点は,過去の廃藩置県における山梨県の誕生と,現在にお ける県民の日の存在とを混同させてしまい,県民の日は現在においてつくられ,つかわれているも のであると理解することを十分には保障できなかった点である。第2点は,現在において県民の日 がつくられ,つかわれているという現状だけでなく,そうした現状の訳すなわち設定・運用の理由・ 背景を論理的また納得的にとらえることも,十分には保障できなかった点である。第3点は,県民 の日の吟味検討において,現状の県民の日の設定を結果的に前提化させてしまい,その枠内で運用 の在り方を問いなおすことは保障できたけれども,設定の在り方にまで立ち戻って問いなおすこと は保障できなかった点である。 これらの3点は,3時間構成の全体計画というよりは各時間の計画に起因するものであり,1つ のポイントに集約することができる。それは,記念日としての県民の日の論理構造(D-W (B) - C)が教師の頭の中にはあったものの,授業において児童に意識させることが不十分だったことで ある。この論理構造とは,トゥールミンの議論の論理に基づくものであり,D(山梨県の誕生とい う過去についての理解)とC(記念日としての県民の日の設定・運用という現在における過去の取 り扱い),また,これらをつなぐW(県民の日の設定・運用の趣旨・意図)やそれを支えるB(趣 旨・意図の根底にある政治的社会的立場)からなる8) 。DとCを区別することとともに,W (B) に よって論理的に結びつけ,D-W (B) -Cによる論理構造をとらえること,また,こうした論理構 造に基づく県民の日がうみだされた社会的背景と関連づけることを保障できなかったために,第1・ 2点の課題をうみだし,1つ目の目標を十分には達成できなかったわけである。さらに,吟味検討 において,D-W-Cの整合さに児童の殆どの意識を向かわせ,運用の在り方の判断に多くの時間 を費やさせてしまい,Dの確かさやW (B) の妥当さに着目して県民の日の設定も吟味検討するよう に導けなかったために9) ,第3点の課題をうみだし,2つ目の目標を十分に達成させることができ なかったわけである。 県民の日の授業の改善においては,トゥールミンの議論の論理に基づく分析と吟味検討とによる 判断形成を児童の学習方法として重視し保障することにより,児童が県民の日の設定・運用の論理 構造やその社会的背景をとらえられるようにすること,県民の日の設定・運用の論理構造を評価づ けたり,つくりかえたりして,運用だけでなく設定についても吟味検討できるようにすることが重 要な鍵となる。これらを解決する授業改善プランについて,次節において明らかにしよう。 2 県民の日の授業の改善プラン 2つの中心目標を達成すべく,トゥールミンの議論の論理に基づく分析と吟味検討とによる判断 形成を児童の学習方法として重視し保障することにより,各時間の改善では次のように修正・変更 を行う。 (1)1時間目の改善 1時間目においては,D-W (B) -CにおけるD-Cの把握により,県民の日の内容を理解でき るようにするため,児童が過去に関するDと現在におけるCとを区別するとともに関係づけること を重視して改善を図る。 導入部において,予め,県民の日がいつできたかを確認するように改めるとともに,本時の課題 を「県民の日は,どういう日なのだろうか」ではなく,「県民の日は,どういう日として設けられて いるのだろうか」へ変更する。 また,展開部では,県民の日の創設をすすめた人たちの存在に目を向けさせ,「県民の日をつくっ
た人たちは,私たちの山梨県が何によって誕生したと考えているのでしょうか」(D),「山梨県の誕 生から 100 年以上たってから県民の日をつくった人たちは,県民の日をどういう日にしようと考えて いるのでしょうか」(C)を追究させる。 そうして,終結部では,「昔」と「今」という言葉を使って本時の課題に答える機会を設ける。 (2)2時間目の改善 2時間目においては,D-W (B) -CにおけるW (B) とその背後の社会的背景の分析により,記 念日としての県民の日がつくられた理由・背景を認識できるようにするため,児童が当時の知事た ちの目的や立場から社会的背景へと追究をスムーズにすすめ,それらを納得的に結びつけることを 重視して改善を図る。 