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第2章 必修教科等の研究 08 技術・家庭科(技術分野) 技術リテラシーの獲得を目指した技術教育カリキュラムの開発Ⅲ : 素材と環境の関係を正しく見つめる

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8 技術・家庭科(技術分野)

技術リテラシーの獲得を目指した技術教育カリキュラムの開発Ⅲ

-素材と環境の関係を正しく見つめる-

Curriculum development for knowledge oriented technology education -For correct understanding about relation between material and environment-

河野 卓也 1. 主題によせて 現代社会での我々の豊かな生活は多くの科学技術によ って支えられている。日常の生活で触れる多くの科学技術 について,それらの仕組みや製法を知らなくとも,それら の装置を使って便利な生活を営むことができる。 生徒は,大人に比べ最新の科学技術に触れる機会が多く, 実際にそれらの使い方を大人より早くマスターし,自分た ちの生活に取り入れようとする。それらの機器の使い方や 有効な利用法,興味を引く機能について強い興味を持つ生 徒は多く,日常の話題にもそれらの機器についての内容が 多く聞かれる。しかし,それらの機器の基本的な仕組みや 動作の原理について興味をもつ生徒は少数であり,多くの 生徒は技術的な興味を持っていない。 最新の科学技術は大変に高度であり,生徒が理解できる ものではない。しかし,科学技術を駆使した多くの機器が ブラックボックスとして扱われることによって,それらの 科学技術の普遍的な基礎知識や,科学技術が社会に与える 影響などまで覆い隠してしまっているように感じること が多い。これからの科学技術社会を支える存在として,科 学技術の基礎を知り,社会の中でそれらを正しく評価する 能力が,科学技術に対する興味の有無にかかわらず,全て の生徒に等しく求められている。このような技術的なリテ ラシーを育成することが技術教育の本質的な目標である と考える。 現代社会で使われる高度な科学技術を駆使した工業生 産品を中学生が手づくりでつくることは不可能である。そ れらの製品の一部であっても,授業の中で製作することは 難しく,また意味を持たない。しかし,それらの機器の動 作を知り,自分たちの生活との関わりを知ることは技術的 なリテラシーを高めるために重要である。 従来,技術分野のカリキュラムは,生徒の手作業による 物づくりを中心として考えられることが多かった。設計・ 製作・評価という物づくりの流れを追い,それぞれの行程 で必要となる時間を元にカリキュラムがつくられている ことがほとんどであった。これらの手法によってつくられ たカリキュラムでは,製作に必要となる技能を学ぶことは 本論の趣旨 本研究は,現代社会で生活する全ての人が身につけるべき技術リテラシーを義務教育段階の全ての生徒 に獲得させることを目指し,指導すべき内容を中心に組み立てた”Knowledge Oriented Curriculum”の開 発と実践と通して,新しい技術教育カリキュラムを確立することを目的としている。昨年度は特にエネル ギーと環境の問題を正しくとらえさせるための単元の開発を重点的に行った。エネルギー環境教育指定校 となったことを契機とし,理科とのティームティーチングによる科学技術教育に取り組んだ。本年度はさ らに,素材と環境の問題を正しくとらえさせるための単元開発を中心にカリキュラムの開発に取り組ん だ。本論ではこれらの実践事例を中心に,カリキュラム開発の概要について報告する。 キーワード Knowledge Oriented,技術リテラシー,環境,素材,科学技術

