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特 集 1 多 面 的 総 合 的 評 価 による 大 学 入 学 者 選 抜 Part 年 度 ひらく 日 本 の 大 学 から 見 る 多 面 的 総 合 的 評 価 の 課 題 高 大 接 続 改 革 での 多 面 的 総 合 的 評 価 < 図 表 1> 個 別 試 験 で 学

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(1)

   

 大学入学者選抜は、各大学が、それぞれの教育

理念に基づき、生徒が高等学校段階までに身に付

けた力を、大学において発展・向上させ、社会へ

送り出すという大学教育の一貫したプロセスを前提

として、各大学が、学位授与の方針や教育課程編成・

実施の方針を踏まえ、定める入学者受入方針に基

づき、大学への入口段階で入学者に求める力を多

面的・総合的に評価することを役割とするものであ

る。

 このことを踏まえ、各大学は、入学者の選抜を行

うに当たり、公正かつ妥当な方法によって、入学志

願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判

定する。

 能力・意欲・適性等の判定に当たっては、学力

を構成する特に重要な以下の三つの要素のそれぞ

れを適切に把握するよう十分留意する。

①基礎的・基本的な知識・技能(「知識・技能」)

②知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その

解決に向けて探究し、成果等を表現するために必

要な思考力・判断力・表現力等の能力(「思考力・

判断力・表現力等」)

③主体性を持ち、多様な人々と協働しつつ学習する

態度(「主体性・多様性・協働性」)

 この説明は、今年5月の「平成 28 年度大学入学

者選抜実施要項」に記載された「基本方針」を抜

粋したものである。高大接続システム改革会議「中

間まとめ」(2015 年9月)に先立ち、この部分は昨

年に比べて大きく変わり、学力の3要素がここで明

記され、多面的・総合的評価がより強調された。

 そこで 11 月号では、多面的・総合的評価による

大学入学者選抜を取り上げた。

 Part1 では、今年6〜7月に実施した、朝日新聞

と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大学」で学長

に聞いた「多面的・総合的評価」に関する調査結

果を中心にレポートする。Part2 では、受験生の能

力、適性、意欲、関心等を多面的・総合的に判定

するアドミッション・オフィス入試の中から、5大

学の取り組みを紹介する。

多面的・総合的評価

による

入学者選抜

Contents

Part

1

 

2015 年度「ひらく 日本の大学」から見る多面的・総合的評価の課題

………

p3

・個別試験では学力の三要素をどの程度重視するか ・2つのテストの複数回実施や、個別試験での教科・科目型試験の廃止・縮小は必要か ・多面的・総合的評価を実施する上での制約・課題とは ・多面的・総合的な選抜の実施に対する各大学の検討は進んでいるか Part

2

 

各大学の取り組み

………

p7

●東京農工大学農学部「課題レポートや出願書類を用いて、研究の素養の高さを問うゼミナール入試」…………

p7

●首都大学東京 都市教養学部理工学系「講義、実験、演習などの体験入学の機会を活用したゼミナール入試」

p10

●島根大学教育学部「小論文、プレゼンテーション、個人面接等を通じて、 多様化する学校現場の課題に対応できる人材を選抜」………

p13

●立命館大学文学部「地理学に適性のある生徒を選抜するフィールドワーク方式」………

p16

●追手門学院大学「入学者選抜のコンセプトの転換ー選抜型入試から育成型入試へ」………

p19

特集

(2)

2015 年度「ひらく 日本の大学」から見る

多面的・総合的評価の課題

 今年の朝日新聞と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大 学」の調査結果を見る前に、9 月に公表された高大接続 システム改革会議「中間まとめ」の中で、多面的・総合 的評価による大学入学者選抜がどのように述べられてい るか、振り返っておこう。  「中間まとめ」では、「高大接続システム改革を実現す る上で、大学入学者選抜についての改革が不可欠」とさ れ、改革の例示として4つ示された中に、「多様な背景を 持つ受検者一人一人の能力や経験を多面的・総合的に評 価するものに改革すること」と書かれている。さらに、「今 後、各大学の入学者選抜方法を、『学力の三要素』を多 面的・総合的に評価するものへと転換することが必要」 という方向性が示されている。  「学力の三要素」とは、2014 年 12 月に公表された中 央教育審議会「高大接続改革答申」(注1)の中で、「知識・ 技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様 な人々と協働して学ぶ態度」と表現されている。この三 要素を大学入学者選抜で適切に評価するため、多様な評 価方法をどのように組み合わせ、どのような水準を要求 し、どのような比重を置いて評価するか。また、評価方 法として、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称、以下、 仮称を省略)」のほか、「自らの考えに基づき論を立てて 記述させる方法」「調査書」「面接、ディベート、集団討論、 プレゼンテーション」といった8つの方法が例示されて いる。そして、アドミッション・ポリシーにおいて、そ れぞれの関係や比重を明示し、多面的・総合的評価の方 法を提示することが求められているのだ。  このように各大学に対応が求められている多面的・総 合的な評価だが、大学はどのように見ているのか。  まず、「学力の三要素」として示された要素の中で、自 大学の個別試験ではどの能力をどの程度重視したいかを <図表1>個別試験で学力の三要素をどの程度重視するか 聞いた<図表1>。  「重視」と「やや重視」の合計ではそれぞれ 90%程度 とほぼ同じ割合だが、「重視」は「知識・技能」が最も多 い。設置者別に見るとやや差があり、「知識・技能」の「重 視」は、国立大 79%、公立大 72%、私立大 61% と国立大・ 公立大で高く、「思考力・判断力・表現力」の「重視」は、 国立大 69%、公立大 70%、私立大 58% と、これも国立大・ 公立大で高かった。一方、「主体性・多様性・協働性」 の「重視」は、国立大 53%、公立大 57%、私立大 54% とほとんど変わらず5割程度となった。  多面的・総合的評価に関連し、大学入学希望者学力評 価テストと高等学校基礎学力テストの複数回実施や、高 大接続改革答申で提案されていた各大学の個別試験にお ける教科・科目型試験の廃止・大幅な縮小について、必 要性と実現可能性について聞いた。  必要性については、「高等学校基礎学力テストの複数 回実施」が最も高かった<図表2>。一方、個別試験に おける教科・科目型試験の廃止・大幅な縮小については、 「あまり必要ではない」「まったく必要ではない」を合わ せると 6 割を超える学長が必要ではないと回答した。  設置者別に見ると、2つのテストとも私立大で複数回 実施の要望が高い。例えば、「大いに必要」「必要」合わ せて、大学入学希望者学力評価テストは国立大 41%、公 学力の三要素をすべて重視 国公立大は「知識・技能」重視の割合がやや高い 高大接続改革での多面的・総合的評価 (注1)「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(答申) (注2)「重視しない」については「主体性・多様性・協働性」で選択していた大学が1大学あったが、<図表1>のグラフで 0%となり表示していない。

