倫理、政治・経済
第3 問題作成部会の見解
1 問題作成の方針 昨年度から新設された「倫理、政治・経済」は、「倫理」及び「政治・経済」の全ての領域を出 題範囲とし、「倫理」及び「政治・経済」との共通問題と、科目独自の問題を組み合わせて作成す るという方針で作成した。配点は、倫理分野と政治・経済分野に各50点を配点し、合計100点満点 とし、問題構成は、倫理分野及び政治・経済分野ともそれぞれ大問3題、全体で大問6題とした。 倫理分野は、昨年度とは異なり、各大問すべてにリード文を置くことにした。リード文は3題と も、「倫理」と共通のものである。設問のほとんどは「倫理」の設問と共通のものにし、必要に応 じて若干の「倫理、政治・経済」独自の設問を作成することとした。倫理分野の問題作成に当たっ て基本方針としたのは、倫理の問題作成の方針に述べたとおり、「高等学校の段階における基礎的 な学習の程度を判定する」という大学入試センター試験の目的、及び「良識ある公民として必要な 能力と態度を育てる」という「倫理」の目標の二つである。これらに留意しつつ、高等学校で得ら れた基礎知識を踏まえて、人間としての在り方、生き方、さらには、現代に生きる人間の倫理的課 題等について深く考えさせる問題の作成に努めた。 政治・経済分野は、第4問を政治と経済の融合問題、第5問を経済の問題、第6問を政治の問題 とした。このうち第5問と第6問は「政治・経済」との共通問題であり、第4問は、小問は「政 治・経済」と共通だが、リード文は「倫理、政治・経済」用に作成したものである。作問の基本方 針は、「政治・経済」と同じである。高等学校の段階における基礎的な学習の達成程度を判定する ことを目的とするものであり、さらに現代の政治経済の主体的な考察を奨励するために時事問題も 加えた。全体的には、いわゆる基礎的知識の習得度を問う問題のみに偏ることを避け、できる限り 総合的な理解力、論理的な思考力を、そしてそれらに基づいた応用力を試すことを目指した。 2 各問題の出題意図と解答結果 第1問 リード文では、インターネットコミュニケーションに与える影響を論じ合うことからは じめ、それが単に情報技術への対応という問題にとどまらず、自我の形成や他者との関わり方 といった問題につながり、さらには、人間が言葉によって他者と語り合う存在であることの意 義、という倫理的な問いへと通じていることを示すことを目指した。言葉について言葉で考 え、論じ合うこと自体が人間存在の特質であること、また、複数の他者との自由な言葉のやり とりが各人の思考を深めるものであることを示唆するために、三人の話者による会話という形 式を採っている。 問1 現在の日本社会における家族を取り巻く状況について、正しく理解しているかを問う た。正答率は高かった。 問2 自我や自己の形成には、他者や社会との関わりが必要であることを多くの思想家が、立 場や表現を変えて主張している。各思想家の代表的な考え方を問うた。正答率はやや低かっ た。 問3 他者への配慮が必要なときの言語の使い方には、発達段階の違いが影響することを図表の「活動」概念の正しい理解を問うた。正答率は低かった。 問5 ウィトゲンシュタインの言語哲学を、その変化を踏まえて正しく理解しているかを問う た。正答率はやや低かった。 第2問 日本思想の特徴は、しばしば情や美という視点から語られることが多く、論理的思考の 在り方について言及されることは少なかった。このような点を鑑みて、本問題では、日本にお ける思考のかたちと思考を営む主体の在り方を、「理」という視点から時代順に分析した。そ れによって、「考える」とは何かを受験者に改めて考えさせることが出題者の意図である。 問1 古事記で描かれる神の姿を通して、古代日本における世界理解を問うた。正答率はやや 低かった。 問2 ブッダの教えにおける煩悩からの解放について、正確な理解を問うた。正答率は標準的 であった。 問3 「末法思想」の概念を正確に理解しているかを問うた。正答率は低かった。 問4 孔孟の仁徳の思想を問うた。正答率は標準的であった。 問5 江戸時代の自然や世界をめぐる合理的思考についての理解を三浦梅園、貝原益軒、山片 蟠桃の三人の思想から問うた。正答率はかなり低かった。 問6 「純粋経験」から「絶対無」に基づく「場所の論理」へと展開する西田哲学の展開を問 うた。正答率は低かった。 問7 日本における「理」の変遷を理解し、リード文全体の趣旨が把握できているのかを問う た。