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2-2  斜面地の環境特性・空間特性

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Academic year: 2022

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2-2  斜面地の環境特性・空間特性

2-2-1  環境特性(日照、通風、高燥性、風)

採光、通風、土地の高燥性

 地形による快適環境の特質として、採光、通風、土地の高燥性が挙げられる。日照は方位と相 関を持ち、南東、南が住宅系に多く見られ、北東が乾燥抑制のための生産植林地域に多い。高燥 性は一般に低地は湿度が高く台地は湿度が低く快適である。

立体的な緑の視認性

 実際に斜面地を歩いてみると、緑が空間形成において重要な役割を担っていることを感じさせ られる。その緑は、寺社、公園から独立住宅の庭や崖、階段脇から植木鉢に至るまで様々であり、

眺望点や変化のあるシークエンス等斜面の形態に基づく体験によって、斜面地の魅力を感じさせ る重要な要素となっている。また、緑は斜面の精神的負担を軽減したり、開発によって空間性が 大きく変化した際にその変化を和らげる側面も持っている。緑は斜面の魅力と問題点の両面に関 わる要素である。

 風向は地形の影響によるところが大きいとされる。斜面の下から上に向かって強い風が吹くこ とが多く、また谷に面した斜面では、地上風は斜面に沿って吹き、上空ではこれと直角の方向で 風が吹いている可能性もある。地上風の吹き方は複雑であり、局地的な傾斜だけでなく広域的な 傾斜によっても風向きは異なる2-1)。江戸は、昔から冬は北西よりの風が、夏は南よりの風が吹く といわれてきた。しかし、一部の地域では、さらに建物の高層化や気温の上昇など、都市化の影 響が地域の風向きにも影響を及ぼしていることが知られている2-2)。特に季節風や海陸風の影響が ないとき、都市内では都市自体の気温上昇に基づく、都市風と呼ばれる特有の気流が生じる。

地盤

関東ローム層は粘りがなく、水や土中の栄養分が受け止めにくく、それを地中深く逃がす。その ため、台地や丘陵に降った水は雨水を通しにくい地層のところで止まり、地層が露出している崖 の所まで流れ出る。山間の狭い低湿地を開いた谷地田では、周囲の台地や丘陵の麓からの湧水を そのまま利用することができる。

植物に対する環境

 斜面は、植物にとって土の流失、乾燥等決して生息しやすい環境ではなく、自然林の形で残さ れている斜面緑地の樹種を見ても環境圧に強い丈夫な樹種が優先して生息している。斜面緑地を 保護するためには法肩および法尻部分にそれと同程度の緑地が必要となり、斜面を取り巻く周囲 の緑地があって斜面そのもの保護がされる2-3)

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2-2-2  空間特性

 斜面地の空間特性としては、①景観、②ヒューマンスケール、③ 境界性が挙げられる。

①景観の固有性

 眺望は斜面都市の最も顕著な特徴であり、眺望等景観に着目した 計画が行われている都市は多い。このような都市の代表的な事例と して横浜・長崎・尾道が挙げられる。(表2-1)

 斜面都市の形成では、まず港など交通の要所を中心として市街地 が発展し、斜面地に寺社(神戸・横浜・函館などの明治以降の貿易 港として発展した都市では教会)が建てられていった。次に裕福な 人々をはじめとして、眺望の良い高台に居を求めて次第に斜面地に も住居が建てられていった。その後自動車交通への非対応から斜面 地は開発から取り残されていたが、近年、地形を場所の個性として 見直し景観を都市の顔して捉え、眺望等景観を配慮した建物ボ リュームの検討等の計画がなされている。例えば、尾道では眺望点 となる場所の幾つかを公園などのオープンスペースを設けて都市の 眺望を守ろうとしている。函館も眺望の対策を行っている都市の一 つであるが、函館のなかでもっとも眺望を堪能できるのはもちろん 有名な函館山である。函館が今のように有名になったのはこの函館 山からの市街地の夜景が「日本の100景」に選ばれたことにより全

計画前 計画的

長崎

・斜面丘陵地に囲まれ た深い入り地の億部に 立地している  ・市 街地の27%が傾斜度 15度を超える

・市街地が平坦部から 周辺の斜面に徐々にス プロール的に拡大

・市街地のスプロール 化を抑制

・斜面を避け、平坦部 の市街を重視

・ヒューマンスケー ルでの都市づくりの 展開に有効

・眺望など都市の強 烈な個性。

・計画的な開発の遅れによ る都市基盤施設の不足

・都市のスカイ ラインの操作

・斜面地の建物 の周辺との調和 を重視  ・景 観保全

横浜

・斜面緑地が河川流域 の平坦地の西側に連続 している   東西及 び南北に走る尾根を軸 として、大小の小尾根 や谷戸が入り組んだ起 伏に富んだ地形

・丘陵地帯では急激な 人口増加により都市基 盤施設が追いつかない 状態      ・急 激なモータリゼーショ ンにより、人間の生活 や街づくりの配慮に欠 ける

・歩行者空間としての 広場づくり、歩行者空 間の骨格としてのプロ ムナード

・変化のある小高い 丘陵と緑

・港と市街地の眺望

・丘陵の最後部では 東京や富士山を含む パノラマ景観

・開発(大規模な敷地を細 分化した宅地分譲、マン ション建設)による町並み の景観の変化

・景観保全の ルールづくり

・景観基準地点 の設置   ・ 公園の整備

・建築物のデザ イン調整

尾道(広島)

