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新年のごあいさつ 全国酪農業協同組合連合会購買部長 梅岡正人 全国の酪農家並びに会員役職員の皆様 あけましておめで とうございます 日頃より弊会購買 畜産事業に特段のご理解 ご支援を賜り厚くお礼申し上げます 平成 27 年の年頭にあたりまして 一言ご挨拶申し上げます 昨年の酪農環境は 畜産統計から見

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カウ・ベル 全酪連購買事業情報紙

No.

134

2015 新年

酪農技術指導体制を強化しました

トピックス

DRY&FRESH SE ユーザー訪問 カレンダー連動企画 原料情勢/粗飼料情勢

新年のごあいさつ

購買部長 梅岡 正人

世界一受けたい酪農講座

ラリー・チェイス 技術顧問/村上 明弘 技術顧問

大場真人の技術レポート

泌乳牛の飼料設計における

理想のデンプン濃度

分析センターだより

飼料分析に迅速に

対応できることになりました

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 全国の酪農家並びに会員役職員の皆様、あけましておめで とうございます。  日頃より弊会購買・畜産事業に特段のご理解、ご支援を賜り 厚くお礼申し上げます。  平成27年の年頭にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。  昨年の酪農環境は、畜産統計から見るに平成26年2月現在 で飼養戸数18,600戸、乳牛頭数1,395千頭(2歳以上957,800 頭、2歳未満436,800頭)で平成25年からの1年間で飼養戸 数で800戸の減少、乳牛頭数で28,800頭の減少、(2歳以上 34,300頭の減少、2歳未満5,500頭の増加)と生産基盤が脆弱 化していることが数字としてもはっきり表れており、平成26年度 も同様な動きで進んでいたと理解しています。  また、生乳生産量は昨年11月までの段階で18か月連続で前 年割れをする状況で、バター、脱脂粉乳が不足となり、追加輸 入の形でバター1万トン、脱脂粉乳1万トンの輸入が実施されま した。それでも、量販店の棚からバターが消えたと大きく新聞、ネ ット上で騒がれました。  生産資材関連では、為替が大きく動いた1年でした。平成26 年1月為替は105円台で始まりましたが、平成26年11月に110円 を付けた段階から急激に円安が進み、12月には7年4か月ぶり の120円台となりました。輸入粗飼料が大幅値上げとなり、配合 飼料も、今月以降の価格値上げの大きな要因となっています。  平成27年度は、平成26年度の酪農環境を引き継いだ形で のスタートで大変厳しいものと考えます。  農業全般を見ると、方向性が定まらないTPP問題がありま す。年末の総選挙は自民党の圧勝で終わり、勢いのままTPP 問題が進展していく心配が大いにあります。日本農業を守る観 点より、日本酪農政治連盟等関連団体と一緒になって納得の いかない解決とならないよう活動を進めてまいります。  弊会、将来ビジョンの大命題でもあります「酪農生産基盤の 維持拡大」のため、様々な施策を考えています。  搾乳後継牛の確保のため、販売預託事業の受入頭数の拡 大を図るとともに、雌雄選別精液等を活用した支援策の検討、 また、酪農家自ら計画的に搾乳用後継牛を確保する意識を醸 成する活動を行ってまいります。  一例をあげますと「儲けるためにホルをつけよう!」と銘打っ た、雌雄選別精液と和牛ETをうまく利用して現状頭数を維持 する種付戦略シミュレーションや廃用牛1頭を減らすことでキャ ッシュ増を目指す更新率低減シミュレーションなど現場にあった 具体的なキャッシュフローを意識した酪農経営の参考になるべ き事柄をまとめたリーフレットを作成配布いたします。  酪農家経営管理支援システム(DMSシステム)は、一層の 利用・普及を進めるとともに、SaaS化等機能をより充実させるこ とで会員及び関連機関との連携を強化し、酪農家への支援を 効率的に行ってまいります。また、蓄積されたデータの活用に努 めます。  また、詳しくは同誌トピックス内で報告していますが、技術顧 問及び分析センターの充実を図ります。  技術顧問としては、新たに2名の著名な方と契約をすること を長年務められていました。もう一人は、ラリー・チェイス コーネ ル大学名誉教授です。両名とも長年に亘り、酪農現場の普及 活動に多大な貢献をされてきた方々です。両顧問の豊富な知 識と経験より、今後の日本の酪農生産基盤維持拡大には何が 必要なのかの提案を頂くとともに、会員・酪農家への指導力を 益々発揮してまいります。  分析センターは、米国の粗飼料分析機関であるDairy One 社の世界的なサテライト・ラボ・ネットワークの一員に加わり、 Dairy One社のNIR(近赤外分析)システムとオンラインでつ ながったNIR装置を用いて、Dairy One社と同じ条件で飼料 成分値を提供できる体制となりました。これにより飼料分析に迅 速に対応できることとなります。また、国内で利用が高まっている WCSも分析可能となりますので、成分のばらつきの多いWCS 成分を迅速に把握することで素早い飼料設計変更も可能とな ります。多方面からのご利用をお願いします。  飼料環境については、2014/15年度米国産トウモロコシは昨 年を超えて史上最高の生産量が見込まれています。シカゴ相場 は軟調に動くはずですが、投機筋が穀物相場に参入しており、 実需とは異なる動きとなっており、注視していく必要があります。  大豆は米国において豊作ながら、大豆粕は需要が強く高値 で動いています。  為替については、昨年来からの円安傾向が一層強くなって おります。  このような状況で1月以降の配合飼料価格は値上げの案内 となっておりますが、弊会グループ飼料工場においては、合理 化を図りコストダウンに努めると共に、安心・安全な飼料供給を 行う所存です。  輸入粗飼料は、米国の乳価が高い水準で推移しており、生 産意欲は非常に高いものがあります。そのため、米国酪農家の アルファルファベール購入意欲は強く、価格は高値推移となっ ています。また、数年前から米国市場に参入している中国から の買付数量は倍増しており、限られた市場の中では日本にとっ て脅威となっています。  そのような中、出来る限り良品で安価な粗飼料を手配すると ともに、高価な牧草から安価な牧草への代替へのご提案をし てまいります。  北米港湾労使争議も長期化の様相です。この新年号が発 刊される頃には解決されていることを望むだけですが、解決さ れたとしても受渡しが元に戻るには数か月かかりますので、それ までは厳しい受渡しとなります。皆様のご理解の中、早めのご 注文を頂くことで調整しながら受渡しするよう努めます。  輸入粗飼料の高騰より自給粗飼料の重要性、必要性が高 まっており、自給粗飼料生産基盤確保への取組みをしっかり行 っていきます。また、飼料用米、エコフィードの活用にも一層力を 入れてまいります。  推進活動につきましては、酪農現場に密着した指導購買を 一層強化してまいります。そのためには我々職員一同、一層の 研鑽を重ね皆様の負託に応えるようにスキルアップを図る決意 のもと、弊会将来ビジョンの柱である「全酪連は、会員と共に酪 農生産基盤の維持・拡大に最大限努め、魅力ある元気で豊か な酪農の創出を目指します。」に近づくよう頑張ってまいります。  最後に、酪農家並びに会員役職員の皆様のご健勝とご発 展、またこの一年のご多幸を祈念申し上げまして新年のご挨拶 全国酪農業協同組合連合会 購買部長 

梅岡 正人

新年

ごあいさつ

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平成27年1〜3月の牛用配合飼料の価格改定と原料情勢について