正答率は高かった。 第3問 西洋近代思想における批判の営みを振り返ることで、社会の問題点を理解し、その中で 自らの生き方について批判的に考えることの重要性を意識させることを意図した。第3問は、 全体としては、得点率のやや低い難易度となった。 問1 古代ギリシア、キリスト教、さらにその影響を受けた近代に至るまでの批判的思考の特 徴を正しく理解しているかを問うたものであったが、正答率は低かった。 問2 古代以来の諸宗教における聖典に関する基本的な知識を問うた。正答率はやや低かっ た。 問3 ベーコンのイドラに関する基本的な知識を問うた。正答率は低かった。 問4 近代フランスの思想家に関する基本的な知識を問うた。正答率は標準的であった。 問5 カントの批判哲学に関する基本的な理解を問うた。正答率はやや低かった。 問6 ハイデッガーの思想に関する基本的な理解を問うた。正答率は低かった。 問7 リード文の趣旨を問い、批判することの意味を問うた。正答率は高かった。 第4問 リード文は、いわゆる「新興国」等の発展途上国の台頭を取り上げ、その背景となる国 際経済環境と、近年新たに生じつつある諸課題について論じている。各設問では、国際的・国 内的な政治・経済の諸原則・諸制度に関する正確な知識と論理的な思考力を、時事的な動向に ついての関心も含めて問うている。問1と問6の正答率が低く、全体としての得点率もやや低 かった。
倫理、政治・経済 問1 石油危機後の時期における世界経済で生じた事象の内容への理解や、それを説明する理 論的な知見を問うものである。正答率は低かった。 問2 日本で行われてきた行政改革についての基本的理解を問うものである。正答率は妥当で あった。 問3 主要国の政治体制の在り方を、複数の分類軸を組み合わせて分析できるかどうかを問う た。正答率はやや高かった。 問4 子どもがいる世帯の貧困率に関する最新の国際比較データに触れさせるとともに、そこ から読み取れること、及び主要国の社会保障支出の規模についての基礎的理解と関連付けた データの解釈について問う。同時に、時事的に重要性の高い、日本における合計特殊出生率 の現状についての理解も問う。正答率は妥当であった。 問5 財政について、租税と国債に関する内容の出題を行い、概念への理解やこれまでの主な 経緯への理解を問うものである。正答率はやや低かった。 問6 国際安全保障に関する二つの主要な立場である「勢力均衡」と「集団安全保障」につ き、それが現実の出来事や制度とどのように結び付いているかを、正確な知識及び論理的な 思考力の両面から問うた。正答率は低かった。 第5問 民主主義に関する二人の学生の会話文を基に、民主主義の基本原理や制度と、人権の保 障に関する知識を問う問題である。リード文(会話文)は、民主政と独裁政治との対抗関係を 軸にしながら、最終的に、有能なリーダーによる政治に比してもなぜ民主政を支持すべきであ るのかということについて、受験者に考えさせることを意図するものである。小問は、基礎的 な知識を問う問題のほか、資料の読み取り、思考力を試す問題も含めることによって、総合的 な学力を判定できるような出題を心掛けた。問7の正答率が高く、問3、5の正答率が低かっ たが、それ以外はおおむね妥当な正答率であった。 問1 ルソーの直接民主制の主張についての基礎的知識を問う問題である。リード文を受験者 にしっかりと読んでもらうという目的もあり、会話文の空欄補充という出題形式を採用し た。正答率は妥当であった。 問2 一票の格差の問題は投票価値の平等の観点から、繰り返し議論を提起してきた。本問 は、最高裁判所が示した違憲判断を図にしたものを参考にしながら、一票の格差の状態や、 それと密接に関わる選挙制度の在り方について考えてもらう問題である。図表を正確に読み 取る力や、選挙制度に関する知識を基に図表を解釈する力をみることを意図している。正答 率は妥当だった。 問3 日本の情報公開制度についての知識を問う問題である。参政権の行使の実効性を高める という観点から、情報公開制度の活用は重要な意義を有する。情報公開制度の下で、国民が いかなる権利を有し、どのような仕組みの下、情報公開制度が運用されているかについての 理解、及び情報公開制度の意義が個人情報保護法制の意義と異なることの理解を問うことを 目的としている。正答率はやや低かった。 問4 世界で近年起きたデモの動きに関する知識を問う時事問題である。各国でどのようなデ モが起きているのかについて、その空間的な理解を同時に問うことを意図している。正答率 は妥当であった。
