Z-routing:イレギュラーネットワークにおける適応型ルーティングに関する研究
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(2) Vol. 43. No. 3. Z-routing:イレギュラーネットワークにおける適応型ルーティング. 755. ド ロックの除去を困難なものとしている. 多数の PC や WS によって構成される LAN( Local. Area Network ) ,WAN( Wide AreaNetwork )がイ. 2. レギュラーネットワークの例としてあげられる.また,. 1. 1)∼4) Network of workstations( NOWs ) など の高速. なネットワークで接続された PC や WS で並列処理を. 3. 行う場合,そのネットワークには高い柔軟性や接続の スケーラビリティの要求からイレギュラーネットワー 5. クが用いられる. 4. 2.1 ネット ワークモデル イレギュラーネットワークのルーティングはプロセッ シングエレ メントとスイッチの接続,スイッチど うし の接続など ,様々な接続ケースを考えなければならな い.しかし,接続ケースに応じてルーティングアルゴ. 図 1 PC クラスタにおける結合網の概略図 Fig. 1 Switch-based interconnection network.. リズムを考えるのは得策ではない.そこで,それらの 差を隠蔽するネットワークモデルへの抽象化の例とし. 2. て NOWs を取り上げ簡単に説明する.. 1. NOWs は一般的に switch-based network であるが, 各スイッチはプロセッシングエレ メントと個々に直結 しているため,パケットを目的地のプロセッサのある. 3. スイッチにルーティングできれば,短時間でデッドロッ クせずに各プロセッサに到着させることができる.よっ. 5. て,ルーティングアルゴリズムはスイッチ間のルーティ. 4. ングに焦点を当て,検討することができる. スイッチ間の内部接続ネットワーク I は有向グラフ. G で以下のように表せる. I = G(N, C).. Fig. 2. 図 2 有向グラフ G Corresponding graph G.. まず初めに,ネットワークを以下の規則に基づきツ. ここで,N はスイッチの集合,C はスイッチ間の双. リー( スパニングツリー)に見立て,その後ツリーの. 方向リンクを表している.. 階層構造を利用したルーティングを行う.. これにより,図 1 のようなイレギュラーネットワー クは図 2 のように表すことができる. 図 2 のようにネットワークを一般化し,ルーティン グアルゴ リズムを検討していくことにより,ルーティ ングアルゴ リズムはスイッチ間接続にとどまらず,直 接網にも適用することができる.. 2.2 既存のルーティングアルゴリズム イレギュラーネットワークにおけるルーティングア. 1. ネットワークの中から任意にツリーのルートノー ド を選ぶ. 2. ルートノードと隣接するノードをツリーに付け加 える. 3. ツリーの各ノードから隣接する,まだツリーに加 えられていないノードをツリーに付け加えていく. 4. 全ノードがツリーに入るまで 3. の作業を繰り返す. 上記のルールにより,ツリー上のルートノード を除. ルゴ リズムはここ数年来,様々な提案がなされており,. くすべてのノード は親ノード を唯一持つようになる.. up/down routing 1)などはすでに実装されている3) .. このツリーが作成される際,親ノードと子ノード 以外. 本章ではイレギュラーネットワークにおける代表的. へ接続されているリンクは無視される.たとえば,図 3. な 4 つのルーティングアルゴリズムについて説明する.. における破線のリンクは実際には存在するが,ツリー. 2.2.1 Primitive up/down routing. 上では無視される.. Primitive up/down routing はイレギュラーネット ワークにおける様々なルーティングアルゴ リズムの基. Primitive up/down routing のスパニングツリーに は一般的に幅優先のスパニングツリー( Breadth-First. 礎となるもので,単純なルーティングアルゴ リズムと. Spanning Tree, BFST )が用いられている.よって, ツリーの生成の時間計算量は O(n + m)( n はグラフ. して知られている..
