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常時微動観測による建物の同定問題

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Academic year: 2021

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常時微動観測による建物の同定問題

著者 藤岡 裕貴, 吉田 長行

出版者 法政大学情報メディア教育研究センター

雑誌名 法政大学情報メディア教育研究センター研究報告

巻 24

ページ 79‑84

発行年 2011‑06‑01

URL http://doi.org/10.15002/00007308

(2)

http://hdl.handle.net/10114/6463

原稿受付 2011年3月4日 発行 2011年 6月1 日

常時微動観測による建物の同定問題

Identification Problem of Structure by Microtremor Observation

藤岡 裕貴1) 吉田 長行2)

Yuuki Fujioka , Nagayuki Yoshida

1)法政大学大学院デザイン工学研究科建築学専攻

2)法政大学工学部建築学科

We have carried out the microtremor observation for Hosei University 58 ’ building and three dimensional modeling. This study has two processes by the observational method and the analytical method. In observational method, we put microtremor meters on each point of every floor of the building and recorded the vibration data. Next, this data is inputted to FFT procedure to examine the natural periods and vibrational characteristics. In the analytical method, we investigated the drawings of the building and made the analytical model in detail.

The 3D FEM program developed by authors is used to resolve the eigen value problem of this model. From the numerical results, we calculated several natural periods and investigated the vibrational behavior of the building. Finally, we show the comparison between the observational data and the analytical results.

Keywords : Microtremor, FFT, 3D FEM, Natural Period

1. はじめに

現在,建築基準法改定の流れを受け,建物の耐震 性や耐震補強についての考慮が重要となっている。

本研究は地盤振動による実在建物の振動性状を把握 することを目的とした研究である。

法政大学市ヶ谷キャンパス 58 年館正門側低層棟

を対象に常時微動観測機器を用いて振動計測を行い,

得られた観測データと,作成した3次元構造モデル の解析結果との比較検討を行う。

観測,解析,そして比較検討に至るまでの流れを

Fig.1 に示す。本論は,これらのプロセスによって,

対象とした建物の耐震性を把握し,今後の耐震補強 に役立てることを目指している。

2. 観測

2.1 対象建物

法政大学市ヶ谷キャンパス 58 年館正門側低層棟 を対象に常時微動観測を行った。外観を Fig.2 に示 す。千代田区富士見町に立地するRC造3階建ての 本校舎は1958年の竣工から築52年が経過している。

建物は平面,断面共にほぼ左右対称である。地上か ら順にピロティ,教授室,大教室として使われてお り,桁行方向が24m,梁間方向で18mある。構造体 としては1,2階と連続してある柱が,3階には外周 Process of Observation

Process of Analysis Finite Element

Method Eigenvalue

Analysis

Architecture

Observation FFT Analysis

Comparison・Deliberation Proper Period・Eigen

Frequency

Fig.1 Process of study

(3)

81

Copyright © 2011 Hosei University 法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 Vol.24 に し か 存 在 し な い 。 構 造 体 の 主 な 寸 法 は 柱

600×600mm,大梁600×400mm,小梁450×300mm,

壁厚25mm,スラブ厚250mmとなっている。

2.2 常時微動観測

地盤や構造物はごくわずかではあるが常に振動し ており,この微小な振動のことを常時微動と呼ぶ。

常時微動の発生原因は風・波浪といった自然現象や,

交通機関・工場など各種の人間活動によるものであ り,それらが複雑に混ざり合っている。常時微動を 適切に計測して分析することにより,地盤や構造物 の振動性状(剛性,減衰特性など)を抽出することが できる。振動周期にして0.1秒から数秒程度が常時 微動の観測帯域である。

2.3 観測機器

常時微動観測には Fig.3 に示した,低周波の微振 動を測定できる昭和測器の微尐振動測定用機器,3 軸微振動検出器を使用した。本器は3方向のサーボ 型加速度計を用いて建造物 X,Y,Z 方向の微振動 (DC加速度/AC加速度/VEL速度/DISP 変位切り換 え付)を検出し,その波形を3チャンネルレコーダに 取り込んだ後CFメモリを使用してパソコンにデー タを転送する事が可能なシステムである。

2.4 観測条件

常時微動観測は7月1日18:30~ ,7月31日8:00~

に行った。常時微動による建物の共振は,100Hz以 下の範囲で卓越すると考えられるので,サンプリン グ周波数は100Hzに設定した。建物周辺は学生が活 発に活動しており,また直近を鉄道が走っているた め人工加震の影響が尐なからず出ていると考えられ る。7月31日の観測では土曜日,朝早い時間だった こともあり比較的良い観測条件で実測を行うことが できた。