原料情勢

Feed Ingredients

1. 改定額(平成 26 年 10 〜 12 月期対比)    (1)牛用配合飼料 トン当たり 2,650 円 値上げ(全国全銘柄平均)    (2)牛用哺育飼料 トン当たり 28,000 円 値下げ(全国全銘柄平均)    ただし、改定額は地域別・品目別・銘柄別に異なります。 2. 適用期間 平成 27 年 1 月1日から平成 27 年 3 月 31 日までの出荷分 3. 安定基金 (一社)全国畜産配合飼料価格安定基金からの価格差補てん金の交付につきましては、 4月中下旬頃、新発動(輸入原料価格を指標とした)基準により決定されます。なお、発 動となった場合、交付日程は従来通りとなります。

▶▶主原料

 主原料である米国産トウモロコシは、12 月 10 日米国農務省の需給予想において 2014 年産 (新穀)の生産量は 156 億 6,800 万ブッシェル(3 億 9,717 万トン・前年比 105.99%)、単収は 173.4 ブッシェル / エーカー、総需要量 136 億 7,000 万ブッシェル(3 億 4,722 万トン)、期 末在庫 19 億 9,800 万ブッシェル(5,075 万トン)、在庫率 14.6% と発表されました。  産地では天候不安により収穫作業が遅れたことなどが要因となり、投機筋が穀物相場に参入し、 史上最高の生産量ながらシカゴ相場は強含みで推移しております。

▶▶副原料

 大豆粕については、米国産大豆が豊作の見込みでありますが、米国内の大豆粕需要が増加してい ること、南米等の産地における天候不安から価格は上昇しております。  糟糠類関連では、ふすま、グルテンフィードともに飼料需要の回復から需給は締まってきており、 相場は強含みの傾向です。

▶▶脱脂粉乳

 脱脂粉乳については、世界の主要産地で天候に恵まれたことから生乳生産量が良好で、またロシ アの禁輸措置、中国の在庫過多から需要は弱まっており、相場は軟調に推移しております。

▶▶海上運賃

 海上運賃については、年末需要で引き合いが強まっていますが、中国の経済成長の低迷による 船腹の余剰感や、原油相場の下落などから大きな変動は見られません。

▶▶外国為替

 為替相場は、我が国における追加金融緩和の決定、米国における利上げの可能性を背景に円安 ドル高基調で推移しております。 ──────────────────────────────────────────────  弊会が供給する牛用飼料(配合・哺育)について、下記のとおり価格を改定することといたしました のでご案内申し上げます。

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粗飼料情勢

▶▶外国為替(対米国ドル)の影響─ 7 年 4 ヶ月ぶりの 120 円台

 引続き、円安・米国ドル高の勢いが止まりません。12 / 4 にはニューヨーク外国為替市場で、翌 12 / 5 には東京外国為替市場で、約 7 年 4 ヶ月ぶりに 120 円/ドル台を記録しました。12 / 9 午前時点でも 120 円台となっており、このままの水準で推移すれば、12 月下旬以降に入船する輸入粗飼料の価格は、さら に値上がりすることとなります。  草種により異なりますが、 7 年 4 ヶ 月 前 の 120 円 台 (07 年 7 月 末 119.9 円 / ドル)のときよりも、産地価 格は 50-150 ドル/トンも、 現在の方が高く推移してい ます(同一グレード比)。産地 価格がドル建てで高いがゆ えに、今後も少しでも円安が 進むと円貨では大きな“値上 げ”となります。一部の草種 では、酪農向けには費用対効 果のある価格ではなくなっ ているものも見受けられる ため、他草種への移行や、グ レードを落として使用する ことも、ますます検討する必 要があると思われます。

▶▶北米コンテナ船情勢─西海岸港湾の混雑・堅調な海上運賃

 14 年 6 月末で失効となった後も、6 年ごとに更新されている米国西海岸港湾での労使協定は締結されない ままとなっています。雇用主 PMA(Pacific Marine Association: 船会社やターミナル運営者で構成される 使用者団体)と、労働組合 ILWU(International Longshore and warehouse Union: 西海岸各港の港湾労 働者で構成される労働組合)との交渉は引続き行われていますが、10 月末から ILWU により、主要港のなか で最北端に位置するシアトル/タコマ港で、スローワーク(荷役作業を故意に遅らせる)戦術が行われました。 これに対抗し、PMA 側も労働者に対して帰宅勧告を発令し、現地時間の 11 / 5 に同港での荷役作業が中断 されました。その後、すぐに荷役作業は再開されましたが、ターミナルの混雑解消には至っていません。さら には、このスローワークの余波や、同港を避けるために代わりに貨物が増えたことにより、オークランド港や、 主要港のなかで最南端に位置するロサンゼルス/ロングビーチ港にも影響が波及しており、デリバリーの乱 れが西海岸全域で続いています。3 週間以上の船積み遅延も大量に発生しており、深刻な事態が続いています。 中断と再開を繰り返している労使交渉も、12 / 1 より再び開始されている模様ですが、締結には未だに至ら ず、今後はクリスマス休暇などもあるため、状況次第では交渉が越年となる可能性も出てきています。また、労 働者(ILWU)側がストライキをしているわけでも、使用者(PMA)側がロックアウト(労働者に対しての職場 封鎖)をしているわけでもなく、使用者側は「労働者側がスローワークをしているせいだ」と説明しているの に対して、労働者側も「それ以前に、ターミナル自体がもともと混雑していて、まともに機能していなかった せいだ」と話しており、泥仕合の様相を呈しています。完全にストップをしているわけではありませんが、日々 の荷役作業も、通常通りの仕事量は捌ききれていないため、玉突きのように、船積みが次から次へと遅れてき ているのが現状です。早急な労使交渉の決着と、デリバリーの回復を願うばかりですが、今後も動向について は、細心の注意が必要です。  海上運賃については、原油価格の弱含みも影響して、北米のコンテナ船航路では 1-3 月分の BAF(Bunker Adjustment Factor 燃料費調整係数 : 燃料価格変動に対して調整される割増運賃)は、$84 /コンテナの値 下げが案内されていますが、12-1 月にかけて、他に様々な負担増の案内が来ています。 外国為替 円/米国ドル(各月末営業日レート・14年12月は12月5日時点) 75 80 85 90 95 100 105 110 115 120 125 2011年 2012年 2013年 2014年 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11

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HAY Business

平成26年12月10日

 まず、GRI(General Rate Increase: 基礎レート)について、これまで海上運賃は底辺にあると言われて いましたが、どの船会社もコンテナ部門の採算悪化が続いていることから、大半の船会社で、12 / 1 付で $100 /コンテナの値上げが実施されています。

 また、IMO(International Maritime Organization 国際海事機関 : 国際連合の専門機関の一つ)が設けた 硫黄酸化物の排出規制(マルポール条約付属書)では、指定海域内で使用される燃油に含まれる硫黄濃度を、 15 年 1 月以降は規制が強化されて現在の 1.0% 以下から、0.1% 以下にすることが義務付けられています。 それにともない、従来の燃油よりも低硫黄で環境に良い反面、価格が高い燃油(マリンガス・オイル)への切 替えが必要となります。そのため、各船会社から 1 / 1 付でロー・サルファ―・サーチャージ(Low Sulfur Fuel Surcharge: 低硫黄燃油サーチャージ)と呼ばれるチャージの導入が発表されています。1 月から積む 分より、$47 /コンテナの負担増となります。  さらに、西海岸港湾の混雑を受けて、一部の船会社から 12 / 21 付でポート・コンジェスチョン・チャージ (Port Congestion Charge: 港湾混雑チャージ)と呼ばれる特殊チャージの導入が発表されています。この チャージは、概ね $1,000 /コンテナと非常に高く、導入に対しては強い警戒感が広まっていますが、前述の 通り、港湾の混雑は解消されておらず、実施される可能性が高いのも現状です。  以上のように、-$84(BAF)+$100(GRI)+$47(低硫黄燃油サーチャージ)+$1,000(港湾混雑チャージ) と単純に計算すると、今月から来月にかけて、船会社によっては最大で $1,063 /コンテナも値上がりするこ ととなります。$1,000 前後のコスト増となると、コンテナで輸送される北米産乾牧草・ヘイキューブ等は、 為替円安による値上げとは別に、120 円/ドル換算で 6,000-6,500 円/トンもさらに値上がりをすること となります。  西海岸港湾の混雑から始まっている船積みの乱れの影響で、荷動きにタイト感が増していますが、日本側で “パニック買い”のように引合いが強くなればなるほど、これらのチャージは、価格が高く、期間が長く、掛か ることとなります。通常時と同様に、冷静かつ適正な買付けやデリバリーに徹することが、肝要であると思わ れます。