(3) 756. 情報処理学会論文誌. 図3 Fig. 3. イレギュラーネットワークのツリー表現 Tree expression of irregular network.. の頂点数,m は辺の本数)となり,低く抑えられて いる.. Mar. 2002. 図 4 Prefix routing に用いられる directed-graph Fig. 4 Directed-graph for prefix routing.. ラベルである( 図 4 ) .. Prefix routing の スパニング ツリーは Primitive. を使用してそのノード の方向へパケットを転送する.. up/down routing と同様に BFST が用いられている ため,ツリーの生成の時間計算量は O(n + m) であ る.また,ノード とチャネルへのラベル付けはツリー. 目的地ノードが現ノードの子,孫ノードではない場合, up channel を使用して親ノード へパケットを転送. とになるため,時間計算量は O(n + m) である.よっ. する.. て全体の時間計算量も O(n + m) となり,低く抑えら. ルーティングアルゴリズムは単純である.目的地ノー ドが現ノードの子,孫ノードの場合,down channel. つまり,ルーティングは非最短型の固定ルーティン グであり,一部の実在するリンクを利用することがで きない.. の頂点を 1 回ずつ割り振り,辺を 2 回ずつ割り振るこ. れている. ルーティングは,目的地ノード のラベルの “prefix” を持つチャネルがあればそのチャネルを選択し,なけ. たとえば,図 3 においてノード b からノード f にパ. れば,ラベル ‘e’ のチャネル( up channel )を選択す. ケットを転送する場合,パケットは b→a→c→f とい. る.これにより,各パケットは Primitive up/down. うルートに沿って転送されることになる. デッドロックを防ぐために,パケットは up channel によってルートノード 方向に必要数移動した後,down. routing の経路をたかだか 1 回ショートカットするこ とが可能である.これは,パケットがショートカット を行うことが可能となる条件が,. channel によってルートノードから遠ざかる方向へ必. 1. 現在地ノードが目的地ノード と子孫関係にない,. 要数移動する.その結果,up channel と down chan-. 2. ショートカット先のノードが目的地ノード または 目的地ノード の先祖ノード となる,. nel の間に環状構造がなくなるため,デッド ロックフ リーが保証される.. 2.2.2 Prefix routing Wu ら 6)によって提案された Prefix routing は Prim-. の 2 つであるため,1 度ショートカットを行うと 1. の 条件が 2 度と成立しなくなるからである. たとえば ,図 4 に おいて ノード b(11) から ノ. itive up/down routing で利用することができなかっ. ード f(121) にパケットを転送する場合,Primitive. たリンクの一部を利用できるようにしたものである.. up/down routing では b(11)→a(1)→c(12)→f(121). Prefix routing ではツリーを作成する際,各ノード. と 3 ホップ 必要だが,Prefix routing では b(11)→. とチャネルにラベルを付け,すべてのチャネルを有向 グラフに組み込み,ルーティングに利用する.ノード. c(12)→f(121) と 2 ホップで到着することができる. Prefix routing はラベルを調べるだけでルーティン. とチャネルへのラベル付けの方法は以下のとおりで. グをできるので,他の up/down based routing に比. ある.. べルーティングテーブルが小さいという特徴を持つ.. ルートノード のラベルを Ln (r) = 1 とし ,ノード. また,Prefix routing は cross channel を使用した場. Ln (v) の k 番目の子ノード u のラベルを Ln (u) = Ln (v) k とする.なお, は連結命令である.ツリー. 送するため,up channel と down channel の間に循. に含まれるチャネルに対しては,ノード v がノード u. 環構造をとることがなく,したがってデッド ロックフ. に比べてルートノードに近い場合,Lc (v, u) = Ln (u),. リーが保証されている.. Lc (u, v) = e とし ,それ以外のチャネルに対しては, Lc (v, u) = Ln (u),Lc (u, v) = Ln (v) とする.e は空. 合でも以後 down channel のみを用いてパケットを転. 2.2.3 Minimal routing Primitive up/down routing と Prefix routing は.
