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(1)

本課題研究の意義とアプローチ方法

-日本におけるFDの批判的検討を踏まえて-

佐 藤 浩 章 愛媛大学教育企画室 大学教育学会課題研究集会 シンポジウムⅡ 2012/11/24

1. 本課題研究の概要

2. FD論に関する日本の先行研究

3. 本課題研究の意義と方法

参考文献 佐藤浩章(2012)「日本におけるFD論の批判的検討」『大学教育学会誌』第34 巻第1号 FDの実践的課題解決のための重層的アプローチ委員会(2012)「課題研究承 認及び研究委員会設置申請書」

発 表 内 容

(1)課題研究の名称:「FDの実践的課題解決のための重層的アプ ローチ」 (2)研究委員会の名称:「FDの実践的課題解決のための重層的ア プローチ委員会」 (3)研究代表者:佐藤浩章(愛媛大学) (4)研究組織 加藤かおり(新潟大学)近田政博(名古屋大学) 沖裕貴(立命館大学)、山田剛史(愛媛大学) 井上史子(帝京大学)、山内尚子(京都産業大学) (5)研究期間:平成24年度~26年度 3

1.本課題研究の概要

(6)課題研究の目的及び研究委員会設置の事由(1/2) • 本課題研究の目的は、日本の高等教育機関の現場で生起し ている様々なFDの課題を、実践的に解決するための重層的な アプローチを提起しようとするものである。具体的には、FDに関 わる研究・開発・実践・普及といった場面で起こる諸課題を三層 のアプローチで、解決しようとするものである。 • 教育現場の諸課題を、FDを通して実践的に解決したいという ニーズは益々高まっているが、これに応答することは、FDという 言葉を日本社会に紹介し、普及につとめてきた我が学会に求め られている喫緊の社会的使命である。本研究を通して、各大学 で実践されているFDが実質化されると同時に、FD担当者の負 荷が軽減され、学生の深い学びが促進されることに貢献したい。 4

1.本課題研究の概要

(2)

(6)課題研究の目的及び研究委員会設置の事由(2/2) • 本研究課題に関しては、先行する委員会として「Faculty  Developmentの研究(1985‐1997)」「FD活動の具体的展開 (1997‐)」「FDのダイナミクス−第一次調査のフォローアップと新 たなモデル−(2006‐2008)」が設置され、これまで多くの研究成 果を生み出してきた。これらの中では、FDの概念が盛んに論じ られてきた。これは高等教育界ならびに社会に対する啓発・普 及という点で多大な貢献があったが、現場の具体的な課題解決 への有用性という点で限界があったことは否めない。本研究は これら先行研究の知見を継承し、現場で応用可能な実践知とし て開花させることを意図している。 5 (1)定義論(FDをどのように定義するか?) ①諸外国からの用語の導入と普及 1980年代:高等教育研究者による北米各国、欧州各国での実践 事例(Faculty Development, Staff Development)の紹介。 (馬越 1981a,同 1981b,喜多村 1982,関 1986,香取ほか 1987, 同 1988,有本 1991) →大学教授職に要求される研究・教育(カリキュラム開発も含 む)・管理能力といった広範な資質の開発(「大学教授団資質開 発」、「教授団開発」、「教授団の能力開発」) (原1986、扇谷1987、絹川1999) (1)定義論 ②「狭義のFD」と「広義のFD」 ・ 関(1987)の分類 広義のFD:「教育の改善・改革・活性化に関連した研究・教育活 動及びそれを支援する諸活動」 狭義のFD:「教員の教育研修」 ・ 有本(2005)の分類 狭義のFD:「主に諸機能の中の教育に焦点を合わせる」 広義のFD:「広く研究,教育,社会的サービス,管理運営の各側 面の機能の開発」

2.FD論に関する日本の先行研究

(1)定義論 ③政策上の定義とそれへの反論 ・ 「学生の学習意欲の向上を図り,学習内容を着実に消化させる ためには,大学の側において,教員の教授内容・方法の改善・向 上への取組み(ファカルティ・ディベロップメント),…(中略)…を積 極的に推進する必要がある」(大学審議会答申1991 ) ・ (教育内容等の改善のための組織的な研修)大学設置基準 第二十五条の三「大学は,当該大学の授業の内容及び方法の改 善を図るための組織的な研修及び研究の実施に努めなければな らない」 →授業改善に絞り込まれた狭義のFD

2.FD論に関する日本の先行研究

(3)

(1)定義論 ③政策上の定義とそれへの反論 ・ 政策上の定義は「授業改善中心主義」 「決して狭義の授業改善に絞られるものではない」 (寺﨑 2006:) ・「日本型FD」 は「政策の失敗」 「狭義化への傾斜は長い目でみれば教育の活性化ではなく,疲 弊,荒廃,衰退に向けて拍車をかける…(中略)…なぜならば教育 の発展は研究を前提に成立するという高等教育の本質をも看過 している」とし,(有本2010) ・「大学教員の能力開発を総称するこの概念を,研修という行政 用語に置き換えたのは,誤訳に近い」(羽田2005)

