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原著・報告・記録(44行)/P439~450_第27回日本小腸移植研

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(1)

シンポジウム 海外留学の経験から日本の小腸移植を考える

S-1

ヨーロッパにおける小腸移植の現状

1 長崎大学大学院移植・消化器外科, 2

Department of Gastroenterology and Hepatology, University Medical Center Groningen

曽山明彦1 ・高槻光寿1 ・日高匡章1・ 黒木 保1 ・ 江口 晋1 ・Gerard Dijkstra2

Intestine Transplant Associationのレジストリによる

と,1985 年から 2013 年にかけて,世界で 2887 件の 小腸移植が施行されている。地域別の施行件数では北 米が 2,209 件と最も多く,続いてヨーロッパ 555 件, 南米 79 件,アジア 52 件となっている。今回注目し たヨーロッパでは,2013 年,EU 全体で 43 件の小腸 移植(多臓器移植含む)が施行されている。その施行 数は国により差があり,最も多いイギリスで 27 件, 続いてスペイン 8 件,ドイツ 5 件,フランス 3 件となっ ている。ヨーロッパ各国で,脳死下臓器提供の状況は 異なっており,最も多いスペインでは,人口 100 万人 当たりの死後臓器提供数が 35 件に上るが,ドイツで は 10 件程度と差がある。各国における臓器提供数と 小腸移植施行件数は必ずしも相関せず,施設の activity によるところが大きい。筆者が留学していたオラン ダ,University Medical Center Groningen(UMCG)で は 2001 年に第一例目が施行され,現在までの施行数 は 12 件(成人 7 例,小児 5 例)であり,患者生存率 2年 75%,グラフト生存 2 年 70% という成績である。 多施設登録症例による検討により,自宅待機例,肝同 時移植例,ラパマイシン使用例などの予後が良好であ ることが明らかとなっているが,長期成績に関して は,近年大きな進歩は認められないのが現状である。

International registryによると active center は世界中で

47施設(UMCG もその一つ)あるが,小腸移植施行 件数は,2008 年をピークに低下傾向にあり,ヨーロッ パにおいても同様の傾向がみられる。いずれの施設で も施行数は限られており,小腸移植の発展のためには グローバルな多施設共同研究が重要と思われる。

S-2

米国マイアミ大学移植外科におけるフェ

ローシップを通して:日本の移植医療の

展望

慶應義塾大学医学部外科 日比泰造・篠田昌宏・星野 健・板野 理・ 尾原秀明・北郷 実・藤野明浩・阿部雄太・ 八木 洋・松原健太郎・山田洋平・藤村直樹・ 黒田達夫・北川雄光 移植大国である米国で,マイアミ大学・ジャクソン 記念病院(UM/JMH)は通算の肝移植 3,700 例以上, 小腸・多臓器移植 375 例を手がけてきた世界有数の移 植施設である。ボスのツザキス教授はピッツバーグ大 学のスターツル教授の下で移植の黎明期を築き,門脈 血栓症合併例など困難な肝移植を得意とするほか,小 腸・多臓器移植の先駆者として知られている。私は移 植外科のクリニカルフェローの全米マッチングに応募 し(ECFMG 取得済み),2010 年から 2012 年までの 2 年間,UM/JMH で働く機会を授かった。 当時の年間移植数はおよそ肝 150 例,腎 300 例,膵 30件,小腸・多臓器 10 例以上で術後管理はすべて外 科が担当するが,移植専属の肝臓内科,腎臓内科,感 染症科,小児科,薬剤師が常駐し充実したチーム体制 記録

第 27 回

日本小腸移植研究会

日時:2015 年 3 月 14 日(土) 会場:Junko Fukutake Hall(岡山大学病院内) 当番世話人:八木孝仁(岡山大学病院肝・胆・膵外科)

(2)

が敷かれていた。非常に密度の濃いトレーニングを積 むことができ,私が執刀・第 1 助手として手洗いした レシピエント手術は 200 件以上,ドナー手術も 60 件 近くにのぼる。多くの臨床研究にも携わることがで き,筆頭著者としてはこれまで 5 編が論文化された。 無事に米国移植外科学会(ASTS)の所定カリキュラ ムを修了し,ASTS 認定医を取得した。 UM/JMHにおける小腸・多臓器移植の 1 年生存率 は 70% 弱と決してよいとはいえなかったが,感作例 など条件が不良でも果敢に挑戦しており,常に限界を 突破する試みが続けられていた。最近,全米の小腸・ 多臓器移植数は年間 100 例あまりで推移しており,小 腸不全に対するリハビリテーションと移植の協調が最 重要とされる。 さて,日本の脳死移植希望登録者数は 2015 年 1 月 現在,肝 401 人,小腸 5 人となっており,米国のそれ ぞれ 15,330 人,247 人と比し人口数を勘案しても彼我 の隔たりはあまりに大きい。日本の移植医療は生体移 植を中心に世界に類を見ない進化を遂げ,手術・治療 成績とも最高水準を誇るが,現在は脳死移植が日常診 療として根付くかどうかの分水嶺にさしかかってい る。組織や制度の改善,医療者・一般社会の啓蒙を通 し,移植外科医が孤軍奮闘する現状の打破が持続的発 展のための喫緊の課題である。

S-3

カナダ・トロント大学での臨床経験

熊本大学小児外科・移植外科 阪本靖介 2001年 10 月より約 3 年間,トロント大学にて腹部 臓器移植および肝胆膵外科の fellowship を行う機会を 得た。トロント大学の fellowship program は北米にお いても有数の program として認識されており,その理 由として,豊富な症例数,複数の腹部臓器移植を施行 し,かつ肝胆膵外科と組み合わせた program であるこ とが挙げられる。当時のトロント大学の年間臓器移植 数 は 脳 死 臓 器 摘 出:150 例 以 上,肝 臓(脳 死):120 例,肝臓(生 体):30 例,腎 臓(脳 死):50 例,膵 臓 (脳死):25 例,小腸(脳死):2 例であった。これら の症例を 4 人の clinical fellow と分担しながら手術を 担当した。それ以外に!病棟回診 "肝移植術前外来 #肝胆膵外科外来 $全体ミーティングが duty work で あった。 トロント大学の Dr. Grant は世界で初めて肝小腸同 時移植を施行した。留学中に経験した小腸移植施行数 は成人 2 例のみで,ともに肝小腸同時移植症例であっ た。thymoglobulin を導入療法として使用し,tacrolimus/ steroidsによる維持療法を行っていた。週 2 回のスト マからの内視鏡検査および生検検査を施行し,ともに 大きな拒絶反応なく経過した。京都大学にて経験して いた小腸移植症例と比較して tacrolimus 血中濃度は低 めに維持されていたことが印象的であった。隣接する

Sick Kids Hospitalでは小腸不全小児患者に対する

in-testinal rehabilitation programが充実しており,近年に

おいては小腸移植症例数がほとんど行われていない状 況である。 小腸不全患者に対する集学的な治療管理が発展して きた現況の中で,臨床小腸移植の進歩には何らかの breakthroughが必要であろう。 教育講演

