コンクリート現場での圧縮強度試験結果の
評価について
濱本二郎
(昭和55年9月1日受理)
Evaluation of Compression Test Results of the
Concrete at a Job Site
JiroHAMAMOTO Abstract This paper describes the author’s table‘‘guide for concrete strength specifications on the compression test results prepared in accordance with lthe specifications of JSCE and JIS A 5308, and the domain for such(0−C)curves. By this table the author makes a statistical investigation on how to estimate the stre− ngth of the ready mixed concrete. 1. まえがき コンクリートおよび鉄筋コンクリート構造物を経済 的に造るためには,均等質のコンクリートを造らなけ ればならないことはいうまでもない。均等質のコンク リートを造るために,土木学会コンクリート標準示方 書(昭和49年制定) (以下示方書と略記)には,コン クリートの品質管理についての規定が設けられてい る。現在では全国各地にレデーミクストコンクリート 工場が設立され,現場ではレデーミクストコンクリー ト(以下生コンと略記)によって多数の工事が進めら れるようになってきた。これらの生コンの多くはJIS 製品として販売されている。この現状にたいし示方書 では生コンを用いる場合には原則としてJISA5308 によるよう指示している。こうなってくると,従来の ように施工主が建設対象に応じてコンクリートの品質 を示方書にしたがい決定する場合,生コンの品質規定 をも考慮する必要があることになってしまった。本論 文は現場で一番問題化するコンクリートの強度に関し て,示方書および日本工業規格JISレデーミクスト コンクリートA5308−1978i)(以下JIS生コンと略 記)について問題となる点について,現場の現状にあ わせて検討し,生コンの発注に当たりどのような対策 を立てるのが適当であるかを強度の点について述べた ものである。 2. 慣例の統計方法 工事現場で生コンを使用する場合に生じる示方書と JIS生コンの相違は購入者と生産者との相違をあらわ している。このことは特性値の求め方および特性値の 持つ条件,すなわち製品責品(Product liability)の 相違として現われている。これらはそれぞれの立場に 応じて行われてきたので以下にその慣行されているこ とについて述べる。 イ)統計関数 示方書にしたがい造られたコンクリートおよびJIS 生コンにしたがい造られた生コンで,またJISにし たがって得られたコンクリート供試体の強度値は正規 度数分布曲線のある型式に属しているとしている。そ こで適当に統計的手法を用いれぽ供試体の試験結果
から構造物に用いたコンクリートの強度を評価でき る2)。示方書およびJIS生コンでは,現場打ちコン クリートおよび生コンの品質規格を表現するために3 節で述べるようにコンクリートの無限母集団を定義し ている。 ロ)強度特性の計量値 施工現場ではコンクリート1バッチが使用される単 位ではなく,たとえぽ一般のコンクリート桁では,施 工方法により同一断面内に何バッチかのコンクリート が打込まれることが多く,その他断面の小さい柱など では1バッチのコンクリートが断面の全体を占める場 合もある。そこで1バヅチを単位試料(供試体2本ま たは3本の平均値)とし,1バッチあるいはそれ以上 のバッチよりロットを形成する。単位試料は1日に打 設するコンクリートごとになるべく1個以上を,また コンクリートの20m3∼100m3ごとに1個以上とるこ とにしている。示方書では保証単位は上述の事情を考 え,構造物・施工方法および円柱供試体の体積(イン クリメント)に応じて個々に定めるよう指導してい る。