2.5 観測点

振動計は建物の特徴をよく表すように中心点付近 を選び計3箇所に設置した。2階の職員室では観測 点に壁が設置してあったため,振動計を梁の直下に 設置することはできなかった。測定に用いた振動計 は3個で,各観測点で1F,2F,3Fの3箇所に設置 し,X方向,Y方向の2方向でデータを同時に取っ た。観測点をFig.4に示す。

3. 解析

建物の同定問題を研究するにあたり,法政大学市 ヶ谷キャンパス 58 年館正門側低層棟の質量を調査 した。手順として,図面の CAD データを作成し,

このデータを基に面積・体積の算定を行った。その 後,各材料の比重を掛け合わせることで質量を求め た。3階平面図,求めた質量を,Fig.5,Table.1に示 す。

以上により求めた質量を,部材の交点による支配 体積によって分配し作成した 3 次元モデルを Fig.6 に示す。耐震壁部分にはブレース置換法を用いた。

N

Y5

Y4

Y3

Y2

Y1 X5 X4 X3 X2 X1

Fig.4 Observation point

Fig.3 Three axis vibrograph

Fig.2 The exterior of the building for observation

(4)

4. 観測・解析結果

4.1 解析概要

構造体全体の剛性マトリックスと質量マトリ ックス作成ルーチンを組み込んだ3次元骨組解析 プログラムを作成した。インプットデータは以下 に示す通りである。

■柱

ヤング率:

E  2 . 06  10

3

kN / cm

2

断面積:

A  3600cm

2

断面2次モーメント:

I

z

 1080000cm

4

1080000cm

4

I

y

■梁

ヤング率:

E  2 . 06  10

3

kN / cm

2

断面積:

A  2400cm

2

断面2次モーメント:

I

z

 720000cm

4

320000cm

4

I

y

■耐震壁

ヤング率:

E  2 . 06  10

3

kN / cm

2 壁厚:

t  25 cm

ポアソン比:

  0 . 25

なお,Tばり係数は2とした。

4.2.1 解析結果

3次まで求めた解析結果とモード図をTable.2 , Fig.7,Fig.8,Fig.9に示す。

60

00 00 60 0 600 00 60

240 00

Y4

Y3

Y2

Y1 X5 X4

X3 X2 X1

3155600060006000

18000 3155

Fig.5 3F Plan

躯体質量 質量[t]

1層 437.605

2層 631.95

3層 601.930 合計 1671.485 Table.1 Total weight of each floor

X Y

X1 X2 X3 X4 X5

Y1 Y2 Y3 Y4

N

N

Fig.6 Three-dimensional model

Analysis 1st

mode 2nd

mode 3rd mode N. frequency (Hz) 2.57 3.40 3.71 N. period (s) 0.389 0.294 0.270

Y X

Table.2 Natural period (s) and Natural frequency (Hz)

Y X

Fig.7 1st mode

Fig.8 2nd mode

(5)

83

Copyright © 2011 Hosei University 法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 Vol.24 4.2.2 考察

固有周期は1次モードのY方向への揺れ,2次モ ードのねじれ,3次モードのX方向への揺れによる 挙動を踏まえ比較・検討を行い,妥当な値が得られ た。2 次、3次のモード図では3 階の無柱大教室に おける耐震壁配置(Y 方向のみ)の影響が現れた。

各モード図において3階部は2階部と比較すると 変位が大きくなっている。これはシェル部分の過大 な質量によるものである。2 次モード図におけるね じれが3次モードのX方向の振動より先に現れてい るのは,モデル全体としてX,Y方向の構面数によ る剛性の違いと3階中央部に柱のないことが影響し ていると考えられる。

4.3.1 観測結果

最も観測条件の良い7月31日の観測データの 分析・検討を行った。観測結果は各観測のX,Y方 向のピークを比較すると,ほぼ同様のピークを確認 できた。その中でも顕著にピークを確認できる観測 点③の各階 X,Y 方向のフーリエスペクトルを Fig.9~Fig.14に示す。

Y X

Fig.9 3rd mode

Fig.9 Observation point 3 Direction-X 3F

Fig.11 Observation point 3 Direction-X 1F Fig.10 Observation point 3 Direction-X 2F

Fig.12 Observation point 3 Direction-Y 3F

Fig.13 Observation point 3 Direction-Y 2F

Fig.14 Observation point 3 Direction-Y 1F

(6)