白血球微小循環からみた小腸 homeostasis と

制御

防衛医科大学校 穂苅量太 小腸は最大の免疫器官であるといわれ,非常に多量 のリンパ球を有している。リンパ組織が発達している 背景には,小腸に義務付けられた複雑な免疫機構の存 在があげられる。動物は異物から体を守るという免疫 機構を有しているが,食餌を摂取する場合は異物であ りながら吸収するという免疫寛容が働く一方,微生物 などの抗原に対しては防御しなくてはならないという 相反する働きをしている。この抗原侵襲時の初期共通 反応の場として重要であるのが,リンパ球が血管内皮 と反応して組織に移行する場,すなわち微小循環系で ある。小腸ではとくにホーミングと呼ばれる緻密に発 達したリンパ球の再循環現象が繰り返され,未活性の リンパ球が全身を免疫監視しているといわれる。この 現象は何も腸炎や拒絶反応が起きた際に特別に誘導さ れる現象ではなく,動物は普段から盛んにリンパ球を 中心とした免疫応答を秩序のあるレベルで発動してい る。もう一つ腸管免疫におけるリンパ球ホーミングの 特徴は,リンパ球には腸管指向性リンパ球と非指向性 リンパ球があり,腸管指向性リンパ球のみが消化管を 中心としたホーミング現象を繰り返している。腸管炎 症は腸管へのホーミングがコントロールを失って過剰 な免疫応答を来してる状態という捉え方ができる。本 講演では,小腸の homeostasis における白血球微小循 環の役割を概説し,その制御からみた腸管炎症治療の

(3)

可能性につき議論する場としたい。 ランチョンセミナー

L-1

小腸移植の国際的潮流とトピックス

大阪大学大学院医学系研究科小児成育外科 上野豪久 小腸移植の歴史 は 古 く 最 初 の 小 腸 移 植 の 実 験 は 1902年に Alexis Carrel(フランス)がイヌの頸部に小 腸の一部を移植したことが最初とされている。臨床応 用では 1964 年に Deterling(米国)が最初のヒトに対 する小腸移植を実施したとされており,実際に報告さ れたのは 1967 年に Lillihei(米国)によってであった。 小腸移植は国際的にみても症例数が少ないため,その 成績に関しては単独施設の発表では成績が明らかにな らなかった。そのため 1988 年第 1 回国際小腸移植シ ンポジウムに先立つこと,1985 年に小腸移植のレジ ストリーは整備され,最新の報告では 82 施 設 か ら 2,887症例が報告されるようになった。現在の成績は 1年,5 年,10 年生存率がそれぞれ 78%,56%,43% となっている。短期生存率は著明に向上したものの, 1年を超えた中長期生存率に関してはいまだに改善し ていない。結腸を含んだグラフト,在宅栄養での待機, インダクションを行った免疫抑制療法,肝臓を含んだ グラフト,ラパマイシンを含んだ維持免疫用法が良い 結果を生んでいることが明らかになっている。しかし ながら小腸移植の技術の進歩にもかかわらず,手術件 数は近年低下している。これらの現状を鑑み今回は小 腸移植の国際的潮流とトピックスについて報告を行 う。

L-2

わが国の小腸移植の抱える技術的社会的

課題

東北大学大学院医学系研究科小児外科学分野 和田 基 重症腸管不全の治療成績は向上し,小腸移植の適応 症例,実施症例数は減少傾向にあるように思われる が,潜在的に小腸移植の適応となる不可逆的腸管不全 の症例数はむしろ増加傾向にあると考えている。静脈 栄養からの離脱が望めない限り,いずれかの時点でそ の管理は限界を迎え,また QOL の観点からも小腸移 植は必至であるが,その適応と時期に関する議論は十 分に深まっていない。わが国の小腸移植の抱える技術 的社会的問題を検討し,今後この医療が発展するため の要点を明らかとする。 小腸移植はいまだ保険適応ではなく,先進医療もご く一部の施設でしか承認されていない。保険診療とし て実施するためには,先進医療 B への再申請が必要 で,保険適応外の薬剤を含む免疫抑制プロトコルを検 討しなくてはならない。 小腸移植の長期成績向上には拒絶反応における液性 免疫,自然免疫の役割を明らかにする必要がある。 魚油由来脂肪製剤が承認され,より多くの症例に早 期から使用されれば,肝不全による死亡例や肝臓を含 む移植の適応例は激減すると思われるが,進行した肝 硬変への効果は乏しく,ハイリスク例への効果には限 界があることから,移植の必要性をゼロにするのは難 しい。 本邦では腸管運動機能障害が小腸移植の適応となる 割合が多い。これら多くはきわめて QOL の低い状態 にある。 こうした重症例には早い段階で小腸移植を適応する ことで,重篤な合併症を回避し,QOL の改善が期待 できる。 小腸移植実施数を増やし,肝-小腸,多臓器移植に 対応するには脳死ドナー不足を解消し,臓器提供を推 進するいっそうの努力が必要であろう。 基調講演

Hirschsprung 病類縁疾患の小腸移植の適応

1 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野, 2 あいち小児保健医療総合センター小児外科, 3 国立成育医療研究センター外科, 4 聖路加国際病院小児外科, 5 大阪府立母子保健総合医療センター小児外科 田口智章1 ・渡邉芳夫2 ・金森 豊3 ・松藤 凡4 ・ 曹 英樹5 ・福澤正洋5 ・家入里志1 ・松浦俊治1 ・ 林田 真1・吉丸耕一朗1! 佑典1 Hirschsprung病類縁疾患は直腸に神経節細胞が存在 するが Hirschsprung 病同様の症状を示す疾病の総称 で,これらの中には重症で難治性のものと自然治癒傾 向のものが混在する。希少疾患のため施設当たりの経 験数が少なく診断基準や治療指針が定まっておらず診 断・治療に難渋してきた。 われわれは平成 23 年度から厚労科研難治性疾患克 服研究事業として研究班を立ち上げ,分類案を作成, 全国調査を実施し実態を把握した。その結果,病理学 的所見を基本に 8 疾患に分類した。神経節細胞異常群 は,腸管神経節細胞未熟症(IMG),腸管神経節細胞

(4)

僅少症(先天性,後天性)(HG),IND の 4 疾患。神 経節細胞正常群は,巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症 (MMIHS),腸管部分拡張症(SD),内肛門括約筋弛 緩不全症(IASA),慢性特発性偽性腸閉塞症(CIIP) の 4 疾患となった。このうち先天性 HG,CIIP,MMIHS の 3 疾患が症状が遷延し死亡例があることが判明し た。なかでも MMIHS は特に予後不良であり小腸移植 の適応として準備すべき疾患と考えられる。 この間,小児慢性特定疾患(小慢)および特定疾患 (難病)の制度見直しが並行して進行したため,研究 班として診断基準,重症度,疾患概要を整備し,平成 27年 1 月から,この重症 3 疾患が小慢および難病に 指定されたのはこの研究班の大きな成果である。現在 ガイドライン作成中である。 一般演題 一般演題 1:腸管運動障害・短腸症候群

