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薄膜拡散勾配(Diffusive Gradients in Thin-films: DGT)法を用いた河川水における金属類の生物利用性の評価

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Academic year: 2021

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(1)

1.はじめに 日本における水環境の保全のための化学物質管理に関 する施策は,ヒトの健康の保護や生活環境の保全に主眼 が置かれていたが,近年になって,水生生物の保全を目 的とした規制や対策が強化されてきた。例えば,2003 年 11 月には,日本で初めて水生生物の保全の観点から 環境基準が全 Zn について設定され(平成 15 年環境省 告示第 123 号),それを受けて 2006 年には Zn の排水基 準が強化された(平成 18 年環境省令第 33 号)。水生生 物の保全を目的とした Zn についての環境基準や排水基 準の設定は,日本において画期的なことであったが,同 時に多くの課題(例えば Zn の排出源とその寄与率,水 生生物に対する Zn の実環境中での影響)を浮き彫りに した1)。その課題の一つとして,化学形態と生物利用性 (bioavailability)の問題が挙げられる。欧米では,重金 属のリスク評価や水質ガイドラインなどの策定過程にお いて,生物利用性を考慮した手法が適用されるように なってきている2,3)が,日本の水生生物保全を目的とし た Zn の基準の設定においては考慮されていない。重金 属の中には Zn 以外にも水生生物に対するリスクが懸念 されるもの(例えば Ni,Cu,Cd)が存在するため,今後, それらの物質について,環境基準の設定に向けた検討が 行われることも考えられる。その際,重金属の生物利用 性を考慮した評価や管理のあり方が議論になると予想さ れるが,日本の実環境におけるそのような知見は限られ ている4) 水環境において Zn や Cu などの重金属の水生生物に 対する生物利用性や毒性は,全濃度ではなく,水質特性 によって変化する化学形態に大きく依存することが知ら

薄膜拡散勾配(Diffusive Gradients in Thin-films: DGT)法を用いた

河川水における金属類の生物利用性の評価

Measurements of Bioavailability of Metals in River Water Using DGT

National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Onogawa 16-1, Tsukuba, Ibaraki 305-8569, Japan ** Yokohama National University, 79-7 Tokiwadai, Hodogaya-ku, Yokohama 240-8501, Japan

Abstract

It is generally accepted that the bioavailability and toxicity of trace metals in surface water to aquatic life depend on the speciation of metal, not on total or dissolved metal concentration. Metal speciation is a function of water chemistry including temperature, pH, organic content, and the compositions and concentrations of ions and solid phases in solution. To develop efficient and effective methods of assessing and managing the risk posed by metals to aquatic life, it is important to determine the effects of water chemistry on the bioavailability of metals in surface water . For this reason, we have employed the technique called diffusive gradients in thin-films (DGT) in the study of several Japanese rivers, including meta-contaminated rivers adjacent to abandoned mines, to gain information on the bioavailability of metals in Japanese water systems. The measurements of labile metals as determined by the DGT technique suggest that the biologically available fractions of metals in urban rivers are relatively low compared with those in rivers adjacent to abandoned mines. The fractions of Zn and Cd appear to be higher than that of Cu. An inverse relationship was found between labile- Cu fraction and dissolved organic carbon (DOC). Our result suggested that large amount of Zn and Cd occurred as hydrated ions or small inorganic complexes in water of the rivers studied, whereas most of the Cu occurred as Cu-organic complexes. This study demonstrates the importance of obtaining metal speciation data in the pragmatic risk assessment and management of metals in water environments, especially in urban rivers with high natural and anthropogenic organic contents.

Keywords: Heavy metal; Speciation; Bioavailability; Ecological effect; Risk assessment

* 独産業技術総合研究所安全科学研究部門リスク評価戦略グループ 〒305-8569 つくば市小野川 16-1 ** 横浜国立大学大学院環境情報研究院・学府 〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台 79-7 ¶ 連絡先:w-naito@aist.go.jp

内 藤   航

*,¶

森   美和子

**

岩 崎 雄 一

**

加 茂 将 史

益 永 茂 樹

** Wataru NAITO*, ¶

, Miwako MORI**, Yuichi IWASAKI**,

Masashi KAMO* and Shigeki MASUNAGA**

水環境学会誌 Journal of Japan Society on Water Environment Vol.34, No.4, pp.65-71 (2011) 〈調査報告― Survey Report〉

(2)

