分散システム/インターネット運用技術シンポジウム 平成11年2月
一地域ネットワークの新しい展開
--パネル討論のために「一 流通経済大学流通情報学部 林 英 輔 Ei s u k e. Ha y a s hi@ki u. a d. j 概要:この数年の間に地域ネットワークをめぐる状況に大きな変化があった。現在、 多くの非学術系`地域ネットワークは、地方自治体の地域情報化政策に呼応する形でネ ットワークの構築・・運用・相互接続を進めているo これま'での地域ネットワークが利 用していた通信網メディアは、通信事業者が提供する専用回線、 ISDN回線や電話 回線であったが、より高速化と使用料負担軽減を図るためには、私設光ファイバー、 xDSL、 CATV等の通信網メディアの利用が期待ざれている。また、地政内での ネットワーク相互接続の展開では、非営利の地域ネットワークも、商用ISPのネッ トワークも相互接続に参加しているO このような状況-において、経路制御やマルチホ ーム等を運用する技術や効果的なサーバの運用やネットワーク管理の技術の新しい適 用や改善が望まれている。 1.はじめに 1992年、わが国の大学でインターネットを利用する環境を整備する動 きが本格的になり始めた頃、地域でもネットワ一身を構築し、インタ.-ネッ トへのトランジットを実現する地域ネットワークの展開が開始された`。その 多くは大学等を相互に接続し、大学や研究機関の・みを対象とするAUPを運 用する 学術系の地域ネットワークであった。`その後2年程経って、 AUPに とらわれない、'民間組織を相互に接続する非学術系の地域ネットワ-クが構 築される状況が生まれた.これらは、地域のネットワークボランティア達の 活動によったものが多い【1]O同じ頃、地域での商用ISPのネットワークが 広がり始めたo当時、 TCP/IPネットワーク・の構築や運用技術適用の分 野では、、先行する大学等のネットワークでの経儀が-地域での普及に貢献する 場合が多かったが、その後の周知のようなインターネットの急速な拡大によ って、インターネットは完全に民間ベースで運用され、国民の.はと'′んどすべ ての層の人々を巻き込んでいる社会的情報流通の基盤に成長しrた。今日、か って普及の牽引車にもー見られたアカデミック地域ネットワークは,その・役割を終え、活動を収束し、次々とインターネットの舞台から退場を始めた。一 方、非学術系の地域ネットワークの多くは、現在も活動を継続させているo ネットワーク展開が頭打ちになったものもあるが、この数年来、各地自治体 の地域情報化計画による地域内情報ネットワーク構築の機運の中で、何らか の役割を果たそうとしている地域ネットワークもある。ある場合には、自治 体の行政区域全般に広がるネットワ-クに組み込まれたり、またある場合に は、地方自治体行政区域全般に広がるネットワークを効果的に作りあげるた め、域内の様々なネットワークの相互接続が試みられ、これによる効果的な 経路制御の実験が行われる、といらた動向が見られる。最近、全国のさまざ まな地域ネットワークで活動する技術者や研究者達は後者の実験動向に大き な関心を寄せおり、さまざまな研究交流の機会がある度に、研究の発表や熱 心な議論が交わされている【2卜【5】。 2.地域ネットワークの目的とメディア 地域におけるインターネットの利用には、単に地域にいる住民が世界に広 がるインターネットを容易に利用できるという利点だけでなく、地域内での 経済活動、行政サービス、学校教育・生涯学習・医療・福祉等の社会活動、 文化活動や生活・娯楽等での情報交換を便利にし、盛んにする効果が期待さ れている。各地域では、いわば、地域コミュニティの活動に利するネットワ -クを地域内全般に広げる計画が進められており、今後は更に盛んに進めら れうであろう。 このような目的のための役立つネットワークは、自治体行政地域内全域に 広がるネットワーク.である必要があり、その形成のアプローチとしては、地 域内に既にできている複数のネットワークを地域内で相互接続することであ ろうO そして、こような地域内相互接続ネットワーク群の運用では、地域内 経路制御技術の適用が必要であるが、それぞれの地域のネットワ-クの展開 状況の間には様々な違いがあり、そこで運用される経路制御の具体的方法も 多様である。 次に、既設ネットワーク同士の相互接続によって形成される地域内全域に 広がるネットワークで必要になる通信回線としては、これまで使われてきた 専用通信回線、電話線やI SDNの他に、ケーブルTV網【61、無線網【7】やA DSL網間等がある。新しく採用されつつあるこれらの通信メディアは、電 話網やI SDNと比較すると、通信のために利用できるバンド幅は広く、よ り高速な通信が可能であり、専用線に比べると、その利用料金は廉価である。