1-1

経静脈栄養を主体とし長期生存を得てい

るが血管閉塞に伴い投与経路が右鎖骨下

静脈のみとなっている慢性特発性偽性腸

閉塞症の 1 例

倉敷中央病院外科 嵯峨謙一・岡本晋弥・門久政司・内田雄一郎・ 佐野 薫 【症 例】31 歳女性。 【現病歴】在 胎 38 週,2,536 g で 出 生 し,生 後 2 日 目 から嘔吐・腹部膨満を認めた。いったん軽快したが, 生後 7 カ月頃に,再増悪した。直腸粘膜生検では正常 な神経節細胞を認めアセチルコリンエステラーゼ染色 でも神経線維の増生はなかった。生後 11 カ月時に横 行結腸人工肛門造設を行い,口側結腸の洗腸を開始し た。その後も結腸の運動異常が続き,4 歳時に 2 回の 人工肛門再造設術を経て,5 歳時に全結腸切除・回腸 Pull through(Soave 変法)を施行した。切除結腸の病 理検査では神経節細胞の形態異常はなく,慢性特発性 偽性腸閉塞症の診断となった。 経過フォロー中に小腸狭窄を認めるようになり,17 歳時に狭窄部の小腸部分切除を施行したところ,Crohn 病類似の病理所見を認めた。その後も腸閉塞症状,多 発小腸潰瘍の出現・改善を繰り返し,胃瘻部からイレ ウス管を小腸内に留置し減圧を継続している。メサラ ジンの投与を行ったが肝機能異常が増悪したため中止 した。 栄養は 6 歳時から主に中心静脈栄養に依存している が,現在も成分栄養剤の経口摂取を併用し,身長 150 cm(−1.5 SD),体重 39 kg(−2.0 SD)である。20 歳を越えてから CV ルートの消失が急速に進み,小腸 移植の適応と判断し移植施設に紹介した。 Crohn病様の小腸狭窄病変の併存を含め,文献的考 察を行い提示する。

1-2

下血を反復している Megacystis

micro-coon intestinal hypoperistalsis

syn-drome(MMIHS)の成人男性の 1 例

地方独立行政法人広島市立病院機構広島市立広島市民病

院小児外科

今治玲助・向井 亘・佐伯 勇・秋山卓士

【はじめに】Megacystis microcoon intestinal

hypoperi-stalsis syndrome(以下,MMIHS)は,消化管蠕動不 全と巨大膀胱を来す Hirschsprung 病類縁疾患である。 腸液うっ滞による腸炎,敗血症,静脈栄養(以下,PN) に伴う肝障害により長期管理に難渋する場合が多く予 後不良である。現在在宅中心静脈栄養(以下,HPN) 下当科通院中の,下血を反復している MMIHS 症例に ついて報告する。 【症 例】25 歳男性。胎児超音波で巨大膀胱を指摘さ れた。生後 6 カ月時に腸閉塞,血便で緊急手術となり 生検,チューブ腸瘻造設術を施行した。生後 8 カ月時 遷延する腸閉塞に対し癒着剥離,小腸切除吻合,チュー ブ腸瘻,中心静脈カテーテル挿入術を施行した。以後 複数回の開腹手術を受け,生後 13 カ月時に HPN 下に 退院となった。15 歳頃より下血(褐色,新鮮血が混 在)を反復するようになり年間 2∼7 回の入院加療, 年間 4∼6 単位の輸血療法を要している。中心静脈ルー トはいずれも開存しており,発熱,下血がないときは 黄疸・肝機能も特に問題ない。リザーバーポート挿入 以外の一切の外科的治療および経静脈的脂肪製剤投 与・ω3 脂肪製剤経口補充を拒否している。現在 HPN 下に薬学部通学中である。 【考 察】 中心静脈ルートは残存しており,下血のない時は黄 疸・肝機能も特に問題ない。MMIHS が周知されてい ない時期であったため減圧処置なく経過しており,下 血を反復している。今後の注意点・方針について検討 したい。

(5)

1-3

当院で右半結腸切除,小腸大量切除を行

い 10 代 に 達 し た Hirschsprung 病 類 縁

疾患の児の現状

静岡県立こども病院小児外科 三宅 啓・福本弘二・矢本真也・納所 洋・ 金城昌克・中島英明・小山真理子・漆原直人 【はじめに】当院では Hirschsprung 病類縁疾患の児に 対し右半結腸切除+小腸大量切除,小腸横行結腸吻合 を付加した腸瘻造設(本術式)を行ってきたが,術後 長期間経過した症例も増え,年齢も十代に達した。手 術を受けた患児たちの現状につき報告する。 【症 例】症例 1:hypoganglionosis の女児。1 歳 10 カ 月時本術式施行。いったん TPN 離脱したがその後夜 間 TPN を再開した。徐々に腸管拡張が進み,腸閉塞 症状が高度となり,12 歳 2 カ月時腸管追加切除を行っ た。症例 2:MMIHS の女児。1 歳 2 カ 月 時 に 本 術 式 施行。いったん TPN 離脱したが,ストマからのロス が多く,夜間 TPN を再開。腸閉塞症状はなく良好に 経過,ストマ閉鎖を試している。現在 11 歳。症例 3: hypoganglionosisの 男 児。6 歳 7 カ 月 時 本 術 式 施 行。 腸閉塞症状は改善したが,腸瘻のロスが多いため 9 歳 8カ月時に空腸瘻をチューブ腸癆に変更,適宜減圧を 行う方針とした。現在 15 歳 1 カ月,夜間 TPN 併用し 腹部症状なく経過している。症例 4:CIIPS の男児。11 歳 2 カ月時に本術式施行。空腸を 2 m 残したが,腸 閉塞症状が残存したため 12 歳時に空腸を追加切除,70 cmにして症状改善。ストマ逸脱を機に 13 歳 6 カ月時 に人工肛門閉鎖,以後も軽度腹部膨満症状はあるが夜 間 TPN を併用し経口摂取はできている。 【まとめ】4 例中 3 例で症状に合わせた追加手術を必 要とした。本術式施行後腹部症状は改善,経口摂取が 可能となったが,便量のコントロールなどに課題が残 る。

1-4

腎移植後に短腸症候群となった症例

京都府立医科大学移植・一般外科 昇 修治・越野勝博・鈴木智之・伊藤孝司・ 牛込秀隆・吉村了勇 症例は 58 歳女性,多発性嚢胞腎による慢性腎不全 で夫をドナーとして ABO 血液型不適合腎移植を実 施。嚢胞腎の感染を繰り返していた既往があり両側腎 摘出を併せて実施した。術後 2 日目に急激な腹痛を生 じ緊急開腹すると,小腸の広範壊死を認めたため同部 位の切除,小腸・結腸ストマ造設を行った。残存小腸 は Treiz 人体から約 55 cm の空腸で,当初は免疫抑制 療法は CyA(静脈注射)+MMF+PSL を使用したが, CyAを経口のみに移行することができず,結局 Tac へ変更した。服用の時間・タイミング・薬剤相互作用 を調整し,通常の 2 倍の投与量で目標値下限の血中濃 度を得ることができ,術後 44 日目に静脈注射を離脱 できた。術後 57 日目に残存していた回腸末端 10 cm に空腸を吻合し,通常の投与量まで減量できた。移植 腎機能は大きな変動なく,腎生検所見も問題なく経過 した。水分栄養管理は徐々に安定化し,CV ポートを 留置し在宅静脈栄養を行う状態で術後 146 日目に退院 した。

