1)京都第二赤十字病院脳神経内科 (2012 年 10 月 18 日受付,2012 年 11 月 13 日受理)
<原 著>
脳静脈血栓症連続 10 症例の臨床像,画像所見の検討
尾原 知行
1)山本 康正
1)田中瑛次郎
1)藤並 潤
1)森井芙貴子
1)石井亮太郎
1)小泉 崇
1)永金 義成
1)要旨:【背景 / 目的】脳静脈血栓症は近年日常診療で遭遇する機会が増えている.脳静脈血
栓症自験例の臨床像,急性期画像所見につき検討する.【方法】対象は 2008 年 4 月~2011 年 3
月に当院に入院した脳静脈血栓症 10 例(平均 49 歳,男性 5 例 / 女性 5 例)である.【結果】初
診時臨床症状は,7 例で局所神経症状(うち 5 例は軽度の運動麻痺)を認め,3 例は頭痛のみで
あった.4 例はけいれん発作を伴った.閉塞静脈洞は上矢状洞 6 例,横静脈洞 3 例,直静脈
洞 1 例で,初診時脳出血を 4 例,静脈梗塞を 3 例に認めた.9 例で頭部 MRI T2
*強調画像に
て閉塞静脈洞が低信号で強調された.全例抗凝固療法で治療し,8 例は退院時 modified
Rankin Scale 0~1 であった.【結論】自験 10 症例は比較的軽症で予後良好な例が多かった.
T2
*強調画像を含む MRI 検査による早期診断が臨床経過に影響を与えている可能性が考えら
れた.
Key words: cerebral venous thrombosis, T2
*weighted image, magnetic resonance imaging,
anticoagulant therapy, outcome
(脳卒中 35: 167–173, 2013)
はじめに 脳静脈血栓症は,脳静脈の閉塞に伴い,脳出血,静 脈性脳梗塞を発症する脳血管障害の一病型である.以 前は比較的稀な疾患とされてきたが,近年画像診断の 進歩に伴い,日常診療で遭遇する機会が増えてい る.欧米では脳静脈血栓症約 600 例の前向き登録研究 (International Study on Cerebral Vein and Dural SinusThrombosis; ISCVT)が行われ1),その臨床的特徴が明 らかにされ,2011 年には米国心臓協会(American Heart Association; AHA)から脳静脈血栓症に対する診断,治 療に関する声明が発表された2).しかしながら本邦で は症例報告は散見されるものの連続例での報告は少な く,日常臨床における脳静脈血栓症の特徴は明らかに なっていない.本研究では当院に入院した脳静脈血栓 症連続 10 症例の臨床的特徴や急性期画像所見を検討 することを目的とした. 方 法 対象は 2008 年 4 月から 2011 年 3 月までの 3 年間に 当院に入院した脳静脈血栓症連続 10 例で,これらの 症例の臨床症状,原因基礎疾患,急性期画像所見,血 液検査所見,治療,転帰について検討を行った.なお 同時期に当院に入院した脳静脈血栓症を除く急性期脳 卒中は 1445 例(脳梗塞 1044 例,脳出血 401 例)で,急 性期脳卒中全体に占める脳静脈血栓症の割合は 0.7% であった. 画像所見に関しては,脳静脈血栓症に伴う静脈梗 塞,脳出血などの脳実質病変の特徴,閉塞静脈洞の所 見については,頭部単純 CT での dense clot sign と頭部 単純 MRI[T1 強調画像(T1WI),T2 強調画像(T2WI),
T2*強調画像(T2*WI),拡散強調画像(DWI)]での静 脈洞内の信号変化を検討した. 急性期脳静脈血栓症の診断は,頭部 MRI にて静脈 洞に異常信号変化を認め,MR venography(MRV)ある いは脳血管撮影にて,その静脈洞の描出がないことを 確認して,確定診断を行った.