Part

1

0% 20% 40% 60% 80% 100% ■利用する ■利用を検討している ■利用してない ■未定 ■未回答 ■利用している ■利用していない ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■重視 ■やや重視 ■あまり重視しない ■重視しない ■未回答 知識・技能 思考力・判断力・表現力 主体性・多様性・協働性 64% 61% 54% 26% 31% 36% 3% 2% 4% 7% 6% 6% 調査書 高校時代の活動 高校からの推薦書 資格・検定試験 大学入学希望理由書 小論文・エッセイ 面接・討論・プレゼンテーション 91% 4%5% 69% 25% 6% 選抜資料 選抜方法 調査書 高校時代の活動 高校からの推薦書 資格・検定試験 大学入学希望理由書 小論文・エッセイ 面接・討論・プレゼンテーション 選抜資料 選抜方法 88% 6%6% 78% 16% 6% 53% 41% 6% 73% 21% 6% 81% 13% 6% 76% 5%2%11%6% 59% 12%5% 18% 7% 65% 9%5% 15% 6% 50% 15% 6% 22% 7% 62% 10%5% 16% 7% 66% 8%4% 15% 7% 72% 7%1%13% 7% (注2) 各大学の個別の教科・科目型試験の 廃止・大幅な縮小は難しい? (n=639)

(3)

立大 47%、私立大 59%、高等学校基礎学力テストは国 立大 53%、公立大 59%、私立大 69%となった。規模別 に見ると、高等学校基礎学力テストでは、入学定員 3,000 人以上 74%、1,000 ~ 2,999 人 69%、300 ~ 999 人 68%、300 人未満 62% と、入学定員が多い大学で必 要性が高い傾向が見られた。大学入学希望者学力評価テ ストについては、それほどはっきりした傾向は見られな かった。 実現可能性については、段階別評価が「実現可能性が 高い」「実現は可能だ」を合わせて6割と最も高くなった <図表3>。個別試験における教科・科目型試験の廃止・ 大幅な縮小については、実現可能性が最も低く、6割が 「実現は厳しい」「実現はかなり厳しい」と回答した。  設置者別に見ると、大学入学希望者学力評価テストの 複数回実施について、「実現可能性が高い」「実現は可能 だ」を合わせて、国立大 25%、公立大 41%、私立大 43% と国立大で低い。個別の教科・科目型試験の廃止・ 大幅な縮小は、<図表4>のような結果となった。国立 大で「実現可能性が高い」と回答した大学はなかった。  「中間まとめ」では、個別大学での多面的・総合的評 価による入学者選抜を推進するために、入学者選抜を実 施する体制の充実・強化は不可欠であるとし、「アドミッ ション・オフィスの整備・強化」「アドミッション・オフ ィサーといった専門人材の職務の確立・育成・配置が急 務である」としている。合わせて、特に、「思考力・判断 力・表現力」や「主体性を持って多様な人々と協働して 学ぶ態度」をより重視することのできる選抜方法や評価 方法を開発することが重要であると述べている。  こうした考えに対して、大学は何が実施上の制約だと 考えているのか。今回の調査では8つの項目についてそ れぞれどの程度制約であると考えているのかを選んでも らった。<図表5>は、「大きな制約である」と回答した 割合が高い順に並べ替えたものである。「人員・時間の確 保」「選抜内容・評価方法・評価基準の作成」の2つは 8 割の学長が「大きな制約である」「制約である」と回答。 特に「人員・時間の確保」は 48%と半数近い学長が「大 きな制約」と回答した。「従来型選抜への信頼性が高い」 は「大きな制約」は 11%だが、「制約である」まで含め ると5割を超えた。  「大きな制約である」に注目すると、「人員・時間の確保」 については、設置者別に見ると国立大が高く(国立大 68%、公立大 55%、私立大 43%)、規模別に見ると入学 最大の課題は 選抜の実施や採点にかかる人員・時間の確保 <図表2>それぞれの項目についての必要性(n=639) ■大いに必要である ■必要である ■あまり必要ではない  ■まったく必要ではない ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■実現可能性が高い ■実現は可能だ ■実現は厳しい  ■実現はかなり厳しい ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■実現可能性が高い ■実現は可能だ ■実現は厳しい  ■実現はかなり厳しい ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 国立大 公立大 私立大 8% 48% 33% 4%8% 希望者テストの年複数回実施 基礎テストの年複数回実施 希望者テストでの1点刻みを脱し、 段階別表示による成績提供 各大学個別の教科・科目型 試験の廃止・大幅な縮小 希望者テストの年複数回実施 基礎テストの年複数回実施 希望者テストでの1点刻みを脱し、 段階別表示による成績提供 各大学個別の教科・科目型 試験の廃止・大幅な縮小 11% 55% 23% 3%8% 7% 39% 39% 7%8% 3% 26% 45% 18% 8% 4% 36% 40% 11%9% 7% 47% 29% 8%9% 10% 51% 23% 6%10% 3% 29% 38% 20% 10% 7% 28% 28% 23% 14% 3% 29% 40% 19% 9% 32% 35% 23% 10% 3% 29% 38% 20% 10% ■大いに必要である ■必要である ■あまり必要ではない  ■まったく必要ではない ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■実現可能性が高い ■実現は可能だ ■実現は厳しい  ■実現はかなり厳しい ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■実現可能性が高い ■実現は可能だ ■実現は厳しい  ■実現はかなり厳しい ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 国立大 公立大 私立大 8% 48% 33% 4%8% 希望者テストの年複数回実施 基礎テストの年複数回実施 希望者テストでの1点刻みを脱し、 段階別表示による成績提供 各大学個別の教科・科目型 試験の廃止・大幅な縮小 希望者テストの年複数回実施 基礎テストの年複数回実施 希望者テストでの1点刻みを脱し、 段階別表示による成績提供 各大学個別の教科・科目型 試験の廃止・大幅な縮小 11% 55% 23% 3%8% 7% 39% 39% 7%8% 3% 26% 45% 18% 8% 4% 36% 40% 11%9% 7% 47% 29% 8%9% 10% 51% 23% 6%10% 3% 29% 38% 20% 10% 7% 28% 28% 23% 14% 3% 29% 40% 19% 9% 32% 35% 23% 10% 3% 29% 38% 20% 10% <図表4>個別試験での教科・科目型試験の廃止・ 大幅な縮小(n=639) ■大いに必要である ■必要である ■あまり必要ではない  ■まったく必要ではない ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■実現可能性が高い ■実現は可能だ ■実現は厳しい  ■実現はかなり厳しい ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■実現可能性が高い ■実現は可能だ ■実現は厳しい  ■実現はかなり厳しい ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 国立大 公立大 私立大 8% 48% 33% 4%8% 希望者テストの年複数回実施 基礎テストの年複数回実施 希望者テストでの1点刻みを脱し、 段階別表示による成績提供 各大学個別の教科・科目型 試験の廃止・大幅な縮小 希望者テストの年複数回実施 基礎テストの年複数回実施 希望者テストでの1点刻みを脱し、 段階別表示による成績提供 各大学個別の教科・科目型 試験の廃止・大幅な縮小 11% 55% 23% 3%8% 7% 39% 39% 7%8% 3% 26% 45% 18% 8% 4% 36% 40% 11%9% 7% 47% 29% 8%9% 10% 51% 23% 6%10% 3% 29% 38% 20% 10% 7% 28% 28% 23% 14% 3% 29% 40% 19% 9% 32% 35% 23% 10% 3% 29% 38% 20% 10% <図表3>それぞれの項目の実現可能性(n=639)

(4)