・市街を尾道水道

(海)と六甲]山ろく が挟み込む形となって いる

・市街地の発展と共に 山裾にまずお寺や豪商 の別荘が建てられ、次 第に住宅も建てられて いった。

・石を基調として歩行 系街路を整備

・歴史的建造物に誘導 的な街路の整備

・海や市街地を臨む 眺望

・道路が狭あいで屈曲道路 が多く、防災上からの道路 整備や観光対策上や生活上 の歩行者道路の整備が必要

・居住環境の整備

・土砂災害

・老朽家屋、廃屋の存在

・住宅密集地区 の解消   ・ 公園の整備 ・ 急斜面地のコン クリート方面を 緑化    ・ 街路整備

函館

・函館圏外の外縁を形 成する丘陵、山岳部、

扇状に展開する平野 部、その要に位置する 函館山、そしてそれら を包み込む海洋部があ

・あいつぐ大火にとも なう街区改正により、

広幅員の坂道や街路が 整備

・諸外国の文化を流入 しながらエキゾチック な町並みを形成

・函館山に続く坂道沿 いに現在に残る歴史的 建造物が立ち並ぶ

・「世界三大夜景の 一つ」うたわれる夜 景を丘陵地からなが められる。

・函館山がランド マークとなっている

・市街の拡大により夜景が 以前ほど美しくなくなり、

観光に影響を与えている

・歴史的建造物が立ち並ぶ 街路(坂道)にリゾートマ ンションが建設されてきて いる

・歴史的景観の 保全

・伝統的建造物 の保存 問題 方法・手段

地形の特徴 市街化

地形の魅力

写真2-7 日暮里富士見坂

写真2-6 坂上の眺望

2-1 全国の斜面都市の空間特性と取り組み

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国で有名になり、今では観光名所となって多くの人を集めている。

 東京では、江戸時代より多くの寺社が、緑に包まれ眺望のきく立 地条件の良い高台の端に置かれ、特に眺望の良い寺社は四季の名所 として人々を引き付けていた。また富士山を眺められる坂道(写真 2-6)なども多くあり、それらは富士見坂と呼ばれ江戸時代の絵画に もその眺めを描いたものが多数残っている。しかし現在では数多く ある富士見坂のうち富士山を眺められるものは、荒川区西日暮里の 富士見坂(写真2-7)のみになっている。また坂、階段は都市の風 景に変化を与え、境界要素として個性的都市景観を創り出してきた。

②ヒューマンスケール

 斜面を構成する階段、坂、崖は、行動の転換をもたらす空間文節 要素である。また東京都心部の斜面地は時間をかけて自然発生的に 形成されたことによって、石畳などの舗装の素材や建物と街路の隙 間などヒューマンスケールの保たれた濃密な空間となっている。例 えば文京区大塚では、住戸を繋ぐ階段がすり鉢状の広がりを持ち、

住戸のスケールにあった立体的な広場となっている。(写真2-8)ま た新宿区荒木町や新宿区神楽坂のように地形と結びついた個性を感 じさせる空間も見られる。(写真2-9)こういった空間性は眺望や変 化に富んだシークエンス等斜面の形態に基づく体験によって強く印 象づけられる。

③境界性

 江戸時代では東京の斜面は多くが緑地であり、高台の大名屋敷と 谷地や下町の町人地を視覚的にも境界を示しながら、江戸の魅力的 な風景として多くの絵などに残されている。実際に今でも当時ほど ではないが、例えばJR田町〜品川間に斜面緑地が残っており、当時 の二つの異なる世界の境界性を想像することができる。

写真2-8 広がりのある階段

写真2-9 神楽坂界隈

写真2-10 窪地にある密集住宅地(右 台地上より、左 住宅地内部) 写真2-11 行き止まりの路地

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 地形による階段や崖、袋小路等の街路形態といった細やかな境界要素は、地区の空間構成に大 きな影響を与えている。特に江戸時代の「高台の武家屋敷、低地の町人地」を受け継いだ空間性 が見いだせる箇所は数多い。特に地形の起伏が入り組んだ城南では、顕著にこの差異が見られる 箇所が多い。麻布では一般にお屋敷街といわれる高台の住宅地に隣接しているが、町人地を受け 継いだ狭小の敷地が地形のエッジに合わせて構成され、窪地独特の閉鎖的な空間となっている。

(写真2-10)この境界はコミュニティの境界となっていることもしばしばあり、コミュニティの 形成を左右する一つの大きな要因となっている。また崖によって閉じられた路地では、視線が抜 けないことによって私的な空間となっており、植木鉢や自転車が置かれ第三者が入り込みにくい 空間をつくりだしている。(写真2-11)

 またこのような境界要素は、人に安心感を与える空間性を生み出す。(表2-2)長崎では階段な どがあり子供が遊び、人が安心できる道を、街に「親しみ」を感じさせる独特の要因として、階 段を残して通過交通を排除した歩行者道路として整備する試みがなされている。

2-2 斜面勾配と人間行動、施設、造成の境界

(出典 進士五十八・鈴木誠・一場博幸「ルーラル・ランドスケープデザインの手法」) 

参照

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