結 果 1.臨床的特徴(Table 1) 10 症例の発症年齢は平均 49 歳(22~77 歳)で男性 5 例,女性 5 例であった.初診時臨床症状として頭痛を 10例中 8 例に認めた.局所神経脱落症状を呈する例 を 7 例で認め,残りの 3 例は頭痛を単独症状とし た.局所神経脱落症状を認めた 7 例のうち 5 例は軽度 の運動麻痺や高次機能障害を認めるのみで,残りの 2 例は意識障害を伴っていたが,昏睡などの重症の意識 障害を呈する例はなかった.また 4 例でけいれん発作 [部分発作 2 例,全般発作(部分発作の全般化)2 例]が 受診契機となったのが特徴的であった.症状出現から 診断までの日数は中央値 7 日(2~20 日)であった.原 因となる基礎疾患,病態としては,アンチトロンビン 欠損症,妊娠,真性赤血球増加症,女性ホルモン剤服 用 + 貧血,副鼻腔炎,良性脳腫瘍手術後(上矢状洞近 傍の開頭術),アルコール性肝障害(プロテイン C/S, アンチトロンビンいずれも活性低値)などを認めた.3 症例に関しては明らかな原因を認めなかった.初診時 の 血 液 検 査 で は 全 例 に お い て D-dimer が 高 値 (5.59±6.01 μg/ml)を示した.D-dimer が 22.89 μg/ml と 特に高値を示した症例 10 は下肢深部静脈血栓症を合 併していた. 2.急性期画像所見(Table 2) 各症例の主要閉塞静脈は上矢状洞 6 例,横静脈洞 3 例,直静脈洞から深部静脈 1 例であった.初診時の画 像検査にて脳出血を 4 例,静脈梗塞を 3 例認め,脳実 質病変を認めない例が 3 例であった.脳出血 4 例 は,全例上矢状洞閉塞例で,上矢状洞近傍の皮質下(3 例は頭頂部)の小出血であった.静脈梗塞 3 例は,
MRIにて T2WI/FLAIR にて高信号を示し,DWI では
正常から軽度高信号,ADC 値は低下しない血管性浮 腫の特徴を示す画像を呈し,病変分布はいずれも閉塞 静脈の灌流域に一致していた(上矢状静脈洞閉塞:頭 頂部,横静脈洞:側頭葉,直静脈洞:視床,基底核) (Fig. 1). 閉塞静脈洞の所見については,頭部単純 CT にて静 脈洞が高吸収域を示す dens clot sign を認めた例は 5 例
であった.T2*WIでは 9 例で閉塞静脈洞が低信号で 強 調 さ れ た(Fig. 2). こ れ ら 9 例 の う ち 6 例 で は T1WI,T2WI にて閉塞静脈洞に高信号を認めなかっ た.T2*WIで低信号化を認めなかった症例 9 は,発 症から 20 日経過した亜急性期の症例であった.一方 T1WIあるいは T2WI で閉塞静脈洞が高信号を示した 例は 4 例で,2 例は T1WI で一部高信号を,残り 2 例 では T1WI,T2WI 両者にて明らかな高信号を示し た.DWI では 10 例中 6 例で閉塞静脈洞の一部が高信 号を呈した.典型例として症例 1 の急性期画像所見を 提示する(Fig. 3). 3.臨床経過,急性期治療,転帰(Table 3) 急性期治療に関しては,脳出血例も含め,脳静脈血 Table 1 臨床的特徴 症状出現 初診時臨床症状 初診時 年齢 性 静脈洞閉塞 から D-dimer 推定される原因 診断まで 頭痛 けいれん 局所神経脱落症状 (μg/ml) 症例 1 22 女 上矢状洞 4日 + × なし 3.38 アンチトロンビン欠損症 症例 2 38 女 上矢状洞 10日 + ○ 左上肢麻痺 4.62 妊娠 症例 3 50 男 上矢状洞 7日 + ○ 左片麻痺 2.48 副鼻腔炎 症例 4 42 男 上矢状洞 14日 + ◎ 右片麻痺, 7.95 良性脳腫瘍術後 軽度高次機能障害 症例 5 63 男 上矢状洞 7日 + × 左下肢麻痺 2.09 アルコール性肝障害 (凝固因子 PC/PS/AT 低下) 症例 6 47 男 上矢状洞 2日 − × 左片麻痺 + 右上肢麻痺 2.02 真性赤血球増加症 症例 7 60 男 横静脈洞 6日 + × なし 4.02 不明 症例 8 77 女 横静脈洞 7日 + ◎ 意識障害(GCS10), 4.19 不明 左半側無視 症例 9 50 女 横静脈洞 20日 + × なし 2.23 不明 症例 10 43 女 直静脈洞 2日 − × 意識障害(GCS9), 22.89 女性ホルモン療法 + 貧血 四肢麻痺