(4) Vol. 43. No. 3. Z-routing:イレギュラーネットワークにおける適応型ルーティング. 757. down channel を使用した後,up channel の使用を禁 止することにより cyclic dependency を排除し,デッ ド ロックフリーを実現した.しかし,Silla らは既存の ルーティングアルゴ リズムをエスケープパスに使い, 各リンクに fully adaptive なバーチャルチャネルを追 加する Minimal routing を提案し 3),5) cyclic depen-. dency を除去することなしに,デッド ロックフリーを 実現した.以下にルーティングアルゴ リズムを簡単に 述べる. まず初めに,各リンク間に 2 本のバーチャルチャネ ル( original channel,new channel )を用意する.そ. Fig. 5. 図 5 L-R tree の例( ノード 数 9 ) An example of L-R tree (9 nodes).. して,パケットは原則として new channel を用いて 転送され,最短経路を選択する.しかし,選択可能な. において,ノード e からノード b へのリンクは. new channel がすべて使用されている場合,パケット. left path である. • right path:L-R tree において,現在のノード. は original channel に切り替えられて転送され,Prim-. itive up/down routing,Prefix routing などの既存の. よりも右側に存在するノード へのリンクのこと.. ルーティングアルゴ リズムを用いて経路を選択する.. 図 5 において,ノード e からノード c へのリン. なお,1 度 original channel を使用したパケットは 2. クは right path である.. 度と new channel を使用することはできない.. original channel は,既存のルーティングアルゴ リ ズムを用いているためデッド ロックフリーが保証され ており,ネットワーク全体にわたるエスケープパスに なるため,デッド ロックフリーが保証される.. Minimal routing はパケットが new channel を使用 した場合,最短経路をとるため効率が良く,既存の非 最短型のルーティングアルゴ リズムの性能を大きく向 上させることができる.. 以下に,L-R tree の構成法を述べる. 1. ネットワークの中から任意に L-R tree のルート ノード を選ぶ.. 2. ルートノードに隣接したノードの 1 つを left node, 他を right node として L-R tree に追加する.た とえば図 5 ではルート ノード は a,left node は. b,right node は c である. 3. L-R tree の left node,right node について以下 の作業を行う.. 2.2.4 L-turn routing Left-first turn routing( L-turn routing )は慶応義. (a) right node において,まだ L-R tree に組み 込まれていない隣接ノード を right node と. 塾大学によって提案されたルーティングアルゴ リズム. して L-R tree に追加する. (b) left node において,まだ L-R tree に組み込 まれていない隣接ノード のうち,1 つを left. である7) .L-turn routing はイレギュラーネットワー クを L-R tree☆ というスパニングツリーに見立て,ルー ティングを行う.. L-turn routing を説明するに際し,ここで以下のよ. node,他を right node として L-R tree に追 加する.たとえば図 5 ではノード b の隣接. • left node:L-R tree において,各階層の一番左 側のノード.図 5 においては a,b,d がこれに. ノードのうち,left node は d,right node は e,f である. 4. 3. の手順を全ノードが L-R tree に組み込まれる. あたる. • right node:L-R tree において,left node 以外. まで繰り返す. 5. L-R tree に漏れているイレギュラーネットワーク. うに語を定義する.. のノードのこと.図 5 においては c,e,f,g,h,. i がこれにあたる. • left path:L-R tree において,現在のノード よ. ☆. のリンクを追加する. 図 5 における破線のリンクは,L-R tree の構成法 の手順 5. で追加したリンクである.. りも左側に存在するノードへのリンクのこと.図 5. L-R tree の生成において,left node,right node の 割振りは頂点をちょうど 1 度ずつ定義していくため,. 実際はツリー構造ではなくグラフ構造であるためこの名称は適 切ではないが,本論文では参考文献において定義されている単 語をそのまま使用する.. 時間計算量は O(n + m) である.しかし,left path,. right path の割振りにはアルゴ リズムが存在せず,最.
