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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 「地域技術」政策の展開と課題 Author(s) 佐脇, 政孝 Citation 年次学術大会講演要旨集, 26: 191-195 Issue Date 2011-10-15Type Conference Paper Text version publisher
URL http://hdl.handle.net/10119/10099
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2B01
「地域技術」政策の展開と課題
○佐脇政孝(産業技術総合研究所) 1.はじめに 少子高齢化の進展による生産年齢人口の減少や、生産コストの安い新興経済地域との競争にさらされ ている地方経済にとって、外部からの産業誘致ではなく、地域産業の振興による内的発展が求められて おり、その内的発展のキーワードが地域発イノベーションである。地域発イノベーションを実現する上 で、地域において技術をどのように活用するかが重要なポイントとなっている。 こうした地域振興と技術開発が結びつくきっかけとなったのが 80 年代初頭に打ち出された「地域技 術」というコンセプトである。本発表では、「地域技術」概念によって展開された 80 年代の技術政策を 再検討し、地域発イノベーション時代の地域技術政策のあり方について考察した。 2.「地域技術」政策の誕生と展開 (1)「地域技術」の背景 通商産業省の政策概念として「地域技術」が登場するのは 1981(昭和 56)年である。 この政策概念の登場には2つの背景がある。まず一つは、長期にわたって続いていた地方圏から大都 市圏への人口流入が 1970 年代後半に入って停滞あるいは小規模ながら地方圏への逆流といった状況と なっていた。一方、政策においても、第3次全国総合開発計画(1977 年)に「定住圏構想」が盛り込ま れたり、大平正芳首相が設置した研究会が「田園都市構想」(1980 年)を提唱するなど、「地方の時代」 が意識されるようになっていた。 第二に、財政制約下での政府消費支出や公共投資が伸び悩み、基礎素材産業の不振と加工組み立て産 業の拡大という産業構造の変革において基礎素材産業の構成比の高かった地方経済はオイルショック 以降低迷を続けていた。 こうした中、1980 年 3 月の「80 年代通産政策ビジョン」で産業の知識集約化のための研究開発など 「技術立国」を目指すことや、学術・産業部門の牽引による地域振興といったビジョンが提示されたこ とが、技術による地域振興という「地域技術」の概念形成につながった。 (2)「地域技術」のコンセプト 地域技術とは、高度成長期の日本の産業全体を支えるために政府の技術開発プログラムによって開発 された技術に対して、地域の状況に合わせた、地域の振興に必要な技術と捉えられている。 「地域技術」政策を担ったのは当時の通商産業省立地公害局と工業技術院、中小企業庁であったが、 これらの組織それぞれに「地域技術」へのアプローチは異なっている。 通産省立地公害局では、メカトロニクス等を基軸とする精密機械、電子産業などが多く立地する大都 市圏に比べ、こうした業種の立地の少ない地方圏での産業振興を目指して、「先端技術等の工場等への 分散を進めること、地場産業など地域に根ざしている産業の振興を図る」ために、地域の技術ポテンシ ャルの向上(新たに立地する先端技術企業との技術ギャップの解消)や地域の未利用資源の活用、伝統 的技術の発展応用を促進しようとした。 工業技術院は、地域技術を「多様な地域社会ニーズに応え、地域社会への具体的な普及を目指した技 術」と定義し、地域に立脚した中小・中堅企業の技術とともに、地域社会生活ニーズに密着した技術(例 えばローカルエネルギー関連技術など)も地域技術の範疇に含めている。 また、中小企業庁では地域中小企業の技術開発を支援することにより、既存製品の高級化、品質向上、 機能向上や製品の多様化など地域中小企業が直面する課題を解決し、活力ある中小企業の展開を目指し ていた。 (3)「地域技術」政策の展開 こうした概念に基づいて各種の施策が展開されたが、代表的なものはテクノポリス政策である。日本の産業構造が基礎素材産業から高度知識集約型の先端技術産業へとシフトする中で、先端技術産業への 転換の遅れている地方に先端技術産業展開の拠点(誘致または地域内での育成)を形成し、その研究開 発活動、生産活動に地域の人材や資源を利用しつつ、地域産業への技術移転を促進し、我が国全体の技 術水準の向上、産業構造の高度化を図ろうとした。1983 年に高度技術工業集積地域開発促進法(テクノ ポリス法)が制定され、全国で 26 カ所の計画が承認されている。 また、通産省立地公害局では、産業構造の知識集約化や環境の保全、省エネルギー等に社会的要請の 大きい重要技術の研究開発を補助する「重要技術研究開発費補助金」に、1983 年から地域枠を設けて、 地域の特性とニーズに即した技術の研究開発に補助を支援している。 工業技術院では、工技院傘下の国立研究所と地域の企業や公設試験研究機関が集中共同研究を行う 「重要地域技術研究開発制度」を 1982 年度から開始している。この制度では、研究費は参加する組織 が自前で負担することになっており、国の負担分は 5 年間で 5~8 億円の規模となっている。また研究 開発テーマとして 1983 年度は「寒冷地型水産加工廃棄物総合処理技術」(北海道地域)、「多品種少量生 産型高効率鋳造技術」(中部地域)など4件が挙げられている。 中小企業庁では、1983 年度より「地域フロンティア技術開発事業」をスタートさせた。この事業は、 都道府県が選定する特定の分野に関する技術開発振興計画(フロンティア事業実施計画)を国と県が共 同で作成し、その計画に基づいて公設試験研究機関、大学、民間研究所、中小企業等が共同で取り組む もので、都道府県で中核技術研究開発、応用技術研究開発、研究開発支援等の事業を行い、国は中小企 業事業団において新技術の試作を行うものとされていた。1983 年度には全国で 21 テーマが実施されて いる。 3.「地域技術」概念の問題点 (1)「地域」の定義 地域技術政策は、地域独自の政策展開を求められたのであるが、国の支援制度に頼らず地域の資金の みで政策を推進することは容易ではなく、何らかの形で補助金などを受け入れる必要があった。その際、 地場の中小企業の技術開発への補助等で、全日本を対象とした制度を地域企業に適用するだけであれば ことさら「地域」を明示する必要はないのではないか。 (2)地域技術の地域的差異とは何か 地域技術が想定する地域の特性やニーズに即した技術とは何であったのか。工芸などの伝統的な地場 産業の技術は地域ごとに特徴があるかもしれないが、地域産業の技術として、基本的に機械・金属、化 学等の技術は広く存在している。テクノポリス政策では地域技術といいながら、先端技術産業誘致のた めに各地で同じような技術を開発するといった矛盾が存在した。 (3)地域と先端技術研究開発 テクノポリス計画は、先端技術産業を地方圏に誘致するために、先端技術の研究開発を推進した。地 域において先端技術の研究開発をすることによって先端技術産業を呼び込み地域を振興するというの は、ある意味において地域技術政策の象徴的なものでもあった。 しかし地域振興になぜ「先端技術」の「研究開発」が必要なのか。開発された先端技術は地場の産業 が求める技術であったかについては疑問の余地がある。地域振興に資する技術であるとするなら、先端 技術の研究開発を行うというアプローチばかりが前面に出たことには問題が残る。 4.「地域技術」概念の再検討 では「地域技術」をどのようなものとして捉えるべきなのか。 まずは単独の企業が保有している技術のみを対象とするものでないことは明らかで、地域内にある程 度の集積がある産業、企業群が平均的に保有する技術、つまりある程度の規模のユーザーのいる技術で ある必要があろう。ある技術の開発に成功して、年商2億円のベンチャー企業を産み出すことができた としても地域経済への波及効果は限られる。それよりも、開発した技術を多くの地域企業に技術移転す ることにより地域内で生産している製品の市場競争力を強化し、数十億円、数百億円の経済効果を目指 すことが求められるのではないか。すなわち「地域技術」とは地域内企業が基盤として共有できる技術 (プレコンペティティブな技術)であることが重要である。 また、たった1つの製品を製造している企業であっても、保有している技術は1つではない。1つの
