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なお, 社会全体の高齢化の影響は調査サン プルにも表れており,2015 年調査における 60 代以上の割合は, サンプル全体の38.8% と約 4 割を占め,2010 年 ( 同 34.3%) と比べて増えている 60 代以上に占める各年層の割合をみると, 団塊世代を含む60 代後半が26% と最も

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Academic year: 2021

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(1)

ます進行する高齢化は,社会保障費や介護負 担の増加など,様々な課題を社会に提起して いる。同時に,平均寿命は男性80.79歳,女 性87.05歳と男女とも80歳を超えており3) 延びゆく“老後”の時間をいかに過ごすかは, 我々ひとりひとりの問題でもある。現在の高 齢層がどのような生活を営んでいるのか,そ してその生活がどう変化しようとしているの か。これらは,社会にとっても個人にとって も大きな関心事であろう。 本稿は2015年の国民生活時間調査のデー タをもとに,まず,高齢層の現在の状況につ いて,年齢が上がっていくにつれてどのよう に生活が異なっているのかをみる。続いて, 前回の2010年調査の結果と比較して,高齢 層の生活がどう変わったのかを明らかにし, さらに,年齢以外の属性によって,高齢者の 生活にどのような違いがあるのかも加えて分 析・考察する。

はじめに

2015年10月に実施した国民生活時間調査 の結果について,本誌2016年5月号で全体の 概要を紹介したが1),今号からは,この生活 時間調査のデータを様々な切り口で分析し, 現在の日本人の生活実態について3回シリー ズで明らかにしていく。第1回は「高齢者の 生活」について取り上げる。

「超高齢社会」の現状

日本では,総人口のうち65歳以上の占め る割合(高齢化率)が2007年に21%を超え, いわゆる「超高齢社会」と呼ばれる段階に なってきている。2015年10月の国勢調査で は,日本の高齢化率は26.7%に達し2),世界 で最も高齢化が進んでいる。 いわゆる「団塊の世代」(1947 ~ 49年生ま れ)は2017年に70歳を迎える。今後もます

「超高齢社会」ニッポンの老後の生活

世論調査部

吉藤昌代 / 渡辺洋子

生活時間調査のデータを様々な切り口で分析し,現在の日本人の生活実態について明らかにするシリーズの1回目 として「高齢者の生活」を取り上げる。高齢者の生活時間を年齢ごとに比べてみると,特に男性は60 代から70 代 前半にかけて仕事時間が大きく減少し,テレビの視聴時間は男女とも70 代後半まで増加する。また,レジャー活動 のピークは 70 代前半で,70 代後半以降は体力的に難しくなる側面がうかがえる。高齢者の生活の20 年の変化を みると,まず高齢男性の有職者の増加が挙げられる。男性有職者について50 代と60 代,70 代の生活を比較すると, 高齢有職者は現役層に比べ仕事時間が短く,生活にゆとりがある。しかし60 代で勤め人が増え,仕事時間も長く なっており,今後の 60 代の生活はより現役層に近づいていくことが予想される。2 つめに,70 歳以上でレジャー活動 をする人が増加したことが挙げられる。70 代無職の人の生活についてレジャー活動の有無で違いをみると,レジャー 活動を行う人の生活は行わない人よりも活発で,時系列でみてもより活動的になっていた。これらの変化のほか,さ らに高齢者全体でメディアの様相が変化し,ビデオ・HDD・DVDやインターネットが浸透しつつあることが明らかに なった。今後も新たなメディアが高齢者に普及し,高齢者のメディア利用が現役層に近づくことが予想される。

国民 生 活 時 間 調査から読み解く ①

(2)

3 APRIL 2017 なお,社会全体の高齢化の影響は調査サン プルにも表れており,2015年調査における 60代以上の割合は,サンプル全体の38.8%と 約4割を占め,2010年(同34.3%)と比べて増 えている。60代以上に占める各年層の割合 をみると,団塊世代を含む60代後半が26% と最も多い。平日の男女年層別サンプル数と 構成比は表1を参照されたい。 表 1 調査有効サンプル実数・サンプル構成比(平日) 図 1 50 代以上の1日の時間配分 (平日・男女年層別 5 歳刻み) 平日 2015 年 2010 年 実数 (人) 構成比(%) (人)実数 構成比(%) 男 50 代 724 − 329 − 女 50 代 802 − 405 − 60 歳以上 合計 4,266 100.0 1,593 100.0 男 60 ~ 64 歳 469 11.0 197 12.4 男 65 ~ 69 歳 508 11.9 148 9.3 男 70 ~ 74 歳 383 9.0 168 10.5 男 75 ~ 79 歳 315 7.4 120 7.5 男 80 歳以上 288 6.8 86 5.4 女 60 ~ 64 歳 515 12.1 246 15.4 女 65 ~ 69 歳 618 14.5 192 12.1 女 70 ~ 74 歳 418 9.8 171 10.7 女 75 ~ 79 歳 347 8.1 138 8.7 女 80 歳以上 405 9.5 127 8.0

1. 高齢者の年齢による生活の違い

(1)1 日の時間配分

はじめに,年齢を重ねるに従って高齢者の 生活がどのように異なっているのか,5歳刻 みでの違いをみる。行動別の詳細な分析に入 る前に,大きく60代以上の生活の特徴を確 認したい。 図 1 は,各行動を拘束行動,必需行動,自 由行動,その他に大きく分類し,1日の中で どれだけの時間をそれぞれの行動に費やして いるかをまとめたものである8)。これをみる と,仕事や家事などの「拘束行動」に費やす 時間が,60代以降,年齢が上がるにつれて 短くなっていくことがわかる。 1日の時間配分は,この拘束行動によって 大きく規定される。年齢が上がるにつれ減っ ていく拘束行動の時間を,睡眠や療養・静養 などの「必需行動」と,テレビをはじめとし

高齢者とは何歳からか

何歳以上を「高齢者」と呼ぶかについて特 に決まりはないが4),2010年の国民生活時間 調査の分析から,一般的に定年を迎える5)60 歳を境に生活が大きく変化することが明らか になっている6)。そこで,本稿では60歳以上 を高齢者として,分析・考察していく。 また,60代以上では,平日と土曜・日曜 の生活時間の差が小さいこともすでに同様に 明らかになっていることから7),今回は便宜 的に平日のデータを分析する。 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 660 720 780 840 自由行動 拘束行動 必需行動 2015 年 2005 年 1995 年 必需行動 拘束行動 自由行動 10:09 8:58 8:39 4:38 4:29 10:10 10:12 10:12 8:36 4:41 4:42 10:03 8:36 8:30 4:48 【平日】 男性 女性 11:09 9:14 3:16 9:52 9:33 4:05 10:20 9:49 3:29 9:06 9:43 4:39 8:43 9:59 4:45 8:20 9:57 5:10 6:14 10:26 6:36 6:48 10:27 6:01 4:19 11:08 7:56 5:27 10:51 6:49 3:49 11:26 7:48 5:06 11:26 6:33 2:52 12:26 7:49 2:57 12:31 7:25 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 自由行動 拘束行動 必需行動 【全員平均時間】 14:00 (時間:分) (歳) 12:00 10:00 8:00 6:00 4:00 2:00 0:00 自由行動 拘束行動 必需行動

(3)