れている5~7)。水環境中では重金属は,遊離イオンのみ ではなく,無機錯体,有機錯体,粒子態,粒子吸着態な ど様々な化学形態で存在している。そのうち遊離イオン や無機錯体として存在する無機態の重金属は,生物に利 用可能と言われている5)。ファットヘッドミノーに対す る Cu の毒性への水質特性の影響を様々な条件下で検討 した Erickson ら8)は,pH,硬度,ナトリウム,溶存有機物, 懸濁物のそれぞれの濃度の上昇が全濃度に基づく毒性値 を低下させることを実証し,すべての条件における 96 時間の LC50(半数致死濃度)の値(Cu の全濃度)を比 較すると,その範囲は 60 倍にも及ぶことを示した。こ のような事例は,水環境における重金属の水生生物に対 する影響を適切に評価するためには,環境水中に存在す る重金属の化学形態や生物利用性を把握することが重要 であることを示している。つまり,実環境における重金 属の生態リスク評価や管理を適切に行うためには,全濃 度だけではなく,地域や水質により異なる化学形態や生 物利用性を考慮する必要がある。 環境水中の金属の化学形態を把握する方法には様々な ものがあるが,大別すると化学平衡モデルによるアプ ローチと分析的アプローチがある。化学平衡モデルによ るアプローチでは,環境水中は平衡状態にあると仮定し, 多数の水質項目(例えば pH,水温,主要なイオンの濃度, フミン酸・フルボ酸濃度など)や化合物の平衡定数を考 慮して,化学形態別の存在割合を予測する。代表的な化 学平衡モデルには WHAM(Windermere Humic Aqueous Model)9)や Visual MINTEQ10)がある。分析的なアプロー チには,メンブレンフィルターや限外濾過などを用いる 物理的手法とアノーディックストリッピングボルタン メトリー(ASV)や薄膜拡散勾配(Diffusive Gradients in Thin-films; 以下,DGT)法などを用いる化学的手法があ る。固相抽出法の一種であり,近年発展してきた DGT 法11~13)は,キット化されたサンプラーを 24∼72 時間現 場で浸漬させ,キット内のキレート樹脂に反応速度論的 に labile(不安定態:遊離イオン+無機金属錯体+有機 金属錯体の一部)な金属を吸着させる方法で,表面にゲ ル層を用いることで拡散を制御することによりフラック スを求めることを可能にしている。拡散ゲル層を通過す る際に解離して金属イオンが遊離しやすい無機金属錯体 や有機金属錯体の一部は,反応速度論的に labile な金属 錯体と言われ,このような形態で水中に存在する金属は 生物に利用可能と考えられている14)。DGT 法は,簡便 であること,多元素同時分析が可能であること,ポーラ ログラフィーなどの特殊な装置が必要ないことなどの利 点があり,生物利用性を簡易な分析によって把握できる アプローチとして期待されている。Cu,Cd,Ni,Pb に ついて DGT 法と化学平衡モデルによって求められた化 学形態を比較検討した研究では,両者が良好に一致した という報告がある15)。全国の河川における生物利用性を 効率的に評価するためには,DGT 法のような簡便な分 析的方法に加え,化学平衡モデルを相互補完的に活用し ていくことが必要である4) 日本において環境水中の重金属類の生物利用性を評 価した研究例は少ない4,16,17)。磯崎ら16)は,メンブレン フィルターとイミノ二酢酸キレート樹脂により水中重金 属を懸濁態・非遊離イオン溶存態・遊離イオンの三形態 に分画する手法を用いて,都市下水処理水中の Zn,Cu, Ni の存在形態を分析した。永井ら4)は,薄膜拡散勾配法 と化学平衡モデルを用いて国内の河川水中における Ni, Cu,Zn の化学種の評価を行った。Aung ら17)は多摩川に おいて平水時と増水時の河川水中の重金属の化学形態 を DGT 法により調査している。永井ら4)や Aung ら17) 研究は,日本国内の河川水を対象とした金属スペシエー ションの DGT による分析と化学平衡モデルによる推定 を行った先進的な事例であるが,限られた地域での調査 結果であるため,得られた知見が一般的なものかについ てはさらなる検証が必要である。また,彼らの調査では, 重金属が高濃度で検出され水生生物へのリスクが懸念さ れる休廃止鉱山地域の河川水は評価されていない。日本 において限られたリソースのもとで生物利用性を考慮し た生態リスク評価・管理を効率的かつ効果的に実施して いくためには,生態リスクが懸念される重金属高濃度地 点におけるデータの蓄積が不可欠である。 そこで本研究では,水環境における重金属の生物利用 性を効率的・効果的に評価できる手法の開発を目指し, 休廃止鉱山周辺の河川水を含む,水質特性の異なる複数 の河川を対象に,DGT 法により Zn,Cu,Ni,Cd の生 物利用性に関する基礎的知見を得ることを目的とした。 2.方法 2.1 調査地点とサンプリング方法 調査対象河川は,水質特性の異なる兵庫県市川水系, 群馬県粕川・碓井川水系,神奈川県境川水系とした。 市川水系は,兵庫県朝来市にある生野鉱山(1973 年 に閉山)が上流に位置する二級河川であり,上流部の大 谷川に鉱山廃水処理水が流入している。本研究では重 金属の高濃度地点として鉱山廃水処理水が流入する直 上(I- 1 )および直下(I- 2 ),市川本流において上流から I-3,I-4,の 4 地点を設定した(Fig. 1a)。また鉱山廃水 の影響がないと考えられる地点として,越知川に I-5 を 設定した。 粕川は群馬県伊勢崎市周辺に位置し,金属製品製造業, Ginzan lake (Ikuno dam) Ikuno Ginzan Mine drainage 50m