4.3.2 考察

各観測点において,X方向では1次ピークは2.1Hz

から2.3Hzに顕著に見ることができる。2次ピーク

も3.7Hzから4.1Hzに顕著に見ることができる。Y 方向でもX方向と同様なフーリエスペクトルが得ら れた。1次ピークは2.1Hzから2.5Hzに顕著に現れ ている。2次ピークは3.7Hzから4.1Hzの付近に見 られる。3次ピークでは,X,Y両方向とも同様かつ 明瞭なピークを確認することができなかった。これ は観測を学生が活動している時間に行ったこと,直 近を総武線が走っていること,58年館と渡り廊下で つながっていることなどの影響が考えられる。

5. 総合評価

5.1 観測・解析結果

観測を行い得られたデータと解析によって得たデ ータの照らし合わせを行う。比較するのは固有振動 数と固有周期で,2 次まで検討を行った。前述の解 析結果の考察で述べたように、各観測点で顕著な卓 越振動数を確認することができ、またその値も同様 の数値であった。そのことを踏まえ,以下に示す

Fig15,Fig.16はX方向,Y方向のそれぞれ代表的な

観測点でのフーリエスペクトルを示し,観測・解析 結果の比較をTable.3に記載した。

Fourerier spectrum

-90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

Freq [Hz]

Power [dB]

3F 2F 1F

Fourerier spectrum

-90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

Freq [Hz]

Power [dB]

3F 2F 1F

1st

mode 2nd

mode Frequency

(Hz) Observation 2.3 3.9 Analysis 2.57 3.40 3.71 Period

(s) Observation 0.43 0.26 Analysis 0.389 0.294 0.270

5.2 考察

実測データと解析データを比較するにあたり,解 析結果の2次,3次固有周期に着目すると,この二 つの値は非常に近接した値をとっており,これらは 観測結果のグラフにおける2次ピークの中に含まれ ていると考えられる。よって,観測結果の2次固有 周期,固有振動数と,解析結果の2次、3次の固有 周期,固有振動数とが対応するとして比較を行って いる。

1 次では,固有周期は近しい値をとっているが、

僅かながら解析結果が観測データを下回る結果とな っている。逆に2次においては、両者の誤差は非常 に小さく,観測結果により近い値となった。

このように固有周期については,1 次,2 次,と もに観測結果と近しい値を得ることができたが,全 く同様な結果とはならなかった。その原因としては,

竣工図ではなく施工図に基づいて調査を行ったこと による,解析モデルと実際の建築物との間の寸法的 誤差や,質量計算による誤差,また対象となる建物 の老朽化や隣接する建物と一部接続していること,

などが考えられる。

6. 検討・今後の展望

6.1 観測

観測はノイズ影響が尐ない条件で行うべきである が、しかし本研究では大学の規則により深夜の観測 が不可能であった為,学生活動の活発な時間に観測 を行わざるを得なかった。また,最上階である屋上 に振動計を設置することができなかったことにより,

対象建物全体としてのデータを収集することができ なかった。

地下階および地盤との相互作用を探っていくこと も考えていくべき事項であるため,対象建物の周囲 の地盤構造を調査する必要があるその場合の手法や 理論等を研究していくことを今後の展望とする。

6.2 解析

ブレース置換の影響がモード図に僅かしか見られ Fig.15 Fourerier spectum X

Fig.16 Fourerier spectum Y

Table.3 Observation and Analysis

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Copyright © 2011 Hosei University 法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 Vol.24 ないなど精度,効率ともに更なる発展が必要である。

また建物の老朽化を考慮すると,実際の剛性とは差 が出てしまっていると考えられる。

3 次元骨組解析,特に固有モード解析は固有値に 比べ,質量計算などの構造体データの僅かな差異か らも非常に大きな影響を受けてしまうことが判明し た。よって,モード解析の精度の向上と共に,正確 な実測や図面等によるデータの収集から得られる計 算精度の向上など,より誤差の尐ない質量算定方法 を確立していかなければならない.また,構造物に 影響を与える地盤のモデル化を導入し、より精度の 高い解析を行う必要がある。

参考文献

[1] 秋元一成,吉田長行,“常時微動観測による建物 の同定問題”,法政大学情報メディア教育研究セ ンター研究報告,Vol.23,2010.

[2] 柴田明徳,“最新耐震構造解析第 2 版”,森北出 版株式会社,2003.

[3] 戸川隼人,“有限要素法概論”,培風館,1981.

[4] 藤谷義信,藤井大地,野中哲也,“パソコンで解く 骨組の静的・動的・弾塑性,解析”,丸善株式会 社,2000.

[5] 川井忠彦,藤谷義信,“振動および応答解析入門”,

培風館,1991.

参照

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