4 APRIL 2017 たマスメディア接触,レジャー活動などの 「自由行動」に振り分けていく。男性は70代 前半までは主に自由行動の時間が増え,それ 以降,自由行動は増えず睡眠などの必需行動 の時間が増えている。女性も70代前半まで は主に自由行動の時間が増え,それ以降は必 需行動の時間が増える。男性とは異なり80 歳以上は自由行動の時間がさらに増えるが, 増加した自由行動をみると休息の時間量が最 も多く,体を休めるための時間を増やしてい ることがわかる。

(2)仕事,家事

ここからは,主な行動ごとに高齢者の生活 を細かくみていく。 まずは,高齢者の生活に大きな影響を与え ている仕事と家事について取り上げるが,そ の前に,この調査における60代以上の高齢 者の職業別構成を付帯質問の結果から確認し ておきたい(図2)。 60代以上と,比較対象である20 ~ 50代の 最も大きな違いは有職者の割合である。男性 は50代以下の9割が有職者であるのに対し, 60代では7割,70代では3割と急激に減って いく。職業の内容をみると,50代以下では 勤め人が多く,有職者の84%が勤め人であ る。一方,60代や70代になると有職者の割 合が減るとともに,有職者に占める勤め人の 割合が減り(60代66%,70代37%),農林漁 業者や自営業者の割合が高くなる。企業に勤 める典型的なサラリーマン(いわゆる勤め人) のような働き方は60代を境に減少している 図 2 男女年層別の職業別構成比(付帯質問) 無回答 学生 無職 専門職・自由業・その他 自営業者 農林漁業者 勤め人 80 歳以上 70 代 60 代 20 ∼ 50 代 80 歳以上 70 代 60 代 20 ∼ 50 代 0 20 40 60 80 100 主婦 無回答 学生 無職 専門職・自由業・その他 自営業者 農林漁業者 勤め人 80 歳以上 70 代 60 代 20 ∼ 50 代 80 歳以上 70 代 60 代 20 ∼ 50 代 0 20 40 60 80 100 無回答 学生 無職 主婦 専門職・自由業・その他 自営業者 農林漁業者 勤め人 80 歳以上 70 代 60 代 20 ∼ 50 代 80 歳以上 70 代 60 代 20 ∼ 50 代 76% 2 6 6 5 4 1 48 6 12 6 26 2 0 13 8 9 5 65 1 1 11 41 82 1 60 2 4 7 3 3 1 21 27 4 8 3 16 1 42 7 3 5 1 44 38 1 1221 21 73 1 男性

エクセル原稿中の「主婦」を

データから除いて、グラフ化したもの

エクセル原稿中の「主婦」を

右端に移動したもの

エクセル原稿どおり

(「勤め人」を冒頭に、データ順番入れ替え)

0 0 0 0 0 80歳以上 (209人) 70代 (515人) 60代 (690人) 20∼50代 (1,924人) 有職者 90% 有職者 73% 有職者 34% 有職者 17% 有職者 72% 主婦 有職者 42% 有職者 17% 有職者 5% 女性 80歳以上 (296人) 70代 (555人) 60代 (790人) 20∼50代 (2,030人) 主婦 無職 学生 無回答 専門職・自由業・その他 自営業者 農林漁業者 勤め人 と考えられる。 女性の場合でも,有職 者の割合は50代以下で7 割あるのに対し,60代で 4割と半数以下になり, 70代では17%まで減る。 ただし,主婦の割合が50 代以下の2割から60代で は4割に増え,家事の担 い手としての責任は続く。 70代になると無職の割合 が主婦と同じ4割近くま で増え,80歳以上になっ て7割以上が無職となる。 続いて,2015年調査の データから,仕事の行為 者率と時間量が年齢に よってどう異なっている のかをみていく(図3)。

(4)

平日,男性の50代は90%を超える人が仕 事をしているが,60代以降70代前半まで, 年齢が上がっていくごとに直線的に減少し, 仕事をする人の減少が仕事時間の減少にもつ ながっている。70代以降は,平日でも約7割 が仕事をしていない状態となり,労働という 観点からは社会の一線を退いているといえ る。 女性はもともと50代以前から男性より有 職者の割合が低く,またパートタイムで働い ている人の割合が高いため9),行為者率,時 間量ともに男性を大きく下回るが,60代以 降70代前半まで,年齢が上がっていくごと に仕事の行為者率,時間量とも減っていく形 は男性と同様である。 次に,家事の行為者率と時間量をみる(図4)。 男性では仕事と対照的に,家事をする人は 70代前半まで漸増し5割を超えるが,以降は 横ばいである。また時間量も60代で1時間を 超えるが,それ以降大きくは増加しない。60 代を境に男性の仕事時間は大きく減少してい くが,家事に費やす時間はさほど増えないこ とがわかる。 一方の女性は,70代後半まで95%前後の 人が家事をしていて,80歳以上になると7割 に減少する。時間量をみると70代後半まで は4時間以上を家事に費やしているが,80歳 以上では2時間半まで減少する。前述した無 職の人の割合の変化(70代38%→80歳以上 73%)を考え合わせると,女性は80歳以上に なってようやく主婦として家庭を担う責任か ら解放されるといえる。

(3)睡眠,療養・静養

続いて,必需行動に分類される睡眠と療 養・静養についてみていく。 図 5 は50代以上の睡眠,療養・静養,休息 の時間量を示したものである。なお,休息は 行動分類上は自由行動に分類されるが,高齢 者にとっては睡眠などと同じく肉体的ケアと しての意味合いが大きいと考えられるので, 参考として掲載する。 図 3 50 代以上の仕事の行為者率と時間量 (平日・男女年層別 5 歳刻み) 図 4 50 代以上の家事の行為者率と時間量 (平日・男女年層別 5 歳刻み) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 行為者率 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 全員平均時間 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 2015 年 2005 年 1995 年 必需行動 拘束行動 自由行動 10:09 8:58 8:39 4:38 4:29 10:10 10:12 10:12 8:36 4:41 4:42 10:03 8:36 8:30 4:48 【平日】 男性 女性 9:03 91 5:04 69 8:25 92 4:28 61 6:30 75 2:57 45 4:18 57 1:43 29 2:23 34 0:57 19 2:00 34 0:58 20 1:09 23 0:19 9 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 10:00 9:00 8:00 7:00 6:00 5:00 4:00 3:00 2:00 1:00 0:00 (時間:分) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) (歳) 行為者率 全員平均時間 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 行為者率 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 全員平均時間 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 2015 年 2005 年 1995 年 必需行動 拘束行動 自由行動 10:09 8:58 8:39 4:38 4:29 10:10 10:12 10:12 8:36 4:41 4:42 10:03 8:36 8:30 4:48 【平日】 行為者率 全員平均時間 男性 女性 0:31 35 4:16 96 0:36 38 4:23 97 1:07 45 4:59 98 1:12 47 4:55 97 1:30 54 4:27 97 1:22 52 4:08 94 1:25 51 2:32 73 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 10:00 9:00 8:00 7:00 6:00 5:00 4:00 3:00 2:00 1:00 0:00 (時間:分) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) (歳)

(5)

睡眠時間は男女ともに70代後半まで年齢 が上がるにつれて緩やかに増加し,80歳以 上で大幅に伸びる。 療養・静養の時間量をみると,男性では 80歳以上でも30分未満であるが,女性は70 代後半で37分,80歳以上で48分まで増加し, 増え幅が男性よりやや大きい。 身体を維持し健康を保つために,高齢にな ればなるほど,これらの行動に費やす時間が 長くなっていくのは共通した特徴である。特 に70代後半以降は,それ以前に比べ,睡眠 のほか休息など体を休めるための時間がある 程度必要になることがわかる。