Fig. 1 初診時脳実質病変 上矢状洞閉塞例 A :症例 2 単純 CT,右頭頂葉皮質下に小出血. B :症例 3 MRI T2WI,右頭頂葉皮質に限局性に静脈梗塞(矢印部分). C :症例 4 単純 CT,左頭頂葉皮質下に小出血. D :症例 5 単純 CT,左前頭葉皮質下に小出血. E :症例 6 単純 CT,左頭頂葉皮質下に小出血. 横静脈洞閉塞例 F :症例 7 MRI T2WI,右側頭葉に広範囲に静脈梗塞. 直静脈洞閉塞例 G:症例 10 MRI T2WI,両側基底核,右視床を中心に静脈梗塞. Table 2 初診時画像所見 閉塞静脈洞 脳実質病変 病変分布 閉塞静脈洞の画像所見
CT T1WI T2WI T2*WI DWI
症例 1 上矢状洞 なし - DCS(+) 等信号 低-等信号 一部低信号 一部高信号 症例 2 上矢状洞 脳出血 頭頂葉皮質下 DCS(+) 等信号 低-等信号 低信号 一部高信号 症例 3 上矢状洞 静脈梗塞 頭頂葉皮質下 DCS(−) 等-高信号 低信号 低信号 一部高信号 症例 4 上矢状洞 脳出血 頭頂葉皮質下 DCS(−) 等-高信号 低-等信号 一部低信号 一部高信号 症例 5 上矢状洞 脳出血 前頭葉皮質下 DCS(−) 等信号 低信号 低信号 無信号 症例 6 上矢状洞 脳出血 頭頂葉, DCS(+) 等信号 低信号 低信号 一部高信号 (多発) 後頭葉皮質下 症例 7 横静脈洞 なし - DCS(+) 高信号 等-高信号 一部低信号 高信号 症例 8 横静脈洞 静脈梗塞 側頭葉- DCS(−) 等信号 低-等信号 一部低信号 無信号 後頭葉広範 症例 9 横静脈洞 なし - DCS(−) 高信号 高信号 信号変化なし 無信号 症例 10 直静脈洞 静脈梗塞 両側基底核, DCS(+) 等信号 低信号 低信号 無信号 視床 DCS; dense clot sign
栓症の診断時点で抗凝固薬の持続点滴(ヘパリン 9 例,アルガトロバン 1 例)を開始した.10 例中 6 例 (初診時脳実質病変:脳出血 1 例,静脈梗塞 3 例,な し 2 例)では,入院後神経症状の悪化,画像上の脳実 質病変の増悪を認めなかったが,4 例では,神経症状 の増悪を伴う脳実質病変の増悪を認めた.4 例中 3 例 が初診時脳実質病変として脳出血を認める例であ り,脳出血の増悪,再発を認めた.残りの 1 例は初診 時脳実質病変を認めなかったが,経過中に静脈梗塞を 認めた.最終的には全例が血管内治療などの追加治療 は行わず,抗凝固療法の継続にて病態の終息を認めた が,脳出血再発例では抗凝固療法の一時中止,再開な どを適宜行わざるを得なかった.退院時転帰は 10 例 中 8 例で modified Rankin Scale(mRS)0~1 であり,転 帰良好な例が多かった.退院時までに閉塞静脈洞の再 開通を確認できた例(部分再開通含む)は 10 例中 7 例 であった.再開通の程度と臨床転帰は必ずしも相関し なかった.退院後少なくとも 6 カ月間抗凝固療法とし てワルファリンを継続しているが,いずれの症例も再 発を認めなかった. 考 察 本検討での脳静脈血栓症自験 10 例の臨床像は,比 較的軽症例が多く,少数例の検討ではあるものの, ヨーロッパ,南米を中心とした約 600 例の脳静脈血栓 症の前向き登録研究である ISCVT と比較しても,退 院時転帰が良好な例が多かった(退院時 mRS 0~1:本 検討 80% vs ISCVT 65.7%)1).原因疾患に関しては, ISCVTでは経口避妊薬 33.2%,先天性凝固異常症 22.4%と両者で半数以上を占めていたが,全例に凝固 異常に関する系統的検査を行ったにもかかわらず,先 天性凝固異常症は 10 例中 1 例しか認めず,経口避妊 薬が原因となる例もなかった.