I-3 Nishikatsurariver

Hirose river 1 km 10 km 1 km 0 1 2 3 4 5 km Kasu river Sakai river Usui river Yanase river Tenjin river Route 246 Route 1 Tomei Expwy K-1 K-2 K-3 S-2 U-2 U-1 Y-2 Y-1 Y-2 S-3 Y-1 S-3 I-2 I-1 I-4 I-5 Tochihara river Inumi river Ichi river Ochi river a. Ichi-river c. Usui-river b. Kasu-river d. Sakai-river Nishikatsura river Tochihara river Ginzan lake (Ikuno dam) Ikuno Ginzan Usui river Inumi river

(3)

輸入用機械器具製造業,非鉄金属製品製造業,複数処理 施設などの排水が流入している。調査地点は,上流から 金属製品製造業,輸入用機械器具製造業の工場排水の影 響を受けている地点(K- 1 ),支流の西桂川に流入する 工場排水の影響も受けている地点(K-2 ),K - 1 と K-2 に 流入する工場排水に加えて,非鉄金属製品製造業,複数 処理施設からの排水の影響も受けている地点(K-3 )と した(Fig. 1b)。 碓井川は,群馬県を流れる利根川水系の一級河川であ る。碓井川が流れる群馬県安中市は,Zn の製錬工場が あり,過去に土壌や大気が重金属によって汚染された地 域である。そのため,碓井川への重金属負荷の主要な発 生源は,個別事業所からの排水などの事業所由来と,土 壌や底質蓄積した過去の汚染由来の 2 つがあげられる。 碓井川水系においては,以下の 4 つの河川地点でサンプ リング調査を行った(Fig. 1c)。碓井川の支流の柳瀬川 については,Zn の製錬工場が位置する上流部(Y - 1 )と 下流部(Y-2 )を調査地点とした。また,碓井川本流に おいては,柳瀬川と合流する前後(U - 1 および U-2 )で 調査地点を設定した。 境川は神奈川県中部を南北に縦断して流れる二級河川 である。源流は山間地域であり,中流域は田園地帯,住 宅域である。Zn を排出する主な PRTR の指定事業場と して,下水処理場が 4 か所点在している。上流から,下 水処理水が流入していない地点として S-2 を設定し,下 水処理水が流入している地点として S-3 を設定した(Fig. 1d)。 市川水系については,2008 年の 7 月 1∼2 日,粕川・ 碓井川水系については 2008 年 8 月 8∼9 日,境川水系に ついては 2008 年 11 月 6∼7 日に調査を行った。 河川水のサンプリングでは表層水を採取した。重金属 分析用試料は,未処理の河川水を全量,現場もしくはそ の日のうちに孔径 0.45 µm の親水性 PTFE 製フィルター (ADVANTEC)でろ過したものを溶存態とした。その後 硝酸を pH が 1 になるまで加え,冷蔵した。また,溶存 有機炭素分析用試料も上記のフィルターでろ過し,冷蔵 保存した。硬度分析用試料は採水後,常温・暗所で保存 した。上記の採水を DGT 設置時と回収時の計 2 回行っ た。DGT の調査方法等については後述する。重金属の サンプル容器は事前に酸洗浄,溶存有機炭素・硬度のサ ンプル容器は中性洗剤で超音波洗浄を行った。 2.2 薄膜拡散勾配法(DGT: Diffusive Gradients in Thin-films)

本研究では DGT Research Ltd.(Lancaster, UK)による 標準的なピストンタイプの水用 DGT サンプラーを使用 した。このサンプラーは,孔径 0.22 µm のメンブレンフィ ルター,拡散ゲル層,Chelex- 100 樹脂層の 3 層構造になっ ている(Fig. 2 )。Chelex- 100 樹脂層の上の拡散ゲル層の 存在により,水中の金属成分の拡散を制御することがで きる。河川水中の金属は,有機化合物,無機化合物,遊 離イオンなどの形態で存在しており,Chelex- 100 樹脂は, 遊離イオンを吸着でき,水中に沈めている間に無機化合 物と,不安定な有機化合物から解離した遊離イオンも吸 着可能である。Chelex- 100 樹脂に吸着したこれら 2 種類 の遊離イオン濃度が,実際に生物に利用可能な濃度(こ れを DGT-labile と定義する)と考えられている14) DGT サンプラーは使用時まで冷蔵庫で密閉保存した。 使用時には,1 地点ごとに 3 つ以上のサンプラーをネッ トに入れて括り付け,水面から 20 cm 以上の深さに配置 し,24 時間河川水につけておいた。回収時には,DGT サンプラーを超純水でよく洗浄し,密閉した後,分析ま での間,冷蔵庫で保管した。 DGT-labile は,以下の式から算出した11) ) /fe V + ( Ce V = M HNO3 gel ………⑴ / ( g DA V t) M = C ………⑵ ⑴式のM は,Chelex- 100 樹脂に吸着した金属の総量