製品を作るためにはいくつもの技術を保有する必要がある。「地域技術」にもこのような見方をするこ とが重要である。その地域内で生産される製品に関連している企業群(最終的な製品を製造する企業だ けでなく、原料や中間財を製造する企業も含む)が保有している技術の総体(技術の集合体)こそ、「地 域技術」と呼ぶにふさわしいのではないか。地域技術に関して、地域による差異とは、その技術の集合 体の構成(ポートフォリオ)の違いであるということになる。 こういう視点から見ると、地域内に特定の1社しか、その技術を保有しないとしても、その技術によ って産み出される製品(中間財)が地域内の多くの企業を支えている場合、この単独企業の保有する技 術も「地域技術」(技術の集合体)の一部として捉えることができる。 こうした概念整理をした場合の、「地域技術」政策とはどのようなものになるのか。 地域として、産業構造の変革を行わねばならない、または他地域との競争に打ち勝てるような競争力 のある製品を開発しなくてはならないという課題(目標)に対して、既存の「地域技術」(技術の集合 体)で対応が可能なのか、可能でないとしたら既に保有している技術を高度化するか、あるいは新しい 技術の導入が必要となる。こうした対応可能性の見極めや、技術の集合体である地域技術の構成部品(技 術)の取り替えを推進することこそ、「地域技術」政策なのではないだろうか。また、取り替える技術 は必ずしも先端技術である必要はないと考えられる。 類似した製品を生産している二つの地域があったとして、ある時点での「地域技術」の構成は製品が 類似しているために、似たようなものであるかもしれない。しかし、市場での競争力を高めるための方 針が異なれば、どのような技術を高度化するのかという「地域技術」政策の中身は異なってくるのであ る。 5.地域技術政策事例 上記のような「地域技術」概念もとに、地域産業振興のための地域技術政策の事例を紹介し、政策内 容について考察する。 (1)「淡麗でソフトな芋焼酎」開発に取り組んだ鹿児島県焼酎産業 ①新たな技術開発の背景 本格焼酎は 1970 年代、1980 年代前半、そして 2000 年代前半の3回の焼酎ブームを経て、市場が 拡大してきた。特に第2次ブーム(1980 年代前半)では、減圧蒸留法やイオン交換樹脂などの新技 術の導入により、従来の「焼酎臭さ」を取り除いた淡麗でソフトな味わいを特徴とする大分県の麦 焼酎が東京や大阪などの大消費地で販売を伸ばした。 ところが焼酎生産量が日本一の鹿児島県では、その主力製品である芋焼酎は芋もろみの粘性が高 いため、減圧蒸留法の適用には困難な点があった。そのため第2次焼酎ブームにおいては、後発の 焼酎産地である大分の麦焼酎の後塵を拝することになる。90 年代の鹿児島焼酎産地は、淡麗でソフ トな味わいの芋焼酎開発にチャレンジし、第3次焼酎ブームでは大きく生産量を拡大した。 ②技術開発の取り組み 鹿児島県工業技術センターでは、1990 年代に淡麗でソフトな味わいの芋焼酎を開発するために 様々な研究が進められてきた。 その成果として 1997 年には香気成分を大量に生成し、芋焼酎のいも臭さを抑える焼酎用酵母が 開発されている。また、蒸留技術として、1993 年から 95 年にかけて、回分精留法という香気成分 を分離しながら蒸留する新しい蒸留法の開発や、99 年から 01 年には減圧蒸留法を使うために、芋 モロミの粘性を低下させる技術の開発、05 年から 07 年には既存の設備を変えることなく、芋麹を 使う全量芋焼酎の開発など、淡麗でソフトな味わいの芋焼酎を開発するための研究が継続して実施 された。 減圧蒸留法などの蒸留技術もさる事ながら、芋焼酎の風味の決め手は原料の芋の品質向上にもあ ると言われている。芋焼酎の原料となるサツマイモは傷みやすく、栽培中の手入れはもとより、畑 から収穫後速やかに傷を除くなどの前処理を施し、仕込まなければならない。鹿児島県の農業系公 設試では、サツマイモ栽培の技術的指導を行う一方、栽培の機械化の研究開発を行ってこうした品 質管理を支えてきた。 また、(独)九州沖縄農業研究センターと鹿児島県工業技術センターおよび焼酎メーカー5 社が参 加したプロジェクトにより、1994 年にデンプン含有量が多く、しかも淡麗な風味の焼酎の原料とな るサツマイモ品種「ジョイホワイト」が開発されている。