(4)マスメディア接触,レジャー活動

最後に,自由行動に分類されるマスメディ ア接触とレジャー活動を取り上げたい(図6)。 マスメディア接触の時間量は,男女とも 70代後半まで,年齢を重ねるごとに増加し ていく。特に男性の増加量は大きく,50代 後半から60代前半,さらに60代後半までは, それぞれ1時間以上ずつ増やしていく。前述 のとおり,男性は60代を境に仕事時間を大 きく減らすが,減らした時間の半分以上をこ のマスメディア接触に振り分けている。 また,マスメディア接触の増加ほど大きく ないが,レジャー活動の時間も60代以降70 代前半まで,徐々に増えていく様子がわか る。マスメディア接触は70代後半まで伸び ていくが,レジャー活動のピークは男女とも 70代前半である。比較的受動的に行えるマ スメディア接触は,年齢が上がっていっても 選択しやすい行動だが,スポーツや行楽・散 策など積極的に行動する必要があるレジャー 活動は,70代後半以降,体力的に難しくな る側面があると考えられる。 以降,マスメディア接触とレジャー活動に ついて,それぞれをより詳しくみていく。 表 2 は,男女年層別の各メディアの行為者 率と時間量である。まず,テレビが行為者率, 図 6 50 代以上のマスメディア接触,レジャー活動の 時間量(平日・男女年層別 5 歳刻み) 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 マスメディア接触 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 レジャー活動 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 10:00 9:00 8:00 7:00 6:00 5:00 4:00 3:00 2:00 1:00 0:00 (時間:分) (歳) 男性 女性 2:50 0:54 3:33 0:43 4:41 1:05 5:51 1:44 6:31 2:10 6:54 1:31 6:45 1:18 4:34 0:59 5:04 1:04 5:39 1:01 5:47 1:25 6:23 1:40 6:56 1:11 7:01 0:37 レジャー活動 マスメディア接触 【全員平均時間】 レジャー活動 マスメディア接触 図 5 50 代以上の睡眠,療養・静養,休息の時間量 (平日・男女年層別 5 歳刻み) 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 全員平均時間 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 休息 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 0 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 療養・静養 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 80 以上 75∼79 70∼74 65∼69 60∼64 55∼59 50∼54 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 10:00 9:00 8:00 7:00 6:00 5:00 4:00 3:00 2:00 1:00 0:00 (時間:分) (歳) 男性 女性 0:29 6:39 0:03 0:25 7:02 0:11 0:26 7:10 0:08 0:29 7:29 0:16 0:39 7:53 0:12 0:48 8:01 0:22 1:01 8:46 0:27 0:29 6:27 0:10 0:25 6:36 0:10 0:28 6:54 0:08 0:32 7:14 0:16 0:38 7:20 0:21 0:40 7:34 0:37 1:12 8:35 0:48 療養・静養 休息 睡眠 【全員平均時間】 療養・静養 休息 睡眠

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時間量ともに,他のメディアを圧倒している のがわかる。高齢者のマスメディア接触の 時間量のうちおよそ8割をテレビが占めてお り,先に述べたマスメディア接触の様相は, ほぼテレビについての特徴であるといえる。 男女とも高齢になるほどテレビの時間量は増 大していき,最も多い80歳以上の女性では1 日の視聴時間が5時間49分に及ぶ。 テレビの次に行為者率が高いのは新聞,続 いてラジオである。新聞の行為者率は男性の 60代後半以上と,女性の70代前半で60%以 上であるが,女性は70代後半以降減少する。 ラジオの行為者率は男性70代後半以上と女 性の60代以上で約2割と高めである。新聞, ラジオともに60代以上の行為者率は50代以 下より高く,テレビほどではないが高齢者に よく利用されるメディアであるといえる。 次にレジャー活動の各行動と,会話・交際, 社会参加10)の行為者率を示す(図7)。各レ ジャー活動の行為者率は,年を経るに従って 表 2 50 代以上の各メディアの行為者率と時間量(平日・男女年層別 5 歳刻み) 男性 女性 50 ~ 54 歳 55 ~59 歳 60 ~64 歳 65 ~69 歳 70 ~74 歳 75 ~79 歳 80 歳以上 50 ~54 歳 55 ~59 歳 60 ~64 歳 65 ~69 歳 70 ~74 歳 75 ~79 歳 80 歳以上 テレビ 80 90 92 94 94 98 96 91 96 94 96 97 97 93 2:14 2:44 3:28 4:27 5:07 5:18 5:26 3:27 3:51 4:14 4:28 5:02 5:38 5:49 新聞 35 42 45 60 66 69 61 37 43 53 59 62 51 48 0:11 0:15 0:21 0:32 0:42 0:52 0:41 0:12 0:15 0:22 0:28 0:33 0:30 0:34 ラジオ 8 13 18 16 16 23 22 12 17 21 19 21 25 20 0:10 0:16 0:35 0:29 0:29 0:37 0:30 0:21 0:28 0:35 0:29 0:31 0:42 0:40 雑誌・マンガ・ 本 10 12 14 17 15 17 14 17 18 21 18 22 13 11 0:08 0:07 0:11 0:19 0:12 0:20 0:14 0:09 0:09 0:15 0:14 0:17 0:12 0:08 ビデオ・ HDD・DVD 12 12 15 16 13 7 5 22 24 20 15 12 6 4 0:12 0:13 0:17 0:22 0:14 0:07 0:06 0:26 0:25 0:23 0:20 0:13 0:08 0:04 CD・テープ 4 6 3 2 4 4 4 8 8 6 4 7 3 2 0:03 0:05 0:04 0:02 0:02 0:03 0:07 0:06 0:04 0:05 0:03 0:06 0:03 0:02 上段:行為者率(%),下段:全員平均時間(時間:分) 図 7 50 代以上の各行動の行為者率(平日・男女年層別 5 歳刻み) 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 50∼ 54 55∼ 59 60∼ 64 65∼ 69 70∼ 74 75∼ 79 80以 40 35 30 25 20 15 10 5 0 (%) (歳) 11 6 24 25 14 11 8 8 6 3 17 6 18 10 14 19 11 7 8 4 5 3 24 5 14 14 13 21 16 10 12 6 9 6 24 8 23 21 12 17 20 17 16 17 7 6 21 10 27 33 9 16 25 21 18 18 12 8 22 13 18 29 6 11 19 19 13 11 4 10 20 16 14 23 3 6 14 20 8 9 5 7 20 13 女性 男性 行楽・散策 趣味・娯楽・教養の インターネット 趣味・娯楽・教養 スポーツ 社会参加 会話・交際

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上がっていくが,趣味・娯楽・教養のインター ネット(以下,インターネットと表記)だけ は年齢とともに下がり,行為者率に男女差・ 年層差がみられる。 男性では,行楽・散策やスポーツの行為者 率が70代前半でピークとなる。趣味・娯楽・ 教養は70代前半以降,2割程度の行為者率を 維持する。社会参加や会話・交際は,70代 後半が行為者率のピークであるが10%台に とどまる。 女性の場合は,70代前半が行為者率のピー クである行動がほとんどで,行楽・散策,趣 味・娯楽・教養,スポーツ,社会参加のいず れも,70代後半以降は減少する。会話・交 際だけが,60代以降すべての年層で2割を超 える行為者率を維持しており,年齢にかかわ らず周囲との付き合いを楽しむ女性の姿が透 けてみえる。

2. 高齢者の生活の変化

(2010 年調査との比較)

