( )監査役の地位の独立性同志社法学 六八巻一号
二四一二四一監 査 役 の 地 位 の 独 立 性
川 口 恭 弘
一 はじめに 株式会社の経営は取締役によって行われる。取締役会設置会社以外の会社では、定款に別段の定めがない限り、取締役が業務を執行し、会社を代表する(会社法三四八条一項・三四九条一項)。また、取締役会設置会社では、取締役会が会社の意思決定を行い、代表取締役がそれを執行する(会社法三六三条一項一号)。代表取締役は会社を代表するが、対内的な業務執行を業務執行取締役に委ねることもできる(会社法三六三条一項二号)。
取締役は株主総会において選任・解任される(会社法三二九条一項・三三九条一項)。また、株主は、代表訴訟により取締役の責任を追及することができる(会社法八四七条)。このような方法で、株主は取締役の職務の執行を監督することができる。もっとも、株主が日常的に取締役を監督することには限界がある )1
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二四二監査役の地位の独立性二四二さらに、取締役会設置会社における取締役会は、取締役の職務の執行の監督を行う機関でもある(会社法三六二条二項二号)。そのため、取締役会は、代表取締役および代表取締役以外の業務執行取締役による業務執行の監督を行わなければならない
)2
(。もっとも、わが国の会社では、使用人から取締役に就任する、いわゆる内部昇進の取締役が多数を占めている。このような取締役によって構成される取締役会が、会社の頂点にいる代表取締役を監督することは困難である場合が多い
)3
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このほか、会社法は、監査役制度を法定し、監査役に、取締役の職務の執行を監査させる制度を採用している。監査役は、取締役の職務の執行を監査する機関である(会社法三八一条一項)。取締役会設置会社(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除く)では監査役の設置が強制される(公開会社でない会計参与設置会社を除く)(会社法三二七条二項)。会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除く)も監査役の設置が義務づけられる(会社法三二七条三項)。これ以外の会社では、定款の規定で、監査役の設置を行うことができる(会社法三二六条二項)。監査役も使用人や取締役といった内部のものが就任することが多い。もっとも、この点に配慮して、監査役会設置会社では、監査役は三名以上で、そのうち半数以上が社外監査役でなければならないものとしている(三三五条三項)。
第二次世界大戦後の商法改正の歴史は、監査役制度の強化の歴史でもあった )4
(。企業不祥事が発生するたびに、取締役のお目付け役である監査役の権限が強化されてきた )5
(。その結果、現行法における監査役の権限は、法令上、究極に高められている。
ところで、近年、社外取締役の選任を事実上強制する動きがある )6
(。監査役の権限を極限にまで高めながら、他方で、監査役制度と競合する社外取締役の選任を進めることは、コーポレートガバナンスの仕組みとして、監査役制度の限界
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二四三二四三 を表明しているとも評価できる。また、平成二六年の改正で、監査等委員会設置会社制度が創設された。監査等委員会設置会社は、社外取締役が過半数を占める監査等委員会が取締役の職務の執行を監査する(会社法三九九条の二第三項一号)。そこでは、監査役を置くことができない(会社法三二七条四項)。この制度創設以降、監査役会設置会社が監査等委員会設置会社に移行する動きが盛んである )7
(。この点でも、監査役制度の存在意義が問われている。
前述のように、監査役には、取締役の職務の執行を監査するための強力な権限が認められている。しかし、権限が強化されても、その権限を行使できる地位が確保されていなければ、まさに、宝の持ち腐れである。特に、監査役の監査対象は取締役の職務の執行であり、監査される取締役からの独立性の確保が最大の課題となる。監査役の地位の独立性こそ、監査役制度の意義を左右するものといって過言ではない。
この問題を取り扱う多数の先行業績が存在する )8
(。もっとも、近年、コーポレートガバナンスをめぐる新たな動きがある )9
(。監査役の実情を示すデータも公表されている )₁₀
(。監査役制度の意義が改めて問われている状況のもと、監査役の地位の独立性について、現状を踏まえ、論点を再検討する意義があるものと思われる )₁₁
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二四五二四五 二 監査役の選任および解任1 選 任
監査役は、株主総会の決議によって選任される(会社法三二九条一項) )1(。指名委員会等設置会社の監査委員は、株主総会で選任された取締役のなかから、取締役会の決議によって選定される(会社法四〇〇条二項)。これに対して、監査役は、直接に株主総会の決議で選任される。このような選任方法は、監査役が取締役の職務を監査する際の立場を強固にするものといえる )2
(。