定員が多い大学で高い傾向がある(3,000 人以上 65%、 1,000 ~ 2,999 人 57%、300 ~ 999 人 48%、300 人未満 40%)。また、「志願者減の可能性」については私立大で 高い(国立大 1%、公立大 5%、私立大 19%)。  さらにこれらの項目の中から最も大きな課題と考えるも のを2つまで選んでもらったところ、「人員・時間の確保」 「選抜内容・評価方法・評価基準の作成」が半数を超えた <図表6>。設置者別に見て差がある項目を見ると、「人員・ 時間の確保」は国立大で「大きな課題」と答えた割合が 高く8割を超えた。「志願者減の可能性」は私立大の 18% (77 校)に比べて、国立大では0校である。  多面的・総合的評価について自由記述欄も設けて、そ の内容を<図表7>としてまとめた。4割近い学長が記述 した。内容としては、「高大接続改革答申の内容や改革の <図表5>多面的・総合的評価を実施する上での制約(n=639) ■大きな制約である ■制約である ■制約ではない ■まったく制約ではない ■その他 ■未回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 48% 34% 9%1%8% 35% 45% 10% 1% 1% 8% 27% 49% 14% 1% 9% 25% 45% 19% 1%1% 8% 18% 46% 24% 2% 1% 9% 15% 36% 35% 2% 2% 9% 11% 35% 38% 4% 3% 9% 11% 43% 35% 2% 1% 9% 入学者選抜の実施、採点にかかる人員・時間の確保 多面的・総合的な選抜内容・評価方法・評価基準の作成 多面的・総合的な評価の結果の妥当性に理解が得られるか 入学者選抜にかかるコストの増加の懸念 公平性・公正性に対する社会的意識 志願者減の可能性 受験者数を絞りこむ必要があること 学内・学外の従来型選抜(学力試験中心)への信頼性が高いこと 全体 国立大 公立大 私立大 人員・時間の確保 61% 81% 61% 58% 選抜内容・評価方法・ 評価基準の作成 50% 43% 52% 50% 結果の妥当性への理解 27% 22% 36% 27% コストの増加の懸念 15% 20% 11% 14% 公平性・公正性 14% 16% 15% 13% 志願者減の可能性 14% 0% 6% 18% 学内・学外の 従来型選抜への信頼性 9% 5% 8% 10% 受験者数絞りこみの必要 4% 0% 6% 4% <図表6>多面的・総合的評価の上での最も大きな課題 趣旨には賛同するが、実現は難しいのではないか」「専門 の教職員が必要」「多面的・総合的評価で選抜した場合の 結果の説明に対する懸念」といった点が指摘されている。 <図表7>多面的・総合的評価についてのご意見 ◆多面的・総合的評価の入試を実施するために専門の教員を雇う 予算を維持してほしい。(国立大) ◆多面的・総合的評価の意義は理解。すでに AO 入試で他大学よ り大規模に実施。これを全受験者に実施することは人員・時間 の確保の面から現状では不可能。一方、現行の一般入試につい ても、教科型基礎学力および思考力・判断力・表現力の評価に おいて一定の意義を認める。この機能を貶める改革には反対す る。(国立大) ◆ 知識を評価する割合を下げ、主体的に学ぶ力を評価することに なるが、いわゆる人物評価で選抜を実施することの難しさ、公 平性の確保、社会的納得感の確保とコスト増加を解決する手法 を国等から明確に示してもらう必要がある。イギリスや、アメ リカの入試制度をなぞらえるのであれば、少なくともアドミッ ション専任の人材を複数人雇用する程度の予算が別途必要であ り、予算的に厳しいと考える。(国立大) ◆ 推薦入試において、受験生の能力・意欲・適性を多面的・総合 的に評価するため面接および小論文での選抜を行っている。入 学定員が現在よりも増員となれば多面的な評価方法による試験 実施も促進されると思われる。また、この能力が的確に判定で きれば良いが、入試のわずかな時間で果たしてその能力が的確 (n=572)

(5)

に測れるのか、また、測れる作題ができるのか? 公平性・公 正性に対する社会的意識が学内においても強い。(国立大) ◆「高大接続型特色入試」では志願者につき高校段階までに育成 されている学ぶ力および個々の学部の教育を受けるにふさわし い能力並びに志を総合的に評価して選抜する。しかし、丁寧に 見ようとすればするほど、マンパワーや予算の関係で受験者を 絞り込まなければならず、また入学者の学修を効果的に修める には基礎学力の担保は必須であると考える。(国立大) ◆現在の議論は「多面的・総合的」という言葉がひとり歩きして いるという感がある。それぞれの大学は理念と特色・特性を有 しているのだから、求める「多面的・総合的」力も多面的であ るはずであり、すべての大学に当てはまる「多面的・総合的」 はあり得ない。(国立大) ◆ 多面的・総合的な評価については、方法は難しいが必要である。 (公立大) ◆ 面接等で十分に時間をかけて適性、意欲等を見るためには、あ る程度の時間が必要である。数百人が受験をする一般選抜では、 受験生一人ひとりに十分な時間をかけることが困難で、適切な 評価ができるか不安である。(公立大) ◆ 評価方法の開発が困難であるとともに、どのような方法をとる にしても多大な人員と時間が必要となる。多面的・総合的な評 価の観点をもって部分的な改良にとどめることが現実的。(公立 大) ◆多面的 ・ 総合的能力といっても、結局は各個別教科の理解が基 礎になる。高等学校の各教科の構成を離れて大学入試を行うこ との高校教育に対する弊害が無視できないと考える。(公立大) ◆ 望ましい選抜方式ではあるが、客観的な評価の難しさを有する と思われる。(私立大) ◆ 方向性は理想的で賛成できるが、現実的には困難度は高い。1 万人程度の受験に対し数回の試行試験を行って検討・周知すべ きである。(私立大) ◆ 本学では AO 入試において「教科目試験」を第一次で実施し、 第二次で「多目的・総合的」に評価しているが、入学生は意欲 的な学生が多く、効果的である。(私立大) ◆ 高校教育のレベルアップがどこまで伴っているかを抜きにして、 この改革を進めることは非常に困難だと思う。高校教育の質を どこまで担保してもらえるのか。今でさえ、リメディアル教育 に大きな時間を割き、学生の学力低下にどう対応するのかを、 多くの私立大学は真剣に悩んでいるのが現状である。(私立大) ◆ 多面的・総合的な評価の客観性、公平性を担保するのは困難で あると思われるが、入試改革のために是非取り組みたい課題で ある。(私立大) ◆ AO入試が導入された 2000 年前後は、学力のみならず多面的 かつ総合的な評価を含めた選抜が行われていた。本学において は導入当初からその視点は損なわず、現在もその観点を維持し つつ選抜を行っていると自負している。しかし、「AO入試=青 田買い」といったような風潮や世論が起こってしまっているこ とは残念に思われる。本評価においても導入後一定程度の年数 が経過したときに、AO入試と同様の風潮とならないような配 慮が必要であると考えられる。(私立大) ◆ 本学は各学部のアドミッションポリシーにふさわしい学生を選 抜するため、多様な入試制度により、すでに多面的・総合的評 価を行っている。(私立大) ◆ 入学者選抜において、短時間のうちに、公平かつ公正に多面的・ 総合的な評価を下すということは、極めて難しい。作問・採点・ 評価の妥当性等の分析、大学としての哲学を踏まえた上での制 度設計、それを担う人員の確保等、乗り越えなければならない 課題が多々あり、その労力に見合う結果がイメージできない。 現状ではアメリカ型アドミッション・オフィスが日本の大学に は存在しないので、まずは職員と教員が協力し合ってアドミッ ション・オフィスとして機能できるスキルと体制作りが必要で ある。(私立大) ◆ 1点刻みのペーパーテストで評価するのではなく、多面的・総 合的に評価する方向性は賛同する。しかし、実施面から考え ると、評価方法・評価基準・評価にかかるコスト等課題が多 数有り、5年後に一般入試をすべて多面的・総合的評価方法に よる入試に変えていくことは困難である。 (私立大) ◆ 総論は理想的であると考えるが、実現するには課題が多すぎる。 学内調査においては現行のセンター試験を活用した選抜方法を はじめとする学力考査を中心とした選抜方法が最も優秀な学生 を獲得できているというデータがあるが、この実態とは対極的 な方向性を模索せねばならないことに戸惑いを感じている。ま た、大都市圏の大学は今後定員管理がより厳格になり、大規模 私立大学は現行でも定員管理に苦慮しているところに加え、今 回のような前例のない入試改革を断行せざるを得ない状況は大 学経営にも大きな影響がある。(私立大) ◆ 入試における多面的・総合的な評価は必要と考えるが、思考 力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性を評価するには、 方法・基準に限界があり、むしろ入学後に教育内容・方法の 工夫により、知識・技能を含めこれらの能力を身につけさせ ることが重要である。(私立大) ◆ 極めて大きな手間がかかる一方で、その人員を確保できるめど が全く立っていないのは、本学だけではないだろう。また既に 行っている推薦・AO 入試などでも、その選抜にどれだけの妥 当性があるかについても、各大学が悩んでいるのではないか。(私 立大) ◆ 入試においてこれらを評価するだけでなく、入学後の教育内容 と成績評価も多面的・総合的なものにする必要がある。(私立大) ◆ 私立大学では教科試験のみならず、独自に面接や小論文、資格 や検定等をすでに評価に利用して学力一辺倒でない選抜を実施 している。新テスト移行により、従来の方法に加えて新たな選 抜方法が増えるという理解でいる。(私立大) ◆ 受験者数の多い大学においては、多面的・総合的な評価をする ための時間および人員の確保が必要となる。数千、数万人規模 の受験者を受け入れる大学では、受験生の意欲を丁寧に測るた めには相当のコスト負担が必要となる。(私立大) (一部抜粋の場合もあり)