(5) 758. Mar. 2002. 情報処理学会論文誌. 適なパフォーマンスを得るため手作業で行われている. な状態を求めているため,L-R tree の生成にかかる全. ため,現時点での全体の時間計算量は O(n + m) よ. 体の時間計算量は O(n + m) より大きくなる.. り大きくなっている.. L-turn routing のルーティングは, “right path を使用した後,left path を使用しては. 3. Z-routing 既存の up/down based routing algorithm におい. ” ならない.. てあげられるルートノード 付近へのトラフィックの偏. という条件を守ればいかなる経路も選択可能である.. り,および最短経路のとりにくさなどによって生じる. よって,出発地ノードと目的地ノード の間には複数の. パフォーマンスの低下は,イレギュラーネットワークに. 経路が存在することになるため,L-turn routing は. おいてデッド ロックフリーを保証するためにルーティ. 適応型ルーティングである.また,L-turn routing は. ングアルゴ リズムの自由度を低下させたことが原因で. Turn モデル 8)を用いることにより,上記の条件から デッド ロックフリーが保証されている.. ある.. 図 5 においてノード d からノード i にパケットを 転送する場合,Primitive up/down routing や Prefix routing では d→b→a→c→g→i と 5 ホップ必要だが,. そこで我々は性能の向上を図るために,より多くの 最短路と高い自由度を提供する新しいルーティングア ルゴ リズムである Z-routing を提案する. 以降,まず イレギュラーネットワークを red/blue. L-turn routing では d→h→g→i と 3 ホップでパケッ. graph に見立てる手順を説明し,その後 Z-routing の. トを転送することができる.さらに L-turn routing で. ルーティングアルゴ リズムを提案する.. は d→b→a→c→g→i の経路も選択可能である. ルゴ リズムであるが,自由度が高いため全体のチャネ. 3.1 red/blue graph の作成法 Primitive up/down routing や Prefix routing で使 用されているツリーでは,ルートノードに向かうチャ. ル利用率が向上し,トラフィックが分散される.また,. ネルを up channel,ルート ノード から遠ざかるチャ. パケットの平均ホップ数を抑えることができる.. ネルを down channel と分類した.そして,Primitive. 2.2.5 既存のルーティングアルゴリズムの問題点 Primitive up/down routing や Prefix routing では スパニングツリーの生成の時間計算量は O(n + m) と. up/down routing と Prefix routing は up/down とい う階層構造を下にデッド ロックフリーを実現した. しかし,我々はより自由度の高いルーティングを実. 低く抑えられてはいるが,up channel と down chan-. 現するために up/down の概念を捨て,red/blue とい. L-turn routing は非最短型の適応型ルーティングア. nel の間に厳しい制限を設けデッド ロックフリーを実. う概念を導入した red/blue graph を提案する.以. 現したためすべてのリンクを効果的に使うことが難し. 下に,red/blue graph の構成方法を述べる.. く,ルートノード にトラフィックが偏る,チャネルが. 1. ネットワークの中から任意にノードを選択し,その. 空いていても最短経路をとりにくい,などの問題点が. ノードをルートノードとする深さ優先のスパニン. 存在する.. グツリー( Depth-First Spanning Tree,DFST ). Minimal routing は new channel より original channel の方が使用される割合が大きい傾向にあり, 結局 original channel で用いられるルーティングアル. の構築を行う.なお,同時に関節点9),10)を求めて おく. 2. 1. で構築した DFST に含まれる辺(木の辺,tree. ゴ リズムの性能がパフォーマンスを左右することに. edge )を blue edge と定義する.また,ネット. なる.また,スパニングツリーの生成の時間計算量も. ワークにおけるそれ以外の辺(逆辺,back edge ). original channel で用いられるルーティングアルゴ リ. を red edge と定義して DFST に組み込む.この. ズムに依存する.. 時点でネットワークに含まれるすべての辺が blue. L-turn routing は L-R tree の作成方法が曖昧であ る.たとえば,図 5 においてノード h はノード g に対 して位置的に左にも右にもなりうるため,パス h→g は left path にも right path にもなりうる.その結果, 場合によっては使えない経路が存在することになり,. edge か red edge のど ちらかに割り当てられたこ とになる.. 3. 幅優先探索の応用で辺に番号付けをする.以下, blue edge と red edge の番号付けを,各々 nb ,nr という表現法で定義する.. そのことがパフォーマンスに影響を与える.また,left. (i) ルートノードに接続している blue edge の辺. node,right node の割振りの時間計算量は O(n + m) だが,left path,right path の割振りは手作業で最適. 番号を 1( nb = 1 )とする.ここで,nb と. nr との関係を,nr = nb + 1 と定義する..
