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第 4 章 熱・物質移動特性の評価

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Academic year: 2022

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(1)

4 章  熱・物質移動特性の評価

4.1  概要

前章で示した数式モデルを解くためには,空気流路内の対流熱・物質伝達率,

摩擦損失係数,および吸着剤壁内の熱・物質拡散係数を決定しなくてはならない.

本章では,各移動係数の導出方法について検討する.

  空気流路以内の対流熱・物質伝達率は CFD による解析により,助走区間を考 慮した局所ヌセルト数を算出する.このとき,空気流路の断面形状は,対象とす るデシカントローターの拡大写真を画像解析することによって得る.また,摩擦 損失係数については,対象とするデシカントローターを用いて,別途行った圧力 損失実験の結果と比較検討をし,その妥当性の検証も行う.

  吸着剤壁は純粋な吸着剤以外に,基材やバインダーが含まれている.その影響 から,実際の吸着剤壁の拡散係数は,純粋な吸着剤の拡散係数と同じであるとは いえない.そこで,本研究では,吸着量測定装置を用いて,吸着実験を行い,こ のときの吸着量の時間応答を解析することで,吸着剤壁内の物質拡散係数を推定 する.なお,この吸着実験では,対象とするデシカントローターの吸着剤壁を模 して作成した吸着剤壁を,試験片として用いる.

39

(2)

4.2  空気流路内対流熱・物質伝達率

  処理空気あるいは再生空気がデシカントローターの空気流路に進入すると,ま ず,助走区間を経てから十分発達した流れの領域へと推移していく.助走区間で は,空気流路内壁との間の摩擦と対流熱・物質伝達により,速度境界層,温度境 界層および濃度境界層が同時に発達していく.著者らのこれまでの研究で,シカ ントローターのローター厚さが比較的薄い場合,あるいは,空気流速が比較的速 い場合において,この助走区間の熱・物質伝達に与える影響が無視できないこと が分かっている.そこで,本研究では,CFD解析により,助走区間を考慮した局 所ヌセルト数および局所シャーウッド数の導出を行う.CFDソフトウェアとして

FLUENT を用いる.なお,実際の空気流路の助走区間においては,速度境界層,

温度境界層および濃度境界層が同時に発達していくが,ここでは,まず,速度境 界層および温度境界層の発達のみを考え,局所ヌセルト数を算出し,その結果を もとに,熱・物質移動に関するアナロジーから,局所シャーウッド数を算出する こととする.速度境界層と温度境界層が同時に発達していく助走区間の問題は,

一般的に,Combined entrance region problemと呼ばれている.

  CFD解析を行う前に,対象とするデシカントローターの空気流路断面形状を正 確に把握しなくてはならない.本研究では,デシカントローターの拡大写真を画 像解析し,平均空気流路断面形状を得る.Fig. 4.1 に,対象とするデシカントロ ーターの平均空気流路断面形状を示す.

  なお,空気流路内の湿り空気の流れは,完全な層流であるので,CFD解析では 層流モデルを用いて計算を行った.CFD解析を行う上での境界条件として,空気 流路入口での速度分布および温度分布は均一とする.また,管壁温度一定とする.

さらに,速度境界層と温度境界層が同時に発達していくCombined entrance region

problem の場合,局所ヌセルト数はプラントル数に依存する.本研究では,空気

の標準状態でのプラントル数として,Pr=0.73を用いる.

  Fig. 4.2に十分発達した領域での温度分布の一例を示す.

40

(3)

Fig. 4.1 Average cross-sectional shape of air channel

Fig. 4.2 Typical example of temperature profile in fully developed region

41

(4)

Fig. 4.3に,CFD解析によって得られた,局所ヌッセルト数Nuと無次元座標Gz-1(無 次元化した流路入口からの距離)の関係を示す.ヌセルト数は次式によって定義 される.

      h

a

Nu hd

k (4.1)

また,Gzはグレツ数であり,次式によって定義される.

     

1

z dh

Gz RePr

= ⎜⎝ ⎠

⎞⎟ (4.2)

ここで,レイノルズ数およびプラントル数の定義は次式の通りである.

      a h

a

Re u d

≡ ν (4.3)

      a

a

Pr a

≡ν (4.4)

Fig. 4.3 の結果を見ると,無次元座標が大きくなるにつれて,速度境界層および 温度境界層が徐々に発達していき,ヌセルト数は低下してく.無次元座標が約 0.1 で,十分発達した流れとなり,その後は一定値となる.つまり,本研究の場 合,助走区間の影響がある領域は,

      0.1

h

z RePr

d < (4.5)

となることが分かる.これより,助走区間長さを,次のように定義する.

      len =0.1RePrdh (4.6)

42

(5)

助走区間の長さlenは,温度などの条件にもよるが,空気流路内風速が 2.0[m/s]の とき,約16[mm]となる.また4.0[m/s]のときは,約31[mm]となる.したがって,

比較的薄いデシカントローターの場合,その空気流路内助走区間の対流熱伝達に 対する影響を無視できないことが分かる.また,十分発達した領域でのヌセルト 数は2.57であった.なお,十分発達した領域でのヌセルト数は,円管の場合3.66, 正三角形の場合2.49となることが知られている[4.1].