1-5

短腸症の腸管不全に関する研究

1 九州大学大学院医学研究院小児外科学分野, 2 大阪大学医学系研究科外科学講座小児成育外科, 3 東北大学大学院医学系研究科発生・ 発達医学講座小児外科学分野, 4 慶応義塾大学小児外科, 5 京都大学大学院医学研究科小児外科, 6 大阪府立母子保健総合医療センター小児外科 林田 真1 ・上野豪久2 ・和田 基3 ・星野 健4 ・ 岡島英明5 ・松浦俊治1 ・福澤正洋6 ・田口智章1 【はじめに】本邦の腸管不全に対する多施設共同によ る全国調査は,平成 23 年度【小腸機能不全の治療指 針の作成に関する研究】(福澤班)により実施され, 全国の腸管不全患者の把握が行われた。現在,治療の 標準化を目的に腸管不全患者の登録事業が行われ,前 向き研究が行われている。今回,登録症例における短 腸症症例に関して報告する。 【対象と方法】2013 年 2 月 1 日 か ら 2014 年 4 月 30 日 まで,何らかの消化器疾患により 6 カ月以上静脈栄養 を要する症例を登録対象とし,登録された腸管不全登 録症例 107 例を対象とし,前方視的観察研究を行い, 短腸症患者の現状,転帰等検討を行った。 【結 果】全国 33 施設より 107 例の腸管不全症例が登 録された。短腸症は 45 例で,平均年齢は 22.3 歳であっ た。症例の内訳は中腸軸捻転が 20 例と最も多かった。 腸管運動障害を合併した 3 例を除外した。残存小腸長 は平均 49.96 cm で回盲弁の内相令が 18 例(42.9%)で あった。追跡期間中に静脈栄養から離脱した症例はな く,また,死亡症例,小腸移植を施行された症例はな かった。 【まとめ】全国調査により本邦の短腸症患者の現状が

(6)

明らかとなった。短腸症の治療標準化のため,追跡調 査を継続していく必要がある。 一般演題 2:基礎研究

2-1

マウス小腸虚血再灌流障害時における好

中球動態の解析

熊本大学小児外科・移植外科 橋本晋太朗・本田正樹・室川剛廣・林田信太郎・ 阪本靖介・猪股裕紀洋 【目 的】2 光子励起顕微鏡を用いて,小腸虚血再灌 流(ischemic reperfusion:I/R)障害時の好中球動態を

in vivo,real time に観察し,そのメカニズムの新たな

解析を目的とした。

【方 法】LysM-eGFP マウス(好中球が緑色に励起す

る遺伝子改変マウス)を使用し,上腸間膜動静脈の 45 分遮断による温虚血再灌流障害モデルを作成した。 セットアップには BX61WI+FV1000MPE,Mai Tai HP

Deep See femtosecond-pulsed laserを用いた。小腸の観

察直前に蛍光試薬(TRITC-Albumin)を静注し血管を 蛍光標識した。低倍率(×10 倍),高倍率(×25,40,60 倍)にて再灌流直後から 4 時間時点まで同部位を連続 的に観察し,1 時間毎にそれぞれ 10 分の動画を撮影 した。また再灌流後 6,12,24 時間時点での動画撮影 も別個体で行った。 【結 果】小腸を切開することなく粘膜から漿膜まで の各層の好中球・血管系の動きが in vivo で同時に観 察可能であった。低倍率イメージングの I/R 群では, 1視野辺りの平均好中球数が再灌流直後から 4 時間ま で次第に増加していたが,12,24 時間時点では control 群とほぼ同様の数であった。また高倍率イメージング の I/R 群では,好中球の血管壁接着から血管外遊出, 粘膜上皮細胞への浸潤の過程を捉えることができた。 【結 論】2 光子励起顕微鏡を用いることで,生存し ている同一個体で低侵襲かつ経時的に小腸が観察可能 であり,この方法は小腸虚血再灌流障害の病態解明の 有用なツールとなると考えられる。

2-2

ブタ小腸移植モデルにおける,水素含有

保存液を用いた小腸グラフト保存の効果

1 国立成育医療研究センター, 2 熊本大学医学部附属病院小児外科・移植外科, 3 Miz株式会社 重田孝信1 ・阪本靖介1,2 ・黒川亮介3 ・内田 孟1 ・ 佐々木健吾1 ・中澤温子1 ・梨井 康1 ・笠原群生1 【はじめに】小腸移植は他臓器移植に比べ患者・グラ フト生存率が低く,虚血再灌流障害や拒絶反応への対 策が望まれる。虚血再灌流障害に対する水素の抑制効 果が注目されているが,水素により再灌流後のヒドロ キシラジカルを消去し,障害を軽減すると報告されて いる。これまでわれわれは水素含有保存液による小腸 虚血再灌流障害抑制効果について報告してきたが,今 回,水素含有保存液による小腸保存延長効果について 検討した。 【対象・方法】15 kg の雑種ブタを用い,異所性小腸 移植モデルを作成した。コントロール群(n=7)と水 素含有保存液を用いた水素群(n=7)で比較検討した。 小腸グラフトの保存時間は,それぞれ 21 時間 31 分, 21時間 6 分であった。炎症性サイトカイン(CCl2,

HO-1,IL-1b,IL-6,TNFα,iNOS,IFNγ)の測定を put

in前,再灌流 6 時間後に行い,HE 染色による形態学

的評価を行った。

【結 果】Put in 前の CCl2,IL-1b,IL-6,TNFα,iNOS,

IFNγ の発現は抑制された。再灌流 6 時間後において IL-1b,IL-6 は抑制される傾向にあった。病理組織学 的検査では,put in 前,再灌流 6 時間後ともにコント ロール群では絨毛障害が強く,6 時間後には一部壊死 を認めた。水素群では壊死所見は認めなかった。 【結 語】水素含有液保存中に炎症性サイトカインの 抑制を認め,グラフト障害が抑制された。水素含有保 存液による保存延長効果が期待でき新規保存方法とし て有用である。

2-3

新規抗接着因子抗体免疫抑制法のグラフ

ト保護効果と全身免疫に与える影響の検

1 自治医科大学外科学講座移植外科, 2 大阪大学小児成育外科 井原欣幸1 ・宮川周士2 ・奥山宏臣2 ・水田耕一1 【目 的】小腸移植では他の臓器移植に比べより強力 な拒絶抑制を必要とするため,重篤な感染症の発症が 予後を左右することが少なくない。われわれはこれま

(7)