(6) Vol. 43. No. 3. Z-routing:イレギュラーネットワークにおける適応型ルーティング. 759. リーは保証される.しかし,red edge を取り除くこと a. blue edge. 1 b 3 d. 2 4. 3. c. では辺に番号付けをし red edge も使用することによっ て自由度の高いルーティングを実現している.. 3. 4. 3.2 Z-routing algorithm e. 5 5. Fig. 6. red edge. は自由度の低下を招いてしまうため,red/blue graph. f 8 7 h. g 8 9. i. 図 6 red/blue graph( 9 ノード )の例 An example of red/blue graph (9 nodes).. 本節では前節で述べた red/blue graph を利用する “Z-routing” と呼ばれる新しいルーティングアルゴ リ ズムの提案を行う. 前章で述べたように,up/down based routing algorithm はツリーの階層間の移動に up/down などの 厳しい制約があり,それが自由度を低下させる原因と. この定義により,ルートノードに接続されて. なっている.そこで Z-routing はグラフの階層間の移. いる red edge の辺番号は 2 となる.これら. 動の制限を緩くすることで性能向上を図る.. の辺番号の組みを,クラス E(nb , nr )(ここ では E(1, 2) となる)と定義する.さらに,. Z-routing は以下のように定義される. ( 1 ) 2 本のバーチャルチャネル Ci( increment ) ,Cd. E(nb , nr ) に接続しているノード のクラスを N (nb , nr ) と定義する.たとえば,N (1, 2) に. (2). ( decrement )を使用する. 出発地ノード S から目的地ノード D へのパス. 含まれるノード は図 6 よりノード b とノー. を検出する際,前節で定義した辺番号( nb , nr ). ド c となる. (ii) N (nb , nr ) に属するノードにつながっている. を使用する.S → D 間の辺番号を並べたとき, 以下の番号の並びのみを許すものとする.. blue edge と red edge を各々 nr + 1,nr + 2 と番号付けすることにより,残りの blue edge. (a). と red edge に帰納的に番号付けしていく.た. (b). 降順:図 6 において h→f→b→a という. c につながっているまだ番号付けされていな. (c). 経路の場合,辺番号の並びは 7,4,1. 1 回のみの切替え:バーチャルチャネル. い blue edge と red edge は,各々3,4 と番. Cd から Ci への 1 回のみの切替えを許す. ( 2 ) により S → D 間の最短パスが検出された. 経路の場合,辺番号の並びは 1,4,7.. とえば ,図 6 において,ノード b とノード. 号付けされ,E(3, 4) と定義される.. (iii) (ii) で E(pb , pr ),E(qb , qr ) (p = q) のよう にすでに定義された複数の辺のクラスが,あ. 昇順:図 6 において a→b→f→h という. (3). 後,以下のようにしてパケットを転送する.も し辺番号の並びが昇順だった場合はバーチャル. るノードに接続されている場合,そのノード. チャネル Ci を使用し ,降順だった場合は Cd. に接続されているまだ番号付けされていない. を使用する.もし “1 回のみの切替え ” が可能. 辺には次のように番号付けする.まず,番号. なら,バーチャルチャネルを Cd から Ci へ切. pr と 番号 qr を比較する.その結果,大き い方の番号のクラスを N として選択する.. り替える. 上記の条件を守れば,Z-routing はいかなる経路も選. たとえば ,図 6 におけるノード f がすでに. 択可能であり,自由度の高い非最短型ルーティングを. E(3, 4) と E(5, 6) に接続されているとき, ノード f→h 間の blue edge の辺番号は 7 と. 作成の時間計算量が O(n + m)( n はグラフの頂点数,. なり,ノード f→i 間の red edge は 8 となる. (iv) (ii),(iii) をすべてのノード がクラスに定義. の応用でできるため時間計算量が O(n + m),よって,. されるまで繰り返す. 図 6 は上記の方法により構成された 9 ノード の red/blue graph の例である. 辺を blue edge と red edge に分類することにより, グラフ内の環状構造をすべて検出することができる.. red edge はグラフ内の環状構造の一辺を担う辺であ り,もし,この red edge を取り除けばデッドロックフ. 実現する.また,red/blue graph の作成は,DFST の. m は辺の本数) ,辺の番号付けは幅優先探索( BFS ) red/blue graph の製作の時間計算量は O(n + m) に 抑えられる.よって,グラフの構築,および再構築に かかる時間を低く抑えることが可能である. 定理 1 Z-routing はデッド ロックフリーである. 証明:red/blue graph は DFST を基に作られてい る.DFST は閉路を含まない木であり,ネットワークを. DFST に含まれる辺( 木の辺,tree edge,red/blue.
