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新たな地域歴史資料学の形成をめざして

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Academic year: 2021

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2. 最近の研究成果トピックス

新たな地域歴史資料学の形成をめざして

―阪神・淡路から東日本大震災に至る地域 歴史資料の保全活動の知見を基礎に―

神戸大学 大学院人文学研究科 教授

奥村 弘

 1995年の阪神・淡路大震災において、歴史学関係者は 地域の歴史資料の大規模な保全活動を行いました(図1)。

私は保全組織「歴史資料ネットワーク」の代表としてこれに 深く関与しました。この活動をはじまりとして、頻発する地震 や水害時に、日本各地で地域歴史資料を保全する活動が 行われ、その中で関係者の連携も深まりました。この中で私 たちは、歴史学の社会的な意味を深く考えさせられました。

防災・減災において、過去の災害を知ることが重要であると いう点だけではありません。私たちは被災現場で、家族や地 域の記憶を未来に引き継いでいくために、地域の人々に よって営々と保存されてきた様々な歴史資料に出会いまし た。また復興すべき地域社会が、歴史的にいかに形成され てきたのかを知ることが、地域住民の中で重要な意味を持 つことを見せつけられてきました。

 地域社会においてこの役割を歴史学が担うために、地域 歴史資料の保全活用をいかに学問的に位置づけるのかが 問われました。私たちは、保全に携わった歴史学関係者は それらを明らかにし、大災害から地域歴史資料を保全する 具体的な方法を研究することが必要であると考え、2009年 春、科研費により、地域歴史資料学を形成するための研究 を開始しました。

 研究の中では大規模災害時だけでなく、日常的に地域 歴史文化の継承が困難となっていることが浮き彫りになっ てきました。中山間部ではすさまじ

い勢いで若年層が減り、高度経済 成長期以前、日常的な生活文化 として存在していた暮らしも大きく

変わっています。その中で、地域文 化の継承は地域の歴史として意 識的に進めていくことが必要であ ることが明らかになっています。 の一方で、地域住民が地域歴史 資料を積極的に保全するとともに これを活用し、私たち歴史学の専 門家と協力しながら、地域住民が みずから地域の歴史を叙述し、

の中で研究者の地域についての歴史認識や歴史資料論 を鍛えていくという方法も模索しています。具体的保全方法 としては、この間に大水害が頻発したこともあり、地域住民と ともに進める水損史料保全について、多くの知見を得ること になりました(図2)。

 2011年3月6日、私たちは研究を踏まえ、大規模自然災害 に対する地域歴史遺産保全についての提言をまとめるた めの研究会を開催、たたき台となる草稿について議論を 行っていました。その研究会直後に東日本大震災が起こり ました。提言をまとめる時間が持てなかったことはとても残念 なのですが、現在私たちはこれまでの研究による知見を活 かし、東日本大震災の被災地域において、地域歴史資料を 保全する活動を進めています。それとともに従来の災害時 には考えることができなかった津波や放射能災害、さらに広 域的な支援体制などに関する新たな知見を研究に反映さ せています。東日本大震災における地域歴史資料の保全 は、今後十数年にわたり続いていくことになります。私たちは 研究の成果を活かし、被災地での地域歴史文化を支援す るとともに、新たな地域歴史資料学の確立に向け研究を進 めていきたいと考えています。

平成21-25年度 基盤研究(S)「大規模自然災害時の史 料保全論を基礎とした地域歴史資料学の構築」

図1 阪神・淡路大震災での倒壊 した家屋からの歴史資料保全

図2 水損した歴史資料の保全を行う学生・若手研究者

4

研究の背景

研究の成果

今後の展望

関連する科研費

人文・社会系

Culture & Society

(記事制作協力:科学コミュニケーター 福成海央)

参照

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