そのために展開部において,「どうして「誕生日」のように毎年,県民の日を祝おうと考えたので しょうか」,「どうして山梨のすばらしさを守り一層発展させていこうという気持ちを県民皆が毎年 確認することが大切だと考えたのでしょうか」というように,誕生日の喩えを用い,児童が県民の 日をつくった人たちの気持ちを解釈しやすくするように問いを修正する。 また,「山梨県は 1986 年よりも前から 100 年以上もありつづけているのに,どうしてこの時に県民 の日をつくろうと思ったのでしょうか」と疑問を喚起した上で,「1986 年に何があったのでしょう か」,「国体とは何ですか。国際的な大会である何と似ていますか」というように,オリンピックで の盛り上がりを連想することで国体開催時の地域の様子をイメージしやすくするように問いを修正 する。とともに,「かいじ国体があった年に,どうして県民の日をつくろうと思ったのでしょうか」, 「山梨県民は県民の日という新しい記念日をつくろうと聞いたとき,どう思ったでしょうか」など, そうした国体での盛り上がりと県民の日の制定とを結びつけやすくするように問いを修正する。 そうして,終結部では,「考え」と「背景」という言葉を使って本時の課題に答える機会を設け, さらに,ここで,記念日の基本的性格をまとめさせるようにする。 (3)3時間目の改善 3時間目においては,D-W (B) -Cの吟味検討により,記念日としての県民の日の在り方を判 断できるようにするため,D-W-Cの整合さ,Dの確かさ,W (B) の妥当さの3点を見なおし, それらを踏まえて自分の考えをつくることを重視して改善を図る。 そのために展開部において,D-W-Cの整合さに関する2つの問いを統合し,「県民の日に学校 を休みにしたり,博物館などの公共施設を無料で開放したり,イベントを行ったりしていますが, それらは県民の日の目的に合っているでしょうか。他の都道県民の日の様子も参考にして考えてみ ましょう」と改め,この着眼点の吟味検討に要する時間を短縮する。 また,Dの確かさに関する吟味検討を活性化させるため,「11 月 20 日は私たちの山梨県の出発の 日として本当にふさわしいでしょうか」と問い,他に候補となりうるかもしれない日10) をいくつか 挙げることで,現状に一旦疑問の眼を向けて考えやすくする。そうして,W (B) の妥当さの吟味検 討も可能にするため,「県民の日は何のための日であるとよいでしょうか」と問い,先行の2つの問 いについての考察も踏まえて考えさせる。 終結部において児童は,「山梨県の県民の日は,今のままでよいだろうか」という中心課題に対し て,以上の考察に基づくことで,3点の吟味検討を踏まえ,自分の考えをつくることができるので はなかろうか。 (4)改善プラン 以上の改善を施した学習指導計画を表8として示そう。
表8 県民の日の授業(改善プラン) 目 標 ・県民の日は現在の目的のために過去の出来事を記念する日として設けられた記念日の1つであることがわかること。 ・現状の県民の日を相対化し,地域にとってよりよいものにするために吟味検討する必要があることに気づくこと。 過程 教師の活動(発問・指示など) 資料 児童の活動 考察内容 1時間目 導入 (課題設定) ・山梨県の県民の日は何月何日か知ってい ますか。 ・いつ県民の日ができたか知っています か。 ・他のどの都道府県にも都道府県民の日が あるのでしょうか。 ◎なぜ山梨県には県民の日があるの だろうか。 〇県民の日は,どういう日として設 けられているのだろうか。 ① ・県民の日の日にちを答える。 ・県民の日の存在を知る ・県民の日がつくられた年に ついて,教師の説明を聞く。 ・プリント(都道府県民の日 の 一 覧 表 ) か ら 読 み 取 り, 答える。 ・なぜ山梨県には県民の日が あるのか,予想する。 ・県民の日は,どういう日と し て 設 け ら れ て い る の か, 予想する。 ・山梨県の県民の日は,11 月 20 日である。 ・山梨県の県民の日は,1986 (昭和 61)年につくられた。 ・都道府県の半分近くにはあ るが,都道府県の半分以上 にない。 展開 (課題追究) ・11 月 20 日は,今の山梨県の地域で過去 に何があった日でしょうか。 ・ 他の都道府県では,どんな日が都道府県 民の日に選ばれていますか。 ・ 山梨県の形は甲府県の時と変わらないの に,11 月 20 日を県民の日にしていると いうことは,県民の日をつくった人たち は,私たちの山梨県が何によって誕生し たと考えているのでしょうか。 ・毎年,県民の日の 11 月 20 日には,学校 が休みとなりますが,その日には何が行 われていますか。 ② ① ③ ・ 県 民 の 日 の 由 来 に つ い て, スライド(山梨県の県民の 日 の 由 来 ) か ら 読 み 取 り, 答える。 ・プリント(都道府県民の日 の 一 覧 表 ) か ら 読 み 取 り, 答える。 ・県民の日の設定における山 梨県誕生のとらえ方につい て,隣同士で考えて,発表 する。 ・ 県 民 の 日 の 運 用 に つ い て, 答える。 ・プリント(山梨県における 県民の日の行事等)をもと に答える。 ・11 月 20 日は,明治時代,全 国の藩を解体し中央集権化 するための廃藩置県(1871 年)において,明治政府に よって甲府県から山梨県へ 名 前 が 変 更 さ れ た 日 で あ る。 ・合併などによって現在の県 の形になった日,現在の県 名が使われた日,名前を政 府に提案した日,市会から 市長が選ばれて市役所が設 置された日など。 ・形が今と同じになっただけ でなく,明治政府の命令に よって名前が現在と同じ山 梨県に変わったことをもっ て,私たちの山梨県が誕生 したと考えられている。 ・公立の小学校・中学校・高 等学校が休校日となる。 ・県立博物館などの多くの公 立 施 設 が 無 料 で 開 放 さ れ る。 ・小瀬スポーツ公園などで出 店がでるイベントが催され る。 ・山梨県の誕生を毎年,お祝 いしているかのようだ。
・もし,あなたが下級生に「山梨県が誕生 した日に,どうして学校を休みにし,い ろいろな行事を行うのか」と聞かれた ら,どのように答えますか。 ・山梨県の誕生から 100 年以上たってから 県民の日をつくった人たちは,県民の日 をどういう日にしようと考えているので しょうか。 ・県民の日のように,昔にあった出来事を 今の人たちが記念する日のことを何とい うか知っていますか。 ・県民の日の運用についての 下級生への説明の仕方を考 え,隣同士で説明してみる。 ・県民の日のメッセージにつ いて考え,発表する。 ・昔の何らかの出来事を記念 する日の呼称を答える。 ・「11 月 20 日は山梨県の誕生 日であり,明治時代に山梨 県が誕生したことを毎年, 県民皆で祝う。」 ・県民皆が今につづく山梨県 の誕生という出来事を毎年 祝う記念の日にしようと考 えている。 ・昔にあった出来事を記念す る 日 の こ と を 記 念 日 と い う。 終結 (課題解決) 〇 山梨県の県民の日は,どういう日として 設けられているか,「昔(過去)」と「今 (現在)」という言葉を使って表してみよ う。 ・本時の課題について,各自, 回答をノートに記述する。 (例) ・昔,明治政府の廃藩置県に よって山梨県が誕生したこ とを,誕生日のように今の 山梨県民皆が毎年祝う記念 日として,県民の日は設け られている。 2時間目 導入 (課題設定) ・ 県民の日は,どういう日として設けられ ているのでしょうか。 〇山梨県で県民の日がつくられたの はどうしてだろうか。 ・前時の学習を振り返る。 ・山梨県で県民の日がつくら れたのはどうしてか,予測 する。 (略) 展開 (課題追究) ・いつ,県民の日ができたのでしょうか。 再確認しましょう。 ・当時の知事さんたちは,どうして「誕生 日」のように毎年,県民の日を祝おうと 考えたのでしょうか。 ・ 知事さんたちは,どうして山梨のすばら しさを守り一層発展させていこうという 自覚を県民皆がもつことことが大切だと 考えたのでしょうか。 ・ 知事さんたちは,今の山梨県は良いと考 えていたのでしょうか,それとも良くな いと考えていたのでしょうか。 ④ ・県民の日がつくられた年を 確認し,答える。 ・スライド/プリント(県民 の日についての山梨県知事 の発言)を読み,県民の日 をつくった目的を考え,発 表する。 ・ 県民皆に県民としての自覚 を促す必要があると考えら れた訳を考え,発表する。 ・県民の日の設定の基本態度 について考え,発表する。 ・山梨県の県民の日は,1986 (昭和 61)年につくられた。 ・ 県民が山梨県の誕生と発展 に感謝し,歴史的に築かれ てきた山梨県のすばらしさ を守るとともに一層の発展 を目指していこうという自 覚を高めるように促したい と考えた。 ・ 山 梨 県 の す ば ら し さ を 守 り,一層発展させていくた めには,県民皆がそうしよ うという自覚を高めること が必要と考えた。 ・今の山梨県は良いものだ, 歴史的に築かれてきた良さ を守り,さらにもっと良く していくべきだと考えてい る。そういう今の山梨県の 「誕生日」として県民の日 を祝おうと考えている。 ・ 山梨県は 1986 年よりも前から 100 年以 上もありつづけているのに,どうしてこ の時に県民の日をつくろうと思ったので しょうか。1986 年に山梨県で何があっ たのでしょうか。 ⑤ ・スライド(かいじ国体につ いての新聞記事)で山梨県 での国体の実施について読 み取り,答える。 ・1986 年には,山梨県初の国 体が何年にもわたる準備を 経て開かれ,山梨県全体が 大いに盛り上がった。
・ 国体とは何ですか。国際的な大会である 何と似ていますか。 ・ 国体の年に,どうして県民の日をつくろ うと思ったのでしょうか。 ・ 山梨県民は県民の日という新しい記念日 をつくろうと聞いたとき,どう思ったで しょうか。 ・かいじ国体があった 1986 年に,県民の 日という新しい記念日をつくることを山 梨県民はどうして受け入れたのでしょう か。 ④ ・ 国体についての教師の説明 を聞き,オリンピックを連 想し,国体での盛り上がり をイメージする。 ・スライド/プリント(県民 の日についての山梨県知事 の発言)を参考にして,県 民の日の提案とかいじ国体 の 盛 り 上 が り を 関 連 づ け, 発表する。 ・県民の日の提案に対する県 民の反応をとらえ,発表す る。 ・県民の賛成をかいじ国体の 盛り上がりと関連づけ,発 表する。 ・国体とは,都道府県対抗の 国民体育大会である。 ・国際的なオリンピックで国 全体が盛り上がるように, 山梨県で開催された国体で 県全体が盛り上がった。 ・国体の準備や開催を通して 高まった県民のふるさとを 愛する心を一時的なものに せず,山梨県の発展のため にずっとつなげていけたら と思った(国体で県民とし ての意識が盛り上がったこ とを,県民の気持ちを一つ にして山梨の発展を目指し ていくチャンスと考えた)。 ・県民の多数が賛成意見だっ ため,県議会で決定された の だ ろ う。多 く の県 民 は, 国体の盛り上がりの中,県 民の日をつくって皆がふる さと山梨を大切にしようと 思 う こ と は 良 い こ と だ と 思ったのだろう。 ・国体の盛り上がりを通して 山梨県民が一つになり,県 民としての意識が高まって いた。 終結 (課題解決) 〇 山梨県で県民の日がつくられたのはどう してか,「考え」と「背景」という言葉 を使って表してみよう。 ・昔にあった出来事を記念する日は,県民 の日以外にどんな日がありますか。 ・県民の日や防災の日などの記念日とは, どういう日なのでしょうか。 ・本時の課題について,各自, 回答をノートに記述する。 ・記念日を列挙する。 ・記念日の基本的性格につい てまとめ,発表する。 (例) ・ 県民の日は,初めての国体 での盛り上がりによる県民 意識の高まりという背景の もと,山梨県のすばらしさ を守り,さらに発展させて いくには,山梨県の誕生と いう昔の出来事を今の山梨 県民皆で祝うことにより, 山梨県の誕生と発展に感謝 し,山梨県のすばらしさを 守り一層の発展を目指して いこうという自覚を高める ことが必要という考えに基 づき,制定された。 ・学校の創立記念日,防災の 日,終戦記念日,憲法記念 日など。 ・これからの社会のために, 今の私たちが覚えておくべ き昔の出来事を記念し想い うかべるために設けられて いる日。