  局所ヌッセルト数Nuと無次元座標Gz-1の関係の近似式を以下に示す.

     

3 4

0 0

2.57

n n

h

n n

n n

z d z d

Nu a b

RePr RePr

= =

⎛ ⎞ ⎛

= +

⎜⎝ ⎟⎠

⎜⎝ h (4.7)

ただし,係数anおよびbnは,Table 4.1に示す通りである.この近似式は,Fig. 4.3 に併記する.

43

(6)

0.01 0.1 1 1

2 3 4 5 6 7 89 10

Local Nusselt number

Nu

Dimansionless location Gz

-1 CFD analysis

Approximate expression Pr = 0.73

Fig. 4.3 Relationship of local Nusselt number with dimensionless location with constatnt surface temperature

Table 4.1 Coefficients an and bn of approximate expression Eq. (4.7)

n an bn

0 1.47794996e-3 0

1 8.79204874e-1 1.58687625e-1 2 -7.28063378e0 3.21505554e1

3 1.43749220e1 -2.65048912e1

4 - 7.06350177e3

44

(7)

  局所シャーウッド数は,CFD解析によって得られた局所ヌセルト数と,熱・物 質移動に関するChilton-Colburn analogyから導出する.Chilton-Colburn analogyは,

次式のように表される.

     

1 3 1 3

Nu Sh

RePr = ReSc (4.8)

ただし,シャーウッド数およびシュミット数の定義は次式の通りである.

      m h

v

Sh h d

D (4.9)

      a

v

Sc D

≡ν (4.10)

45

(8)

4.3  空気流路内摩擦損失係数

  空気流路の摩擦損失係数の導出について述べる.摩擦損失係数は,対流熱・物 質伝達率の場合と同様に,CFD解析により導出する.また,その妥当性を検証す るため,デシカントローターを用いて行った圧力損失実験の結果と比較検討を行 う.Fig. 4.4に,CFD解析によって得られた, fReと (z/dh)/Reの関係を示す.摩擦 損失係数fは次式によって定義される.

     

( )

2 2

h a a

dp dz d

f ρ u

≡ − (4.11)

Fig. 4.4の結果より,助走区間の影響があるのは,

      0.1Re

h

z

d < (4.12)

であることが分かる.また,十分発達した領域では,fReは一定値であり,本研 究では,fRe=52.96であった.なお,円管の場合はfRe=64であり,正三角形の場 合はfRe=53あることが知られている[4.1].

  fReと (z/dh)/Reの関係の近似式を以下に示す.

     

3 4

0 0

Re 52.96

n n

h

n n

n n

z d z d

f a b

Re Re

= =

⎛ ⎞ ⎛

= +

⎜⎝ ⎟⎠

⎜⎝ h⎟ (4.13)

ただし,係数anおよびbnは,Table 4.2に示す通りである.この近似式を,Fig. 4.4 に併記する.

46

(9)

0.01 0.1 1 20

30 40 50 60 70 8090 100 200

f Re

Dimensionless location

CFD analysis

Approximate expression

z / dh Re

Fig. 4.4 Relationship of local friction factor with dimensionless location

Table 4.2 Coefficients an and bn of approximate expression Eq. (4.13)

n an bn

0 3.96961431e-2 0

1 5.51948472 1.61345320e-01

2 -5.48478609e1 5.17256564e+00 3 1.28199004e2 2.03363367e+02

4 - -8.97911998e+02

47

(10)

  次に,本研究で対象とするデシカントローターを用いて行った圧力損失実験の 結果とEq. (4.12)を用いて行った計算結果の比較検討を行う.圧力損失実験では,

空気の整流などを考慮して,デシカントローターの性能評価実験とは別に,新た な実験装置を作成する.Fig. 4.5に,圧力損失実験装置の写真を示す.また,Fig.