脳静脈血栓症の文献 133件から原因疾患をまとめた報告では,ヨーロッ パ,北米では血液凝固異常症が最も多い原因であった のに対し,アジアでは炎症性腸疾患が 23.3%と最も多 く,原因疾患の地域差を指摘している3).欧米人と日 本人では,遺伝的背景による先天性凝固異常症の差異 や環境因子,ライフスタイルの違いに基づき,脳静脈 血栓症においてもその原因背景疾患の特徴に相違があ る可能性が示唆された. 脳静脈血栓症は多様な臨床症状と画像所見のた め,鑑別疾患として念頭におかなければ,診断に難渋 することが多い.MRV,造影 CT,脳血管造影検査 は,静脈洞閉塞の診断に有用な検査であるが,脳静脈 血栓症を疑わなければ実施されない検査である.本検 討では通常の頭部 CT,MRI での急性期脳静脈血栓症 の閉塞静脈洞の画像的特徴を詳細に検討した.頭部単 Fig. 2 初診時 T2*WIでの閉塞静脈洞所見(T2*WIで低信号化を認めなかった症例 9 は除く) A:正常静脈洞.上矢状洞の低信号化を認めない. B~G:上矢状洞閉塞例(症例 1~6).上矢状洞の低信号化を認める.一部の症例では皮質静脈の低信号化も認める. H,I:横静脈洞閉塞例(症例 7,8).横静脈洞の低信号化を認める(矢頭部分). J:直静脈洞閉塞例(症例 10).直静脈洞の低信号化を認める.
Fig. 3 症例 1(上矢状洞閉塞)の画像所見
第 1 病日画像所見(A~E):頭部単純 CT(A)では,上矢状洞に一致して高吸収域を認める(dens clot sign).頭部 MRI で
は上矢状洞は T1WI(B)で脳実質と等信号,DWI(C)で一部高信号,T2*WIにて低信号で強調された.MRV(E)では, 上矢状洞がほぼ全域にわたって描出されない. 第 22 病日画像所見(F,G):T2*WI(F)では第 1 病日にみられた上矢状洞の低信号は認めず,MRV(G)にて上矢状洞の 描出の改善を認める. Table 3 臨床経過,治療,転帰 主要閉塞 静脈洞 脳実質病変(入院時) 治療 臨床経過 再開通の有無閉塞静脈洞 退院時mRS 症例 1 上矢状洞 なし アルガトロバン Day5:右頭頂葉に静脈梗塞,左下肢麻痺, Day7左上下肢部分けいれん その後悪化なく改善 再開通 0 症例 2 上矢状洞 脳出血 (右頭頂葉)ヘパリン +人工妊娠中絶 Day14:右頭頂葉出血,浮腫増大し,ヘパリン中止.その後 1 週間脳浮腫増悪し, ヘパリン再開後脳浮腫は徐々に改善 再開通 1 症例 3 上矢状洞 静脈梗塞 (右頭頂葉)ヘパリン 症状,画像の悪化なし 部分再開通 0 症例 4 上矢状洞 脳出血 (左頭頂葉)ヘパリン 症状,画像の悪化なし 部分再開通 0 症例 5 上矢状洞 脳出血 (左前頭葉)ヘパリン Day5:右前頭葉に新たな小出血.ヘパリンを 1 日中止後,再開し,その後悪化な く改善 部分再開通 1 症例 6 上矢状洞 脳出血 (右頭頂葉, 後頭葉) ヘパリン Day1:右頭頂葉出血増大,左頭頂葉に新た に出血.Day6 まで出血増大,四肢麻痺悪化 (経過中ヘパリン中止,再開を繰り返した.) 閉塞 4 症例 7 横静脈洞 なし ヘパリン 症状,画像の悪化なし 閉塞 0 症例 8 横静脈洞 静脈梗塞 ヘパリン 症状,画像の悪化なし (高次機能障害,左片麻痺残存) 再開通 3 * 症例 9 横静脈洞 なし ヘパリン 症状,画像の悪化なし 閉塞 0 症例 10 直静脈洞 静脈梗塞 ヘパリン 症状,画像の悪化なし 再開通 1 *発症前 mRS 2
純 CT で閉塞静脈洞が高吸収域を示す dense clot sign は 10 例中 5 例に認めた.Dense clot sign は,脳静脈血 栓症における感度は約 3 割と低く,脱水やヘマトク リット高値でも同様の所見を呈することから特異度も 低いが4),本所見を認めた場合には,頭部 MRI などで さらに精査をすすめるきっかけとなると考えられ る.MRI に関しては,T1WI,T2WI での閉塞静脈洞 の高信号化が診断に有用な所見とされてきたが,これ らの所見は発症後 1 週間を超えてから出現し,それよ り早期では閉塞静脈洞は T1WI 等信号,T2WI 低信号 を呈することが多く,正常の静脈洞との鑑別が難しい とされる4–6).