でラットを用いて小腸に特異的な接着因子に対する新 たな免疫抑制療法による効果を報告してきたが,今回 レシピエントの免疫能への影響を検討した。

【方 法】DA(RT-1a)あるいは LEW(RT-1l)ラット

から 30 cm の小腸を LEW(RT-1l)に移植した。LEW

to LEW(A 群),DA to LEW(B 群),DA to LEW+

抗 MAdCAM-1 抗体投与(C 群)の 3 群に分け検討し た。

【結 果】C 群では B 群に比べ有意にグラフト生存延

長と,腸管組織構造保護が得られ,また組織内への CD 4+T cell,CD8+T cell の発現が B 群に比べ低下して いた。しかし C 群のリンパ球を IL-2 や Mixed Lympho-cyte Reaction(MLR)を用いてリンパ球刺激を行うと IL-2およびドナー抗原に対する反応性が維持されて いた。また Flow Cytometry を用いて活性化リンパ球 の指標であるケモカインを検証すると,B,C 群のい ずれも T cell 活性化能は維持されていた。 【結 語】本抗体法では全身免疫能を抑制せずに有効 なグラフト保護効果が得られたことから,過剰になり がちなプログラフなど免疫抑制剤の減量と感染症リス クの軽減が期待できると考えられた。

2-4

Generating tissue-engineered small

in-testine( TESI )from

cultured

Lgr 5

stem cells

長崎大学大学院移植・消化器外科

バイマカノフ ジャスラン・虎島泰洋・曽山明彦・

井上悠介・堺 悠輔・高槻光寿・藤田文彦・

金高賢悟・黒木 保・江口 晋

【Background and Aim】Tissue-engineered small

intes-tine(TESI)has been reported. The aim of the study was generating TESI from cultured Lgr5 stem cells.

【Methods】We used Lgr5-EGFP transgenic mice for

small intestinal crypts isolation. After day 7-9, cultured crypts with Lgr5 epithelial stem cells were seeded onto

biodegradable polymer(scaffold) and implanted with

wrapping into omentum of adult NOD/SCID mice. There-after, recipient mice were sacrificed at 4 weeks after im-plantation for further immunohistological analysis.

【Results】TESI was successfully generated from Lgr5

stem cells with differentiation into intestinal epithelium in vivo. Epithelial development was comparable to the native small intestine. Intestinal epithelium in TESI was immu-nohistochemically positive for Paneth cells,

enteroendo-crine cells, goblet cells, enterocytes and Ki67.

【Conclusion】These observations suggest that

trans-planted Lgr5 stem cells can differentiate in vivo to the in-testinal epithelium with further proliferative activity. Fur-ther investigation of this protocol may provide novel clini-cal applications in the field of transplantation including replacement or support of the intestinal function.

2-5

Biotube による小腸再生の研究

1 埼玉医科大学小児外科,2 国立循環器研究病センター 古村 眞1 ・寺脇 幹1 ・小高哲郎1 ・佐竹亮介1 ・ 鈴木啓介1 ・高見向平1 ・中山泰秀2 人工物を生体内に埋入した際に,生体反応によって 人工物周囲に線維芽細胞とその細胞が産出するコラー ゲン線維から構成されるカプセル組織が形成される。 この自律再生組織(biotube・biosheet)を血管の足場 として使用する臨床研究が既に行われている。動物実 験では,血管内皮細胞の遊走,壁内平滑筋が再生され ることを確認している。この biotube は,生体親和性 に優れ,組織幹細胞の誘導能力を有する足場と考えら れている。 われわれは,この biotube を腸管に移植し,腸管再 生(bio-alimentary-tube)の研究を行っている。ラット の皮下あるいは腹腔内にシリコンチューブを移植し, 移植 4 週以降に チ ュ ー ブ と と も に biotube を 回 収 す る。この biotube を小腸切除した部分に端々吻合した。 短期的に,移植可能であった。今後,腸管組織の自律 再生について,検討する予定である。 一般演題 3:栄養

3-1

Hypoganglionosis の 栄 養 管 理―5 才 に

なった 1 例について―

県立広島病院小児外科 大津一弘・亀井尚美・上田祐華 現在当科では最年長 25 歳から 1 歳まで 5 例の Hy-poganglionosisの栄養管理を行っている。最近の栄養 管理方針に関して,症例を提示し,ご検討いただきた い。 症例は 5 歳女児,生下時体重 3,045 g。生後 1 日回 腸人工肛門造設。Hypoganglionosis と診断し,生後 19 日トライツ靱帯から 50 cm の部位に空腸人工肛門再 増設。TPN と経腸栄養で体重増加を図るも困難で 1 歳 7 カ月,体重 4,802 g で空腸 70 cm 温存,回腸上行 結腸切除,Reversed Bishop-Koop 腸瘻増造設。術後経

(8)

口摂取が進み,体重増加。体重は 2 歳 6 カ月−2 SD,5 歳現在−1.5 SD に改善した。経過中病的黄疸なし。 【考 察】新生児期,緊急手術で診断困難な場合,ス トマは仮に造設,確定診断後に 30―50 cm の高位空腸 瘻(ループ式)に変更し,肛門側小腸は残存させる。 特に新生児期には TPN の投与カロリーは 70 kcal/kg/ day以下に制限する。経口摂取は母乳優先で,不可で あれば EDP(0.7 kcal/ml 以下)で開始,MCT ミ ル ク に移行する。離乳食は通常通りすすめる。腸内容のうっ 滞をさけるため,早期から母親にストマと肛門からの 洗腸手技を指導する。1∼2 歳で Reversed Bishop-Koop 腸瘻を増設する。術後経口摂取が増加すると体重増加 が得られる。その後,4∼5 歳から GH 投与可能か否 か適宜小児科に紹介する。

3-2

小児在宅静脈栄養患者におけるアウトカ

ムの向上を目指した在宅静脈栄養児の現

状把握と登録制度の推進に向けた取り組

1 大阪府立母子保健総合医療センター小児外科, 2 大阪府立母子保健総合医療センター消化器内分泌科, 3 大阪市立総合医療センター小児外科 田附裕子1 ・位田 忍2 ・! 英樹1 ・臼井規朗1 ・ 野村元成1 ・森 大樹1 ・野口侑記1 ・児玉 匡1 ・ 米田光宏3 ・福澤正洋1 海外の栄養学会(米国:ASPEN)では,ナショナ ルベースで HPN 患者の栄養改善・生活の質の向上な どを目指した栄養サポート体制の確立を目的とした患 者登録制度がすでに進行している。しかし,本邦にお いては,日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)により ASPEN の静脈栄養マニュアルなどが監修され,医療における 栄養管理の重要性が認識され,栄養サポートチームの 活動や栄養剤の開発が進んでいるものの,登録制度な どの推進には至っていない。 特に小児の静脈栄養が必要な患者においては,疾患 の特殊性や易感染性などにより在宅医療サポート体制 が確立しにくく,長期入院化を招き,HPN 患者の QOL を低下させている可能性がある。また,HPN に移行 する際,地域の院外薬局との輸液製剤の配達の調整が 必要であるが,これも地域により医療サービスの質・ 量的な偏りがみられる。現在,統括的に小児 HPN 患 者すべての現状把握がされていないため,かかる患者 が抱えている不足するサポート体制の把握するに至っ ていない。 当センターにおける,小児在宅静脈栄養(HPN)患 者の抱える問題を提示し,今後,小児 HPN 患者の QOL を向上させるうえで必要となる問題点を検討したの で,報告する。