(µg)で,Ce は 1M HNO3で Chelex 層から溶出したサン プルの金属濃度(µg・L-1 ),V

HNO3は溶出に使用した 1M HNO3の 使 用 量(mL),Vgelは Chelex- 100 樹 脂 の 体 積 (mL),fe は溶出係数で,マニュアルに従いすべての計 算で 0.8 を使用した。⑵式の C は DGT-labile(µg・L-1 )で, Δg はメンブレンフィルターと拡散ゲル層の厚さ(0.093 cm),D は DGT リサーチ社が提供している金属の拡散 係数(cm2・sec-1 ),A は河川水と接する面積(3.14 cm2 ), t はサンプラーを水中に沈めた時間(sec)である。DGT サンプラーの浸漬時間については,1 から 6 時間の試験 において M と浸漬時間の間に直線関係が成立しており, 通常,野外調査では 24-72 時間浸漬されることが多い 12,18) 2.3 水質分析 重 金 属 の 全 量・ 溶 存 態 試 料 の 分 析 方 法 は EPA METHOD 3005A に準じた。pH=1 に調整した試料をテ フロン製ビーカーに移し,試料 100 mL あたり HCl を 5 mL,HNO3を 2 mL を加えた後,デジタルホットプレー トにて 250 ℃,2∼3 時間加熱した。放冷後,ビーカー 内に残存した試料をポリプロピレン製のメスフラスコ に移し,超純水でメスアップしたものを測定試料とし た。DGT サンプラーについては,DGT Research 社のマ ニュアル19)に従い,サンプラーを分解し,Chelex 層を 1M 硝酸に 24 時間以上入れ,重金属を溶出させ,10 倍 以上希釈したものを測定試料とした。測定は,Agilent Window Cap Piston Diffusive gel

layer membraneFilter

Resin layer Outer sleeve base 4 cm

(4)

Technology 社製 Agilent 4500 ICP-MS を用いて行った。 溶存有機炭素(DOC)は,現場で前処理した試料を島 津製作所製 TOC-5000A で測定した。水温,pH,電気伝 導度(EC)については現場で測定した。 3.結果および考察 3.1 水質項目 各河川のサンプリング地点における水質項目の測定 データをTable 1 に示す。pH の値は 6.9∼7.8 であり,す べてのサンプリング地点において,DGT キットの適用 可能な範囲(pH 5∼8.3 )18)内に収まっていた。電気伝導 度(EC)と溶存有機炭素(DOC)の範囲は,それぞれ 51.2∼403.5 µS・cm-1と 0.8∼12.2 mg・L-1であった。休廃 止鉱山の処理施設からの排水の影響を大きく受ける I-2 では,EC,DOC,Ca の値が当該水系において相対的に 高 か っ た。K- 1,Y- 1 お よ び Y-2 は,DOC が 10 mg・L-1 を超えており,季節的な影響や降雨による増水の影響も 考えられるが,比較的有機汚濁度の高い地点であった。 3.2 重金属の濃度 各河川のサンプリング地点における金属濃度の測定結 果(Fig. 3 )および形態別濃度の割合(Table 2 )を基に 結果を述べる。 3.2.1 存在形態の金属間の比較 全濃度(Ctotal)に対する溶存態濃度(Cdissolved)の割合 (Cdissolved / Ctotal)について,各物質の相対的な関係をみる と,Cd や Zn は,Cu よりも高い傾向があった。対象と Site ID CDissolved/ CTotal CDGT/ C Total CDGT/ CDissolved CDissolved/ CTotal CDGT/ C Total CDGT/ CDissolved CDissolved/ CTotal CDGT/ C Total CDGT/ CDissolved CDissolved/ CTotal CDGT/ C Total CDGT/ CDissolved I-1 0.97 0.85 0.88 0.77 0.69 0.45 0.96 0.85 0.89 NA 0.16 1 < I-2 0.97 0.81 0.83 0.59 0.65 1 < 1 < 0.93 0.92 NA NA NA I-3 0.65 0.74 1 < 0.58 NA NA 0.76 0.60 0.79 NA 1 < NA I-4 0.63 0.82 1 < 0.65 NA NA 0.72 0.59 0.81 NA NA NA I-5 0.49 0.49 1.00 0.63 NA NA NA NA NA NA NA NA K-1 0.05 0.63 1 < 0.47 NA NA NA NA NA NA 0.16 NA K-2 0.61 0.89 0.89 0.34 NA NA NA NA NA 0.83 0.17 0.20 K-3 0.27 0.27 1.00 0.53 NA NA NA NA NA 0.71 0.34 0.49 U-1 0.83 1 < 1 < 0.59 NA NA NA NA NA NA 0.19 NA U-2 0.86 0.68 0.79 0.64 0.11 0.17 0.79 0.86 1 < 0.61 0.06 0.09 Y-1 0.25 0.57 NA 0.67 0.02 0.03 NA NA NA 0.45 0.16 0.36 Y-2 0.79 0.74 0.94 0.76 NA NA 0.89 0.86 0.96 0.80 0.13 0.16 S-2 0.80 0.77 0.96 0.90 NA NA NA NA NA NA NA 0.20 S-3 0.95 0.45 0.48 0.92 0.11 0.12 NA NA NA 1 < 0.42 0.32 i N d C u C n Z

NA: Not Available due to the lack of quantified data.