生コンの場合強度だけについていえば,普通同一 呼び強度を同じロットと考えているが,検査ロットの 大きさは一般に450m3とし,ロットの大きさは購入 者と生産者が協議して定めるとしている。単位試料は 1運搬車(1運搬車から採取した供試体3本の平均) とし,同一種類のコンクリートについて150m3につ いて1個と定めているが,これは工事においてほぼ1 日のコンクリートの打設量である。したがって検査ロ ットの品質は単位試料3個より判定されている。コン クリート混合工場としては,コンクリートの異なる種 類のそれぞれに対し各日または各シフトごとに28日供 試体1本を,もし試験の精度に関する資料を求めたい ならば姉妹供試体を造れぽよいとしている3)。工程を 管理するための一つの管理図としてコンクリート工事 で用いるものを使っている。この管理図は前述のよう に個々の計測値は用いずに単位資料@)を用いて管 理図を作製している。すなわちR・i == 1 ii −Zi.,1とし た(x,Rs)管理図である。一般に供試体1本の強度 試験値(X)には意味がないので(元,Rs)管理図を (X,.Rs)管理図としている。 ハ)品質保証 示方書では特性値に関する規格値を定め,危険率を 明記し強度検査の条件を示しているが,JIS生コンで は強度の限界値を示しているので,JIS生コンで示さ れる配合強度をもつコンクリートの強度特性は示方書 に示される配合強度をもつコンクリートの強度特性を 満足し得るかどうかが具体的な条件について問題とな る。この点につき生コンを購入する前および検査の際 に問題となる事項とあわせ(ロ)で述べた管理図に対 する問題点を以下の節で扱う。 3.強度について指定 配合強度について示方書では無筋および鉄筋コンク リート標準示方書(以下RC示方書と略記)94条で 次のように述べている。『94条(2)コンクリートの配合 強度arは,現場におけるコンクリートの圧縮強度の 試験値が次の条件を満足するように,これを定める。 (a)試験値は,設計基準強度a,iCの80%をPa以上 の確率で下がってはならない。(b)試験値は,設計i基 準強度a,kをPb以上の確率で下がってはならない。 ここに,PαおよびP,は一般の場合それぞれ1/20お よび1/4とし,特別の場合は,構造物の重要度に応じ てこれより小さい値をとる。』95条(1)(b)では『配 合に用いる水セメント比W/Cは,基準とした材令 におけるセメント水比((]/W)と圧縮強度(のとの 関係式において,配合強度arに相当するq/Wの値 の逆数とする。このarは設計基準強度σ,kに適当な 係数をかけて割増したものとする。この係数は現場に おいて予想されるコンクリートの圧縮強度の変動係数 に応じて,試験値が94条(2)の条件を満足するよう に責任技術者が定めるものとし,一般に図一13(本文 では図一1に示す曲線①に相当する。以下曲線①と 略記)の曲線より求めた値によるものとする。』図一1 では縦軸を割増し係数のqとし,横軸を予想される 圧縮強度の変動係数のV(%)としてqを次の式に より計算し,二つのqのうち大きい方の値をVに対 して図示している。94条(2)(a)より,正規分布の場
D
苦 艇 1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 1.0 0 5 10 15 20 25 予想される圧縮強度の変動係数(%) ①95条(1) ②4.図一1割増し係数
② ①は呼び強度を設計基準強度とみなすのが便利である。 …×
i鷺蹴議
SL× 図一1②曲線に よる割増し係数 図一2設計基準強度および呼び強度と配合強度 合,確率1/20に相当する偏差は1.645であるので炉念≧、一蹟5v
100 (b)から,確率1/4に相当する偏差は0.674であるの で ψ・一ケ≧、一・hattrv