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できても,現代科学技術の基礎を俯瞰的に学ぶことはでき ないであろう。 学習指導要領の改訂により,技術分野に割り当てられた 授業時間は激減した。特に三年生での授業時数は大変少な く,二週間に一時間の学習時間が確保されるだけである。 このような学習時間の減少の中で,技術分野が本来担うべ き責任を果たすために,効果的なカリキュラムの改善が必 要である。複雑な手工過程をともなう大きな作品をつくる ためには多くの時間を必要とする。従来,技術分野で主流 となっていたプロジェクトを基本とした学習では,製作を 通して製作に必要な技能を習得するだけでなく,材料に関 する知識や社会の中での技術の役割を指導することによ って,科学技術の基礎を指導してきた。科学技術が高度に なったことと共に,大幅な授業時数の減少によって,本来 「もののつくりかたを学ぶ」ものを「ものをつくらせる」 学習だけにとどまらせていることが多いと感じている。 「ものをつくらせる」学習では,簡易的な製作キットを用 い,画一的な作品をつくらせるだけに終始する学習に教師 側の抵抗感がなくなっている傾向がある。 十分な時間を割いて作品製作に取り組むことができれ ば,本来の目的を達成することができるようなカリキュラ ムを組むことは不可能ではない。しかし,現在の技術分野 がおかれている状況からも,カリキュラムの根本となる考 え方の思い切った改変が必要であると考えている。 研究の視点として,カリキュラムを作品製作の工程を中 心とした(“Project Oriented”)計画から,指導すべき内 容を中心とした(“Knowledge Oriented”)計画へと再構築 していくことを考えた。半年に近い長い時間をかけての作 品製作ではなく,数時間単位のトピックを取り上げ,現代 技術について考える学習を中心にしていきたい。これらの 学習は単に講義形式をとるのではなく実験・実技を伴い, 作品製作やレポート製作,意見の発表などを盛り込み,現 代技術の基礎についての総合的な学習ができるようにカ リキュラムを構築したい。これらの変化は「実技教科」か ら「実技を伴う教科」への移行に取り組むことにもなる。 指導したい内容として,従来から指導してきた手工技能 に加え,現代科学技術の基礎や密接な関係をもつ技術と自 然環境保全の問題などを大きく取り上げ,生徒が技術的な リテラシーを獲得することができるカリキュラムを目指 して開発に取り組んだ。

2. Knowledge Oriented Curriculum

作品ではなく,内容に依存するカリキュラム作成のため に,技術分野で扱うべき科学技術に関する内容を整理する 必要がある。本年度のカリキュラムでは,次のような視点 で内容を整理して実践した。 「技術とものづくり」では素材・エネルギーといった重 要な学習の要素と,自然環境の保全に関する問題を多く取 り上げた。これらの内容は教科書内に数多くの記述がある ものである。総合的な学習の時間などで取り上げることの 多い学習内容であるが,技術的な視点で環境保全に係わる 問題を取り上げ,それらの解決についても技術的な知識を いかしていこうとする姿勢が必要であり,そういった学習 を仕組むことができるのは技術分野以外にはない。

Project Oriented Curriculum

設計と製図 製作 評価 大きな製作物 設計方法 製図法 素材の特性 つくり方 工具の使い方 工具 作品の評価 素材を使う上での環境問題 木製本棚の つくり方 本棚の設計方法 使用する木材の特性 本棚のつくり方 のこぎり,やすり, げんのうの使い方 木材と環境の問題 木製本棚つくるための技能, 木製本棚をつくるための知識

図 1 Project Oriented Curriculum 大きな製作物をつくる過程 か ら カ リ キ ュ ラ ム を 制 定 す る。製作するものに関する素 材や設計・工具・技能を指導 する。作品をつくる流れの中 で指導することが出来るが, 指導できる内容は作品に関連 した限定的なものになること が多い。

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Knowledge Oriented Curriculum

基礎的な素材 2×4材を使った製作 工具の秘密 環境に 関する問題 素材の特性と性質 さまざまな素材の 特性比較 グループでの製作 電動工具を含めた 基礎的技能 行程の概観 工具の種類 工具の 使い方・選び方 工具と人間 素材と資源の関わり エネルギーと 素材、経済の関わり 技術的なリテラシー 現代技術の体系的・基礎的知識