③研究開発成果移転の体制 鹿児島県には研究開発体制を整え、多くの特許を保有する有力企業も存在するが、焼酎メーカー の多くは独自に研究開発を行うことは困難な中小企業である。鹿児島県では、鹿児島県工業技術セ ンターが事務局となり、県下のメーカーを組織して 1989 年から「本格焼酎技術研究会」を運営し、 産地の製造技術面での進歩をリードしている。この研究会では、活動を通じて県内焼酎メーカーが 直面する課題を共有し、メーカー参加の形で研究開発プロジェクトを行い、その成果を地域の業界 へ還元するという活動を続けている。 ④考察 鹿児島県では淡麗でソフトな味わいの芋焼酎を造るために、それまでに保有していた技術にいく つかの新技術を開発して加えなければならなかった。淡麗でソフトな味わいの芋焼酎を造るための 地域技術(技術の集合体)には、一般的には農業技術と考えられる、原料のサツマイモの栽培や新 品種の開発も含まれていた。このように地域がどのような方向を選択するかによって地域技術の中 身は変わってくる。サツマイモの栽培技術や新品種開発は、先端技術ではないが、地域技術にとっ ては新技術の導入と捉えることができる。また、変更を加えた地域技術を地域の企業に移転してい くための仕掛け(「本格焼酎技術研究会」)を整備することも地域技術政策の重要な領域であるとい える。 (2)自動車産業集積形成のための技術施策 自動車産業は我が国の産業の中で最も国際競争力のある産業の一つであり、その立地は雇用の拡大と 地域産業が部品供給を行うことによる地域経済の拡大など、地域への波及効果は大きなものがある。 しかし、自動車産業への部品供給に参入することは簡単ではない。俗にいうカンバン方式に代表され る、現代の自動車産業の生産システムにおいては、部品供給業者には高い品質の製品を、低価格で大量 に、しかも厳しい納期で供給することが求められる。このため、部品供給に参入するためには、地場企 業の技術力向上、生産性向上を図ることが重要なポイントになり、さらに有力なサプライヤーとなるた めには独自技術による競争力のある製品開発・提案が求められる。 ①「北部九州自動車 150 万台生産拠点推進構想」 北部九州地域(福岡県を中心とする大分県、佐賀県、熊本県等)には現在、福岡県に日産自動車 (1976 年操業開始)、トヨタ自動車(1992 年)、大分県にダイハツ(2004 年)などの乗用車メーカ ーが立地している。また熊本県にはホンダ技研工業のオートバイ生産拠点(1976 年)がある。この ほか、トヨタとダイハツのエンジン生産工場なども立地している。地域内での自動車生産台数は 90 年代前半には 40 万台規模であったものが、2006 年には 100 万台を突破し、現在では自動車生産 150 万台、部品地元調達率 70%突破を目指している。 ②産業集積形成の推進体制と事業展開 北部九州地域における自動車産業集積育成を推進している中心組織は「北部九州自動車 150 万台 生産拠点推進会議」(事務局:福岡県商工部自動車産業振興室)である。この組織は完成車メーカ ーや関連企業、経済団体等や市町村など官民で組織する組織であり、2011 年 8 月現在、会員は 651 会員である。 この組織では「北部九州自動車 150 万台生産拠点推進構想」を掲げ、福岡県や政令指定都市など の施策を中心に、技術支援や自動車産業への参入支援、展示商談会など、自動車産業の誘致、地元 産業の参入を促進するための総合的な支援を行っている。 「北部九州自動車 150 万台生産拠点プロジェクト(北部九州自動車 150 万台生産拠点推進会議)」 では、2005 年頃に 50%程度であった地元調達率を 70%へと引き上げることを目標に、1次下請け 企業(ティア1)の誘致を進める一方で、2次下請け企業以下に地場企業を育成して参入させる政 策を展開している。