続いて2章では,前回2010年調査の結果と 比較して,高齢者の生活がどう変わったの か,またその背景は何かを考察する。

(1)高齢者の構成上の変化

まずはこの調査における高齢者の構成の変 化を確認しておきたい。 本稿の最初に述べたように,2015年調査 における60代以上の高齢者の割合は2010年 と比べて増加している。また,60代以上に 占める各年層の割合をみると,この5年で団 塊の世代が60代前半から60代後半に移った ため,60代前半の割合が減少(28%→22%) し,60代後半の割合が増加(22%→26%)し ている。 付帯質問の結果から職業別構成比の変化を みると(表3),2010年から2015年にかけて, 男60代で有職者が増加し,男70歳以上でも やや増加している。 職業別では,男60代で勤め人(2010年41% →2015年48%)と専門職・自由業・その他が 増加し,無職が減少した。男70歳以上では, 農林漁業者が増加した。また,女性では60 代で事務職・技術職が増加したほか,女70 歳以上で主婦が増えて無職が減少している。 このように,対価を得る仕事であるかどう かにかかわらず,高齢者では労働する人が増 えているといえる。特に,男性高齢者での有 職者の増加やその社会的背景,また働き方の 変化については,のちほど3章で詳しく触れ ることにしたい。

(2)変化がみられた主な行動

次に,具体的にどんな行動で変化がみられ たのかを挙げていく。表4は2010年と2015 年を比べて変化があった主な行動の全員平均 時間と行為者率を男女年層別にまとめたもの である。この中から,変化が目立つ主だった 行動について,年層ごとに分析・詳述する。 まず男60代では有職者が増加したことを 背景に,仕事と通勤の時間が長くなり,その 分,テレビや新聞といったメディア接触の 時間が短くなっている。男60代の仕事とテ レビの行為者率を30分ごとの時刻別でみる と,仕事の行為者率が増加している日中の時 間 帯(10時 ~ 12時,13時 ~ 16時,16時30 分~17時)でテレビの行為者率が減少してい る(9時~ 11時,12時~ 13時,14時~ 16時)。

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表 3 60 代以上の職業別構成比(付帯質問・2010 年と 2015 年の比較) 表 4 60 代以上の 2010 年と 2015 年で変化のあった主な行動の時間量と行為者率(平日・2010 年と 2015 年の比較) 男 60 代 (%) ’10 年 ’15 年 有職者 64 < 73  農林漁業者 5 6  自営業者 15 12 勤 め 人 販売職・サービス職 5 7 技能職・作業職 21 24 事務職・技術職 10 11 経営者・管理職 5 6  専門職・自由業・その他 4 < 6 無職 33 > 26 女 60 代 (%) ’10 年 ’15 年 有職者 41 42  農林漁業者 3 4  自営業者 11 8 勤 め 人 販売職・サービス職 14 15 技能職・作業職 5 4 事務職・技術職 4 < 8 経営者・管理職 0 0  専門職・自由業・その他 3 3 主婦 42 42 無職 15 16 男 70 歳以上 (%) ’10 年 ’15 年 有職者 24 29  農林漁業者 4 < 9  自営業者 7 8 勤 め 人 販売職・サービス職 1 2 技能職・作業職 4 5 事務職・技術職 1 1 経営者・管理職 2 1  専門職・自由業・その他 4 4 無職 75 70 <:2010 年と比較して,2015 年の方が統計的に高い >:2010 年と比較して,2015 年の方が統計的に低い 女 70 歳以上 (%) ’10 年 ’15 年 有職者 12 13  農林漁業者 4 3  自営業者 4 4 勤 め 人 販売職・サービス職 2 2 技能職・作業職 0 1 事務職・技術職 1 1 経営者・管理職 0 1  専門職・自由業・その他 1 1 主婦 28 < 36 無職 58 > 50 男 60 代 全員平均時間 (時間:分) 行為者率(%) ’10 年 ’15 年 ’10 年 ’15 年 仕事 4:47 < 5:21 60 66 通勤 0:40 < 0:48 48 53 趣味・娯楽・教養 0:32 0:26 20 > 14 趣味・娯楽・教養のインターネット 0:14 < 0:23 16 19 テレビ 4:29 > 3:59 93 93 新聞 0:33 > 0:26 68 > 53 雑誌・マンガ・本 0:10 < 0:15 14 16 ビデオ・HDD・DVD 0:09 < 0:19 10 < 15 休息 0:29 0:28 48 > 42 女 60 代 全員平均時間 (時間:分) 行為者率(%) ’10 年 ’15 年 ’10 年 ’15 年 通勤 0:16 0:17 22 < 28 趣味・娯楽・教養 0:35 > 0:24 19 18 ラジオ 0:36 0:32 25 > 20 新聞 0:32 > 0:25 66 > 56 雑誌・マンガ・本 0:11 < 0:15 22 20 ビデオ・HDD・DVD 0:08 < 0:21 8 < 17 男 70 歳以上 全員平均時間 (時間:分) 行為者率(%) ’10 年 ’15 年 ’10 年 ’15 年 食事 1:51 < 1:58 100 100 身のまわりの用事 1:04 < 1:09 99 > 96 仕事 1:23 < 1:54 25 < 31 通勤 0:10 0:12 10 < 14 家事 1:31 1:26 59 > 53 社会参加 0:21 > 0:12 15 > 8 行楽・散策 0:43 > 0:32 38 > 29 テレビ 5:39 > 5:16 98 96 新聞 0:51 > 0:45 78 > 66 <:2010 年と比較して,2015 年の方が統計的に多い,高い >:2010 年と比較して,2015 年の方が統計的に少ない,低い 女 70 歳以上 全員平均時間 (時間:分) 行為者率(%) ’10 年 ’15 年 ’10 年 ’15 年 食事 1:52 < 1:57 100 100 療養・静養 0:48 0:35 21 > 16 会話・交際 0:30 > 0:20 27 > 21 スポーツ 0:09 0:12 8 < 13 ビデオ・HDD・DVD 0:03 < 0:08 2 < 7

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また新聞は,テレビと同様に仕事が増加して いる時間帯(15 ~ 16時)のほか,仕事とは 直接関係がない朝(6時~ 6時30分,7時30 分~ 8時)や夜の時間帯(19時~ 19時30分) でも行為者率が減っており,新聞を読むとい う習慣自体が失われつつあることがうかがえ る。 メディア接触行動のうち,時間量,行為者 率ともに増えたのが,ビデオ・HDD・DVD である。後述するが,男60代に加え女60代 以上でも,ビデオ・HDD・DVDの時間量と 行為者率は増加している。高機能な録画再 生機器の普及によって11),ビデオ・HDD・ DVDを見るという行動が高齢者にも浸透し つつあるといえよう。加えて,男60代では インターネットの時間量も増加しており,高 齢者のメディア行動の多岐化を示す端緒と考 えられるのではないだろうか。 男70歳以上でも有職者がやや増え,それ に伴って仕事の時間量と行為者率,通勤の行 為者率が増加している。さらに,食事,身の まわりの用事といった必需行動の時間量が 2010年に比べ増えている。逆に,テレビや 新聞といったメディア接触と,行楽・散策, 社会参加は2010年から時間量が減少した。 続いて,女60代では,2010年に比べて事 務職・技術職が増えたために通勤をする人が 増えているほかは,主に自由行動の内容が変 化しているといえるだろう。ビデオ・HDD・ DVDの行為者率と時間量,雑誌・マンガ・本 の時間量が増えている一方で,趣味・娯楽・ 教養と新聞の時間量が減少している。新聞は 行為者率も減少し,ラジオも同様に減少して いる。 最後に,女70歳以上の行動の変化だが, 男性と同じく,食事の時間が長くなってい る。そのほか,男女60代と同様に,ビデオ・ HDD・DVDの時間量と行為者率が増加して いる。また,会話・交際と療養・静養の行為 者率が減少する一方で,スポーツの行為者率 が増加していた。女70歳以上が,おしゃべ りや心身の療養といったどちらかというと静 的な行動を減らして,活発に行動する方向に 変化している様子がうかがえる。70歳以上 の療養・静養とスポーツの30分ごとの行為 者率をそれぞれ2010年と比べてみても,10 時~ 11時30分までの午前帯で病院へ行くと いった療養・静養が減り,代わりに10時30 分~ 12時までの時間帯でスポーツが増えて おり,より健康的な生活を送る人が増えてい る。