図 2 Knowledge Oriented Curriculum

校内での環境教育の中心的な存在として,正しい知識に 裏付けられた能動的な行動をとる生徒を育てることを目 標としてこれらの内容をカリキュラムの中心とした。木材 加工にかかわる学習内容を例として,従来の“Project Oriented Curriculum”と今回新たに開発した“Knowledge Oriented Curriculum”での,学習項目と学習内容の概念 を図 1,図 2 に示す。 「情報とコンピュータ」の内容は,本校の情報教育の中 心となるものである。本校では情報生活科が存在し,技術 分野「情報とコンピュータ」と情報生活科で役割を分担し 校内の情報教育のコアを形成している。 生徒の家庭からのインターネット接続率が 8 割を超え, 多くの生徒が特別な制限なく家庭でディジタル機器を使 っている現状において,情報教育において学習させる必要 がある内容も大きく変化していると考えるべきである。 技術分野での情報教育として必要なのは,情報機器やソ フトウェアの使い方を学ぶ学習ではなく,情報そのものの 特性や情報を扱う機器や手段の仕組みなどの基本的事項 をシステマティックに学ぶことであると考えている。 新しいカリキュラムでは情報についての技術的な側面 を強調し,情報技術の基礎を体系的に学ぶことができるよ うにした。 また「技術とものづくり」の指導項目として,栽培に関 する内容がある。しかし,時間・場所などのさまざまな制 限から,実際に栽培を取り上げている学校はほとんどない のが実情である。現代の技術の一つとして世界一といわれ る日本の栽培技術に関する学習は大変重要である。この栽 培が取り上げられないひとつの要因は気候に左右され,長 い時間がかけなければならない栽培学習特有の問題があ ると考えられる。小単元として栽培を取り上げれば,実際 に作物をつくる授業は難しくても,栽培に関する基礎的な 知識を身に付けさせることが可能になる。できれば土に触 れて学習をさせたい内容ではあるが,栽培をまったく取り 上げないよりは効果があると考えられる。 これらの内容を効率的,かつ網羅的に学習させるため, 長い時間をかける必要がある作品作りを中心としたカリ キュラムではなく,科学技術の観点から指導したい内容を 整理し,内容を中心としたカリキュラムを作成した。 3.本年度の新単元開発 本年度は,昨年度まで取り組んできたカリキュラムにつ いて,現代の科学技術社会を支える三大要素であると考え られる「物質・エネルギー・情報」を具体的に取り上げ, それぞれの領域ごとに新しい単元の開発と実践を行った。 物質に関する単元では,広く素材全般を取り上げ,網羅 的な内容を確立すると共に,各素材の特性を理解させ,生 活の中でのよりよい使い分けについて考えさせた。 技術分野の学習内容の中で,素材やエネルギーと自然環 境の保全の関わりに関する学習は重要な位置を占めてい る。中学校での学習の中で,環境教育を担う教科としての 技術分野の責任は大変に重い。 生徒は日常の生活の中で数々の素材に触れているが,そ れらの素材の素生や,自然環境とのかかわりについて意識 せずに生活を送っていることが多いと考えられる。リサイ 製作を伴う単元では,効率 的なグループワークで製作を 行い,短時間で製作の基本的 な行程を体験させる。他の単 元では,製作するものに関係 なく,技術的な知識の基礎を 体 験 的 に 体 系 づ け て 指 導 す る。指導する内容は網羅的な ものになる。