4.6に,実験および計算結果として,ローター厚さが100 [mm] のデシカントロー ターを用いた場合の,圧力損失とローター前面風速の関係を示す.なお,計算で は,助走区間の影響を考慮しない場合の結果も併記する.この結果より,助走区 間を考慮した圧力損失は,実験結果とよく一致していることが分かる.また,助 走区間を考慮しなかった場合の計算結果は,助走区間を考慮しない分,圧力損失 が実験に対して過小評価となっており,特に,前面風速が大きく助走区間の影響 が顕著になる領域では,実験と計算との差が大きくなっている.以上より,CFD 解析によって導出した摩擦損失係数Eq. (4.12)の妥当性が確認できたと言える

Fig. 4.5 Experimental setup for pressure drop measurement

48

(11)

0 1 2 3 4 0

50 100 150 200

Pressure drop ∆

P

Pa

Air superficial velocity u

s m/s Calculation with entrance region Calculation without entrance region Experiment

Wheel thicness: 100 mm

Fig. 4.6 Comparison of pressure drop between calculation and experiment

49

(12)

4.4  吸着剤壁内物質拡散係数

  吸着剤壁内の水分に関する物質拡散係数の推定方法について述べる.物質拡散 係数は,蒸気吸着量測定装置を用いて行った吸着実験により推定する.

  蒸気吸着量測定装置は,一般に,吸着等温線などの物性値を得るために用いら れる.蒸気吸着量測定装置による吸着等温線の一般的な計測方法は次の通りであ る.最初,水蒸気で満たされたシェル内に試験片が置かれており,水蒸気と試験 片は平衡状態となっている.ここで,シェル内の水蒸気圧を変化させることで,

試験片により水蒸気の吸着または脱着が始まる.最終的に,平衡状態に達して吸 着または脱着は終了する.この過程を,さまざまな水蒸気圧で行い,それぞれ平 衡状態でのシェル内の水蒸気圧と吸着剤の吸着量の関係を整理することで,吸着 等温線が得られる.なお,シェルは恒温層内に置かれており,温度が一定に保た れている.

  本研究では,この吸着過程において,平衡に達するまでの吸着量の時間応答を 観察することで,試験片内での水分の拡散係数を推定できると考える.Fig. 4.7 に蒸気吸着量測定装置の概略図と試験片の写真などを示す.吸着量測定装置とし て,日本ベル社製の磁気浮遊天秤式蒸気吸着量測定装置を用いる.磁気浮遊天秤 を用いることで,シェル内に置かれた試験片の質量を直接測ることが可能である.

試験片の乾燥質量は分かっているので,磁気浮遊天秤で計測した質量から,試験 片の平均吸着量を得ることができる.試験片として,本研究で対象とするシリカ ゲル系デシカントローターの吸着剤壁を模して作成したシート状の吸着剤壁を 用いる.この吸着実験では,シェル上部のバルブを開放することで,シェル内の 水蒸気の圧力を変え,平衡に達するまでの吸着量の変化を観察する.Fig. 4.8に,

吸着温度 20℃のときの,平均吸着量及び無次元平均吸着量の時間応答の結果を 示す.時刻0でバルブを開放した後,約200秒ほどで定常に達していることが分 かる.なお,20 秒以下ではバルブ開放時の天秤の振動が検出されている.さら に,無次元平均吸着量は,セミロググラフ上でほぼ直線になっていることが分か る.無次元平均吸着量の定義については後述する.ここで,この吸着実験では,

バルブ開放後のシェル内の圧力変動はほぼステップ状であることが分かってい る.

50

(13)

Fig. 4.7 Schematic diagram of mass diffusivity measurement and photo of test specimen

51

(14)

Adsorption temperature: 20 degrees C

0 50 100 150 200

10-2 10-1 100

0 0.05 0.1 0.15

Dimensionless mean water content ω

*

Time t sec

Mean water content ω

Fig. 4.8 Time response of mean water content and dimensionless mean water content

52

(15)

  拡散係数の推定方法について述べる.Fig. 4.9 に,ある時刻での試験片内部で の吸着量分布を示す.試験片は薄い板状なので,この拡散現象は,試験片表面か ら,試験片厚さ方向(y方向)に拡散が広がっていく一次元非定常拡散とみなせ る.また,恒温槽により温度が一定であり,かつシェル内の圧力がほぼステップ 状に変化するので,その平衡関係から,試験片表面(y=±δ)の吸着量がステップ 状に変化するといえる.ここで,試験片内部の吸着量をω(t, y)として,一次元非 定常拡散方程式は次式のようになる.