100 この計算結果は結局変動係数が既知であること,また は試験値の数が十分多いことを肯定している。レデー ミクストコンクリートを発注する場合は,112条に 『94条(2)を満足するような呼び強度を指定しなけれ ぽならない。』としている。 一方,JIS生コンでは配合強度について『4.(1)(a) 1回の試験結果は,購入者が指定した呼び強度の値の 85%以上でなければならない。(b)3回の試験結果の 平均値は,購入者が指定した呼び強度の値以上でなけ れぽならない。』とし配合強度をm,呼び強度をSL, 変動係数(%)をV==(標準偏差)×100/(配合強度) として,4.(1)(a)について(1)式,4.(1)(b)にっい て(2)式をそれぞれm≧
セ豊 (・)
100m≧ 等 (2)
1−100〆一丁 とし(1)および(2)式のVの係数3は4.(1)の規定を 満たさないと判定される確率がそれぞれ1/741として いる。 計算結果として(1)および(2)で得られた配合強度 のうちいずれか大きい値をとればよい。(1)(2)より 示方書に準じて割増し係数を求め図一1に書き加えた ものが曲線②である。図一1に示す割増し係数を使い それぞれに配合強度を求めればよいが,この手順は 図一2のようである。図一1および図一2によれぽ両者の 割増し係数の差が10%以下となる変動係数にたいして 4.受 入 れ RC示方書では190条でコンクリートの品質検査に ついてふれている。そのなかで強度についての項目を あげると,『(1)試験値に基づいてコンクリートの品質 を検査する場合,責任技術者の指示により,得られた 全部の試験値および一部の連続する試験値を1組とし て検査しなけれぽならない。(2)圧縮強度をもととし て水セメント比を定めた場合,コンクリー一トの品質を 検査するには,圧縮強度の試験値が一般の場合0.8σ,k をPα以上の確率で下がらないこと,およびa,iCを Pb以上の確率で下がらないことを適当な危険率で推 定できれぽコンクリートは,所要の品質を有している と考えてよい。この検査は一般の場合,材令28日の圧 縮強度に基づいて行うものとする。試験のための試料 を採取する時期,回数および試験値を得るための供試 体の個数は責任技術者の指示による。』とし計量検査 法について解説している。すなわち圧縮強度の試験値の平均anから不偏分散の平方根Snを計算し,
合格判定係数ん,k・(Pα =1/20, Pb=1/4,生産者危 険率α=1/10) an2≧O . so,iC十kaSn ≧a,iC十kbSn の関係が成立すれぽよい。標準偏差があらかじめわか っている場合,あるいは過去の品質検査の結果から標 準偏差が推定できるときは不偏分散の平方根の代わり に標準偏差を用いてよいとしている。また生コンを用 いる場合の受入れ検査について113条(5)で『受入れ 検査はJISA5308によるものとする。』とある。 JISA 5308では9検査の項目の中で『9.2コンクリートの強 度は,当事者間の協議により検査ロットの大きさを定 め,8.2の試験を行い,4.(1)の規定に適合すれば合 格とする。』と述べている。8.2の試験はRC示方書 の場合と同じ試験でJISA1132, JISA1108および JISA1106である。 表一1は,設計基準強度と呼び強度に対し3節で述 べたようにして配合強度が得られた場合および4節で すでに述べたような品質検査が行われた場合,平均を 求あるための連続試験数の平均値が,通常は不合格に ならない強度水準,すなわち最小平均確率強度(Pro・ bable minimum average strength)と平均強度が σ,k, SL値を下がる確率(%)とをあわせ表記3)した ものである。表中では,JIS生コンの強度規格はJIS の他の製品規格に見られるように限界値で示され,し表一1 コンク リー ト強度規格
条 件 変嚢1
籔
(n) \ 1 3 6 。試験値がJISA5308,4.(1)(a)を満足するよう にしたo (イ) 。試験値が示方書94条(2)(a)を満足するように したo 最小平均確率強度 5 10 15 20 0.85ぷL O.82acle (一 ) 0.91ぷL O.84σ,iC(一)
O.85SL
O.84a,iC(一)
1.00SL
O.89aek(一)
0.85SL O.86a,iC (一 ) 1.14ぷL O.940ck (一 )0.85SL
O.89a,iC(一)