3時間目 導入 (課題設定) ・なぜ山梨県には県民の日があるのでしょ うか。 ・もしも,今,県民の日がないとしたら, 山梨県民にとって困ることがあるので しょうか。 ◎山梨県の県民の日は,今のままで よいだろうか。 ・前時までの学習を振り返る。 ・県民の日がなくなった状況 を仮想し,困ることがある かどうか考え,発表する。 ・県民の日の在り方について, 考えてみる。 (略) ・ 学 校 の 休 み が 減 る の で 困 る。 ・山梨県のことを知る機会が 減る。 ・山梨県の発展にとって,マ イナスになる。 ・ な く て も 大 し た 影 響 は な い。 など 展開 (課題追究) ・ 県民の日に学校を休みにしたり,博物館 などの公立施設を無料で開放したり,イ ベントを行ったりしていますが,それら は県民の日の目的に合っているでしょう か。他の都道県民の日の様子も参考にし て,隣同士で考えてみましょう。 ③ ・ 県民の日の目的に照らして, 現在の運用について隣同士 で話し合い,それを踏まえ てクラス全体で意見交換す る。 (例) ・県民の日や山梨県のことに つ い て 知 る 機 会 に な る か ら,目的に合っているので はないか。 ・イベントをしても山梨県の 歴史や県民の日について知 ることにはあまりつながっ ていないので,目的に合っ ていないのではないか。 ・新聞やテレビなどで宣伝を し,県民の日であると皆が 意識できるようにしたらど うか。 ・県民の日に,学校で山梨県 のことを学ぶようにしたら どうか。 ・子どもや若者も参加して, 山梨県のこれからについて の話し合いを行うようにし てはどうか。 など ・(今は山梨県という名前は県民から親し まれていますが,この名前がつけられた 頃は県民からあまり好意的に受けとめら れなかったといわれています。)11 月 20 日は私たちの山梨県の出発の日として本 当にふさわしいでしょうか。山梨県で初 めての県会が開かれた日(1877 年5月 7日),山梨県で初代の民選知事がうま れた日(1947 年4月 12 日)など,他に も候補がありうるかもしれませんが,ど う考えますか。 ・他の日にちと比べ,山梨県 の出発の日としての 11 月 20 日の適切さについてグルー プで話し合い,それを踏ま えてクラス全体で意見交換 する。 (例) ・11 月 20 日は形だけでなく名 前も今と同じになった日だ から,山梨県の出発の日と いえると思う。 ・11 月 20 日は廃藩置県による 中央集権化において明治政 府によって名前を与えられ た日なので,山梨県の出発 の日とは必ずしもいえない と思う。 ・ 山 梨 県 が 自 分 た ち の 県 に なったと県民が感じられる 出来事があった日のほうが 山梨県の出発の日といえる と思う。 など
・ 県民の日の目的に賛成しますか。県民の 日は何のための日であるとよいでしょう か。 ・県民の日の目的の妥当さに ついて考え,発表する。 (例) ・山梨県のすばらしさを守る ため,また一層発展させて いくため,山梨県の誕生・ 発展に感謝し,県民として の自覚を高める日であると よいのではないか。 ・県民が主人公の地域づくり を目指し,県民一人ひとり が山梨をつくっていく主人 公であるという気持ちを確 認する日であるとよいので はないか(山梨県の日では なく県民の日という名前に ふさわしいものにすべきで はないか)。 など 終結 (課題解決) ◎山梨県の県民の日は,今のままでよい か,自分の考えをまとめてみましょう。 ・ 県民の日をはじめとする記念日の望まし い在り方について,これからの学習でも 考えていきましょう。 ・本時の課題について,各自, 回答をノートに記述する。 (略) 〔資料〕 ①[プリント]都道府県民の日の一覧表(各都道府県のホームページ等をもとに授業者作成) ②[スライド]山梨県の県民の日の由来(山梨県のホームページhttps://www.pref.yamanashi.jp/kenmin-skt/10_035.htmlをもとに授業者 作成) ③[ プ リ ン ト ] 山 梨 県 に お け る 県 民 の 日 の 行 事 等( 山 梨 県 の ホ ー ム ペ ー ジhttps://www.pref.yamanashi.jp/kenmin-skt/kenminnohi/ kenmin2016.htmlなどをもとに授業者作成) ④[スライド/プリント]県民の日についての山梨県知事の発言(「国体の成功引き継ぐ 知事望月幸明」,『山梨日日新聞』1986 年 11 月5日朝刊) ⑤[スライド]かいじ国体についての新聞記事(「かいじ国体 さあ本番」『山梨日日新聞』1986 年1月1日朝刊,「氷上の祭典幕開 く」『山梨日日新聞』1986 年1月 29 日朝刊,「ふれあいの祭典幕開く」『山梨日日新聞』1986 年 10 月 13 日朝刊,「秋空に輝く天皇・ 皇后杯」『山梨日日新聞』1986 年 10 月 18 日朝刊,「『王者の行進』誇らかに」『山梨日日新聞』1986 年 10 月 18 日朝刊)