(3)2010 年からの行動変化のまとめ

60代以上の高齢者の生活について,この 5年間の変化をまとめると,男性は有職者の 増加が生活に大きな影響を与えていることが 明らかである。仕事という拘束時間が増えた のに伴い,これまでテレビや新聞といったメ ディア接触にあてていた時間が大きく削られ ている。また,男60代ではビデオ・HDD・ DVDやインターネットなど,これまで高齢 者では少なかったメディアの時間が増えてい た。5年前と比べると,実際に60代のメディ ア利用は急速に進んでいる12)。さらに,デジ タル機器やインターネット利用に比較的抵抗 のない50代が高齢者に加わっていけば,高 齢者のメディア行動はこれまで以上に現役層 に近づいた内容になるのではないだろうか。 女性では,男性ほど有職者の割合が5年前 から増えてはいないため,変化があった行動

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の数が男性より少なかった。この5年間で, 女60代では主に自由行動の内容が変化した。 新聞や趣味・娯楽・教養に費やす時間が減り, ビデオ・HDD・DVDの時間が増えた。また, 女70歳以上では療養・静養する人が減り, 代わりにスポーツをする人が増えるなど,よ り活動的な生活を送るようになっている。女 性でも60代以上の就労が増えていけば13) 次は女性の高齢者の生活が大きく変わってい くことになるのかもしれない。

3. 属性による生活の違い

さて,2章で見出された高齢者の生活の変 化のうち,2つの事象について,属性によっ て生活がどのように異なるのか,その違いを 比較したい。1つめは,高齢男性の働き方に ついてである。男60代以上で有職者が増加 していたが,その増加した60代以上の有職 者は,はたして50代までと同じように働い ているのだろうか,もし異なるとしたら,そ の違いによって生活はどう変わるのだろう か。これらを検証するために,男性有職者に ついて,50代,60代,70代を比較する。 2つめは,活動的かどうかによって,生活 がどのように違うのかについてである。女 70歳以上で療養・静養をする人が減り,代 わりにスポーツをする人が増え,活動的な 生活になっていた。しかし,70歳以上の平 日のレジャー活動の行為者率は49%と,レ ジャー活動を行わない人も約半数存在してい る。活動的な人の増加に注目が集まりがちで あるが,高齢者の生活を理解する上では,活 動的な人と活動的ではない人双方の生活を把 握することが重要である。そこでレジャー活 動の有無による生活全体の違いを比較する。 さらにこの2つの観点について,過去との 比較を通じて,高齢者の生活がどうなってい くのか,今後の展望を考察したい。

(1)高齢有職者の働き方と日常生活

働き方の違い まず,増加した60代以上の有職者の働き 方を明らかにする。職業形態をみると(表5), 男50代有職者では大半がフルタイムとして 働いているが,60代になるとフルタイムが 60%台となり,70代になると40%にまで減 少する。一方で,平日の仕事の行為者率は, 男50代有職者(95%)に比べて,男60代有職 者(87%),男70代有職者(83%)ではやや減 るものの,どの年層でも仕事をしている人が 8割を超えていることに変わりはない。 表 5 男 50 代,60 代,70 代有職者の職業形態 (付帯質問) (%) 男 50 代 有職者 男 60 代有職者 男 70 代有職者 フルタイム 93 65 40 パートタイム 2 15 18 その他 4 18 39 では,働き方は具体的にどう異なるのか, 時刻別の行為者率をみていきたい(図8)。仕 事をしている人が半数を下回る時刻は,男60 代,70代有職者では17時と,50代に比べ1 時間30分早くなる。男50代有職者は朝早く から働き始めて残業をする人が多く,仕事時 間は行為者平均時間で9時間半を超えている が,60代になるとほぼ法定労働時間の8時間 程度となり,残業をしない働き方になる14) さらに70代になると7時間を下回り,朝の行

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為者率が半数を超える時刻も50代,60代に 比べて遅く,働き方はだいぶ緩やかになる。 60歳を超えても,多くが再雇用の形で働 き続ける15)が,その働き方は,60歳の定年 を境に変化して50代よりペースダウンした ものとなり,70代になると会社勤め自体が 少なくなり,自己裁量の余地の多い働き方に なるといえる。 日常生活の違い 男50代,60代,70代有職者で働き方が異 なることがわかったが,それが日常生活にど のように影響しているのだろうか。それぞれ の主な行動の行為者率と全員平均時間をみる と(表6),仕事時間が減った分,特に大きく 時間量が増加する行動は,テレビと睡眠であ る。テレビは,年齢が上がるにつれほぼ1時 間ずつ長くなり,短くなった仕事時間の多く がテレビに振り分けられているといえる。睡 眠についても年齢が上がるにつれ20分以上 長くなる。必需行動では,睡眠のほか食事の 時間も年齢が上がるほど長くなり,仕事時間 が短くなる分,ゆったりとした生活を送るよ うになる様子がうかがえる。 また家事時間も男50代有職者より,60代, 70代で長い。しかし時間量は増えているも のの,行為者率はどの年層でも35 ~ 37%で, 家事をする人自体は増加しない。一方,男 60代,70代無職の家事の行為者率はそれぞ れ70%,63%と有職者に比べて高い。つま り,仕事を辞めると平日にも家事をするよう になる16)が,有職者である間は家事をする 人が増えないことがわかる。 次に,時間量の増加は大きくないが,行為 者率が増える行動として,スポーツ,行楽・ 散策,社会参加などが挙げられる。スポー ツの行為者率は男50代有職者に比べて60代, 70代でやや高く,行楽・散策の行為者率は 年齢が上がるにつれ高くなる。社会参加も男 50代有職者に比べて,男60代,70代有職者 で行為者率が高いが,社会参加についてはそ れぞれの年層においては仕事の有無で差がな 図 8 男 50 代,60 代,70 代有職者の仕事の 30 分ごとの行為者率(平日) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 男 70 代有職者 男 60 代有職者 男 50 代有職者 23:30 23:00 22:30 22:00 21:30 21:00 20:30 20:00 19:30 19:00 18:30 18:00 17:30 17:00 16:30 16:00 15:30 15:00 14:30 14:00 13:30 13:00 12:30 12:00 11:30 11:00 10:30 10:00 9:30 9:00 8:30 8:00 7:30 7:00 6:30 6:00 5:30 5:00 4:30 4:00 3:30 3:00 2:30 2:00 1:30 1:00 0:30 0:00 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 男 70 代有職者 男 60 代有職者 男 50 代有職者 8:00 8:30 9:00 17:00 18:30 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23(時) ※ は,仕事の行為者率が 50%を上回る時刻と下回る時刻

