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Academic year: 2021

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【図書紹介】『<人間>の系譜学―近代的人間象の現 在と未来』  田上孝一・黒木朋興・助川幸逸郎編  東海大学出版会 二〇〇八年

著者 長谷川 悦宏

出版者 法政哲学会

雑誌名 法政哲学

巻 5

ページ 65‑65

発行年 2009‑06

URL http://doi.org/10.15002/00007927

(2)

本書は人間観という統一テーマの下、近現代(一四己○二①ヨー芯)の出発点に位置するデカルト思想から、「ハッピー・マニア』『働きマン」などで知られる人気漫画家安野モョコまで、大変幅広い領域をカバーした論文集である。また執筆スタイルにおいても、一般読者を意識した平易さを旨としながら幅広さが見られる。例えば第三章「ヘーゲルの人間論11自由であるということは?」は通常のアカデミックな論述スタイルに極めて忠実なものと言えようが、第七章「トレンディ作家」としての田山花袋には「現代に生きていれば、女子アナにでもなりたがるような人物である」といった、(良い意味で)くだけた表現が見られる。構成に関しては、前半(第一章から第五章まで)の哲学と後半(第六章から第十一章まで)の(日本及びフランろ文学とに分かれ、時系列に従って順次配列されている。但し各章には編者による「併せて読んでもらいたい章」、「参照して欲しい資料」が付されている。このことによって読者は、単純に時系列に沿って人間観の系譜を辿るだけに留まらず、時に現代へと飛び、時に時間を遡り、分野の垣根を越え、本書では扱われなかった思想家・作家、ジャンルへと目配せすることを促される。 【図書紹介】

『人間〉の系譜学11近代的人間象の現薩と未来』

田卜孝一・黒木朋興・助川幸逸郎編東海大学出版会一一○O八年長谷川悦宏 このように本書は近現代の人間観を考察する上で、幅の広さ、視界の広さをその特徴とするのだが、(編者の意図したことではないのかもしれないが)一定の統一性も見られる。それは我々が生きている日常、現実、社会に定位すること、或いはそれらと格闘することによって、本書の人間観が展開している点である。もっとも人間観という統一テーマの性質上、人が生きる日常、取り巻く社会が主要な関心となることは、当然のことと言えるのかもしれない。だが例えばヌカイフック」Ⅱ超越ではなく、「クレーン」Ⅱ平凡なメカニズムに立脚するスピノザと、仮面の下、フイクショナルな生を創作Ⅱ生きる三島由紀夫との間には、日常、現実の捉え方、姿勢においてなんと大きな溝が横たわっていることか。しかも本書でも正しく指摘されているとおり、スピノザは決して古臭い既に乗り越えられた思想家などではないのである。本書はテキストクリティークに沈潜するだけ、或いは最新の議論に憂き身をやつすだけではないバランスのとれた良書であり、近代の人間像を模索する上で多角的・重層的視点を提供してくれる本邦においては他に類を見ないニーークな論文集である。

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Hosei University Repository

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