また最近は、岡山県のように、自治体によって敷設された光ファイバー回線 を地域内共同利用の幹線とする、いわば私設網を用いた地域ネットワークの 構築・運用が可能であることが実証されている ADS L網は私設網とし てだけでなく、回線事業者によって提供される地域も出てきたり、隣接する 地域のCATV網同士が相互接続して、より広い地域を網羅するような例も 出てきている【9】。このように、地域で利用できる新たな通信メディアの出現 は、地域ネットワークの高速化や新たな拡大を可能とする条件になっている。 3.組織運営の新しい可能性 従来、ネットワークボランティアの活動によって開始された地域ネットワ ークは非営利活動を担う任意団体として活動を行ってきたが、自治体に協力 して地域情報化の公共的な分野での事業に参入するような場合、このような 組織形態では、例えば、例えば、地方自治体からの業務委託が受けられない 等、様々な不都合があったO 実際に、地域における学校ネットワークの技術 的支援や運用業務支援に非営利地域ネットワークが参加してほしいというニ ーズは各地であるが、これに対する自治体側の予算支出の道がない0 昨年12月.1日に施行された特定非営利活動促進法(NPO法)によって、 公共的な分野で活動している民間の非営利組織(NPO)に法人格を与える 手続きが都道府県の条令として準備されるようになった【'10】。中には、 NP o法人の法人・住民税の減免措置の規定が含まれる場合もある。 このNPO法人格の取得は地域ネットワークの地域公共活動への参加への 道を開く可能性をもつものとして、検討されるべきものであろう。 4.パネリストの顔ぶれ このパネル討論では、上に述べたような地域ネットワークをめぐる状況を、 さまざまな通信メディアによるシステムを紹介から、地域内ネットワーク相 互接続やそれによる経路制御技術の紹介、そして、ネットワーク組織の変遷 やNPO法人化の問題の紹介の立場で、 5人のパネリストから報告をしてい ただく。 本討論では、各パネリストによって、各メディアによる通信システムの特 徴が紹介され、地域ネットワークの新しい展開のために、利用可能な機能も 示されるであろう。これらを巡って、地域ネットワークの今後の発展に有効 となるような討論を行いたい。 5人のパネリストは、以下の方々である。敬称は省き、所属と、今回の分
担を紹介する。 相原玲二(広島大学総合情報処理センター) :学術系地域ネットワークの 退場と地域ネットワークの NPO法人化 小林和其(倉敷芸術科学大学産業科学技術学部) :光ファイバー私設網に よる地域ネットワークの経路制御 中川郁夫(インテックシステム研究所) :地域におけるネットワーク相互 接続の概況 増島 光(富士通株式会社複合情報通信ビジネス本部) :CATVによる I Pネットワーク 山崎重一郎(財団法人九州システム情報技術研究所) :無線による地域ネ ットワーク この討論の準備から当日の討論-の進行のコ-ディネイションは著者が担当す る。 5.おわりに パネル討論「地域ネットワークの新しい展開」はわが国の地域ネットワー クの現状と今後を、ネットワークシステム、ネットワーク組織、運用状況等 を運用技術面から把握し、展望するための討論として計画されたものである。 ここでは、そのための背景や現状及びパネリスト等を紹介した。討論の時間 が計画時よりも1時間短く設定されることになり、 AD S Lによる地域ネッ トワーク等の紹介のパネリスト報告を省略することになったが、今回パネリ ストとして登壇して下さる方々のご協力には、深く感謝します。 参考資料: [1]林英輔J:日本における地敬ネッ.トワークの誕生,情報処理, Vol.35,No.8,pp.699-707 (1996) [2]中川郁夫、米-EB政明、安宅彰隆:国内における地域I Xの技術動向,鰭 報処理学会研究報告, 97-DSM-7, pp.1-6(1997) [3]今野幸典,樋地正浩:プライベートなインターネットエクスチェンジ.を 実現する経路制御手法の提案,情報処理学会研究報告, 97-・ DSM-7, pp.7-12 (1シ997) 【41八代一浩、他:地域内IX技術の運用と地域情報化への適用、分散シス テムシンポジウム・98、 pp.ll-18(1998) [5]鍛冶武志、他:ソ-スI Pアドレスを考慮した経路制御システムの提案
-地域IXにおける経路制御問題の解決-,情報処理学会研究 報告 97-DSM-8, pp.7-12 (1997) 【6】中野吉孝、他:CATVによるマルチメディア通信、ケーブルモデムシ ステムを中心にして, b i t1999-2 , pp.85-94(1999) 【7】山崎重一郎、他:無線LANを利用した都市コミュニティのためのイン ターネット基盤実験の報告.'情報処理学会研究報告, 98-DSM-12, pp.25-29 (1998) 【8】伊那xDSL利用実験連絡会:伊那ADSL,丸山学術図書, (1998) [9]和泉幸広 CATVインターネット コンピュータ&ネットワークLA N, 1999-1, pp.42-47(1999) 【10】 「NPO法人の税、 32都道府県が免税上 朝日新聞1998年11月 3日(40470号)記事