問6 日本における統治機構に関する基本的知識を問う問題である。国会の位置付けや国会と 内閣の関係、国会における衆議院と参議院の関係について、「唯一の立法機関」や「衆議院 の優越」の内容理解を問うことを目的としている。正答率はやや高かった。 問7 人権の保障について、憲法及び各種の基本法の基礎的知識を問う問題である。正答率は やや高かった。 第6問 リード文は、市場経済の機能と限界、及びその補完のためのルールの設定を結び付ける ことで、現代社会の経済は市場に任される部分とルールなどの制度が関与する部分が混在する システムになっているという、現代経済の特質について理解してもらうことを目的としてい る。資本主義社会の変貌や消費者保護、ルールの市場への影響、日本経済などについて、理論 的な側面と事例に関連した問題を採用し、身近な問題として捉えてもらう意図もある。全体と して得点率は妥当であった。 問1 市場において両極を構成する商品と貨幣のうち、貨幣の機能についての基本的な理解を 問う。正答率はやや高かった。 問2 企業と市場に関して、基本的な理解を問う。正答率はやや高かった。 問3 消費者の四つの権利の問題を通し、消費者保護についての基本的な理解を問う。正答率 は妥当であった。 問4 市場での財やサービスの取引(均衡価格・取引数量)の決定に関して、基本的な理解を 問う。正答率は妥当であった。 問5 経済発展の歴史的経緯に関する基本的事項の理解を問う。正答率は妥当であった。 問6 経済学(者)が提示する理論や法則(経済学説)についての基本的な理解を問う。正答 率は妥当であった。 問7 第二次世界大戦後における日本経済の制度的枠組みに関する基本的な理解を問う。正答 率はやや低かった。 3 出題に対する反響・意見についての見解 第1問 「リード文が『言葉」について考えさせようとする意義は大きく」、「青年期の課題と現 代の倫理的課題とが融合された大問となっており、全体的に無理なくまとめられている」とい うコメントをいただいた。情報社会の光と影について理解を深め、そこからさらに言葉やコ ミュニケーションをめぐる倫理的問いを考えてもらいたい、というメッセージはある程度伝 わったのではないかと考えている。リード文と設問を有機的に密接に結び付けることを心掛け たが、リード文のメッセージ性と設問の一定の難易度を両立させることについては今後も検討 していく必要があるだろう。 問1 現代日本の家族についての基本的な理解を問うた問題である。「高校生に新たな視点を もたせる」問いであるとの評価もいただいているが、正答率は高かった。 問2 自我や自己の形成には、他者や社会との関わりが必要であることを多くの学者が立場や 表現を変えて主張している。いずれも各思想家の代表的な考えた方を問うたものであり、各
倫理、政治・経済 理論を理解していく上では、必要な知識ではなかったかと思われる。ただ、多方面にわたる 知識を必要としたためか、正答率はやや低くなった。 問3 他者への配慮が必要なときの言語の使い方には、発達段階の違いが影響することを図表 の読み取りを通して認識してもらうことを意図した。良問であるという評価をいただき、う れしく思う。図と選択肢を丁寧に読み取っていけば正解を導けるようになっており、そのせ いもあってか、正答率はやや高めであった。 問4 資料読解を通じてアーレントの「活動」を理解させ、その具体例を身近な行為の事例か ら選ばせるという出題であり、知識偏重ではなく考える力を問うことを目指した。「何のた めに倫理を学ぶのか」を受験者に理解させる工夫がなされている、という評価をいただいて いるが、正答率は低めであった。 問5 言語をめぐるウィトゲンシュタインの思想の内容を、その思想発展を踏まえて理解して いるかを問う問題であり、「先見的な有意義な出題」という評価もいただいているが、正答 率は低めであった。 第2問 本問題では、日本における思考のかたちと主体の在り方を、「理」という視点から時代 順に分析することで、高校生に日本における論理の在り方を考えてもらうことを目指した。そ の点については、「哲学的に深く踏み込んだ内容のリード文」と評価していただき、うれしく 思っている。