Table 2 Fraction of dissolved or DGT-labile metal against total metal concentration for Zn, Cu, Ni and Cd at the study site.

Site ID Sampling Date Water temperature [ºC] pH EC [μS・cm-1] [mg・LDOC -1] [mg・LCa -1] [mg・LMg -1] I-1 July 1-2, 2008 17.3 7.4 120.3 3.4 18.5 2.1 I-2 July 1-2, 2008 18.8 7.7 403.5 9.9 68.0 6.4 I-3 July 1-2, 2008 15.0 6.7 63.6 3.1 8.2 0.9 I-4 July 1-2, 2008 18.3 6.9 62.8 3.3 7.1 0.9 I-5 July 1-2, 2008 18.3 7.4 51.2 3.1 6.4 1.0 K-1 Aug. 8-9, 2008 27.5 7.8 260.5 11.3 21.7 5.6 K-2 Aug. 8-9, 2008 27.3 7.7 252.0 8.1 22.6 5.6 K-3 Aug. 8-9, 2008 28.0 7.8 345.0 7.4 24.1 6.2 U-1 Aug. 8-9, 2008 23.4 7.8 193.9 9.0 17.8 4.5 U-2 Aug. 8-9, 2008 24.0 7.8 228.5 8.2 19.5 4.7 Y-1 Aug. 8-9, 2008 26.0 7.8 380.5 12.0 34.6 8.5 Y-2 Aug. 8-9, 2008 26.5 7.8 358.5 12.2 34.1 8.3 S-2 Nov.6-7, 2008 15.3 7.4 295.0 0.8 28.4 18.6 S-3 Nov.6-7, 2008 19.1 7.1 345.5 2.8 25.6 13.6

(5)

したすべての金属について,全濃度と溶存態濃度が検 出されている U-2 と Y-2 では,全濃度に対する溶存態濃 度の割合は,Zn と Cd がおよそ 80∼90%,Cu がおよそ 65∼75%,Ni がおよそ 60∼80%であった。溶存態濃度 に対する DGT により定量された DGT labile な金属濃度 (CDGT)の割合(CDGT / Cdissolved)についてみると,Zn や Cd は,Cu よりも高い傾向があった。このことは,Zn や Cd については溶存態(0.45 µm フィルターを通過す る化学種)として存在するものの大部分が生物に利用可 能である一方,Cu は溶存態で存在するとしても生物に は利用されない割合が高いことを示している。つまり, Zn や Cd は河川中において,生物に利用可能な遊離イオ ンや無機錯体として存在する割合が高く,Cu は粒子吸 着態や溶存有機物と結合し有機錯体を形成し存在する割 合が高いことが推察された。Ni については,検出濃度 が検出下限に近いデータが多く,ばらつきが大きいため, 傾向を把握することは困難であった。多摩川において平 水時と増水時の河川水中重金属の化学形態を DGT 法に より調査した Aung ら16)は,平水時において溶存態に占 める labile な割合は,Ni で 45±8%,Zn で 53±23%で あり,Cu については labile な割合は検出されなかった と報告している。また DGT 法と化学平衡モデルを用い て国内の河川水中における Ni,Cu,Zn の化学種の評価 を行った永井ら4)は,調査した河川水中において,Ni は 地点によって生物利用可能な濃度の割合の違いが大きい こと,Cu は生物利用可能な濃度の割合が低いこと,Zn は生物に利用可能な濃度の割合が大部分であることを示 した。他の金属と比較して Cu の生物利用可能な割合が 低いという本研究で得られた傾向は,Aung ら16)や永井 ら4)とほぼ一致する。 3.2.2 物質別の特徴と地点間の比較 Zn:Zn はほぼすべての地点で定量されており,休廃 止鉱山周辺の I- 1 と I-2,Zn 製錬工場周辺の Y-2 におい て,とくに高い濃度が検出された。全濃度に対する溶存 態濃度の割合が 50%を超える地点が全体の 7 割を超え, そのうち約半数が溶存態濃度の割合が 80%を超える地 点であった。全濃度に対する DGT 濃度の割合は,3 地 点を除くすべての地点において 50%を超えていた。溶 存態濃度に対する DGT 濃度の割合は,S-3 以外は 80% を超えていた。このことは,河川中に存在する Zn の大 半は生物利用可能な割合であることを示している。複数 処理施設からの排水や下水処理施設からの排水の影響を 大きく受ける K-3 や S-3 地点では,生物に利用可能な割 合が他の地点と比べて低く,50%以下であった。このよ うな傾向は永井ら4)の調査によっても示されている。処 理施設からの排水には多様な溶存有機物が含まれてお り,それらと結合した Zn が生物利用性の低下に影響し ていると考えられる。DGT 濃度が溶存態濃度よりも高 くなる地点が 6 地点あった。溶存濃度は DGT の設置時 と回収時に採水したサンプルの平均であり,DGT が浸 漬している時間を通しての河川中濃度の平均をあらわし ているわけではないことに注意が必要である。DGT 浸 漬中に濃度の高い状態が続いていたとしたら,DGT 濃 度が溶存濃度よりも高くなる可能性はある。あるいは水 流の状態や分析誤差が寄与している可能性も否定できな い。このような DGT 分析値の不確実性の問題は,Zn に 限らず他の物質でも存在するため,連続的なサンプリン グや実験室での試験等を通して不確実性を低減していく ことが必要である。 Cu:全濃度および溶存態濃度濃度は,休廃止鉱山周 辺(I- 1 と I-2 )の河川水中濃度が他の地点と比べると 一桁程度高い。全濃度に対する溶存態濃度の割合は 34 ∼92%であった。DGT 濃度は,大部分のサンプリング 地点において定量下限以下であった。DGT 濃度の平均 が算出できた 5 地点では,溶存態濃度に対する DGT 濃 度の割合は,休廃止鉱山地域で採取した試料では 45 ∼ 110%,その他の地点では 3∼ 17%であった。DGT 濃 度が定量下限以下であった地点において,定量下限値を 測定濃度と仮定すると,溶存態濃度に対する DGT 濃度 の割合は,0.2∼15%程度であった。これは,休廃止鉱 山周辺を除くサンプリング地点においては溶存態濃度に 対する DGT 濃度の割合は 20%以下であり,生物に利用 a. Zn 10000 1000 100 10 1 0.1