さらに、具体的な監査役候補者を議案として株主総会に提出するには、監査役の同意がなければならない(会社法三四三条一項)。この場合において、監査役が二名以上であれば、その過半数の同意が必要である )3
(。監査役会設置会社では、監査役会の同意を得なければならない(会社法三四三条一項・三項)。右の同意権は、監査役または監査役会に、取締役が株主総会に提出する監査役選任議案に関して拒否権を与えるものである )4
(。この点で、監査役の地位を強化するための方策といえる )5
(。監査役の選任候補者が、取締役の職務の執行を監査する者として適切でないと判断した場合、監査役または監査役会は右の同意を与えないことができる )6
(。これにより、監査役は経営陣と癒着した監査役人事を阻止することができる。
もっとも、この規定は、監査役の地位の独立性を確保するという点では効果は期待できない。右の権限は、議案に掲載される監査役候補者についてなされるもので、監査役がその候補から外された場合には、対処することができない。 この点については、監査役は、取締役に対して、監査役の選任を株主総会の目的とすること、または監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができる(会社法三四三条二項)。監査役会設置会社では、監査
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二四六監査役の地位の独立性二四六役会がその請求を行う(会社法三四三条三項) )7
(。これにより、監査役は自己を再任する議案を株主総会に提出することもできる )8
(。しかし、現実に、監査役が、このような権限を行使することを期待することは難しい。
平成二六年の改正前、会計監査人の選任について、監査役の同意を必要としていた。同年の改正で、会計監査人の選任に関する議案の決定は監査役が行うものとされた(会社法三四四条一項)。この決定は、監査役が二名以上である場合には、監査役の過半数でもって行う(同条二項)。監査役会設置会社では、監査役会が決定する(同条三項)。この改正は、監査される側(取締役)が監査する側(会計監査人)を選任するという、いわゆるインセンティブのねじれを解消するためのものであった
)9
(。同様の趣旨は、監査役の選任においても当てはまると考えられる。そのため、監査役の地位の独立性を強化するという趣旨からは、監査役または監査役会に、議案の決定権を与えることも考慮に値すると思われる )₁₀
(。
つぎに、監査役は、株主総会において、監査役の選任について意見を述べることができる(会社法三四五条四項・一項)。株主総会参考書類では、監査役の選任について監査役の意見があるときはその意見の内容の概要を記載しなければならない(会社法施行規則七六条五号)。このような意見陳述権も、監査役の選任議案に関する取締役会の決定に監査役の意向がよりよく反映することを期待したものである )₁₁
(。監査役は、候補者が監査役として適任でいないと判断した場合、その旨の意見を株主総会で述べることができる。さらに、自分が再任されないことについても意見を述べることができる )₁₂
(。右の意見陳述権は、監査役に与えられるところ、自己が候補者となっていない場合も、監査役の任期は、その株主総会の終結の時まであるためである。
ところで、前述の監査役候補者についての同意権や議案の提出請求権の行使は、監査役会設置会社では監査役会の決議で行う。自己が議案における候補者となっている場合、当該監査役は、決議に重大な利害関係を有することになる。
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二四七二四七 同様の問題は、取締役についても生じ得る。取締役会設置会社では、株主総会の議案は取締役会で決定される(会社法二九八条一項二号・四項)。株主総会において取締役が選任される場合、取締役会で選任議案が決定され、次年度も引き続き取締役に就任する予定の取締役は、当該取締役会の決議において重大な利害関係を有することとなる。取締役会の決議では、特別利害関係人は、議決に加わることができない(会社法三六九条二項)。この規定は、取締役が会社にために忠実義務を負っていること(会社法三五五条)から導かれるものであり、取締役が個人的利害関係ないし会社外の利害関係を有する場合に、特別利害関係が認められると解されている )₁₃(。この立場からは、代表取締役の選定において候補者である取締役が取締役会で議決権を行使することは、特別利害関係人に該当しないこととなる。むしろ、議決権の行使は、業務執行の決定への参加であり )₁₄
(、積極的にその行使が求められることになると思われる。株主総会における取締役の選任議案を決定する取締役会決議における議決権も同様に解することができる。
他方で、監査役は、会社に対して忠実義務を負う者ではなく )₁₅
(、また、監査役会の決議には、特別利害関係人に関する規定も存在しない。そのため、監査役の選任議案に自己が候補者となっている場合でも、議案に関する同意を審議する監査役会の決議に参加し、議決権を行使することは可能であると考えられる )₁₆