▶▶ビートパルプ

《米国産》   14 年産のビート大根の収穫は 9 月上旬より開始し、各地で製糖作業が続いています。ビートパルプの輸出 向けの主産地であるミネソタ州とノースダコタ州では、春先に冷涼な気候が続いたため、過去 10 年で最も悪 い作柄であるとも言われています。単収は例年よりも少なく、ビートパルプの生産量は、前年対比 10% 前後 の減少となることが見込まれています。  産地ではシェールガスの輸送が優先されているため、慢性的な貨車の不足が発生していると伝えられてい ます。穀類やビートパルプの西海岸への貨車輸送にも影響が出始めている模様で、今後の動向には注意が必要 です。

▶▶アルファルファ

 北米西海岸の各産地では、アルファルファの収穫がほぼ終了しています。米国乳価が史上最高値の水準で推移 したことや、カリフォルニア州を中心とした大旱魃(干ばつ)の影響で、米国内の酪農向けや肥育向けからの引 合いが急増したことから、14 年 産の米国産アルファルファは、 産地価格が高騰してシーズンが スタートしました。特に全米一 の酪農生産地帯を有する北カリ フォルニアでは、1 番刈は輸出 向けが手を出せないほど産地価 格が暴騰しましたが、米国内向 けに難なく出荷されていきまし た。その後は、どの産地の番手で も、雨当たり被害が多く発生し (左)ワシントン産3番刈検品スタック 10/22撮影 (右)オレゴン州クラマスフォールズ産2番刈検品スタック 10/27撮影

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ました。アルファルファの生産量は増えていると見込まれていますが、良品は西海岸全体で不足している結果と なっています。  米国内は酪農向け、肥育向けともに引続き引合いが強く、輸出向けも強いままで推移しています。UAE や中 国向けだけではなく、韓国向けも荷動きは順調であると言われています。西海岸全体のアルファルファの生産 量のうち、3% 未満(輸出向け約 11% のうちの約 25%)しか出荷されていない日本向けの意向は届きにくく、 全体の需給のバランスから考えて、今後も 14 年産アルファルファの産地価格が極端に下がることはないと考 えられています。15 年産は作付面積が増える見込みで、トウモロコシなどの穀類の相場価格は軟化傾向にあ るため、アルファルファの産地価格も軟化することが期待されますが、米国乳価や、牛肉の相場価格、旱魃の状 況次第では、軟化することなく推移する可能性もあります。今後の動向には、注意が必要です。

▶▶チモシー

《米国産》  主産地のコロンビアベースンとエレンズバーグでは、14 年産の収穫が既に終了しています。1 番刈の産地 価格は、13 年産に比べて軟化傾向にはありますが、期待されたほどの値下げには至らず、同じく作柄が良かっ た 3 年前よりも高値で推移しています。韓国向けでハイグレード品の引合いが多いと言われており、またカナ ダ産の作柄が 14 年産でも芳しくないことから、米国産チモシーの産地価格は、これ以上は軟化することもな く、堅調に推移することが予想されています。 《カナダ産》  14 年産の収穫は、既に終了しています。レスブリッジ(アルバータ州南部・灌漑地域)では、1 番刈は収穫期 の天候に恵まれず、大半が中間グレード品以下の品質となっています。クレモナ(アルバータ州中央部・非灌 漑地域(ドライランド))でも、8 月上旬から天候が安定せず、レスブリッジよりも作柄は悪く、過去最悪に近 いほど深刻な状況となっており、輸出不適格な酷い雨当たり品も多く発生している模様です。  両産地とも米国産と同様に、1 番刈の産地価格は 13 年産に比べて軟化傾向にありますが、作柄が悪いた め、徐々に高くなりつつあるのが現状です。品質についても、14 年産では米国産より芳しくない傾向にあり ます。

▶▶スーダングラス

《インペリアルバレー産》  2 回の収穫が可能な早播きが増えていることから、14 年産スーダングラス全体の生産量は、昨年よりも増 加している見込みです。早播きの 1 番刈の品質は、今年は揃っている傾向にあり、過去 3-4 年で最高の作柄で あったとも言われていますが、急激な為替円安の影響を受けて、日本向けのハイグレード品の荷動きが徐々に 鈍化をし始めており、需要が中間グレード品に移行を始めているとも伝えられています。  2 年以上にわたって低迷していたデュラム小麦の相場価格ですが、9 月より値上がりが始まり、現在も堅調 に推移しています。今後のデュラム小麦の相場価格によっては、15 年産の早播きスーダングラスの作付面積 は減少することが、早くも懸念されています。

▶▶クレイングラス

(クレインは全酪連の登録商標です)  インペリアルバレーでの 14 年産の作付面積について、11 / 15 時点でのエーカレッジレポートによると、 前年対比 94% の 16,413 エーカーとなっています。  産地価格について、韓国向け、日本向けともに引合いが強くなっているため、軟化せずに引続き堅調に推移 していると伝えられています。それでも、クレイングラスは禾本科牧草の中では相対的に割安感があるため、 他草種から切り替えて使用することも有益であると思われます。既に、日本の 14 年 1-11 月の輸入数量は、 前年同期比でチモシー(米国産・カナダ産合計)が 77%、スーダングラスが 98% と減少する中、クレイング ラスは 110% と増加して推移しています。

▶▶ストロー類(フェスキュー・ライグラス)

 14 年産の米国産(主にオレゴン産)ストロー類について、トールフェスク、ペレニアルライグラスともに、 既に収穫が終了していますが、どちらも深刻な雨当たり被害が発生しています。韓国向け、日本向けともに引

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HAY Business

合いが弱かったため、需要が減退しているとも伝えられていましたが、徐々に回復しているとも言われてい ます。14 年産では供給力の不足の懸念もあるため、今後の産地価格は堅調に推移することが予想されてい ます。