I-1 I-2 I-3 I-4 I-5 K-1 K-2 K-3 U-1 U-2 Y-1 Y-2

Total Dissolved DGT

Total Dissolved DGT

Total Dissolved DGT

Total Dissolved DGT

S-2 S-3

I-1 I-2 I-3 I-4 I-5 K-1 K-2 K-3 U-1 U-2 Y-1 Y-2 S-2 S-3

I-1 I-2 I-3 I-4 I-5 K-1 K-2 K-3 U-1 U-2 Y-1 Y-2 S-2 S-3

I-1 I-2 I-3 I-4 I-5 K-1 K-2

Sampling Site Concentration ( µg • L -1)

K-3 U-1 U-2 Y-1 Y-2 S-2 S-3 100 10 1 0.1 0.01 100 10 1 0.1 0.01 100 10 1 0.1 0.01 b. Cu c. Ni d. Cd

Fig. 3 Average total, dissolved and DGT-labile concentrations of

Zn, Cu, Ni, Cd and Pb at the study site. The average total and dissolved concentrations were calculated from water samples taken at the time of deployment and recovery of DGT unit. Error bars for DGT represent minimum and max (N=3).

(6)

可能な割合は通常測定されている全濃度や溶存態濃度よ りもかなり低くなる可能性があることを示している。つ まり,河川水中に存在する Cu の中には,0.45 µm のフィ ルターは通過できるが,DGT のゲル層は通過できない 形態のものが比較的多く存在することを示唆している。 Ni:サンプリング地点のうち全濃度と溶存態濃度の平 均値が算出できた地点は 5 地点であった。全濃度と溶存 態濃度とも測定値が定量下限以下となる地点が多く存在 した。全濃度が溶存態濃度より高い値を示した 4 地点 (K-2,K-3,U-2,Y- 1 )でみると,全濃度に対する溶存 態濃度の割合は 28∼83%程度であった。その 4 地点に ついて,溶存態濃度に対する DGT 濃度の割合を計算す ると 20∼50%程度であった。市川でのサンプリング試 料は DGT 濃度が溶存態濃度よりも高い値を示した。 Cd:サンプリング地点のうち全濃度と溶存態濃度の 平均値が算出できた地点は 6 地点であった。それらは休 廃止鉱山周辺と製錬工場周辺で亜鉛が高濃度で検出され た地点であった。都市河川の大部分が定量下限以下で あった。平均値が算出できた 6 地点における全濃度に対 する溶存態濃度の割合は 70%以上であった。全濃度に 対する DGT 濃度の割合は 60%以上であり,溶存態濃度 に対する DGT 濃度の割合は 80%以上であった。このこ とは,Zn と同様に,河川水中に存在する Cd の大半は生 物に利用可能な形態で存在することを示唆している。 3.2.3 生物利用性と DOC 濃度の関係