2.FD論に関する日本の先行研究

(1)定義論 ④拡張される定義 ・ 「FDの定義・内容は論者によって様々であり,単に授業内容・ 方法のための研修に限らず,広く教育の改善,更には研究活動, 社会貢献,管理運営に関わる教員団の職能開発の活動全般を指 すものとしてFDの語を用いる場合もある」(中央教育審議会 2008) ・ 愛媛大学の「教育・学習効果を最大限に高めることを目指した, 授業・教授法の改善(ミクロ・レベル),カリキュラムの改善(ミドル・ レベル),組織の整備・改革(マクロ・レベル)への組織的な取組」 (柳澤 2009)、立命館大学(沖2007) ・ FDマップ(国立教育政策研究所FDer研究会編 2009,佐藤ほか 2009)

2.FD論に関する日本の先行研究

(2)展開アプローチ論(FDを組織においてどのように実施・普及していくか?) ①大学教育改革の二つのパラダイム(一般教育学会 1997)

2.FD論に関する日本の先行研究

事項 行政的制度レベルのパラダ イム(スタティックス) 自律的活動レベルのパラ ダイム(ダイナミックス) 大学教育改革 の関係,形式合理性・整合性静的な体系,法令・制度上 動的なシステム,教員・学生等の活動,メカニズム カリキュラム 学則,卒業の要件, 授業科目・単位 哲学的立場, 教授・学習過程 自己評価 格付け評価 フィードバック評価 一般教育実施 組織 責任体制 責任主体 「行政的レベルが悪であって,自律的レベルが善である,という二項対立図式で は,問題は解けない」(絹川 2010) (2)展開アプローチ論(FDを組織においてどのように実施・普及していくか?) ②「FD組織化の4類型」 (田中 2003)

2.FD論に関する日本の先行研究

伝達講習 制度化 Ⅰ型 (伝達講習・制 度化型) Ⅱ型 (伝達講習・自 己組織化型) 自己 組織化 Ⅳ型 (相互研修・制 度化型) Ⅲ型 (相互研修・自 己組織化型) 相互研修 「各行事は,トップダウンの場合もあり,ボトムアップの場合もある.啓蒙型がトッ プダウンであるとは一概には言えない」(絹川2007)

(4)

(2)展開アプローチ論(FDを組織においてどのように実施・普及していくか?) ③「工学的経営学的モデル」対「自律型,羅生門型,相互研修型モデル」(田中2008) 工学的経営学的モデル 自律型,羅生門型,相互研修型モデル 「意図的な計画,それに基づく目標 分析,研修内容配列による合理的 で分析的な組織化」 「目標にとらわれず即興を重視する(つま りむしろ目標からはみ出す部分に着目し て研修の多面的な展開を活性化しようす る)総合的な組織化」 「工学的経営学的モデルの欠陥,すなわ ちその物象化や操作性を克服する方途」 ・「何れもPDCAサイクルに含まれるものであり,アプローチの仕方が多少異な るだけのことである」(安岡 2008) ・「両者は対立するのではなく,相補的である」(絹川2008) ・「組織論としてのアプローチが希薄であり,結果的に大学マネジメントが教育 改革に責任を持たなくなる」(羽田 2009: 18) (2)展開アプローチ論(FDを組織においてどのように実施・普及していくか?) ④「スタンダード・アプローチ」対「生成的アプローチ」 (松下 2011) スタンダード・アプローチ 生成的アプローチ FDの 目的 基準への到達と熟達 実践知や同僚性の生成 FDの 機会 研修プログラム 日常的教育改善 FDの 主体 (FDerの役割大)専門家モデル (教員間の相互性重視)同僚モデル (3)推進主体論(FDの推進主体は誰か?) ④「スタンダード・アプローチ」対「生成的アプローチ」 (松下 2011)

2.FD論に関する日本の先行研究

スタンダード・アプローチ 生成的アプローチ FDの 目的 基準への到達と熟達 実践知や同僚性の生成 FDの 機会 研修プログラム 日常的教育改善 FDの 主体 (FDerの役割大)専門家モデル 同僚モデル (教員間の相互性重視)

1.はじめに

専門家モデル 教育の専門家 大学教員=研究においてはprofessional (専門家)、教育においてはnovice(初心 者あるいは未熟者) 同僚モデル コーディネーター 大学教員=研究においても教育 においてもprofessional(専門家) (3)推進主体論(FDの推進主体は誰か?) ①二元的主体論

2.FD論に関する日本の先行研究

(田口2008)

(5)