▶▶豪州産オーツヘイ

《西豪州産》  9 月下旬から降雨が続いたため、雨当たり被害が多く発生しています。雨当たり被害を免れた圃場のスタッ クも、刈遅れ品となっているため、中間グレード品以下の発生が中心となっている模様です。ハイグレード品 の発生は、収穫されたオーツヘイのうち、5% 程度と限定的な見込みです。また、安定的な収益が見込める小麦 やキャノーラ(菜種)の作付けが増えていることから、オーツヘイの作付面積は、減少していることが予想され ています。 《南豪州産》  収穫時期に降雨がありました が、被害は最小限に留まってい ると言われています。収穫され たオーツヘイのうち、40% 程 度がハイグレード品となってい る模様です。 《東豪州(ヴィクトリア州)産》  収穫中は天候に恵まれたた め、収穫されたオーツヘイのう ち、70% 程度がハイグレード 品となっている模様です。この 地域では 8 月の降雨量が少な く、旱魃傾向で、放牧用の牧草 の生育にも影響が出始めている ことから、14 年産オーツヘイ に対しては、国内向けの引合い が強くなることが予想されてい ます。 《西豪州産》  9 月下旬から降雨が続いたため、雨当たり被害が多く発生しています。雨当たり被害を免れた圃場のスタッ クも、刈遅れ品となっているため、中間グレード品以下の発生が中心となっている模様です。ハイグレード品 の発生は、収穫されたオーツヘイのうち、5% 程度と限定的な見込みです。また、安定的な収益が見込める小麦 やキャノーラ(菜種)の作付けが増えていることから、オーツヘイの作付面積は、減少していることが予想され ています。  14 年産オーツヘイは、どの産地も収穫が 11 月までに終了しています。  西豪州産はハイグレード品の発生が非常に少なく、中間グレード品や雨あたりのローグレード品が多いの に対して、南豪州産はハイグレード品と中間グレード品、東豪州(ヴィクトリア州)産はハイグレード品の割合 が多く、ローグレード品はどちらも非常に少なく、両極端な作柄となっています。産地価格については、小麦や キャノーラ(菜種)の相場価格も高くなっていることや、日本向けや韓国向けのみならず、中国向けにも中間グ レード品からローグレード品の引合いが強いことから、強含みで推移している模様です。特に、13 年産では発 生量が多く、弱含みで推移していた中間グレード品からローグレード品の価格ほど、強含みで推移しているの が現状です。  また、13 年産と同様に、南豪州と東豪州(ヴィクトリア州)では、今年も見た目が良い中間グレード品が多 くあると言われています。見た目が良いことを受けて、サプライヤーや輸入業者によっては、分析値があまり 良くないスタックでもハイグレード品として売ろうとする可能性もあります。その場合、嗜好性不良のクレー ムが発生する可能性もあるため、買付け時には注意が必要です。 南豪州産オーツヘイ (左)ハイグレード品スタック (右)中間グレード品スタック 12/9撮影 東豪州(ヴィクトリア州)産オーツヘイ (左)(右)ともにハイグレード品スタック 12/8撮影

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分析センター

だより

 この度、全酪連分析センターは米国の粗飼料分析機関である Dairy One の世界的なサテライト・ラボ・ネットワークの一員に

加わり、 Dairy One の NIR (近赤外分析) システムとオンラインで繋がった NIR 装置を用いて、Dairy One と同じ条件で飼料成分値を提供できる体制になりました。  最短ではサンプル到着後、翌営業日に結果を報告することができます。  近年、CNCPS モデルに基づいた飼料設計ソフトの進化により、従来よりも多くの飼料成分の分析値 が要求されるようになり、化学分析で成分値を得ようとすると時間もコストも増大してしまいます。  科学分析だけではなく、ルーメン微生物による in vitro の消化率や消化速度のパラメータも必要と されており、通常の飼料分析センターでは十分な対応が困難です。CNCPS モデルは留まることなく改 良が加えられ、Ver.6.5 への改定では、絶対に消化されない NDF のパラメータとして 240 時間 in vitro 培養後の NDF(uNDF240h)も要求されています。  NIR 分析は化学分析値と近赤外線の吸光度(スペクトル)との相関関係の解析により導き出したキ ャリブレーションと呼ばれる回帰式を使用して、近赤外線でスキャンするだけで瞬時に多数の項目の 成分値を得ることができる方法で、安価に多成分の分析をすることができます。しかし、キャリブレー ションを作成するには膨大な数の化学分析値とそれらのスペクトルが必要です。Dairy One では数千 サンプルもの飼料の化学分析や in vitro 分析のデータを基に精度の高いキャリブレーションを作成し ており、弊センターはこれを用いて飼料成分の NIR 分析をすることができます。  これにより、NIR 分析可能なサンプルであれば、図のように、サンプルを飼料分析申込書と共に弊セ ンターに送付するだけで、米国の Dairy One に送るよりも早く Dairy One と同様の分析結果を受け取 ることができるようになりました。日本国内での分析ですので、航空危険物扱いで輸送を拒否され届 かなくなることや煩雑な輸出手続も不要です。  そして、Dairy One が新しい項目のキャリブレーションを追加したり、より精度の高いものに改定 した場合は、直ちにアッ プデートされ、それらを 使 う こ と が で き る の で す。Dairy One では現在、 uNDF240h への対応を進 めているところです。キ ャリブレーションがリリ ースされ次第、分析値を 出すことができるように なります。

飼料分析に迅速に対応できることになりました

スピード&パワーアップ

全酪連でNIR分析する場合 日本からDairyOneに送る場合

1

日目 サンプル到着➡受付➡乾燥(一夜)

2

日目 粉砕➡輸出書類作成➡EMS便発送

3

日目 東京国際郵便局到着➡発送

4

日目 航空輸送

5

日目 US 国際交換局到着➡発送

6

日目 DairyOne到着➡受付

7

日目 分析➡分析結果報告

1

日目 サンプル到着➡受付➡乾燥(一夜)

2

日目 粉砕➡分析➡分析結果報告 最短の場合、 海外に出すより

5

日早く結果が出る! ※サンプル到着日及び検体内容によって報告が  遅れることがあります。

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▶NIR分析ができる主なサンプル  どんな種類のサンプルでも NIR 分析ができるかというと、残念ながらそうではありません。  しかし Dairy One のシステムでは、牧草サイレージや乾草・生草、コーンサイレージ等の粗飼料、ト ウモロコシや麦等の穀類、TMR、加熱大豆など多岐にわたっており、自給飼料や輸入粗飼料のほとん どをカバーしています。  日本特有の粗飼料である稲ホールクロップサイレージでさえも Dairy One が会員の皆様のために 特別に NIR キャリブレーションを作成しており、対応可能となっています。  これまで広く普及してきた CPM Dairy(飼料設計ソフト)の後継版として、優れた飼料設 計モデルとして知られる CNCPS(コーネルシステム)の改訂に伴い、新たな飼料設計ソフト (AMTS・NDS)が普及し始めています。それに先立って、弊会としても AMTS 並びに NDS の操作トレーニングを実施し、多くの技術指導者の方々にも参加して頂いています。最新の 栄養学に基づく飼料設計 を酪農生産現場に応用す べく情報共有の場とし て、今後も積極的に開催 していく予定です。 分析結果レポート様式(サンプル)  NIR 分析の結果は PDF の報告書だけでなく、XML 形式及び Excell 形式のファイルも併せて提供いたします。XML 形式のファイルは、最 新の飼料設計ソフトである AMTS や NDS のフィードバンクにその ままインポートすることができるので、分析値を手入力する手間を省 くことができます。Excell 形式のファイルは過去のデータの比較など に役立つでしょう。 #119 Z-Small Grain-1 UDF1 text

Components As Sampled Basis Dry Matter Basis

SM GR GRAIN 485 Product Number: Product Description: Comment text Sample Description: Sample Number: 全国酪農業協同組合連合会 分析センター 314-0103 茨城県神栖市東深芝2-14 0299-90-1007 z-bunseki@zenrakuren.or.jp http://www.zenrakuren.or.jp/ UDF2 text UDF3 text UDF4 text UDF5 text Date % Moisture 12.07 % Dry Matter 87.93 % Crude Protein 8.56 9.73 % ADICP 1.84 2.10 Soluble Protein %CP 11 Degradable Protein %CP 22 % NDICP 2.13 2.42 % Acid Detergent Fiber 4.44 5.05 % Neutral Detegerent Fiber 7.66 8.71 % Lignin 1.59 1.80 % NFC 69.19 78.69 % Starch 66.59 75.74 % Fat 3.47 3.94 % Ash 1.18 1.34 % TDN 76 86 NEL, Mcal/Kg 1.78 2.03 NEM, Mcal/Kg 1.95 2.22 NEG, Mcal/Kg 1.35 1.53 % Calcium (Ca) 0.03 0.03 % Phosphorus (P) 0.26 0.30 % Magnesium (Mg) 0.12 0.13 % Potassium (K) 0.31 0.35 % Sulfur (S) 0.09 0.10 Horse DE, Mcal/Kg 3.41 3.88