3-3

IFALD に対する

ω3 系脂肪乳剤の有効性

と今後の課題

1 国立成育医療研究センター外科, 2 国立成育医療研究センター新生児科, 3 国立成育医療研究センター肝臓内科, 4 国立成育医療研究センター消化器科 渡邉稔彦1 ・高橋正貴1 ・大野通暢1 ・田原和典1 ・ 渕本康史1 ・伊藤裕司2 ・伊藤玲子3 ・工藤豊一郎3 ・ 新井勝大4・金森 1 【目 的】小腸移植適応の可能性がある新生児外科疾 患に合併した小腸機能不全関連肝機能障害(IFALD) に対し,ω3 系脂肪乳剤(omegaven)の効果と予後を 検討した。 【方 法】2011 年 9 月 か ら 2014 年 12 月 ま で 22 例 に 対してω3 系脂肪乳剤を使用した。うち新生児期に外 科的介入を要し IFALD(直接ビリルビン 2.0 mg/dl 以 上)を呈した 9 例を対象として,omegaven の効果と 予後について検討した。 【結 果】原疾患は,腸閉鎖症 3 例,腹壁破裂,中腸 軸捻転,ヒルシュスプルング病類縁疾患 2 例,限局性 腸穿孔,壊死性腸炎,であった。在胎週数 28 週,出 生時体重 1,109 g,と早産・低出生体重児が多かった。 術後の遷延性黄疸・肝機能障害に対して,ウルソ・茵 陳蒿湯・間欠的中心静脈栄養管理が行われたが治療抵 抗性だった。生後 5 カ月,体重 2,560 g,直接ビリル ビン値 4.5 mg/dl で omegaven 治療が開始された。治療 期間は 57 日で 8 例が黄疸消失しうち 7 例で中心静脈 栄養管理を離脱し 1 例も計画中,1 例はカテーテル感 染を併発,肝硬変も進行し最終的に肝不全で死亡した (以上の数字はすべて中央値)。Omegaven に伴う合併 症は認めなかった。製剤は 9 回に渡り 450 本が輸入さ れ,3,191,300 円のコストを要した。 【結 論】ω3 系脂肪乳剤は IFALD に対して安全で高 い奏効率を認めた。不可逆的な肝障害や全身状態の悪 化を来す前に考慮すべき治療法と思われた。Omegaven の本邦での薬事承認,本邦独自の製剤の開発が喫緊の 課題である。

(9)

3-4

静脈栄養関連肝障害を来した超低出生体

重児における

ω3 系脂肪製剤の使用経験

1 神奈川県立こども医療センター外科, 2 神奈川県立こども医療センター新生児科 新開真人1 ・望月響子1 ・武 浩志1 ・北河徳彦1 ・ 臼井秀仁1 ・宮城久之1 ・中村香織1 ・豊島勝昭2 ・ 猪谷泰史2 【目 的】超低出生体重児(ELBWI)の静脈栄養関連 肝障害(PNALD)は,不可逆的になりやすく治療に 難渋する。今回,ELBWI の PNALD に対するω3 系脂 肪製剤の効果について当院の経験を基に検討した。 【対 象】ELBWI の 6 例。平 均 在 胎 週 数 24 週 6 日, 平均出生体重 615.4 g。診断は壊死性腸炎 3 例,限局 性腸穿孔 2 例,バンドイレウス 1 例であり,緊急開腹 手術を要した。全例腸瘻造設となり,トライツ靱帯か ら腸瘻までの平均距離は 42.7 cm であった。静脈栄養 を契機に胆汁うっ滞性肝障害を発症した。全例術後に 大豆由来脂肪製剤を使用していたが,使用中止後も胆 汁うっ滞を認めた。 【結 果】ω3 系脂肪製剤投与開始平均日齢は 106.3 日 で,最低 2 カ月間は投与を継続した。4 例では開始後 4カ月以内に肝障害は消失し,その後静脈栄養も離脱 でき退院した。2 例は静脈栄養離脱できないまま死亡 した。死亡 2 例は開腹術前後の長期にわたり経腸栄養 を確立しえなかった。 【考 察】ω3 系脂肪製剤は ELBWI の PNALD に対し 有効な治療法と考えられた。しかし,経腸栄養を確立 しえない例では不可逆性肝障害を予防できなかった。 一般演題 4:臨床小腸移植 1

4-1

脳死小腸移植後の疼痛に対し多職種連携

治療が有効であった 1 例

1 東北大学病院小児外科,2 東北大学病院精神科, 3 塩竈市立病院緩和医療内科, 4 東北大学病院栄養管理室, 5 東北大学病院リハビリテーション部, 6 東北大学病院臓器移植医療部 山木聡史1・和田 1・工藤博典1・佐々木英之1 風間理郎1 ・田中 拡1 ・中村恵美1 ・鹿股利一郎1 ・ 渡邊智彦1 ・本田奈美2 ・田嶋つかさ3 ・ 稲村なお子4 ・齋藤翔吾5 ・佐藤則子6 ・仁尾正記1 【背 景】小腸移植の適応となる重症腸管不全では腸 管運動機能障害,複数回の開腹手術による腸閉塞症状 や,長期の病脳に伴う心理的問題などから疼痛が問題 となることが多く,小腸移植術後においても対応に難 渋することが多い。移植後の難治性疼痛に対し,精神 科,緩和医療科等の多職種が連携し対応した 1 例を経 験したので報告する。 【症 例】Hirschsprung 病 類 縁 疾 患 の 20 歳 男 性 に 対 し,繰り返すカテーテル関連血流感染,CV アクセス 困難,肝機能障害を適応として脳死小腸移植を施行し た。術前より眠剤,抗うつ薬の投与されていた。移植 後 1,2 カ月時に汎発性腹膜炎に対する開腹ドレナー ジ,6 カ月時に膵尾部血腫に対 し CT ガ イ ド 下 ド レ ナージを施行した。その後グラフト状態は安定してい たが,腹痛が強く,4 カ月時より緩和医療科による疼 痛管理が開始された。背景に抑うつ状態も疑われ,精 神科も治療に介入した。15 カ月時に栄養士,理学療 法士,看護師,コーディネータを交えたカンファを行 い,問題点抽出と解決を目指した。疼痛の原因として 潜在的な腸管通過障害を疑い 16 カ月時に開腹手術を 行ったが明らかな通過障害はなく,術後オピオイド依 存はむしろ増悪した。適宜対応を検討し,症状は徐々 に改善した。移植後 18 カ月時に退院,現在は外来管 理中である。 【考 察】重症腸管不全の疼痛には背景に心理的要因 を伴うことも多く,治療は困難である。こうした疼痛 には多職種と連携した治療が有効と考えられた。