(6)

多面的・総合的評価による入学者選抜

Part

2

 東京農工大学農学部環境資源科学科では、2010 年度 から「ゼミナール入試」を導入している。募集人員は3 名で、2回にわたって行われる大学教員の講義(ゼミナ ール)を受講した受験生を対象に、課題レポートや面接 などを課し、研究の素質が高い人材を入学させることを 目的とした入試だ。入学者は研究の進め方にこだわりを 持つ学生が多く、意欲的な姿勢が周囲にも好影響を与え ている。  2010 年度からゼミナール入試を導入した経緯を、農 学部環境資源科学科の髙栁正夫教授は次のように語る。  「本学科は日本で初の『環境』を研究する学科として 創設されましたが、近年環境系の学部・学科が増加し、 志願者が分散したことで、本学科の志願者数も減少しま した。もっとも、他学科と比べて合格者の入学辞退率は 低く、目的意識を持った受験生が多いという印象を持っ ていましたが、近年受験学力は高いものの、実験や研究 への意欲が低い入学者が見られるようになってきたので す。そこで、いわゆる受験学力とは異なる尺度で、研究 の素質の高さによって入学者を決めようと『ゼミナール 入試』を導入しました」  具体的にゼミナール入試ではどのような生徒の入学を 期待しているのだろうか<表1>。  「理科好き・研究好きで、大学院、できれば博士課程 まで進み、将来は大学や企業の研究所などで研究職をめ ざす受験生に来てほしいと考えています。『理科』とした のは、物理・化学・生物・地学すべてを背景に、環境や 資源の問題に立ち向かう人材養成を目的としているため です。また、研究室でリーダーシップを発揮できる入学 者も期待しています」(髙栁教授)  では、ゼミナール入試の流れを見てみよう。まず出願 前の 10 月上旬、高校3年生と高校卒業後1年目までの 実験や研究への意欲が低い入学者に対する危機感 将来は研究職をめざす人材に期待

課題レポートや出願書類などで

研究の素質の高さを問う「ゼミナール入試」

東京農工大学農学部

髙栁正夫 教授 佐藤友久 教授 出願書類などで高校時代の活動を 課題レポートでデータの解析力を評価 <表1> 2016 年度ゼミナール入試アドミッション・ポリシーと求める人物像 環境資源科学科のアドミッション・ポリシー 1.環境資源科学科は、人類が地球環境と調和して生きていくための科学技術を創成することを目指し、生物学、化学、物理学などの自 然科学に関する基礎学力を身につけ、環境や資源に関する問題解決に貢献しうる洞察力と探究心をそなえた人材を養成することを目 的にする。このような目的を持つ教育課程に真摯に取り組むことができる、次のような者を求める。 2.環境や資源に関する諸問題に関心があり、そうした諸問題の解決に貢献したいという意欲を持つ者。 3.生物学・化学・物理学等の理科系科目ならびに国語・数学・英語等の基礎科目に十分な学力を有している者。 ゼミナール入試で求める人物像 環境資源科学分野に強い興味と熱意を示すとともに、研究を志向し遂行できる素質を持ち、共に学ぶ仲間をリードしていけるような積 極性と行動力があるなど、将来性のある人材を求めています。また、積極的に理科を志向し、かつ理科に適性を有し、環境資源科学科 のアドミッション ・ ポリシーに即した方を求めています。