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クルや資源の有効利用については知識を持っていても,そ れぞれの素材の特性を理解して正しく生活に取り入れる と共に,それらの有効利用を図ろうとする態度を育成する 必要がある。技術分野の学習では,ものをつくるための素 材を正しく扱うために,技術的観点から素材と環境のかか わりを正しく指導していく必要があると考えている。 本年度は特に,身近に使われることの多い木材について 集中的に取り上げ,木材資源と自然環境の保全について考 えさせることに時間を割いた。木材資源と自然環境の保全 の問題は密接な関係を持ち,国内の林業の現況と合わせて 考えていくべき非常に重要な問題である。木材を単にもの づくりのための素材としてだけ取り上げるのではなく,自 然環境の一部として,また市場経済の中での輸入品目とし て取り上げることが,日常生活の中での木材を正しくとら えることにつながると考えている。 エネルギーに関する単元では,エネルギー環境教育実践 校の指定を受けたことにも鑑み,理科と技術のティームテ ィーチングによる科学技術に関する授業を構築した。従来 から実践している技術的観点から現代のエネルギーをと らえた授業に加え,原理・法則について実験を踏まえて指 導する理科の方法や知見を加えることにより,現代社会の 実態にあう,より充実した学習内容の構築を目指した。 情報に関する単元では,本校の研究課題である情報学を 基礎とした情報教育の展開に合わせ,従来から継続してい るコンピュータプログラミングを中心とした情報技術の 授業に加え,情報学を基礎とした技術的視点から情報の本 質をとらえるための授業の構築を行った。 4. 素材と環境 本年度,素材と環境のかかわりについて,いくつかの単 元開発と実践を行った。数年来実践を続けている単元と合 わせ,系統的な学習が展開できる準備が整った段階である と考えている。 カリキュラム全体の考え方から,それぞれの単元はでき るだけ少ない時間数で実践できるように考慮し,他の学習 との関連性を持たせながら学習できるようにした。 木材・金属・プラスチックについての単元を実践したが, 特に木材を資源としてとらえ,産業としての林業や世界の 木材資源の問題に目を向けさせるところから身近な材料 の扱いについて考える学習を中心とした。いくつかの単元 の概略を紹介する。 ・世界の森林資源について考えよう 日本は豊かな森林に恵まれた国でありながら,世界有数 の木材輸入国でもある。日本の林業の現状として,林業に 携わる人の高齢化や,林業が産業として成り立ちにくくな ってきた経済状況について理解させるとともに,日本の地 形が木材の大規模な生産には向かないことにも目を向け させ,日本の林業が抱えるさまざまな問題を認識させる必 要がある。日本の林業が抱える問題は海外にも及び,日本 の大規模な木材資源の輸入によって海外で大規模な森林 破壊が起こっている。特に熱帯雨林が大規模に伐採される ことによって,地球規模での自然環境の破壊につながって いる。特定の樹種が絶滅の危機に瀕したり,国産材が非常 に高価で取引されたりする現状は,人間の行動が導いた結 果であることに気づかせたい。 木材は生物的な多様性をもつ材料である。木材の多様性 は人間の購買行動や嗜好の変化によりさらに拡大され,商 業的な価値の変動や特定樹種の極端な蓄積減少を引き起 こしている。木材資源の減少を引き起こす木材の交易に関 する問題は,世界的な経済問題もはらむ大変深く広い問題 でもある。授業ではこうした木材資源を取り巻く諸問題に 気付かせ,日常生活の中で木材資源を正しく見つめ利用し ていく態度を持たせたいと考えている。これらのことを総 合的に考慮し,本題材を設定した。 授業では 60 種程度の木材標本を 5 組準備し、各生徒が それぞれの標本を手にとってみることができるようにし た。標本は国産材・輸入材、針葉樹・広葉樹の別なくでき るだけ多様な樹種となるように揃えた。絶滅が危惧される 貴重な樹種もある。生徒にこれらの標本からいくつかの 「お気に入り」を選ばせると、見事に輸入材ばかりを選択 すると共に、絶滅危惧種などの貴重な標本を選択する傾向 がある。各自が選んだあとで、自分が選んだ木材の特性な どを知る段階で、生徒は自分たちの選択の傾向に著しい偏 りがあることに気づく。このような人間の動向が、木材の 価値を決めると共に、特定の樹種の枯渇に拍車をかけてい ることに気付かせることができた。国内の林業が厳しい状 況に置かれている原因の一つに国外からの安い木材が大 量に流通していること、さらには非計画的な伐採が関連し ていることの理解につなげることができた学習であった。 ・国産材と輸入材の価格を比べよう 第 1 学年の木材加工による作品製作の授業では、2×4

