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Academic year: 2021

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早稲田大学大学院情報生産システム研究科

博士論文審査結果報告書

論 文 題 目

高湿分空気利用ガスタービンシステムの モデリングと運転特性の評価に関する研究

申 請 者 片桐 幸徳

情報生産システム工学専攻 ニューロコンピューティング研究

2014 2

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産業用ガスタ-ビン発電機の燃焼用空気に湿分を添加しタービンの高効率化を 図る高湿分ガスタービン(AHAT : Advanced Humid Air Turbine)システムの研 究が進められている。AHATシステムは,1981年に提案されたHATシステムを 発展させたもので、ガスタービンのタービン圧縮機の入口側圧力と出口側圧力の 圧力比や燃焼温度の上昇に頼ることなく、燃焼用空気の加湿および熱回収の工夫 によりタービン出力の向上と発電効率の向上を図るシステムである。

AHAT システムでは、圧縮機によって得られた燃焼用空気を加湿するために、

圧縮機出口で空気と水を直接接触させ空気に湿分を添加する増湿塔を設置してい る。したがって、AHATシステムでは高湿分の空気を燃焼器に供給する加湿開始・

停止の操作により,湿分変動に起因した発電機出力の変動が予想される。また、

増湿塔が追加されたことにより圧縮機から燃焼器までの配管体積が増加し、発電 負荷変化等の過渡状態において従来のガスタービンシステムとは異なる特性が予 想される。

そこで、本論文では、発電出力4MWの特性検証用AHATシステムの過渡特性 を予測できるモデリング手法を提案し、これを組み込んだシミュレータを使用し て AHAT システムの運転制御特性および特殊運転時のシステム特性を評価して いる。また、シミュレータで特性検証を行ったAHATシステムを商用発電プラン トに適用する場合の課題および問題点を抽出している。

なお、本論文のモデリング手法の提案および特性評価は、特性検証用AHATシ ステムの機器の設計と制御システムの設計に反映されている.

第1章では、産業用ガスタービンの発電効率向上のための技術課題を総括して いる。また、AHATシステムの開発の意義とAHATシステムの開発に際して解決 すべき技術課題を従来システムと比較しながら述べ、本論文の内容を要約してい る。

第2章では、AHATシステムの増湿塔による加湿と増湿塔設置にともなう配管 体積の増加が、システムの運転制御および安全保護に重大な影響を及ぼす可能性 があることを指摘している。

具体的には、AHATシステムの増湿塔での加湿開始・停止の操作が燃焼用空気 中の湿分の変動をもたらし、燃焼器の火炎の消失の原因となること、また、ガス タービンが非常停止した後に、増湿塔設置にともない増加した配管体積内の空気 によってタービンの回転が持続し、タービン回転数が省令で定められた最大値

(111%)を超過する原因となることを指摘している。

そこで、特性検証用AHATシステムを実際に運転することなくシステムの運転 制御特性の予測が可能なモデリング手法とシミュレータを開発し、これを利用し て、実際のAHATシステムの燃焼器火炎の消失やタービン回転数の増大のリスク 評価を行うことが特に重要であることを明らかにしている。

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第3章では、AHATシステム運転時の課題を解決するために、過渡特性が解析 可能なAHATシステムの動特性モデリング手法とシミュレータを提案している。

加湿を行うための増湿塔および熱回収を行うための再生熱交換器のモデルでは、

各機器の熱収支および物質収支を連立微分方程式を使用して計算している。

特に、増湿塔モデルでは、熱量保存の視点を考慮すると加湿空気と加湿水間の 蒸発界面の解析を省略できることを明らかにし、スウェーデン Lund 大学の

Johnsonモデルに比較し高速演算が可能な解法を提案している。また、加湿の程

度を水膜被覆率パラメータγで表現し、加湿有りから加湿無しまでの広範囲なモ デル化を可能にしているのが特徴である。

再生熱交換器モデルでは、従来の設計に用いられている理論式を拡張し、複合 伝熱構造とケーシング構造を考慮したモデルを提案している。

第4章では、第3章で提案した増湿塔モデルの単体特性の妥当性を評価するた め、増湿塔モデルの解析結果を特性検証用AHATシステムに先駆けて開発した増 湿塔の小型試験装置の実験結果と比較している。

