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学位論文の要旨 Abstract of Thesis

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Academic year: 2022

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《H27 様式 甲2の1/Style Kou 2-1》

学位論文の要旨

Abstract of Thesis 研究科

School 自然科学研究科

Division 地球生命物質科学専攻

学生番号

Student No. 51425203

Name 西 政康

学位論文題目 Title of Thesis(学位論文題目が英語の場合は和訳を付記)

単層カーボンナノチューブの一次元ミクロ孔内で形成される分子・イオンの特異的状態の解明

学位論文の要旨 Abstract of Thesis

活性炭をはじめとする炭素材料は多量のナノオーダーの細孔を有することが知られている。この ような多孔性材料は,分子の分離,貯蔵,精製などの分野で大きな役割を担っており,細孔を多量 に有する吸着材として炭素材料のほかにメソポーラスシリカやゼオライトなどが用いられている。

また,カーボンナノチューブや多孔性金属錯体などの新しい多孔性材料が発見され,研究が進めら れている。このような細孔内に吸着された分子は,空間の次元やサイズ,空間場の影響によってバ ルクとは異なる挙動を示す。例えば,メソポーラスシリカ細孔内での重合反応によるポリマー合成 や多孔性金属錯体のナノ空間中での酸素分子の規則的な構造形成が挙げられる。また,単層カーボ ンナノチューブのチューブ内部に制約された分子がバルクにはみられない新しい構造体を形成する ことが報告されている。例えば,単層カーボンナノチューブのチューブ内部に内包された水がアイ スナノチューブと呼ばれる新規構造の氷の形成や硫黄が一次元結晶を形成して金属的な電子状態と なることが報告されるなど,単層カーボンナノチューブのチューブ内部の分子の構造や特性につい て盛んに研究されている。

活性炭やカーボンナノチューブなどの炭素材料は炭素原子のみから成り,活性炭は擬二次元的な 細孔,カーボンナノチューブは擬一次元的な細孔をもつ。また,炭素材料表面は特異的に強い吸着 サイトが限りなく少ないため,分子-固体表面間に働くポテンシャル場による物理吸着が支配的で あり,細孔構造由来の分子の吸着挙動を調べるうえで,モデル化しやすい利点がある。

また,生体内で重要な役割を果たしている Na+やCa2+の水和構造など,ナノ空間内に制約された 水和イオンの構造に高い関心が集まっている。炭素ナノ空間に制約された水和イオンの構造を解明 することは,エネルギー貯蔵デバイスとしての利用が期待されている電気二重層キャパシタにも関 係し,さらに,イオンチャネル内でのイオンの挙動の理解のための重要な指針を与えることが期待 できる。

(2)

《H27 様式甲2の2/Style Kou 2-2》 氏名Name 西 政康

そこで,本研究では細孔径分布が比較的狭く,理想的なモデルとして取り扱いやすい単層カーボ ンナノチューブ(SWCNT)を中心に,炭素ミクロ孔内に制約された分子や水和イオンの状態の解明を 目指した。以下に本研究の内容を記す。

(1) 活性炭およびSWCNTのミクロ孔内に制約された水和亜鉛錯体の構造解析

平均細孔径1 nm以下の活性炭およびSWCNTのミクロ孔内に制約された水和亜鉛錯体の構造につ いて検討した。ラマンスペクトル測定,窒素吸着等温線測定,TEM観察によりSWCNTが開孔され ていることを確認した。亜鉛イオン吸着等温線測定,XPS測定,Boehm法により,アルゴン処理に より表面官能基を除去したSWCNT(Ar-SWCNT)への亜鉛イオンの吸着は細孔内への物理吸着が主で あり,活性炭についても表面官能基へのイオン交換による吸着はほとんどないことを確認した。

XAFS測定の結果,飽和蒸気圧においても亜鉛イオンに水が配位した状態(溶解)と配位していない状 態(未溶解)の混合状態で存在していることがわかった。そこで,溶解した状態のみの構造を解析する と,1 nm以下のミクロ孔を有する活性炭およびSWCNTの細孔内において,バルクの水溶液に比べ 水和水が減少した脱水和構造が形成されていることが明らかになった。

(2) SWCNTのチューブ内に選択的に吸着した窒素,水および水和亜鉛錯体の状態解明

SWCNT のチューブ内部のみの窒素,水および水和イオンの吸着状態について検討した。まず,

ラマンスペクトル,XRD,TEM観察,Boehm法により開孔処理前後でSWCNTの構造や表面状態が 変わらないことを確認した。SWCNTチューブ内部の吸着等温線は開孔したSWCNTの吸着量から閉

孔した SWCNT の吸着量を差し引くことにより得た。窒素の差吸着等温線はミクロ孔への吸着を示

すI(a)およびI(b)型を示し,差吸着等温線の解析により得られたSWCNTの直径はラマンスペクトル により得られた直径と一致したことから,差吸着等温線よりチューブ内部の細孔構造や吸着状態を 選択的に抽出・解析できることを見出した。さらに,水の差吸着等温線を用いてチューブ内部の水 の密度を正確に算出できることを見出し,平均直径1.3,1.7 nmのSWCNTチューブ内部の水の密度 がそれぞれ0.62,0.71 g ml-1と求まり,理論計算により得られた値とほぼ一致した。さらに,閉孔お よび開孔したSWCNTに亜鉛イオンを吸着させた試料のXAFS測定を行い,それぞれの比較により,

SWCNT細孔内で圧縮された水和構造を形成していることが示唆される。

(3) ミクロ孔性炭素材料による臭化物イオンの過剰吸着現象

ミクロ孔性炭素材料に RbBr を吸着させた際,BrがRb+に比べ過剰に吸着することを見出した。

XAFS測定の結果,平均細孔径が1.03 nmの活性炭,平均直径1.3 nmのSWCNTでは10倍以上,平 均細孔径が0.63 nmの活性炭では約5倍BrがRb+に比べ過剰に吸着することがわかった。Brの水和 イオンサイズ(約0.96 nm)より大きな直径を有するSWCNTの細孔内ではバルク水溶液と同様の水和 構造を形成しているのに対し,水和イオンサイズと同程度の平均細孔径を有する活性炭の細孔内で は,細孔壁からのポテンシャル場により水分子が約一個脱離した脱水和構造を形成していることが わかった。RbBr吸着後にpHが増加したこと,非プロトン性溶媒を用いた場合Brの過剰吸着がみら れなかったことから,水中のH+が電荷バランスを保持するために共吸着することがわかった。さら に,RbBrを吸着させた試料のXPSの結果,細孔内でHBrとして吸着していることがわかった。

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