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いことから,仕事の有無よりは年齢が上がる ことにより冠婚葬祭や,地域活動などの機会 が増えて,行為者率が増えるのではないかと 考えられる。 以上より,男60代,70代の有職者では, 仕事時間が短くなる分,テレビや睡眠,食事 に時間をかけるようになったり,スポーツや 行楽・散策などを行う人もやや増えたりと, 男50代有職者のように仕事一色という生活 から,少しゆとりのある生活を送るようにな ることがわかる。 20 年間の変化と今後の展望 続いて,60代以上の男有職者について,ど のように働き方が変わったのか,この20年間 の変化を概観し,その上で,今後どうなって いくのかを考察したい。 まず,男60代,男70代全体について,有 職者,勤め人の割合の変化をみると(表7), 表 6 男 50 代,60 代,70 代有職者の主な生活行動の行為者率と時間量(平日) 【行為者率】 男 50 代 有職者 男 60 代有職者 男 70 代有職者 (%) 睡眠 100 100 100 食事 99 99 100 身のまわりの用事 99 > 97 97 療養・静養 5 5 < 9 休息 42 45 44 仕事 95 > 87 83 通勤 86 > 70 > 41 家事 35 37 36 社会参加 3 < 6 7 会話・交際 5 7 8 レジャー活動 35 32 < 40  スポーツ 6 < 9 10  行楽・散策 8 < 11 < 20  趣味・娯楽・教養 7 8 12  趣味・娯楽・教養のインターネット 22 > 15 > 8 マスメディア接触 91 < 97 97  テレビ 85 < 92 96  ラジオ 10 < 16 17  新聞 37 < 50 < 59  雑誌・マンガ・本 11 12 12  CD・テープ 4 3 2  ビデオ・HDD・DVD 12 12 9 必需行動 100 100 100 拘束行動 99 > 96 95 自由行動 94 < 97 97 <:左隣の数値と比較して統計的に高い,多い >:左隣の数値と比較して統計的に低い,少ない 【全員平均時間】 男 50 代 有職者 男 60 代有職者 男 70 代有職者 (時間:分) 睡眠 6:49 < 7:12 < 7:41 食事 1:32 < 1:38 < 1:49 身のまわりの用事 1:05 1:05 1:07 療養・静養 0:04 0:06 0:08 休息 0:23 0:27 0:31 仕事 9:04 > 7:07 > 5:46 通勤 1:18 > 1:02 > 0:33 家事 0:31 < 0:47 0:50 社会参加 0:04 0:08 0:11 会話・交際 0:05 0:08 0:09 レジャー活動 0:44 0:51 0:54  スポーツ 0:06 0:09 0:14  行楽・散策 0:06 0:11 0:17  趣味・娯楽・教養 0:09 < 0:16 0:17  趣味・娯楽・教養のインターネット 0:22 > 0:15 > 0:07 マスメディア接触 3:04 < 4:23 < 5:23  テレビ 2:25 < 3:20 < 4:23  ラジオ 0:12 < 0:28 0:27  新聞 0:13 < 0:23 < 0:37  雑誌・マンガ・本 0:07 0:10 > 0:06  CD・テープ 0:04 0:03 0:01  ビデオ・HDD・DVD 0:12 0:12 0:10 必需行動 9:27 < 9:58 < 10:43 拘束行動 11:05 > 9:04 > 7:23 自由行動 3:07 < 4:20 < 5:05 表 7 男 60 代,70 代 有職者,勤め人の割合の 時系列変化(付帯質問・1995 年~ 2015 年の比較) (%) 有職者 ’95 ’00 ’05 ’10 ’15 男 60 代 67 > 60 59 64 < 73 + 男 70 代 38 33 28 28 34 勤め人 ’95 ’00 ’05 ’10 ’15 男 60 代 36 35 32 < 41 < 48 + 男 70 代 11 8 7 11 13 <:左隣の数値と比較して統計的に高い >:左隣の数値と比較して統計的に低い +:1995 年と 2015 年を比較して 2015 年の方が統計的に高い

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男60代では,有職者が1995 年から2000年にかけて減っ た17)のち,2010年から2015 年にかけて増え,この20年 で最も多くなっている。ま た,勤め人が2010年,2015 年と増加した。男70代に ついては変化がない。 2010 年,2015 年 に 60 代 で勤め人が増加したのは, 2006年,2013年の「高年齢 者等の雇用の安定等に関す る法律」(以下「高年齢者 が今後も増えると予想される。同時に企業へ 課される雇用確保措置の規制も強化される19) ことから,今後も60代の勤め人は,少なく とも2025年度までは増加傾向となると考え られる。 働き方としては,現状では,多くの人が一 旦定年を迎え,再雇用として働くことで60 代は50代よりもスローダウンした働き方に なっている。しかし今後,再雇用ではなく, 定年を引き上げる企業が増えれば,50代を 延長したような残業のある働き方をする人も 出てくるかもしれない。いずれにせよ,60 歳を超えても現役並みに働き続けるという流 れが今後も続き,特に60代男性の生活はよ り現役層に近づいていくのではないかと思わ れる。

(2)レジャー活動の有無による生活の違い

分析の対象 次に,2つめの論点である高齢者のレジャー 活動の有無による生活の違いについて述べ る。ここでは,年層についてはレジャー活動 表 8 男 60 代,70 代有職者の 仕事の行為者率,行為者平均時間,全員平均時間の時系列変化 (平日・1995 年~ 2015 年の比較) 男 60 代有職者 ’95 ’00 ’05 ’10 ’15 行為者率(%) 90 90 87 88 87 − 行為者平均時間(時間:分) 7:33 7:42 7:45 8:00 8:13 + 全員平均時間(時間:分) 6:49 6:58 6:46 7:04 7:07 男 70 代有職者 行為者率(%) 82 − 88 > 78 83 行為者平均時間(時間:分) 6:17 − 6:58 6:17 6:56 + 全員平均時間(時間:分) 5:10 − 6:08 > 4:54 5:46 2000 年の男 70 代有職者は,サンプル数が 50 人に満たないため非掲載 2010 年の男 70 代有職者は,サンプル数が 100 人に満たないため参考値(斜体) <:左隣の数値と比較して統計的に高い >:左隣の数値と比較して統計的に低い +:1995 年と 2015 年を比較して 2015 年の方が統計的に高い −:1995 年と 2015 年を比較して 2015 年の方が統計的に低い 雇用安定法」)の改正により,65歳までの雇 用確保措置が企業に義務づけられた18)こと, 後述するように公的年金受給開始年齢が61 歳となり,60歳以上の就労希望者が増えた ことを反映した変化であると考えられる。 実際にどのように働き方が変化しているの か,行為者率,行為者平均時間,全員平均時 間の変化をみると(表8),男60代有職者で, 特に行為者平均時間が徐々に増加している。 2010年以降は8時間以上となり,2015年は この20年で最も長い水準となった。これは, 勤め人として1日に8時間以上働く60代が増 えたためだと考えられる。男70代有職者に ついては,一貫した変化はみられない。 今後の高齢者の勤め人の増加については, 年金制度の動向に強く影響されるだろう。公 的年金の支給開始年齢は2013年度からすで に61歳となっているが,さらに今後,2025 年度にかけて段階的に65歳に引き上げられ ていく。そのため,定年を迎えた60歳から 公的年金の支給開始までの無収入状態を避け るため,60歳を超えても就業を希望する人