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受験生を対象に、第1回ゼミナールを実施する。第1回 ゼミナール受講後に出願としているのは理由がある。  「幅広い分野から出題できる一般入試とは異なり、ゼミ ナール入試では各回1テーマしか扱うことができません。 テーマによってはミスマッチを感じる受験生がいる可能 性があるため、第1回ゼミナール受講後に出願するかど うかを受験生が選択できる仕組みにしているのです。た だし、第1回ゼミナールも選考過程の一部であるため、 出願はその前にすべきとの意見もあり、今後の検討課題 です」(髙栁教授)  第1回ゼミナールでは、環境資源科学の入門的な内容 の講義(60 分)を受講した後、4~5項目提示された課 題についてレポート(100 分)を作成する<表2>。  「入門的といっても、担当教員が自身の研究テーマを取 り上げますから、高校生にとっては難しく感じられると ころもあるでしょう。しかし、多少わからないからとい ってすぐに諦めるのではなく、むしろ未知の世界に触れ ることを楽しみ、挑戦しようとする力を求めています。 講義内容を理解してメモをとることができるか、そのメ モを参考にして課題レポートを作成できるかという点も 重視しています。従って評価の際、最もウエイトが大き いのは課題レポートですが、メモも回収しています。課 題レポートに記述されていることの背景を把握する上で も役立つからです」(髙栁教授)  このように第一次選考は、課題レポートやメモのほか、 出願書類(志望理由書、活動報告書、調査書)によって 総合的に評価する。第一次選考を通過し、第2回ゼミナ ールを受講できるのはそのうち約 20 名だ。  「第2回ゼミナールでは演示実験を行いますが、受講 者に実験をきちんと見てもらうために、受講者を 20 名 以下に絞っています。また、評価の際は、ゼミナール入 試の入学者にはリーダーとして活躍してほしいので、部 活動で部長や主将などの経験があれば強みになるでしょ う。理科クラブの活動歴を期待していますが、必ずしも 多くはありません。運動部も含めて他の部活動の出身者 もたくさんいます。いずれの場合でも、自らリーダーシ ップを発揮した経験はプラスの評価となります。また、 資格取得やボランティア活動など、主体的な活動も評価 の対象としています」(髙栁教授)  第2回ゼミナールも、教員の講義(60 分)と課題レポ ート(100 分)で構成されるが、第1回と異なり、講義 の中に教員の演示実験が含まれる。導入以前は受験生自 身に実験させる方法も検討されたが、準備や安全面を考 えると 60 分で実施するのは困難なため、現状では演示 実験となっている。目盛りの読み取りや生物の観察など、 実験の一部に受験生が参加することもある。  第2回ゼミナールの課題レポートは、実験結果の数値 データ解析や考察などかなり高度なものになっている。  「第1回の課題レポートは、講義内容のまとめと自分な りの考えに関する記述が中心です。第2回では、それに 加えて、数値データをもとに結果をどう解析するかとい う要素が入ってきます。また、最近の受験生は小学生の 頃から軸に目盛りがあればグラフは作ることができます が、あえて方眼紙だけを与えてグラフを描かせることも あります。このようなことができる受験生は普段から授業 などで考える経験を積んでおり、研究の素質があると思 <表2> 2015 年度ゼミナール入試実施内容 【第1回ゼミナール】 ■講義内容 「大気環境と気象」というテーマのもと、日本の大気環境の現状 を紹介し、現在問題となっている光化学オキシダントや微小粒子 状物質(PM2.5)について解説を行う。さらに、これらの大気汚 染物質の濃度を決定する諸過程と気象の関係について説明し、大 気環境予測の基礎について理解してもらう。 ■課題レポート ①大気汚染物質について ②大気環境と気象の関係について ③気象観測について ④雨水に含まれる汚染物質の量の計算 ⑤大気環境対策に関する考察 【第2回ゼミナール】 ■実験内容 「気温と湿度」というテーマのもと、乾湿計による湿球・乾球温 度の測定を通して、相対湿度について理解を深めてもらう。相対 湿度が異なる条件下で湿球・乾球温度を測定して記録し、それぞ れの相対湿度における水蒸気圧を求める。さらに、野外における 気温と相対湿度の測定データを紹介し、両者の関係を考察する。 ■課題レポート  ①気液平衡について  ②乾球温度と湿球温度の関係についての説明  ③湿球・乾球温度から乾湿計の定数を導出  ④霧、露が発生する条件に関する考察 【面接】 ■評価方法 面接は、面接担当者3名により、各受験生あたり 10 ~ 15 分程 度行い、志望動機、理科に対する関心、環境問題に関する意識、 課外活動や社会活動への参加実績、将来の進路展望などについて 聞く。また、質問の意味を正しく理解しているか、明快で論理的 な回答ができているか、礼儀の面での問題はないか、などについ ても評価の対象としている。 ■評価ポイント 本学科への適性、理科や環境問題に対する関心、入学後の学習や 将来進路に対する意欲などを判断基準としてそれぞれの項目につ いて採点した。

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うからです。そして、これら第1回・第2回の課題レポー トに共通するのは、一般入試とは違い、単純な正解のな い課題も提示されているということです。そうした課題を 論理的に考える力を問うているわけです」(髙栁教授)  第2回ゼミナール終了後、同じ日に面接も実施される。 約 15 分の個別面接で、教員3名で行われる。第2回ゼ ミナール課題レポートの採点前であるため、課題レポー トに沿った質問ではなく、志望動機、高校時代の活動歴、 得意な科目・分野といった質問が中心だ。  こうして、第2回ゼミナールの課題レポートと面接を 総合的に評価し、第二次選考の結果が 12 月上旬に通知 される。しかし、この時点で最終合格者を決定するわけ ではない。1月の大学入試センター試験(以下、センタ ー試験)が最後の関門だ。センター試験で課されるのは 数学(数学Ⅰ・数学 A、数学Ⅱ・数学B)、理科(物理、 化学、生物、地学から2科目)、英語(リスニングを含む) の3教科5科目で、一般入試と比べると科目負担は重く ない。しかも、合格基準点は 65%以上の得点率と、それ ほど厳しい条件ではない。  「一般入試合格者のボーダーラインは約8割なので、ゼ ミナール入試の合格基準点はそれほど高くないと考えて います。センター試験を課すのは、ゼミナール入試合格 後も怠けることなく勉強を継続してほしいという想いと、 最低限の学力を担保しようという目的によるものです」 (髙栁教授)  ゼミナール入試の受験生には、高校時代にどのような 学びが期待されているのだろうか。大学教育センター副 センター長の佐藤友久教授は次のように語る。  「1年次の基礎ゼミを担当して感じるのは、高校時代の 実験経験の量によって、事象への関心や理解の深さ、広 がりが違ってくるということです。理系研究者にとって は当たり前のことですが、実験してみると教科書通りの 現象が現れないことは少なくありません。そのことに対 して疑問や不思議を感じることが、研究の第一歩になる のです。ですから、高校時代は、授業などで実験を豊富 に行ってほしいと思っています」  ゼミナール入試の入学者に、同学科では相応の手応え を感じているという。  「特に導入1年目の入学者は、ほとんどがトップクラス の成績で全員修士課程に進んでおり、そのうち1名は博 士課程に進学する予定です。3年目は3名以上が来春修 士課程に進む予定です。所属している研究室の教員から は、自分で選んだテーマや研究の進め方にこだわりを持 つタイプが多く、意欲的な研究への姿勢が周囲の学生に も好影響を与えているといった声を聞いています」(髙栁 教授)  このように一定の成果をあげていることもあり、今後 ゼミナール入試の募集人員の増加や、他学部・学科への 展開の可能性はあるのだろうか。佐藤教授は、それはか なり困難な面があると語る。  「ゼミナール入試も入試である以上、一般入試の問題 作成と同程度の厳密性を確保する必要があり、準備には 相当な労力が必要です。本学科では、第1回・第2回の ゼミナールを担当する教員は、実は 10 名近くの教員の 前で4~5回、事前に模擬授業を実施しています。話す 内容やパワーポイントの資料の記載内容に間違いがない かをチェックするのはもちろん、高校の教科書で用語の 確認を行い、さらに物理、化学、生物それぞれの分野の 専門の教員が『その用語は高校生が知らないのではない か』と疑問を呈したときは、高校生にもわかるような説 明に変更します。用語については、複数の教科書で記述 されていればかまいませんが、全く記述がない場合や1 冊しか記述されていない場合は、用語について説明し、 講義の中で丁寧に解説するようにします。そうした教員 同士のディスカッションを4~5回重ねて、徐々に講義 の完成度を高めていきます。そのため評価のポイントな どについての共通認識が醸成されており、課題レポート や面接などの際に、評価に差が生じにくいという効果も 生まれています。ただし、準備にかなりの手間がかかる 入試であるため、全学科に実施を拡大することや、募集 人員を大幅に増やすことなどは、容易でないと考えてい ます」(佐藤教授) 最低限の学力を担保するため センター試験で最終合格者を決定 高校時代は実験の経験を 意欲的な研究への姿勢が周囲に好影響 一般入試の問題作成と 同程度の厳密性確保が必要