Cu,Zn,Cd について,DOC 濃度と CDGT /Cdissolved濃度 の関係をFig. 4 に示す。明確な相関関係ではないが,Cu については,DOC 濃度の上昇に伴い CDGTの割合が減少 する傾向が見られた(Fig. 4b)。これは,Cu の生物利用 性に対して水中の有機物量が重要な役割を果たしている ことを示している。すなわち,フミン物質等の有機物量 が増加すると錯体結合サイトが多くなり,その分有機錯 体として存在するCu の割合が増加するため,生物に利 用可能な形態の Cu の割合が減少すると考えられる。同 一河川の上流から下流にかけての Cu の DGT-labile の割 合と DOC 濃度の関係を調べた Martin and Goldblatt 20) おいても,同様の傾向が見られており,その決定係数(r2 ) は 0.82 から 0.97 と高い値を示している。Zn(Fig. 4a) や Ni(Fig. 4c)でも同様の解析を試みたが顕著な関係 は見られなかった。 4.まとめ 本調査研究では,水質の異なる複数の河川において金 属の生物利用性がどのように変化するかを示した。複数 の河川を対象としたが,試料の採取はそれぞれの地点に おいて数回程度であるため,年間を通してみると変動の 幅は拡大する可能性がある。しかしながら,限定的なデー タであっても,水質の違いによる生物利用性の違いは認 められた。休廃止鉱山周辺に比べ,都市河川は生物利用 可能な重金属の割合は低い傾向があった。とくにCu で はその傾向が顕著に見られた。このことは,重金属の水 生生物への影響を評価する上で生物利用性を考慮するこ との重要性が改めて確認されたことを意味しており,都 市河川のように複数の汚染物質が流入する河川では,生 物利用性の評価がとくに重要であると考えられた。DGT アプローチによる生物利用性評価は,水質の地域性を考 慮したリスク評価に貴重な情報を提供する。しかし,す べての河川の測定点において DGT アプローチにより生 物利用性を把握し,そのデータに基づき生態系へのリス クを判定するのは困難である。化学平衡モデルと相互補 完的に利用することにより,評価したい水域の生物利用 性の評価を効率的に実施できると考えられる。現在実施 されている水質項目のモニタリングデータを活用して, 限られたデータから水環境における生物利用性を推定す る手法の開発は,今後の重要な研究課題と考えられる。 科学的知見に基づく地域性を考慮した水環境における重 金属の生態リスクの評価と管理を効率的かつ合理的に実 施していくために,新しい生態リスク評価と管理の枠組 みを構築していく必要がある。本調査研究のデータは, 生物利用性を考慮した重金属の水生生物に対するリスク の評価や管理手法の開発に資する基礎データであるが, さらに高精度の手法開発に向けては,異なる環境におけ るモニタリング調査を体系的に実施し,質の高いデータ を蓄積していくことが必要である。 a. Zn b. Cu c. Ni 10 1 0.1 0 5 10 15 10 1 0.1 0.01 0.001 0 5 10 15 10 1 0.1 0 5 10 15 DOC (mg•L-1) DGT-labile/Dissolved

Fig. 4 Relationship between DOC concentration and CDGT/

(7)

謝 辞 本研究の一部は平成 22 年度科学研究費補助金若手研 究 B の援助を受けて行われたことを記して謝意を表す る。 (原稿受付 2010 年 11 月 23 日) (原稿受理 2011 年 2 月 11 日) 参 考 文 献 1 )  環境省中央環境審議会(2006)水生生物の保全に係る排水規 制等の在り方について(答申),http://www.env.go.jp/press/press. php?serial=7099(2010年10月時点).

2 )  EU(2008)Risk Assessment zinc metal-environmental part, EC regulation 793/93, Biltoven, The Netherlands: Rapporteur.

3 )  U. S. EPA(2007)Aquatic life ambient freshwater quality criteria - copper 2007 revision, EPA-822-R-07-001, February 2007.

4 )  永井孝志,恒見清孝,川本朱美(2007)河川水中における重金 属のスペシエーション:Diffusive Gradients in Thin-films法による 分析と化学平衡モデルによる推定, 陸水学雑誌,68,391-401. 5 )  Brezonik, P. L., King, S. O. and Mach, C. E.(1991)The influence

of water chemistry and trace metal bioavailability and toxicity to aquatic organisms. In: Newman, M.C. and McIntosh, A.W., Editors, Metal Ecotoxicology: Concepts and Applications, pp.1-31, Lewis Publishers, Chelsea, Michigan.

6 )  Janssen, C. R., De Schamphelaere, K., Heijerick, D., Muyssen, B., Lock, K., Bossuyt, B., Vangheluwe, M. and Van Sprang, P.(2000) Uncertainties in the Environmental Risk Assessment of Metals, Human

and Ecological Risk Assessment, 6, 1003-1018.

7 )  Niyogi, S. and Wood, C. M.(2004)Biotic Ligand Model: a flexible tool for developing site-specific water quality guidelines for metals,

Environ. Sci. Technol, 38, 6177-6192.