Run: 2014/12/16 8:56:12 1 / 1

A Member of the Worldwide Network of Dairy One Labs

粗飼料 穀類 TMR 副原料 牧草サイレージ    (マメ科・イネ科・混播) 乾草(マメ科・イネ科・混播) 生草(マメ科・イネ科・混播) コーンサイレージ ソルガムサイレージ 稲ホールクロップサイレージ 大麦 ビール粕 コーン えん麦 小麦 マイロ 搾乳牛用TMR 乾乳牛用TMR 肥育牛用TMR 配合飼料 ビートパルプ 大豆 大豆皮 ナタネ油粕 コーンジャームミール コーングルテンフィード NDS集中トレーニング (2014.8十勝農協連にて) (2014.2 トーマス・タルトゥキー 博士)AMTS集中トレーニング 詳細はお問い合わせください

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分析センター

だより

全国酪農業協同組合連合会(全酪連) 

購買部 分析センター 〒 314-0103 茨城県神栖市東深芝 2-14 TEL:0299-90-1007 FAX:0299-93-5007 送付先・お問い合わせ先  また、分析可項目はサンプルの種 類により異なりますが、粗飼料では 蛋白窒素分画や繊維分画の他に in vitro の DM や NDF の消化率が、コ ーンサイレージやコーンではデンプ ンの消化率の推定が可能です。  NIR 分析であっても、水分(DM) は加熱乾燥法による分析値を、ミネ ラルについては無機物分析に適した 方法である蛍光 X 線分析(XRF)法 による分析値を報告書に記載しま す。XRF 法によるミネラル値と化 学分析値との高い相関性については Dairy One だけでなく、ラリー・E・ チェイス博士やトーマス・タルトゥ キー博士も認めており、移行期牛の ミネラル設計にも十分使えるもので す。このように、日本に居ながらにし て Dairy One と同等の NIR 分析を 行うだけでなく、Dairy One の品質 に+αの充実を図っております。 分析項目 粗飼料 穀類 TMR 副原料 DM(乾物率) ○ ○ ○ ○ CP(粗蛋白質) ○ ○ ○ ○ 蛋白分画  SP(溶解性たん白質=SIP) ○ ○ ○ ○  RDP(ルーメン内分解性たん白質) ○ ○  ADICP(ADF結合たん白質) ○ ○  NDICP(NDF結合たん白質) ○ ○ 繊維分画  ADF ○ ○ ○ ○  NDF ○ ○ ○ ○  リグニン ○ ○ ○ 粗脂肪(Fat) ○ ○ ○ ○ 粗灰分(Ash) ○ ○ でんぷん ○ ○ ○ ○ WSC(可溶性糖) ○ ○ ESC(エタノール可溶性糖=単少糖類) ○ アンモニアCPE(アンモニアをCPに換算した当量) ○ 乳酸・酢酸・酪酸及びVFAスコア ○※1 in vitro消化率(IVTD 24・30・48時間) ○ NDF消化率(NDFD 24・30・48時間) ○ kd 単位時間あたりの繊維消化率 ○ でんぷん消化率(7時間・4mm粉砕) ○※2 ※3 ▶NIR分析項目 ▶サンプルの送付方法 以下の記載の他、NFC、TDN、NEI等の算出値も報告いたします。 送付いただくサンプルの量は以下の重量を超えないようにご注意ください。 ※1 サイレージのみ可(コーンサイレージは乳酸・酢酸・VFAスコア)   VFAスコアは乳酸発酵の評価値 ※2 コーンサイレージのみ可、※3コーンのみ可  新しい年を迎え、弊センターは会員の皆様の給与飼料分析の一層の充実とスピードアップを実現し ていきます。  なお、NIR 分析の追加により、飼料分析申込書を改定しておりますので、新しい申込書をお使いく ださい。 分類 サンプルの種類 重量 (袋の大きさの目安)体積 高水分サンプル 牧草サイレージ生草 コーンサイレージ 500g A4 中水分サンプル TMRなど 300g A4 低水分サンプル 乾草・ヘイレージ 100g A4 コアサンプル・粉砕サンプル A5 穀類・副原料 とうもろこし、大豆など 200g A6 ⑤ ④ ③ ② ① 飼料分析 申込書 1. 2. 3. 4. 5. 飼料サンプル 申込書を同梱 してください。 発送

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酪農技術指導体制

強化

しました

 この度、全酪連は、酪農生産現場における更なる指導体制の強化を図るため、久保園・成田技術顧問に 加え、新たに村上明弘氏,ラリー・チェイス博士の両名と技術顧問契約を交わしました(H26 年 10 月)。  両名とも、永年に亘り、酪農現場の普及活動に多大なる貢献をされてきた方々です。下記に紹介させて いただきます。 両顧問の豊富な知識と経験より、今後の日本の酪農生産基盤維持・拡大には何が必要なの かを提言していただくとともに、会員・酪農家への指導力を益々発揮して頂く所存です。計4名の技術顧問 体制により、現場で起こる様々な問題に対応できるよう、更なる現場対応の強化に向けた体制を構築して いきます。皆様のご理解・ご支援のほど宜しくお願い申し上げます。

ラリー・チェイス

技術顧問

村上 明弘

技術顧問

■ 略歴 1966 年 オハイオ州立大学・酪農学科卒 1969 年 ノースカロライナ州立大学 修士号取得 1975 年 ペンシルバニア州立大学 博士号取得 1975 年 コーネル大学・畜産学部助教授 1981 年 同 准教授   2004 年 同 教授 2011 年 全酪連 酪農セミナー講師 2012 年 コーネル大学 退職 同 名誉教授 ■ これまでの研究及び指導領域 酪農現場における技術普及事業を主体に、普及員・飼料業 界への乳牛栄養情報と訓練,コーネル大学栄養学会議長,飼 料設計プログラムの技術支援とトレーニング,ハイブリットコー ンサイレージの評価,トウモロコシ加工法による消化性への影 響,CNCPS/CPM Dairyの現場応用及び農場の窒素排 泄管理,世界14か国における講義・セミナーを実施 ■ 現在の学会活動 米国酪農学会・米国畜産学会・米国家畜プロフェッショ ナル科学者学会・米国獣医栄養学会の委員と講師 ■ 論文・記事執筆 酪農家向け普及文書 483,学術誌論文 57, 書籍執筆 11,学会論文 218,雑誌寄稿 75 ■ 本会における業務内容(予定) ●カウベルなどへの技術情報執筆 ●米国学会・業界情報の収集 ●弊会・会員職員向け教育研修 ●米国酪農視察案内と解説 ●全酪連 酪農セミナー講師 ■ 略歴 昭和 41 年 3 月 帯広畜産大学卒業    同年 4 月 北海道農業改良普及員 【普及活動を行ってきた地域】 別海・豊富・中札内・清里・根室・陸別・ 足寄・士幌・十勝清水 技術普及並びに全国の技術者要請に 尽力 農協の再建事業、牛群検定成績表の 改良に関わる 平成 16 年 4 月 十勝農協連(酪農アドバイザー契約) 全国各地での研修会、農業大学校での 講義など ■ 著書 「酪農を 100 倍面白くする“技術戦略”」 「酪農の特質と経営活性化の実技」 「激論・ザ・酪農」  その他、Dairy Japan 誌に掲載(1982 〜 2001 年) ■ 本会における業務内容(予定) ●カウベルなどへの技術情報執筆 ●技術指導・研究開発関連 ●弊会・会員職員向け教育研修 ●全国各地での現場指導及び講演会 COWBELL では「世界一受けたい酪農講座」と題し、酪農現場に役立つ情報をシリーズでお届け致します。 今号は、第1回目として、村上技術顧問・チェイス技術顧問の両名からの情報を掲載させていただきます。 トピックス