Ⅳ 小学校社会科における可能性-結びにかえて-
以上の考察に基づけば,小学校社会科の第6学年における歴史教育の通常の単元において,社会 の中の歴史に関するメタ・ヒストリー学習を判断学習まですすめることは,けっして不可能ではな いのではなかろうか。尤も,それは条件つきであり,少なくとも次の5点の条件をみたすことが必 要であろう。 1つ目の条件は,現在の社会において過去の事柄について扱っている事物やその問題という対象 の選定において,児童との関連性に留意することである。県民の日の授業の場合も,児童の多くは 県民の日という言葉は知らなかったものの,授業の中での児童の発言によれば,11 月 20 日に学校 が休みになることは経験上知っていた。その休校日 11 月 20 日とはどういう日か,どうして学校が 休みなのかという疑問をもち,自分に関連のあるものとして受けとめることで,児童は興味関心を もって学習に取り組んだのであろう。また,最終局面では,自分の県の県民の日をよりよいものに したいという思いをもったからこそ,その在り方について意欲的に考えたのであろう。メタ・ヒス トリー学習でもとりわけ,判断学習まですすめるためには,対象の選定において,目標との適合性, 社会的な重要性だけでなく,学習者である児童との関連性も,重要な条件となる11) 。2つ目の条件は,分析学習を前提とし,それを踏まえて判断学習へと学習の過程をすすめること である。判断学習が這い回ったり空回ったりしないために,その前提として分析学習は欠かせない。 3時間目において,ほぼ運用面に限定されていたものの,県民の日の在り方について考えることが できたのも,2時間目において十分とはいえないながらも,県民の日の分析による存在理由の認識 に取り組んだからである。勿論,県民の日の授業のように,分析のための学習課題から判断のため の学習課題へと2段階で展開させるだけでなく,他の構成も考えられる。判断のための学習課題を 追究する一環として,分析のための学習課題を組み込むことも可能である。とはいえ,その場合も, 分析を踏まえて吟味検討させ,そうして判断づくりに取り組ませることが肝要である。判断学習の 前提として,分析学習を保障することが求められよう。 3つ目の条件は,トゥールミンの議論の論理を踏まえて児童に取り組ませることである。分析と 吟味検討に基づく批判的な判断づくりは,トゥールミンの議論の論理に基づくことで確かなものと なる。県民の日の授業の実践では,トゥールミンの議論の論理に従って児童に取り組ませることが 十分ではなかった。そのために県民の日の論理構造を分析することも吟味検討することも中途半端 なものになってしまい,2つの目標の達成を十分には保障することができなかった。そこで改善プ ランでは,トゥールミンの議論の論理に基づく分析と吟味検討とによる判断づくりを学習の方法と して重視することにより,各時間の改善を図った。小学生でも可能なように簡略化することは必要 かもしれないが,トゥールミンの議論の論理を取り入れるべきであろう。 4つ目の条件は,メタ・ヒストリー学習をヒストリー学習と組み合わせることである。過去の取 り扱い方や過去との関わり方について取り組むメタ・ヒストリー学習は,初めて系統的な歴史教育 にのぞむ小学校第6学年の場合,その過去についてとらえることと組み合わせてセットで行われな ければ,成立は難しい。県民の日の授業も,明治前期に関するヒストリー学習を踏まえることで可 能となったものである。勿論,ヒストリー学習とメタ・ヒストリー学習の組み合わせ方は一様では なく,さまざまなものが検討されるべきであろうが,両学習の結合化が重要であろう。 5つ目の条件は,判断学習まですすめるにしても,過大な目標を掲げず,身のまわりの歴史の基 本的な見方考え方を中心目標として目指すことである。社会の中の歴史は過去をうつしたものでは なく,現在の社会においてつくられたものであり,社会の未来にかかわるもの,社会にとってより よくつくりかえられるべきもの,そのために自分たちが吟味判断する必要があるものという見方考 え方が社会の中の歴史とかかわっていく基盤となる。