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が最も活発であった70代前半を含む70代を 対象とし,さらに仕事や家事といった拘束行 動から解放され,自由時間が最も長い無職に 絞って分析することとしたい。 70代無職の平日のレジャー活動の行為者率 は62%と,レジャー活動を行う人が6割を占 める。男女別には,70代無職男性のレジャー 活動の行為者率が69%,70代無職女性では 51%と,70代無職においては,男性の方が, レジャー活動が活発である20)といえる。 日常生活の違い では,レジャー活動の有無によって生活が どのように違うのだろうか。表9は主な行動 の全員平均時間を比較したものである。 レジャー活動ありの方が時間量の多い行 動として,レジャー活動以外に新聞,雑誌・ マンガ・本,CD・テープ,ビデオ・HDD・ DVDが挙げられる。レジャー活動ありでは, 自由時間にレジャー活動を行うだけでなく, 様々なメディアを利用しており,情報行動も 活発であることがわかる。 一方,レジャー活動なしの方が時間量の多 い行動は,睡眠,療養・静養,休息,テレビ, 仕事である。また在宅時間も長い。レジャー 活動なしでは,自由時間のほとんどをテレビ と休息で過ごし,さらに睡眠,療養・静養と いった体を休める行動にも多くの時間を割い ている。 ところで,無職であるにもかかわらず,仕 事の時間が計上されているが,これはおそ らく畑仕事や家の雑務などを “仕事”と記入 してしまったと推測される21)。また統計的に 有意な差はないが,家事,社会参加なども レジャー活動なしでやや数字が大きく,レ ジャー活動なしの中には,時間があっても楽 しみのための行動ではなく,畑仕事や地域の 活動などを選択するという価値観の持ち主が 一定層いるのではないかと思われる。 このようにレジャー活動の有無によって, 生活全体に違いがみられ,レジャー活動をす る人は情報行動も含め活動的な生活を,レ ジャー活動をしない人は在宅している時間が 長く,やや不活発な生活を送っているといえ る。 20 年間の変化と今後の展望 こうした高齢者の姿は,この20年で変化 しているのだろうか。まず70代全体につい 表 9 70 代無職 レジャー活動有無別の主な行動の時間量(平日) 【全員平均時間】 レジャー 活動あり レジャー活動なし (時間:分) 睡眠 7:42 8:10 食事 1:57 2:03 身のまわりの用事 1:12 1:13 療養・静養 0:14 0:51 休息 0:41 0:57 仕事 0:06 0:25 家事 2:39 2:48 社会参加 0:13 0:23 会話・交際 0:18 0:24 レジャー活動 3:13 0:00  スポーツ 0:37 0:00  行楽・散策 1:01 0:00  趣味・娯楽・教養 0:33 0:00  趣味・娯楽・教養のインターネット 1:01 0:00 マスメディア接触 7:10 7:47  テレビ 5:19 6:32  ラジオ 0:37 0:38  新聞 0:48 0:37  雑誌・マンガ・本 0:21 0:13  CD・テープ 0:05 0:02  ビデオ・HDD・DVD 0:15 0:04 必需行動 11:02 12:13 拘束行動 2:54 3:35 自由行動 9:24 7:17 在宅 19:29 20:28 起床在宅 12:01 12:36 : 「レジャー活動あり」と「レジャー活動なし」を比較して, 統計的に多い

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て,男女別にレジャー活動の行為者率の変化 をみると(表10),男70代で2010年に増加, 女70代も1995年から徐々に増加しており, 全体として活動的になっているといえる。 では,レジャー活動をする人,しない人そ れぞれの生活は変化してきたのだろうか。70 表 11 70 代無職レジャー活動有無別の必需行動と自由行動の 時間量の時系列変化(平日・1995 年~ 2015 年の比較) 表 10 男女 70 代のレジャー活動の行為者率の 時系列変化(平日・1995 年~ 2015 年の比較) (%) ’95 ’00 ’05 ’10 ’15 男 70 代 53 53 56 < 64 59 + 女 70 代 40 42 42 46 52 + <:左隣の数値と比較して統計的に高い >:左隣の数値と比較して統計的に低い +:1995 年と 2015 年を比較して 2015 年の方が統計的に高い −:1995 年と 2015 年を比較して 2015 年の方が統計的に低い 【全員平均時間】 〈レジャー活動あり〉 (時間:分) 必需行動 ’95 ’00 ’05 ’10 ’15 睡眠 8:18 8:00 7:54 7:48 7:42 − 食事 1:47 1:49 1:55 > 1:47 < 1:57 + 身のまわりの用事 1:04 1:08 1:10 > 1:02 < 1:12 + 療養・静養 0:27 0:18 0:21 0:12 0:14 − 休息※ 1 0:52 0:57 0:42 0:40 0:41 − 〈レジャー活動なし〉 必需行動 ’95 ’00 ’05 ’10 ’15 睡眠 8:23 8:18 8:23 8:05 8:10 食事 1:50 1:53 1:54 1:56 2:03 + 身のまわりの用事 1:06 1:07 1:06 1:10 1:13 + 療養・静養 1:12 1:10 0:44 0:46 0:51 休息※ 1 1:15 1:11 1:00 0:46 0:57 − レジャー活動 ’95 ’00 ’05 ’10 ’15 スポーツ 0:19 0:16 0:26 0:33 0:37 + 行楽・散策 1:07 0:55 0:52 < 1:10 1:01 趣味・娯楽・教養 ─ ─ 1:17 1:05 1:01 − ※ 2 趣味・娯楽・教養のインターネット ─ ─ 0:22 0:25 0:33 + ※ 2 マスメディア接触 ’95 ’00 ’05 ’10 ’15 テレビ 5:21 5:19 5:28 5:40 5:19 ラジオ 0:22 0:33 0:40 0:39 0:37 + 新聞 0:43 0:46 0:50 0:50 0:48 雑誌・マンガ・本 ─ ─ 0:18 0:20 0:21 CD・テープ 0:02 0:06 0:04 0:06 0:05 + ビデオ・HDD・DVD 0:05 0:02 < 0:07 0:12 0:15 + マスメディア接触 ’95 ’00 ’05 ’10 ’15 テレビ 5:52 6:25 6:12 5:54 6:32 + ラジオ 0:15 < 0:48 0:29 0:49 0:38 + 新聞 0:39 0:40 0:38 0:37 0:37 雑誌・マンガ・本 ─ ─ 0:12 0:07 0:13 CD・テープ 0:02 0:04 0:03 0:02 0:02 ビデオ・HDD・DVD 0:02 0:05 0:02 0:03 0:04 <: 左隣の数値と比較して統計的に高い >: 左隣の数値と比較して統計的に低い +: 1995 年と 2015 年を比較して 2015 年の方が統計的に高い −: 1995 年と 2015 年を比較して 2015 年の方が統計的に低い 注) 「趣味・娯楽・教養」「趣味・娯楽・教養のインターネット」「雑誌・マンガ・本」は 2005 年 から行動項目を変更したため,それ以前とは比較できない ※ 1 「休息」は行動分類上自由行動に分類されるが,高齢者にとって肉体的ケアとしての意味合い が大きいと考えられるので,この欄に掲載する ※ 2 「趣味・娯楽・教養」と「趣味・娯楽・教養のインターネット」は 2005 年と 2015 年との比較 代無職についてレジャー活 動の有無別に,必需行動と 自由行動についての変化を みると(表11),レジャー 活動ありでは,睡眠が徐々 に減少し,この20年で30 分以上減っている。逆にス ポーツとインターネット, ビデオ・HDD・DVDは徐々 に増加している。レジャー 活動をしている人は,睡眠 時間を減らし,新しいメ ディアを積極的に導入し, さらにスポーツをする人も 増えるなど,ますます活動 的になってきたといえる。 一方,レジャー活動なし では,食事と身のまわりの 用事が徐々に増加している ほかは,一方向に変化して いる行動は少ない。つま り,レジャー活動をする人 はいっそう活動的になり, 一方でレジャー活動をしな い人は,よりゆったりとし た生活を送るようになっ て,両者の生活の差が広が る方向へ向かっているが, 全体としてレジャー活動を