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 日本の酪農家の皆様、こんにちは! 私、ラリー・ チェイスは、全酪連より技術顧問として働くことを 依頼されました。 2014 年 10 月より全酪連の技術 顧問に就任したことを大変嬉しく思います。2014 年 9 月、私は 39 年間普及と研究を行ってきたコーネル 大学を退職しました。全酪連と一緒に働くことは、 継続的に酪農産業界で働く機会を私に与えてくれま した。私は過去に日本を何度も訪問し、講義を行い、 皆様のいくつかの農場を訪問する幸運にも恵まれま した。以下に、私のいくつかの経歴を要約しますが、 これにより、私が何者なのか、よりご理解いただけ るでしょう。  私の最初の酪農体験は、オハイオ州にあった祖父 の酪農場を手伝ったことでした。それは小さな農場 で、約 35 頭のホルスタインを搾乳し、農作業には馬 を使っていました。そこで過ごすことにより、私は 酪農産業に興味を持ち、継続的にかかわることにな りました。大学生の時、私はオハイオ州立大学酪農 学部の農業普及所で夏季の間働く機会を得ました。 私は幸運にも、当時のアメリカで傑出した乳牛栄養 士の一人であった H.R. コンラッド博士の下で働く 機会を得ました。私は数多くの粗飼料タイプ、品質、 乳生産と消化率に関連する研究試験に関与しまし た。約 2 年間、動物の消化試験を実施し、研究結果分 析の一部を担当しました。この経験の結果、コンラ ッド博士は私に乳牛栄養のキャリアを積むよう薦め ました。私は大学における研修と学位をオハイオ州 立大学、ノースカロライナ州立大学、ペンシルバニ ア州立大学において取得しました。その後、1975 年 に私はコーネル大学の乳牛栄養の助教授に任命さ れ、数多くの実用的な経験を積む機会を得ることが できました。  オハイオ州立大学在学中、私は大学の酪農場にお ける学生従業員の 一人でした。この牛舎は 120 頭の タイストール牛舎でした。フルタイムの労働者が居 なかったので、全ての作業は学生によって行われて いました。私は、朝の搾乳シフトの二人のうちの一 人でした。搾乳は朝 4 時に開始され、授業に参加で きるよう、7:30 に完了していました。ノースカロラ イナ州立大学では、私は 60 頭のジャージーの研究 用の牛群を管理しました。この牛群での研究の焦点 は、放牧および飼料設計におけるコーンサイレージ の評価でした。  コーネル大学では、大学の教員として、500 頭のホ ルスタイン牛群の栄養と管理に対する指導にかかわ っていました。これには飼料生産、粗飼料の管理、牛 群管理、雇用労働管理と栄養の助言などが含まれて いました。およそ 30 年にわたり、私はこの牛群の飼 料設計を行いました。これらの経験の全てが、私の 酪農場の管理に関与する実用的な側面の理解を深め てくれました。  私と日本の酪農業界との最初の接点は、1977 年に 伊藤紘一氏(当時アメリカ飼料穀物協会)が日本の 酪農業界の人々を連れてコーネル大学を訪問したこ とでした。私達は講義と農場訪問を含むショート・

世界一受けたい

酪農講座❶

ラリー・チェイス

技術顧問

日本の皆さん、

こんにちは

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コースを提供しました。1978 年、伊藤 氏は私を日本に招き、この訪日で私は 数多くの講義と酪農場訪問を行いまし た。これ以来、私は日本を頻繁に訪問 するようになりました。訪日の日程に は、常に講義と農場訪問が含まれてい ました。皆様の中には、那須と帯広で 4 日間ずつ実施された『デイリー・サ マースクール』をご記憶の方々もいる と思います。この時は、ネイザン・スミ ス博士、ジェリー・ジョーンズ博士と 私が講義を行いました。私の最近の日 本訪問は、2011 年 2 月の全酪連・酪農 セミナー・ツアーで、この時は日本全 国で講義と農場訪問を行いました。そ の翌月に起こった東日本大震災に私 は大きな衝撃を受け、とても心配しました。  コーネル大学における私の仕事の重点は、ニュー ヨーク州の酪農業界を生産性と収益性の面から支援 することでした(注:コーネル大学は多くの学部を 持つ私立大学ですが、農学系の学部は州立となって おり、普及事業はニューヨーク州内を対象としてい る)。これらの取り組みの一つは、乳牛のカウ・コン フォート、水の利用性などの飼養管理の重要性を強 調し続けることでした。粗飼料分析、粗飼料品質、飼 料設計、飼料給与管理は、適正な栄養プログラムに 重要で、ちょうど、ビルを建てる時にブロックを積 み重ねていくようなものです。二つ目の重要な要素 は、新しい概念や製品を実際の給与プログラムに反 映させることでした。酪農家が利用できる技術や飼 料原料には数多くの選択肢があり、そのいずれが農 場に適合するか選択することは、とても重要な仕事 でした。  私達コーネル大学のグループにとっては、農場の 飼料評価と設計のための CNCPS(コーネル・正味炭 水化物・蛋白質システム)の開発が主要な仕事でし た。これは 30 年以上にわたり、継続的に注力してき た仕事でした。この CNCPS モデルのバイオロジー (生物学)は、CPM Dairy などのプログラムで利用 されて、日本でも CPM Dairy は飼料設計の主役を 担ってきました。  近年、AMTS、NDS という 2 つのプログラムが 紹介されていますが、いずれのプログラムでも、最 新の CNCPS のバイオロジーが使われています。現 在のところ、CNCPS のバイオロジーは 20 か国以 上の国々で使われています。300 万頭以上の乳牛が CNCPS のバイオロジーを使用した飼料設計による 飼料給与を受けていることになります。  私の研究テーマは、酪農家からの質問や酪農場で 遭遇した問題に答えることを目的にデザインしてき ました。例えば、粗飼料品質やサイレージ管理、製造 副産物の給与時に問題となるリンの栄養(過剰を防 ぐ)、塩素の要求量などの分野について研究を行い ました。最近の研究課題では、粗飼料の割合を高め たり、粗蛋白%のより低い飼料に関するものがあり ました。現在、私は CNCPS モデルを飼料効率、飼料 給与管理、温室効果ガスと牛群管理の関係などの評 価に利用しています。  私は、これから全酪連と日本の酪農業界のために 働くことを楽しみにしています。日本の酪農家の飼 養管理に役立つ記事を全酪連の機関紙カウベルに執 筆することが私のこれからの仕事の一つです。日本 の酪農家の皆様にとって興味のある、または必要な 話題のリクエストを戴ければ、それに応えていきた く思います。そのような要望があれば、全酪連を介 して私まで届くことになっています。さらに、皆様 の農場を訪問し、セミナーや研修会などを実施する 計画があります。皆様にお目にかかる日をとても楽 しみにしております。 2011年2月 北海道にて

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世界一受けたい

酪農講座❷

 酪農業は凄い能力を農業界で発揮しています。未 来への潜在力も相当なものです。前途洋々たる可能 性に満ちています。今もこれからもその社会貢献度 は抜群です。でも、そんな産業を担っているんだ! という誇りを多くの方々は意識しているかなー? と感じます。前途多難だなー!的、そんな心情が多 数派でしょうか。  私はこの度、全酪連の技術顧問を受けました。年 齢を重ねた先の決断です。どんな役に立てるのか? 体力以外は少し楽しみでもありますが ・・・ サテ!。 酪農業の特質や可能性、地域や個々に合わせたその やり方や楽しみ方!それらを具体的に吐露して、職 業余生の仕舞いにしよう ・・・ と思ってます。  そこで、挨拶代わりに紙面を拝借し、老人の“酪農 業拍手!独り言感想!”をつぶやきます。読後に、未 来に対する期待感が生まれ、どうすればその可能性 をもっと実現できるのだろう、という“前向き気概” を多くの方が抱いてくれれば ・・・ との気持ちです。