小学校第6学年の通常単元では先ずは,分析 と判断の学習を通して,こういった見方考え方を身につけるとともに使い,社会に溢れる身のまわ りのさまざまな歴史を見つめなおしたり問いなおしたりしてみるように促すことが重要であろう。 2017 年に告示された小学校学習指導要領では,社会科の第6学年における内容構成が改められ, 政治学習が先行し歴史学習が後続するように変更された。先行する政治学習において社会の在り方 を探求する社会形成の学習が展開されるならば,後続する歴史学習において児童が社会の中の歴史 の在り方を通して社会の在り方を探求する学習の可能性はさらに拡がるであろう。 註 1)服部一秀「社会のなかの歴史に関するメタヒストリー学習の意義」,社会系教科教育学会『社会 系教科教育学研究』第 28 号,2016 年,p.19. 2)語り(ナラティブ)としての歴史の把握については,野家啓一『歴史を哲学する』,岩波書店, 2007 年,参照。 3)服部一秀・小笠原咲「小学校歴史授業における語りとしての歴史マンガの取り扱い」,山梨大学 教育学部附属教育実践総合センター研究紀要『教育実践学研究』No.23,2018年。
服部一秀・浅尾和世・神戸博貴「身のまわりの歴史に関するメタヒストリー学習としての終結 単元-主題としての紙幣」,山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要『教育実践学研 究』No.23,2018年。 4)山梨県ホームページ「県民の日とは?」(https://www.pref.yamanashi.jp/kenmin-skt/10_035.html)。 なお,明治時代初期における山梨県の成立については,有泉貞夫編著『山梨県の百年』,山川出 版社,2003 年,pp.10-21,有泉貞夫「山梨県の成立」,『山梨県史 通史編5 近現代1』,山梨県, 2005 年,pp.3-25,佐藤正幸「なぜ山梨県と呼ばれるか」,『甲斐路』第53号,1985年,他,参照。 5)県民の日条例(第1編総規/第9章その他/第2節その他沿革情報)(http://www.pref.yamanashi.jp/ somu/shigaku/reiki/reiki_honbun/a500RG00000137.html) 6)尤も,授業での児童とのやりとりにより,かなりの児童が県民の日という言葉は知らなかった としても 11 月 20 日が休校日となることは知っていたことがわかった。 7)記念日の設定における日にちの重要性については,小関隆「記念日と記念行事をめぐる抗争」, 同編著『記念日の創造』,人文書院,2007 年から学んだ。 なお,抑も公的な記念日が社会にとって必要であるのか否かも論点となりうるが,この県民の 日の授業ではそこまで掘り下げての吟味検討は目指していない。この論点は中学校や高等学校の 歴史教育におけるメタ・ヒストリー学習では必要となるとしても,小学校の歴史教育におけるメ タ・ヒストリー学習では先ずは基本的な見方考え方を育むことが重要であろう。 8)トゥールミンの議論の論理については,足立幸男『議論の論理』,木鐸社,1984 年,福沢一吉 『議論のレッスン』,日本放送出版協会,2002 年,参照。 なお,トゥールミンの議論の論理に基づくメタ・ヒストリー学習については,服部一秀「メタ ヒストリー学習に基づく社会形成教育としての歴史授業」,社会系教科教育学会編『社会系教科教 育学研究のブレイクスルー』,風間書房,2019 年,参照。 9)吟味検討の着眼点については,尾原康光「社会科授業における価値判断指導について」,全国社 会科教育学会『社会科研究』第 39 号,1991 年,参照。 10)「20 日は第1回「県民の日」ふるさとへの理解深めよう」(『山梨日日新聞』1986 年 11 月5日朝刊) によれば,県民の日の日にちの選定には実際,いくつかの案があった。 11)身のまわりの歴史について取り上げることは,児童がのぞみやすくするだけでなく,身のまわ りにある他のさまざまな歴史に気づくこと,見つめなおすことや問いなおすことを促すことにも つながるのではなかろうか。 付記 本稿は,JSPS科研費26381189,及び,JSPS科研費19K02836による研究成果の一部である。