加湿水温度を上昇および下降させて、増湿塔出口の空気流量、空気温度および 空気絶対湿度を小型試験装置と増湿塔モデルで比較した結果、増湿塔出口の空気 流量を絶対値平均誤差 2.0%、空気温度を誤差 2.9%および空気絶対湿度を誤差 2.5%で予測可能であり,単体モデルの計算精度の目標値である誤差±5%は達成 可能であることを明らかにしている。

また、増湿塔モデルの計算速度は実時間の約 79 倍であり、運転制御特性の解 析に必要な計算速度も達成できることを示している。

第5章では、第3章で提案した増湿塔および再生熱交換器モデルをAHATシス テム向け動特性シミュレータに組み込み、この解析結果を特性検証用AHATシス テムの試験結果と比較して AHAT システム動特性シミュレータの総合特性を評 価している。

AHATシステム動特性シミュレータの計算精度を評価するにあたっては,増湿 塔モデルおよび再生熱交換器モデルに対し,それぞれ以下に示すモデルの改良お よび最適パラメータの探索を行い計算精度の向上を図っている。

(1) 加湿開始時の増湿塔モデルの計算精度を高めるため、加湿水が増湿塔内に 水膜を形成し蒸発を開始するプロセスを模擬するためのパラメータを提案 し,最適パラメータを探索している。 その結果,増湿塔出口における空気 流量の絶対値平均誤差を0.46%,空気温度の誤差を2.2%および空気絶対湿 度の誤差を2.2%に改善できることを明らかにしている。

(2) ガスタービン起動時の再生熱交換器モデルの計算精度を高めるため、再生

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熱交換器の複合構造に着目して保有熱量を詳細に解析するモデルを新たに 提案している。これにより、再生熱交換器出口のガス温度の絶対値平均誤 差を 1.0%および空気温度の誤差を 3.1%にできることを明らかにしている。

以上のモデルの改良およびモデルの最適なパラメータの探索によって、AHAT システム動特性シミュレータが特性検証用 AHAT システムの運転制御および安 全保護のためのシミュレータとして有効に活用できることを明らかにしている。

第6章では、第5章のAHATシステム動特性シミュレータを用いて、特性検証 用 AHAT システムの増湿塔加湿開始時の燃焼器失火およびガスタービントリッ プ時のガスタービン回転数上昇についての解析を行っている。

増湿塔加湿開始時の解析では、加湿切替時間と切替時に発生する燃料流量の一 時的な低下量との関係を明らかにしている。具体的には,加湿切替時間を4分で 実施する場合には,加湿により燃料流量が一時的に1%低下するが、2分では3%

低下することを明らかにしている。これにより,燃焼器の失火裕度を確保しつつ、

短時間に加湿切替を完了する自動制御の基準を明らかにしている。

さらに、ガスタービントリップ時の解析では、燃料を搬送する配管の長さ、タ ービントリップ中のタービン特性の変化などといった不確定要素を考慮しても、

タービントリップ時のタービン回転数の最大値は高々107.9%であり,省令に定め られた最大値111%を超えないことを明らかにしている。

第7章では、以上得られた解析結果に基づき,特性検証用AHATシステムを商 用化した際の制御システムの自動化範囲と安全保護方式を総括している。

以上、本論文では、AHATシステムの過渡特性を予測できるモデリング手法と これを組み込んだAHATシステム動特性シミュレータを提案し、AHATシステム の運転制御特性および特殊運転時のAHATシステムの特性を評価している。また、

AHATシステムを商用発電プラントに適用する場合の課題および問題点を抽出し ている。従って、AHATシステムの性能向上とその応用拡大に寄与するところが 大である。よって、本論文は博士(工学)の学位論文として価値あるものと認め る。

2014年1月23日

主査 早稲田大学 教授 博士(情報工学)(九州工業大学)古月敬之 早稲田大学 教授 博士(工学) (早稲田大学) 藤村茂 早稲田大学 教授 工学博士 (早稲田大学) 犬島浩 早稲田大学 名誉教授 工学博士 (九州大学) 平澤宏太郎

参照

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