4-2

当院で施行された生体部分小腸移植 4 例

目の経過報告

1 慶應義塾大学医学部外科, 2 慶應義塾大学医学部病理診断部, 3 コロンビア大学外科 清水隆弘1 ・星野 健1 ・山田洋平1 ・林 雄一郎2 ・ 佐々木 文2 ・亀山香織2 ・阿部陽友1 ・高橋信博1 ・ 石濱秀雄1・狩野元宏1・藤村 1・加藤源俊1 日比泰造1 ・藤野明浩1 ・篠田昌宏1 ・尾原秀明1 ・ 板野 理1 ・北川雄光1 ・加藤友朗3 ・黒田達夫1 症例は hypoganglionosis の 10 歳男児。頻回のカテー テル感染症のため中心静脈アクセス困難を来し,母親 をドナーとする生体部分小腸移植術が施行された。グ ラフトとして遠位回腸 150 cm を使用し,静脈は下大 静脈と,動脈はレシピエント右内腸骨動脈から採取し た autograft を間置して大動脈とそれぞれ吻合した。 術後に外科的合併症は認めなかった。免疫抑制剤は, 導 入 と し て 抗 胸 腺 細 胞 ウ サ ギ 免 疫 グ ロ ブ リ ン (rATG),プログラフ,ステロイドの 3 剤を使用した。

(10)

術後 4 週目から臨床的にはストマ排液の増加,病理組 織学的にはクリプトのアポトーシスがみられた。症状 改善がないため,ステロイドパルスを施行したが,術 後 28 日目に中等度の急性細胞性拒絶反応(以下,ACR) へと増悪。rATG の追加投与し寛解を得た。内視鏡上 はクリプト領域の開大と発赤,絨毛の短小化を認め, 病理ではクリプトのアポトーシスに加えて,クリプト の脱落,上皮内の杯細胞やパネート細胞の消失・減少 が特徴的であった。術後 47 日目に軽度の ACR の再燃 を認めステロイド療法を要したが,CMV viremia が並 存しており,治療方針の決定に難渋した。なお現時点 まで,抗ドナー抗体は陰性である。小腸移植の拒絶反 応は他の臓器に比較して進行が早く,強力な免疫抑制 が必要であることはよく知られているが,rATG 投与 後の拒絶様変化の評価や対応に関しては定見がなく, 小腸移植後の管理上,示唆に富む症例と考えられたの で報告する。

4-3

当科における臨床小腸移植 10 年の経験

∼ドナー・導入免疫抑制療法の変遷と成

績への影響∼

東北大学病院小児外科 工藤博典・和田 基・山木聡史・佐々木英之・ 風間理郎・田中 拡・中村恵美・鹿股利一郎・ 渡邊智彦・仁尾正記 【目 的】2003 年に 1 例目の小腸移植を施行して以来 10年が経過した。生体移植で開始されたが,その後 脳死移植が行われ,症例数は計 9 例となった。当科経 験例の移植成績を,ドナーや導入免疫抑制療法の差で 比較検討した。 【対象と方法】2003 年から現在までに小腸移植を施行 した 9 例を対象とした。原疾患は,短腸症が 3 例,腸 管運動機能障害が 6 例であった。初回移植年齢は 10 ∼29(中央値 22)歳であった。 ドナーと導入免疫抑制療法によって 3 群(各 3 例)

に分けた[A 群:生体,抗 IL-2 受容体抗体(IL-2Ra),

B群:脳死,IL-2Ra,C 群:脳死,抗胸腺グロブリン 製剤(ATG)]。 患者生存率,グラフト生着率,拒絶反応発症率等に ついて,後方視的に比較検討した。 【結 果】平 均 観 察 期 間 は A 群 121 カ 月,B 群 64 カ 月,C 群 39 カ月であった。患者生存率は A 群 100%, B群 33%,C 群 100% で,死因は,敗血症,腹腔内出 血が各 1 例であった。グラフト生着率は A 群 33%,B 群 33%,C 群 100% で,A 群の 2 例に対し再移植が施 行された。中等度以上の急性拒絶反応発症率は,A お よび B 群で 100%,C 群 33% であった。合併症による 再手術率は,A 群 67%,B 群 100%,C 群 33% であっ た。現在,5 例(A 群 1,B 群 1,C 群 3)が静脈栄養 から離脱している。 【結 論】症例数が少なく有意差は得られな か っ た が,グラフト生着の面で生体ドナーの優位性は認めら れず,また ATG が効果的との印象であった。今後, C群のプロトコールを軸にさらなる成績向上を目指す 所存である。

4-4

生体小腸移植における成人ドナーの術後

成績

慶應義塾大学医学部外科 日比泰造・星野 健・篠田昌宏・板野 理・ 北郷 実・八木 洋・阿部雄太・藤野明浩・ 山田洋平・黒田達夫・北川雄光 【目 的】小腸不全患者に対する生体小腸移植におい て,生体ドナーの術後経過に関する知見は限られてい る。今回,当施設で経験した症例の短期/長期成績を 検証した。 【対象と方法】2006 年から 2014 年にかけて施行され た小腸移植全 4 例の生体ドナーについて後ろ向きコ ホート研究を行った。レシピエントはすべて Hirsch-sprung病類縁疾患。ドナーは術前に厳格な身体的/心 理社会的評価を行い生体ドナーの適格性を決定してい る。 【結 果】ドナー年齢 47(40∼48)歳,男:女=2:2, BMI 23.6(20.1―29.6),BSA 1.73(1.53―2.13)。う ち 2 名は初診時 BMI 30 と 26 で術前に減量を指導。全例 で創は剣状突起から臍下部までの正中切開,回盲弁か ら 30(30―40)cm 口側を遠位側として回結腸動静脈 は温存。グラフト腸管の長さは 150(110―150)cm。 再建は手縫いで端々吻合。手術時間 5:27(3:56―5: 55),出血は少量のみ。術後は 1 例で腸閉塞を発症, チューブによる減圧を要したため在院日数は 49 日と 長期化。同患者は術後 8 年弱で食べ過ぎを機に腸閉塞 を再発,開腹癒着剥離を余儀なくされた。ほか 3 例は 合併症なく術後 9∼11 日で退院,以降も外来で順調に 経過(観察期間 52 カ月)。 【結 語】生体ドナー小腸切除は安全に施行 し 得 る が,適切なドナー選択と術前栄養状態の最適化に加 え,厳密な術後管理ならびに長期にわたる経過観察が

(11)