乳牛の見えざる真の姿

 ルーメン(第一胃)では、空気嫌いの多様な微生物 が発酵を通じ増殖しています。その結果発生した酸 を直接吸収しエネルギー源にし、同時に増えた菌体 を下部消化管に多量に送り続けます。この菌体!バ ランスの良いアミノ酸を高濃度に含んだ素晴らしい 牛の“本当のタンパク系飼料”といえます。採食して いる多くの繊維質飼料は決して栄養豊かな物とはい えません。その多くは人の食用に不可です。それが ルーメン内で魔法のように大変身!するのです。有 り難や!ルーメン微生物の心境です。  飼料成分の 2/3(60 〜 70%)位がその発酵に供され ます。いうならば、牛は“3 分の 2 菌体食動物”といえ ます。見た目の草食動物とは名ばかりですね!反芻動 物は植物を食べてる肉食系と言っても過言ではない 位ですね。残り 30%位は発酵を受けずにルーメンを 通過(バイパス)します。微生物感作を受けず直接利 用されます。すなわち、1/3(30% 強)は単胃動物的な 消化をします。“牛は 3 分の 1 豚”的だともいえますね。 2/3 微生物+ 1/3 豚=牛、それが実像です。例えに無 理があるけど ・・・ そういうことです。反芻獣は凄い!

酪農生産そのものが凄い

 完全に近い栄養を含み、多くの食材と素晴らしい 相性を備え、なおかつ様々な加工食品の原料ともな る。そんな万能な食品食材である乳(ミルク)は、大 型反芻動物である乳牛という家畜を飼養している酪 農業により生産されています。  しかも、その体格に比しとても多くの生産をして います。個体だけで、実量で1日 30㎏強、年間 10 t 前後、乾物で 1 日 3.6㎏強、年間 1200㎏前後の生産を します。質も量も見事な生産力です。その上、通年で 間断無く流通に乗せているのです。  人の利用が不可能な物を活用し、見事な価値ある 物に変身させる。その乳牛の能力と酪農業の働きは “極めつけで凄い!”ものです。

酪農は食糧安保に大貢献

 生きとし生けるもの、食わずに生きることはでき ません。食糧の安全保障(食糧安保)は国家の大本、 政治の根幹です。国民を飢えさせたり、飢えの不安を 持続させることは大失政の極みとなります。食糧の 自給と安全安定提供は食糧安保の絶対的要諦です。  その食糧生産力の強化と緩衝力において、酪農業 は大きな役割を担っています。先ず、利用している 面積の割に大きな生産をしています。次に、穀類等 の栽培困難地でも牧草等を栽培し大きな産乳をして います。すなわち、農地の利用効率を大幅に高め国 家の食糧生産を支えているのです。加えて、酪農は 自給用農地を多く使おうと使うまいと、流通飼料と の兼ね合いで一定の生産を継続できます。時の情勢 に合わせて生産を持続する融通性です。例えば、他 給(輸入等)飼料の物流や稲や畑作物の作付け調整 などの事情変化に、施策次第で如何様にも合わせら れる特質を持ってます。すなわち、農地の有効利用

村上 明弘

技術顧問

酪農業の底力

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に対する高い緩衝能です。いざとなれば個体生産量 を下げてでも生産を持続できます。

副産物資源の高度な活用!

 乳牛用飼料の多くは単胃動物では利用不可能なも のです。巷では多くを輸入穀物に依存しているよう に見てるが、それは勘違いに近いものです。搾乳牛 で採食乾物の 25% 位でしょうか。乾乳牛や育成牛を 含むと更に低いでしょう。人と共通のコーン子実以 外は飼料作物や牧草および加工食品や圃場の副産物 等です。糟糠類や油粕や醸造粕、各種パルプ類、各種 ジュース粕、トーフ粕 ・・・ から食品業界の余剰品ま で、ありとあらゆる物が反芻胃を通じ高級な乳肉に 様変わりしています。そのまま処理すれば環境に大 きな負荷を与えるであろう食品副産物を飼料流通に 乗せ、それを緩衝し軽減しているのです。乳牛糞尿 のかなりな部分は人の環境圧を抑制した結果の産物 ともいえるのです。

牛肉産業への多大なる貢献

 乳牛は牛肉生産において欠くべからざる存在で す。その繁殖によりホル♂仔、和牛 F1 仔、和牛 ET 仔等の肉用素牛を産出してます。国家の肉牛生産に 無くてはならぬものです。同じ頭数を他の方法で生 産するなら、その繁殖牛飼養のために少なからぬ農 地と飼料を要します。乳牛は産乳過程の副産物とし てそんな大仕事をしています。性判別精液の更なる 技術進展はこの流れをより加速します。更に、自ら が大きな肉を持ち続け、産乳活動終了の後、自らの 体を食用に供します。  そして、乳牛管理力の更なる向上は“元気長持ち 親牛の高繁殖と産仔牛の高速発育!”を導き、結果 として後継牛確保に余力が生じ、肉用素牛の生産力 を更に高めることができます。乳牛の飼養頭数増加 はその流れに拍車をかけます。

広範で安定的な職種や職場の提供

 酪農業は多種多様な関連産業を存続させていま す。“超 ・ 迂回 ・ 総合 ・ 科学 ・ 技術 ・ 産業”と、その 昔に表現した酪農特質がその根底です。利潤を手中 にするまで気の遠くなる段階を経ます。その過程で 様々な職種を派生します。また、“先進国型産業”と 称される酪農は多大な資金循環も要します。生鮮食 品である生乳を通年で生産し出荷してもいます。  その特徴が広範で安定的な職業を養成しているの です。金融 ・ 建築から製酪 ・ 販売まで、書けば切り が無いほどの職種がその恩恵に浴してます。私もそ の一人です。感謝!そんな農業は他にありません。 その点においても、欠くべからざる農業に位置づけ られます。

安全で安定的なエネルギーや

 肥培資材の産出

 まだ道半ばだが、糞尿資源を活用した通日発電や 肥培材の産業化は、国益に相当な貢献をします。特 に土改材+肥料材としての役割は、農産物の上質化 と化学肥料の抑制化で一層の貢献が見込まれます。 この両者には政治や行政の更なる継続的施策が肝要 でしょう。

その他の貢献や期待

 敷料資材として、木工や製紙や圃場副産物の関連 や砂の利用等々 ・・・ 余剰物を利用。  心地よい牧場景観やそれを利用した娯楽施設の運 営。“美しい農場”は地域憩いの宝。

日本酪農の未来

 酪農業にはまだ多くの利潤を得る方法や社会貢献 できる分野があります。農業分野における酪農業の 存在価値を、先ず酪農家自身が再認識し、食糧安保 の基軸として、社会と政治行政を動かし未来を担保 したいですね。  様々な経営形態の存在を持続発展させられる、そ んな日本型!の酪農生産体制づくりは多様にありま す。既存の様々な矛盾を着実に克服し、見た目は中 小規模でも見事なコストパフォーマンスを表現す る、そんな酪農社会のシステムづくりを極めていき たいものです。    名古屋支所獣医師会 研修会にて