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 首都大学東京の都市教養学部理工学系生命科学コース では、2003(平成 15)年度から「ゼミナール入試」を 実施している。いわゆるペーパーテストは課さず、延べ 9日間、約 30 時間に及ぶ高校生ゼミナールの受講と、 面接によって選抜する入試だ。この方式の入学者は、大 学の学びの「立ち上がり」が早く、入学後の成績も優秀で、 リーダー的な役割を果たす学生が多いなど、成果を挙げ ている。  ゼミナール入試導入の背景を、大学院理工学研究科生 命科学専攻の松浦克美教授(高大連携室/大学での学び 発見室 室長兼務)は次のように語る。  「1990 年代初頭から、コースの教育目標に合わない入 学者が目につくようになってきました。いわゆる受験勉 強によって相応の知識はあり、テストの点数は高くても、 生物学への興味や研究の意欲が不足している入学者が増 えてきたのです。大学ならではの学びの魅力を知っても らう必要性を感じ、1999 年の夏休みから、高校生を対 象とした『体験授業』を開始しました。2日間、10 時半 から 4 時過ぎまで講義や実験を行いました。受講態度も 熱心で、研究意欲・資質が高いと感じられる高校生も数 多く見られ、ぜひ入学してほしいと期待しました。とこ ろが、そうした高校生が一般入試ではなかなか合格でき ないのです。その頃、2000(平成 12)年 11 月の大学審 議会答申『大学入試の改善について』で、多様な選抜方 法の導入などが提言されたことから、本学でも『入試改 革検討チーム』を組織しました。検討を重ねる中で、『ペ ーパーテストで測ることができる学力だけでなく、個性 や創造性が豊かで、意欲にあふれた学生を受け入れる』 新しい入試方式を導入しようという機運が高まり、2003 年度から『ゼミナール入試』を開始しました」  ゼミナール入試は、それまで実 施していた「体験授業」の成果と 利点を最大限生かした設計になっ ている。現在は、高校生ゼミナー ルを「体験入学」として位置づけ ている。大学で生物学や基礎的な生命科学を学びたいと 考えている高校生に対して、大学での授業(講義、実験、 少人数での演習)を体験する機会を提供するものだ。6 月上旬~下旬の前期ゼミナール(土曜日 3 回)、7 月下旬 のサマーセッション(2日間)、9 月上旬~下旬の後期ゼ ミナール(土曜日 4 回)の3つに分かれている。  この高校生ゼミナールをすべて修了した人(注)は、10 月に実施するゼミナール入試(AO 入試)に応募できる (募集人員 14 名)という仕組みである。なお、高校生 ゼミナールの受講自体は、ゼミナール入試対象者以外も 受講できる。例年、高校生ゼミナールへの参加者は 80 名程度いるが、そのうちの約 2 割は高校 2 年生であるし、 3 年生でもゼミナール入試への出願を希望しない生徒も 数名いるという。  前期ゼミナールの第1回目には、評価、求める入学生、 および提出書類や発表についての助言・注意点、面接の ポイントなどが書かれた用紙が、参加者に配布される。  「私は高校の校長の経験がありますので、生徒が詳し い受験報告書を残していた場合には、後輩にとって非常 に参考になるという高校側の事情もわかります。しかし、 それでは、これまでに参加した先輩がいるかどうかで有 利不利が生じます。そうならないよう、第1回目に用紙 を配布し、できるだけ情報を公開するように努めていま す」(松浦教授)  配布される用紙には、「評価について」として、「生物 学に対する興味・関心」「勉学への自主性や積極性」「事 象の把握力や理解力」「問題設定力」「独創性」「分析力

講義、実験、少人数での演習といった

体験入学の機会を生かした「ゼミナール入試」

首都大学東京 都市教養学部理工学系

松浦克美 教授 研究力を高めて多様な分野で 活躍できる人材を育成 (注)ゼミナールの参加に関しては、学校行事や健康状態での遅刻、早退、欠席は、ゼミナール入試応募希望者の場合でも基本的に不利にならないように扱 われる。 生物学への主体的学習意欲が不足した 入学者の増加に対応するため、「体験授業」を開始

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や論理性」「表現力」などについて生命科学コースに適 性が高いかどうか、また、「求める入学生」として高校生 にもわかりやすい言葉で、10 項目が掲げられている<表 1>。  「キーワードは研究力です。ただし、必ずしも研究者養 成だけを念頭に置いているわけではありません。どのよ うな業種・職種でも、創造的な仕事ができる人材、イノ ベイティブな仕事ができる人材、主体的に行動できる人 材が必要とされているからです。科学の研究は、それら の力の向上に適しています。研究力を高めるために行う ことが、将来、多彩な分野で活躍できる素地を作るはず です」(松浦教授)  ゼミナールの内容を見てみよう<表2>。まず前期ゼ ミナール(講義)の募集人員は約 100 名。土曜日の午後、 90 分 × 2コマの講義を 3 日間受ける。講義終了後は、 感想や考察などを書いて提出し、採点される。ここでは 理解力、基礎的学力の確認を行い、募集人員が約 60 名 のサマーセッションに進めるかどうかの資料となる。 講義・実験・演習を実施 化学計算や英語も課される  サマーセッションは、1日約 5 時間のグループ実験が 2 回行われる。実験終了後には実験レポートを提出し、 採点される。ここでは、思考力、論理性、表現力を確認 する。基礎的な化学的計算能力も問われる。  「実験中にモル計算、濃度計算、比例計算などの化学 的な計算も課します。ただし、これは大学入学後の学び に適応できるかを確認することが目的で、5 割以上正解 なら減点対象になりません。後期ゼミナールは募集人員 約 20 名になりますが、選考の際には、実験レポートの ほか、実験態度などを見ています。実験でリーダーシッ プを発揮した生徒は加点されます」(松浦教授)  後期ゼミナールでは、約 3 時間の演習を 4 回実施する。 1~3回の演習では、参加者が自由に「自分で行った実 験や観察(クラブ活動・自由研究・授業等)」、あるいは 「読んだり調べたりしたことがある生物や生命現象など について」のいずれかを選び、受講生が約 10 分間の発 表を行い、受講生同士で質疑応答をする。  「発表内容は、高校の先生やその他の人の指導や助言 を受けることを認めていますので、発表内容よりもそれ に続く質疑応答を重視しています。他の生徒への発表に 対する質問や、質問に対する答えでは自分の考えや論理 性・説明力といったコミュニケーション力、積極性など <表1>首都大学東京 生命科学コースが求める入学生 全部に当てはまらなくてもよい。7つくらいは当てはまっていてほしい。 1. 生物や自然が大好き。 2. 実験、観察、研究が大好き。 3. 本をよく読む。事実や考えを文章できちんと伝えられる。 4. 計算が速い。化学の基礎を理解している。やさしい英語文を速く読める。 5. 単に覚えることよりも、理解すること、考えることが得意である。 6. 何をどう勉強するのかを自分で決めていて、自分一人でも勉強できる。 7. 授業以外の、クラブ活動、学校行事、ボランティア活動等に積極的に取り組んできた。また、時にはリーダー役を務めたことがある。 8. 多くの友達と、いろいろなことをよく話す。 9. 初対面の人でも、自分から話しかけて会話ができる。 10. 大学では、勉強をたくさんしたい。 <表2>平成 27 年度生命科学コース 高校生ゼミナール(体験入学)の内容 講義:前期ゼミナール(1項目 90 分。1日2項目) (1)生物学とは何か (2)生物学の系統と呼吸・光合成 (3)細胞の構造と機能 (4)ゲノムと遺伝子発現 (5)どのように野外の生物を調べるか (6)「多様」な生物多様性 実験:サマーセッション(約5時間(1日)ずつ) (1)ショウジョウバエの形:多様性と進化 (2)DNA とタンパク質の分析:生物の物質的基盤 演習:後期ゼミナール(約3時間ずつ) (1)微生物、進化、代謝を中心として (2)動植物の生態、環境を中心として (3)植物、発生を中心として (4)英語と生物学 (生徒用配布資料より) (平成 27 年度生命科学コース 高校生ゼミナールのご案内より)