(7) 760. Mar. 2002. 情報処理学会論文誌 root node. graph における blue edge )とそれ以外の辺( 逆辺, 9),10) back edge,red/blue graph における red edge ). : articulation point : node. に分けることによりネットワーク内に存在する全閉. : biconnected component. 路を検出することができる.そして,ネットワークの 同じ 深さにおける blue edge と red edge に異なる番. v3. 号付けをし,ネットワークの深さに応じて番号を増加 させることにより,閉路をなす辺に異なる番号付けを. v2. することができる.したがって,辺の番号の並びの昇. v4. 順,および降順に応じてバーチャルチャネルを使い分. v1. けることにより循環構造を断ち切ることができるため,. Z-routing はデッド ロックフリーであることが証明さ れる. Z-routing における全ノード への経路は • 辺に付けられた番号を降順にたど ることにより, どのノードからもルートノードにたどり着くこと. Fig. 7. 図 7 関節点と 2 連結成分 Articulation point and biconnected component.. ないため,図 6 においてノード b からノード i へパケッ トを転送するような場合,Prefix routing や Primitive. up/down routing では b→a→c→g→i と 4 ホップ必. ができる, • ルートノードから辺に付けられた番号を昇順にた. 要だが,Z-routing では b→f→i と 2 ホップのみで到. どることにより,どのノード へもたどり着くこと. Z-routing は自由度が高いため全体のチャネル利用 率が向上し,トラフィックが分散される.また,パケッ トの平均ホップ数を抑えることもできる.. ができる, • バーチャルチャネル Cd から Ci への 1 回のみの 切替えを許すものとする, ことにより,保証される.. Z-routing において全ノード への経路を保証するた めに,以下のようにルーティングテーブルを作成する. 図 7 はネットワークを 2 連結成分9),10) の視点で表し たものである.. • 出発地ノードと目的地ノードが同一の極大な 2 連. 着させることができる.. 4. 評. 価. 今回提案した Z-routing,そして既存の Primitive. up/down routing,Prefix routing,L-turn routing ( Z-routing 以外はそれぞれ Minimal routing を併用) の各ルーティングアルゴ リズムを C++で記述したフ リットレベルシミュレータを用いて評価を行った.. 結成分内に存在する場合は,出発地ノードから目. 今回のシミュレーションにおいて,ネットワークサ. 的地ノード への最短路を直接求める(例:図 7 に. イズ,バーチャルチャネルの本数,そしてパケット長. . おいて v1 から v2 へパケットを転送する場合) • 出発地ノードと目的地ノードが異なる極大な 2 連 結成分に存在し,通過する間接点が 1 つのみの場. はパラメータを変化させることによって選択した.各 ノードはプロセッサ,リクエストキュー,そして双方 向チャネルを提供するルータからなり,近隣ノードに. 合は,出発地ノードから間接点までの最短路と間. 接続した.ルータはチャネルバッファ,クロスバ,リ. 接点から目的地ノード までの最短路を求め,バー. ンクコントローラ,バーチャルチャネルコントローラ,. チャルチャネル Cd から Ci への切替えが 1 回以. そしてコントロールサーキットからなる単純なルータ. 内になるようにそれらを組み合わせる( 例:図 7. モデルを使用した.. において v1 から v3 へパケットを転送する場合) .. • 出発地ノードと目的地ノードが異なる極大な 2 連 結成分に存在し ,通過する間接点が 2 つ以上の 場合は,出発地ノードから間接点までの最短路と 間接点から間接点までの最短路,そして間接点か ら目的地ノード までの最短路を求め,バーチャル チャネル Cd から Ci への切替えが 1 回以内にな. 4.1 シミュレーション条件 今回の評価では,パケットの目的地を決定する際 に,すべての目的地ノード がランダ ムに選択される. uniform トラフィックを採用した. また,以下の 2 つの指標により評価を行った. 4.1.1 ネット ワークレ イテンシ: あるノード p がパケットの最初のフリットを入力. るようにそれらを組み合わせる(例:図 7 におい. バッファに挿入した時刻を t0 ,目的地ノードである q. て v1 から v4 へパケットを転送する場合) .. がパケットの最後のフリットを受け取った時刻を t1. Z-routing は up channel,down channel の概念が. とする.ここで Tlat (p, q) = t1 − t0 をネットワーク.