また、半導体産業など、他の産業集積を活かした高付加価値領域(カーエレク トロニクスなど)への展開による次世代の自動車の開発拠点を目指している。 北部九州地区では地場企業の自動車部品製造への参入を促進するため以下のような事業を展開 した。 a.技術人材の育成 ・地場中小企業の人材育成(製造基盤技術者の育成:金型、メッキ、ゴム、プラスチック等) ・3次元設計技術者育成(2006 年度 30 名) ・工業高校や高専に専攻科を設置し、人材供給を図る。
b.技術支援 ・モジュール部品開発などの産学官共同研究推進(2006 年から) ・生産技術の高度化支援/生産ラインの効率化を目指した生産カイゼン指導の実施(2006 年度 は 30 社に 90 回指導) c.取引拡大の強化 ・自動車産業参入アドバイザー(2007 年~)として、企業 OB などを中小企業振興センターで 6 名雇用。地元企業を指導しながら1次部品メーカーへ紹介する事業を展開。 ・自動車取引斡旋アドバイザーの設置(自動車メーカーOB を愛知県に配置) ・参入促進講習会:自動車産業に参入を果たした企業を講師に招き、事例発表を行う。 ・九州7県共同の展示商談会(部品展示会)の開催。 また、北九州市では、北九州地域における半導体関連産業の集積による地域の潜在力を活かし、 自動車・半導体産業発展の鍵として注目されるカーエレクトロニクスの研究開発と人材育成の拠点 形成を図るために、2005 年 11 月、産学官から構成するカーエレクトロニクス拠点構想検討委員会 を設置し、全 4 回の検討委員会で検討を重ね、2006 年 8 月「カーエレクトロニクス拠点構想提言」 をとりまとめた。2007 年 7 月、拠点化推進の中核拠点として「カーエレクトロニクスセンター」を 北九州学研都市内に設置し、カーエレクトロニクス拠点化事業を推進している。 ③考察 北部九州地域にとって自動車部品という市場に参入するために地域技術に加えなければならな かった技術は自動車部品の製造基盤技術や3次元設計技術、生産ラインの効率化といった基盤的な 技術であった。自動車産業集積形成を形成するために展開された施策の重点は新技術開発ではなく、 部品産業に参入するために新しく地域技術に加えた技術を地域の企業に普及させることであった といえる。また、従来から九州地域に集積のあった半導体産業が持つ技術を、自動車部品産業の地 域技術に加えることによって、競争力のある産業集積形成を目指している点などが地域技術政策と して重要なポイントとなっている。 6.おわりに 1980 年代に展開された地域技術政策は、先端的企業の誘致や新技術導入を行えば地域産業が活性化す るといった、地域産業を振興するための技術を非常に単純化して捉えていた点に加え、(先端技術の) 研究開発に偏重していた点に問題点があったと考えられる。 今回再検討した「地域技術」の概念によれば、地域産業を振興するために、地域が生産する製品の競 争力をどのように高めていくのかという方針に沿って、どのような技術を地域技術の中に取り込まねば ならないのかを検討することが重要である。地域技術に新たに加える技術の調達方法についても、研究 開発だけではなく、全く異なる分野の技術の導入や、既存技術の普及策なども重要であるといえる。 現在の産業クラスター計画や知的クラスター創生事業など、技術による地域振興を目指すプロジェク トにおいても「地域技術」の概念は重要な役割を果たすと思われるのである。 参考文献 (1)通商産業省工業技術院;「特集Ⅰ.地域技術の振興」,工業技術, Vol.22, No.4 pp. 20~45, 1981 (2)通商産業省工業技術院;「特集 地域技術」,工業技術, Vol.23, No.7 pp. 22~58, 1982 (3)通商産業省工業技術院;「特集 地域技術」,工業技術, Vol.24, No.7 pp. 15~58, 1983 (4)通商産業省産業構造審議会;「80 年代の通産政策ビジョン」,通商産業調査会, 1980 (5) 鈴木茂;「ハイテク型開発政策の研究」,ミネルヴァ書房,2001