     

2 2 w

Dd

t y

ω ωw

∂ = ∂

∂ ∂ (4.13)

また,初期条件として,時刻t=0 で,試験片の吸着量が周囲の水蒸気圧力および 温度に平衡しているので,このときの吸着量をω0とすると,

      t=0, 0≤ ≤y δ : ωw0 (4.14)

となる.また,境界条件として,吸着剤表面の吸着量がω0からωsにステップ状に 変化するので,

      t>0, y=δ : ωws (4.15)

さらに,試験片の厚さ中心(y=±δ)において,その対称性から,物質の拡散はな いので,

      t>0, y=0: w 0 y ω

∂ =

∂ (4.16)

53

(16)

Fig. 4.9 Water content profile in test specimen

54

(17)

  ここで,この問題の解は,次に示すような級数解をとることが知られている.

     

( ) ( )

( )

{ } ( )

* 2

0

4sin cos sin 2 2 exp

n n

n m

n n n

Y Fo

β β

ω β

β β

=

⎡ ⎤

= ⎢ − ⎥

⎢ + ⎥

⎣ ⎦

(4.17)

      3

(

2 1

)

, , , ,

2 2 2

n

n π

β =π π K + K

ここで,各無次元数は次式のように定義される.

      *

0

s w

s

ω ω ω ω ω

= −

− (4.18)

      y

Y=δ (4.19)

     

2 d m

Fo D t

= δ (4.20)

なお,この問題の詳細な解法については文献[4.2]を参照されたい.

  試験片内部での,任意の時刻における平均吸着量ω*は,式(4.17)を積分して次 式のように表される.

     

( )

( )

{

2

} (

* 1 * 2

0 0

4sin exp

sin 2 2

n

n m

n n n n

dY β Fo

ω ω β

β β β

=

⎡ ⎤

= = ⎢ − ⎥

⎢ + ⎥

⎣ ⎦

∫ ∑ )

(4.21)

この平均吸着量ω*= f Fo

(

m

)

は,セミロググラフ上において,ある直線に漸近す ることが知られており,その漸近線の傾きは,式(4.18)より次式のようになる.

      log

( )

*

2.4674

m

d dFo

ω − (4.22)

55

この傾きを,時間tに対する傾きに直すと,Fomの定義Eq.(4.20)より,

(18)

     

( )

*

2

log 2.4674 d

d D

dt ω

δ

− ⎛⎜⎝ ⎠

⎞⎟ (4.23)

となる.この傾きと,Fig. 4.8の時間応答の傾きとを比較することで拡散係数が 得られる.実験結果より,時間50< t <100での傾きは -0.02461であった.したが って,Eq.(4.8)より,

     

2.4674 D2d 0.02461 δ

⎛ ⎞

− ⎜⎝ ⎟⎠= − (4.24)

試験片の厚さはFig.4.7に示すように,δ=0.253×10-3[m]であるから,

      Dd =1.596 10× 10 (4.25)

となる.これにより,この試験片の拡散係数の値を得ることができた.

56

(19)

  ここで,多孔質固体内部の物質拡散について考える.Fig4.10 に多孔質固体内 部ので3つの異なる拡散メカニズムと,それぞれの拡散メカニズムの電気回路と のアナロジーを示す.多孔質固体内部の物質拡散は,大きく分けて,細孔拡散と 表面拡散に分類される.細孔拡散と表面拡散は並列に生じている.

  まず,細孔拡散について説明する.細孔拡散とは,多孔質固体内部の空隙であ る細孔内にて生じている拡散現象である.細孔拡散の推進力は細孔内に充填され ている湿り空気の水分濃勾配である.細孔拡散よって移動する水分の質量流束は,

Fickの法則にもとづいて次式のように表される.

      p a p wa

j D

ε ρ y τ

⎛ ⎞ ∂

= −⎜ ⎟⎝ ⎠ ∂ (4.26)

ここで,ε は多孔質固体の空隙率であり,τは細孔の屈曲度である.なお,屈曲 度は,細孔が完全にランダムには移行している場合に3となり,ここでは,この 値を用いることとする.

細孔拡散は,さらに2つの拡散メカニズムに細分化される.一つは,通常の 分子拡散であり,もう一方は,Knudsen拡散である.この2つの拡散現象は直列 に生じていると考えられている.

      1 1 1

p m K

D = D + D (4.27)

ここで,分子拡散とは,湿り空気中の水分濃度の偏りによって生じる通常の 拡散のことである.湿り空気中の水蒸気に注目した分子拡散は,次式のように記 述できる[4.3].