必須。 一般演題 5:臨床小腸移植 2

5-1

脳死小腸移植後中心静脈アクセス困難例

に対し,CT ガイド下留置術を施行した

1 例

1 東北大学病院小児外科,2 東北大学病院放射線診断科 山木聡史1 ・和田 基1 ・工藤博典1 ・佐々木英之1 ・ 風間理郎1・田中 1・中村恵美1・鹿股利一郎1 渡邊智彦1 ・大田英揮2 ・高瀬 圭2 ・仁尾正記1 【背 景】中心静脈(CV)アクセス困難は,小腸移植 の適応の一つだが,移植後の管理にも CV カテーテル (CVC)は必要である。上大静脈への通常のアクセス が全て閉塞し,小腸移植後 CV ルート確保に難渋する も CT ガイド下に CVC を留置し得た 1 例を経験した ので報告する。 【症 例】ヒルシュスプルング病類縁疾患の 20 歳男性 に対し,繰り返すカテーテル関連血流感染(CRBSI), CVアクセス困難,肝機能障害を適応として脳死小腸 移植を施行した。移植時は左腕頭静脈の閉塞と右鎖骨 下静脈の高度狭小化を認め,右肋間静脈から奇静脈を 介し CVC が留置されていた。グラフト静脈は門脈系 に吻合した。 移植後 9 カ月時に CRBSI を発症しカテーテルを抜 去した。右大腿静脈に CVC を留置したが,刺入部の 疼痛が強く抜去,その後右上腕のポート等を留置した が,感染・抜去を繰り返した。 栄養状態からも CVC が一定期間必要と判断し,放 射線科との相談のうえ,移植後 1 年 4 カ月時に左腰静 脈を CT ガイド下に穿刺し下大静脈に CVC を留置し た。その後 CRBSI の発症なく移植後 1 年 7 カ月時に 退院。 静脈栄養から離脱し,外来管理中である。 【考 察】腸管不全症例では CRBSI 等による CV 閉塞 からアクセス困難に陥ることが多い。放射線科協力の 元に施行した CT ガイド下 CVC 留置は,本症例の様 な CV アクセス困難に対し有効であった。

5-2

肝・小腸異時性移植後の肝障害,腎障害

の 1 症例

1 京都大学医学部付属病院小児外科, 2 倉敷中央病院小児外科 吉澤 淳1 ・安井良僚1 ・小川絵里1 ・岡本晋弥2 ・ 岡島英明1 ・上本伸二1 腸管不全肝障害(IFALD)による肝不全に対して肝, 小腸異時移植を行ったが,現在,栄養障害による肝障 害,および腎障害により人工維持透析を必要としてい る症例について報告する。 症例は,23 歳男性。腸回転異常症・中腸軸捻転症 に伴う短腸症候群のため,IFALD となり,18 歳時に 生体部分肝移植術を小腸移植に先行して施行,肝移植 9カ月後に脳死小腸移植術を施行した。小腸グラフト は 300 cm で,上腸間膜静脈は下大静脈に端側吻合し た。術後免疫抑制剤は,Tacrolimus, Steroid,

Daclizu-mabを使用した。術後の成長障害の改善は軽微で高 NH3血症を認め,栄養障害は継続した。生体肝移植 後 2 年 4 カ月後(小腸移植後 1 年 7 カ月後)には高度 の脂肪肝を伴う肝硬変の所見を認めた。その後,感染 を契機に肝不全となり,生体部分肝再移植術を施行し た。再肝移植時,小腸グラフトの上腸間膜静脈はグラ フト肝の門脈に再吻合した。術後,栄養障害は持続し, 現在,肝生検で再度脂肪肝炎および高度な線維化(F 4)の所見を認めている。さらに,腎障害が進行し, 人工透析による維持透析を行っている。現在は,免疫 抑制療法は Tacrolomus,Everolimus,Prednisolone によ り維持をしている。 IFALDに対して,先行する生体肝移植術を行った が,小腸移植後早期に再肝移植を必要と施行した。外 来通院加療中であるが,栄養障害が持続し,人工透析 維持療法中であるため,今後も慎重な管理が必要であ る。

5-3

脳死小腸移植待機中に急速な肝障害の進

行を認め生体肝移植を実施した超短腸症

の 1 例

大阪大学大学院医学系研究科小児成育外科 松浦 玲・上野豪久・出口幸一・山中宏晃・ 奈良啓悟・上原秀一郎・田附裕子・奥山宏臣 成人の短腸症では小児に比べて肝硬変に至ることは 少ない。今回われわれは脳死小腸移植待機中,急速な 肝障害の進行を認め生体肝移植を先行し,また移植肝 も液性拒絶で肝不全に至った超短腸症の 1 例を経験し

(12)

たので報告する。 症例は 24 歳女性。15 歳,人工妊娠中絶の際に子宮・ 小腸・下腸間膜静脈を損傷し,全小腸切除を施行され た。残存小腸 0 cm で静脈栄養を離脱できず,肝障害 を認めたため,20 歳時に脳死小腸移植適応と判断さ れた。しかし,その時点で本人の希望がなく脳死登録 を行わず,23 歳時にさらなる肝障害の進行を認めた 際に脳死小腸移植に登録となった。24 歳時,肝酵素

上昇のため入院(入院時:AST 78,ALT 44,TBil 3.8)。

第 16 病日に脳死ドナー出現したが,ドナー小腸の状 態不良のため移植は施行しなかった。第 28 病日の肝 生検にて肝硬変と診断。以降急速に(第 75 病日:AST 170,ALT 80,TBil 63.0)肝 不 全 に 至 っ た た め 第 78 病日,父より血液型適合の生体肝部分移植を施行。術 後 3 日目より門脈血流は低下。肝生検にて細胞性拒絶 を認めず,抗ドナー抗体が陽性であったことから,抗 体関連拒絶と判断。以降,移植肝機能が十分に改善し ないため脳死再移植を待機中である。年長児や成人例 でも超短腸症の場合は肝障害が急速に進行する。ま た,短腸症における乏門脈血流は,移植肝の機能に問 題を来す可能性があると考える。

5-4

小腸グラフト摘出術の判断と周術期管理

九州大学大学院医学研究院小児外科学分野 松浦俊治・吉丸耕一朗・! 佑典・林田 真・ 田口智章 【はじめに】小腸移植ではグラフト摘出して再移植待 機する選択肢がある。当科におけるグラフト摘出術を 振り返ると同時にマイアミ大学でのグラフト摘出症例 について検討する。 【九大症例】29 歳,男 性,Hirschsprung 病 類 縁 疾 患。 バシリキシマブで導入後,脳死小腸移植を施行した。 移植後 1 年で急性拒絶反応を発症しステロイドパル ス,OKT-3 を投与するも改善は得られなかった。治 療中に CMV 感染を認め,また前上膵十二指腸動脈 (仮性動脈瘤疑い)からの大量出血により肝不全となっ た。グラフトレスキューのための免疫抑制の継続は不 可能と判断しグラフト摘出を行った。高度の癒着から 手術時間 15 時間 48 分,出血量 6,850 ml と過大な 侵 襲的手術となった。結果として CMV 肺炎および肝不 全にてグラフト摘出術後 15 日目に死亡した。 【マイアミ大学症例】2013 年 3 月までに小腸グラフト 摘出術を 23 例に施行。10 例が再移植されたが残りの 12/13例は待機中死亡した。術後は免疫抑制剤を中止 しているが,2 例で PRA 高値のためリツキシマブを 継続。グラフト摘出術は再移植後の graft survival に影 響を与えていなかったが,再移植後の感染症による死 亡割合が減少していた。 【結 語】小腸グラフト摘出術は再移植に向けて免疫 抑制剤を中断できる利点があり,感染症が重篤化する 前に決断したい。しかし,免疫抑制中断中も抗 HLA 抗体出現などの懸念もあり免疫学的アセスメントを怠 らないよう注意すべきである。

参照

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