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お初同と役締取、は役査監、らか当にたれさ定制が法商の年二三治明様、、さ明治) 二年の商法な。たいてれと株のもるれさ任選ていおに会総主三( 社)。項二条九二三会の(いならなばれこ法点監で。るす似類役査と、は員委等査監、 あ同様でそるが、員と会委査監の社会置設等選のし任締けな委任選に別と役取はの他、で会総主株、員名の、指監査等委員は取会締役である点で社
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二四八監査役の地位の独立性二四八あれば、Aが反対することでBの選任を阻止することができる。(
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江第。頁九一五︺版六︹頭) 社会式株・郎治憲法( 入平、は制規のこ、後のそ。れさ導一てっよに法立員議てしとつ一の成た七る役に適用されも監のとなっ年。査たのにて会社法制定の際て、すべし あ会大の上法商例特法、りたに社のついて、監査役地位強化の方策正に改社な八三一条一項一号)。このよう同法意権は、平成一三年一二月の商法
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監こ役であれば、その決議を得ると監は難しい場面も考えられる。査た査の役会設置会社では、監査役会決) 議が必要であるところ、孤立し( 岩の度制役査監﹁作紳原、直ていつに件条のめたるす見し機喜。照参頁二四)念記寿生﹂先庸田前(遷変の法業企能
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監平﹂説解の法社会正改年六二成﹁事他郎三本坂、ていつに旨趣法立商法査よ人の選任) 案等が有効に計会るに務役査監。照参頁三一号三四〇二議( 念ばらなるれさ懸任が用運な意恣、的期もに。れらえ考ると制るけ設を限こ 。取締役の候補て者につは、取れ締る防らえ考とるれさ止も用運な的意自役い身こが、お。なるあ要必が意留もにとでるい定する仕決組みが採用されて たとし当ても、与該え役を限権定決に査監、に案議、になさ恣るよに役査監めた要つ必が議決会総主株ていら。決つた定機関い見をけることは難し 選任議案を決の定するものと役の点査監が役査監、でなこ。いなが権異ある査し立独に外以役査監ていつに役監と、しかし。る得り決も解見うい定
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江法述権は、昭和四九年の商改見正によって導入された。陳意頭。・前掲注(4)五二〇頁監) 査役の選任・解任についての(
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江頭・前掲注) 4)五二〇頁。((
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江頭・前掲注) 4)四一七頁。((
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会締。るいてれさ定規ていつに役取社) は)務義実忠(条五五三法、16
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二四九二四九2 資 格
監査役となれる資格については、取締役の欠格事由に関する規定が準用されている(会社法三三五条一項)。そのため、①法人、②成年被後見人もしくは保佐人または外国の法令上これらと同様に取り扱われている者、③会社法もしくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、または金融商品取引法が定める罪(法定されている)等に違反し、刑に処せられ、その執行を終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者、④③以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたはその執行を受けることがなくなるまでの者は、監査役となることができない(会社法三三一条一項・三三五条一項)。このような欠格事由の法定は、監査役としてその適格性を疑わせる明確かつ重大な事由のある者については、法律上その資格を否定することが会社の利益に適合すると考えられたことによる )1(。
さらに、監査役独自の欠格事由も規定されている。すなわち、監査役は、会社もしくはその子会社の取締役もしくは支配人その他の使用人または当該子会社の会計参与もしくは執行役を兼ねることができない(会社法三三五条二項)。これは、監査する側が監査される側を兼務する場合、自己監査となり、公正な監査ができないことが理由である )2
(。また、監査役が使用人を兼務すると、使用人は代表取締役の指揮命令下にあることから、その立場に影響され(独立性が害され)、適正な監査ができなくなることも考えられる )3
(。
以上の規制を除いて、会社法上、監査役の資格を制限するものは存在しない )4
(。監査役として適任であるかは、株主総会の判断に委ねられている。監査役の選任議案を株主総会に提出する場合、株主総会参考書類には、候補者の氏名、生年月日のほか、その略歴を記載することが求められる(会社法施行規則七六条一項一号)。もっとも、株主総会参考書類に記載される略歴のみでは、監査役としての適任性を判断する材料としては極めて不十分なものと言わざるを得な