8 )  Erickson, R. J., Benoit, D. A., Mattson, V. R., Leonard, E. N. and Nelson, H. P.(1996)The effects of water chemistry on the toxicity of copper to fathead minnows, Environmental Toxicology and Chemistry,

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9 )  Tipping, E.(1994)WHAM- A chemical equilibrium model and computer code for waters, sediments, and soils incorporating a discrete site/electrostatic model of ion-binding by humic substances, Computers

& Geosciences, 20, 973-1023.

10)  Visual MINTEQ: A free equilibrium speciation model(2010)http:// www.lwr.kth.se/English/OurSoftware/vminteq/(2010年10月時点). 11)  Davidson, W. and Zhang, H.(1994)In situ speciation measurements

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12)  Zhang, H. and Davidson, W.(2000)Direct in situ measurements of labile inorganic and organically bound metal species in synthetic solutions and natural waters using DGT. Anal. Chem, 72, 4442-4457. 13)  Zhang, H. and Davison, W.(2001)In situ speciation measurements.

Using diffusive gradients in thin films(DGT)to determine inorganically and organically complexed metals. Pure Appl. Chem, 73, 9-15.

14)  Martin, A. J.(2008)Application of diffusive gradients in thin films (DGT)for metal-related environmental assessments. Integr. Environ.

Assess. Manag, 4, 377-379.

15)  Unsworth, E. R., Warnken, K. W., Zhang, H., Davison, W., Black, F., Buffle, J., Cao, J., Cleven, R., Galceran, J., Gunkel, P., Kalis, E., Kistler, D., Van Leeuwen, H. P., Martin, M., Noel, S., Nur, Y., Odzak, N., Puy, J., Van Riemsdijk, W., Sigg, L., Temminghoff, E., Tercier-Waeber, M. L., Toepperwien, S., Town, R. M., Weng, L. and Xue, H.(2006) Model predictions of metal speciation in freshwaters compared to measurements by in situ techniques. Environ. Sci. Technol, 40, 1942-1949.

16)  磯崎雄一,中島典之,古米弘明(2006)下水処理工程水及び放 流先河川水における亜鉛,銅,ニッケルの形態分析,環境科学会 誌,19,445-452.

17)  Aung, N. N., Nakajima, F. and Furumai, H.(2008)Trace metal speciation during dry and wet weather flows in the Tama River, Japan, by using diffusive gradients in thin films(DGT), Journal of

Environmental Monitoring, 10, 219-230.

18)  Zhang, H. and Davison, W.(1995)Performance characteristics of diffusion gradients in thin films for the in situ measurement of trace metals in aquaous solution, Analytical Chemistry, 67, 3391-3400. 19)  DGT Research Ltd., Practical guide for using DGT fro metals in

waters, http://www.dgtresearch.com/dgtresearch/dgtresearch.pdf(2010 年10月時点).

20)  Martin, A. J. and Goldblatt, R.(2007)Speciation, behavior, and bioavailability of copper downstream of a mine-impacted lake,

Environmental Toxicology and Chemistry, 26, 2594-2603.

[論 文 要 旨]

水環境において Zn や Cu などの重金属の水生生物に対する生物利用性や毒性は,水質特性によって変化 するそれらの化学形態に大きく依存することが知られている。生物利用性を考慮した効率的な生態リスク評 価・管理手法の開発には,河川における重金属の生物利用性と水質特性との関係を把握することが重要であ る。そこで本研究では,重金属濃度が高い休廃止鉱山周辺の河川水を含む,水質特性の異なる複数の河川を 対象に,薄膜拡散勾配(Diffusive Gradients in Thin-films: DGT)法により Zn,Cu,Ni,Cd の生物利用性に関 する基礎的知見を得るためのモニタリング調査を行った。休廃止鉱山周辺に比べ,都市河川は生物に利用可 能と見なされている labile な重金属の割合が相対的に低かった。生物に利用可能な濃度の割合を物質間で比 較すると,Zn や Cd が高く,Cu が低かった。Zn や Cd は河川中において,生物に利用可能な遊離イオンや 無機錯体として存在する割合が高く,Cu は粒子吸着態や溶存有機物と結合し有機錯体を形成し存在する割 合が高いことが推察された。Cu の生物利用性は,溶存有機炭素濃度の上昇に伴い,減少する傾向が見られた。 Ni については,検出濃度が検出下限に近いデータが多く,ばらつきが大きいため,傾向を把握することは 困難であった。本調査研究の結果は,重金属の水生生物への影響を評価する上で生物利用性を考慮すること の重要性が改めて確認されたことを意味しており,都市河川のように有機汚染度の高い河川では,その評価 がとくに重要であると考えられた。 キーワード: 重金属;生物利用性;化学形態;生態影響;リスク評価

Fig. 1   Map of the rivers and the location of sampling site.
Fig. 2   Schematic cross-section and appearance of DGT sampler.
Table 1   Average water quality measured in sampling sites.
Fig. 3   Average total, dissolved and DGT-labile concentrations of  Zn, Cu, Ni, Cd and Pb at the study site
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参照

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