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がよくわかるからです」(松浦教授)  第4回の演習「英語と生物学」では、その場で配布さ れたやさしい生物学の英語のテキストを輪読し、簡単な 英作文を行い、英語力の確認をする。  講義・実験・演習で構成される高校生ゼミナールが修 了した上で、9月末にゼミナール入試に出願し、10 月上 旬の面接を経て合否が決定される。  合否決定の方法は正式には公表されていないが、先述 した受講生に配布する用紙には実質的な目安として「前 期ゼミナール 30 点、サマーセッション 30 点、後期ゼミ ナール(発表以外)30 点、発表 10 点、面接 100 点」と、 目安が記載されている。  「面接では、大学の学びに適応できる基礎学力がある かを確認するとともに、自主性や創造力を重視します。 もちろん、生物学に対する鋭い興味・関心が感じられれ ば高く評価します」(松浦教授)  松浦教授は、高校時代に次のような活動を期待してい ると語る。  「部活動や学校行事、ボランティア活動などで、中心 的な役割を果たしてきた生徒が望ましいですね。ただし、 それらの活動に一生懸命取り組んでいても、先生や先輩 に指示された通りに活動していたのではあまり評価しま せん。自分なりに工夫して新しいことに取り組むことが 大切です。なお、理科コンクールなどに出場した生徒が 有利になるとは限りません。高校生らしい自分なりの発 想で実験・観察を行った場合なら評価の対象になります」  ゼミナール入試の合格者には、入学前教育が行われて いる。インターネットを使って、課題文を提示し、レポ ートを提出させて、添削指導を実施。文章表現力や思考 力を高めている。また、11 月~ 2 月にかけて、月 1 回、 土曜日に 2 時間、キャンパスに合格者を集めている。任 意参加だが、ほとんどの合格者が参加している。大学入 学までに勉強してほしい英語、化学などの具体的内容と 勉強の進め方について指導・助言するほか、「これからの 高校生活をどう過ごすべきか」「大学院ではどんな学びが 求められるか。そのために学部で何をしなければならな いか」といったテーマで、合格者が発表し合うことで、 主体的な学びの動機付けとして役立っている。  「高校生ゼミナールと、入学前教育によって、ゼミナー ル入試の入学者は、大学の学びの『立ち上がり』が早い という印象を持っています。彼らは『ゼミナール』を通 して、大学では単純な正解がない課題に取り組むことも わかっています。一般選抜による入学者と比較して、平 均的には入学後の成績も優秀で、リーダー的な役割を果 たしています」と、松浦教授は手応えを感じている。  このように成果が挙がっていることから、今後、ゼミ ナール入試の募集人員の増加や、他学科・コースへの拡 大も考えられるところだが、松浦教授は、それはなかな か難しい面があると語る。  「最大の課題は大学教員の負担が大きいことです。そ れを解決するために、ゼミナールを簡素化して実施する 方法も考えられますが、そうなると高校や予備校の指導 によって、対策をして合格する生徒が増える懸念があり ます。現状のゼミナール入試は、9日間、約 30 時間に およぶ『高校生ゼミナール』の中で、生徒の力を見るこ とができ、単純な対策が通用しないからこそ機能してい るのです」  その上で、松浦教授は、ゼミナール入試のような多面的・ 総合的な選抜を拡充する1つの方法を示唆する。  「大学教員と高校教員が連携して、真に大学入学後に 役立つような授業を、高校で実施することが望まれます。 例えば、高校1年次では、課題研究に取り組み、しかも、 教員がテーマを与えるのではなく、生徒自身で課題を発 見するように促します。通常の理科の授業でも、実験・ 実習の機会を増やすとともに、生徒が疑問や知りたいこ とを見つけることを出発点として、授業の中で常に生徒 が考えることを重視する、本当の意味でのアクティブ・ ラーニングを展開します。そのように高校教育が変化す れば、大学では、高校の授業でどのような能力を高めた かを面接などで確認すればよいことになります。そうす れば、ゼミナール入試と同じような効果が、より大規模 に得られる可能性が出てくると考えています」 高校時代の活動で 新しいことに取り組んだ経験を評価 多面的・総合的な選抜の拡大には 高大連携が不可欠 ゼミナール入試の入学者は 大学の学びの「立ち上がり」が早い

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 島根大学教育学部では、2010 年度から AO 入試を導 入している。2015 年度までの AO 入試では、集団討論 の課題を事前に告知するなど、意欲的な取り組みを行っ ていた。2016 年度からは、島根大学の「COC 人材育成 コース」の設置に伴う「地域貢献人材育成入試」の一環 として、地域枠を導入し、小論文、課題に対するプレゼ ンテーションと個人面接などを通して、多面的な能力を 測る入試を実施している。  島根大学教育学部が 2010 年度に AO 入試を導入した 背景には、学校現場の変化があったと、教育学部副学部 長の福田哲之教授は語る。  「近年、教員の役割が多様化し、求められる能力も変 化しています。例えば、授業の方法は、教員が一方的に 話をする講義形式ではなく、教員と生徒、生徒同士のや りとりなどを行い、生徒一人ひとりにきめ細かく向き合 う姿勢が必要になっています。また、保護者や地域の人々 との緊密な連携が必要とされる場面も増えています。こ うした多様な課題が生じている学校現場において、柔軟 に、そしてタフに対応できる人材を育てることが、教員 養成学部のテーマになっています。そうした力を備えて いるかどうかを見るためには、学科試験中心の一般入試 だけでなく、より多面的な能力を測ることができる選抜 方法の導入が必要になると考えたのです」  島根大学教育学部の AO 入試は、2016 年度から、一 般枠(募集人員 25 名)と地域枠 ( 募集人員7名)で実 施される。学部のアドミッション・ポリシーでは AO 入 試について、「現代の教育課題への深い関心、教師に必 要とされる論理的思考力や高いコミュニケーション能力 を有する学生」を求め、特に地域枠では、「島根県または 鳥取県内の教員として活躍し、地域社会に貢献しようと する強い意志を有する学生」を受け入れると定めている。  なお、島根大学教育学部は、鳥取大学との組織再編を 全国の国立大学で初めて実現し、2004 年度より山陰地 域唯一の教員養成特化型学部となった。その経緯もあっ て、地域枠で対象となるのは島根・鳥取の高校出身者だ。 地域枠の出願者の選考は、地域枠を優先して行い、地域 枠で合格にならなかった場合は、一般枠として再度選考 の対象になる。  選考方法は、一般枠は志望理由書(10 点)、小論文(40 点)、課題に対するプレゼンテーションと個人面接(50 点) の計 100 点。地域枠はそれに加えて、地域貢献に関する レポート(20 点)が課され、計 120 点になる<図表1>。  2015 年度までは、このほかに集団討論が実施されて いた。事前に複数のテーマを提示して、関連する情報の 調査・収集など、受験生が準備した上で討論に臨むこと ができるユニークな形式で注目されたが、2016 年度入 試からは課さないことになった。集団討論で評価してい た言語コミュニケーション力は、課題に対するプレゼン テーションと個人面接、論理的思考力は小論文を中心に 評価できるという考えもあったようだ。  教育学部藤井浩基教授は「小論文は、提示された現代 の教育に対する課題についてまとめます。課題を理解し ていること、および文章表現力、論理的思考力を評価し ます。一方の課題に対するプレゼンテーションには、小 論文のような課題の枠組みは示されていません。約 30