その一方で、「内容が抽象的であり、受験者へのメッセージ性という観点で言え ば、日常生活レベルの視点が盛り込まれることが期待される」との御指摘をいただいた。確か に「理」という言葉自体はなじみが薄いが、日々の生活においても私たちは物事を順序立てて 考えるということをしており、論理的思考は決して日常からかけ離れたものではない。ただ し、このように一見抽象的にみえる内容をどれだけ平易な形で受験者に理解させるかという点 で一層の工夫が必要であった。また、個々の設問では、難易度を中心として、今後の検討課題 としたい。 問1 古事記で描かれる神の姿を通して、古代日本における世界理解を問う設問であった。 「教材としても良問」との評価を得たが、正答率はやや低かった。日本思想を理解するうえ で、神の理解は重要な点であるため、正確な学習を高校現場や受験者には求めたい。 問2 ブッダの基本的な教えの内容を問う問題であるが、「いずれの選択肢も細かく作られて おり、受験者には難しく感じられたかもしれない」との御指摘をいただいた。しかし、正答 率は標準的だったので、安堵している。なお、このような設問の場合、「ゴータマ=ブッダ の教え」として問うてほしいとの要望をいただいたが、そのような細かい配慮を今後も心掛 けるようにしたい。 問3 末法についての正確な理解を問うことを意図した問題であった。教科書を丁寧に読んで いれば解ける問題であるにもかかわらず、正答率は低かった。 問4 「平易」「易問」との評価をいただいたが、正答率はほぼ標準的であった。空所補充では なく正文を選ばせる選択肢の方が適切だったのではないかとの御指摘をいただいたが、基本 事項を取り上げる際の設問形式については、今後も繊細な配慮が必要だと実感している。 問5 従来、言及されることの少なかった江戸時代の合理的思考について問う設問であった。 「江戸庶民の合理的思想自体が、学習上の死角である」との指摘があったように、正答率は
も目を向けてもらえればと思う。 問6 西田幾多郎の『善の研究』を基に、中期・後期の「場所の論理」「絶対無」への展開を 理解することを意図した設問であった。西田哲学の中期・後期の展開については触れていな い教科書もあり、「ここでの出題が適切であるかは疑問」という御指摘をいただいた。今後、 教科書記載が少ない事項については、慎重な配慮を心掛けたい。 問7 リード文を丁寧に読んで、内容が理解できていれば正答を導き出すことが可能であり、 正答率も高かった。「高校生には一見取り組みにくい『理』という主題を各時代の思想家と 絡めた上で前向きな結びへと落としこんだ良問」という評価をいただき、安堵している。 第3問 リード文については、現代の我々が直面している新しい状況の中で、「『批判』という営 みを深く考察することによって、自己の在り方と社会のあるべき姿への思索へと導かれる、意 義深いものであった」との評価をいただき、出題意図を理解してもらえてうれしく思う。個々 の設問については、「それぞれの設問がリード文とのつながりを感じさせた」との評価もいた だいたが、他方で、難易度のばらつきなど、今後の課題にすべき点もある。 問1 出題において意図したとおり、「分野別・時代別の出題バランスを考えた問題」という 評価の一方で、「やや難しい問題である」との評価をいただいたが、各時代の思想をその時 代だけで完結させず、広い視野をもって比較する視野を学んでほしい。 問2 問1同様、分野別・時代別の出題バランスを意図したことについての評価をいただき、 安心している。また、「ユダヤ教の預言者たちの活動を積極的に評価する記述の選択肢が正 解になっているのが新鮮」との評価をいただいた。教科書においては、ユダヤ教がキリスト 教誕生の素地として、消極的な評価しかなされない傾向があるが、それにとどまらない理解 をしてほしいという出題意図があったが、それが伝わったようでうれしく思う。標準的な難 易度との評価であった。 問3 基本的な知識を問い、「難易度としては標準的」との評価もいただいたが、正答率は低 かった。「八つの選択肢であったため、表面的な学習にとどまった受験者は正解まで届かな かったであろう」との御指摘どおり、きちんと勉強した受験者のみが正解した結果であると 考えられる。 問4 各思想家の「思想についての知識と理解があれば正答に導くことができる、標準的な難 易度の設問」という評価どおりの正答率であり、受験者の基本的な理解が十分に確認された 出題であったと思われる。 問5 「高校生がキーワードを用いて安直に答えるのではなく、いかに思想を捉えられている かを問うことができる問」、「やや難しいが質の高い設問」との評価をいただき、うれしく思 う。「近年、カントをめぐる教科書記述はより詳細なものになってきているため、受験者も 教える側の教員も留意が必要であろう」との御指摘どおり、表面的ではない理解を心掛けて いただければ幸いである。 問6 「知識としては難しくないが資料を読み込ませながら考えるように工夫された良問であ る」との評価もいただいたが、「ハイデッガーの思想についての詳細な知識と理解が必要な