(8) Vol. 43. No. 3. Z-routing:イレギュラーネットワークにおける適応型ルーティング. 表1 Table 1. シミュレーション条件 Simulation parameters.. a. blue edge. 1. 50,000 clks Irregular or 2D torus 9 or 16 nodes 128 flits(固定) 2 Wormhole uniform. 実行時間 ネットワーク ネットワークサイズ パケット長 バーチャルチャネル数 ルーティング方法 トラフィックパターン. b 3. 2 4. 3. 4. d. e. 図9 Fig. 9. a. d. red edge. c. 3. 5. f 8 7. 5. b. 761. h. g 8 9. i. 9 ノード red/blue graph 9 nodes red/blue graph.. c. e. f. g. h. i. 図 8 9 ノード イレギュラーネットワーク Fig. 8 9 nodes irregular network.. レイテンシと呼び,ネットワークの性能を測る指標と する.. 4.1.2 スループット : ここでは,ネットワークのスループットを各ノード のルータがパケット中のフリットを次のノード のルー タ,もしくは各ノード のプロセッサに転送する確率と. 図 10 Fig. 10. 定義する.すなわち,各ルータが毎クロック,フリッ. 16 ノード red/blue graph 16 nodes red/blue graph.. トを転送するならば,スループットは 1.00 である. シミュレーションに用いた条件を,表 1 に示す.. 1000. シミュレーションで初めの 5,000 クロックはネット. 900. ワークが安定せず,想定した負荷に達していないと考. 800. 1 プロセッシングエレ メントと仮定した.ネットワー クのトポロジについては,イレギュラーネットワーク. 700 Latency[clk]. えられるため無視して評価を行った.1 ノードにつき. 600 500 400. での性能評価としてランダ ムに 9 ノード を接続した. 300. もの( 図 8 )と 4×4 2D torus を用いた.Z-routing. 200. はバーチャルチャネルを 2 本必要とするので,シミュ. 100. レーション条件におけるバーチャルチャネル数を 2 本 ( Z-routing 以外は Minimal routing を併用)として 評価を行った.. up/down 9-node prefix 9-node L-turn 9-node 9-node Z. 0 0. 0.1. 0.2 0.3 Throughput[flit/clk/node]. 0.4. 0.5. 図 11 9 ノード イレギュラーネットワーク Fig. 11 9 nodes irregular network.. 図 9,図 10 は 9 ノード,および 16 ノードにおける. Z-routing の red/blue graph である. 4.2 9 ノード イレギュラーネット ワーク 9 ノード イレギュラーネットワークにおける評価を,. し た既存のルーティングアルゴ リズムに比べ,高い. 図 11 に示す.これらの評価はリンク間の双方向チャ. 性能を示していることが分かる.ルーティングの際,. イテンシを表している. 図 11 より,Z-routing は Minimal routing を併用. ネルが 2 本で,Z-routing 以外の各ルーティングアル. Minimai routing を併用している既存のルーティング. ゴ リズムに Minimal routing を併用したときのもので. アルゴリズムは,Primitive up/down routing,Prefix. ある.なお,グラフの x 軸はスループット,y 軸はレ. routing,L-turn routing を original channel で使用.
(9) 762. Mar. 2002. 情報処理学会論文誌. 1000 up/down 16-node prefix 16-node L-turn 16-node Z 16-node. 900 800. Table 2. Latency[clk]. 700. 表 2 平均ホップ数 Average hops of packets.. up/down + minimal routing prefix + minimal routing L-turn + minimal routing Z-routing. 600 500 400 300 200 100 0 0. 0.1. 0.2 0.3 Throughput[flit/clk/node]. 0.4. 0.5. 図 12 16 ノード 2 次元トーラス Fig. 12 16 nodes 2D torus.. up/down + minimal routing prefix + minimal routing L-turn + minimal routing Z-routing. 9 nodes 1.94 1.85 1.83 1.73 16 nodes 2.28 2.18 2.15 2.14. Z-routing に必要な “red/blue graph” を提案し ,評 価を行った.. し,Minimal routing を new channel で使用する.new. red/blue graph の作成の時間計算量は O(n+m) と. channel を使用することによってパケットは最短経路. なり,既存のルーティングアルゴ リズムの中でスパニ. を選択することになり,自由度が増す.一方,original. ングツリーの生成の時間計算量が最も低い up/down. channel はエスケープパスとなっているため,デッド. based routing と同じ時間計算量でグラフを生成する. ロックフリーを保証する.