1.39ぷL 1.020ciC (一 ) n回の試験値の 平均値がSL, a,kを下がる確 率(%) ・11・1・51・・ 50 100 (一) 49 100 (一) 4 67 (一) 78 (一) 1 35 (一) 25 (一) 21 (一) 8 。試験値がJISA5308,4.(1)(b)を満足 するようにした (ロ) 。試験値が示方書94条(2)(b)を満足す るようにした。0.94SL
O.85a,iC (0.84a,iC) 1.07ぷL O.91a,iC (0.89σ,k) 1.26SL O.98 a」ciC (0.96aciC)1.61SL
1.07a,iC (1.04ack) 最小平均確率強度 n回の試 験値の平 均値が SL, a,iC 5 10 15・・「護㌶
49 100 (100) 86 (86) 17 (17)0.93SL
O.970ciC (一 ) (一)( 1.00SL 1.00σ旗 一 )0.85SL
O.94a,iC (一 )1.00SL
O.99σciC (一 ) 2 (2) 1.03 SL 1.06 SL 1.01 aciC11.02 σ沈 (1.01a¢k)(1.02σcん)0.74SL
O.90σ〆(一)
1.00SL
O.99aciC (一 ) 1.10ぷL 1.03aciC (1.02 ack)0.61SL
O.860ciC (一 )1.00SL
O.99aciC (一 ) 1.16ぷL 1.04ack (1.03 a,k) ( 4 25 ) ( 0.13 12 )5
( 5 ) たがって購入者側は規格値を下まわる危険率が0であ るが,3節の解説で述べたように3×(標準偏差)限 界をとった場合の危険率1/741(0.13%)があるもの として扱った。またRC示方書の解説にしたがった 場合は,表示の値は示された数の試験の平均値がその とき,わずか10%だけが不合格となると期待される強 度水準で示した。また同RC示方書解説にしたがえ ぽ標準偏差が既知の場合になるが参考のため括弧の中 に未知の場合も示してある。 表一1は各個試験または,異なる数の試験の平均値 が,普通は不合格とならない強度水準を示している。 したがって表示の限界に達しないものは配合強度より 低い強度および悪い管理であることを示している。試 験目的から考えれぽ最小平均確率強度h9 a,ic・SLに等 しくなるような試験連続数を選ぶべきである。表に示 すとおりこの数は条件(イ)(ロ)および変動係数によ ってそれぞれ異なってくる。実際,4.(1)(a)につい て考えれぽ,試験数が1で変動係数が5%の場合(イ) の条件に合格した生コンでは,該当呼び強度を下がる 確率は50%である。製造工程で設定された条件の品質 が造られない場合,抜取検査だけにたよることは大き な欠点を含んでいる。横軸にロット不良率Pをとり 縦軸にロットの合格する割合L(P)をとって各不良率 に応ずるL(P)を打点して求めたOC曲線4)は該当 抜取検査方式の性能を示している。図一3のAは4.(1) (a)の条件でn=1の場合で,Bは4.(1)(b)の条 § ま 驚 尭 \一 9.9\@ A
D ⑥こ醐
禔@ ’ ◎ 一⑧ →るOC曲線は 1 ⑥㊦ H 設計の安全に1 £ ・関わる。 { o ‖ ’ N \、 J 一 、、、 一 { 蕊 、 、〉「 x この範囲に入る nC曲線は不経 マである。 熟 ① … … P 「 へ v べ、 ノz 、 0.1 0.5 1メ〕 5 10 20 30 40 50 真の不良率(%) 図一3 0c曲線の評価 件でn=3の場合で,C,D,Eは標準偏差既知として の190条Paの条件でn =1,3,6の場合およびF,G,H はP・の条件でn=1,3,6の場合である。C,D,E,F,G, Hにより不良率が大きくなった場合,nが大きいほ ど検出力が増しているのは当然である。一般に採用さ れているJISZ9003計量1回抜取検査では,生産者危 険率α=0.05,消費者危険率β=0.10としたときの nおよびkを表より求めている。標準偏差を既知として190条のPaを同表のPo=5%およびP,=15%
とすれば同表よりn ・= 25を得る。この場合のOC曲 線は1である。同様にしてP,を同表のPo=15%お