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泌乳牛の飼料設計における

理想のデンプン濃度

カナダ アルバータ大学 乳牛栄養学 教授 大場 真人博士

はじめに

 穀類価格の上昇や円安などの要 因により、飼料コストが酪農経営 の大きな負担になっています。こ れまで、デンプンは乳牛のエネル ギー源として、比較的安価な栄養 素でした。そのため、ルーメン・ア シドーシスなどのリスクを軽減し つつ、デンプンをいかに安全にた くさん給与できるかというのが、 乳牛の飼料設計の基本的なアプロ ーチでした。さらに、「デンプンを たくさん給与してルーメン発酵を 最大にし、微生物タンパクの合成 を高め、タンパクの給与コストを 抑える」という考え方も、デンプン が安価な栄養源だからこそ成り立 つアプローチです。しかし、デンプ ンの価格が相対的に高くなれば、 これまでの飼料設計の考え方を根 本的に改める必要があります。  乳牛には「エネルギー要求量」 が存在しますが、「デンプン要求 量」というものは存在しません。 つまり、牛は必ずしもデンプンか らエネルギーを摂取する必要は ありません。センイからもエネル ギーを摂取できますし、脂肪から もエネルギーを摂取できます。タ ンパク質もエネルギー源になりま す。ただ、泌乳能力が非常に高く なった牛のエネルギー要求量を最 も安価な方法で充足させるのに、 デンプンは非常に“使いやすい” 栄養素であったため、デンプン(あ るいは穀類)は乳牛の主なエネル ギー源となっていました。穀類価 格が上昇しても、乳牛の代謝生理 上、デンプンがエネルギー源とし て使いやすい栄養素であることに は変わりありません。そのため、 デンプンをいかに有効に利用でき るのか、コストに見合った効果を 引き出せているかを検討すること は重要です。今号のレポートでは、 乳牛の飼料設計での理想デンプン 濃度を考える上で必要なことを復 習してみたいと思います。

高デンプン設計への反応 : 

高泌乳牛 vs. 低泌乳牛

 飼料設計のデンプン濃度を高め れば、乳量は増えます。しかし、乳 牛の反応には大きな個体差があり ます。デンプンの価格が高いので あれば、高デンプンの設計に反応 する牛にはデンプンをたくさん 給与し、反応しない牛には穀類の 給与量を制限しつつ安価な副産 物飼料をたくさん給与して飼料 コストを抑えることを考えなけ ればなりません。ミシガン州立大 学で行われた試験では、飼料設計 中のデンプン濃度が 23% の TMR と 34% の TMR を、乳量が大きく 異なる 32 頭の牛に給与して(16-55kg /日)、牛の反応を比較しまし た(Voelker and Allen, 2002)。デン プン濃度が 34% の TMR ではコー ンを多給していましたが、23% の TMR ではビート・パルプを多給し てデンプン濃度を低くしました。  飼料設計のデンプン濃度を高め れば、乳量は増えます。しかし、乳 牛の反応には大きな個体差があり ます。デンプンの価格が高いので あれば、高デンプンの設計に反応 する牛にはデンプンをたくさん給 与し、反応しない牛には穀類の給 与量を制限しつつ安価な副産物飼 料をたくさん給与して飼料コスト を抑えることを考えなければなり ません。ミシガン州立大学で行わ れた試験では、飼料設計中のデン プン濃度が 23% の TMR と 34% の TMR を、乳量が大きく異なる 32 頭の牛に給与して(16-55kg /日)、 牛の反応を比較しました(Voelker and Allen, 2002)。デンプン濃度が 34% の TMR ではコーンを多給し ていましたが、23% の TMR では ビート・パルプを多給してデンプ ン濃度を低くしました。

大場真人の

技術レポート

図1 高デンプン設計への反応と乳量の関係(Voelker and Allen, 2002)

高デンプン設計への反応( FCM 、 ㎏ /日) 試験開始前の乳脂補正乳量(FCM、㎏/日) 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 -1 乳量が 16-55 ㎏/日の 32 頭の牛を供試験  高デンプン設計:34%  低デンプン設計:23%

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 図 1 は、試験を開始する前の乳 量を X 軸に、高デンプンの設計を 給与された時に増えた乳量を Y 軸に、その関係を曲線で示してい ます。このデータは、乳量が 45kg の牛に高デンプン TMR を給与 すれば乳量が 2kg 増えて 47kg な ることを示しています。さらに、 乳量が 55kg の泌乳ピーク牛であ れば、高デンプン TMR を給与す ることにより乳量が 6kg 増えて 61kg になる計算になります。しか し、乳量が 40kg 以下の牛であれ ば、高デンプン(34%)の設計でも、 低デンプン(23%)の設計でも、乳 量に変化がないことも示唆してい ます。  もし、デンプン(穀類)の価格が 相対的に高くなるのであれば、そ して安価でローカルな副産物飼料 が安定して入手できるのであれ ば、穀類中心の飼料設計にこだわ る必要はありません。低デンプン の飼料設計でも、上手く飼料設計 に組み込めば、牛群のほとんどの 牛のエネルギー要求量は充足させ ることが出来ます。ここでは便宜 上「低デンプン」という言葉を使 いましたが、デンプン濃度 23% の 設計は「低デンプン」というより も「中デンプン」と呼んだほうが ふさわしいかもしれません。しか し、この研究データはデンプン(穀 類)の価格が高くなったときの飼 料設計を考える上で、大きなヒン トになるはずです。

泌乳後期の牛の飼料設計

 次に紹介したいのは、泌乳後期 (乾乳前 2 ヶ月)の牛が飼料設計 のデンプン濃度にどのような反 応をするかを検証した試験です (Mahoubi et al., 2009)。この試験 でも、ビート・パルプを利用して 飼料設計のデンプン濃度を下げた 場合の牛の反応を見ました。TMR の デ ン プ ン 濃 度 を 19.0% か ら 12.3% まで下げましたが、DMI や 乳量に差は見られませんでした。 しかし、低デンプンの TMR を給 与された牛は、ルーメン pH と乳 脂量が高くなりました。この試験 は、デンプンを多給する TMR が 逆にマイナスに働くことを示して います。

分娩直後の牛の飼料設計

 今、北米の乳牛栄養学のホット・ トピックの一つは分娩直後の牛の 飼料設計です。分娩日を境にいき なり発酵度の高い TMR を給与す ることは牛にとって大きな負担に なるはずです。しかし、分娩直後 の牛は泌乳を開始しています。泌 乳量に見合ったエネルギーを摂取 できなければ、牛は痩せていき繁 殖などにも悪影響が出ます。では、 分娩直後の牛には、デンプンをど のくらい給与すればいいのでしょ うか。この疑問に答えるために行 われた研究を二つ紹介したいと思 います。  一つめの研究はマイナー研究所 で行われた試験ですが(Dann & Nelson, 2011)、分娩後に低デンプ ンの TMR(21.0 vs.25.5%)を給与 された牛は DMI を高めました。も う一つの研究はコーネル大学で行 われた試験ですが(McCarthy et al., 2013)、分娩後に高デンプンの TMR(26.2 vs.21.5%)を給与され た牛のほうが DMI が高くなりま した。全く相反する試験結果です。 それでは、この矛盾をどのように 解釈すれば良いのでしょうか。  私は、分娩後の飼料設計での「理 想デンプン濃度」を考えるときに は、その部分だけを切り離して考 えるのではなく、乾乳前期からク ロース・アップそして泌乳期へと いう一連の流れの中で評価するべ きだと考えています。例えば、ク ロース・アップ期のデンプン濃度 です。クロース・アップ期であっ ても乾乳中はエネルギーの過剰給 与は控えたほうが良いという考  TMRのビート・パルプ含量、%乾物 0 8.6 17.2  TMRのデンプン濃度、%乾物 19 15.1 12.3    乾物摂取量、kg/日 18.1 17.5 17.7    乳量、kg/日 17.9 17.4 17.9    乳脂量、kg/日 0.78 0.84 0.9    ルーメンpH 5.77 5.96 6.21 表1 泌乳後期牛のTMRのデンプン濃度が乳牛の生産性とルーメンpHに与えた影響 (Mahoubi et al., 2009)

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参照

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〇齋藤部会長 ありがとうございます。.

○菊地会長 では、そのほか 、委員の皆様から 御意見等ありまし たらお願いいたし

○齋藤部会長 ありがとうございました。..

○齋藤部会長 ありがとうございました。..

○杉田委員長 ありがとうございました。.

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○柳会長