      ( )

( )

273.15 2.5

0.926

101.325 273.15 245

m

D T

T

+

= + +

(4.28)

57

(20)

Fig. 4.10 Schematic diagram of diffusion phenomenon in porous material and analogy with electrical circuit

58

(21)

  次に,Knudsen拡散とは,多孔質固体内の細孔のような,非常に狭い空間に特 有の拡散現象である.注目したガス分子の自由行程よりも細孔径が小さい場合,

ガス分子は,他のガス分子の衝突頻度よりも,細孔壁との衝突頻度の方が相対的 に多くなる.これによって生じる抵抗がKnudsen拡散による抵抗である.したが って,Knudsen拡散係数の大きさは,その多孔質固体の持つ細孔の平均細孔径に 強く依存している.Knudsen拡散係数は次式のように表される[4.4].

     

273.15 1 2 K 97

W

D T

γ⎛ +M

=

(4.29)

次に,表面拡散について説明する.表面拡散は,多孔質固体内部の固体表面 上で生じる拡散現象である.なお,多孔質固体の固体表面上とは,細孔の内壁面 上と考えて差し支えない.表面拡散の推進力は,その多孔質固体である吸着剤の 吸着量勾配である.表面拡散よって移動する水分の質量流束は,Fickの法則にも とづいて次式のように表される.

      js 1 sD d

s y ε ρ ω τ

= −⎜ (4.30)

ここで,ρsは,多孔質固体内部の固体部分のみに注目した場合の密度であり,多 孔質固体の嵩密度との関係は次式のようになる.

     

(

1−ε ρ

)

sd (4.31)

  Sladekら[4.5]は,表面拡散係数を表す式として次式を提案している.

     

( )

0exp

273.15

ads s

w

D D a h

R T

⎧ ⎫

= ⎪⎨⎪⎩− + ⎪⎭

⎪⎬ (4.32)

ここで,係数D0とaは,拡散物質と吸着剤の種類によってさまざまであるが,本

59

(22)

60

研究で対象としている,水―シリカゲル系においては, s およびa

= 0.45が提案されている.

-6 2

0 1.6 10 [ / ] D = × m

  さらに,細孔拡散と表面拡散を合わせた,トータルの拡散について考える.上 述のように,細孔拡散と表面拡散は,並列的に生じているが,それぞれの推進力 が異なっていることが分かる.つまり,細孔拡散では,細孔内に満たされている 湿り空気中の水蒸気濃度勾配を推進力としているが,一方で,表面拡散では,多 孔質後退内部の固体表面上に吸着した水分の濃度勾配を推進力としている.この ことを考慮して,トータルの水分移動量は,次式のように表され,変形される.

      1

d p s

a

a p s s

d d d

j j j

D w D d

y y

D y

ω

ε ρ ε ρ

τ τ

ρ ω

= +

∂ −

⎛ ⎞ ⎛ ⎞

= −⎜ ⎟⎝ ⎠ ∂ −⎜⎝ ⎟⎠ ∂

= − ∂

∂ (4.33)

上式のDdは,細孔拡散と表面拡散を合わせた吸着剤の有効拡散係数である.

      d Ds Dp

D K

τ τ

= + (4.34)

ここで,

     

1

a a

s d

K ε ρ w

ε ρ ω

⎞⎛ ∂

= ⎠⎝ ⎟⎜⎠⎝

(4.35)

  最後に,本研究で扱っている水―シリカゲル系において,細孔拡散と表面拡散 のどちらが有効拡散に対して支配的かについて考える.有効拡散係数,細孔拡散 係数,表面拡散係数の関係は Eq.(4.34)にしめす通りである.Fig.4.11に,それぞ れの拡散係数の温度依存性を示す.このグラフから分かるように,温度が100℃ 程度までは,表面拡散が支配的であることが分かる.このことから,本研究にお ける,吸着剤壁内部の拡散現象も表面拡散が支配的あるとみなす.

(23)

  実験から,25℃の場合の拡散係数は,Eq.(4.28)より である.こ の拡散係数が,表面拡散が支配的であるとすると,Eq.(4.32)およびEq.(4.34)より,

1.596 10 10

Dd = ×

     

( )

10 0

1.596 10 exp

25 273.15

ads w

D h

aR τ

⎧⎪ ⎫⎪

× = ⎨⎪⎩− + ⎬⎪⎭ (4.35)

となる.これより,係数(D0/τ)を算出し,温度依存性を考慮することとする.

61

(24)

0 50 100 150 10-12

10-11 10-10 10-9 10-8

Diffusivity

D

m

2

/s

Temperature T degrees C

Total diffusivity Dtot Surface diffusivity Ds / τ Pore diffusivity KDp / τ Experiment

Fig. 4.11 Comparison of total diffusivity, surface diffusivity and pore diffusivity.

62

参照

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