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材を使った作品づくりに取り組んできた。 SPF 2×4 材は主にカナダからの輸入材である。品質が 高く、均質な材料を安価に入手できる理由として、カナダ が国をあげて、伐採量を年間成長量以下に調整し、確実に 植林を行っていることがあげられる。日本とは違う大規模 な木材生産により、林業が重要な国内産業として機能して いる。また、特徴が似た樹種を区別せずに流通させたり、 規格材の形をとることで流通にかかる経費を低く抑えた りする工夫が多くみられる。 この状況に比べ、国産の広葉樹材は大変な高値で取引さ れている。大きな社を総欅で普請しただけで、国内の欅の 相場が急騰した例もあるようである。国産広葉樹の蓄積が へり、貴重になりつつある状況を如実に表している。しか し、国産針葉樹材は低価格な輸入材に押され、大変低価格 で取引されている。針葉樹を大量に植林したことで針葉樹 の蓄積は少なくないが、安価でしか取引ができず産業とし て成立させることが難しくなったため、多くの人工林に人 の手を入れられず、放置されている現状がある。これらの 状況は日本の林業が苦しい状態に置かれていることの一 端を示すものであり、木材の価格について考えることから それらのことを気付かせたいと考えた。 2×4 材は 6F のものが 300 円程度で入手できる。それに 対し、国産広葉樹の薄板は入手に 2000 円程度かかった。 この二つの木材の価格を予想させると、ほとんどの生徒が ボリュームの大きい 2×4 材が高価であると予想した。答 えを知った生徒は一様に驚き、理由を探そうとするが木材 資源を取り巻く様々な状況を知らずにその理由を理解す ることはできない。様々な視点から価格の理由を知ると、 生徒は木材資源に対して、深い思いを持つようになったよ うである。 この題材を通して製作に使用した木材を発端とし、世界 の規模での林業や森林資源の問題を扱うことによって,こ ういった問題が単独で存在せず,産業や経済と密接に結び ついた複雑な問題であることを認識させるとともに,素材 を選択し使用する上でも幅広い視野を持って考えること ができるような感覚を身につけさせることができたと考 えている。 ・無垢材と木質材料を比べよう 生徒は日常の生活の中で数々の素材に触れているが,そ れらの素材の素生や,自然環境とのかかわりについて意識 せずに生活を送っていることが多いと思われる。リサイク ルや資源の有効利用については知識を持っていても,それ ぞれの素材の特性を理解して正しく生活に取り入れると 共に,それらの有効利用を図ろうとする態度を育成する必 要がある。本題材では木材資源の問題を取り上げた。木材 は,正しく使えば樹木として存在する寿命以上に木材とし ての寿命を持たせることができ,年月はかかるものの再生 産が可能な材料である。昨今,森林資源の枯渇が問題とな っているが,林業に係る経済的な問題もあり,日本の森林 資源の有効活用が図られていない現状がある。生徒の中に は科学技術の進展によって自然環境の破壊が引き起こさ れているという認識が強く,科学技術の進展は自然環境を 破壊する方向に働くといった考えをもつ生徒が多い。本単 元では,木材加工・利用技術の進展によって,森林資源に かかる負荷を少なくするとともに,人間にとって有用な特 性をもった材料を作り出す技術について理解させ,科学技 術に対する認識の一端を変えさせたいと考えている。合わ せて,無垢材そのものが環境保全に対する性能をもち,木 材が日本の文化を支える存在であることについても学習 させ,木無垢材そのものがすぐれた材料であることについ ても理解させたい。 授業では、まず教室内に残る 2×4 材の廃材に目を向け させた。2×4 材による作品製作の後の廃材はすべてスト ックされ、次年度の作品製作で足りない部分を補うために 使ったり、後輩ののこぎり引き練習用として使われたりす る。また、製作した作品もある程度の期間の後に分解され、 次年度の材料として利用される。これらの利用に長さが足 りなくなった廃材は、アルミニウムの鋳造による作品製作 の燃料として利用される。本校ではこのような 2×4 材の リユースシステムを確立しており、毎年新規に購入する材 料が最小限になるよう工夫をしている。この教室内でのリ ユースシステムについて理解させたあと、実際の社会での 木材の再利用に目を向けさせた。木材は適切なメンテナン スや、表面を再度削るなどの加工により、大変長い寿命を 持つことができる。無垢材の持つこのような利点について 理解させたあと、無垢材の製材時や加工時に出る木片や木 くずが木質材料として再利用されていることを学習させ た。合板・集成材・OSB・MDF といった木質材料を破壊し た見本を見ることで、技術によって木材を有効に利用して いこうとしていることに気付かせることができた。