多様化する学校現場の課題に

柔軟に、タフに対応できる人材の育成をめざす

島根大学教育学部

構想力、表現力、独創性などが問われる 課題に対するプレゼンテーション 福田哲之 教授 藤井浩基 教授 美濃地裕子 准教授 教員の役割が多様化し 求められる能力も変化

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分でプレゼンテーション用の資料を作成し、一人 3 分間 のプレゼンテーションを行います。限られた時間の中で、 構想力、表現力、独創性、コミュニケーション能力など が問われます。資料作成の工夫も重要なポイントになり ます」と説明する。 ちなみに、これまでに出題されたプレゼンテーションの 課題は、2013 年度は文系が「他の国で話されている言 葉を学ぶことのよさ」、理系が「図やグラフを用いた表現 のよさ」、2014 年度は文系が「個性豊かな文化を創造し ていく必要性」、理系が「生活に関わる自然現象を観察や 実験を通じて科学的に理解することの必要性」について、 自分の考えを述べるものだった。  プレゼンテーションに引き続いて個人面接を実施する。 時間はプレゼンテーションを含めて一人約 10 分。なお、 選考結果は 12 月初旬に通知されるが、合格者には大学 入試センター試験の受験が課されている。3 教科 3 科目 または 3 教科 4 科目を受験し、配点合計(300 点)の 55%以上に達した者が最終合格者となる。  AO 入試の入学者には、どのような特色が見られるの だろうか。  「教育学部のアドミッションポリシーや教育の特色をき ちんと理解して入学しているという印象があります。本 学部は、小・中学校での学習支援、放課後・休日の子ど もたちの活動支援など多様な教育活動や地域活動に参加 する『基礎体験』、附属学校園での教育実習による『学 校教育体験』、カウンセリングや教育相談などの『臨床・ カウンセリング体験』の3領域の体験学修を、4 年間で 1000 時間積み上げる『1000 時間体験学修プログラム』 という特色ある教育を行っています。そうした学修の場 でも、積極的な姿勢が見られます」(藤井教授)  また、リーダーシップを発揮する学生が多いほか、教 員採用試験の合格率も好調だという。  「もっとも、大きな成果があらわれるのは在学中ではな く教員になってからだと考えています。タフで柔軟な対 応力は、教員になってからこそ発揮できる力だからです。 本学は 2016 年度から教職大学院も設置します。大学卒 業後の支援にも力を入れていきたいと思います」(福田教 授)  では、AO 入試の入学者には、高校時代にどんな学び を期待しているのか。両教授は次のような点をあげる。  「個人的な見解ですが、何となく3年間を過ごすのでは なく、1つのことを追求した経験を望みたいですね。必 ずしも成就感である必要はなく、挫折感でもいいのです。 面接でも、高校時代にこれだけはやったという柱を持っ ているかどうかを、私は重視しています。それが生徒の 個性にもつながるのではないでしょうか」(福田教授)  「いずれ教壇に立つことを意識して、現代の教育課題 についても、高校時代からアンテナを張ってほしいと考 えています」(藤井教授)  ところで、島根大学は、文部科学省の「地(知)の拠 点整備事業(COC 事業)」に採択され、2016 年度から 「COC 人材育成コース」を開設する。  先述したように、教育学部の AO 入試では「地域貢献 <図表1> 2016 年度島根大学教育学部 AO 入試Ⅱの配点・採点 ・ 評価基準 COC 人材育成コースの開設に伴って 「地域貢献人材育成入試(地域枠)」を導入 項目 配点 一般枠 地域枠 採点・評価基準 志望理由書 10 ○ ○ 子どもや教育活動への関心、教職への意欲、 学部の特色や理念に関する理解を評価します。 地域貢献に関するレポート (地域枠出願者のみ) 20 ○ 地域貢献に対する関心や意欲について評価し ます。なお、この配点は地域枠における選考 のみに利用します。 小論文 40 ○ ○ 提示された課題に対する理解と文章表現を通 して、論理的思考力を評価します。 課題に対するプレゼンテーションと 個人面接 50 ○ ○ 構想力、表現力、独創性、コミュニケーショ ン能力を評価します。 配点合計 100 120 高校時代に1つのことを追求した経験を望みたい

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人材育成入試」の一環として、地域枠を導入することに なった。地域枠の入学者は、教育学部に所属すると同時 に COC 人材育成コースにも所属し、教養育成科目およ び学部の専門科目の中から、地域に関連する基礎的な科 目(ベースストーン科目)と応用科目(キャップストー ン科目)、地域貢献インターンシップを履修する。  同コースは他学部にも設置されており、学内の地域未 来戦略センターが開催する COC フレッシュマンセミナ ー、COC ミライづくりセミナーなどのセミナーや、地域 課題解決に特化したPBLに学部の垣根を越えて参加す る<図表2>。こういった活動を通し、視野を広げて地 域の課題を見出し、主体的に向き合う姿勢を育んでいく。  「地域枠の入学者には、地域に貢献したいという明確な 志望動機が要求されます。そこで始めたのが『地域貢献 人材育成入試面談会』です。松江キャンパスを含む島根・ 鳥取の8会場で、計 15 回開催しました。本学では、こ の面談会を『夢や未来の自分を語る場』と位置づけてい ます。そこでは『島根・鳥取のためにできることを考え たい』『自分が学んだことを地域に活かしたい』『地域の 課題を見つけチャレンジしたい』という思いを語ってほ しいのです。具体的にどの学部・学科なのかが決まって いなくて、漠然とした夢であっても、その思いさえあれば、 できることはたくさんあります。そういった受験生の夢 <図表2> COC 人材育成コース教育プログラムイメージ を、大学の学びにつなげて、マッチングさせることが、 面談会の役割でもあります。延べ 124 名の受験生が参加 しており、中には複数回訪れて、自分の方向性が次第に 明確になっていった受験生もいました」(教育・学生支援 機構 入学センター・美濃地裕子准教授)  当然のことながら、教育学部の地域枠では、卒業後、 島根・鳥取の教員として活躍し、地域社会に貢献しよう とする強い意志を有することが、出願要件になっている。 出願時に提出する「地域貢献に関するレポート」でも、 その関心や意欲が重視される。  「現在、本学に在籍する島根県出身者は約 24%です。 他の国立大学と比較して低い比率です。そのため、地域 貢献への意識が不足している学生も少なくありませんで した。けれども、地域貢献型の大学をめざすことが本学 のミッションですから、地域社会で活躍する人材の育成 は重要な課題になります。将来、地域における教育のス ペシャリスト、リーダーになることを目標にする学生の 存在が、これまで地域への意識が希薄だった他の学生に、 いい意味での刺激を与えることも期待しています」( 美濃 地准教授 ) (「広報しまだい」26 号 14 ページより)

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