図 11 における,Primitive. ことが可能となった.. up/down routing,Prefix routing,L-turn routing. Z-routing は辺番号を使用する際,3 つのルールの. の性能の差は,original channel での性能の差によっ. みが存在する単純なデッド ロックフリーなルーティ. て引き起こされたものである.しかし,Z-routing は. ングアルゴ リズムである.シミュレ ーション結果か. チャネルに original,new の違いがなく,2 本を Ci ,. ら ,Z-routing は既存のルーティングアルゴ リズム. Cd という自由度の高いエスケープパスとして使用す るため,最も高い性能を示したと考えられる. 4.3 16 ノード 2 次元ト ーラス. ( Primitive up/down routing,Prefix routing,L-. 4×4 2 次元トーラスでの評価を図 12 に示す.ネット ワークサイズとトポロジを除くシミュレーション条件. 法の提案,Z-routing の出力チャネルの選択法( output. は,9 ノード イレギュラーネットワークと同様である. 図 12 から分かるように ,Z-routing は Minimal. routing を併用した既存のルーティングアルゴ リズム に比べ,高い性能を示した.今回,16 ノード の評価は イレギュラーネットワークではなく,2 次元トーラス というレギュラーネットワークにおいて行った.しか し,図 12 より,Z-routing は高い性能を示し,レギュ ラーネットワークにおいても他のルーティングアルゴ リズムに比べ高い性能を示すことが分かった. 最後に平均ホップ 数の結果を表 2 に示す.表 2 に 示すとおり,Z-routing は既存のルーティングアルゴ リズムと比べ,最も平均ホップ数が少ないという結果 を得た.これは,Z-routing が既存のルーティングア ルゴ リズムに比べて自由度が高く,そのため選択可能 な最短経路数がより多いためであると考えられる.. 5. ま と め “Z-routing” と呼ばれるイレギュラーネットワーク における新し いルーティングアルゴ リズム,および. turn routing )に比べ,高い性能を示すことが分かった. 今後は,より自由度が高まるような辺の番号付けの方 selection function ),Z-routing での最短路をより多 く確保するアルゴ リズムの考案,およびより多いノー ド 数での評価を行う予定である. 謝辞 本研究の一部は,科学研究費補助金奨励研究 ( A )課題番号 13780226 の支援により行った.. 参 考 文 献 1) Schroeder, et al.: Autonet: A high-speed, selfconfiguring local area network using point-topoint links, Technical Report SRC research report 59, DEC (1990). 2) Horst, R.W.: Tnet: A reliable system area network, IEEE Micro (1995). 3) Silla, F. and Duato, J.: Efficient Adaptive Routing in Networks of Workstations with Irregular Topology, Proc. CANPC’97 (1997). 4) 西 宏章,多昌鷹治,工藤知宏,天野英晴:仮 想チャネルキャッシュを持つネットワークルータ の構成と性能,JSPP’99 論文集 (1999). 5) Silla, F. and Duato, J.: Is it worth the flexibility provided by irregular topologies in networks of workstations?, Proc. CANPC’99 (1999)..
(10) Vol. 43. No. 3. Z-routing:イレギュラーネットワークにおける適応型ルーティング. 6) Wu, J. and Sheng, L.: Deadlock-Free Routing in Irregular Networks Using Prefix Routing, DIMACS Technical Report 99-19 (1999). 7) 鯉 渕 道 紘 ,舟 橋 啓 ,上 樂 明 也 ,天 野 英 晴: Irregular Network における Adaptive Routing の提案,SWoPP2000 予稿集,pp.33–40 (2000). 8) Glass, C.J. and Ni, L.M.: Maximally Fully Adaptive Routing in 2D Meshes, ISCA92, pp.278–287 (1992). 9) Even, S.: Graph Algorithms, Computer Science Press (1979). 10) Tarjan, R.E.: Data Structures and Network Algorithms, SIAM (1983).. 763. 井川 郁哉 昭和 52 年生.平成 13 年三重大学 工学部情報工学科卒業.現在,神戸 大学大学院自然科学研究科情報知能 工学専攻修士課程 1 年.並列計算機 における相互結合網,ルーティング アルゴ リズムに関する研究に従事. 舟橋. 啓( 正会員). 昭和 46 年生.平成 7 年慶應義塾 大学理工学部電気工学科卒業.平成. 12 年同大学大学院理工学研究科計 (平成 13 年 3 月 27 日受付) (平成 13 年 12 月 18 日採録). 算機科学専攻後期博士課程修了.工 学博士.現在,三重大学工学部助手. 並列計算機における相互結合網,ルーティングアルゴ リズムに関する研究に従事.IEEE,IEEE-CS 各会員..
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