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する人は増えている,ということになる。 現在の高齢者は,10 ~ 20年前と比較して, 「若返り」現象がみられている22)といわれ, 今後も平均寿命は延びると見込まれる23)中, これからも70代の生活はより活発化してい くのではないかと思われる。

おわりに

3章より,高齢有職者は現役層に比べて仕 事時間が短く,生活にもゆとりがあるもの の,60代を中心にこの20年で有職者の中で 勤め人が増えて仕事時間も伸びており,60 代有職者の生活は今後,現役の有職者に近づ いていくことが見出された。さらに60代全 体でもそうした有職者の割合自体は増えてお り,今後,有職者だけでなく60代の生活全 体が現役層に近づいていくことが予想され た。 また,70代無職のレジャー活動の有無に よる生活の違いを検証し,レジャー活動の有 無で生活行動の活性具合に違いを見出すこと ができた。そしてこの20年間で,レジャー 活動をする人がますます活発になっている上 に,70代全体でレジャー活動をする人自体 の割合も増えており,今後,70代全体の生 活が活発化していくことが展望された。 メディアについては,こうした属性の違い にかかわらず,高齢者にもビデオ・HDD・DVD やインターネットが浸透しつつあることが明 らかになった。新たなメディアの広がりは速 く,今後も着実に新たなメディアが高齢者に 普及し,高齢者のメディア利用が現役層に近 づいていくのではないかと考えられた。 以下,このような本稿で分析した高齢者の 生活から,今後の高齢社会を考える上での論 点をいくつか提示したい。 少子高齢化が進行する社会において,高齢 者が働くことは社会の要請でもある。同時 に,日本においては長く働き続けたいとい う高齢者も多い24)。60歳を超えても働ける 仕組みは整いつつあるが,60代の働き方は, 残業も辞さず長時間働く現役層とは異なり, 現状では法定労働時間にほぼ収まるような働 き方であることが実証された。このように 60歳を超えると,それまでとは異なる働き 方になることから,高齢有職者にとっての働 きがいや給与の問題など,今後も議論が必要 であろう。また,現在は定年が60歳の企業 が大半であるが,昨今,定年を65歳に延長 する方針を打ち出す企業も出てきている25) 定年の延長は,高齢有職者が現役並みに働く ようになるといった,高齢有職者だけの問題 ではなく,若・中年層の働き方や給与体系に も大きく影響を与えることとなる。今後の高 齢者の働き方をどのように設計するかは,働 く世代すべてを含めた問題となってくる。 次に,仕事を離れた高齢者の毎日の過ごし 方については,いずれは誰しもが直面する課 題である。活動的な人々は,積極的に外出 し,多様なメディアを利用していることが見 出されたが,非活動的な人は家にいる時間が 長く,また新しいメディアの導入に積極的で はない様子が明らかになった。 近所付き合いがあるほど,また外出の頻度 が高いほど,生きがいを感じている割合が高 いという調査結果がある26)。外出の頻度が低 い,非活動的な人にとって社会との接点をい かに確保するかは,生きがいのある毎日を送 る上で重要であるといえる。情報取得の点で

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も,非活動的な人においてはインターネット の普及が進まず,高齢者の中でデジタルデバ イドが生じていることが明らかになった。非 活動的な高齢者にとって,緊急時の情報源, あるいは社会との接点という役割において, ライフラインとしてのテレビの重要性が再考 されるべきであろう。 また,これらの問題を語る上で前提となる 高齢者の定義自体についても議論が生じてい る。2017年1月には日本老年学会,日本老年 医学会から,一般的に65歳以上とされてい る高齢者の定義について,75歳以上とすべ きだとの提言が発表された。今回の分析か ら,定年を迎える60歳以降,高齢者の生活 は大きく変化すること,仕事が減る分自由行 動や必需行動は増えていくが,レジャー活動 は70歳前半をピークにそれ以降は減少して いくことが明らかになった。高齢有職者や活 発な高齢者の増加により,こうした年齢の境 目が,今後,さらに高年齢へ移行していくの ではないかと予想され,生活時間調査のデー タからも従来の高齢者像が,より年齢の高い 人のものとなっていくのではないかと考えら れる。しかし,こうした提言は,社会保障制 度をめぐる今後の議論について影響を与える 可能性も指摘され,何歳からを高齢者ととら えるかについては慎重に検討する必要がある だろう。 変わりゆく高齢者,そして高齢社会に生き る我々の生活が今後どうなっていくのか,こ れからも様々な角度から調査データを分析し, 高齢者,そして日本人の生活を見つめていき たい。 (よしふじ まさよ/わたなべ ようこ) 注: 1) 関根智江,渡辺洋子,林田将来(2016)「日本人 の生活時間・2015 ~睡眠の減少が止まり,必 需時間が増加~」『放送研究と調査』2016 年 5 月号 2) 平成 28 年版高齢社会白書(内閣府) 3) 平成 27 年簡易生命表(厚生労働省) 4) 高齢者には法律上の定義はない。国の白書など では 65 歳以上を高齢者としている。内閣府が 60 歳以上の男女を対象に実施した意識調査(平 成 26 年度高齢者の日常生活に関する意識調査) では,70 歳以上もしくは 75 歳以上を高齢者と 考える人が多かった。 5) 平成 27 年就労条件総合調査(厚生労働省)によ れば,定年制を定めている企業(92.6%)のう ち,定年を一律に定めている企業は 98.1%。そ のなかで,60 歳を定年としている企業が 80.5% と最も多く,65 歳以上を定年年齢とする企業 の割合は 16.9%となっている。 6) 渡辺(2011)「第Ⅱ部 4 章 シニア世代の生活」 NHK 放送文化研究所編『日本人の生活時間調 査・2010』NHK 出版 7) 同上 8) 行動の大分類の定義は以下のとおりである。具 体的にどの行動を含むかは,1)を参照のこと。 拘束行動;家庭や社会を維持向上させるために 行う義務性・拘束性の高い行動 必需行動;個体を維持向上させるために行う必 要不可欠性の高い行動 自由行動;人間性を維持向上させるために行う 自由裁量性の高い行動 9) 付帯質問から勤務形態を確認したところ,20 ~ 50 代の男性の有職者の割合は 90%で,82% がフルタイム,3%がパートタイムである。一 方,女性の有職者の割合は 72%で,41%がフ ルタイム,25%がパートタイムである。 10) ボランティアや地域活動などが含まれる社会参 加は,行動分類上拘束行動に分類されるが,高 齢者にとっては義務的・拘束的行動というより, レジャー活動と同じく,楽しみや生きがいとし

表 3 60 代以上の職業別構成比 (付帯質問・2010 年と 2015 年の比較) 表 4 60 代以上の 2010 年と 2015 年で変化のあった主な行動の時間量と行為者率 (平日・2010 年と 2015 年の比較)男 60 代(%)’10 年’15 年有職者64 <73  農林漁業者5 6  自営業者15 12 勤め人販売職・サービス職5 7 技能職・作業職21 24 事務職・技術職10 11 経営者・管理職5 6  専門職・自由業・その他4 <6 無職33>26女 60 代(%)’10 年’15

参照

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