本検討でも T1WI または T2WI にて初診 時に閉塞静脈が高信号を示したのは 4 例のみで,脳静 脈血栓症早期診断のための画像シークエンスとしての 限界が示された. 近年急性期脳静脈血栓症における MRI T2*強調画 像の有用性が報告されている7, 8).静脈洞内に停滞し た deoxyhemoglobin の磁化率効果により,発症早期か ら閉塞静脈洞が低信号で強調される.急性期脳静脈血 栓症の感度は 90%とする報告8)もあり,T1WI/T2WI での信号変化に乏しい発症 1 週間以内の急性期例の診 断で特に有用である.2011 年に発表された AHA の脳 静脈血栓症に関する statement でも,診断のアルゴリ ズムにおいて,T2*WIが重要視されている2).今回の 検討でも 10 例中 9 例において,閉塞静脈洞が T2*WI にて低信号に強調された.この 9 例のうち 6 例では通 常の T1WI,T2WI での閉塞静脈洞の信号変化は軽微 であり,T2*WIの有用性が再確認された.また本検 討では閉塞静脈洞の一部が DWI にて高信号を呈する 例を 10 例中 6 例認めた.DWI での閉塞静脈高信号 は,発症から時間経過のたった症例に多く認め,再開 通しない予測因子として報告され9),急性期脳静脈血 栓症の診断的意義はこれまで強調されてこなかっ た.しかし閉塞静脈洞の閉塞時期には同じ静脈洞でも 部位により差があり,急性期例においても比較的古い 血栓が DWI で高信号を呈することは多い.DWI での 脳実質外の高信号は注目されやすく,静脈洞閉塞の所 見の解読に際して留意すべきと考えられた.脳静脈血 栓症の脳実質病変に関しては,多岐にわたり,非特異 的であるが,本検討でみられた血管性浮腫の特徴をも ついわゆる静脈梗塞や皮質下の小出血,融合性出 血,多発出血なども脳静脈血栓症診断の手掛かりとな りうると考えられる. 以上のように頭部単純 CT,頭部 MRI における脳静 脈血栓症の画像所見の特徴に精通していれば,頭痛や 軽微な神経症状を呈する例でも,その早期診断は比較 的容易である.後方視的ではあるが本検討におい て,軽症で転帰良好例が多かったのは,T2*WIを含 む頭部 MRI にて脳静脈血栓症が早期診断できたこと が一因であったと考えられる. 脳静脈血栓症の急性期治療に関しては,国内外のガ イドラインでは脳出血の有無にかかわらず,ヘパリン による抗凝固療法が推奨されている2, 10, 11).自験 10 例 においても,脳静脈血栓症の診断時点で全例抗凝固療 法を開始し,8 例で良好な転帰を得た.しかしなが ら,治療開始時に脳出血を認めた 4 例のうち 3 例で は,経過中に脳出血の再発,増悪を認めた.これまで の報告では脳出血例での抗凝固療法下での出血増悪は 少ないとされてきたが12–14),脳静脈血栓症における抗 凝固療法の多数例での検討自体が少なく,実際には本 検討のように脳出血例では,抗凝固療法下で治療に難 渋する例が少なからず存在すると考えられる.脳静脈 血栓症での脳出血は静脈うっ滞に起因するため,静脈 閉塞のさらなる進展予防,閉塞静脈の再開通を目的と した抗凝固療法は理にかなった治療であるが,脳出血 例におけるヘパリンの用量(APTT を基準値の 1.5~2 倍を目標に用量調整を行うか否か),脳出血の再発・ 増悪を認めた場合のヘパリン再開のタイミングなどに ついては,明確な指針は示されておらず,リスクとベ ネフィットの観点から治療方針を検討する必要がある と考えられた. 当院での脳静脈血栓症連続 10 症例の臨床像を検討 した.比較的軽症で予後良好な例が多かったが,頭部 MRI(特に T2*WI)による早期診断が少なからず影響 していると考えられた.従来稀とされてきた脳静脈血 栓症であるが,MRI 診療が普及している我が国にお いては,特に発症早期の軽症の段階で診断される症例 が増加していると推測される.本邦での脳静脈血栓症 に関する多数例のデータは皆無に等しく,日常臨床に おける脳静脈血栓症の原因基礎疾患,治療状況,臨床 転帰に関しては明らかになっていない.本邦における 脳静脈血栓症の実態を明らかにする多数例での登録研 究が必要と考えられる. 謝 辞 本研究は,JSPS 科研費 24791521 の助成を受けたもので ある.