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・木の漢字 「木へん」の漢字の中には,「つくり」の部分で樹種の 特徴や,人とのかかわりを示しているものも多い。国産材 について,漢字と樹種・生活との関連を,実物標本を通し て学習させた。例えば「樫」の木は国産材の中で最も固い 部類に属する樹種であり,工具の柄など強度が必要とされ るところに多用される。実際に標本に触れると,漢字が徐 実に樹種の特徴を物語っていることに気づかせることが できる。また,本来樹種をしめす漢字の無い輸入材につい て,実物に触れたり,樹種の特徴を学んだりした後,特徴 を示す漢字を創作させた。さらに世界の森林資源を取り巻 く状況の概要を学習してから,もう一度漢字を創作させる と,生徒はそれぞれの木材が置かれた状況などを考えた漢 字を創作した。木へんの漢字と実物をつなぐことによって, 木材資源についてより充実した学習を展開させることが できたと考えている。 ・地域の森林資源に目を向けよう 平成 17 年度より,滋賀県に森林税が導入され,滋賀の 森林資源のあり方が注目されている。滋賀県は自然環境の 保全に関して熱心に取り組む県であるが,学習で取り上げ る環境についての話題の中心は琵琶湖を中心とした水資 源や生態系についての問題であることが多い。森林は水質 浄化にも大きな意義を持っており,水環境を考える上では ずすことのできないものであり,学習の中で森林資源の問 題を取り上げる意味は大きい。本年度は,滋賀県の地域特 有の木材資源にふれることや,森林税の内容を理解させる ことを通して,身近な森林資源の価値や,そこから算出さ れる木材資源と私たちの生活のかかわりについて考えさ せる単元を開発している。 ・金属の特性を知ろう 生徒は金属の特性についてほとんど知識を持っていな い。実際に生徒の反応を見ると,金属=鉄といった感覚を 持っていることを予想できる。本単元では,身近な金属材 料の種類とその特性を理解させることによって,材料を適 切に使い分けていく必要性を理解させることを目標とし た。授業では,身近な金属片を準備し,ハンマーでたたく ことによって金属ごとの変形や熱の発生に違いがあるこ とを実感させた。金属種ごとの重さの違いや強度の違いを 実感させ,ものづくりの中での適材適所の使い分けの必要 性を理解させることができた。 ・プラスチックと環境のかかわりを考えよう 生徒のプラスチックの対するイメージを聞くと,多くの 生徒から安物・環境に悪いものという返答が返ってきた。 プラスチックであればすべてのものが燃焼によって有 害な物質を発生するように思う生徒も多く,強度や質感な どのすべてが他の材料より劣っているように考えている 生徒も多い。このような生徒たちにプラスチックの多様性 や利便性を理解させた上で,主に枯渇資源を原料としたプ ラスチックとの生活の中での付き合い方を考えさせるた めに本題材を設定した。 5. 成果と課題 カリキュラム自体の考え方は十分に定着し,スムーズに 単元を実践することができるようになってきた。 本稿の執筆中に示された新学習指導要領案の中でも,開 発してきたカリキュラムの基本的な考え方は十分に生か して授業を行うことができると考える。 今後は新学習指導要領の趣旨を生かし,より生徒の技術 リテラシーを高めるカリキュラム・単元・教材の開発に取 り組んでいきたい。また,本稿では多くを割くことができ なかったが,科学技術科におけるエネルギー環境教育の実 践とも連携をとり,より充実した学習をさせることができ るよう努力をしていきたい。 参考文献

Takuya Kawano,Yasumasa Itakura,INDUSTRIAL ARTS EDUCATION FOCUSED ON RECENT TECHNOLOGICAL TOPICS: A CASE OF THE SECONDARY SCHOOL ATTACHED TO SHIGA UNIVERSITY,2006-1,International Conference of Technology Education,HONGKONG

図 1 Project Oriented Curriculum   大きな製作物をつくる過程か ら カ リ キ ュ ラ ム を 制 定 する。製作するものに関する素材や設計・工具・技能を指導する。作品をつくる流れの中で指導することが出来るが,指導できる内容は作品に関連した限定的なものになることが多い。
図 2  Knowledge Oriented Curriculum

参照

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