倫理、政治・経済 ため難しい設問となった」との御指摘どおり、正答率は低かった。特に、「故郷の喪失」に ついては、「近年確かに教科書への記述が見られるようになってきたが、授業で扱われるこ とも少ないため、受験者は戸惑ったのではないかと思われる」との御意見をいただいた。現 代の思想家についても十分に学習されるよう要望させていただくとともに、教育現場に配慮 した作問を一層心掛けるようにしたい。 問7 「文脈を正確に追いさえすれば、正答が得られる」との評価どおり、正答率は高かった。 「批判が社会や自己についての異なる可能性構想するためのものという趣旨は、現在高校2 年生や1年生にある高校生にとっても大切な学びのメッセージとなっている」という評価を いただき、出題意図が理解されてうれしく思う。 第4問 先進国の経済や資本の動向との複雑な絡み合いの中で、経済的発展を遂げた幾つかの発 展途上国の発展の歩みを概観した上で、国際経済から行財政改革、政治体制など、幅広い課題 について考える内容となっており、今後の国際社会の課題を展望するメッセージ性のあるリー ド文であるとともに、途上国の視点を高校生に示した意義は大きいと評価された。 問1 世界の1970年代以降の出来事について、基礎的な知識を問う問題であるが、やや難し い問題であるとの評価であった。正答率は低かったが、適切な問題であったと思われる。 問2 日本の1980年代以降の行政改革について、基礎的な知識を問う問題であるとの評価で あった。正答率は妥当であった。 問3 「高校生の多くがこういう枠組みで捉えたことがない」ような「新傾向」の問いであり、 「高校生に政治体制を捉える視点を示したという意義は大きい」と評価された。正答率はや や高かったが、適切な出題であったと思われる。 問4 「『政治・経済』の問題としては、今までにない新しい傾向の出題で特筆に値する」とい う、良い評価をいただいた。正答率も妥当であり、適切な出題であったと考える。 問5 租税や国債をめぐる問題について、基礎的な知識を問う問題であるとの評価であった。 正答率はやや低かった。 問6 「正確な知識を広く応用することが問われた」問題であり、「考えさせる工夫を示したこ とは意義がある」と評価された。正答率は低かったものの、適切な出題であったと思われ る。 第5問 リード文(会話文)については、幅広い話題をコンパクトにまとめたため、会話の脈絡 が不自然な個所がある旨の指摘もあるが、「若者の政治参加を促したいという、出題の意図が 感じられメッセージ性のあるものになっている」という評価であった。問7の正答率が高く、 問3、5の正答率が低かったが、それ以外はおおむね妥当な正答率であった。 問1 リード文を受験者にしっかりと読んでもらう趣旨については、「受験者にリード文を読 ませようとするメッセージが感じられる」との評価を受けた。正答率は妥当であった。 問2 「日本における一票の格差、選挙制度について、基礎的な知識を問う問題である」との 評価であった。図表を読み取る能力だけでなく、選挙制度についての知識も併せて問うこと ができたと考えている。正答率は妥当だった。 問3 「日本の情報公開制度について、基礎的な知識を問う問題」であり、「やや易しい問題で ある」との評価であった。個人情報保護法制についての記述を並べることにより、情報公開