1.はじめに

「FDは、ファカルティに所属する同僚集団によってしかなし得ない」(田口2008) 「元々ファカルティ(教授団構成員)は、全員が自らの啓発や研鑽を自律的に行 うことのできるプロフェッショナルな集団のはずである」「『FDの専門家』などと 自称する外部の人間に依存するのはFDのあるべき姿とはいえないのではな いか。他律的な存在として『ディベロッパー』や『FDコンサルタント』に指示を 仰ぐような依存的体質では自律性が疑われる」 (井下2008) 「各大学は,いわゆる『大学教育センター』等を設置し,それをもってFD組織化 の徴とし,多数の高等教育論専門家を配置することが流行している.こういう 事態を,大学セミナーハウスFD委員であったものは,肯定できるのであろう か」,「専門家にFDは委ねられるべきなのか」(絹川 2010:) 「専門家モデル」は成立する余地はない(夏目2011) (3)推進主体論(FDの推進主体は誰か?) ①二元的主体論

2.FD論に関する日本の先行研究

1.はじめに

「本来ならそうした人たち(大学セミナーハウスの大学教員研修プログラムへの 参加者:筆者注)が大学に戻って大学内にFDの芽が育つはずであったが,実 際には個人の意識がファカルティでの活動になかなか展開できず,たいていの 大学では学内にFDが広まることはほとんどなかった」.そして参加者は「個人 的な参加意識が強く,FDを運動として学内に広げることを目的にしていなかっ た.むしろそうしたくなかったのかもしれない」(山内2007) 「自主性に任せておけばFDが推進されるわけではないことも事実である」「同 僚であり,かつ,大学教育改善の全体を考えるポジションにあるべき専門家」 が必要(田口2011) 「アカデミック・スタッフとして大学教育の実践者であるとともに大学教育の臨床 的研究の担い手でもあるという二重性を持ち,この二重性に拠って他の同僚の FDを支援」するセンターのスタッフ、「同僚を『素人』として仲間内から排除する 『専門家』」ではない(田中2011) (3)推進主体論(FDの推進主体は誰か?) ①二元的主体論

2.FD論に関する日本の先行研究

1.はじめに

・ 4つのアクター論(柳澤2009) 個々の「教員」,学部内でコーディネートを行う「教育責任者」,執行部として大 学全体の教育に責任をもつ「全学教育担当管理職」,サービスを提供したり, ファカルティ間の連携を促進したりする役割の「専門家」の4つの主体の明確化 と適正な関係構築が要点 ・ トライアングル構造(羽田2011) 専門性開発活動の担い手としての≪教員個人-部局-センター≫ ・ FDに学生を「もっと積極的に巻き込んでいく」必要性(橋本2002) ・ 「教員以外のアクター,たとえば大学職員,さらには教育対象の学生も,教育 の営みを成立させたりその質を向上させたりするために,それぞれに重要な役 割を担っている」「教育に携わる多様なアクターの自発的で献身的な関与が不 可欠」(夏目2011) (3)推進主体論(FDの推進主体は誰か?) ②多元的主体論

2.FD論に関する日本の先行研究

過去 今後 定義論 広義→狭義→広義 拡張する広義 展開 アプローチ論 二元的,対抗的 多元的,状況依存的, 折衷的 推進主体論 二元的,多元的 ホリスティック (全体的) 日本のこれまでのFD論の特徴と今後の課題 過去: ①各大学での組織的なFD実践と連動する形で議論されてこなかった ②FDの究極的な目的である質の高い学習とは何かという議論と関連づ けて議論されてこなかった

2.FD論に関する日本の先行研究

(6)

21 FDの実践的課題解決のための重層的アプローチ概念図 三層のアプローチを統合していくフレームワークの構築。各層が分断されない、 重層的なアプローチによる、ホリスティックなFD論 22 (1)本研究の意義 ・ 「学習不在のFD論」あるいは「学習と教授が乖離したFD論」か ら「質の高い学習(Quality Learning)を中核に置いたFD論」へ ・ 「教授者中心のFD(単層的FD)観」から「教育システムとしての FD(重層的FD)観」へ ・ 「高等教育研究者・大学教員・政策担当者によるFD論」から「高 等教育開発者によるFD論」へ ・ 「実証研究を伴わないFD論」から「実証研究を基盤としたFD論」 へ (2)研究方法 ・ 学生・教職員・機関を対象とした混合研究法(量的・質的調査)に よる実証的研究(効果検証) ・ 複数のケースにおける高等教育開発者によるアクションリサーチ A大学 「公開授業と授業検討会によるFD」 B大学 「学生組織との連携によるFD」 C大学 「ポートフォリオ普及によるFD」 D大学 「新任教員研修によるFD] ・ 「研究」と「実践」の乖離を超克する新たな研究方法の提起

3.本研究の意義と方法

参照

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