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Abstract
Clinical and radiological features in 10 cases of cerebral venous thrombosis
Tomoyuki Ohara, M.D.,
1)Yasumasa Yamamoto, M.D., Ph.D.,
1)Eijiro Tanaka, M.D.,
1)Jun Fujinami, M.D.,
1)Fukiko Morii, M.D.,
1)Ryotaro Ishii, M.D.,
1)Takashi Koizumi, M.D.,
1)and Yoshinari Nagakane, M.D., Ph.D.
1)1)Department of Neurology, Kyoto Second Red Cross Hospital
Background and Purpose: Cerebral venous thrombosis is more common than previously thought now that the use of neuroimaging is more widespread. The purpose of our study was to elucidate clinical and radiological features of patients with CVT admitted in our hospital.
Methods: We reviewed consecutive 10 CVT cases (5 females and 5 males with a mean age of 49 years) admitted to our hospital from April 2008 to March 2011.
Results: On admission, 7 patients had focal neurological deficits (mild motor paresis in 5) and the other 3 patients had isolated headache. Four patients presented with seizures on admission. CT/MRI on admission showed intracranial hemorrhages in 4 patients, venous infarct in 3 and no parenchymal lesion in 3. Initial MRI T2* weighted
images in 9 cases revealed hypointense signals and enlargement of thrombosed vessels. All patients received antico-agulant therapy and 8 patients among them showed good functional outcome (modified Rankin Scale 0–1) at dis-charge.
Conclusion: Most CVT cases in our series presented with mild symptoms and had good functional outcome at discharge. Applying neuroimaging, especially using T2* sequences, may help early diagnosis of CVT.
Key words: cerebral venous thrombosis, T2* weighted image, magnetic resonance imaging,
anticoagulant therapy, outcome