求めている」との評価を受けた。正答率は妥当であった。 問5 「日本における参政権の保障について、基礎的な知識を問う問題である」との評価で あった。参政権の多様な内容、その保障の在り方についての理解を問うことができたと考え ている。正答率は低かった。 問6 「日本の国会の権限について、基礎的な知識を問う易しい問題である」との評価であっ た。国会を含む統治機構についての理解を問う問題であった。正答率はやや高かった。 問7 2 の労働基本法及び 3 の教育基本法については、基礎的な知識からの類推が必要で、「や や難しい」と評されたが、全体としては「正確な知識を広く応用することが問われた問題」 と評価された。正答率は、やや高かった。 第6問 リード文は「市場経済の正と負の両面を踏まえながら、市場取引を支えるルールをいか に作ってゆくのか」について、「広い視野と展望を持ち」「思考力や判断力を問う」問題である とし、「メッセージ性の強い」リード文であるとの評価を得た。全体として得点率は妥当で あった。出題については妥当と考えられる。 問1 貨幣の機能について、「基礎的」だが「具体的事例から正しいものを選ばせる工夫があ る」との評価を得た。正答率はやや高かった。 問2 企業や市場の仕組みについて「基礎的基本的な内容である」との評価を得た。正答率は やや高かった。 問3 消費者の四つの権利について「やや難しい」との評価であったが、「具体例と組み合わ せることで思考・判断の問いになるよう工夫されている」点が「評価できる」とのことであ る。正答率は妥当であった。 問4 「供給曲線の動きを考えながら判断する思考力が求められた」問題であり、「大学生にな る上で必要な考える力」について示されているとの評価を得た。正答率は妥当であった。 問5 「歴史の出題ではないか」との意見もあったとのことであるが、「多くの高校生に『政 治・経済』を学ぶ意義を訴えることになった」との評価を得た。正答率は妥当であった。適 切な出題であったと考えられる。 問6 経済学の理論に関する「基礎的基本的な知識・理解を問う」問題との評価を得た。正答 率は妥当であった。適切な出題であったと考えられる。 問7 細かい知識はなくとも、行政が様々な方法で日本経済に関わってきたことを理解すれば 解くことができるとの評価とともに、基礎的な知識を問う問題であるとの評価を得た。正答 率はやや低かったが、適切な出題であったと考えられる。 4 今後の作題に当たっての留意点 倫理部会と政治・経済部会それぞれの見解は、下記のとおりであるが、この科目の受験者の動向 を踏まえて、より一層の改善のため、この科目の作問の手順等について、それぞれの部会及び協議 の場において、検討する。 (倫理)
倫理、政治・経済 各方面からいただいた意見、指摘、評価などを参考にしながら、以下の諸点に留意して、今後の 問題作成に努める。 ⑴ これまで同様、分野別・時代別等においてバランスの取れた問題作成に努める。 ⑵ 基本的知識を基にしながらも、変化する社会に対応できる理解力、思考力、応用力を問う問題 作成に努める。 ⑶ 評価の高いリード文に基づく設問は継承しつつも、さらにそれを洗練させるよう改善を重ね、 リード文に密接に関連した、受験者に深く思考させる設問の作成に努める。 ⑷ 「倫理」とリード文、及び大部分の設問が共通となっているが、独自の問題を作成することも 含め、「倫理、政治・経済」の倫理部分の在り方について検討を重ね、改善に努める。 (政治・経済) 各方面からの意見、指摘及び評価を真摯に受け止めた上で、以下のような諸点に留意して、今後 の作問に取り組んでいきたい。 ⑴ 高等学校学習指導要領準拠の原則を、誠実に遵守する。かつ、高等学校学習指導要領の改訂の 方向性も視野に入れる。 ⑵ 「公民」教育への社会的要請に配慮し、大学入試センター試験の社会的な責任や影響力を考慮 し、公民教育の一環として現行の質を維持しつつ、更に改善し向上させる。 ⑶ 教科書に準拠した基礎的知識の習得を促進する問題とともに、総合的な理解力・論理的思考 力・資料読み取り等を求めるような問題や、時事問題を適切に導入する。 ⑷ 現行の高等学校教育の範囲と水準に配慮しつつ、同時に、「政治・経済」についての高等学校 教育の内容的発展に貢献できる出題とする。また、高等学校教育の大学教育への接続にも配慮 し、受験者の、「政治・経済」分野における学習意欲の向上、正確な知識の習得、問題関心の涵 養などを促す出題を目指す。 ⑸ 「公民」科目間の不公平が生じないように、得点目標値を念頭に置きながら、適切な難易度の 問題になるよう心掛ける。また、「政治・経済」内においても、政治・経済間の難易度のバラン スにも配慮する。 ⑹ 問題数・形式についても、リード文の効果的な位置付けや設問との関連性、問題の質の向上に 伴う妥当な問題数、時事問題の適切な出題範囲、さらに選択肢の適切な表現など、検討・改善を 行う。